JP3677866B2 - ハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法 - Google Patents

ハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LSI製造に用いるハーフトーン型位相シフトマスクに関するものである。さらに詳しくは、従来のフォトマスクと同様に投影露光装置で用いることができ、従来のフォトマスクを用いた場合に比べパターンの解像力を向上させることができるハーフトーン型位相シフトマスク及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のフォトマスクでは、微細なパターンの投影露光に際し、近接したパターンにおいては、マスクの光透過部を通過した光が回折し、干渉し合うことによって、パターン境界部での光強度を強め合い、ウェハー上のレジストが感光して、転写されたパターンが分離解像しないという問題が生じていた。この現象は線幅が露光波長に近い微細なパターンほどその傾向が強く、従来のフォトマスクと従来の露光光学系においては光源の波長以下の微細なパターンを解像することは不可能であった。
【0003】
そこで、隣接するパターンを透過する投影光の位相を互いに180度の位相差をもたせることにより微細パターンの解像力を向上させるという、位相シフト技術が開発された。すなわち、隣接する光透過部の片側に位相シフト部を設けることにより、透過光が回折し干渉し合う際、位相が反転しているために境界部の光強度を弱め合い、その結果転写パターンは分離解像するようになる。この関係は焦点の前後でも成り立っているため、焦点が多少ずれていても解像度は従来の露光法よりも向上し、焦点裕度が改善される。
【0004】
上記のような位相シフト法はIBMのLevensonらによって提唱され、特開昭58ー173744号公報や、特公昭62ー50811号公報に記載されている。
パターンを遮光層で形成する場合は、遮光パターンに隣接する開口部の片側に位相シフト部を設けて位相反転させる(Levenson型位相シフトマスク、またはAlternative type位相シフトマスク)。一方、遮光層にわずかな透光性を与え半透明層とする代わりに、この半透明遮光膜によって透過光の位相が反転される場合にも、同様な解像度向上効果が得られ、この場合は特に孤立パターンの解像度向上に有効である。このような半透明遮光膜(ハーフトーン膜)をもつ位相シフトマスクを一般にハーフトーン型位相シフトマスク(またはAttenuated type位相シフトマスク)と称する。
【0005】
ハーフトーン型位相シフト技術は、半透明層と位相シフト層を別々に積層してマスクブランクとした後、マスクパターンを形成する2層型ハーフトーンマスクと、位相シフト効果も持たせた半透明遮光膜をパターニングして作製される単層型ハーフトーンマスクの2種類が今までに提案されている。
【0006】
単層ハーフトーン型位相シフトマスクの例は、例えば文献(1)第38回春季応用物理学会予稿集第2分冊、29p−zc−3、p535(1991)に記載されている。半透明遮光膜の空気層に対する位相差Φ(度)は一般に次の式(1)で表される。
Φ=360 ×(n−1)d/λ……………式(1)
(d:半透明遮光膜の膜厚、n:半透明遮光膜の屈折率、λ:露光波長)
解像度向上効果を最大にするためには、Φを事実上180 度にする必要がある。従って、d=λ/{2(n−1)}の関係が成り立つような半透明遮光膜を形成すればよい。また、半透明遮光膜の透過率は通常は8%程度のときがもっとも解像性向上効果があるとされるが、露光条件やウェハー上のレジストプロセスによっても微妙に異なってくる。
【0007】
半透明遮光膜の形成には、通常のArなどの不活性ガスに酸素(O2 )や窒素(N2 )などの反応性ガスを添加する、いわゆる反応性スパッタリング法が用いられるのが一般的である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ハーフトーン型位相シフトマスクによって転写パターンの解像度向上を達成するには、上記のように半透明遮光膜の空気層に対する位相差と透過率の目標値をどちらも達成する必要がある。しかるに透過率もまた位相差同様半透明遮光膜のnとd及びk:消衰係数に依存する量であるため、一方を調整すれば他方も変化し、同時に達成することは容易ではない。
