本発明のアルカリ電池用セパレータは、繊維表面に融着成分を備えた複合融着繊維と、平均繊維径が4.0μm以下の極細繊維を含んでおり、複合融着繊維の平均繊維径(Dc)と極細繊維の平均繊維径(Df)との比(Dc/Df)が4.5以下と、比較的平均繊維径の近い複合融着繊維と極細繊維を含んでいるため、これら繊維が均一に分散した状態にあることができ、大きさの揃った空隙を形成しやすいため、均一に電解液を保持できる。つまり、複合融着繊維の平均繊維径(Dc)と極細繊維の平均繊維径(Df)との比(Dc/Df)が4.5を超えるような差があると、繊維の存在状態が不均一で、空隙の大きさにバラツキが生じるため、電解液の保持状態が異なり、電解液を均一に保持することができないが、本発明のように、比(Dc/Df)が4.5以下と、比較的平均繊維径の近い複合融着繊維と極細繊維を含んでいると、比較的繊維の存在状態が均一で、空隙の大きさも揃っており、電解液の保持状態が似通っているため、電解液を均一に保持できることを見出した。
このように、複合融着繊維の平均繊維径(Dc)と極細繊維の平均繊維径(Df)との比(Dc/Df)が小さければ小さい程、繊維の存在状態が均一になりやすいため、比(Dc/Df)は4.2以下であるのが好ましく、4.0以下であるのがより好ましく、3.8以下であるのが更に好ましい。理想的には、複合融着繊維の平均繊維径(Dc)と極細繊維の平均繊維径(Df)とが同じ1.0である。
なお、本発明における「繊維径」は、繊維の横断面形状が円形である場合にはその直径をいい、繊維の横断面形状が非円形である場合には、断面積と同じ面積を有する円の直径をいう。また、「平均繊維径」は100本の繊維径の算術平均値をいう。
このような本発明のセパレータを構成する複合融着繊維は、繊維表面に融着成分を備える繊維であり、この融着成分が融着していることによって不織布構造を維持している。この複合融着繊維は融着成分以外に融着成分の融着温度では融着しない非融着成分を含んでおり、融着成分が融着しても繊維形態を維持しているため、電解液の保持に関与できる繊維表面積が広い。
複合融着繊維の融着成分の繊維表面(両端部を除く)に占める割合は特に限定するものではないが、高ければ高い程、融着に関与できる融着成分が多く、セパレータの形態安定性に寄与できるため、融着成分は繊維表面(両端部を除く)の50%以上を占めているのが好ましく、70%以上を占めているのがより好ましく、90%以上を占めているのが更に好ましく、融着成分のみ(100)%が繊維表面(両端部を除く)を構成しているのが最も好ましい。
このような複合融着繊維の融着成分と非融着成分の横断面における配置状態としては、例えば、芯鞘状、偏芯状、海島状、サイドバイサイド状、オレンジ状、多重積層状を挙げることができ、特に、融着成分のみ(100)%が繊維表面(両端部を除く)を構成できる、芯鞘状、偏芯状、又は海島状であるのが好ましい。
なお、複合融着繊維における融着成分と非融着成分との体積比率は特に限定するものではないが、融着に関与できる融着成分が多く、セパレータの形態安定性に寄与でき、また、複合融着繊維自体の強度を維持できるように、(融着成分):(非融着成分)=15:85〜85:15であるのが好ましく、(融着成分):(非融着成分)=30:70〜70:30であるのがより好ましい。
また、融着成分は非融着成分よりも融点が低ければ良いが、融着成分のみを融着させて、複合融着繊維の繊維形態を維持しやすいように、融着成分の融点は非融着成分の融点よりも10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましく、30℃以上低いのが更に好ましい。
このような複合融着繊維はどのような樹脂成分から構成されていても良いが、耐アルカリ性に優れているように、ポリオレフィン系樹脂又はナイロン系樹脂から構成されているのが好ましい。例えば、複合融着繊維が融着成分と非融着成分の2種類の樹脂成分から構成されている場合、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリメチルペンテン、ポリプロピレン/ポリメチルペンテン、プロピレン系共重合体/ポリメチルペンテン、エチレン系共重合体/ポリメチルペンテン、エチレン系共重合体/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、などのポリオレフィン系複合融着繊維、ナイロン6/ナイロン66、ナイロン11/ナイロン66、ナイロン12/ナイロン66、ナイロン11/ナイロン6、ナイロン12/ナイロン6、ナイロン12/ナイロン11などのナイロン系複合融着繊維を挙げることができる。
特に、複合融着繊維として、引張り強さ5.0cN/dtex以上のポリオレフィン系高強度複合融着繊維(以下、単に「高強度複合融着繊維」と表記することがある)を含んでいると、耐アルカリ性に優れているばかりでなく、外力によって破断しにくいため、電池製造時に、極板によってセパレータが切断されたり、極板のバリがセパレータを突き抜けにくいため、短絡を効果的に防止できるセパレータであることができるため、好適である。また、融着成分が融着しても、その繊維形態を維持することができるため、圧力によって潰れにくく、また、高強度複合融着繊維とは別に引張り強さが5.0cN/dtex以上であるような高強度繊維を併用する必要がなく、高強度複合融着繊維がセパレータ全体に均一に分散した状態にあることができるため、セパレータ全体に均一に電解液を保持しやすい。
