本発明の電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という)においては不織布を2枚以上積層一体化することによって、それぞれの不織布の緻密性を利用し、正極と負極間の実際の道のりを長くして、短絡防止性を高めている。このような作用を奏するように、本発明における不織布とは融着した(場合により絡合もしている)、既に所定の形態を維持できる状態にあるものを意味する。
なお、不織布の積層枚数は2枚以上であれば良く、特に限定するものではないが、薄いセパレータであることによって高容量の電池を製造できるように、2枚であるのが好ましい。
また、積層一体化は、例えば、融着により積層一体化していることもできるし、絡合により積層一体化していることもできるし、或いは絡合しているとともに融着により積層一体化していることもできる。しかしながら、絡合により一体化していると、不織布が所定の形態を維持した状態にあるとはいえ、繊維が厚さ方向へ再配向したり、表面から裏面への貫通孔が形成されやすい傾向にあり、短絡防止性が低下する傾向があるため、融着のみにより積層一体化しているのが好ましい。この融着は、後述のような不織布を構成する融着性繊維の融着成分によって融着していても良いし、融着性繊維とは別に融着性樹脂を不織布間に介在させても良い。しかしながら、薄いセパレータであり、また、イオンの透過性を損なわないように、不織布を構成する融着性繊維の融着成分によって融着しているのが好ましい。
以下、個々の不織布について説明する。
個々の不織布においては、一定体積における繊維表面積を広くして電解液の保持性に優れるように、また、緻密性を高めて短絡防止性に優れるように、繊維径が3μm以下の極細繊維を含んでいる。このような極細繊維の繊維径が小さければ小さい程、前記性能により優れているため、繊維径は2μm以下であるのが好ましい。他方、繊維径の下限は特に限定するものではないが、0.001μm程度が適当である。なお、本発明における「繊維径」は電子顕微鏡写真により計測して得られる値をいう。
本発明の極細繊維は海島型複合繊維の海成分を除去して残留した島成分からなる極細繊維であるのが好ましい。このようにして得た個々の極細繊維は長さ方向における繊維径がほぼ同じであるため、均一な孔径の孔及び均一な内部空間が形成され、電解液の分布が均一で、イオンの透過性に優れているためである。特に、複合紡糸法により製造した海島型複合繊維の海成分を除去して残留した島成分からなる極細繊維は、複数の極細繊維間においてもほぼ同一の繊維径を有することができ、前記性能に更に優れているため、特に好適である。しかしながら、混合紡糸法によって製造した海島型複合繊維の海成分を除去して残留した島成分からなる極細繊維であっても使用できる。なお、メルトブロー法により製造した極細繊維は、長さ方向における繊維径がほぼ同じである極細繊維、及び複数の極細繊維間においてもほぼ同一の繊維径を有することは困難である。
この海島型複合繊維の島成分は極細繊維の基であるため、極細繊維と同じ樹脂からなり、海島型複合繊維の海成分は溶媒等によって除去されるため、島成分の除去速度よりも速く除去できる樹脂からなる。例えば、島成分がポリオレフィン系樹脂又はポリアミド系樹脂からなり、海成分がポリエステル又は共重合ポリエステルからなる海島型複合繊維を、アルカリ溶液によって海成分のみを除去して、島成分からなる極細繊維を形成することができる。
本発明の極細繊維の横断面形状は非円形であることもできるし、円形であることもできるが、円形であるのが好ましい。円形であると、不織布の地合いが優れ、緻密な構造であることができるためである。なお、極細繊維の横断面形状が円形であっても、後述の準極細異形繊維の存在によって、電解液の保持性を損なうことなく極細繊維同士の密着を抑制でき、適度な空隙が形成されているためガス透過性に優れ、密閉型電池に使用した場合には電池の内圧を低くできる。
なお、極細繊維の束が存在すると、極細繊維による短絡防止性に劣る傾向があるため、極細繊維は束の状態で存在せず、個々の極細繊維が分散した状態にあるのが好ましい。
また、極細繊維は不織布の強度に優れ、電池製造時に切断したりしにくいように、延伸されているのが好ましい。本発明における「延伸されている」とは、繊維形成後に機械的に延伸されていることを意味し、メルトブロー法により形成された繊維は延伸されていない。なお、海島型複合繊維の段階で延伸されていれば、その海島型複合繊維から発生させた島成分からなる極細繊維は延伸されている。
このような極細繊維は耐電解液性に優れているように、ポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好ましく、例えば、ポリエチレン系樹脂(例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、又はエチレン共重合体(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体)など)、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、又はプロピレン共重合体など)、あるいはポリメチルペンテン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテン、又はメチルペンテン共重合体など)から構成されていることができ、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂(特に高密度ポリエチレン)からなるのが好ましい。また、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン10、ナイロン12、或いはこれらを共重合成分とするポリアミド共重合体などのポリアミド系樹脂から構成されていても良い。
なお、極細繊維が融着に関与することのできる樹脂成分(以下、「融着成分」ということがある)を含み、極細繊維がこの融着成分により融着していると、極細繊維が脱落したり、毛羽立つことがない。この極細繊維を融着させる場合、極細繊維は前述のような樹脂からなる融着成分のみから構成することもできるし、融着成分とこの融着成分の融点よりも高い融点を有する成分(以下、「非融着成分」ということがある)とのように2種類以上の成分から構成することもできる。後者のように極細繊維が融着成分と非融着成分とのように2種類以上の成分から構成されていると、融着成分を融着させても、非融着成分によって繊維形態が維持され、緻密性を維持して短絡防止性に優れているため好適である。このような極細繊維の横断面形状としては、融着力に優れているように、例えば、芯鞘型、偏芯型、又は海島型であるのが好ましい。なお、非融着成分は繊維形状を維持することができるように、融着成分の融点よりも10℃以上高い融点を有するのが好ましく、20℃以上高い融点を有するのがより好ましい。このような融着成分と非融着成分とのように2種類以上の樹脂成分からなる極細繊維は、常法の複合紡糸法により海島型複合繊維を紡糸する際に、島成分を押し出す口金として、前述のような横断面形状(例えば、芯鞘型、偏芯型、又は海島型)を形成することのできる口金を使用して海島型繊維を紡糸するか、常法の複合紡糸法により海島型複合繊維を紡糸する際に、2種類以上の樹脂成分を混合した樹脂を、島成分押出用口金に供給して海島型繊維を紡糸し、海成分を除去することにより得ることができる。