【0009】
例えば透過率、位相差ともに小さすぎる場合は半透明遮光膜の膜厚を減少させ、その後透明性基板を掘り込むことで調整する方法もあるが、透明性基板を掘り込むときに透過率が再び変化してしまうおそれがある。また、透過率が大きすぎる場合は従来適当な調整手段が存在しなかった。これらのことはハーフトーン型位相シフトマスクブランクの選択の幅を狭くし、それ故ハーフトーン型位相シフトマスクの歩留まりを低下させる原因となっていた。
【0010】
また、反応性スパッタリングにおいてはよく知られているように、いわゆるヒステリシス現象が発生し、一般に再現性よく膜質を制御することが容易ではなく、このこともハーフトーン型位相シフトマスクの歩留まりを低下させる原因となっていた。
【0011】
さらに今後ともLSIの設計寸法の微細化は進展していくと考えられ、それとともにハーフトーン型位相シフトマスクには、より高精度な位相差と透過率の制御が要求されていくと考えられる。
【0012】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、位相シフト法により得られる高解像のパターン転写を可能ならしめるハーフトーン型位相シフトマスク及びその製造方法を提供することにある。より具体的には、位相シフトマスクの全面に亘って、露光波長に対して消衰係数が0.1以下の透明性薄膜を被覆することにより位相差に影響されることなく透過率を精度良く調整できるようにしたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に於いて上記課題を解決するために、請求項1においては、以下の工程を含むことを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法としたものである。
(1)透明性基板上に半透明遮光膜を形成した後、前記半透明遮光膜の膜厚を減少させるか、若しくは前記半透明遮光膜をパターン化した後前記パターン間の透光部の前記透明性基板を掘り込むことによって位相差を調整する工程。
(2)前記位相差が調整されたマスクパターン側の全面に、露光波長に対して消衰係数が0.1以下の透明性薄膜を形成する工程。
(3)前記透明性薄膜を形成した後、前記半透明遮光膜パターンを通過する露光光の透過率が目的の値となるまで、前記透明性薄膜を適量エッチングする工程。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1(a)、(b)は本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの構造を示す模式断面図である。
図1(a)のハーフトーン型位相シフトマスクは、前記半透明遮光膜の膜厚を減少させて位相差調整して、マスクパターンを形成した後前記透明性薄膜を形成したものである。図1(b)のハーフトーン型位相シフトマスクは、前記半透明遮光膜パターン間の透光部の前記透明性基板を掘り込むことによって位相差を調整した後前記透明性薄膜を形成したものである。
【0017】
図1のハーフトーン型位相シフトマスクでは半透明遮光膜パターンを通過する露光光の透過率が、露光条件やウェハー上のレジストプロセスに応じて最大の解像性をもたらすように、前記透明性薄膜の膜厚を調整する。
【0018】
ここで半透明遮光膜パターンを通過する露光光の透過率は、透明性薄膜、半透明遮光膜、透明性基板の光学定数(屈折率、消衰係数)及び露光雰囲気(通常は空気)の屈折率に依存した各膜内での多重干渉の結果として決まり、透明性薄膜の膜厚に対して周期的に変化する。
尚、薄膜の干渉理論については例えば文献(2):薄膜(金原栄著、裳華房)p.197などに詳しく述べられており、あらかじめ上記の構成材料の光学定数を求めておけば、透明性薄膜の膜厚の調整量に応じた最終的な透過率は理論計算で予測することが可能である。
【0019】
図2、図3は本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法を工程順に示す模式断面図である。
図2は前記半透明遮光膜の膜厚を減少させて位相差調整をし、マスクパターンを形成した後、前記透明性薄膜を形成したハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法を工程順に示す模式断面図である。以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
