本発明の電池用セパレータは、圧力によって潰れにくく、セパレータである不織布の空隙量を維持して、電解液を保持しやすいように、また、セパレータに機械的強度を付与できるように、引張り強さが4.5cN/dtex以上のポリオレフィン系高強度繊維(以下、単に「高強度繊維」と表記することがある)を含んでいる。この高強度繊維は引張り強さが強ければ強い程、繊維の剛性が高く、前記作用に優れているため、引張り強さは5.0cN/dtex以上であることが好ましく、5.5cN/dtex以上であることが更に好ましく、6.0cN/dtex以上であることが更に好ましい。引張り強さの上限は特に限定するものではないが、60cN/dtex程度が適当である。
本発明における「引張り強さ」は、JIS L 1015:2010、8.7.1(標準時試験)に則り、定速緊張形引張試験機を使用し、つかみ間隔20mm、引張り速度20mm/分の条件下での値をいう。
本発明の高強度繊維は前述のような引張り強さを有するが、耐電解液性に優れているように、ポリオレフィン系樹脂から構成されている。例えば、ポリエチレン系樹脂(例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン共重合体など)、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、プロピレン共重合体など)、ポリメチルペンテン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテン、メチルペンテン共重合体など)、或いはこれら樹脂のモノマーを共重合成分とする共重合体などを挙げることができる。
なお、高強度繊維は単一樹脂成分から構成されていても良いし、二種類以上の樹脂成分から構成されていても良い。本発明の不織布は後述のように、繊維の融着のみによって形態を保持しているのが好ましいが、単一樹脂成分の高強度繊維を融着させた場合、その繊維形態を維持することができず、圧力によって潰れやすくなるなど、高強度繊維の機能を充分に発揮できない傾向があるのに対して、融点の異なる二種類以上の樹脂成分からなり、低融点の樹脂成分(以下、「低融点成分」と表記することがある)が繊維表面の一部又は全部を占める高強度繊維であると、低融点成分が融着しても、その繊維形態を維持することができるため、圧力によって潰れにくく、また、高強度繊維とは別に融着繊維を含み、融着繊維で融着して不織布形態を維持する必要がなく、高強度繊維が不織布(セパレータ)全体に均一に分散した状態にあることができるため、不織布全体にわたって空隙量を均一に維持することができる。そのため、高温環境下で使用しても、寿命の長い電池を製造しやすいため、低融点成分が繊維表面の一部又は全部を占める高強度繊維が好適である。
高強度繊維が融点の異なる二種類の樹脂成分からなる場合、繊維表面における低融点成分の占める割合が高ければ高いほど、融着に関与することができる低融点成分が多く、潰れにくく、また、機械的強度の優れるセパレータであることができるため、低融点成分は繊維表面の50%以上を占めている(両端部を除く)ことが好ましく、70%以上を占めている(両端部を除く)ことがより好ましく、90%以上を占めている(両端部を除く)ことが更に好ましく、繊維表面全体を占めている(両端部を除く)ことが最も好ましい。そのため、高強度繊維の横断面における樹脂成分の配置状態としては、芯鞘型、偏芯型、海島型であることが好ましい。
なお、高強度繊維が融点の異なる二種類の樹脂成分からなる場合、低融点成分は他方の成分(以下、「高融点成分」と表記することがある)に影響を与えず、高融点成分によって繊維形態を維持することができるように、低融点成分は高融点成分よりも10℃以上融点が低いことが好ましく、20℃以上低いことがより好ましい。例えば、高融点成分と低融点成分の組合せとして、ポリメチルペンテン/ポリプロピレン、ポリメチルペンテン/プロピレン系共重合体、ポリメチルペンテン/ポリエチレン、ポリメチルペンテン/エチレン系共重合体、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/エチレン系共重合体、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン、などを挙げることができる。これらの中でも引張り強さが強く、剛性が高いため、不織布の空隙量を確保しやすい、ポリプロピレン/ポリエチレンからなる高強度繊維が好ましく、特に、ポリプロピレン/高密度ポリエチレンからなるのが好ましい。
このように、高強度繊維が融点の異なる二種類の樹脂成分からなる場合、高融点成分によって、圧力によっても変形しにくいとともに、低融点成分の融着によって、機械的強度の優れるセパレータであるように、低融点成分と高融点成分との体積比率は、50:50〜10:90であるのが好ましく、40:60〜20:80であるのがより好ましく、40:60〜30:70であるのが更に好ましい。