この高強度複合融着繊維は引張り強さが強ければ強い程、繊維の剛性が高く、前記作用に優れているため、引張り強さは5.5cN/dtex以上であることがより好ましく、6.0cN/dtex以上であることが更に好ましい。引張り強さの上限は特に限定するものではないが、60cN/dtex程度が適当である。この「引張り強さ」は、JIS L 1015:2010、8.7.1(標準時試験)に則り、定速緊張形引張試験機を使用し、つかみ間隔20mm、引張り速度20mm/分の条件下での値をいう。
このような高強度複合融着繊維は前述のようなポリオレフィン系樹脂成分から構成することができるが、比較的剛性が高く、圧力によって潰れにくく、セパレータの空隙を維持しやすいポリプロピレンを含んでいるのが好ましい。また、耐アルカリ性に優れ、ポリプロピレンを融着させることなく融着しやすいポリエチレンを含んでいるのが好ましい。したがって、高強度複合融着繊維はポリエチレン/ポリプロプレンから構成されているのが好ましい。
この高強度複合融着繊維を構成できるポリプロプレンはプロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンとα−オレフィン(例えばエチレン、ブテン−1など)との共重合体であることができる。より具体的には、結晶性を有するアイソタクチックプロピレン単独重合体、エチレン単位の含有量の少ないエチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン単独重合体からなるホモ部とエチレン単位の含有量の比較的多いエチレン−プロピレンランダム共重合体からなる共重合部とから構成されたプロピレンブロック共重合体、さらに前記プロピレンブロック共重合体における各ホモ部または共重合部が、さらにブテン−1などのα−オレフィンを共重合したものからなる結晶性プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体などを挙げることができる。これらの中でもアイソタクチックポリプロピレン単独重合体が強度の点から好適であり、特に、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が90%以上、分子量分布の指標であるQ値(重量平均分子量/数平均分子量=Mw/Mn比)が6以下、メルトインデックスMI(温度230℃、荷重2.16kg)が3〜50g/10分であるのが好ましい。このようなポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ型触媒、あるいはメタロセン系触媒などを用いて、プロピレンを単独重合又はプロピレンと他のα−オレフィンとを共重合させて得ることができる。
ポリオレフィン系高強度複合融着繊維の一方の成分であるポリエチレンは、例えば、高密度、中密度、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体などを挙げることができる。これらの中でも、高密度ポリエチレンはある程度硬く、張りや腰のあるセパレータとすることができ、取り扱い性に優れるセパレータとすることができるため好適である。
このような本発明で用いることのできる高強度複合融着繊維は、例えば、特開平11−350283号公報又は特開2002−180330号公報に記載されているように、未延伸糸を加圧飽和水蒸気中で延伸することにより得ることができる。
本発明の複合融着繊維の平均繊維径は後述の極細繊維の平均繊維径の4.5倍以下である限り、特に限定されるものではない。
また、複合融着繊維の繊維長は特に限定するものではないが、複合融着繊維が均一に分散し、大きさの揃った空隙を形成して、均一に電解液を保持できるように、0.1〜20mmであるのが好ましく、0.5〜15mmであるのがより好ましく、1〜10mmであるのが更に好ましい。なお、繊維長はJIS L 1015(化学繊維ステープル試験法)B法(補正ステープルダイヤグラム法)により得られる長さをいう。
なお、本発明のセパレータにおいては、複合融着繊維として、繊維径、繊維長、樹脂成分数、樹脂成分、引張り強さ、など1点以上が異なる2種類以上の複合融着繊維を含んでいても良い。
このような複合融着繊維は融着していることによって、不織布構造を維持できるように、セパレータ中、50mass%以上の量で含まれているのが好ましく、60mass%以上の量で含まれていることがより好ましく、70mass%以上の量で含まれていることが更に好ましい。一方で、後述の通り、電解液を均一に保持できるように、極細繊維を含んでいるため、95mass%以下の量で含まれていることが好ましく、90mass%以下の量で含まれていることがより好ましく、85mass%以下の量で含まれていることが更に好ましい。
本発明のセパレータは上述のような複合融着繊維に加えて、平均繊維径が4.0μm以下、かつ複合融着繊維の平均繊維径(Dc)と極細繊維の平均繊維径(Df)との比(Dc/Df)が4.5以下である条件を満たす極細繊維を含んでいることによって、電解液を均一に、しかも電解液の保持性に優れるセパレータである。つまり、極細繊維は複合融着繊維と比較的平均繊維径が近く、これら繊維が均一に分散した状態にあることができ、大きさの揃った空隙を形成しやすいため、均一に電解液を保持できる。また、極細繊維の平均繊維径が4.0μm以下と細く、繊維表面積が広い結果、後述のようにセパレータの比表面積が0.80m2/g以上と広いため、電解液と接触できる面積が広く、電解液の保持性に優れている。