透明性基板1上に反応性スパッタ等により半透明遮光膜2を形成し(図2(a)参照)、半透明遮光膜2の位相差を目標値(通常は180度)に調整するために半透明遮光膜をスパッタエッチングを行って、位相差調整された半透明遮光膜2’を形成する(図2(b)参照)。
【0021】
次に、所定のマスクパターンでパターニングして半透明遮光膜パターン2’aを形成する(図2(c)参照)。ここで、半透明遮光膜パターン2’aを通過する露光光の透過率は、後工程によって透明性薄膜の膜厚を調整することで調整することができるので、目標の値と差があってもよい。
【0022】
次に、位相差調整された半透明遮光膜パターン2’a及び透明性基板1上の全面に露光波長に対して消衰係数が0.1以下の透明性薄膜3を反応性スパッタ等により形成する(図2(d)参照)。このときの透明性薄膜の種類の選択は、位相差調整した後、透過率の目標値との差を測定しておき、理論計算によって後工程の膜厚の調整による透過率の変化を予測しておくことで可能である。
【0023】
次に、半透明遮光膜パターン2’aを通過する露光光の透過率が目的の値となるまで、透明性薄膜3を適量エッチングして透明性薄膜3’を形成し、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクが得られる(図2(e)参照)。
このとき透明性薄膜3’はマスクのパターン側の全面が等しくエッチングされるため、調整済みの位相差が変化することはない。
【0024】
図3は前記半透明遮光膜パターン以外の前記透明性基板を掘り込むことによって位相差を調整した後、前記透明性薄膜を形成したハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法を工程順に示す模式断面図である。
【0025】
透明性基板1上に半透明遮光膜2を形成し(図3(a)参照)、所定のマスクパターンでパターニングして半透明遮光膜パターン2aを形成する(図3(b)参照)。
次に半透明遮光膜パターン2aの位相差を目標値(通常は180度)に調整するために、半透明遮光膜パターン2a間の透光部の透明性基板1をエッチング等で堀込み、凹部4を形成する(図3(c)参照)。この位相差調整の結果、半透明遮光膜パターン2aを通過する露光光の透過率は、後工程によって透明性薄膜の膜厚を調整することで調整することができるので、目標の値と差があってもよい。
【0026】
次に、半透明遮光膜パターン2a及び凹部4上に露光波長に対して消衰係数が0.1以下の透明性薄膜3を反応性スパッタ等により形成する(図3(d)参照)。このときの透明性薄膜3の種類の選択は、位相差調整した後、透過率の目標値との差を測定しておき、理論計算によって後工程の膜厚の調整による透過率の変化を予測しておくことで可能である。
【0027】
次に、半透明遮光膜パターン2aを通過する露光光の透過率が目的の値となるまで、透明性薄膜3を適量エッチングして透明性薄膜3’を形成し、本発明の別の実施形態を示すハーフトーン型位相シフトマスクが得られる(図3(e)参照)。
【0028】
このように本発明のハーフトーン型位相シフトマスクとその製造方法によれば、位相差及び透過率を各々独立に、後工程で調整することができるので、もともとのハーフトーン用膜である半透明遮光膜の成膜において選択できるn,kの幅が従来よりも広くなり、ハーフトーン型位相シフトマスクの歩留まりが向上する。
【0029】
また本発明のハーフトーン型位相シフトマスクとその製造方法で用いる透明性薄膜にはハーフトーン型位相シフトマスクの保護膜的役割ももたせることができる。すなわちハーフトーン型位相シフトマスクが繰り返し露光に使用される間に発生する汚染を透明性薄膜で受けとめることで、従来よりもマスクの洗浄が容易になるとともに、従来のハーフトーン型位相シフトマスクのように露出した半透明遮光膜が洗浄液によって変質する恐れはなくなる。
【0030】
さらに上記の汚染や傷が洗浄で取れないときや、露光条件に合わせて透過率を変更したいときは、透明性薄膜の膜厚を変更したり、透明性薄膜を剥離した後、図2(d)、(e)及び図3(d)、(e)の工程を通すだけで、新たなハーフトーン型位相シフトマスクを作製することも可能である。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により図2、図3を用いて更に具体的に説明する。
