JP3678073B2 - 誘電体セラミック組成物及び積層セラミック部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度補償用の誘電体セラミック組成物、及びそれを用いた積層セラミックコンデンサや積層LCフィルタ等の積層セラミック部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、温度補償用のセラミックコンデンサは各種電子機器の中で、同調、共振用などとして広く用いられ、小型でかつ誘電損失が小さく誘電特性の安定したコンデンサが求められている。このための誘電体セラミックの条件としては、小型化の要求に対して比誘電率が大きいことと、誘電損失が小さい(すなわち、Q値が大きい)ことなどがあげられる。
【0003】
このような誘電体セラミックとして、BaO−TiO2系の誘電体セラミック組成物が提案されている[H.M.O'Brayan,J.Am.Ceram.Soc.,57(1974)450;特公昭58−20905号公報など]。そして、これらの誘電体セラミック組成物を用いた積層セラミックコンデンサが実用化されているが、焼成温度が1300℃〜1400℃と高いため、内部電極として高温に耐えるパラジウム(Pd)や白金(Pt)などを使用しなくてはならない。
【0004】
ところが、近年、低温焼成が可能な誘電体セラミック組成物として、BaO−TiO2−Nd2O3系の主成分にPbO−ZnO−B2O3−Al2O3−SiO2系のガラスを添加した誘電体セラミック組成物(特開平5−234420号公報)や、BaO−TiO2−Nd2O3系の主成分にPbO−V2O5−B2O3−SiO2系のガラスを添加した誘電体セラミック組成物(特開平8−239262号公報)や、BaO−TiO2−Nd2O3−Sm2O3系の主成分にPbO−ZnO−B2O3系などの軟化点が500℃以下のガラスを添加した誘電体セラミック組成物(特開平9−71462号公報)が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特開平5−234420号公報や特開平8−239262号公報、及び特開平9−71462号公報に開示された誘電体セラミック組成物は、低温焼結化のために、いずれもPb酸化物成分を含んだガラスが添加されている。このPb酸化物成分は焼成時の揮発性が高く、ガラス作製時やセラミック焼成時に、ロット内あるいはロット間で含有量にばらつきを生じ、その結果得られるセラミックの特性が変動しやすいという問題点を有していた。
【0006】
一方、特開平9−71462号公報に記載されているように、Pb酸化物成分を含まないガラスは軟化点が500℃よりも高いものが多く、低温焼成には不利であるという問題点を有していた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、比誘電率及びQ値が高く、低温焼結が可能であって、焼成によるセラミックの特性変動の少ない、高い信頼性を有する温度補償用の誘電体セラミック組成物、及びそれを用いた積層セラミックコンデンサや積層LCフィルタ等の積層セラミック部品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1において、本発明の誘電体セラミック組成物は、式x(BaαCaβSrγ)O−y[(TiO2)1-m(ZrO2)m]−zRe2O3(但し、式中、x+y+z=100、α+β+γ=1、0≦β+γ<0.8、0≦m<0.15であって、Reは少なくとも1種以上の希土類元素。)で表わされ、これら(BaαCaβSrγ)Oと[(TiO2)1-m(ZrO2)m]とRe2O3のモル組成比{(BaαCaβSrγ)O,[(TiO2)1-m(ZrO2)m],Re2O3}が、添付の図1に示す3元組成図において、点A(10,85,5),点B(10,59,31),点C(7,59,34),点D(7,85,8)で囲まれた領域内(但し、点A,点Bを結ぶ線上は含まない。)にある主成分100重量部に対して、第1の副成分としてガラスを含有しており、該ガラスはB 2 O 3 −SiO 2 系のガラス(但し、Pb酸化物を含まず)であって、その含有量a(重量部)は0.1≦a≦25であり、かつ、第2の副成分としてMn酸化物、第3の副成分としてCu酸化物を含有しており、該Mn酸化物の含有量b(重量部)はMnOに換算して1.5<b≦20であり、該Cu酸化物の含有量c(重量部)はCuOに換算して1≦c≦10であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2において、本発明の積層セラミック部品は、複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備え、前記誘電体セラミック層が請求項1に記載の誘電体セラミック組成物で構成され、前記内部電極がCuまたはAgを主成分として構成されていることを特徴とする。