この極細繊維は平均繊維径が小さければ小さい程、セパレータの比表面積が大きくなり、電解液の保持性に優れているため、3.0μm以下であるのが好ましく、2.1μm以下であるのがより好ましい。極細繊維の平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、機械的強度に優れ、短絡しにくいように、0.01μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上であるのがより好ましい。
なお、各極細繊維の繊維径がほぼ同じであるのが好ましい。各極細繊維の繊維径がほぼ同じであると、大きさの揃った空隙を形成しやすく、電解液の分布が均一になりやすいためである。具体的には、極細繊維の繊維径分布の標準偏差値(σ)を、極細繊維の平均繊維径(d)で除した値(σ/d)が0.2以下(好ましくは0.18以下)であるのが好ましい。なお、極細繊維の繊維径が全て同じである場合には標準偏差値(σ)が0になるため、前記値(σ/d)の下限値は0である。なお、極細繊維の標準偏差値(σ)は、計測したn本(100本)のそれぞれの極細繊維の繊維径(X)から、次の式によって算出した値である。
標準偏差={(nΣX2−(ΣX)2)/n(n−1)}1/2
このような極細繊維は、例えば、2種類以上の樹脂成分からなり、外力によって分割可能な外力型分割繊維を分割することによって、又は2種類以上の樹脂成分からなり、化学的作用によって分割可能な化学型分割繊維を分割することによって得ることができる。前記外力型分割繊維を分割できる外力としては、例えば、水流などの流体流、カレンダー、リファイナー、パルパー、ミキサー、ビーターなどを挙げることができる。他方、化学的処理としては、例えば、溶剤による樹脂成分の除去や、溶剤による樹脂成分の膨潤などがある。これらの中でも、化学型分割繊維を分割して得た極細繊維は、長さ方向における繊維径がほぼ同じ、かつ複数の極細繊維間においても繊維径がほぼ同じで、セパレータ中において均一に分散して、大きさの揃った空隙を形成し、電解液の分布が均一となりやすいため好適である。
好適である化学型分割繊維としては、2種類以上の樹脂成分からなり、繊維横断面における配置状態が海島状の繊維を使用できる。このような海島状の繊維は混合紡糸法又は複合紡糸法によって製造することができるが、複合紡糸法によって製造した海島状の繊維の海成分を除去して発生させた島成分からなる個々の極細繊維は、長さ方向における繊維径がほぼ同じ、かつ複数の極細繊維間においても繊維径がほぼ同じで、大きさの揃った空隙を形成しやすく、電解液の分布が均一となりやすいため好適である。後述の通り、極細繊維はポリオレフィン系樹脂及び/又はナイロン樹脂を含んでいるのが好ましいため、化学型分割繊維の島成分はポリオレフィン系樹脂及び/又はナイロン樹脂を含んでいるのが好ましい。特に、耐アルカリ性に優れるように、ポリオレフィン系樹脂成分のみからなる島成分を有する化学型分割繊維が好ましい。
この極細繊維を構成する樹脂成分は特に限定するものではないが、耐電解液性に優れているように、耐アルカリ性の樹脂成分から構成されているのが好ましく、複合融着繊維を構成できる樹脂成分と同様の樹脂成分から構成されているのが好ましい。つまり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂成分、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などのナイロン系樹脂成分の、1種類又は2種類以上から構成されているのが好ましい。これらの中でも、耐アルカリ性に優れているポリオレフィン系樹脂を含んでいるのが好ましく、特に、ポリプロピレンは比較的剛性が高く、圧力によって潰れにくく、セパレータの空隙を維持しやすいため好適である。
なお、極細繊維は1種類の樹脂成分から構成されている必要はなく、融点の相違する2種類以上の樹脂成分から構成されていても良い。融点の相違(好ましい融点差は10℃以上、より好ましくは20℃以上)する2種類以上の樹脂成分から構成された極細繊維が、低融点の樹脂成分によって融着していると、極細繊維のずれを防止し、極細繊維の分散状態を維持でき、電解液の均一保持性に優れているため好適である。例えば、極細繊維はポリプロピレンとポリエチレンから構成することができる。
なお、極細繊維は機械的強度に優れ、圧力によっても潰れにくく、セパレータの空隙を維持しやすいように、延伸した状態にあるのが好ましい。この「延伸した状態」とは、繊維形成後に機械的に延伸されていることを意味し、メルトブロー法により形成された繊維は加熱エアによって延伸されているものの、機械的に延伸されていないため、延伸した状態にはない。なお、外力型分割繊維や化学型分割繊維が分割前の段階で機械的に延伸されていれば、これら分割繊維から発生した極細繊維は延伸した状態にある。