本発明の高強度繊維は、圧力によっても変形しにくく、不織布の空隙量を確保して、電解液の保持性により優れるセパレータであることができるように、ヤング率が30cN/dtex以上であることが好ましく、35cN/dtex以上であることがより好ましく、40cN/dtex以上であることが更に好ましい。なお、ヤング率の上限は特に限定するものではないが、110cN/dtex以下であることが好ましい。この「ヤング率」はJIS L 1015:2010、8.11項に規定されている方法により測定した初期引張抵抗度から算出した見掛ヤング率の値をいう。なお、初期引張抵抗度は定速緊張形試験機によって測定した値をいう。
本発明の高強度繊維の熱収縮率は10%以下であることが好ましい。このような熱収縮率であると、高強度繊維又は融着繊維を融着させて不織布を形成する際に収縮しにくいため、繊維の均一分散性が維持され、均一な空隙量であることができるためである。より好ましい熱収縮率は9%以下である。この熱収縮率はJIS L 1013:2010の8.18.2[フィラメント寸法変化率(B法)]に基づき、温度120℃のオーブン乾燥機を用い、30分間放置後に測定して算出される値をいう。
本発明の高強度繊維の繊維径は特に限定するものではないが、不織布が圧力によって潰れにくく、空隙量を維持できるように、5μm以上であるのが好ましく、6μm以上であるのがより好ましく、7μm以上であるのが更に好ましく、8μm以上であるのが更に好ましい。一方で、高強度繊維の繊維径が大き過ぎると、均一に分散しにくくなる傾向があり、電解液の分布にバラツキが生じやすくなる傾向があるため、30μm以下であるのが好ましく、22μm以下であるのがより好ましく、18μm以下であるのが更に好ましく、13μm以下であるのが更に好ましい。本発明における「繊維径」は、繊維を撮影した電子顕微鏡写真をもとに測定した、繊維の長さ方向に対して直交する方向における長さをいう。
本発明の高強度繊維の繊維長は特に限定するものではないが、繊維長が短いほど繊維の自由度が高く、均一に分散することができ、地合いがより優れ、結果として電解液を均一に保持できる不織布であることができるため、0.1〜25mm(より好ましくは1〜20mm、更に好ましくは3〜15mm、更に好ましくは5〜10mm)であるのが好ましい。
このような本発明で用いる高強度繊維は、例えば、特開平11−350283号公報又は特開2002−180330号公報に記載されているように、未延伸糸を加圧飽和水蒸気中で延伸することにより得ることができる。
なお、本発明のセパレータを構成する不織布においては、高強度繊維として、繊維径、繊維長、樹脂成分数、引張り強さ、樹脂組成、ヤング率、熱収縮率など1点以上が異なる2種類以上の高強度繊維を含んでいても良い。
このような高強度繊維は、不織布中、10mass%以上の量で含まれていれば前述のような効果を発揮しやすく、30mass%以上の量で含まれていることがより好ましく、50mass%以上の量で含まれていることが更に好ましく、60mass%以上の量で含まれていることが更に好ましく、70mass%以上の量で含まれていることが更に好ましい。なお、後述の通り、電解液の保持性に優れているように、極細繊維を含んでいるのが好ましいため、95mass%以下の量で含まれていることが好ましい。
本発明の不織布(セパレータ)は、上述のような高強度繊維に加えて、繊維径が4μm以下の極細繊維を更に含んでいるのが好ましい。このような極細繊維を含んでいることによって微細な空隙が形成されており、毛細管効果によって、電解液の保持力がより強いため、このセパレータを使用した電池を高温環境下で使用しても、電解液が揮発しにくく、寿命のより長い電池を製造できるためである。
この極細繊維は耐電解液性の樹脂から構成されているのが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)などのポリオレフィン系樹脂成分;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン612、ナイロン610、ナイロン10、或いはこれらナイロン成分を共重合成分とするナイロン系共重合体などのナイロン系樹脂成分を1種類以上含んでいるのが好ましい。これらの中でも、耐電解液性に優れているポリオレフィン系樹脂成分を含んでいるのが好ましく、ポリプロピレンを含んでいるのが特に好ましい。
極細繊維の繊維径は小さければ小さい程、微細な空隙を形成でき、電解液の保持性に優れているため、極細繊維の繊維径は3.5μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好まく、2.5μm以下であるのが更に好ましく、2μm以下であるのが更に好ましい。なお、極細繊維もある程度の強度を有するのが好ましいため、繊維径は0.01μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上であるのがより好ましい。
このような極細繊維は、例えば、2種類以上の樹脂成分からなり、外力によって分割可能な外力型分割繊維を分割することによって、又は2種類以上の樹脂成分からなり、化学的作用によって分割可能な化学型分割繊維を分割することによって得ることができる。前記外力型分割繊維を分割する外力としては、例えば、水流などの流体流、カレンダー、リファイナー、パルパー、ミキサー、ビーターなどを挙げることができる。他方、化学的処理としては、例えば、溶剤による樹脂成分の除去や、溶剤による樹脂成分の膨潤などがある。