【0012】
なお、本発明でいう希土類元素Reとは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuのことをいう。
【0013】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの基本構造を図面により説明する。図2は積層セラミックコンデンサの一例を示す断面図、図3は図2の積層セラミックコンデンサのうち、内部電極を有する誘電体セラミック層部分を示す平面図、図4は図2の積層セラミックコンデンサのうち、セラミック積層体部分を示す分解斜視図である。
【0014】
本実施形態による積層セラミックコンデンサ1は、図2に示すように、内部電極4を介して複数枚の誘電体セラミック層2a、2bを積層して得られた直方体形状のセラミック積層体3を備える。このセラミック積層体3の両端面上には、内部電極4の特定の電極に電気的に接続されるように、外部電極5がそれぞれ形成され、その上には、必要に応じて、第1のメッキ層6、第2のメッキ層7が形成されている。
【0015】
次に、この積層セラミックコンデンサ1の製造方法について製造工程順に説明する。
【0016】
まず、誘電体セラミック層2a及び2bの成分となる、所定比率に秤量し混合した原料粉末を用意する。
すなわち、BaO−TiO2−Re2O3系の主成分(但し、BaをCa,Srで置換したもの、 TiO2をZrO2で置換した場合を含む。)と、第1の副成分としてB 2 O 3 −SiO 2 系のガラス(但し、Pb酸化物を含まず)と、第2の副成分としてMn酸化物とを含有する誘電体セラミック組成物を生成し得る原料粉末を用意する。
さらに、第3の副成分としてCu酸化物を含有する誘電体セラミック組成物を生成し得る原料粉末を用意する。
【0017】
次に、この原料粉末に有機バインダを加えてスラリー化し、このスラリーをシート状に成形して、誘電体セラミック層2a、2bのためのグリーンシートを得る。その後、図3に示すように、誘電体セラミック層2bとなるグリーンシートの一方の主面上にCuまたはAgを主成分とする内部電極4を形成する。なお、内部電極4を形成する方法は、スクリーン印刷などによる形成でも、蒸着、メッキ法による形成でもどちらでも構わない。
【0018】
次に、図4に示すように、内部電極4を有する誘電体セラミック層2bのためのグリーンシートを必要枚数積層した後、内部電極を有しない誘電体セラミック層2aのための各グリーンシートの間に挟んで圧着し、グリーンシートの積層体とする。その後、この積層体を所定の温度にて焼成し、図2に示すセラミック積層体3を得る。
【0019】
次に、得られたセラミック積層体3の両端面に、内部電極4と電気的に接続するように、外部電極5を形成する。この外部電極5の材料としては、内部電極4と同じ材料を使用することができ、例えば、銀−パラジウム合金などが使用可能である。また、これらの金属粉末に、B2O3−SiO2−BaO系のガラス、Li2O−SiO2−BaO系のガラスなどのガラスフリットを添加したものも使用されるが、積層セラミックコンデンサの用途、使用場所などを考慮に入れて適当な材料が選択される。また、外部電極5は、材料となる金属粉末ペーストを、焼成により得られたセラミック積層体3に塗布して焼き付けることによって形成されるが、使用する電極材料により、焼成前にグリーンシート積層体に塗布して、セラミック積層体3と同時に形成してもよい。
【0020】
次に、外部電極5の表面上にニッケル、銅などのメッキを施し、第1のメッキ層6を形成し、最後に、この第1のメッキ層6の上に、はんだ、錫などの第2のメッキ層7を形成し、積層セラミックコンデンサ1を完成させる。なお、このように外部電極5の表面上に、さらにメッキなどで導体層を形成することは、積層セラミックコンデンサの用途や使用場所によっては省略することもできる。
【0021】
以上のように、積層セラミックコンデンサの誘電体として用いる本発明のセラミック組成物は、CuやAgの融点よりも低温で焼成することが可能である。そして、得られるセラミックの比誘電率は50以上と高く、Q値は1MHzで1000以上と高く、静電容量温度係数(TCC)が±60ppm/℃以内と小さい。また、第1の副成分のガラスをB2O3−SiO2系のガラス(但し、Pb酸化物を含まず)とすることにより、低温焼結を促進することができる。さらに、第3の副成分として、所定量のCu酸化物をセラミック組成物中に含有させることにより、より低温焼結化が可能になる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例にもとづき、さらに具体的に説明する。