本発明の極細繊維の繊維長は特に限定するものではないが、極細繊維が均一に分散して、大きさの揃った空隙を形成できるように、0.1〜10mm長であるのが好ましく、0.5〜8mmであるのがより好ましく、1〜5mmであるのが更に好ましい。
なお、極細繊維の束が存在すると、極細繊維が均一に分散することができず、大きさの揃った空隙を形成できなくなる傾向があるため、極細繊維は束の状態で存在せず、個々の極細繊維が分散した状態にあるのが好ましい。
このような極細繊維は均一に分散し、大きさの揃った空隙を形成できるように、また、後述のようにセパレータの比表面積が0.80m2/g以上となるように、セパレータ中、5mass%以上含まれているのが好ましく、10mass%以上含まれているのがより好ましく、15mass%以上含まれているのが更に好ましい。一方で、極細繊維が多過ぎると、複合融着繊維の融着によって不織布構造を維持するのが困難になる傾向があるため、50mass%以下であるのが好ましく、40mass%以下であるのがより好ましく、30mass%以下であるのが更に好ましい。
本発明のセパレータは基本的に、上述のような複合融着繊維と極細繊維とからなるが、これら繊維以外の繊維を含むことができる。例えば、平均繊維径が4.0μmを超えるものの、融着に関与しない非融着繊維、平均繊維径が4.0μmを超え、融着に関与するものの、単一樹脂成分からなる単一融着繊維を含むことができる。なお、非融着繊維、単一融着繊維は均一に分散して、大きさの揃った空隙を形成できるように、複合融着繊維と同様に、平均繊維径が極細繊維の平均繊維径の4.5倍以下であるのが好ましい。また、非融着繊維は複合融着繊維の融着成分の融点よりも10℃以上高い融点を有する樹脂成分を繊維表面に備えているのが好ましく、単一融着繊維は複合融着繊維の融着成分の融点±10℃未満の融点を有する樹脂成分からなるのが好ましく、非融着繊維、単一融着繊維のいずれも、複合融着繊維と同様のポリオレフィン系樹脂又はナイロン系樹脂から構成されているのが好ましい。なお、非融着繊維は引張り強さが5.0cN/dtex以上のポリオレフィン系樹脂成分から構成することができる。更に、非融着繊維、単一融着繊維のいずれも、均一に分散できるように、繊維長は0.1〜20mmであるのが好ましい。なお、これら非融着繊維及び/又は単一融着繊維は複合融着繊維と極細繊維の作用を損なわないように、セパレータ中、含まれていても最大45mass%である。
本発明のセパレータは上述のような複合融着繊維と極細繊維を含み、複合融着繊維が融着した不織布構造を有するものである。セパレータが不織布構造であることによって、複合融着繊維と極細繊維とが均一に分散した状態にあることができ、大きさの揃った空隙を有するため、電解液を均一に保持することができる。
本発明のセパレータは複合融着繊維が融着しており、複合融着繊維とは別に融着繊維を含んでいる必要がないため、複合融着繊維がセパレータ全体に均一に分散した状態にあり、大きさの揃った空隙を有することができ、セパレータ全体にわたって均一に電解液を保持することができる。
また、本発明のセパレータは比表面積が0.80m2/g以上と広く、電解液と接触できる繊維の表面積が広いため、電解液の保持性に優れている。この比表面積が広ければ広いほど、電解液と接触できる繊維の表面積が広く、電解液の保持性に優れているため、比表面積は0.84m2/g以上であるのが好ましく、0.88m2/g以上であるのがより好ましい。なお、比表面積は広ければ広いほど、電解液の保持性に優れているため、上限は特に限定するものではない。本発明における「比表面積」はBET法により測定した値をいう。
なお、本発明のセパレータ構成繊維の平均繊維径は4.0μm以下であるのが好ましい。つまり、複合融着繊維、極細繊維、場合によって含む非融着繊維、単一融着繊維の平均繊維径が4.0μm以下であるのが好ましい。セパレータ構成繊維の平均繊維径が4.0μm以下であると、これら繊維が均一に分散し、最大孔径が小さくなり、電解液の保持性及び微小短絡防止性に優れているためである。セパレータ構成繊維のより好ましい平均繊維径は3.9μm以下であり、更に好ましい平均繊維径は3.8μm以下である。なお、下限は特に限定するものではないが、機械的強度に優れ、短絡しにくいように、0.05μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上であるのがより好ましい。
このセパレータ構成繊維の「平均繊維径(D
AV)」は、次の式から算出される値をいう。
ここで、X
iは各繊維のセパレータにおける存在百分率(単位:%)、D
iは各繊維の平均繊維径(単位:μm)、ρ
iは各繊維を構成する樹脂の比重、ρ
AVは次の式から算出される、繊維を構成する各樹脂の平均比重を、それぞれ意味する。
例えば、平均繊維径がD
A(μm)で、樹脂比重がρ
Aの複合融着繊維をX
Amass%と、平均繊維径がD
B(μm)で、樹脂比重がρ
Bの極細繊維をX
Bmass%と、平均繊維径がD
C(μm)で、樹脂比重がρ
Cの非融着繊維をX
Cmass%とが、セパレータ中に存在している場合、セパレータ構成繊維の平均繊維径(D
AV)は、次の式から算出される値をいう。
なお、平均比重であるρ
AVは次の式から算出される値である。