本発明で使用することのできる外力型分割繊維としては、2種類以上の樹脂成分からなり、繊維横断面において、オレンジ状又は多層積層状に配置した繊維を使用できる。この外力型分割繊維は2種類以上の樹脂成分からなるが、好適であるポリオレフィン系極細繊維を発生できるように、1種類はポリオレフィン系樹脂成分からなるのが好ましい。特に、耐電解液性に優れるように、ポリオレフィン系樹脂成分のみからなる外力型分割繊維を使用するのが好ましい。例えば、ポリプロピレンと高密度ポリエチレンからなる外力型分割繊維を使用するのが好ましい。このような外力型分割繊維から発生したポリプロピレン極細繊維及び高密度ポリエチレン極細繊維は、比較的剛性が高く、圧力によって潰れにくく、不織布の空隙量を維持しやすいため好適である。
他方、化学型分割繊維としては、2種類以上の樹脂成分からなり、繊維横断面における配置状態が海島状の繊維を使用できる。このような海島状の繊維は混合紡糸法又は複合紡糸法によって製造することができるが、複合紡糸法によって製造した海島状の繊維の海成分を除去して発生させた島成分からなる個々の極細繊維は、長さ方向における繊維径がほぼ同じ、かつ複数の極細繊維間においても繊維径がほぼ同じで、大きさの揃った空隙を形成しやすく、電解液の分布が均一となりやすいため好適である。
この化学型分割繊維は2種類以上の樹脂成分からなるが、好適であるポリオレフィン系極細繊維を発生できるように、島成分はポリオレフィン系樹脂成分を含んでいるのが好ましい。特に、耐電解液性に優れるように、ポリオレフィン系樹脂成分のみを島成分とする化学型分割繊維を使用するのが好ましい。例えば、島成分がポリオレフィン系樹脂からなり、海成分がポリエステル又は共重合ポリエステルからなる化学型分割繊維はアルカリ溶液によって、海成分のみを除去して、島成分からなる極細繊維を発生させることができる。特に、島成分がポリプロピレンからなると、比較的剛性が高く、圧力によって潰れにくく、不織布の空隙量を維持しやすいため好適である。なお、島成分は1種類の樹脂成分から構成されている必要はなく、融点の相違する2種類以上の樹脂成分から構成されていても良い。融点の相違(好ましい融点差は10℃以上、より好ましくは20℃以上)する2種類以上の樹脂成分から構成されていることによって、低融点の樹脂成分を溶融させることによって、島成分からなる極細繊維を融着させ、極細繊維のずれを防止し、微細な空隙を維持して、電解液の保持性に優れているためである。例えば、島成分がポリプロピレンとポリエチレンから構成されているのが好ましい。
なお、極細繊維の束が存在すると、極細繊維によって微細な空隙を形成できなくなる傾向があるため、極細繊維は束の状態で存在せず、個々の極細繊維が分散した状態にあるのが好ましい。
また、極細繊維は圧力によって潰れにくく、不織布の空隙量を維持しやすいように、延伸されているのが好ましい。この「延伸されている」とは、繊維形成後に機械的に延伸されていることを意味し、メルトブロー法により形成された繊維は延伸されていない。なお、外力型分割繊維や化学型分割繊維が分割前の段階で機械的に延伸されていれば、これら分割繊維から発生した極細繊維も延伸されている。
本発明の極細繊維の繊維長は特に限定するものではないが、極細繊維が均一に分散して、均一かつ微細な空隙を形成できるように、0.5〜10mm長であるのが好ましく、1〜8mmであるのがより好ましく、2〜5mmであるのが更に好ましい。
このような極細繊維は微細な空隙を形成でき、毛細管効果によって、電解液の保持力を高めることができるように、不織布中、5mass%以上含まれているのが好ましく、10mass%以上含まれているのがより好ましい。一方で、極細繊維が多過ぎると、高強度繊維量が少なくなってしまうため、90mass%以下であるのが好ましく、70mass%以下であるのがより好ましく、50mass%以下であるのが更に好ましく、40mass%以下であるのが更に好ましく、30mass%以下であるのが更に好ましい。
本発明のセパレータを構成する不織布は上述のような高強度繊維を含み、好ましくは極細繊維を含むものであるが、高強度繊維が融着していないような場合には、不織布に形態安定性を付与するために、融着繊維を含み、融着しているのが好ましい。
この融着繊維は融着する際に、融着繊維以外の繊維(例えば、高強度繊維、極細繊維など)に悪影響を及ぼさないように、融着繊維以外の繊維を構成する樹脂成分のいずれの融点よりも10℃以上低い(より好ましくは20℃以上低い)融点を有する低融点成分を繊維表面に含んでいるのが好ましい。例えば、融着繊維以外の繊維として、ポリプロピレンからなる高強度繊維と、ポリプロピレン樹脂からなる極細繊維とを含んでいる場合には、融着繊維の低融点成分として、ポリエチレン系樹脂[例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン共重合体(エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)など]を含んでいるのが好ましい。
