JP3675049B2 - 内燃機関の失火検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関に発生した失火を機関出力軸の回転速度変動を利用して検出する内燃機関の失火検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の内燃機関の失火検出装置として、爆発行程が連続する2つの気筒間の回転速度(クランク角速度)の変動量に基づいて失火発生の有無を検出するものがある(例えば、特開平4−365958号公報)。つまり、内燃機関にあっては一般に、ある気筒の爆発行程において失火が発生すると、そのときの回転速度、すなわち機関出力軸であるクランク軸の回転角速度は小さくなる。このため、こうした回転速度の変化を監視することで、それら気筒毎の失火発生の有無を検出することができるようになる。
【0003】
特に、上記公報(特開平4−365958号公報)の失火検出装置では、爆発行程が連続する2つの気筒間の回転速度の変動から第1の変動量を算出すると共に、その第1の変動量を算出した気筒よりも360°CA(クランク角度)前の気筒の回転速度の変動から第2の変動量を算出している。そして、第1及び第2の変動量の差分に基づいて内燃機関の失火の有無を検出するようにしている。こうして360°CAだけ離れた気筒同士で回転速度変動量の差分を求めることは、偶数個の気筒を有する内燃機関において対向気筒(爆発行程がクランク軸の1回転分だけ離れた気筒を意味する)の回転速度変動を監視することとなり、この場合、回転変動の周期(ばらつき度合)が略一致する回転速度変動量をパラメータとして用いることができる。その結果、失火検出の誤差を削減できるものとしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術においては、以下に示す問題を生ずる。つまり、上記従来の失火検出装置では、回転速度変動量の差分をとる組み合わせによっては、検出不可能な失火パターンが存在する。具体的には、上記したように360°CAだけ離れた気筒同士(対向気筒同士)で回転速度変動量の差分を求める場合、その対向気筒が共に連続失火しているような事態が発生すると、失火による回転変動が相殺され、失火発生の旨が検出できないこととなる。また、上記360°CA離れた気筒を組み合わせた場合の差分演算に限らず、他の気筒を組み合わせて回転速度変動の差分を求める場合にも、特定気筒で連続失火するような失火パターンが発生している場合には、やはり失火検出が不可能になるという事態を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、内燃機関に発生するあらゆる失火パターンを精度良く検出することができる内燃機関の失火検出装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
こうした目的を達成するため、この発明ではその前提として、多気筒内燃機関の出力軸の回転に応じた回転信号を出力する回転信号出力手段と、前記回転信号に基づき、同機関出力軸の気筒別回転速度を算出する回転速度算出手段と、2つの気筒について前記気筒別回転速度の変動量を求め、該求めた気筒別回転速度変動量に基づいて当該機関の失火発生を検出する失火検出手段とを備える。なおここで、回転速度変動量は必ずしもそれ自身でなくともよく、それに相当する値、例えば回転角度偏差であってもよい。更に、この回転角度偏差に相当する値、或いは回転所要時間偏差などもこの回転度変動量に相当する値として用いることができる。
【0007】
そして、請求項1に記載の発明ではその特徴として、前記失火検出手段は、各気筒の1燃焼サイクルに要するクランク角を気筒数で除したクランク角を最小単位とし、その整数倍のクランク角度だけ離れた複数の組み合わせの気筒について、前記気筒別回転速度変動量の差分を算出する(変動量差分算出手段)。また、前記複数の組み合わせの気筒別回転速度変動量の差分演算結果を、個々に所定の失火判定値と比較するようにしている(比較判定手段)。
【0008】
ここで、前記1燃焼サイクルに要するクランク角とは、4サイクル式内燃機関においては720°CAを指し、2サイクル式内燃機関においては360°CAを指す。また、1燃焼サイクルに要するクランク角を気筒数で除したクランク角(最小単位)とは、例えば4サイクル4気筒内燃機関では180°CAとなり、4サイクル6気筒内燃機関では120°CAとなる。さらに、クランク角の最小単位を整数倍したクランク角度とは、例えば4サイクル4気筒内燃機関では180°CA,360°CA,540°CA,720°CA・・・となり、4サイクル6気筒内燃機関では120°CA,240°CA,360°CA,480°CA,600°CA,720°CA・・・となる。
【0009】
要するに、本発明で実施するような気筒別回転速度変動量の差分法を用いる失火検出手法では、特定気筒の連続失火が発生する場合において回転速度変動量が相殺され当該失火の検出が不可能になることがある。しかし、上記構成によれば、2階差分による差分演算を複数の気筒組み合わせで実施しその演算結果について個々に失火判定することにより、たとえ連続失火が発生していずれか1つの回転速度変動量の差分が相殺されたとしても他の回転速度変動量の差分により失火発生の旨が検出できる。その結果、内燃機関に発生するあらゆる失火パターンを精度良く検出するという本発明の目的が達せられる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明ではその特徴として、前記失火検出手段は、720クランク角度だけ離れた気筒の前記気筒別回転速度変動量の差分を算出する第1の差分演算法(720°CA差分法)と、360クランク角度だけ離れた気筒の前記気筒別回転速度変動量の差分を算出する第2の差分演算法(360°CA差分法)と、各気筒の1燃焼サイクルに要するクランク角を気筒数で除したクランク角を最小単位とし、360クランク角度の整数倍を除く前記最小単位の整数倍のクランク角度だけ離れた気筒の前記気筒別回転速度変動量の差分を算出する第3の差分演算法(例えば、6気筒内燃機関における120°CA差分法や、4気筒内燃機関における180°CA差分法等)とのうち、少なくともいずれか2つを同時に若しくは選択的に実施する(変動量差分算出手段)。また、前記変動量差分算出手段が実施した前記第1〜第3の差分演算法による気筒別回転速度変動量の差分演算結果を、個々に所定の失火判定値と比較する(比較判定手段)。
【0011】
この場合、より具体的に説明すれば、第1の差分演算法から個々の気筒に対して不連続に発生する失火(以下、これを間欠失火という)が検出され、第2及び第3の差分演算法から少なくとも1つの気筒に対して連続的に発生する失火(連続失火)が検出される。また、偶数個の気筒を有する内燃機関において、第3の差分演算法から360クランク角度離れた対向気筒の連続失火の発生が検出され、第2の差分演算法から上記対向気筒の連続失火以外の連続失火が検出されることとなる(これは、請求項11及び12の記載事項に相当する)。こうして各々の差分演算法により異なる失火パターンが検出できることから、失火の検出漏れが回避され、請求項1と同様に、内燃機関に発生するあらゆる失火パターンを精度良く検出するという本発明の目的が達せられる。
【0012】
また、以上請求項1又は2に記載したように複数の失火パターンが検出できる構成においては、請求項3に記載したように、前記比較判定手段の比較結果から前記気筒別回転速度変動量の差分演算結果に基づく失火数を各々に計数し(失火数計数手段)、該計数された複数の失火数データを用いて最終的な失火判定を実施してもよい(最終失火判定手段)。そして、例えばこの最終の判定結果に基づいて運転者に失火異常の旨を警告する警告灯(MIL:Malfunction indicator light )が点灯制御される。
【0013】
かかる場合、最終失火判定手段の構成として、請求項4に記載したように、所定点火数が経過するまでの期間内において複数実施された差分演算法による失火数の総和を最終的な失火検出数とし、この失火検出数に基づいて失火判定を実施するようにしたり、請求項5に記載したように、所定点火数が経過するまでの期間内において複数実施された差分演算法による失火数の最大値を最終的な失火検出数とし、この失火検出数に基づいて失火判定を実施するようにしたりすることができる。このとき、前者(請求項4)の構成は、失火パターンが間欠失火と連続失火との間で変化したりする場合に好適であり、後者(請求項5)の構成は、失火パターンが同一パターンで継続する場合に好適である。
【0014】
他方、請求項6に記載の発明では、前記第1〜第3の差分演算法のうち、いずれか1つの実施により失火発生の旨が検出された場合には、他の差分演算法の演算結果を用いた失火判定を実施しないこととし、更に、請求項7に記載の発明では、前記第1の差分演算法、前記第2の差分演算法、前記第3の差分演算法の優先順位で各演算を実施するようにしている。つまり、失火検出の精度を比較すればそれは、第1の差分演算法(720°CA差分法)、第2の差分演算法(360°CA差分法)、第3の差分演算法(例えば6気筒内燃機関での120°CA差分法)の順となる。そのため、上記のように優先順位に従って差分演算を実施することで、より精度の高い失火検出が可能となる。また、複数の差分演算を排他的に実施することとなるため、余分な演算処理が不要となり、マイクロコンピュータ支援による失火検出装置を構築する上で、演算効率を向上させることができる。