また、本発明のセパレータは最大孔径が10.0μm以下であるのが好ましい。セパレータ構成繊維が均一に分散している結果として、地合いが均一で、セパレータが極板へ強く圧迫されても、電極活物質粉がセパレータの内部空隙へ侵入しにくく、結果として短絡しにくいためである。より好ましい最大孔径は9.5μm以下である。最大孔径が小さければ小さい程、前記効果に優れるため、最大孔径の下限は特に限定するものではない。この「最大孔径」は、ポロメータ〔Polometer,コールター(Coulter)社製〕を用いてバブルポイント法により測定される値をいう。
更に、本発明のセパレータは孔径が揃っており、電解液を均一に保持できるように、最大孔径(Pmax)と平均孔径(Pav)の比(Pmax/Pav)が1.60以下であるのが好ましく、1.50以下であるのがより好ましい。比(Pmax/Pav)の下限は同じ孔径のみからなる1.00である。この比(Pmax/Pav)は最大孔径(Pmax)を平均孔径(Pav)で除した値であるが、平均孔径は、ポロメータ(Polometer、コールター(Coulter)社製)を用いてバブルポイント法により測定される平均流量孔径をいう。
本発明のセパレータは複合融着繊維と極細繊維を含み、比表面積が0.80m2/g以上のものであるが、セパレータの目付が低い場合に特に優れた効果を発揮する。つまり、セパレータの目付が低いということは、セパレータ構成繊維の絶対量が少ないことを意味するため、目付が低く、薄いにも関わらず、比表面積が0.80m2/g以上と、繊維表面積が広く、電解液の保持性に優れていることから、アルカリ電池の高容量化に寄与できる。より具体的には、セパレータの目付が50g/m2以下、より好ましくは45g/m2以下、更に好ましくは40g/m2以下と目付が低くても、比表面積が0.80m2/g以上で、アルカリ電池の高容量化に寄与できる。なお、目付の下限は特に限定するものではないが、機械的強度が優れているように、10g/m2以上であるのが好ましい。この「目付」はJIS P 8124:2011(紙及び板紙−坪量測定方法)に規定する方法に基いて得られる坪量をいう。
同様に、セパレータの厚さはアルカリ電池の高容量化に寄与できるように、100μm以下であるのが好ましく、90μm以下であるのがより好ましく、80μm以下であるのが更に好ましい。厚さの下限は比表面積が0.80m2/g以上である限り、特に限定するものではない。本発明の「厚さ」は4N荷重時の外側マイクロメーターによる測定値をいう。
本発明のセパレータは複合融着繊維及び極細繊維が均一に分散し、地合いが優れており、短絡が生じにくく、電解液を均一に保持できるものであるが、地合いの程度を示す地合指数が0.10以下であるのが好ましく、0.09以下であるのがより好ましく、0.07以下であるのが更に好ましい。この地合指数は次に記載する測定方法から明らかなように、この値が小さければ小さい程、繊維が均一に分散しており、地合いが優れていることを意味する。この「地合指数」は、特開2001−50902号公報に記載されている方法、すなわち、次のようにして得られる値をいう。
(1)光源からセパレータに対して光を照射し、照射された光のうち、セパレータの所定領域において反射された反射光を受光素子によって受光して輝度情報を取得する。
(2)セパレータの所定領域を画像サイズ3mm角、6mm角、12mm角、及び24mm角に等分割して、4つの分割パターンを取得する。
(3)得られた各分割パターン毎に等分割された各区画の輝度値を輝度情報に基づいて算出する。
(4)各区画の輝度値に基づいて、各分割パターン毎の輝度平均(X)を算出する。
(5)各分割パターン毎の標準偏差(σ)を求める。
(6)各分割パターン毎の変動係数(CV)を次の式により算出する。
変動係数(CV)=(σ/X)×100
ここで、σは各分割パターン毎の標準偏差を示し、Xは各分割パターン毎の輝度平均を示す。
(7)各画像サイズの対数をX座標、当該画像サイズに対応する変動係数をY座標とした結果得られる座標群を、最小二乗法により一次直線に回帰させ、その傾きを算出し、この傾きの絶対値を地合指数とする。
また、本発明のセパレータは、繊維の融着のみ(特には、複合融着繊維の融着のみ)によって形態を保持しているのが好ましい。繊維の融着のみによって形態を保持していることによって繊維が均一に分散し、大きさの揃った空隙であることによって、電解液が均一に分布することができ、内部抵抗を低くすることができるためである。例えば、繊維の融着以外に、繊維同士が絡合していると、繊維同士を絡合させるための作用(例えば、水流などの流体流、ニードルなど)によって、繊維の再配列が生じ、空隙のバラツキが生じやすくなる傾向があるが、繊維の融着のみによって形態を保持していると、繊維の再配列が生じず、空隙の大きさが揃っているため、前記作用に優れている。
なお、セパレータを製造する際に繊維同士が絡むことがある。例えば、繊維ウエブを形成した場合、繊維ウエブは形態をある程度保つことができるため、多かれ少なかれ繊維が絡んだ状態にある。しかしながら、この絡みは繊維の配置を乱すものではないため、絡合とはみなさない。このように、「繊維の融着のみ」とは、繊維ウエブを形成した後における繊維同士の結合が融着のみによってなされていることを意味する。