この融着繊維は低融点成分のみから構成されていても良いし、低融点成分に加えて低融点成分よりも融点の高い高融点成分を含んでいても良い。後者のように高融点成分を含んでいると、その繊維形態を維持し、圧力によってより潰れにくくなるため、好適である。この場合の横断面における配置状態としては、例えば、芯鞘型、偏芯型、海島型であることができる。また、高融点成分は低融点成分の融点よりも10℃以上高い樹脂からなるのが好ましく、20℃以上高い樹脂からなるのが好ましい。なお、融着繊維は極細繊維と同様の樹脂成分から構成することができ、耐電解液性に優れるポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好ましい。
この融着繊維の繊維径は特に限定するものではないが、不織布に形態安定性を付与できるように、5μm以上であるのが好ましく、6μm以上であるのがより好ましく、7μm以上であるのが更に好ましく、8μm以上であるのが更に好ましい。一方で、融着繊維の繊維径が大き過ぎると、均一に分散しにくくなる傾向があり、電解液の分布にバラツキが生じやすくなる傾向があるため、30μm以下であるのが好ましく、22μm以下であるのがより好ましく、18μm以下であるのが更に好ましく、13μm以下であるのが更に好ましい。
また、融着繊維の繊維長は特に限定するものではないが、繊維長が短いほど繊維の自由度が高く、均一に分散することができ、より地合いの優れ、結果として電解液が均一に分散できる不織布であることができるため、0.1〜25mm(より好ましくは1〜20mm、更に好ましくは3〜15mm、更に好ましくは5〜10mm)であるのが好ましい。
このような融着繊維を含む場合には、不織布に形態安定性を付与できるように、不織布中、10mass%以上含まれているのが好ましく、20mass%以上含まれているのがより好ましい。一方で、融着繊維が多過ぎると、高強度繊維量が少なくなってしまうため、90mass%以下であるのが好ましく、70mass%以下であるのがより好ましい。
本発明のセパレータは上述のような繊維を含む不織布からなるものであるが、不織布の147kPa荷重時の厚さが0.19mm以上と分厚く、しかも見掛密度が0.3g/cm3以下と繊維量が少なく、空隙の多い不織布からなるため、電解液の保持量の多いセパレータである。また、高強度繊維を含んでおり、圧力によって潰れにくいため、不織布の空隙量を維持することができる。そのため、本発明のセパレータを使用した電池を高温環境下で使用した場合、電解液が多少揮発し、電解液量が減ったとしても、従来よりも多くの電解液が保持されているため、寿命の長い電池を製造することができる。
本発明のセパレータの厚さは厚ければ厚い程、電解液の保持量が多くなるため、0.20mm以上であるのがより好ましい。一方で、厚くなり過ぎると、電池の高容量化に寄与できなかったり、電池が大型化してしまう傾向があるため、0.30mm以下であるのが好ましく、0.25mm以下であるのがより好ましく、0.24mm以下であるのが更に好ましく、0.23mm以下であるのが更に好ましい。なお、本発明において、セパレータの厚さを147kPa荷重時の厚さとしているのは、上述の通り、セパレータは高強度繊維を含んでおり、繊維が若干毛羽立っている場合があるため、その毛羽を抑える程度の圧力という意味で、147kPa荷重時の厚さで規定している。
また、本発明のセパレータは繊維量が少なく、空隙の多いセパレータであるように、見掛密度が0.3g/cm3以下であるが、空隙が多い程、多量の電解液を保持できるため、0.29g/cm3以下であるのが好ましく、0.28g/cm3以下であるのがより好ましく、0.27g/cm3以下であるのが更に好ましく、0.26g/cm3以下であるのが更に好ましい。一方で、繊維量が少なく、空隙が多過ぎると、形態安定性に劣る傾向があるため、0.18g/cm3以上であるのが好ましく、0.19g/cm3以上であるのがより好ましく、0.20g/cm3以上であるのが更に好ましい。この「見掛密度」は目付を前記147kPa荷重時の厚さで除して得られる計算値を意味する。なお、「目付」はJIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定法)に規定されている方法に基づいて得られる坪量を意味する。
本発明のセパレータは高強度繊維が融着しているのが好ましい。高強度繊維が融着していると、高強度繊維とは別に融着繊維を含み、融着繊維で形態を維持する必要がなく、高強度繊維がセパレータ全体に均一に分散した状態にあることができ、セパレータ全体にわたって均一に空隙量を維持しやすいため、高温環境下で使用しても、寿命の長い電池を製造しやすいためである。特に、高強度繊維が低融点成分と高融点成分とを含み、低融点成分のみが融着していると、高融点成分によって繊維形態を維持することができ、前記作用に優れているため好適である。