【0015】
なお、請求項8に記載したように、前記第1〜第3の差分演算法を各々独立に実施することも勿論可能である。この場合にも、失火の検出漏れが回避できるという効果が得られる。
【0016】
また、請求項9に記載の発明では、前記回転信号出力手段により得られる各気筒間の回転信号の偏差を学習値として逐次演算する学習手段を設け、前記変動量差分算出手段により実施される第3の差分演算法においては、前記学習手段により得られた学習値を用いて気筒別回転速度変動量の差分を算出するようにしている。つまり、前記第1の差分演算法(720°CA差分法)及び第2の差分演算法(360°CA差分法)では、同一気筒又は対向気筒の回転速度変動量の差分値から失火検出がなされるため、機関回転速度が変化する傾向が2階差分を実施する上で略等しくなり、回転信号の偏差(公差)による悪影響が生じにくい。しかし、第3の差分演算法(例えば6気筒内燃機関での120°CA差分法)のように、機関回転速度の変化が気筒間でばらつく場合にはその時の偏差(公差)に応じた補正が必要となり、既述した構成のように学習値を用いて補正処理を行なうことにより、失火検出精度が高く維持されるようになる。
【0017】
ところで、上記学習手段においてその学習値をより信頼性の高い値に維持するためには、請求項10に記載の発明によるように、当該機関が正常点火されているか否かを判断し、正常点火されているときにのみ上記学習を実行することが望ましい。こうした構成を採用することにより、当該機関が正常点火されていない旨判断される場合、上記学習の実行は禁止され、同機関の当該運転条件に対応した学習値の信頼性も好適に維持されるようになる。
【0018】
さらには、請求項11に記載したように、前記内燃機関が失火していないこと、或いは路面状況による外乱や運転操作による回転変動が発生していないことを条件に、前記学習を実行することによっても、当該学習値をより信頼性の高い値に維持することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
図1に、この発明にかかる内燃機関の失火検出装置についてその第1の実施の形態を示す。
【0020】
この実施の形態では、内燃機関として6気筒の内燃機関を対象とし、該6気筒の内燃機関に発生した失火を検出する装置について示す。すなわち、同図1に示す本実施の形態の装置において、内燃機関1は、第1気筒(#1)〜第6気筒(#6)の6つの気筒を有する内燃機関である。なお、本実施の形態の内燃機関1では、便宜上その点火順序を#1→#2→#3→#4→#5→#6とする。
【0021】
内燃機関1には吸気管2が設けられ、図示しないエアクリーナから導入された吸入空気は、該吸気管2を通じて同機関1に取り込まれる。また、この吸気管2には吸気管圧力センサ3が設けられ、この吸気管圧力センサ3を通じて吸気管2内の圧力PMが逐次検出される。この検出される吸気管2内の圧力PMは、内燃機関1の運転状態を示す1パラメータとして、後述する電子制御装置(以下、ECUという)9に取り込まれる。
【0022】
一方、内燃機関1の図示しないクランク軸には、同クランク軸の所定クランク角毎に回転信号NEを出力する回転角センサ5が設けられている。同機関1の回転数等は、この回転角センサ5から出力される回転信号NEに基づいて算出される。そしてこの回転信号NEも、内燃機関1の運転状態を示す1パラメータとして、後述するECU9に取り込まれる。
【0023】
また、内燃機関1には、その各気筒に対する点火時期や点火順序等を制御するためのディストリビュータ7が設けられ、該ディストリビュータ7には更に、それら各気筒を判別するための基準位置信号CYLを出力する基準位置センサ6が内蔵されている。この基準位置センサ6では、同機関1の例えば第1気筒のピストン13が最上部、すなわち圧縮上死点(#1TDC)に達する毎に、上記基準位置信号CYLを同じくECU9に対して出力する。なお、ディストリビュータ7自体は通常、内燃機関1からの回転動力を得て、その(1/2)の回転速度で回転する。
【0024】
また、内燃機関1の冷却水路には、同水路を循環する冷却水の温度を検出するための水温センサ8が設けられ、排気管14には、燃焼ガスの酸素濃度に基づき空燃比のリッチ(R)/リーン(L)を検出する酸素(O2 )センサ15が設けられている。これら水温センサ8を通じて検出される冷却水の温度、並びに酸素センサを通じて検出される空燃比のリッチ(R)/リーン(L)を示す信号も、機関1の運転状態を示すパラメータとしてECU9に取り込まれる。
【0025】
これら水温センサ8や酸素センサ15をはじめ、上述した吸気管圧力センサ3、回転角センサ5、及び基準位置センサ6による各検出信号が取り込まれるECU9は、同図1に併せ示されるように、CPU(中央演算処理装置)9aをはじめ、制御プログラムや演算処理に必要とされる制御定数等を記憶しておくための読み出し専用メモリであるROM9b、演算データ等を一時記憶するいわゆるデータメモリとしてのRAM9c、図示しないバッテリを通じてその記憶内容がバックアップされるバックアップRAM9d、及び外部装置との間で信号を入出力処理するためのI/0ポート9eを有して構成されている。
【0026】
このECU9では、大きくは次の(イ)、(ロ)といった処理を実行する。
(イ)上記センサによる各種検出信号に基づき、内燃機関1の燃料系及び点火系の最適な制御量を演算して、燃料噴射手段であるインジェクタ10、或いは点火手段であるイグナイタ11等を的確に制御するための制御信号を出力する。
(ロ)同センサによる各種検出信号に基づき、内燃機関1の各気筒において失火が発生したか否かを検出する。
【0027】
なお、同ECU9において、上記(イ)のインジェクタ10の駆動に際しては、酸素センサ15の出力に基づく周知の空燃比フィードバック制御を併せ実行する。また、上記(ロ)の失火が発生したか否かの検出において、失火が発生した旨判断される場合には、例えば警告ランプ12を点灯制御して失火の発生を運転者等に知らせると共に、適宜のフェイルセーフ処理を実行する。
【0028】
図2は、こうしたECU9の主に失火検出装置としての構成を機能的に示したものであり、次に、この図2を併せ参照して、同実施の形態にかかる失火検出装置の構成、並びに機能を更に詳述する。
【0029】
同図2に示すECU9において、角速度変動量演算部901は、上記取り込まれる吸気管圧力PM、回転信号NE、及び基準位置信号CYLに基づき、気筒別にクランク軸の角速度(クランク角速度)ωn(n=1〜6)を求めると共に、それら角速度ωnから気筒間の角速度変動量Δ(Δω)n-1 を算出する部分である。
【0030】
ここで、同実施の形態にかかる装置のように、6気筒の内燃機関を対象とする場合には、上記クランク角速度ωnの算出に際し、クランク軸が120°CA回転するのに要した時間T120i(iはECU9による処理回数を示す)が用いられ、
ωn=(KDSOMG−ΔθnL)/T120i …(1)
といった態様で、同クランク角速度ωnが算出される。
【0031】
この(1)式において、係数KDSOMGは、クランク軸の回転角速度(rad:ラジアン)を求めるための変換係数であり、また、値ΔθnLは、前記バックアップRAM9d内の後述する気筒間クランク角偏差(公差)学習値メモリ910に格納されている同気筒間クランク角偏差についての学習値である。
【0032】
角速度変動量演算部901ではこのように、気筒間クランク角偏差をその学習値ΔθnLにより補正してクランク角速度ωnを求めるようにしている。
なお因みに、4気筒の内燃機関を対象とする場合には、同クランク角速度ωnの算出に、クランク軸が180°CA回転するのに要する時間T180iが用いられる。
【0033】
また、同角速度変動量演算部901において、上記角速度変動量Δ(Δω)n-1 の算出に際しては、これら求めたクランク角速度ωnについての現在並びに過去の値に基づき、
Δ(Δω)n-1 =(ωn−ωn-1 )−(ωn-α-1 −ωn-α-2 )…(2)
といった2階差分演算を実行する。
【0034】
この(2)式において、値ωnは、今回求めたクランク角速度であり、値ωn-1 は、前回求めたクランク角速度である。そして、これら値の差分(ωn−ωn-1 )は、爆発行程が連続する気筒間での角速度変動量である。
【0035】
また、同(2)式において、値αは、6気筒の内燃機関を対象とする同実施の形態の装置の場合「0〜5」の値をとることができ、通常は、同(2)式による所定気筒間の角速度変動量Δ(Δω)n-1 の演算結果により、失火によるそれら角速度の変動が現れ易い値が用いられる。
【0036】