【0023】
(実施例1)
本発明の誘電体セラミック組成物とそれを用いたセラミックコンデンサを以下のようにして作製した。
【0024】
まず、出発原料として、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、希土類酸化物(Re2O3)、炭酸マンガン(MnCO3)、及び酸化銅(CuO)を用意した。
【0025】
その後、これらの原料粉末を、表1,表2に示す各組成物(但し、第1の副成分としてのガラス成分を除く。)が得られるように秤量し、エタノールと共にボールミルに入れて16時間湿式混合し、乾燥後、粉砕し、1040℃で仮焼して仮焼済み粉末を得た。このとき得られた仮焼粉体の平均粒径は0.9μmであった。なお、第2の副成分としてのMnOの含有量、並びに第3の副成分としてのCuOの含有量は、主成分である{x(BaαCaβSrγ)O−y[(TiO2)1-m(ZrO2)m ]−zRe2O3}(但し、式中、x+y+z=100、α+β+γ=1、0≦β+γ<0.8、0≦m<0.15であって、Reは少なくとも1種以上の希土類元素 。)100重量部に対する部数を示す。また、表1,表2において、試料番号に*印を付したものは本発明の範囲外のものであり、その他は本発明の範囲内のものである。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
また、第1の副成分として、表3に示すガラス種A〜G,及びIのSiO2系またはB2O3−SiO2系のガラス粉末(但し、係数は重量%)を準備した。
【0029】
【表3】
【0030】
次に、このガラス粉末と先に得た仮焼済み粉末とを、表1,表2に示す割合で秤量し、ポリビニルブチラール溶液を加えて混合してスラリー化し、このスラリーをドクターブレード法でシート状に成形して、厚み50μmのグリーンシートを得た。なお、ガラスの含有量は、主成分である{x(BaαCaβSrγ)O−y[(TiO2)1-m(ZrO2)m ]−zRe2O3}(但し、式中、x+y+z=100、α+β+γ=1、0≦β+γ<0.8、0≦m<0.15であって、Reは少なくとも1種以上の希土類元素 。)100重量部に対する部数を示す。
【0031】
次に、得られたグリーンシートを複数枚(13枚)積み重ねて圧着した後、打ち抜いて、直径14mm、厚さ0.5mmの成形体を得た。その後、この成形体をN2雰囲気中で350℃で熱処理してバインダーを除去した後、 H2−N2−H2Oガスからなる還元雰囲気中において、表4,表5に示す焼成温度で2時間焼成して円板状のセラミックを得た。そして、得られたセラミックの両主面にIn−Ga電極を塗布して単層の円板型セラミックコンデンサとした。
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
次に、これらセラミックコンデンサの電気特性を測定した。静電容量及びQは、20℃で周波数1MHz、電圧1Vrmsにて測定し、試料の直径(D)、厚み(T)の寸法を測定し、静電容量から比誘電率(εr)を算出した。また、TCC(静電容量温度係数)は、20℃と85℃の静電容量を測定して下記の数式1に従って算出した。但し、式中、Cap20は20℃における静電容量[pF]を表わし、Cap85は85℃における静電容量[pF]を表わす。
【0035】
【数式1】
【0036】
以上の結果を表4,表5に示す。なお、表4,表5において、試料番号に*印を付したものは本発明の範囲外のものであり、その他は本発明の範囲内のものである。
【0037】
表1,表4から明らかなように、試料番号6〜8,10,11,17〜19,21,22,24〜26,28,29に示すセラミックは、主成分{x(BaαCaβSrγ)O−y[(TiO2)1-m(ZrO2)m ]−zRe2O3}(但し、式中、x+y+z=100、α+β+γ=1、0≦β+γ<0.8、0≦m<0.15であって、Reは少なくとも1種以上の希土類元素 。)に対し、第1の副成分としてのSiO2系のガラス(但し、Pb酸化物を含まず)と、第2の副成分としてのMn酸化物とを含有することにより、比誘電率が50以上と高く、Q値も1MHzで1000以上と高く、また、静電容量温度係数(TCC)が±60ppm/℃以内と小さい誘電体セラミックが得られ、しかもCuの融点(1083℃)より低い1060℃以下で焼結する。
【0038】
また、このような構成においては、試料番号22と24、試料番号28と29から明らかなように、ガラスがB2O3−SiO2系のガラス(但し、Pb酸化物を含まず)であることにより、より低温焼結が可能となる。
【0039】