本明細書における「融点」は、示差走査熱量計を用い、昇温温度10℃/分で、室温から昇温して得られる融解吸熱曲線の極大値を与える温度をいう。なお、極大値が2つ以上存在する場合には、最も高温の極大値を融点とする。
本発明の極細繊維の繊維長は特に限定されるものではないが、繊維長が短いほど繊維の自由度が高く、均一に分散することができ、より地合いの優れる不織布であることができるため、0.1〜25mm(より好ましくは0.1〜20mm)であるのが好ましい。
前記の極細繊維は、不織布中に2mass%以上の量で含まれていれば前述のような効果を発揮しやすく、5mass%以上の量で含まれているのがより好ましく、10mass%以上の量で含まれているのが更に好ましい。他方で、極細繊維量が多くなると、緻密になり過ぎてガス透過性が悪くなり、また、極細繊維の分散性が低下し、本来の作用である短絡防止性を発揮できなくなる傾向があるため、不織布の30mass%以下であるのが好ましく、25mass%以下であるのがより好ましい。
本発明の不織布においては、上述のような極細繊維を使用した場合に緻密になり過ぎて、ガス透過性が悪くなるのを抑制できるように、繊維径(円形換算値)が3〜5μm(3μmは含まない)で、横断面形状が非円形である準極細異形繊維を含んでいる。この準極細異形繊維を含んでいることによって、極細繊維同士の密着を抑制でき、適度な空隙が形成されているため、ガス透過性を高めることができる。また、準極細異形繊維の横断面形状は非円形で、圧力がかかっても潰れにくいため、短絡防止性及びガス透過性に優れ、しかも電解液の保持性を高めることができる。
準極細異形繊維は不織布の一定体積における繊維の表面積が小さくならないように、繊維径が5μm以下であり、4.5μm以下であるのがより好ましい。他方、準極細異形繊維が適当な空隙を形成してガス透過性に優れているように、また、形状を維持して圧力に対して抗することができるように、繊維径は3μmを超え、3.5μm以上であるのがより好ましい。なお、準極細異形繊維の横断面形状は非円形であるため、準極細異形繊維の繊維径は横断面積と同じ面積をもつ円の直径を繊維径とする。
準極細異形繊維は適当な空隙を形成できるように、また、電池製造時等の圧力によっても潰れにくいように、横断面形状は非円形である。例えば、長円形状、楕円形状、多角形状(例えば、三角形状、台形状などの四角形状、五角形状、六角形状など)であることができ、特に、三角形状、台形状であるのが好ましい。このような準極細異形繊維は、例えば樹脂組成の異なる2種類以上の樹脂からなる分割型複合繊維に外力を作用させることによって発生させることができる。より具体的には、図1に示すようなオレンジ型の横断面形状を有する分割型複合繊維に外力を作用させれば、樹脂成分11からなる三角形状の準極細異形繊維及び樹脂成分12からなる三角形状の準極細異形繊維を発生させることができ、図2に示すようなオレンジ型の横断面形状を有する分割型複合繊維に外力を作用させれば、樹脂成分11からなる楕円形状の準極細異形繊維と樹脂成分12からなる三角形状の準極細異形繊維とを発生させることができ、図3に示すようなオレンジ型の横断面形状を有する分割型複合繊維に外力を作用させれば、樹脂成分11からなる三角形状の準極細異形繊維、樹脂成分12からなる三角形状の準極細異形繊維、及び樹脂成分12からなる円形状の準極細異形繊維を発生させることができ、図4に示すようなオレンジ型の横断面形状を有する分割型複合繊維に外力を作用させれば、樹脂成分11からなる楕円形状の準極細異形繊維、樹脂成分12からなる三角形状の準極細異形繊維、及び樹脂成分11からなる円形状の準極細異形繊維を発生させることができ、図5に示すような多重バイメタル型の横断面形状を有する分割型複合繊維に外力を作用させれば、樹脂成分11又は樹脂成分12からなる台形状の準極細異形繊維と樹脂成分11又は樹脂成分12からなる半円形状の準極細異形繊維とを発生させることができ、図6に示すような内部に中空部を有するオレンジ型横断面形状の分割型複合繊維に外力を作用させれば、樹脂成分11からなる台形状の準極細異形繊維及び樹脂成分12からなる台形状の準極細異形繊維を発生させることができる。なお、外力としては、例えば、水流などの流体流、カレンダー、レファイナー、パルパー、ミキサー、ビーターなどを挙げることができる。
本発明の準極細異形繊維は耐電解液性に優れるように、極細繊維と同様のポリオレフィン系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂から構成されているのが好ましい。つまり、ポリエチレン系樹脂(例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、又はエチレン共重合体(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体)など)、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、又はプロピレン共重合体など)、あるいはポリメチルペンテン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテン、又はメチルペンテン共重合体など)、及び/又はナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン10、ナイロン12、或いはこれらを共重合成分とするポリアミド共重合体などのポリアミド系樹脂から構成されていることができる。特に、ポリプロピレン製準極細異形繊維又はポリエチレン製準極細異形繊維(特に高密度ポリエチレン製準極細異形繊維)を含んでいると、耐電解液性に優れており、エチレン−ビニルアルコール共重合体製準極細異形繊維を含んでいると、電解液の保持性に優れ、ガス透過性に優れているため、内圧の低い密閉型電池を製造することができる。なお、準極細異形繊維は樹脂組成、繊維径、繊維長の少なくとも1点で相違する準極細異形繊維を2種類以上含んでいても良い。
この準極細異形繊維も不織布の強度に優れ、電池製造時に切断したりしにくいように、延伸されているのが好ましい。なお、分割型複合繊維の段階で延伸されていれば、発生した準極細異形繊維は延伸されている。