特に、本実施の形態の装置にあっては、720°CAだけ離れた気筒間で2階差分演算を実施する手法(720°CA差分法という)と、360°CAだけ離れた気筒間で2階差分演算を実施する手法(360°CA差分法という)と、120°CAだけ離れた2階差分演算を実施する手法(120°CA差分法という)とを選択的に実施する構成としており、値αとしては「3」,「1」,「0」が採用される。このとき、次の(3)〜(5)式により、720°CA差分法における気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 720、360°CA差分法における気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 360、及び、120°CA差分法における気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 120が算出できる。
【0037】
△(△ω)n-1 720=(ωn−ωn-1 )−(ωn-6 −ωn-7 )…(3)
△(△ω)n-1 360=(ωn−ωn-1 )−(ωn-3 −ωn-4 )…(4)
△(△ω)n-1 120=(ωn−ωn-1 )−(ωn-1 −ωn-2 )…(5)
本実施の形態では、上記720°CA差分法が請求項記載の第1の差分演算法に、360°CA差分法が請求項記載の第2の差分演算法に、120°CA差分法が請求項記載の第3の差分演算法にそれぞれ相当する。因みに、4気筒の内燃機関を対象とする場合には、この値αとして「0〜3」の値が用いられることとなる。
【0038】
なお、上記値ωn-1 以前の過去の値は、例えば前記RAM9c或いはバックアップRAM9dからなる角速度記憶部905に対して逐次更新登録されていく。6気筒の内燃機関を対象とする同実施の形態の装置の場合、それら過去の値としては、最大でもωn-1 〜ωn-7 の7つの値があれば足りうる。
【0039】
また、同図2に示すECU9において、失火判定部902は、上記算出された気筒間の角速度変動量Δ(Δω)n-1 720,Δ(Δω)n-1 360,Δ(Δω)n-1 120と、同角速度変動量に対応した所定の失火判定値REF720,REF360,REF120とを比較して、内燃機関1における失火発生の有無を判定する部分である。ここでは、気筒間の角速度変動量Δ(Δω)n-1 720,Δ(Δω)n-1 360,Δ(Δω)n-1 120が失火判定値REF720,REF360,REF120を超えるとき、前記RAM9c内にある仮失火カウンタ904の当該気筒に対応するカウンタCMIS1〜CMIS6をインクリメントする。
【0040】
こうした各気筒に対応したカウンタCMIS1〜CMIS6のインクリメントは、点火数カウンタ903を通じて計数される点火数が「100」或いは「500」等の所定の点火数に達するまで継続して実行される。そして例えば、点火数「100」のうち、ある気筒に対応したカウンタCMIS1〜CMIS6の計数値が「30」以上であったような場合、失火による触媒コンバータ(図示せず)のダメージ等が懸念されるため、該ECU9では、前記警告ランプ12の点灯制御等を通じてその旨を運転者に警報する。
【0041】
一方、同ECU9において、学習制御部906は、上記取り込まれる吸気管圧力PM、回転信号NE、及び基準位置信号CYLに基づいて気筒間のクランク角偏差(公差)を学習制御する部分である。
【0042】
ここでは、上記6つの気筒のうち、第1気筒(#1)に対する第2〜第6気筒(#2〜#6)のクランク角偏差を学習するものとし、大きくは、次の(1)及び(2)の処理を実行する。
(1)上記クランク軸が120°CA回転するのに要した時間T120iに基づいて上記第1気筒(#1)に対する第2〜第6気筒(#2〜#6)のクランク角偏差Δθn(n=2〜6)を気筒別に、且つ内燃機関1の運転条件の別に所定数ずつ積算する。
(2)内燃機関1が正常点火されていることを条件に、上記クランク角偏差Δθnの気筒別、且つ運転条件別の積算値を平均すると共に、その平均値に更になまし処理(徐変処理)を施して、これを同クランク角偏差についての学習値ΔθnLとする。
【0043】
なお、上記(1)の処理における積算数の計数には積算カウンタ907が用いられ、クランク角偏差Δθnの気筒別、且つ運転条件別の積算値の登録には前記RAM9c内の気筒間クランク角偏差(公差)積算値メモリ908が用いられる。また、上記学習値ΔθnLも、機関1の気筒別、且つ運転条件の別に求められるものであり、それら求められた学習値ΔθnLは、前記バックアップRAM9d内の気筒間クランク角偏差(公差)学習値メモリ910に対して各々更新登録される。
【0044】
その他、ラフロード(CRG)カウンタ911及び仮失火カウンタ912は、同学習制御部906の上記(2)の処理において内燃機関1が正常点火されているか否かについてのチェック結果が所定点火数分(例えば「100」点火分)の計数値としてセットされるカウンタであり、また点火数カウンタ909は、こうした点火数を繰り返し計数するためのカウンタである。
【0045】
次に、ECU9により実施される失火検出制御について説明する。
図3〜図5に、同ECU9の上記角速度変動量演算部901並びに失火判定部902を通じて実行される失火判定に際してのメインルーチンを、また図6に、同ECU9の上記学習制御部906を通じて実行される公差学習制御ルーチンをそれぞれ示す。以下、これら図3〜図6を併せ参照して、同実施の形態にかかる装置の失火判定動作を更に具体的に説明する。
【0046】
はじめに、図3〜図5に示すメインルーチンについて説明する。
このメインルーチンは、前記回転信号NEに基づき認識される内燃機関1のクランク角が60°CAとなる毎に、角度割り込み処理として起動される。すなわちいま、クランク軸が60°CA回転してこうした割り込み条件が成立すると、電子制御装置9は先ず、ステップS100にて、本ルーチンの前回の割り込み時刻と今回の割り込み時刻との偏差から、同クランク軸が60°CA回転するのに要した時間T60iを算出する。
【0047】
そして、ECU9は、続くステップS101で今回の割り込みタイミングが上死点後(ATDC)60°CAであるか否かを基準位置信号CYLに基づいて判別する。同割り込みタイミングがATDC60°CAでなければ、ECU9はステップS102に進み、時間T60i をT60i-1 として本ルーチンを一旦終了する。なお、これら時間の添字iが同ECU9による処理回数を示すことは前述した。
【0048】
また、同割り込みタイミングがATDC60°CAであれば、ECU9はステップS103以降の失火判定処理を実行する。すなわち、ECU9は、ステップS103で基準位置信号CYLに基づき、今回の気筒番号nを識別し、続くステップS104で上記求めた時間T60i についての過去2回分データを累積して、クランク軸が120°CA回転するのに要した時間T120i を算出する。
【0049】
更に、ECU9は、ステップS105で時間T120i を用い、これに基づいて、
ωn=KDSOMG/T120i …(1)’
といった態様で、同クランク角速度ωnを算出する。上記(1)’式は、既述した(1)式に対し、学習値ΔθnL(NE,PM) が存在しないものとして与えられている。なお、720°CA差分法及び360°CA差分法の場合には、学習値ΔθnLがキャンセルされるため、常に前記(1)式に代えて(1)'式が用いられることとなる。
【0050】
その後、ECU9は、ステップS106で先の(1)式を用い公差補正した、すなわち当該学習値ΔθnLに基づき補正した当該気筒のクランク角速度ωnを算出する。なおここでは、前記クランク角偏差(公差)学習値メモリ910に対応する学習値、すなわち当該気筒の当該運転条件(回転速度NE・機関負荷PM)に対応する学習値ΔθnL(NE,PM) が存在するものとして、公差補正したωnを算出している。
【0051】
更に、ECU9は、次のステップS107で先の(3)〜(5)式、並びに上記求めたクランク角速度ωn を用い、(n−1)番気筒について気筒間の角速度変動量Δ(Δω)n-1 を3通り算出する。但し、720°CA差分法により求められる角速度変動量Δ(Δω)n-1 720及び360°CA差分法により求められる角速度変動量Δ(Δω)n-1 360については、前記ステップS105にて算出されたクランク角速度ωnが用いられ、120°CA差分法により求められる角速度変動量Δ(Δω)n-1 120についは、前記ステップS106にて算出された、公差補正したクランク角速度ωnが用いられる。
【0052】
その後、ECU9は、ステップS108で前記の720°CA差分法により算出された角速度変動量△(△ω)n-1 720と失火判定値REF720とを比較し、同角速度変動量△(△ω)n-1 720が失火判定値REF720を上回るのであれば、失火が発生しているとみなしステップS109で前記図2に示す仮失火カウンタ904の該当気筒番号に対応するCMISカウンタ(CMIS720)を「1」インクリメントする。また、ステップS108が否定判別されれば(△(△ω)n-1 720≦REF720の場合)、ECU9はそのまま図4のステップS110に進む。
【0053】
ここで、上記ステップS108の判別によれば、不定期に発生する失火(間欠失火)を検出することができるものの、例えば同一気筒が連続して失火している場合には、当該気筒での失火発生の旨が検出できない。つまり、720°CA前の爆発行程、すなわち1燃焼サイクル前の自気筒でも失火が発生していると、かかる720°CA差分法では同一気筒同士で差分を算出しているために失火による回転変動が相殺され、角速度変動量△(△ω)n-1 720が失火判定値REF720を上回ることがなく失火発生が検出できなくなる。なお、こうした同一気筒の連続失火は後述する処理にて検出される。