また、本発明のセパレータは、繊維の融着のみによって形態を保持しているのが好ましい。融着のみによって形態を保持していることによって地合いが優れ、空隙が均一であることによって、電解液が均一に分布することができる結果、内部抵抗を低くすることができるためである。例えば、融着以外に絡合によっても繊維同士が固定されていると、繊維同士を絡合させるための作用(例えば、水流などの流体流、ニードルなど)によって、繊維の再配列が生じ、空隙にバラツキが生じやすくなる傾向があるが、融着のみによって固定されていると、繊維の再配列が生じず、空隙が均一であるため、前記作用に優れている。
なお、不織布を製造する際に繊維同士が絡むことがある。例えば、繊維ウエブを形成した場合、繊維ウエブの形態をある程度保つことができるように、多かれ少なかれ繊維が絡んだ状態にある。しかしながら、この絡みは繊維の配置を乱すものではないため、絡合していないとみなす。このように、本発明における「繊維の融着のみ」とは、繊維ウエブを形成した後における繊維同士の固定が融着のみによってなされていることを意味する。なお、この繊維のみの融着は、高強度繊維、場合によって、極細繊維及び/又は融着繊維の融着によってなされていることができる。
また、本発明のセパレータは、1.23MPa荷重時の見掛密度が0.45g/cm3以下であるのが好ましい。つまり、1.23MPaという高荷重時においても、見掛密度が0.45g/cm3以下という、従来の電子機器の小型軽量化に対応した薄いセパレータと同程度の見掛密度(147kPa荷重時)であるため、圧力によって潰れにくく、セパレータの空隙量を維持することができるため、このセパレータを使用した電池を高温環境下で使用し、電解液量が減ったとしても、従来よりも多くの電解液が保持されており、寿命の長い電池を製造することができるため、好適である。この見掛密度が低ければ低い程、空隙を維持していることを意味しているため、見掛密度は0.44g/cm3以下であるのがより好ましく、0.43g/cm3以下であるのが更に好ましく、0.42g/cm3以下であるのが更に好ましい。一方、1.23MPa荷重時の見掛密度の下限は、147kPa荷重時の見掛密度である。なお、1.23MPa荷重時の見掛密度は、目付を1.23MPa荷重時の厚さで除した値である。また、1.23MPa荷重時の見掛密度を考慮しているのは、電池構成時にセパレータに対してかかる圧力よりも若干高い圧力であるためである。
本発明のセパレータの目付は、前述のような1.47kPa荷重時の厚さ及び1.47kPa荷重時の見掛密度を満たせば良く、特に限定するものではないが、30〜80g/m2であるのが好ましく、45〜65g/m2であるのがより好ましく、50〜60g/m2であるのが更に好ましい。
また、セパレータのたて方向における引張強さは、特に限定するものではないが、セパレータが破断することなく、電池を安定して製造することができるように、70N/50mm以上であるのが好ましく、100N/50mm以上であることが好ましい。なお、「引張り強さ」はJIS L 1913:2010の6.3.1で規定する標準時の引張り強さをいう。
本発明のセパレータはポリオレフィン系高強度繊維を含み、極細繊維及び/又は融着繊維を含む場合にも、いずれの繊維もポリオレフィン系繊維からなるのが好ましいため、電解液との親和性が悪い傾向がある。そのため、電解液との親和性を付与又は向上するように、酸素及び/又は硫黄含有官能基(例えば、スルホン酸基、スルホン酸塩基、スルホフルオライド基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基など)が導入されていたり、親水性モノマーがグラフト重合されていたり、界面活性剤が付与されていたり、或いは親水性樹脂が付与されているのが好ましい。
本発明のセパレータはニッケル−カドミウム電池又はニッケル−水素電池などのアルカリ電池用セパレータとして好適に使用でき、特に、高温環境下で使用しても寿命の長い電池を製造することができるため、車載用電池のセパレータとして好適に使用することができる。
本発明のセパレータを構成する不織布は、例えば次のようにして製造することができる。
まず、前述のような高強度繊維、好ましくは極細繊維、必要により融着繊維を用意する。
次いで、用意した繊維を用いて繊維ウエブを形成する。この繊維ウエブは、例えば、カード法、エアレイ法などの乾式法、又は湿式法により形成することができる。これらの中でも湿式法によれば、繊維が均一に分散した、空隙の均一な繊維ウエブを形成しやすいため好適である。この好適である湿式法の場合、例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、長網・円網コンビネーション方式、短網・円網コンビネーション方式などにより繊維ウエブを形成できる。
次いで、この繊維ウエブを構成する繊維同士を結合して、セパレータとして使用できる不織布を製造できる。好ましくは繊維ウエブを構成する繊維同士を融着のみによって結合する。このように融着のみによって結合すると、繊維ウエブの空隙が乱れないため、電解液が均一に分布し、内部抵抗の低い電池を製造できるセパレータを製造しやすい。この繊維ウエブを構成する繊維同士の融着は、無圧下で行なっても良いし、加圧下で行なっても良いし、或は無圧下で低融点成分を溶融させた後に加圧(直ちに加圧するのが好ましい)しても良いが、コンベア等の支持体の下方から吸引して繊維ウエブを支持体と密着させた状態で、繊維ウエブに対して熱風を吹きつけ、十分な量の熱風を通過させる無圧下での熱処理であると、本発明の、厚さが厚く、見掛密度が低い不織布(セパレータ)を製造しやすいため好適である。