【0032】
<実施例1>
ここでは半透明遮光膜の膜厚を減少させて位相差調整をし、マスクパターンを形成した後、パターン側の全面に透明性薄膜を形成したハーフトーン型位相シフトマスクの実施例について説明する。対象とする適用波長はKrFエキシマレーザのλ=248nm、透過率の目標値は8±1%、位相差の目標値は180±2度である。
【0033】
はじめに透明性基板として、6インチ角、0.25インチ厚のフォトマスク用石英基板1(屈折率:ns =1.51、消衰係数:ks =0)に一般的なハーフトーン型位相シフト半透明遮光膜として、ArガスにO2 ガス及びN2 ガスを添加した反応性スパッタリング法により酸化窒化モリブデンシリサイド(以下MoSiONと記す)膜2を成膜し、マスクブランクを作製した(図3(a)参照)。
このMoSiON膜2の光学定数と膜厚をエリプソメータで測定したところ、屈折率:n=2.38、消衰係数:k=0.55、膜厚:d0 =980Å、透過率:T=5.3%であった。
【0034】
さらにMoSiON膜2の位相差を前記式(1)を使って計算すると、位相差:Φ=196度となる。従ってこの膜は位相差は小さく、透過率は大きくする方向へ調整する必要がある。
【0035】
そこで本発明の方法で透過率、位相差ともに目標値内に入れることができるかどうかを理論的に検討した。
本例では位相差を180度にするためには、MoSiON膜2の膜厚をパターニングする前に減少させればよい。減少後の膜厚dは前記式(1)より求められる。
180=360×(n−1)d/λからdを求めると、d=899Åとなる。
膜厚減少に伴い、透過率は上昇する。上昇後の透過率をすでに分かっているn、k、dの値から計算すると、透過率:T=6.6%となる。従って透過率はさらに大きくする方向へ調整する必要がある。
【0036】
次にパターン側の全面を二酸化珪素膜で被覆したと仮定して、MoSiON膜パターン部及びMoSiON膜が除去された石英基板の透光部の各透過率を、二酸化珪素膜の膜厚du を変化させて、文献(2)の方法で計算した。二酸化珪素膜の光学定数は屈折率:nu =1.51、消衰係数:ku =0を用いた。透過率の計算結果を図4(a)、(b)に示す。
【0037】
図4より二酸化珪素膜の膜厚du が約350ÅのときMoSiON膜パターン部の透過率Tは目標の8%にほぼ一致することがわかる。また、MoSiON膜が除去された石英基板の透光部の透過率は、二酸化珪素膜の有無にかかわらず、96%で一定である。これは石英基板と二酸化珪素膜の光学定数が同じであることによる。
【0038】
以上のことを理論的に予測したうえで、石英基板上に形成されたMoSiON膜をパターン化して、ハーフトーン型位相シフトマスクの作製を行った。
【0039】
まずMoSiON膜2を位相差調整のために、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによりエッチングし、膜厚を予測値の899Å近くまで減少したMoSiON膜2’を形成した(図2(b)参照)。
【0040】
次に、通常の電子線リソグラフィにより所定のレジストパターンを形成し、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、MoSiON膜パターン2’aを形成した(図2(c)参照)。
ここで、MoSiON膜パターン2’aの位相差を直接測定したところ180度で、目標を満たしていた。また透過率は6.5%であった。
【0041】
次に、MoSiON膜パターン2’aのパターン側の全面に、イオンアシスト蒸着法により二酸化珪素膜3を形成した(図2(d)参照)。二酸化珪素膜3の膜厚は後工程のエッチングで調整可能であるので、600Å付近とした。また二酸化珪素膜3の光学定数をエリプソメータで確認したところ、屈折率n=1.51、消衰係数k=0であった。
【0042】
そこで、上記理論的予測に従い、二酸化珪素膜3をエッチングして膜厚を減少させ、350Åを目標に膜厚、すなわち透過率の調整を行った。このときの二酸化珪素膜のエッチングは、希薄な緩衝フッ酸液を用い、低いエッチレートで実施した。途中数回エッチングを停止して透過率の測定を行った結果、最終的な透過率として8.0%を得た。また、最後に位相差を再度確認したところ179度であり、目標値を達成した。