本発明の準極細異形繊維の繊維長は特に限定されるものではないが、繊維長が短いほど繊維の自由度が高く、均一に分散することができ、より地合いの優れる不織布であることができるため、0.1〜25mm(より好ましくは0.1〜20mm)であるのが好ましい。
このような準極細異形繊維は、不織布中、5mass%以上の量で含まれていれば前述のような効果を発揮しやすく、10mass%以上の量で含まれているのがより好ましく、15mass%以上の量で含まれているのが更に好ましい。他方で、後述の融着性繊維による不織布強度に優れるように、不織布の88mass%以下であるのが好ましく、75mass%以下であるのがより好ましい。
本発明の不織布においては、前述のような極細繊維、準極細異形繊維に加えて、融着成分を表面に備えた融着性繊維を含み、この融着性繊維の融着成分が融着して不織布形態を維持している。この融着性繊維は融着できるように繊維表面に融着成分を備えているが、その融点は極細繊維と準極細異形繊維を構成する樹脂成分の中で最も融点の低い樹脂成分と同じ又は低い融点を有する。前者のように同じ融点を有する場合には極細繊維及び/又は準極細異形繊維を構成する最も融点の低い樹脂成分も融着する。後者のように低い融点を有する場合には融着性繊維のみが融着する。本発明においては、極細繊維及び準極細異形繊維による緻密性に優れているものの、準極細異形繊維による空隙形成作用に優れているのが好ましいため、後者のように融着性繊維のみが融着するように、極細繊維と準極細異形繊維を構成する樹脂成分の中で最も融点の低い樹脂成分よりも低い(好ましくは10℃以上低い、より好ましくは15℃以上低い)融点をもつ融着成分を備えた融着性繊維であるのが好ましい。
このような融着性繊維の融着成分は極細繊維と準極細異形繊維との関係で決まるため、特に限定するものではないが、極細繊維はポリプロピレンやポリエチレン(特に高密度ポリエチレン)から構成されているのが好ましく、準極細異形繊維もポリプロピレン、ポリエチレン(特に高密度ポリエチレン)又はエチレン−ビニルアルコール共重合体から構成されているのが好ましいため、融着性繊維の融着成分はポリエチレンからなるのが好ましい。特に、極細繊維や準極細異形繊維を溶融させないように、極細繊維と準極細異形繊維を構成する樹脂成分の中で最も融点の低い樹脂成分が高密度ポリエチレンであり、融着性繊維の融着成分が低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンからなるのが好ましい。この組合せからなる場合、極細繊維及び/又は準極細異形繊維と融着性繊維との相溶性が高く、融着力も優れている。
このような融着成分は融着性繊維の繊維表面を占めているが、その比率が高ければ高い程、融着力に優れているため、融着成分は融着性繊維表面の50%以上を占めている(両端部を除く)のが好ましく、70%以上を占めている(両端部を除く)のがより好ましく、90%以上を占めている(両端部を除く)のが更に好ましく、繊維表面全体を占めている(両端部を除く)のが最も好ましい。
なお、融着性繊維は融着成分のみから構成されていても良いが、融着成分以外に融着成分よりも融点の高い非融着成分も含んでいると、融着成分が融着しても融着性繊維の繊維形態を維持でき、不織布の強度が優れているため好適な態様である。非融着成分は融着成分の融着によっても繊維形態を維持できるように、融着成分の融点よりも10℃以上高い樹脂からなるのが好ましく、20℃以上高い樹脂からなるのが好ましい。この非融着成分は融着成分によって変わるため特に限定するものではないが、例えば、融着成分が好適である低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンからなる場合には、非融着成分は高密度ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、又はプロピレン共重合体など)、ポリメチルペンテン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテン、又はメチルペンテン共重合体など)、或いはポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン10、ナイロン12など)であることができる。このように非融着成分を含む場合、融着性繊維の横断面における各成分の配置状態として、例えば、芯鞘型、偏芯型、海島型、オレンジ型、貼り合わせ型、多層貼り合せ型を挙げることができ、これらの中でも融着力の高い芯鞘型、偏芯型、海島型であるのが好ましい。
本発明の融着性繊維の繊維径は特に限定されるものではないが、5〜32μmであるのが好ましく、8〜17μmであるのがより好ましい。融着性繊維の繊維径が5μm未満であると、不織布強度が不十分である傾向があり、融着性繊維の繊維径が32μmを越えると、融着性繊維の分散がバラツキやすくなり、緻密性が損なわれ易い傾向があるためである。
本発明の融着性繊維の繊維長は特に限定されるものではないが、繊維長が短いほど繊維の自由度が高く、均一に分散することができ、より地合いの優れる緻密な不織布であることができるため、0.1〜25mm(より好ましくは0.1〜20mm)であるのが好ましく、0.1〜25mm(より好ましくは0.1〜20mm)に切断されているのが好ましい。
このような融着性繊維は不織布形態を維持できるように、不織布中、10mass%以上の量で含まれているのが好ましく、20mass%以上の量で含まれているのがより好ましく、30mass%以上の量で含まれているのが更に好ましい。他方で、極細繊維及び準極細異形繊維との兼ね合いから、不織布の93mass%以下であるのが好ましく、85mass%以下であるのがより好ましい。
本発明の不織布は上述のような極細繊維、準極細異形繊維及び融着性繊維を含むものであるが、これら繊維以外に、繊維径が3μmを超える横断面形状が円形の繊維、繊維径が5μmを超える繊維、樹脂組成の点で異なる2種類以上の準極細異形繊維同士が結合したパルプ状物、或いは引張り強さが5cN/dtex以上の高強度繊維などを含んでいることができる。
特に、前記パルプ状物は準極細異形繊維同士の結合部の存在により圧縮されにくいため短絡防止性に優れており、しかも準極細異形繊維からなるフィブリルの存在によって不織布の緻密な構造を損なわず、電解液の保持性にも優れているため好適である。このようなパルプ状物は前述の準極細異形繊維を形成することのできる樹脂組成の異なる2種類以上の樹脂からなる分割型複合繊維に外力を作用させ、不十分に分割することによって得ることができる。つまり、分割型複合繊維の分割した部分が準極細異形繊維のフィブリルを形成するとともに、分割型複合繊維の分割していない部分が準極細異形繊維同士の結合部分を構成する。