【0054】
その後、ECU9は、図4のステップS110で前記角速度変動量△(△ω)n-1 720と失火判定値REF720とを用い、連続失火が発生している可能性があるか否かを判別する。すなわち、既述したように角速度変動量△(△ω)n-1 720は連続失火の発生時には変動せず、間欠失火時のみ変動する。そのため、角速度変動量△(△ω)n 720に基づいて、失火発生が検出されていない状態が数サイクル連続した場合、連続失火発生の可能性有りとしてステップS110が肯定判別されることとなる。
【0055】
連続失火の可能性がないと判別された場合、既に前記ステップS108,S109で間欠失火発生の旨が検出されているため、ECU9は、以降の失火検出処理(ステップS111〜116)をバイパスし、そのまま図5のステップS117に進む。また、連続失火の可能性有りと判別された場合、ECU9はステップS111に進む。
【0056】
ECU9は、ステップS111で前記の360°CA差分法により算出された角速度変動量△(△ω)n-1 360と失火判定値REF360とを比較し、同角速度変動量△(△ω)n-1 360が失火判定値REF360を上回るのであれば、失火が発生しているとみなしステップS112で前記仮失火カウンタ904の該当気筒番号に対応するCMISカウンタ(CMIS360)を「1」インクリメントする。そして、カウンタのインクリメント後、ECU9は図5のステップS117に進む。
【0057】
この場合、360°CA差分法により算出された角速度変動量△(△ω)n-1 360は、360°CA離れた気筒との差分値であるので、対向気筒(例えば、#1気筒と#4気筒の組み合わせ、#2気筒と#5気筒の組み合わせ、#3気筒と#6気筒の組み合わせ)の連続失火を検出することはできないが、それ以外の組合せの連続失火は全て検出できる。
【0058】
また、前記ステップS111が否定判別されれば(△(△ω)n-1 360≦REF360の場合)、ECU9はステップS113進む。そして、ECU9は、前記クランク角偏差(公差)学習値メモリ910に対応する学習値、すなわち当該気筒の当該運転条件(回転速度NE・機関負荷PM)に対応する学習値ΔθnL(NE,PM) が存在することを条件に(ステップS113がYES)、次のステップS114にて、前記の120°CA差分法により算出された角速度変動量△(△ω)n-1 120と失火判定値REF120とを比較する。つまり、120°CA差分法による角速度変動量△(△ω)n-1 120は、先の(1)式に基づき公差補正した、すなわち当該学習値ΔθnLに基づき補正した当該気筒のクランク角速度ωnを用いて算出されるものであるので、学習値ΔθnL(NE,PM) が存在しなければ、ステップS114による失火検出は実施されないこととなる。
【0059】
この場合、同角速度変動量△(△ω)n-1 120が失火判定値REF120を上回るのであれば、失火発生の可能性があるとみなされる。つまり、120°CA差分法により算出された角速度変動量△(△ω)n-1 120は、120°CA離れた気筒との差分値であるので、隣接した気筒が連続失火している場合は失火検出ができなくなるが、対向気筒が連続失火している場合にはその旨が検出できる。
【0060】
そして、こうしてステップS114が肯定判別されると、ECU9はステップS115に進み、対向気筒が連続失火しているのか否かを判別する。同ステップS115が肯定判別されれば、ECU9は、ステップS116で前記仮失火カウンタ904の該当気筒番号に対応するCMISカウンタ(CMIS120)を「1」インクリメントする。要するに、対向気筒の連続失火以外は既に前記ステップS111で検出されているため、ステップS114では失火発生の気筒組合わせが対向気筒の場合のみが検出される。カウンタのインクリメント後、ECU9は図5のステップS117に進む。
【0061】
次に、ECU9は、図5のステップS117で前記点火数カウンタ903を通じて計数される点火数が所定点火数(例えば、500)に達したか否かを判別する。この場合、点火数が所定点火数に達していれば、ECU9はステップS118〜S123の処理を実施した後、ステップS124に進み、点火数が所定点火数に達していなければそのままステップS124に進む。
【0062】
ステップS117が肯定判別された場合、ECU9は、ステップS118で次の(6)式を用い、前記ステップS109,S112,S116で計数したカウント値CMIS720,CMIS360,CMIS120を気筒毎に加算してその時の該当気筒に対して仮失火カウンタ904のCMISnを積算する(但し、n=1〜6)。
【0063】
CMISn=CMIS720n+CMIS360n+CMIS120n…(6)
なおこのとき、失火数が数個程度であるデータについては、検出誤差である可能性があるため、除外してもよい。
【0064】
更に、ECU9は、続くステップS119で前記の如く求めた仮失火カウンタ904内のCMISn(n=1〜6)を全て加算し、全気筒分の失火数を表すカウントタCMISのカウント値を算出する(CMIS=ΣCMISn)。
【0065】
その後、ECU9は、ステップS120でカウンタCMISと所定の判定値KC(例えば、100)とを比較し、CMIS>KCであれば、ステップS121で失火フラグXMFに「1」をセットする。また、CMIS≦KCであれば、ECU9は、ステップS122で失火フラグXMFを「0」にクリアする。この場合、失火フラグXMFに「1」がセットされると、エミッション悪化や触媒の損傷等の不具合が発生しうるとして、前記警告ランプ12の点灯制御等が実施される。
【0066】
失火フラグXMFの操作後、ECU9は、ステップS123でカウンタCMISをはじめ、その他CMIS720、CMIS360、CMIS120等、全てのカウンタをクリアする。そして最後に、ECU9は、ステップS124で前記角速度記憶部905に既に格納されているクランク角速度データに対し、ωn-7 →廃棄、ωn-6 →ωn-7 、ωn-5 →ωn-6 、ωn-4 →ωn-5 、ωn-3 →ωn-4 、ωn-2 →ωn-3 、ωn-1 →ωn-2 、ωn→ωn-1 といったかたちで更新処理を実施し、その後本ルーチンを終了する。
【0067】
なお、上記メインルーチンは、請求項記載の失火検出手段を構成するものであるが、特に、ステップS105,S106の処理が請求項記載の回転速度算出手段に相当し、ステップS107の処理が請求項記載の変動量差分算出手段に相当する。また、ステップS108,S111,S114の処理が請求項記載の比較判定手段に、ステップS109,S112,S116の処理が請求項記載の失火数計数手段に、ステップS118〜S122の処理が請求項記載の最終失火判定処理に、それぞれ相当する。
【0068】
次に、請求項記載の学習手段を実現するための公差学習制御ルーチンについて、図6のフローチャートを用いて説明する。
この公差学習制御ルーチンも、上記メインルーチンと同様、回転信号NEに基づき認識される内燃機関1のクランク角が60°CAとなる毎に、角度割り込み処理として起動される。
【0069】
そして、この公差学習制御ルーチンにおいても、クランク軸が60°CA回転して割り込み条件が成立する毎に、次の(1)〜(4)に示す処理がECU9(学習制御部906)を通じて実行される。
(1)本ルーチン(公差学習制御ルーチン)の前回の割り込み時刻と今回の割り込み時刻との偏差から、クランク角が60°CA回転するのに要した時間T60iを算出する(ステップS200)。
(2)今回の割り込みタイミングが上死点後(ATDC)60°CAであるか否かを前記基準信号CYLに基づき判別する(ステップS201)。
(3)この割り込みタイミングが上死点後60°CAではない旨判断される場合、上記求めた時間T60iをT60i-1とした後、本ルーチンを一旦終了する(ステップS218)。
(4)同割り込みタイミングが上死点後60°CAである旨判断される場合には、前記基準信号CYLに基づき今回の気筒の気筒番号nを識別した後(ステップS202)、上記求めた時間T60iについての過去2回分のデータを累積して、クランク軸が120°CA回転するのに要した時間T120iを算出する(ステップS203)。
【0070】
こうして時間T120iを算出したECU9は次に、ステップS204にて、上記識別した気筒番号nが第1気筒(#1)であるか否かを判別する。該識別した気筒番号nが第1気筒ではない旨判断される場合、ECU9は、そのままステップS210の公差学習実行条件のチェック処理に移行する。
【0071】
他方、同識別した気筒番号nが第1気筒である旨判断される場合には、次のステップS205にて、該第1気筒に対する第2〜第6気筒(#2〜#6)のクランク角偏差(気筒公差)時間ΔTnを算出する。
【0072】
例えば、第1気筒に対する第2気筒のクランク角偏差時間ΔT#2は、