本発明のセパレータは耐アルカリ性に優れているように、複合融着繊維、極細繊維ともに、ポリオレフィン系樹脂を繊維表面に含んでいるのが好ましいが、ポリオレフィン系樹脂は電解液との親和性が悪い傾向があるため、電解液との親和性に優れているように、酸素及び/又は硫黄含有官能基(例えば、スルホン酸基、スルホン酸塩基、スルホフルオライド基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基など)が導入されていたり、親水性モノマーがグラフト重合されていたり、界面活性剤が付与されていたり、或いは親水性樹脂が付与されているのが好ましい。
本発明のセパレータは電解液を均一に保持することができ、また、電解液の保持性に優れるものであるため、例えば、アルカリマンガン電池、水銀電池、酸化銀電池、又は空気亜鉛電池などの一次電池、或いはニッケル−カドミウム電池、銀−亜鉛電池、銀−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池などのアルカリ二次電池のセパレータとして使用でき、特にニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池のセパレータとして使用できる。なお、アルカリ電池は円筒形、角型、ボタン型であることができる。また、密閉型でも開放型でもよい。
本発明のセパレータは、例えば次のようにして製造することができる。
まず、前述のような複合融着繊維、極細繊維を用意する。この複合融着繊維と極細繊維は、前述の通り、繊維が均一に分散できるように、複合融着繊維の平均繊維径(Dc)と極細繊維の平均繊維径(Df)との比(Dc/Df)が4.5以下の関係を満たす組み合わせで用意する。なお、複合融着繊維として、引張り強さ5.0cN/dtex以上のポリオレフィン系高強度複合融着繊維を用意するのが好ましい。
次いで、用意した繊維を用いて繊維ウエブを形成する。この繊維ウエブは、例えば、カード法、エアレイ法などの乾式法、又は湿式法により形成することができる。これらの中でも湿式法によれば、繊維が均一に分散し、大きさの揃った空隙を有する繊維ウエブを形成しやすいため好適である。この好適である湿式法の場合、例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、長網・円網コンビネーション方式、短網・円網コンビネーション方式などにより繊維ウエブを形成できる。
なお、複合融着繊維と極細繊維の配合質量比率を、前述の通り、(複合融着繊維):(極細繊維)=50〜95:50〜5とし、セパレータ構成繊維の平均繊維径が4.0μm以下となるように配合し、繊維を均一に分散させ、孔径の小さいセパレータを製造しやすくするのが好ましい。
次いで、この繊維ウエブを構成する複合融着繊維の融着成分を融着させて、不織布、つまり本発明のセパレータを製造できる。好ましくは繊維ウエブに対して絡合作用を作用させることなく、複合融着繊維の融着のみを実施する。このように繊維の融着のみを実施すると、繊維の再配列が生じず、繊維ウエブの大きさの揃った空隙を維持できるため、電解液が均一に保持でき、また、電解液の保持性に優れる不織布(セパレータ)を製造しやすい。
この繊維ウエブの複合融着繊維の融着成分による融着は、無圧下で行なっても良いし、加圧下で行なっても良いし、或は無圧下で融着成分を溶融させた後に加圧(直ちに加圧するのが好ましい)しても良い。これらの中でも、コンベア等の多孔性支持体の下方から吸引して、繊維ウエブを多孔性支持体と密着させた状態で、繊維ウエブに対して熱風を吹きつけ、充分な量の熱風を通過させる無圧下での熱処理により融着させると、複合融着繊維の融着成分のみを融着に関与させることができ、不織布(セパレータ)の比表面積を0.80m2/g以上としやすいため、好適である。
本発明の不織布構成繊維の繊維表面はポリオレフィン系樹脂成分を含んでいるのが好ましく、電解液との親和性が悪い傾向があるため、電解液の保持性を付与又は向上させるために、親水化処理を実施するのが好ましい。この親水化処理としては、例えば、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、放電処理、或は親水性樹脂付与処理などを挙げることができる。
より具体的には、スルホン化処理として、発煙硫酸、硫酸、三酸化イオウ、クロロ硫酸、又は塩化スルフリルからなる溶液中に、前述のような不織布を浸漬してスルホン酸基を導入する方法や、一酸化硫黄ガス、二酸化硫黄ガス、或いは三酸化硫黄ガスなどの存在下で放電を作用させて不織布にスルホン酸基を導入し、セパレータとする方法を例示できる。
フッ素ガス処理としては、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)で希釈したフッ素ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス、及び二酸化硫黄ガスの中から選ばれる少なくとも1種類のガスとの混合ガスに、不織布を曝すことにより、不織布を構成する繊維表面に、スルホン酸基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホフルオライド基、或いは水酸基を導入して親水化することができる。なお、不織布に二酸化硫黄ガスをあらかじめ付着させた後に、フッ素ガスと接触させると、より効率的に恒久的な親水性を付与することができる。