また、不織布が引張り強さが5cN/dtex以上の高強度繊維を含んでいると、薄いセパレータであっても、極板群にセパレータを巻回した際に極板によってセパレータが切断されたり、極板のバリがセパレータを突き抜けて短絡しにくいため、好適である。高強度繊維の引張り強さが強ければ強い程、前記性能に優れているため、引張り強さは5.5cN/dtex以上であるのが好ましく、6.0cN/dtex以上であるのがより好ましく、6.2cN/dtex以上であるのが更に好ましく、6.5cN/dtex以上であるのが更に好ましく、6.8cN/dtex以上であるのが更に好ましい。引張り強さの上限は特に限定するものではないが、50cN/dtex程度が適当である。本発明における「引張り強さ」は、JIS L 1015:1999、8.7.1(標準時試験)に則り、定速緊張型引張り試験機を使用し、つかみ間隔20mm、引張り速度20mm/分の条件下での値をいう。
なお、高強度繊維は圧力によっても変形しにくく、電解液の保持性に優れているように、ヤング率が30cN/dtex以上であるのが好ましく、35cN/dtex以上であるのがより好ましく、40cN/dtex以上であるのが更に好ましい。なお、ヤング率の上限は特に限定するものではないが、110cN/dtex以下であるのが好ましい。この「ヤング率」はJIS L 1015:1999、8.11項に規定されている方法により測定した初期引張抵抗度から算出した見掛ヤング率の値をいう。なお、初期引張抵抗度は定速緊張形試験機によって測定した値をいう。
また、高強度繊維の熱収縮率は10%以下であるのが好ましい。このような熱収縮率であると、融着性繊維の融着成分を融着させたとしても収縮しにくいため、繊維の均一分散性が維持されて、短絡防止性に優れているためである。より好ましい熱収縮率は9%以下である。この熱収縮率はJIS L 1013の熱収縮率(B法)に基づき、温度120℃のオーブン乾燥機を用い、30分間熱処理して測定した値をいう。
この高強度繊維は前記のような引張り強さを有するのであればどのような樹脂から構成されていても良いが、耐電解液性に優れているように、繊維表面(繊維両端部を除く)がポリオレフィン系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂から構成されているのが好ましい。例えば、ポリエチレン系樹脂(例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、又はエチレン共重合体(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸)など)、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、又はプロピレン共重合体(例えば、エチレン−ブテン−プロピレン共重合体、エチレン−ブタジエン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体など)など)、あるいはポリメチルペンテン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテン、又はメチルペンテン共重合体など)などのポリオレフィン系樹脂、及び/又はナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン10、ナイロン12、或いはこれらを共重合成分とするポリアミド共重合体などのポリアミド系樹脂から構成されていることができる。なお、高強度繊維は熱の影響によって引張り強さが低下する傾向があるため、融着性繊維の融着成分よりも10℃以上(好ましくは15℃以上)高い融点をもつ樹脂からなるのが好ましい。前述の通り、融着性繊維の融着成分は低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンからなるのが好ましいため、高強度繊維は超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテン、メチルペンテン系共重合体)、又はポリアミド系樹脂からなるのが好ましい。
この高強度繊維は上記のような樹脂単独から構成されていても良いし、2種類以上の樹脂が混合又は複合していても良い。前述の極細繊維と準極細異形繊維を構成する樹脂成分の中で最も融点の低い樹脂成分と同じ又は低い融点を有する融着成分を繊維表面に備えていると、融着性繊維としても使用することができ、高強度繊維がずれにくく、前記効果を発揮しやすいため好適である。このような融着性繊維としても使用できる高強度繊維(以下、「高強度融着性繊維」という)は融着成分の融着によって強度が低下しないように、融着成分と非融着成分とから構成されているのが好ましい。この高強度融着性繊維の融着成分と非融着成分は、前述の融着性繊維(以下、「レギュラー融着性繊維」ということがある)と同様に、融着成分がポリエチレン(特に低融点ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレン)からなり、非融着成分が高密度ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、或いはポリアミド系樹脂からなるのが好ましい。
その他、高強度融着性繊維の融着成分が繊維表面を占める割合、横断面における各成分の配置状態、繊維径、繊維長及び含有量はレギュラー融着性繊維と全く同様であることができる。なお、高強度融着性繊維とレギュラー融着性繊維の両方を含んでいることもでき、この場合にはその合計質量が前記融着性繊維量の範囲内にあるのが好ましい。
このような高強度繊維は、例えば特開平11−350283号公報に記載の方法により製造することができる。つまり、絶対圧が2.0kg/cm2以上の加圧飽和水蒸気を充填した延伸槽に未延伸繊維を導き、未延伸繊維の表面に水分が付着した状態下で延伸して製造することができる。
本発明の不織布は上述のような繊維から構成されているが、ポリオレフィン系繊維のみから実質的に構成されているのが好ましい。耐電解液性に優れ、自己放電の原因といわれているアンモニアを発生することもないためである。なお、「ポリオレフィン系繊維」とは、繊維全体がポリオレフィン系樹脂のみからなる繊維だけではなく、少なくとも繊維表面全体(両端を除く)がポリオレフィン系樹脂から構成されている繊維も含む。耐電解液性に影響を与える部分は繊維表面であるからである。例えば、ポリアミド樹脂とポリオレフィン系樹脂とからなる複合繊維であって、繊維表面全体(両端を除く)がポリオレフィン系樹脂から構成されている繊維は、ポリオレフィン系繊維に相当する。したがって、「実質的にポリオレフィン系繊維のみから構成されている」とは、上記のようなポリオレフィン系繊維のみから構成されていることをいう。