【0043】
このようにしてパターン側の全面を被覆する透明性薄膜として、石英基板と同じ屈折率をもつ二酸化珪素膜を用いた本発明ののハーフトーン型位相シフトマスクが得られた。
【0044】
<実施例2>
ここでは透明性基板の掘り込みを行い半透明遮光膜パターン2aの位相差調整をした後、パターニングを行い、半透明遮光膜パターン2aのパターン側の全面に透明性薄膜を形成したハーフトーン型位相シフトマスクの実施例について説明する。対象とする適用波長及び透過率、位相差の目標値は実施例1と同じである。
【0045】
はじめに透明性基板として、6インチ角、0.25インチ厚のフォトマスク用石英基板1(屈折率:ns =1.51、消衰係数:ks =0)を用い、一般的なハーフトーンマスク用半透明遮光膜として、ArガスにO2 ガス、N2 ガスを添加した反応性スパッタリング法によりMoSiON膜2を成膜し、マスクブランクを作製した(図3(a)参照)。
【0046】
ここで、MoSiON膜2の光学定数と膜厚をエリプソメータで測定したところ、屈折率:n=2.21、消衰係数:k=0.52、膜厚:d=950Å、透過率:T=6.4%であった。
さらに、MoSiON膜2の位相差を式(1)を使って計算すると、
位相差:Φ=166度となる。従ってこの膜は透過率、位相差ともに大きくする方向へ調整する必要がある。
【0047】
そこで、本発明の方法で透過率、位相差ともに目標値内に入れることができるかどうかを理論的に検討した。
まず本実施例では位相差を180度にするために、MoSiON膜2をパターニング後、石英基板を掘り込む必要がある。その掘り込み量dD は式(1)を応用した次式で求められる。
180−166=360×(ns −1)dD /λ…………式(2)
従って、dD =189Åとなる。
【0048】
つぎに、掘り込み後パターン側の全面を二酸化珪素膜で被覆したと仮定して、MoSiON膜パターン部及びMoSiON膜が除去された石英基板の透光部の各透過率を、二酸化珪素膜の厚さdu を変化させて、文献(2)の方法で計算した。二酸化珪素膜の光学定数は石英基板と同じく、屈折率:nu =1.51、消衰係数:ku =0を用いた。透過率の計算結果を図5(a)、(b)に示す。
【0049】
図5より二酸化珪素膜の厚さdu が約330Åのとき半透明遮光膜パターン部の透過率は目標の8%に極めて近くなることがわかる。また、半透明遮光膜が除去された透明性基板の透光部の透過率は、二酸化珪素膜の有無にかかわらず、96%で一定である。
【0050】
以上のことを理論的に予測したうえで、石英基板1上に形成されたMoSiON膜をパターン化して、ハーフトーン型位相シフトマスクの作製を行った。
【0051】
まず、通常の電子線リソグラフィの工程に従い、MoSiON膜2上に電子線レジストのパターンを形成し、この電子線レジストパターンをマスクとしてMoSiON膜2をフッ素系ガスでドライエッチングして、MoSiON膜パターン2aを形成した(図3(b)参照)。ここで、MoSiON膜パターン2aの位相差を直接測定したところ163度であった。
【0052】
次に、上記式(2)の166度を実際の測定値163度に置き換えて求まる dD =230Åを目標に石英基板1の掘り込みを行い、凹部4を形成した(図3(c)参照)。掘り込みは精度を重視し、希薄な緩衝フッ酸液を使って、低いエッチレートで実施した。その結果、最終的な位相差は目標の180度に一致させることができた。この後MoSiON膜パターン2aの透過率をあらためて測定したところ6.5%であった。
【0053】
次に、MoSiON膜パターン2aのパターン側の全面に、イオンアシスト蒸着法により二酸化珪素膜3を形成した(図3(d)参照)。二酸化珪素膜3の膜厚は後工程のエッチングで調整可能であるので、600Å付近とした。また二酸化珪素膜3の光学定数をエリプソメータで測定したところ、屈折率n=1.51、消衰係数k=0であった。
【0054】
次に、上記理論的予測に従い、二酸化珪素膜3をエッチングして膜厚を減少させ、330Åを目標に膜厚、すなわち透過率の調整を行った。このときのエッチングも前記同様、希薄な緩衝フッ酸液を用い、低いエッチレートで実施した。途中数回エッチングを停止して透過率の測定を行った結果、最終的な透過率として8.0%を得た。また、最後に位相差を再度確認したところ179度であり、目標値を達成した。