ビニルモノマーのグラフト重合としては、ビニルモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、或いはスチレンを使用することができる。なお、スチレンをグラフト重合した場合には、スルホン化するのが好ましい。これらの中でも、アクリル酸は電解液との親和性に優れているため好適に使用できる。
これらビニルモノマーの重合方法としては、例えば、ビニルモノマーと重合開始剤を含む溶液中に不織布を浸漬して加熱する方法、不織布にビニルモノマーを塗布した後に放射線を照射する方法、不織布に放射線を照射した後にビニルモノマーと接触させる方法、増感剤を含むビニルモノマー溶液を不織布に含浸した後に紫外線を照射する方法、などがある。なお、ビニルモノマー溶液と不織布とを接触させる前に、紫外線照射、コロナ放電、プラズマ放電などにより、不織布表面を改質処理すると、ビニルモノマー溶液との親和性が高くなるため、効率的にグラフト重合できる。
界面活性剤処理としては、例えば、アニオン系界面活性剤(例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸塩、もしくはスルホコハク酸エステル塩など)、又はノニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、もしくはポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルなど)の溶液中に不織布を浸漬したり、この溶液を不織布に塗布又は散布して付着させることができる。
放電処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、沿面放電処理又は電子線処理などがある。これら放電処理の中でも、空気中の大気圧下で、それぞれが誘電体を担持する一対の電極間に、これら両方の誘電体と接触するように不織布を配置し、これら両電極間に交流電圧を印加し、不織布の内部空隙で放電を発生させる方法であると、不織布の外側だけではなく、不織布の内部を構成する繊維表面も親水化することができる。したがって、セパレータ内部における電解液の保持性にも優れている。
親水性樹脂付与処理としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、架橋可能なポリビニルアルコール、又はポリアクリル酸などの親水性樹脂を付着させることができる。これらの親水性樹脂は適当な溶媒に溶解又は分散させた後、この溶媒中に不織布を浸漬したり、この溶媒を不織布に塗布又は散布し、乾燥して付着させることができる。なお、親水性樹脂の付着量は、通気性を損なわないように、セパレータ全体の0.3〜5mass%であるのが好ましい。
この架橋可能なポリビニルアルコールとしては、例えば、水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールがあり、より具体的には、感光性基としてスチリルピリジニウム系のもの、スチリルキノリニウム系のもの、スチリルベンゾチアゾリウム系のもので置換したポリビニルアルコールがある。この架橋可能なポリビニルアルコールも他の親水性樹脂と同様にして不織布に付着させた後、光照射によって架橋させることができる。このような水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールは耐電解液性に優れ、しかもイオンとキレートを形成できる水酸基を多く含んでおり、放電時及び/又は充電時に、極板上に樹枝状の金属が析出する前のイオンとキレートを形成し、電極間の短絡を生じにくいので好適に使用できる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(高強度複合融着繊維A)
ホモポリプロピレン(Q値:3.2、MI:14g/10分、融点:168℃)を芯成分(非融着成分)とし、高密度ポリエチレン(Q値:6.7、MI:20g/10分、融点:135℃)を鞘成分(融着成分)とする、引張り強さが6.0cN/dtexの高強度複合融着繊維A(両端部を除いて高密度ポリエチレンが繊維表面を被覆、芯成分と鞘成分の体積比率=50:50、平均繊維径:7.4μm、繊維長:5mm、比重:0.94)を用意した。
(高強度複合融着繊維B)
ホモポリプロピレン(Q値:3.2、MI:14g/10分、融点:168℃)を芯成分とし、高密度ポリエチレン(Q値:6.7、MI:20g/10分、融点:135℃)を鞘成分とする、引張り強さが6.0cN/dtexの高強度複合融着繊維B(両端部を除いて高密度ポリエチレンが繊維表面を被覆、芯成分と鞘成分の体積比率=50:50、平均繊維径:5.2μm、繊維長:3mm、比重:0.94)を用意した。
(高強度複合融着繊維C)
ホモポリプロピレン(Q値:3.2、MI:14g/10分、融点:168℃)を芯成分とし、高密度ポリエチレン(Q値:6.7、MI:20g/10分、融点:135℃)を鞘成分とする、引張り強さが6.5cN/dtexの高強度複合融着繊維C(両端部を除いて高密度ポリエチレンが繊維表面を被覆、芯成分と鞘成分の体積比率=60:40、平均繊維径:10.5μm、繊維長:5mm、比重:0.94)を用意した。
(極細繊維)