さらに、表2,表5の試料番号35,36のように、主成分に対し、第1、第2の副成分に加えて第3の副成分のCu酸化物を含有させることにより、さらに低温焼結させることが可能になる。しかも、組成中に蒸発しやすいPb酸化物成分を含まないため、焼成によるセラミックの特性変動が抑えられる。
【0040】
ここで、本発明の組成を限定した理由について説明する。
【0041】
表1、表4の試料番号1〜5のように、主成分{x(BaαCaβSrγ)O−y[(TiO2)1-m(ZrO2)m ]−zRe2O3}(但し、式中、x+y+z=100、α+β+γ=1、0≦β+γ<0.8、0≦m<0.15であって、Reは少なくとも1種以上の希土類元素 。)が、図1に示す3元組成図において、点A(10,85,5)、点B(10,59,31)、点C(7,59,34)、点D(7,85,8)で囲まれた領域外の場合には、比誘電率が50より小さくなるか、静電容量温度係数(TCC)が±60ppm/℃の範囲を外れるか、焼結性が低下してCuの融点である1083℃以下で焼結しないか、Q値が劣化して1000未満となる。したがって、主成分は、図1の3元組成図の点、A,B,C,Dで囲まれた領域内(但し、点A,点Bを結ぶ線上は含まない。)が好ましい。具体的には、Ba,Ca及びSrの合計含有量xが7未満では誘電率が50より小さく、10以上になると静電容量温度係数(TCC)が±60ppm/℃の範囲を外れる。したがって、7≦x<10が好ましい。また、TiとZrの合計含有量yについては、59未満では焼結性が低下してCuの融点である1083℃以下で焼結せず、85を超えるとQが劣化して1000未満となる。したがって、59≦y≦85が好ましい。
【0042】
試料番号6〜8のように、BaOの一部をCaやSrで置換すると比誘電率を高める効果があるが、試料番号9のように、Ca酸化物とSr酸化物の置換量の和、β+γが0.8以上になると、焼結性が低下してCuの融点以下の1060℃で焼結しない。したがって、0≦β+γ<0.8が好ましい。
【0043】
また、TiO2の一部をZrO2で置換すると主成分組成物の還元防止をする効果があるため、還元雰囲気中においてCu導体等と同時焼成を有利に実現できる。しかし、試料番号12のように、ZrO2の置換量mが0.15以上になると、焼結性が低下してCuの融点以下である1060℃で焼結しない。したがって、0≦m<0.15が好ましい。
【0044】
また、試料番号17〜19のように、第1の副成分であるガラス(但し、Pb酸化物を含まず)を含有することは、焼結性を向上させる効果があるが、試料番号16のように、ガラスの含有量a(重量部)が0.1未満では、焼結性が低下してCuの融点以下の1060℃で焼結しない。一方、試料番号20のように、含有量aが25を超えると、Q値が劣化して1000未満と低くなる。したがって、0.1≦a≦25が好ましい。
【0045】
また、試料番号24〜26のように、第2の副成分であるMn酸化物を含有することは、焼結性を向上させ、さらに静電容量温度係数(TCC)をプラス側にシフトさせて小さくする効果がある。しかしながら、試料番号23のように、Mn酸化物をMnOに換算した含有量b(重量部)が1.5以下では静電容量温度係数(TCC)が±60ppm/℃の範囲を外れる。また、試料番号27のように、含有量bが20を超える場合はQが劣化して1000未満と低くなる。したがって、1.5<b≦20が好ましい。
【0046】
第3の副成分としてCu酸化物を含有することは、焼結性を向上させる効果があるが、表2,表5の試料番号37のように、Cu酸化物をCuOに換算した含有量c(重量部)が10を超えると、Qが劣化して1000より小さくなる。したがって、c≦10が好ましい。
【0047】
(実施例2)
本発明の一実施例による積層セラミックコンデンサを以下のようにして作製した。
【0048】
すなわち、まず、出発原料として、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、希土類酸化物(Re2O3)、炭酸マンガン(MnCO3)、及び酸化銅(CuO )を用意した。
【0049】
その後、これらの原料粉末を表6の試料番号41に示す組成物(但し、第1の副成分のガラス成分を除く。)が得られるように秤量し、エタノールと共にボールミルに入れて16時間湿式混合した後、1040℃で仮焼して仮焼済み粉末を得た。なお、第2の副成分としてのMnOの含有量と第3の副成分としてのCuOの含有量は、主成分である{x(BaαCaβSrγ)O−y[(TiO2)1-m(ZrO2)m ]−zRe2O3}(但し、式中、x+y+z=100、α+β+γ=1、0≦β+γ<0.8、0≦m<0.15であって、Reは少なくとも1種以上の希土類元素 。)100重量部に対する部数である。また、表6において、試料番号に*印を付したものは本発明の範囲外のものである。