として算出される。ここで、「(T120i−T120i-6 )/6」項は、過渡補正項であり、気筒間のクランク角偏差時間の算出にこうした過渡補正項を加味することにより、例えば加速時や減速時等、内燃機関の運転条件による過渡的な回転変動増減の影響は好適に排除されるようになる。
【0073】
同様にして、第1気筒に対する第3〜第6気筒のクランク角偏差時間ΔT#3〜ΔT#6は、それぞれ
ΔT#3={(T120i+2×T120i-6 )/3}−T120i-4 …(8)
ΔT#4={(T120i+T120i-6 )/2}−T120i-3 …(9)
ΔT#5={(2×T120i+T120i-6 )/3}−T120i-2 …(10)
ΔT#6={(5×T120i+T120i-6 )/6}−T120i-1 …(11)
として算出される。
【0074】
なお、上記第1気筒の前回のクランク軸120°CA回転時間T120i-6 を含め、第2〜第6気筒のクランク軸120°CA回転時間T120i-5 〜T120i-1 は、上記ステップS203を通じて算出され、後のステップS217を通じて更新されている値が用いられる。
【0075】
こうして第1気筒に対する第2〜第6気筒のクランク角偏差時間ΔTnを算出したECU9は次に、ステップS206にて、次式に基づき、それらクランク角偏差時間ΔTnをクランク角偏差Δθn、すなわち回転角度の偏差に変換する。但し、次式(12)式において、nは、#2〜#6の5気筒分である。
【0076】
Δθn=ΔTn×(120°CA/T120i) …(12)
この第1気筒に対する第2〜第6気筒のクランク角偏差Δθnを求めると、同ECU9は、次のステップS207にて内燃機関1が今現在、特定の運転条件下にないか否かをその都度の運転情報に基づき判別する。ここで、特定の運転条件下とは、例えば急加速や急減速等の過渡状態、シフトチェンジ状態、燃料カット時や復帰時、始動時や電気負荷投入時、アイドル状態、パージ制御状態、EGR(排気還流制御)実行中、可変吸気実行中等々、クランク軸の大きな回転変動を招く特定の運転状態、或いは軽負荷運転域や高回転域等、いわゆる失火判定不能な運転域を意味する。そして、同機関1がこうした特定の運転条件下にないことを条件に、ECU9はステップS208にて、各気筒別、且つ運転条件の別に上記求めた(変換した)クランク角偏差Δθnを積算し、続くステップS209にて、前記積算カウンタ907をインクリメントする。
【0077】
すなわち、内燃機関1が上記急加速や急減速等の過渡状態、シフトチェンジ状態、燃料カット時や復帰時、始動時や電気負荷投入時、等々の運転条件下にあった場合には、上記クランク角偏差Δθnも、同機関1の正常な燃焼状態において求められた値ではない可能性が高い。そこで、内燃機関1のそのような運転条件下では、上記求めたクランク角偏差Δθnについての積算処理を行わないようにしている。なお後述するように、同実施の形態にかかる装置にあっては、この積算処理されるいわば正常なクランク角偏差Δθnのみが、後に実施される公差学習処理に供されることとなる。
【0078】
また、上記ステップS208におけるクランク角偏差Δθnの各気筒別、且つ運転条件別の積算処理は前述のように、前記気筒間クランク角偏差(公差)積算値メモリ908に対して行われる。この積算値メモリ908のメモリ構造を図7に例示する。
【0079】
この図7に示されるように、上記気筒間クランク角偏差(公差)積算値メモリ908は、第2〜第6気筒(#2〜#6)の別に、且つ機関1の運転条件である回転速度(NE)及び負荷(吸気管圧力PM)の別に、クランク角偏差Δθnが積算登録される構造となっている。すなわち、本学習制御ルーチンの繰り返しの実行に基づき、同図7に示されるテーブルの各々には、それぞれ正常なクランク角偏差Δθnが、「ΣΔθn(NE,PM) 」といったかたちで積算登録されるようになる。そして、前記積算カウンタ907は、こうして気筒間クランク角偏差(公差)積算値メモリ908に登録されたクランク角偏差ΣΔθn(NE,PM) の積算数をその計数値として示すこととなる。
【0080】
こうしてクランク角偏差Δθnの積算処理を行うと、ECU9は次に、ステップS210にて、公差学習を行うべきか否か、その実行条件をチェックする。この実行条件のチェック処理については、後に図9及び図10を併せ参照して詳述する。
【0081】
該公差学習実行条件についてのチェックを終えたECU9は、次のステップS211にて、前記点火数カウンタ909の計数値に基づき例えば「100」点火等、所定の点火数が経過しているか否かを判別する。この結果、所定の点火数に達していない旨判別される場合には、ステップS216に移行して、前記点火数カウンタ909をインクリメントし、ステップS217にて、前記各気筒のクランク軸120°CA回転時間T120iの値を
T120i-6 =T120i-5 …(13)
T120i-5 =T120i-4 …(14)
T120i-4 =T120i-3 …(15)
T120i-3 =T120i-2 …(16)
T120i-2 =T120i-1 …(17)
T120i-1 =T120i …(18)
といったかたちで更新した後、本ルーチンを一旦抜ける。
【0082】
他方、所定の点火数を経過している旨判別される場合には、ステップS212にて、上記公差学習実行条件についてのチェック結果に基づき、同実行条件の成否判定を行う。この公差学習実行条件の成否判定処理については、後に図13を併せ参照して詳述する。
【0083】
ECU9は次いで、ステップS213にて、該公差学習実行条件の成否判定が公差学習実行の「可」を示すものであるか「不可」を示すものであるかを判別する。そして、同成否判定が「公差学習実行不可」を示すものであった場合には、上記ステップS216及びステップS217の処理を実行して本ルーチンを一旦抜け、「公差学習実行可」を示すものであったときに、ステップS214にて公差学習を実行する。
【0084】
この公差学習は、前記バックアップRAM9d内の気筒間クランク角偏差(公差)学習値メモリ910に対して行われる。この学習値メモリ910のメモリ構造を図8に例示する。
【0085】
この図8に示されるように、該学習値メモリ910も、上記気筒間クランク角偏差(公差)積算値メモリ908(図7)同様、第2〜第6気筒(#2〜#6)の別に、且つ機関1の運転条件である回転速度(NE)並びに負荷(吸気管圧力PM)の別に、前記クランク角偏差についての学習値ΔθnLが更新登録される構造となっている。
【0086】
そしてここでは、上述した積算処理(ステップS208)において気筒間クランク角偏差(公差)積算値メモリ908に登録されている気筒別、運転条件別のクランク角偏差積算値ΣΔθn(NE,PM) を読み込んでその平均値Δθn(NE,PM)_AVを
Δθn(NE,PM)_AV =ΣΔθn(NE,PM) /(積算カウンタ計数値)…(19)
として求めると共に、該求めたクランク角偏差平均値Δθn(NE,PM)_AVと上記学習値メモリ910内の当該気筒、並びに当該運転条件に対応する同クランク角偏差についての学習値ΔθnL(NE,PM) とから、なまし(徐変)演算
を実行して、新たな学習値ΔθnL(NE,PM) を求める。そして、この新たに求めた学習値ΔθnL(NE,PM) を、上記学習値メモリ910の該当する欄に更新登録する。
【0087】
なお、上記(20)式において、値「8」は、なまし(徐変)係数であり、該値「8」以外にも処理系に応じた任意の値を採用することができることは云うまでもない。
【0088】
また、上記学習値メモリ910において、その学習値ΔθnL(NE,PM) の更新が行われるのは、上記積算値メモリ908にも対応するクランク角偏差積算値ΣΔθn(NE,PM) が存在している場合に限られる。すなわち、対応するクランク角偏差積算値ΣΔθn(NE,PM) が存在していなかった場合、その平均値Δθn(NE,PM)_AVも得られないことから、上記(20)式のなまし(徐変)演算自体、その実行が不可能となる。
【0089】
公差学習制御ルーチンにおいて、こうして公差学習を実行したECU9は、次のステップS215にて、前記積算値メモリ908、前記積算カウンタ907、及び前記点火数カウンタ909をそれぞれリセットする。そして次の学習に備えるべく、上述したステップS216並びにステップS217の処理を実行した後、本ルーチンを一旦抜ける。
【0090】
ECU9(学習制御部906)を通じてこのような機関1の運転条件に応じた学習処理が行われることにより、前記メインルーチン(図3〜図5)において同学習値ΔθnL(NE,PM) に基づき公差補正された値として算出されるクランク角速度ωnの値も自ずとその信頼性が高められることとなる。そしてひいては、その後の失火判定に際しても、その判定精度は自ずと高いものとなる。
【0091】
次に、図9及び図10を参照して、上記公差学習制御ルーチンにおけるステップS210の処理として実行される公差学習実行条件のチェック処理について説明する。
【0092】
この図9及び図10に示す公差学習実行条件のチェックルーチンにおいて、ECU9(学習制御部906)は、これまでと同様に、先ずは次の(1)〜(4)の処理を実行する。
(1)前回の割り込み時刻と今回の割り込み時刻との偏差から、クランク角が60°CA回転するのに要した時間T60iを算出する(ステップS300)。