このように不織布が実質的にポリオレフィン系繊維のみから構成されていると、電解液の保持性が悪くなる傾向があるため、不織布の構成繊維表面には、酸素及び/又は硫黄含有官能基(例えば、スルホン酸基、スルホン酸塩基、スルホフルオライド基、水酸基、カルボキシル基、又はカルボニル基など)が導入されていたり、親水性モノマーがグラフト重合されていたり、界面活性剤が付与されていたり、或いは親水性樹脂が付与されているのが好ましい。
本発明の不織布は前述のような極細繊維及び準極細異形繊維を含んでいることによって、厚さの薄いものであることができる。より具体的には、厚さとしては0.15mm以下であることができ、好ましくは0.12mm以下であることができる。また、目付は40g/m2以下であることができ、好ましくは38g/m2以下であることができるため、電池の高容量化に寄与できる。本発明における「厚さ」はJIS B 7502:1994に規定されている外側マイクロメーター(0〜25mm)を用いて、JIS C2111 5.1(1)の測定法で、無作為に選んで測定した10点の平均値を意味し、「目付」はJIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定法)に規定されている方法に基づいて得られる坪量を意味する。
本発明のセパレータは上述のような不織布を2枚以上積層一体化したものであるが、準極細異形繊維、好ましくは高強度繊維を含んでいることによって、圧力によって潰れにくいため、短絡防止性及びガス透過性に優れ、しかも電解液の保持性に優れている。より具体的には、下記に定義される「厚さ保持率」が85%以上(好ましくは88%以上)の、圧力によっても潰れにくいものであるのが好ましい。
記
マイクロメーター(心棒の直径:6.35mm)により、セパレータの500g荷重時における厚さ(T500)を測定する。次いで、セパレータの1000g荷重時における厚さ(T1000)をマイクロメーターにより測定する。そして、1000g荷重時における厚さ(T1000)の500g荷重時における厚さ(T500)に対する百分率を厚さ保持率(Tr)とする。
Tr=(T1000/T500)×100
本発明のセパレータは極細繊維に加えて準極細異形繊維を含んでいることによって適度な空隙が形成され、ガス透過性に優れるものであるため、密閉型電池に使用し、内圧を低くできるものである。具体的には、平均孔径が3〜18μmであることができ、好ましくは4〜16μmであることができ、更に好ましくは5〜14μmであることができる。本発明における平均孔径は、ポロメーター(コールター社製)を用い、バブルポイント法により測定した平均流量孔径をいう。
本発明のセパレータはセパレータ全体に均一に電解液を保持して、内部抵抗が低く、高容量の電池を製造することができるように、同じ繊維配合からなる不織布が2枚以上積層一体化されているのが好ましい。
本発明のセパレータは、例えば、アルカリマンガン電池、水銀電池、酸化銀電池、リチウム電池又は空気電池などの一次電池、あるいはニッケル−カドミウム電池、銀−亜鉛電池、銀−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池、鉛蓄電池、或いはリチウムイオン電池などの二次電池のセパレータとして好適に使用することができ、特にニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池のセパレータとして好適である。
本発明のセパレータは、例えば、次のようにして製造することができる。まず、少なくとも極細繊維、樹脂組成の異なる2種類以上の樹脂からなる分割型複合繊維及び融着性繊維を用意する。なお、前述の通り、これら繊維はいずれもポリオレフィン系樹脂からなるのが好ましい。
次いで、用意した繊維から繊維ウエブを形成する。この繊維ウエブの形成方法は特に限定するものではないが、乾式法(例えば、カード法、エアレイ法など)や湿式法により形成することができる。これらの中でも繊維が均一に分散して電解液を均一に保持しやすい不織布を製造しやすい湿式法により形成するのが好ましい。この湿式法としては、従来公知の方法、例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、又は長網・円網コンビネーション方式により形成できる。
次いで、この繊維ウエブに対して流体流(特に水流)を噴出して、分割型複合繊維の一部又は全部を分割して準極細異形繊維を発生させる。なお、流体流を作用させることによって、極細繊維、準極細異形繊維及び融着性繊維が絡合し、不織布の機械的強度が向上する効果も奏する。このように流体流を噴出して準極細異形繊維を発生させた場合、流体流が作用しにくい領域(例えば、ノズル間、繊維ウエブ内部など)が存在するため、準極細異形繊維同士が結合したパルプ状物が形成されやすい。なお、分割型複合繊維もポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好適であり、分割型複合繊維がポリオレフィン系樹脂のみから構成されている(特に、ポリプロピレンとポリエチレンからなる場合)と、分割型複合繊維が分割しにくく、準極細異形繊維を発生しにくい傾向があるため、融着性繊維の融着成分を融着させた後(場合により分割型複合繊維の最も融点の低い樹脂成分も融着させる)、流体流を作用させるのが好ましい。
流体流の条件としては、分割型複合繊維の一部又は全部を分割して準極細異形繊維を発生させることのできる条件であれば良く、適宜実験を繰り返すことによって、その条件を設定することができる。一般的には、直径0.05〜0.3mm、ピッチ0.2〜3mmで一列又は二列以上にノズルを配置したノズルプレートから、圧力1MPa〜30MPaの流体流を繊維ウエブに対して噴出することにより準極細異形繊維を発生させることができる。このような流体流は1回以上、繊維ウエブの片面又は両面に対して噴出すれば良い。なお、流体流を噴出する際に、繊維ウエブを支持する支持体(例えば、ネットなど)の非開孔部が太いと、得られる不織布も大きな孔を有するものとなり、短絡が生じやすくなるので、非開孔部の太さが0.25mm以下の支持体を使用するのが好ましい。
次いで、準極細異形繊維を発生させた繊維ウエブを加熱し、融着性繊維の融着成分を融着させて、不織布を製造する。なお、加熱温度は融着成分が融着する温度であれば良く、特に限定するものではないが、融着成分の融点よりも5℃低い温度から融着成分の融点よりも20℃高い温度の範囲内で、3秒から20秒間、熱風を通過させ、無圧下で熱処理するのが好ましく、融着成分の融点よりも3℃高い温度から融着成分の融点よりも20℃高い温度の範囲内で、3秒から20秒間、繊維ウエブをコンベア等の支持体の下方から吸引して支持体と密着させた状態で、熱風を通過させ、無圧下で熱処理するのがより好ましい。このような条件で熱処理することによって、機械的強度に優れ、しかも電解液の保持性に優れる多空隙の状態の不織布とすることができる。しかしながら、融着性繊維の融着成分の融着は加圧下で行なっても良いし、無圧下で融着成分を溶融させた後に加圧しても良い。