【0050】
【表6】
【0051】
また、第1の副成分として、表3に示すガラス種H、即ち、20B2O3−80SiO2(但し、係数は重量%)のガラス粉末を準備した。
【0052】
次に、先に得られた仮焼済み粉末100重量部に対して、このガラス粉末10重量部とポリビニルブチラール溶液とを加えて混合してスラリー化し、このスラリーをドクターブレード法でシート状に成形してグリーンシートを得た。
【0053】
続いて、このグリーンシート上に、Cuを主成分とする導電ペーストを印刷し、内部電極を構成するための導電ペースト層を形成した。その後、この導電ペースト層が形成されたグリーンシートを、導電ペースト層が引き出されている側が互い違いになるように複数枚積層し、さらに、この積層体の導電ペースト層が露出している両端面に、Cuを主成分とした導電ペーストを塗布して積層体を得た。
【0054】
そして、この積層体を、N2雰囲気中にて350℃で熱処理してバインダーを除去した後、H2−N2−H2Oガスからなる還元雰囲気中において、1000℃で2時間保持して焼成して、積層セラミックコンデンサを得た。
【0055】
このようにして得た積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅1.6mm、長さ3.2mm、厚さ1.2mmであり、内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みは6μmで、有効誘電体セラミック層の総数は150層であった。
【0056】
また、比較例として、表6の試料番号42に示す組成物を誘電体とした積層セラミックコンデンサを作製した。
【0057】
即ち、まず、出発原料として、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、希土類酸化物(Re2O3)、炭酸マンガン(MnCO3)、酸化銅(CuO )、酸化ホウ素(B2O3)、酸化珪素(SiO2)を用意した。
【0058】
その後、これらの原料粉末を表6の試料番号42に示す組成物(但し、B2O3及びSiO2を除く)が得られるように秤量し、エタノールと共にボールミルに入れて16時間湿式混合した後、1040℃で仮焼して仮焼済み粉末を得た。なお、第2の副成分としてのMnOと第3の副成分としてのCuOの含有量は、主成分である{x(BaαCaβSrγ)O−y[(TiO2)1-m(ZrO2)m ]−zRe2O3}(但し、式中、x+y+z=100、α+β+γ=1、0≦β+γ<0.8、0≦m<0.15であって、Reは少なくとも1種以上の希土類元素 。)100重量部に対する部数である。
【0059】
次に、これら仮焼済み粉末100重量部に対して、酸化ホウ素(B2O3)2重量部と酸化珪素(SiO2)8重量部と、ポリビニルブチラール溶液とを加えて混合してスラリー化し、このスラリーをドクターブレード法でシート状に成形してグリーンシートを得た。その後、上記試料番号41と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した。
【0060】
次に、このようにして得られた表6の試料番号41,42の積層セラミックコンデンサについて、耐湿負荷試験を行った。すなわち、コンデンサに、圧力2気圧、相対湿度100%、温度121℃の雰囲気中で、直流電圧16Vを250時間連続印加した。そして、その間にコンデンサの絶縁抵抗が1×106Ω以下になった場合に、故障(不良)と判定した。この結果を表7に示す。なお、表7において、試料番号に*印を付したものは本発明の範囲外のものである。
【0061】
【表7】
【0062】
表6,表7の試料番号41から明らかなように、B成分及びSi成分をガラスとして含有させた本発明の積層セラミックコンデンサは、耐湿負荷試験による不良の発生がなく、耐湿特性に優れている。これに対して、試料番号42のように、B成分及びSi成分を酸化ホウ素(B2O3)及び酸化珪素(SiO2)として含有させた、誘電体組成中にガラスを含有しない本発明の範囲外のコンデンサは、耐湿負荷試験により不良が発生し、耐湿特性に劣る。このことは、B2O3−SiO2系のガラスの存在が耐湿性の向上に効果があることを示している。
【0063】
以上、上記各実施例では、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、希土類酸化物(Re2O3)、炭酸マンガン(MnCO3)及び酸化銅(CuO)を一度に混合し仮焼した。しかしながら、予め、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)及び希土類酸化物(Re2O3)を混合し仮焼したものを作製した後に、炭酸マンガン(MnCO3)及び酸化銅(CuO )を添加しても同様の効果が得られる。