(2)今回の割り込みタイミングが上死点後(ATDC)60°CAであるか否かを前記基準信号CYLに基づき判別する(ステップS301)。
(3)この割り込みタイミングが上死点後60°CAではない旨判別される場合、上記求めた時間T60iをT60i-1とした後、本ルーチンを一旦終了する(ステップS319)。
(4)同割り込みタイミングが上死点後60°CAである旨判別される場合には、前記基準信号CYLに基づき今回の気筒の気筒番号nを識別した後(ステップS302)、上記求めた時間T60iについての過去2回分のデータを累積して、クランク軸が120°CA回転するのに要した時間T120iを算出する(ステップS303)。
【0093】
その後、ECU9は、次のステップS304にて、先の(1)’式に基づき気筒毎のクランク角速度ωnを算出する。そして、更に次のステップS305にて、それら算出したクランク角速度ωnに基づき、360°CA差分法、すなわち失火検出対象となる気筒及びその隣接気筒の回転角速度差分を360°CA離れた気筒の同差分から差し引いた2階差分
Δ(Δω)n-1 =(ωn− ωn-1 )−(ωn-3 −ωn-4 )…(21)
を用いてクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 を算出する。
【0094】
こうしてクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 を算出したECU9は次に、ステップS306にて、このクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 と同変動量Δ(Δω)n-1 に対して予め設定されている失火判定値REF2とを比較する。そして、このクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 が失火判定値REF2を超えている旨判別される場合には、ステップS307にて、前記仮失火カウンタ912のうちのCMFカウンタをインクリメントして、ステップS308の処理に移行する。
【0095】
他方、ステップS306において、クランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 が失火判定値REF2以下である旨判別される場合には、そのままステップS308の処理に移行する。
【0096】
ステップS308においては、上記クランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 と同変動量Δ(Δω)n-1 に対して予め設定されているラフロード(悪路走行)判定値REF3(<REF2)とを更に比較する。
【0097】
ラフロードにあっては一般に、過渡的な回転変動が起こりやすい状況にあるため、こうした状況が継続される場合にも、公差学習は実行すべきではない。
そこで、ECU9は、同ステップS308において、クランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 が該ラフロード判定値REF3を超えていて且つ上記失火判定値REF2以下である旨判別される場合には、現在ラフロードを走行中であるとして、ステップS309にて前記ラフロード(CRG)カウンタ911をインクリメントする。
【0098】
他方、同ステップS308において、クランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 が上記ラフロード判定値REF3以下である旨判別される場合には、そのままステップS310の処理に移行する。
【0099】
この公差学習実行条件チェックルーチンにおいて、図10のステップS310以降の処理は、上記360°CA差分法では失火の判定が不可能である360°CA対向気筒連続失火を検出するための失火判定処理である。引き続き、それら処理の詳細について説明する。
【0100】
上記ラフロード判定を終えたECU9は、次のステップS310にて、前記酸素(O2 )センサ15の出力に基づく空燃比フィードバック(F/B)制御の実行中であるか否かを先ず判別する。
【0101】
因みに、こうしたフィードバック制御が実行されている状態にあって機関1に失火が発生している場合には、その空燃比フィードバック補正係数cfbと同補正係数の平均値cfbAVとの和が、上記酸素センサ15の特性や内燃機関個々の機差などによる初期公差よりも大きい側(空燃比のリーン(L)側)にずれることが発明者等によって確認されている。
【0102】
そこで、ECU9は、上記ステップS310にて空燃比フィードバック制御中である旨判別される場合、ステップS311にて、空燃比フィードバック補正係数cfb及び同補正係数の平均値cfbAVの和と上記初期公差とを比較し、それら和が上記初期公差以上であるときには、失火が発生しているとして、ステップS312にて前記仮失火カウンタ912のうちのCOFカウンタをインクリメントする。
【0103】
ところで、上記ステップS311の判定処理は、空燃比のフィードバック制御が実行中であることが大前提となるが、例えば高負荷燃料増量中など、こうしたフィードバック制御が行われない場合であっても、当該機関1が正常点火されているか否かについての判別が行われることが望ましい。
【0104】
因みに、前記酸素(O2 )センサ15にあっては、その活性時、内燃機関1に失火が発生すると、
(A)その出力周期が極端に短くなる、或いは
(B)その出力がリーン(L)側にへばりつく、
といった何れかの状態を示すようになることが発明者等によって確認されている。これら(A)及び(B)の状態についての測定結果をそれぞれ図11及び図12に示す。
【0105】
例えば、内燃機関1の失火に伴い、酸素センサ15の出力周期が短くなる場合には、図11において「FO2 センサ出力」として示されるように、正常点火時の振幅周期(およそ0.5〜2Hz)に対して明らかに区別できるような短い周期(同図11に「csgt」として示される点火周期程度)となる。
【0106】
なお、この図11は、空燃比フィードバック制御が実行されている状態における上記空燃比フィードバック補正係数cfbの推移についても併せ示しており、機関1に失火が発生した場合にこの空燃比フィードバック補正係数cfbと同補正係数の平均値cfbAVとの和が大きな値をとるようになることは、この図11によっても明らかである。
【0107】
一方、内燃機関1の高負荷燃料増量時(WOT)には、同機関1の失火に伴い、酸素センサ15の出力がリーン(L)側にへばりつくようになる。そしてこの場合には、図12においてこれも「FO2 センサ出力」として示されるように、上述した正常点火時の振幅周期よりも十分長い時間に亘って、その出力がリーン(L)側に固定されるようになる。
【0108】
このように、上記酸素センサ15が活性状態にあれば、その出力(R/L)を監視することで、内燃機関1の失火発生の有無を判定することができるようになる。
【0109】
図10に示す同公差学習実行条件チェックルーチンにおいて、ステップS313以降の処理は、こうした原理に基づいて酸素センサ15の出力から内燃機関1の失火発生の有無を判定するための処理である。
【0110】
すなわち、上記ステップS310にて空燃比フィードバック制御中ではない旨判別した、或いは空燃比フィードバック制御中であったとしても上記ステップS311にて空燃比フィードバック補正係数cfb及び同補正係数の平均値cfbAVの和が上記初期公差未満である旨判別したECU9は、ステップS313にて、上記酸素(O2 )センサ15が活性状態にあるか否かを判別する。
【0111】
そして、同酸素センサ15が活性状態にあることを条件に、それぞれ、
・その出力周期(振幅周期)が正常点火時の振幅周期Fsよりも短いか否か(ステップS314)、
・そのリーン(L)側の出力時間が正常点火時のリーン側出力時間TLOW よりも長いか否か(ステップS316)、
といった比較を行う。
【0112】
同出力周期が正常点火時の振幅周期Fsよりも短い旨判別された場合、ECU9は、ステップS315にて前記仮失火カウンタ912のうちのCFカウンタをインクリメントする。また、同出力のリーン側出力時間が正常点火時のリーン側出力時間TLOW よりも長い旨判別される場合、ECU9は、ステップS317にて前記仮失火カウンタ912のうちのCTカウンタをインクリメントする。
【0113】
こうして全ての項目についてのチェックを終えたECU9は、最後に、ステップS318にて、上記ステップS304において算出したクランク角速度ωnをはじめとするそれら気筒毎のクランク角速度の値に対し、前述のようにωn-5 →廃棄、ωn-4 →ωn-5 、ωn-3 →ωn-4 、ωn-2 →ωn-3 、ωn-1 →ωn-2 、ωn→ωn-1 といった更新処理を施して、同公差学習実行条件チェックルーチンを抜ける。
【0114】
なお、こうした公差学習実行条件のチェックルーチンが、前記点火数カウンタ909の計数値に基づき、例えば「100」点火等を経過するまで繰り返し実行されるようになることは公差学習制御ルーチン(図6)の説明において既述した通りである。
【0115】
次に、図13を更に参照して、上記公差学習制御ルーチンにおけるステップS212の処理として実行される公差学習実行条件の成否判定処理について説明する。