次いで、不織布を2枚以上積層した後、加熱して融着性繊維の融着成分を融着させて、不織布を融着一体化する。なお、加熱温度は融着成分が融着する温度であれば良く、特に限定するものではないが、融着成分の融点よりも5℃低い温度から融着成分の融点よりも20℃高い温度の範囲内で、3秒から20秒間、熱風を通過させ、無圧下で熱処理するのが好ましく、融着成分の融点よりも3℃高い温度から融着成分の融点よりも20℃高い温度の範囲内で、3秒から20秒間、繊維ウエブをコンベア等の支持体の下方から吸引して支持体と密着させた状態で、熱風を通過させ、無圧下で熱処理するのがより好ましい。このような条件で熱処理することによって、不織布の多空隙状態を維持した状態で一体化できる。しかしながら、加圧して一体化しても良いし、無圧下で融着成分を溶融させた後に加圧して一体化しても良い。
このようにして積層一体化したセパレータは耐電解液性に優れているように、実質的にポリオレフィン系繊維のみから構成されているのが好ましいため、電解液の保持性を向上させるために、親水化処理を実施するのが好ましい。この親水化処理としては、例えば、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、放電処理、或いは親水性樹脂付与処理などを挙げることができる。
スルホン化処理としては、特に限定するものではないが、例えば、発煙硫酸、硫酸、三酸化イオウ、クロロ硫酸、又は塩化スルフリルからなる溶液中に前述のような積層一体化不織布を浸漬してスルホン酸基を導入する方法や、一酸化硫黄ガス、二酸化硫黄ガス或いは三酸化硫黄ガスなどの存在下で放電を作用させて積層一体化不織布にスルホン酸基、スルホン酸基等を導入する方法等がある。
フッ素ガス処理についても、特に限定するものではないが、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)で希釈したフッ素ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス、及び二酸化硫黄ガスなどの中から選んだ少なくとも1種類のガスとの混合ガスに、積層一体化不織布をさらすことにより繊維表面にスルホフルオライド基等を導入して親水化することができる。なお、積層一体化不織布に二酸化硫黄ガスをあらかじめ付着させた後に、フッ素ガスを接触させると、より効率的に恒久的な親水性を付与することができる。
ビニルモノマーのグラフト重合としては、ビニルモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、或いはスチレンを使用することができる。なお、スチレンをグラフト重合した場合には、電解液との親和性を付与するために、スルホン化するのが好ましい。これらの中でも、アクリル酸は電解液との親和性に優れているため好適に使用できる。これらビニルモノマーの重合方法としては、例えば、ビニルモノマーと重合開始剤を含む溶液中に積層一体化不織布を浸漬して加熱する方法、積層一体化不織布にビニルモノマーを塗布した後に放射線を照射する方法、積層一体化不織布に放射線を照射した後にビニルモノマーと接触させる方法、増感剤を含むビニルモノマー溶液を積層一体化不織布に含浸した後に紫外線を照射する方法などがある。なお、ビニルモノマー溶液と積層一体化不織布とを接触させる前に、紫外線照射、コロナ放電、又はプラズマ放電などにより、積層一体化不織布表面を改質処理すると、ビニルモノマー溶液との親和性が高くなるため、効率的にグラフト重合を行うことができる。
界面活性剤処理としては、例えば、アニオン系界面活性剤(例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸塩、もしくはスルホコハク酸エステル塩など)、又はノニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、もしくはポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルなど)の溶液中に積層一体化不織布を浸漬したり、この溶液を積層一体化不織布に塗布又は散布して付着させることができる。
放電処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、沿面放電処理、紫外線処理又は電子線処理などがある。これら放電処理の中でも、空気中の大気圧下で、それぞれが誘電体を担持する一対の電極間に、これら両方の誘電体と接触するように積層一体化不織布を配置し、これら両電極間に交流電圧を印加し、積層一体化不織布内部空隙で放電を発生させる方法を利用すると、積層一体化不織布の外側だけではなく、積層一体化不織布の内部を構成する繊維表面も処理することができる。したがって、こうした方法で処理した積層一体化不織布をセパレータとして用いると、その内部における電解液の保持性に優れている。
親水性樹脂付与処理としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、架橋可能なポリビニルアルコール、又はポリアクリル酸などの親水性樹脂を付着させることができる。これらの親水性樹脂は適当な溶媒に溶解又は分散させた後、この溶媒中に積層一体化不織布を浸漬したり、この溶媒を積層一体化不織布に塗布又は散布し、乾燥して付着させることができる。なお、親水性樹脂の付着量は、通気性を損なわないように、セパレータ全体の0.3〜5mass%であるのが好ましい。この架橋可能なポリビニルアルコールとしては、例えば、水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールがあり、より具体的には、スチリルピリジニウム系感光性基、スチリルキノリニウム系感光性基、又はスチリルベンゾチアゾリウム系感光性基で置換したポリビニルアルコールがある。この架橋可能なポリビニルアルコールも他の親水性樹脂と同様にして積層一体化不織布に付着させた後、光照射によって架橋させることができる。このような水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールは耐アルカリ性に優れ、しかもイオンとキレートを形成可能な水酸基を多く含んでおり、放電時及び/又は充電時に、極板上に樹枝状の金属が析出する前のイオンとキレートを形成し、電極間の短絡を生じにくいので好適に使用することができる。