本発明のセパレータである不織布は、1.23MPa荷重時の見掛密度が0.45g/cm3以下であるのが好ましいが、このような不織布は、例えば、コンベア等の支持体の下方から吸引して繊維ウエブを支持体と密着させた状態で、繊維ウエブに対して熱風を吹きつけ、十分な量の熱風を通過させる無圧下での熱処理を行なった後、カレンダー等によって加圧することによって製造しやすい。
本発明のセパレータは、ポリオレフィン系高強度繊維を含み、電解液との親和性が悪い傾向があるため、電解液の保持性を付与又は向上させるために、親水化処理を実施するのが好ましい。この親水化処理としては、例えば、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、放電処理、或は親水性樹脂付与処理などを挙げることができる。
スルホン化処理としては、特に限定するものではないが、例えば、発煙硫酸、硫酸、三酸化イオウ、クロロ硫酸、又は塩化スルフリルからなる溶液中に前述のような不織布を浸漬してスルホン酸基を導入する方法や、一酸化硫黄ガス、二酸化硫黄ガス、或いは三酸化硫黄ガスなどの存在下で放電を作用させて不織布にスルホン酸基を導入する方法等がある。
フッ素ガス処理についても、特に限定するものではないが、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)で希釈したフッ素ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス、及び二酸化硫黄ガスの中から選ばれる少なくとも1種類のガスとの混合ガスに、不織布を曝すことにより、不織布を構成する繊維表面に、スルホン酸基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホフルオライド基、或いは水酸基を導入して親水化することができる。なお、不織布に二酸化硫黄ガスをあらかじめ付着させた後に、フッ素ガスと接触させると、より効率的に恒久的な親水性を付与することができる。
ビニルモノマーのグラフト重合としては、ビニルモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、或いはスチレンを使用することができる。なお、スチレンをグラフト重合した場合には、スルホン化するのが好ましい。これらの中でも、アクリル酸は電解液との親和性に優れているため好適に使用できる。
これらビニルモノマーの重合方法としては、例えば、ビニルモノマーと重合開始剤を含む溶液中に不織布を浸漬して加熱する方法、不織布にビニルモノマーを塗布した後に放射線を照射する方法、不織布に放射線を照射した後にビニルモノマーと接触させる方法、増感剤を含むビニルモノマー溶液を不織布に含浸した後に紫外線を照射する方法、などがある。なお、ビニルモノマー溶液と不織布とを接触させる前に、紫外線照射、コロナ放電、プラズマ放電などにより、不織布表面を改質処理すると、ビニルモノマー溶液との親和性が高くなるため、効率的にグラフト重合できる。
界面活性剤処理としては、例えば、アニオン系界面活性剤(例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸塩、もしくはスルホコハク酸エステル塩など)、又はノニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、もしくはポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルなど)の溶液中に不織布を浸漬したり、この溶液を不織布に塗布又は散布して付着させることができる。
放電処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、沿面放電処理又は電子線処理などがある。これら放電処理の中でも、空気中の大気圧下で、それぞれが誘電体を担持する一対の電極間に、これら両方の誘電体と接触するように不織布を配置し、これら両電極間に交流電圧を印加し、不織布の内部空隙で放電を発生させる方法であると、不織布の外側だけではなく、不織布の内部を構成する繊維表面も親水化することができる。したがって、セパレータ内部における電解液の保持性にも優れている。
親水性樹脂付与処理としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、架橋可能なポリビニルアルコール、又はポリアクリル酸などの親水性樹脂を付着させることができる。これらの親水性樹脂は適当な溶媒に溶解又は分散させた後、この溶媒中に不織布を浸漬したり、この溶媒を不織布に塗布又は散布し、乾燥して付着させることができる。なお、親水性樹脂の付着量は、通気性を損なわないように、セパレータ全体の0.3〜5mass%であるのが好ましい。