【0116】
この図13に示す公差学習実行条件の成否判定ルーチンは前述のように、公差学習制御ルーチン(図6)のステップS211において上記所定の点火数を経過している旨判別される場合に起動される。
【0117】
こうして公差学習実行条件の成否判定ルーチンが起動されると、ECU9(学習制御部906)は先ず、ステップS400にて、前記仮失火カウンタ912を構成する各カウンタ(CMFカウンタ、COFカウンタ、CFカウンタ、及びCTカウンタ)の計数値が何れか1つでも「1」以上となっているか否か、或いは前記ラフロードカウンタ(CRGカウンタ)911の計数値が同計数値に対する所定のラフロード判定値KRG以上となっているか否かを判別する。
【0118】
その結果、前記仮失火カウンタ912の計数値が何れか1つでも「1」以上となっている場合、或いは前記ラフロードカウンタ911の計数値が上記判定値KRG以上となっている場合には、ステップS401にて、前記RAM9c内の適宜の領域に「公差学習実行不可」を示すフラグをセットする。
【0119】
他方、前記仮失火カウンタ912の計数値が何れも「0」であり、且つ前記ラフロードカウンタ911の計数値が上記判定値KRG未満である場合には、ステップS402にて、同RAM9c内の適宜の領域に「公差学習実行可」を示すフラグをセットする。
【0120】
こうしてフラグ処理を終えると、同ECU9は、前記仮失火カウンタ912並びにラフロードカウンタ911をリセットして、同公差学習実行条件の成否判定ルーチンを抜ける。
【0121】
公差学習制御ルーチン(図6)のステップS213において、ECU9は、こうして処理した「公差学習実行可」を示すフラグ、或いは「公差学習実行不可」を示すフラグに基づいて前述した公差学習実行の「可」若しくは「不可」を判別することとなる。換言すれば、図9及び図10に示した公差学習実行条件のチェックルーチンにおいて、その全てのチェック項目が正常である場合にのみ、前記態様での公差学習、すなわちその学習値ΔθnL(NE,PM) の更新が行われるようになる。そしてこのため、同学習値ΔθnL(NE,PM) の信頼性も自ずと高く維持されるようになる。
【0122】
以上説明したように、同実施の形態にかかる失火検出装置によれば、以下に示す優れた効果が得られる。
(a)本実施の形態では、6気筒内燃機関について、720°CA差分法と、360°CA差分法と、120°CA差分法とを実施し、その演算結果である△(△ω)n-1 720,△(△ω)n-1 360,△(△ω)n-1 120を、個々に所定の失火判定値REF720,REF360,REF120と比較するようにした。この場合、720°CA差分法による演算結果から間欠失火が、120°CA差分法による演算結果から対向気筒の連続失火の発生が、更に360°CA差分法から上記対向気筒の連続失火以外の連続失火が検出されることとなる。こうして各々の差分法により異なる失火パターンが検出できることから、失火の検出漏れが回避され、内燃機関1に発生するあらゆる失火パターンを精度良く検出することができる。
【0123】
(b)また、上記各差分法により得られる複数の失火数データの総和を用いて最終的な失火判定を実施するようにした。つまり、失火数データの総和に応じて運転者に失火異常の旨を警告する警告ランプ12を点灯制御するようにした。かかる場合、この構成は、失火パターンが間欠失火と連続失火との間で変化したりする場合に好適な効果を得ることができる。
【0124】
(c)720°CA差分法、360°CA差分法及び120°CA差分法のうち、いずれか1つの実施により失火発生の旨が検出された場合には、他の差分法を実施しないこととし、更に、その優先順位をそれらの検出精度に合わせて720°CA差分法、360°CA差分法、120°CA差分法の順とした。そのため、より精度の高い失火検出が可能となる。また、複数の差分演算が排他的に実施されることとなるため、余分な演算処理が不要となり、マイクロコンピュータ支援による失火検出装置を構築する上で、演算効率を向上させることができる。
【0125】
(d)内燃機関1の気筒別、且つ、運転条件の別にクランク角偏差(気筒間角度公差)についての学習を行うようにしたことで、同機関1のその都度の気筒、並びに運転条件に応じた極めて正確なクランク角速度ωnを算出することができるようになる。そしてこのため、それらクランク角速度ωnの推移に基づき算出されるクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 も自ずと正確な値となり、該クランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 と失火判定値REFとの比較のもとに行われる失火の判定精度も極めて高く維持されるようになる。このとき、120°CA差分法のように、機関回転速度の変化が気筒間でばらつく場合にも、既述した構成のように学習値ΔθnLを用いて補正処理を行なうことにより、失火検出精度が高く維持されるようになる。
【0126】
(e)また特に、360°CA差分法に基づき判定される失火はもとより、該360°CA差分法では失火の判定が不可能である360°CA対向気筒連続失火等についてもその発生の有無を判定すると共に、それら判定において正常な点火が確認された場合にのみ上記学習を実行するようにしたことから、学習値の信頼性も高く維持されるようになる。
【0127】
(f)機関1が例えば急加速や急減速等の過渡状態、シフトチェンジ状態、燃料カット時や復帰時、始動時や電気負荷投入時、アイドル状態、パージ制御状態、EGR(排気還流制御)実行中、可変吸気実行中等々、クランク軸の大きな回転変動を招く特定の運転状態にあるとき、或いは軽負荷運転域や高回転域等、いわゆる失火判定不能な運転域にあるときにも学習の実行を禁止するようにしたため、これによっても学習値の信頼性は高く維持される。
【0128】
(g)前記(7)式〜(11)式によるように、気筒間のクランク角偏差時間ΔTnの算出に過渡補正項を加味したことで、例えば急加速時や急減速時等、機関1の運転条件による過渡的な回転変動増減の影響も上記学習値から好適に排除されるようになる。
【0129】
なお、同実施の形態の装置にあっては、公差学習制御ルーチン(図6)のステップS204において第1気筒(#1)を判別した際、この第1気筒と他の第2〜第6気筒(#2〜#6)との間の全てのクランク角偏差を求めるようにした。しかし、偶数個の気筒からなる内燃機関であれば、360°CA離れた気筒同士は同じロータ被検出部を通じてそのクランク角度が検出されるため、それら気筒間のクランク角偏差はそもそも小さい。
【0130】
したがって、これら360°CA離れた気筒同士を1組とし(6気筒の場合であれば3組となる)、それら組毎に気筒間の(組間の)公差学習を行う構成とすることもできる。このような構成によれば、ECU9において必要とされる演算量やROM、RAM等のメモリ容量を大幅に削減することができるようになる。
【0131】
また、公差学習制御ルーチンの同ステップS204において判別する気筒は、第1気筒(#1)に限らず、他の任意の気筒であってもよい。要は、特定の気筒(若しくは組)に対する他の気筒(若しくは組)のクランク角偏差が算出される構成でありさえすればよい。
【0132】
また、同実施の形態の装置にあっては、同じく公差学習制御ルーチン(図6)のステップS208及びステップS214において、それぞれ図7及び図8に示される態様で、機関1の運転条件(回転速度NE,機関負荷PM)の別にクランク角偏差Δθnを積算し、或いは学習するようにした。しかし、内燃機関の上記運転条件に鑑みた場合、図14(a)及び(b)に、第1、第4気筒グループに対するそれぞれ第2、第5気筒グループ、及び第3、第6気筒グループの機関負荷に対する回転変動公差を例示するように、機関負荷が変化しても、それら回転変動公差の傾向はほぼ一定となっている。
【0133】
したがって、図7及び図8に例示したメモリ構造においても、その運転条件として機関負荷の欄を削除し、気筒並びに回転速度の別に、上述したクランク角偏差Δθnの積算、或いは学習が行われる構成とすることもできる。こうした構成によっても、ECU9において必要とされる演算量やROM、RAM等のメモリ容量は大幅に削減されるようになる。
【0134】
また、上述したクランク角偏差Δθnの積算、或いは学習を機関1の運転条件の別に行うにしろ、同機関1の高回転域ではそれら積算、或いは学習が行われる機会は少ない。そしてこのため、学習値が求まらず、失火が発生してもその旨を検出することができないこともある。しかし、図15に例示したように、各気筒間のクランク角偏差(公差)には、回転速度が増加するとそれら公差もほぼ直線的に増加する傾向がある。
【0135】
すなわち、機関1の例えば低回転域における頻度の高い2運転条件でそれら公差が学習されたときには、いわゆる線形補間を行うことによって、同機関1の高回転域での公差を割り出すことが可能となる。こうした原理に基づいて機関1の高回転域での公差を割り出し、該割り出した公差を学習するようにすれば、上記不都合も好適に解消されるようになる。
【0136】