【0064】
また、出発原料として、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、希土類酸化物(Re2O3)、炭酸マンガン(MnCO3)及び酸化銅(CuO )を使用したが、本発明はこれらの化合物形態に限定されるものではない。例えば、BaTiO3、Ba2Ti9O20、Ba4Ti13O30、BaZrO3、CaTiO3、CaZrO3、SrTiO3、SrZrO3、Re2Ti2O7(但し、Reは希土類元素を示す。)などの化合物、または、炭酸塩、蓚酸塩、水酸化物、アルコキシドなどを使用しても同程度の特性を得ることができる。
【0065】
また、仮焼温度についても1040℃で実施したが、900〜1049℃であれば、同様の特性を得ることができる。また、得られた仮焼物の平均粒径についても0.9μmであったが、0.81〜5.0μmであれば、同様の特性を得ることができる。
【0066】
さらに、また、ガラスとしては、B 2O3−SiO2系として構成された、Pb酸化物を含まないガラスであればよく、特に限定されるものではない。
【0067】
そして、本発明に係る誘電体磁器組成物からなるコンデンサで構成される積層LCフィルタ等においても、上記実施例と同様に優れた効果が得られる。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明に係る誘電体磁器組成物によれば、1060℃以下で焼結し、比誘電率が50以上、1MHzのQ値が1000以上あり、また、静電容量温度係数(TCC)が±60ppm/℃以内と小さい等の諸特性が得られる。そして、Pb酸化物成分の揮発がないため、特性のばらつきが小さい誘電体磁器組成物を得ることができる。
【0069】
したがって、この誘電体磁器組成物を誘電体セラミック層として、積層セラミックコンデンサや積層LCフィルタ等を構成すれば、優れた耐湿特性を示すとともに、電極材料として安価なCuやAgを用いることができるので、積層セラミック部品のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の組成物中の主成分の好ましい範囲を示す{(BaαCaβSrγ)O, [(TiO2)1-m(ZrO2)m ],Re2O3}3元組成図である。
【図2】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを示す断面図である。
【図3】図2の積層セラミックコンデンサのうち、内部電極を有する誘電体セラミック層を示す平面図である。
【図4】図2の積層セラミックコンデンサのうち、セラミック積層体部分を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
2a,2b 誘電体セラミック層
3 セラミック積層体
4 内部電極
5 外部電極
6,7 メッキ層
Claims (2)
- 式x(BaαCaβSrγ)O−y[(TiO2)1-m(ZrO2)m ]−zRe2O3(但し、式中、x+y+z=100、α+β+γ=1、0≦β+γ<0.8、0≦m<0.15であって、Reは少なくとも1種以上の希土類元素 。)で表わされ、これら(BaαCaβSrγ)Oと[(TiO2)1-m(ZrO2)m ]とRe2O3のモル組成比{(BaαCaβSrγ)O,[(TiO2)1-m(ZrO2)m ],Re2O3}が、添付の図1に示す3元組成図において、点A(10,85,5),点B(10,59,31),点C(7,59,34),点D(7,85,8)で囲まれた領域内(但し、点A,点Bを結ぶ線上は含まない。)にある主成分100重量部に対して、
第1の副成分としてガラスを含有しており、該ガラスはB 2 O 3 −SiO 2 系のガラス(但し、Pb酸化物を含まず)であって、その含有量a(重量部)は0.1≦a≦25であり、
かつ、第2の副成分としてMn酸化物、第3の副成分としてCu酸化物を含有しており、該Mn酸化物の含有量b(重量部)はMnOに換算して1.5<b≦20であり、該Cu酸化物の含有量c(重量部)はCuOに換算して1≦c≦10であることを特徴とする、誘電体セラミック組成物。 - 複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備える積層セラミック部品において、前記誘電体セラミック層が請求項1に記載の誘電体セラミック組成物で構成され、前記内部電極がCuまたはAgを主成分として構成されていることを特徴とする、積層セラミック部品。
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