共重合ポリエステルからなる海成分中に、ポリプロピレンからなる島成分が25個存在し、複合紡糸法により製造した海島型複合繊維(繊度:1.65dtex、繊維長:2mm)を、10mass%水酸化ナトリウム水溶液からなる浴(温度:80℃)中に30分間浸漬し、海島型複合繊維の海成分である共重合ポリエステルを抽出除去して、ポリプロピレン極細繊維(平均繊維径:2.0μm、σ/d:0.083、融点:172℃、繊維長:2mm、横断面形状:円形、比重:0.91)を得た。このポリプロピレン極細繊維は、フィブリル化しておらず、延伸した状態にあり、しかも各繊維が繊維軸方向において実質的に同じ直径を有していた。
(実施例1〜2、比較例1〜3)
高強度複合融着繊維A、B又はCとポリプロピレン極細繊維とを、表1に示す質量割合でスラリー中に分散させ、湿式法(水平長網方式)により、個々のポリプロピレン極細繊維及び高強度複合融着繊維A、B又はCが分散した繊維ウエブを形成した。
次いで、実施例1〜2及び比較例1〜2の場合、前記繊維ウエブをコンベアで支持し、コンベアの下方から吸引して繊維ウエブをコンベアと密着させて搬送しながら、繊維ウエブに対して温度142℃の熱風を10秒間吹きつけ、十分な量の熱風を通過させる無圧下での熱処理を実施するエアスルー法により行い、繊維ウエブの乾燥と同時に高強度複合融着繊維A、B又はCの高密度ポリエチレン成分のみを融着させて、融着繊維ウエブを形成した。
また、比較例3の場合、前記繊維ウエブを温度142℃に設定したヤンキードライヤーで繊維ウエブの乾燥と同時に高強度複合融着繊維Aの高密度ポリエチレン成分のみを融着させて、融着繊維ウエブを形成した。
次いで、前記融着繊維ウエブを温度60℃の発煙硫酸溶液(15%SO3溶液)中に2分間浸漬した後、十分に水洗し、乾燥してスルホン化処理を実施してスルホン酸基を繊維表面に導入し、目付39g/m2、厚さ80μmで、高強度複合融着繊維の融着成分のみで融着した不織布構造を有するセパレータを製造した。このセパレータの物性は表1に示す通りであった。なお、各種物性の測定は次の通り行なった。
(保液率の測定)
(1)各セパレータから5cm角の試験片を採取し、それぞれ質量(A)を測定した。
(2)各試験片を電解液(1.3g/mLの水酸化カリウム水溶液)に浸漬し、試験片の空隙を電解液で満たした。
(3)3枚のろ紙(型番:ADVANTEC−TYPE2)で試験片を挟み、1.23MPaの圧力で圧縮し、前記ろ紙で電解液を吸い取った。
(4)電解液を吸い取った後の試験片の質量(B)を測定し、次の式により保液率(R、単位:%)をそれぞれ算出した。
R=[(B−A)/A]×100
(加圧保液率の測定)
セパレータを直径30mmに裁断して試験片を調製し、温度20℃、相対湿度65%の状態下で、水分平衡に至らせた後、質量(M0)をそれぞれ測定した。
次に、試験片の空気を水酸化カリウム溶液で置換するように、比重1.3(20℃)の水酸化カリウム溶液中に1時間浸漬し、水酸化カリウム溶液を保持させた。
次に、この試験片を上下3枚ずつのろ紙(直径:30mm)で挟み、加圧ポンプにより、5.7MPaの圧力を30秒間作用させた後、試験片の質量(M1)を測定した。
そして、次の式により、加圧保液率を求めた。なお、この測定は1つのセパレータの4枚の試験片について行い、その算術平均を加圧保液率(Rp、単位:%)とした。
Rp=[(M1−M0)/M0]×100
(各種孔径の測定)
ポロメータ〔Polometer,コールター(Coulter)社製〕を用いてバブルポイント法により、最大孔径(Pmax)及び平均孔径Pav(平均流量孔径)を測定した。そして、これらの値から、比(Pmax/Pav)を算出した。
(比表面積の測定)
クリプトンガスを吸着ガスとしたガス吸着法を用い、BET理論により各セパレータの比表面積を測定した。
(地合指数の測定)
前述の方法により、各セパレータの地合指数を測定した。
(電気抵抗の測定)
各セパレータを35mm角に切断して試験片を作製した。
次いで、比重1.3(20℃)の水酸化カリウム水溶液を各試験片に、各試験片の質量と同じ質量分だけ吸収させた後、35mm角のニッケル板で挟み、49N荷重時における電気抵抗を測定した。
(耐貫通強度の測定)
円筒状貫通孔(内径:11mm)を有する支持台上に、円筒状貫通孔を覆うように、セパレータを1枚載置し、更にセパレータ上に、円筒状貫通孔(内径:11mm)を有する固定材を、前記支持台の円筒状貫通孔の中心と一致するように載置してセパレータを固定した。
次いで、セパレータに対して、ハンディー圧縮試験機(カトーテック製、KES−G5)に取り付けられたニードル(先端部における曲率半径:0.5mm、直径:1mm、治具からの突出長さ:2cm)を、0.1cm/sの速度でセパレータに対して垂直に突き刺し、ニードルが突き抜けるのに要する力を測定した。この測定を各セパレータに対して3回ずつ行い、その算術平均値を耐貫通強度とした。
実施例1と比較例3との比較から、実施例1のセパレータは保液率、加圧保液率に優れていることから、比表面積が0.80m2/g以上であると保液性に優れていることが分かった。
実施例1、2と比較例1、2との比較から、実施例1、2のセパレータの最大孔径、比(Pmas/Pav)が小さく、電気抵抗が低いことから、比(Dc/Df)が4.5以下であることによって、複合融着繊維と極細繊維が均一に分散することができ、空隙の大きさが揃っていることによって、電解液を均一に保持できることが分かった。