この架橋可能なポリビニルアルコールとしては、例えば、水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールがあり、より具体的には、感光性基としてスチリルピリジニウム系のもの、スチリルキノリニウム系のもの、スチリルベンゾチアゾリウム系のもので置換したポリビニルアルコールがある。この架橋可能なポリビニルアルコールも他の親水性樹脂と同様にして不織布に付着させた後、光照射によって架橋させることができる。このような水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールは耐電解液性に優れ、しかもイオンとキレートを形成できる水酸基を多く含んでおり、放電時及び/又は充電時に、極板上に樹枝状の金属が析出する前のイオンとキレートを形成し、電極間の短絡を生じにくいので好適に使用できる。
本発明の電池は前述のようなセパレータを備えたものであり、例えば、アルカリマンガン電池、水銀電池、酸化銀電池、又は空気電池などの一次電池、或いはニッケル−カドミウム電池、銀−亜鉛電池、銀−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池又は鉛蓄電池などの二次電池であることができ、特にニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池であるのが好ましい。前述の通り、本発明のセパレータは高温環境下で使用しても電解液の保持性に優れるものであるため、本発明の電池は車載用電池として好適に使用することができる。勿論、高温環境下ではない、室温下等においても、寿命の長い電池である。
本発明の電池は、前述のような本発明のセパレータを使用したこと以外は、従来の電池と全く同様であることができる。
例えば、円筒型ニッケル−水素電池は、ニッケル正極板と水素吸蔵合金負極板とを前述のようなセパレータを介して渦巻き状に巻回した極板群をケースに挿入した構造を有する。前記ニッケル正極板としては、例えば、スポンジ状ニッケル多孔体に水酸化ニッケル固溶体粉末からなる活物質を充填したものを使用することができ、水素吸蔵合金負極板としては、例えば、ニッケルメッキ穿孔鋼板、発泡ニッケル、或いはニッケルネットに、AB5系(希土類系)合金、AB/A2B系(Ti/Zr系)合金、或いはAB2(Laves相)系合金を充填したものを使用することができる。なお、電解液として、例えば、水酸化カリウム/水酸化リチウムの二成分系のもの、或いは水酸化カリウム/水酸化ナトリウム/水酸化リチウムの三成分系のものを使用することができる。また、ケースは安全弁を備えた封口板により、絶縁ガスケットを介して封口されている。更に、正極集電体や絶縁板を備えており、必要であれば負極集電体を備えている。
本発明の電池は円筒形である必要はなく、角型、ボタン型などであっても良い。角型、ボタン型の場合には、正極板と負極板との間にセパレータが配置された積層構造を有する。また、密閉型でも開放型でもよい。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ホモポリプロピレン(融点:168℃)を芯成分とし、高密度ポリエチレン(融点:135℃)を鞘成分(100%繊維表面を占める)とする、引張り強さが6.5cN/dtexの芯鞘型高強度繊維(両端部を除いて高密度ポリエチレンが繊維表面を被覆、芯成分と鞘成分の体積比率=60:40、ヤング率:45cN/dtex、熱収縮率:7%(120℃)、繊維径:10μm、切断繊維長:5mm)を用意した。
また、ポリエチレンテレフタレートからなる海成分中に、ポリプロピレンからなる島成分が61個存在する、複合紡糸法により製造した海島型複合繊維(繊度:3.8dtex、切断繊維長:3mm)を、電解液であるアルカリ水溶液との親和性を高めるため陰イオン界面活性剤を添加した、10mass%水酸化ナトリウム水溶液からなる浴(温度:95℃)中に120分間浸漬し、海島型複合繊維の海成分であるポリエチレンテレフタレートを抽出除去して、ポリプロピレン極細繊維(繊維径:2μm、融点:172℃、切断繊維長:2mm、密度:0.91g/cm3、横断面形状:円形)を得た。このポリプロピレン極細繊維は、フィブリル化しておらず、延伸されており、しかも各繊維が繊維軸方向において実質的に同じ直径を有していた。
次いで、前記芯鞘型高強度繊維85mass%と、前記ポリプロピレン極細繊維15mass%とをスラリー中に分散させ、湿式法(水平長網方式)により、個々のポリプロピレン極細繊維及び芯鞘型高強度繊維が分散した繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブをコンベアで支持し、コンベアの下方から吸引して繊維ウエブをコンベアと密着させて搬送しながら、繊維ウエブに対して温度140℃の熱風を10秒間吹きつけ、十分な量の熱風を通過させる無圧下での熱処理を実施し、繊維ウエブの乾燥と同時に芯鞘型高強度繊維の高密度ポリエチレン成分のみを融着させて、融着繊維ウエブを形成した後、常温のカレンダーロールにより、厚さ(147kPa荷重時)を0.22mmに調整した。