以上、本発明のセパレータの製造方法について説明したが、本発明は上述の方法に限定されない。例えば、少なくとも極細繊維、準極細異形繊維及び融着性繊維を用意した後に、上述と同様に繊維ウエブを形成し、流体流を作用させることなく、上述と同様に融着性繊維の融着成分を融着させて、不織布を製造し、この不織布を融着一体化することができる。この場合も同様の親水化処理を実施するのが好ましい。なお、準極細異形繊維は、例えば、樹脂組成の異なる2種類以上の樹脂からなる分割型複合繊維に対し、レファイナー、パルパー、ミキサー、ビーターなどにより外力を作用させることにより形成することができる。この際に、不十分な外力を作用させれば、準極細異形繊維同士が結合したパルプ状物を形成することができる。このように準極細異形繊維を用いて繊維ウエブを形成すると、流体流などによる絡合作用によって繊維ウエブの地合いが乱れにくいため、緻密性に優れる不織布であることができ、短絡防止性により優れており、好適な製造方法である。
本発明の電池は、上述のようなセパレータを備えていること以外は、従来の電池と全く同様であることができる。
例えば、円筒型ニッケル−水素電池は、ニッケル正極板と水素吸蔵合金負極板とを、前述のようなセパレータを介して渦巻き状に巻回した極板群を金属のケースに挿入した構造を有する。前記ニッケル正極板としては、例えば、スポンジ状ニッケル多孔体に水酸化ニッケル固溶体粉末からなる活物質を充填したものを使用することができ、水素吸蔵合金負極板としては、例えば、ニッケルメッキ穿孔鋼板、発泡ニッケル、或いはニッケルネットに、AB5系(希土類系)合金、AB/A2B系(Ti/Zr系)合金、或いはAB2(Laves相)系合金を充填したものを使用することができる。なお、電解液として、例えば、水酸化カリウム/水酸化リチウムの二成分系のもの、或いは水酸化カリウム/水酸化ナトリウム/水酸化リチウムの三成分系のものを使用することができる。また、前記ケースは安全弁を備えた封口板により、絶縁ガスケットを介して封口されている。更に、正極集電体や絶縁板を備えており、必要であれば負極集電体を備えている。
なお、本発明の電池は円筒形である必要はなく、角型、ボタン型などであっても良い。角型の場合には、正極板と負極板との間にセパレータが配置された積層構造を有する。また、密閉型でも開放型でもよい。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートからなる海成分中に、ポリプロピレンからなる島成分が64個存在する、複合紡糸法により紡糸した後に切断した海島型複合繊維(繊度:1.65dtex、繊維長:2mm)を用意した。次いで、この海島型複合繊維を、温度80℃、10mass%水酸化ナトリウム水溶液からなる浴中に60分間浸漬し、海島型複合繊維の海成分を除去して、島成分からなるポリプロピレン極細繊維(繊維径:2μm、融点:172℃、繊維長:2mm、フィブリル化していない、延伸されている、繊維の長さ方向に同じ直径を有する、繊維間の直径も同じ、横断面形状:円形)を製造した。
また、図6に示すようなオレンジ状中空断面を有する、ポリプロピレン成分と高密度ポリエチレン成分とからなる、繊度1.7dtex、繊維長5mmの分割型複合繊維(延伸されている、横断面が略台形状で、繊維径が4μmのポリプロピレン準極細異形繊維(融点:165℃)と、横断面が略台形状で、繊維径が4μmの高密度ポリエチレン準極細異形繊維(融点:135℃)をそれぞれ8本発生可能)を用意した。そして、この分割型複合繊維を水に分散させ、レファイナーにより分割して、ポリプロピレン準極細異形繊維、ポリエチレン準極細異形繊維及びポリプロピレン準極細異形繊維とポリエチレン準極細異形繊維同士が結合したパルプ状物とが混在した混合スラリーを形成した。
更に、芯成分がポリプロピレン(融点:168℃)からなり、鞘成分が低密度ポリエチレン(融点:115℃)からなる、複合ポリオレフィン系融着性繊維(繊維径:17μm、繊維長:5mm)を用意した。
次いで、ポリプロピレン極細繊維15mass%と、混合スラリー(繊維量)50mass%と、複合ポリオレフィン系融着性繊維35mass%とを混合分散させたスラリーを形成し、湿式抄造法により、いずれの繊維も均一に分散した湿式繊維ウエブを形成した。
次いで、この湿式繊維ウエブをコンベアの下方から吸引して支持体と密着させた状態で、温度125℃の熱風を10秒間通過させる熱処理を無圧下で実施し、複合ポリオレフィン系融着性繊維の鞘成分である低密度ポリエチレンのみを融着させて、目付33g/m2、厚さ0.13mmの融着不織布を形成した。
次いで、この融着不織布を2枚積層した積層体を、コンベアの下方から吸引して支持体と密着させた状態で、温度125℃の熱風を10秒間通過させる熱処理を無圧下で実施し、各融着不織布を構成する複合ポリオレフィン系融着性繊維の鞘成分である低密度ポリエチレンのみの融着により一体化して、目付66g/m2、厚さ0.24mmの2層構造融着不織布を形成した。そして、この2層構造融着不織布を温度60℃の発煙硫酸溶液(15%SO3溶液)中に2分間浸漬した後、十分に水洗し、乾燥してスルホン化処理を実施し、更にカレンダーによって厚さを調節して、目付66g/m2、厚さ0.18mmのセパレータ(厚さ保持率:89%、平均孔径:9μm)を製造した。
(実施例2)
実施例1と同じポリプロピレン極細繊維を用意した。また、図1に示すようなオレンジ状断面を有する、ポリプロピレン成分とエチレン−ビニルアルコール共重合成分とからなる、繊度2.4dtex、繊維長6mmの分割型複合繊維(延伸されている、横断面が三角形状で、繊維径が4.5μmのポリプロピレン準極細異形繊維(融点:165℃)と、横断面が三角形状で、繊維径が4.5μmのエチレン−ビニルアルコール共重合準極細異形繊維(融点:168℃)をそれぞれ8本発生可能)を用意した。そして、この分割型複合繊維を水に分散させ、パルパーにより分割して、ポリプロピレン準極細異形繊維、エチレン−ビニルアルコール共重合準極細異形繊維及びポリプロピレン準極細異形繊維とエチレン−ビニルアルコール共重合準極細異形繊維同士が結合したパルプ状物とが混在した混合スラリーを形成した。
更に、芯成分がポリプロピレン(融点:168℃)からなり、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点:135℃)からなる、引張り強さが6.5cN/dtexの複合高強度融着性繊維(繊維径:10μm、繊維長:5mm、ヤング率:45cN/dtex、熱収縮率:7%)を用意した。
次いで、ポリプロピレン極細繊維15mass%と、混合スラリー(繊維量)40mass%と、複合高強度融着性繊維45mass%とを混合分散させたスラリーを形成し、湿式抄造法により、いずれの繊維も均一に分散した湿式繊維ウエブを形成した。
次いで、この湿式繊維ウエブをコンベアの下方から吸引して支持体と密着させた状態で、温度145℃の熱風を10秒間通過させる熱処理を無圧下で実施し、複合高強度融着性繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンのみを融着させて、目付30g/m2、厚さ0.12mmの融着不織布を形成した。