【0055】
このようにしてパターン側の全面を被覆する透明性薄膜として、石英基板と同じ屈折率をもつ二酸化珪素膜を用いた本発明のハーフトーン型位相シフトマスクが得られた(図3(e)参照)。
【0056】
<実施例3>
ここでは半透明遮光膜パターン側の全面を被覆する透明性薄膜として、酸化ジルコニウム膜を用いた本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの実施例について説明する。対象とする適用波長及び透過率、位相差の目標値は実施例1と同じである。
【0057】
はじめに、実施例1同様、透明性基板として、6インチ角、0.25インチ厚のフォトマスク用石英基板1(屈折率:ns =1.51、消衰係数:ks =0)にハーフトーンマスク用半透明遮光膜として、ArガスにO2 ガス、N2 ガスを添加した反応性スパッタリング法によりMoSiON膜2を成膜し、マスクブランクを作製した(図3(a)参照)。このMoSiON膜2の光学定数と膜厚をエリプソメータで測定したところ、屈折率:n=2.44、消衰係数:k=0.52、膜厚:d=800Å、透過率:T=9.4%であった。
【0058】
さらに、MoSiON膜2の位相差を式(1)を使って計算すると、
位相差:Φ=167度となる。従ってこの膜は位相差は大きく、透過率は小さくする方向へ調整する必要がある。
【0059】
そこで、本発明の方法で透過率、位相差ともに目標値内に入れることができるかどうかを理論的に検討した。
まず、本例では位相差を180度にするために、MoSiON膜2のパターニング後、石英基板を掘り込む必要がある。その掘り込み量dD は式(1)を応用した次式で求められる。
180−167=360×(ns −1)dD /λ…………式(3)
従って、dD =176Åとなる。
【0060】
前記の掘り込みにより透過率は変化しないので、透過率を小さくするには、掘り込み後パターン側の全面を若干の吸収性をもつ膜で被覆する必要がある。そこで0<ku <0.1なる酸化ジルコニウム膜で被覆したと仮定して、MoSiON膜パターン部及びMoSiON膜が除去された石英基板の透光部の各透過率を、0<ku <0.1なる酸化ジルコニウム膜の屈折率:nu と消衰係数:ku をパラメータとし、酸化ジルコニウム膜の膜厚du を変化させて文献(2)の方法で計算した。
屈折率:nu =2.20、消衰係数:ku =0.05のときの透過率の計算結果を図6(a)、(b)に示す。
【0061】
図6より酸化ジルコニウム膜の膜厚du が約500ÅのときMoSiON膜パターン部の透過率は目標の8%に極めて近くなることがわかる。また、MoSiON膜が除去された石英基板の透光部の透過率は、ku が0でない分低下するが、それでも82%近くあり、ハーフトーン型位相シフトマスクの特性を維持する上で大きな妨げとはならない。
【0062】
以上のことを理論的に予測したうえで、石英基板1上に形成されたMoSiON膜2をパターン化して、ハーフトーン型位相シフトマスクの作製を行った。
【0063】
まず、実施例1と同様、通常の電子線リソグラフィとフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、MoSiON膜パターン2aを形成した(図3(b)参照)。ここで、MoSiON膜パターン2aの位相差を直接測定したところ164度であった。
【0064】
次に、上記式(3)の167度を実際の測定値164度に置き換えて堀込み量:dD =216Åを求め、MoSiON膜パターン2a間の石英基板1を掘り込み、凹部4を形成した(図3(c)参照)。石英基板1の掘り込みは実施例1と同様、希薄な緩衝フッ酸液を使って、低いエッチレートで実施した。その結果、最終的な位相差は目標の180度に一致させることができた。この後透過率をあらためて測定したところ9.5%であった。
【0065】
次に、MoSiON膜パターン2aのパターン側の全面に、Arガスと酸素ガスを主体としたスパッタリング法により酸化ジルコニウム膜を形成した。膜厚は後工程のエッチングで調整可能であるので、600Å付近とした。また酸化ジルコニウム膜の光学定数はエリプソメータで測定したところ、屈折率n=2.21、消衰係数k=0.05であった。