次いで、前記融着繊維ウエブを温度60℃の発煙硫酸溶液(15%SO3溶液)中に2分間浸漬した後、十分に水洗し、乾燥し、スルホン酸基を導入し、繊維の融着のみによって形態を保持したセパレータを製造した。このセパレータの物性は表1に示す通りであった。
(実施例2)
芯鞘型高強度繊維90mass%と、ポリプロピレン極細繊維10mass%とをスラリー中に分散させ、湿式法(水平長網方式)により、個々のポリプロピレン極細繊維及び芯鞘型高強度繊維が分散した繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様に、融着繊維ウエブの形成、厚さ調整、及びスルホン酸基の導入を実施し、繊維の融着のみによって形態を保持したセパレータを製造した。このセパレータの物性は表1に示す通りであった。
(比較例1)
実施例1と同様に形成した融着繊維ウエブを、温度60℃の発煙硫酸溶液(15%SO3溶液)中に2分間浸漬した後、十分に水洗し、乾燥し、スルホン酸基を導入した。
次いで、常温のカレンダーロールにより厚さを調整し、繊維の融着のみによって形態を保持したセパレータを製造した。このセパレータの物性は表1に示す通りであった。
(比較例2)
ホモポリプロピレン(融点:168℃)を芯成分とし、高密度ポリエチレン(融点:135℃)を鞘成分(100%繊維表面を占める)とする、引張り強さが3.8cN/dtexの芯鞘型繊維(両端部を除いて高密度ポリエチレンが繊維表面を被覆、芯成分と鞘成分の体積比率=50:50、ヤング率:38cN/dtex、熱収縮率:7%(120℃)、繊維径:15μm、切断繊維長:5mm)を用意した。
次いで、前記芯鞘型繊維100mass%をスラリー中に分散させ、湿式法(水平長網方式)により、芯鞘型繊維が分散した繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブをコンベアで支持し、コンベアの下方から吸引して繊維ウエブをコンベアと密着させて搬送しながら、繊維ウエブに対して温度139℃の熱風を10秒間吹きつけ、十分な量の熱風を通過させる無圧下での熱処理を実施し、繊維ウエブの乾燥と同時に芯鞘型繊維の高密度ポリエチレン成分のみを融着させて、融着繊維ウエブを形成した後、常温のカレンダーロールにより、厚さ(147kPa荷重時)を0.20mmに調整した。
次いで、前記融着繊維ウエブを温度60℃の発煙硫酸溶液(15%SO3溶液)中に2分間浸漬した後、十分に水洗し、乾燥し、スルホン酸基を導入し、繊維の融着のみによって形態を保持したセパレータを製造した。このセパレータの物性は表1に示す通りであった。
(比較例3)
比較例2と同様にして形成した融着繊維ウエブを、温度60℃の発煙硫酸溶液(15%SO3溶液)中に2分間浸漬した後、十分に水洗し、乾燥して、スルホン酸基を導入した。
次いで、常温のカレンダーロールにより厚さを調整し、繊維の融着のみによって形態を保持したセパレータを製造した。このセパレータの物性は表1に示す通りであった。
(比較例4)
実施例2と同様にして形成した融着繊維ウエブを、温度60℃の発煙硫酸溶液(15%SO3溶液)中に2分間浸漬した後、十分に水洗し、乾燥し、スルホン酸基を導入した。
次いで、常温のカレンダーロールにより厚さを調整し、繊維の融着のみによって形態を保持したセパレータを製造した。このセパレータの物性は表1に示す通りであった。
(比較例5)
実施例2と同様にして形成した融着繊維ウエブを、温度60℃の発煙硫酸溶液(15%SO3溶液)中に2分間浸漬した後、十分に水洗し、乾燥し、スルホン酸基を導入した。
次いで、常温のカレンダーロールにより厚さを調整し、繊維の融着のみによって形態を保持したセパレータを製造した。このセパレータの物性は表1に示す通りであった。
(1.23MPa荷重時の保液率の測定)
(1)各セパレータから5cm角の試験片を採取し、それぞれ質量(A)を測定した。
(2)各試験片を電解液(1.3g/mLの水酸化カリウム水溶液)に浸漬し、試験片内の空隙を電解液で満たした。
(3)試験片の両面ともに、3枚のろ紙(型番:ADVANTEC−TYPE2)で試験片を挟み、1.23MPaの圧力で圧縮し、前記ろ紙で電解液を吸い取った。
(4)電解液を吸い取った試験片の質量(B)をそれぞれ測定し、次の式により保液率(R、単位:%)を算出した。この結果は表1に示す通りであった。
R=(B−A)/A
実施例2と比較例4、5との比較から、147kPa荷重時の厚さが0.19mm以上、かつ見掛密度が0.3g/cm3以下であることによって、荷重時の保液性に優れることがわかった。そのため、高温下においても電解液の保持性に優れ、結果として、寿命の長い電池を製造できるものであると推定できた。
また、比較例3の結果から、147kPa荷重時の厚さが0.19mm以上、かつ見掛密度が0.3g/cm3以下であったとしても、引張り強さが4.5cN/dtex以上のポリオレフィン系高強度繊維を含んでいないと、荷重時の保液性が悪く、寿命の長い電池を製造できないと推定できた。このことから、引張り強さが4.5cN/dtex以上のポリオレフィン系高強度繊維を含んでいる必要があることがわかった。
なお、比較例4のセパレータは物理短絡の発生頻度が高く、また、比較例5のセパレータは厚すぎるため、電池容量の低下につながるものであった。