次いで、この融着不織布を2枚積層した積層体を、コンベアの下方から吸引して支持体と密着させた状態で、温度145℃の熱風を10秒間通過させる熱処理を無圧下で実施し、各融着不織布を構成する複合高強度融着性繊維の鞘成分である低密度ポリエチレンのみの融着により一体化して、目付60g/m2、厚さ0.22mmの2層構造融着不織布を形成した。そして、この2層構造融着不織布をフッ素ガス(3vol%)、酸素ガス(5vol%)、二酸化硫黄ガス(5vol%)及び窒素ガス(87vol%)からなる混合ガスで満たされた容器内に供給し、2層構造融着不織布を前記混合ガスと120秒間(温度:20℃)接触させてフッ素ガス処理を実施し、更にカレンダーによって厚さを調節して、目付60g/m2、厚さ0.18mmのセパレータ(厚さ保持率:90%、孔径:9μm)を製造した。
(比較例1)
実施例1と同じ分割型複合繊維の混合スラリー(繊維量)80mass%と複合ポリオレフィン系融着性繊維を20mass%とを混合分散させたスラリーから湿式繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様に、融着不織布の形成、2層構造融着不織布の形成、スルホン化処理、及び厚さ調節を実施して、目付33g/m2、厚さ0.13mmのセパレータ(厚さ保持率:88%、孔径:10μm)を製造した。
(比較例2)
実施例1と同じポリプロピレン極細繊維20mass%と実施例2と同じ複合高強度融着性繊維80mass%とを混合分散させたスラリーから湿式繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例2と同様に融着不織布を形成した後、2層構造融着不織布(目付:66g/m2、厚さ:0.18mm)を形成した。そして、この2層構造融着不織布を実施例1と同様にスルホン化処理を実施した後に、厚さ調節を実施して、目付66g/m2、厚さ0.18mmのセパレータ(厚さ保持率:83%、孔径:9μm)を製造した。
(比較例3)
実施例1と同様のスラリーを用いて目付66g/m2の湿式繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と全く同様にして、目付66g/m2、厚さ0.25mmの融着不織布を形成した。
次いで、この融着不織布を実施例1と同様にスルホン化処理を実施し、更にカレンダーによって厚さを調節して、目付66g/m2、厚さ0.18mmのセパレータ(厚さ保持率:87%、孔径:7μm)を製造した。
(比較例4)
比較例1と同様のスラリーを用いて目付66g/m2の湿式繊維ウエブを形成したこと以外は、比較例1と全く同様にして、目付66g/m2、厚さ0.25mmの融着不織布を形成した。
次いで、この融着不織布を比較例1と同様にフッ素ガス処理を実施し、更にカレンダーによって厚さを調節して、目付66g/m2、厚さ0.18mmのセパレータ(厚さ保持率:86%、孔径:9μm)を製造した。
(比較例5)
比較例2と同様のスラリーを用いて目付66g/m2の湿式繊維ウエブを形成したこと以外は、比較例2と全く同様にして、目付66g/m2、厚さ0.24mmの融着不織布を形成した。
次いで、この融着不織布を実施例1と同様にスルホン化処理を実施し、更にカレンダーによって厚さを調節して、目付66g/m2、厚さ0.18mmのセパレータ(厚さ保持率:81%、孔径:9μm)を製造した。
(比較例6)
実施例1と同じ分割型複合繊維と複合ポリオレフィン系融着性繊維とを用意し、分割型複合繊維80mass%と、複合ポリオレフィン系融着性繊維20mass%とを混合分散させたスラリーを形成し、湿式抄造法により、いずれの繊維も均一に分散した湿式繊維ウエブを形成した。
次いで、実施例1と同様に熱処理を無圧下で実施し、複合ポリオレフィン系融着性繊維の鞘成分である低密度ポリエチレンのみを融着させて、目付66g/m2、厚さ0.25mmの融着不織布を形成した。
次いで、この融着不織布を100メッシュのネット上に載置し、直径0.18mm、ピッチ0.6mmで一列にノズルを配置したノズルプレートから圧力10MPaの水流を融着不織布に対して両面交互に2回づつ噴出して、分割型複合繊維を分割し、目付66g/m2、厚さ0.24mmの分割融着不織布を形成した。そして、この分割融着不織布を実施例1と同様にスルホン化処理を実施し、更にカレンダーによって厚さを調節して、目付66g/m2、厚さ0.18mmのセパレータ(厚さ保持率:83%、孔径:11μm)を製造した。
(短絡防止性の評価)
5cm角の発泡ニッケル基材を用いたぺースト式ニッケル正極と、5cm角のぺースト式水素吸蔵合金負極との間に、それぞれ各セパレータを挟み込み、5Nー水酸化カリウムおよび1Nー水酸化リチウムからなる電解液をセパレータに注入した後、充電電流率0.1Cで12時間充電と休放置12時間とからなるサイクルを、休放置後の電圧が1.0Vになるまで繰り返し、前記電圧となるまでのサイクル数(回)を測定した。なお、測定は温度60℃で行った。また、短絡防止性の評価は各セパレータとも10回行い、その算術平均値を算出した。この結果は表1に示す通りであった。
(電池内圧の測定)
まず、電極の集電体として、発泡ニッケル基材を用いたぺースト式ニッケル正極(41mm、70mm長)とぺースト式水素吸蔵合金負極(ミッシュメタル系合金、40mm、100mm長)とを作製した。
次いで、42mm巾、176mm長に裁断した各セパレータを、それぞれ正極と負極との間に挟み込み、渦巻き状に巻回して電極群を作製した。この電極群を外装缶に収納し、電解液として5Nー水酸化カリウムおよび1Nー水酸化リチウムを外装缶に注液し、封缶して円筒形ニッケル−水素電池(AA1600mAh)を作製した。
この円筒型ニッケル−水素電池を0.5C、温度20℃にて充電を行い、容量の150%までした時点での電池内圧を測定し、実施例1のセパレータを使用した円筒型ニッケル−水素電池の内圧を基準(100)とした時の百分率を算出した。この電池内圧の測定は各セパレータとも10個電池を作製し、その算術平均値を算出した。この結果は表1に示す通りであった。
(サイクル寿命の測定)
前記(電池内圧の測定)と同様にして製造した円筒型ニッケル−水素電池の活性化を行った後、充電率0.1Cで120%充電し、15分間休止し、終止電圧0.8Vになるまで放電率0.2Cで放電させることを1サイクルとする充放電を繰り返し、放電容量が初期容量の80%未満となるまでに要する充放電サイクル数を測定した。この充放電サイクル数の測定は各セパレータとも10個電池を作製し、その算術平均値を算出した。この結果は表1に示す通りであった。
表1から明らかなように、本発明のセパレータは短絡防止性、ガス透過性に優れ、寿命の長い電池を製造できるものであった。