【0066】
次に、理論的な予測に従い、酸化ジルコニウム膜の膜厚500Åを目標に膜厚を減少させ、透過率の調整を行った。酸化ジルコニウム膜の緩衝フッ酸液耐性は二酸化珪素膜に類似しているので、このときのエッチングも実施例1同様、希薄な緩衝フッ酸液を用い、低いエッチレートで実施した。途中数回エッチングを停止して透過率の測定を行った結果、最終的な透過率として8.0%を得た。また、最後に位相差を再度確認したところ179度であり、目標値を達成した。
【0067】
このようにしてパターン側の全面を被覆する透明性薄膜として、酸化ジルコニウム膜を用いた本発明のハーフトーン型位相シフトマスクが得られた。
【0068】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法によれば、まず位相差及び透過率を各々独立した工程で調整することができるので、半透明遮光膜の成膜において選択できる屈折率、消衰係数の幅が広くなり、ハーフトーン型位相シフトマスクの歩留まりが向上する。
【0069】
さらに、最終的な透過率の調整を、位相差を変化させることなく、最上層の透明性薄膜の膜厚調整によって、透過率を連続的に変化させながら行うので、露光条件やウェハー上のレジストプロセスに応じてハーフトーン型位相シフトマスクが最大の解像性向上をもたらすように、微妙に透過率を調整することが可能となる。
【0070】
さらに、透明性薄膜は光学特性の他にハーフトーン型位相シフトマスクの保護膜的役割をもたせることができる。すなわちハーフトーン型位相シフトマスクが繰り返し露光に使用される間に発生する汚染を透明性薄膜で受けとめることで、従来よりもマスクの洗浄が容易になると同時に、従来のハーフトーン型位相シフトマスクのように露出した半透明遮光膜が洗浄時に変質する恐れはなくなる。
【0071】
さらに、上記の汚染や傷が洗浄で取れないときや、露光条件に合わせて透過率を変更したいときは、透明性薄膜の膜厚を変更したり、透明性薄膜を剥離した後、光学特性(屈折率、消衰係数)の異なる透明性薄膜をパターン側の全面に成膜後、その膜厚を調整することで、新たなハーフトーン型位相シフトマスクを作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの構造を示す模式断面図である。
【図2】(a)〜(e)本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの製造工程を示す模式断面図である。
【図3】(a)〜(e)本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの製造工程を示す模式断面図である。
【図4】本発明・実施例1のハーフトーン型位相シフトマスクの説明を補足する透過率の理論計算の例である。
【図5】本発明・実施例2のハーフトーン型位相シフトマスクの説明を補足する透過率の理論計算の例である。
【図6】本発明・実施例3のハーフトーン型位相シフトマスクの説明を補足する透過率の理論計算の例である。
【符号の説明】
1………透明性基板
1’……位相差調整用に凹部が形成された透明性基板
2………半透明性遮光膜
2a……半透明性遮光膜パターン
2’……位相差調整された半透明性遮光膜
2’a……位相差調整された半透明性遮光膜パターン
3………透明性薄膜
3’………透過率調整された透明性薄膜
4………凹部

Claims (1)

  1. 以下の工程を含むことを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
    (1)透明性基板上に半透明遮光膜を形成した後、前記半透明遮光膜の膜厚を減少させるか、若しくは前記半透明遮光膜をパターン化した後前記パターン間の透光部の前記透明性基板を掘り込むことによって位相差を調整する工程。
    (2)前記位相差が調整されたマスクパターン側の全面に、露光波長に対して消衰係数が0.1以下の透明性薄膜を形成する工程。
    (3)前記透明性薄膜を形成した後、前記半透明遮光膜パターンを通過する露光光の透過率が目的の値となるまで、前記透明性薄膜を適量エッチングする工程。
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