また同原理によれば、機関1の回転変動が大きくなることを予想して公差学習実行条件から外した領域についても、上記線形補間によってそれら領域の公差を学習することができるようになる。
【0137】
また、内燃機関1において失火が発生した場合、その未燃ガスが排気管14内で後燃えし、公差学習実行条件のチェックルーチン(図9、図10)においてその酸素(O2 )センサ15の出力に基づく正確な失火判定(ステップS314及びステップS316)が不能となることがある。しかし、上記実施の形態の装置において、
・排気温センサを追加し、同センサを通じて検出される排気温度が所定温度以上となるときには学習の実行を禁止する、或いは、
・高負荷状態での運転時等、後燃えが発生しやすい運転条件では学習の実行を禁止する、
といった構成を併せ具えるようにすれば、こうした不都合も好適に回避されるようになる。
【0138】
また、同実施の形態の装置にあっては、上記酸素センサ15の出力に基づいて空燃比のフィードバック制御を行うシステムを想定した。しかし、機関の燃焼ガスに基づき空燃比をリニアに検出するリニア空燃比センサを用い、該リニア空燃比センサの出力に基づいて同空燃比のフィードバック制御を行うシステムにあっては、このリニア空燃比センサの出力を利用して、公差学習実行条件チェックルーチン(図9、図10)における前記ステップS314及びステップS316の処理に相当する失火判定を行うこともできる。
【0139】
因みに、リニア空燃比センサの場合、当該機関に失火が発生すると、
(a)その出力がリーン側に変化する、或いは、
(b)その出力が全体的にリーン側へのオフセットを持つようになる、
といった何れかの状態を示すようになる。したがってこの場合、前記学習制御部906としては、
・該リニア空燃比センサの出力が所定期間以上リーン側にあるとき前記CFカウンタをインクリメントする、
・該リニア空燃比センサの出力の平均値が所定値以上リーン側にあるとき前記CTカウンタをインクリメントする、
といった構成を採ることとなる。
【0140】
なお、こうした失火判定に寄与し得るセンサとしては、HC濃度センサなどもある。
また、同公差学習実行条件チェックルーチン(図9、図10)におけるチェック項目の選択、或いは組み合わせ等は任意であり、対象となるシステムの規模に応じて自由にそれら項目の選択、或いは組み合わせを行うことができる。もっとも、前述した項目の全てが選択されるとき、前記学習値の信頼性が最大となことは云うまでもない。
【0141】
また、同実施の形態の装置にあって、上記公差学習実行条件のチェックルーチン(図9、図10)におけるステップS305のクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 の算出には、前記(21)式による360°CA差分法を用いることとしていた。
【0142】
しかし、ある気筒において失火が発生した場合、クランク角速度ωnは通常、その後徐々に正常な角速度に戻るようになる。このため、上記360°CA差分法においても次式(21)’式として示すように、
Δ(Δω)n-1 =(ωn−ωn-1 )−(ωn+3 −ωn+4 )…(21)’
といったかたちで、その後のクランク角速度「ωn+2 」及び「ωn+3 」を導入することが望ましい。これにより、失火発生の際にはクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 としてより大きな値が得られ、S/N(信号/雑音)比の向上が図られるようになる。
【0143】
また、同実施の形態の装置にあっては、公差学習実行条件の成否判定処理(図13)において「公差学習実行可」を示すフラグがセットされることを条件に前記学習値の更新が行われるとしたが、他に例えば、
・更新しようとする値とそれまでの学習値との差が所定以上に大きいときには、その更新しようとする値が複数回連続してほぼ同じ値となるときに限り、その値による学習値の更新を許可する、
といった学習アルゴリズムを採用するようにしてもよい。このようなアルゴリズムによれば、偶然に求まった値によって誤った学習が行われることもなく、それら学習値の信頼性が更に向上されるようになる。
【0144】
なお、この公差学習値の算出に際し、同実施の形態の装置では上述のように、所定のサンプル数となるまで運転条件別のクランク角偏差を積算し、その平均値(Δθn(NE,PM)_AV)に基づき(正確には(20)式のなまし演算によって)学習値(ΔθnL(NE,PM) )を求めたが、この平均値に代えて、所定のサンプル数となるまで同運転条件別のクランク角偏差をなまし処理した値なども適宜採用することができる。
【0145】
また、同実施の形態の装置にあっては、メインルーチン(図3〜図5)での失火判定の際、失火判定値REFと比較されるクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 を前記学習値に基づき補正することとしたが、失火判定値REFの側を前記学習値に基づき補正するようにしても勿論よい。
【0146】
また、同学習値としても、前記クランク角偏差(気筒間角度公差)に限らず、それに相当する値、例えばクランク角速度、或いはその変動量、等々を採用することもできる。
【0147】
次に、本発明の第2〜第5の実施の形態について図面を用いて説明する。但し、以下の各実施の形態の構成において、上述した第1の実施の形態と同等であるものについてはその説明を簡略化する。そして、以下には第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0148】
(第2の実施の形態)
本第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態におけるメインルーチン(図3〜図5)の一部を変更して実現されるものであって、図16はその変更部分を抽出して示すフローチャートである。つまり、図16のフローは、前記図3及び図4のステップS108〜S116に相当する部分であり、それ以外は図3〜図5のフローに準ずる。
【0149】
さて、図16では、ステップS107以前の処理にて、720°CA差分法における気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 720、360°CA差分法における気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 360、及び、120°CA差分法における気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 120が算出されており、ECU9は、ステップS150,S152,S154で上記△(△ω)n-1 720,△(△ω)n-1 360,△(△ω)n-1 120をぞれぞれ失火判定値REF720,REF360,REF120と比較する。この場合、上記比較判定の優先順位を720°CA差分法、360°CA差分法、120°CA差分法の順とし、先のステップで失火発生の旨が判別された場合には、後に来る失火判定が実施されないようになっている。
【0150】
そして、ステップS150,S152,S154のいずれかが肯定判別されると、ECU9は、ステップS151,S153,S15
5のどれかで前記図2に示す仮失火カウンタ904の気筒別カウンタCMISn(ここでは、CMIS720,CMIS360,CMIS120として示す)をインクリメントする。そして、同図16の処理後、ECU9は前記図5のステップS117に進み、それ以降、各カウンタにより計数された失火数に応じた失火判定処理を実施する(既述した処理と同様であるため、ここでは説明を省略する)。
【0151】
本第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、各々の差分法により異なる失火パターンが検出できることから、失火の検出漏れが回避され、内燃機関1に発生するあらゆる失火パターンを精度良く検出することができる。また、第1の実施の形態の構成と比較して、前記図4のステップS110,S113,S115の処理が削除されたかたちとなり、演算処理が簡素化できる。
【0152】
(第3の実施の形態)
本第3の実施の形態においても、上記第1の実施の形態におけるメインルーチン(図3〜図5)の一部を変更して実現されるものであって、図17はその変更部分を抽出して示すフローチャートである。つまり、図17のフローは、前記図3〜図5のステップS108〜S119に相当する部分であり、それ以外は図3〜図5のフローに準ずる。
【0153】
さて、図17では、ステップS107以前の処理にて、720°CA差分法における気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 720、360°CA差分法における気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 360、及び、120°CA差分法における気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 120が算出されている。そして、ECU9は、ステップS160以降で3通りの失火判定(仮判定)を順次実行する。
【0154】
つまり、ECU9は、ステップS160で上記△(△ω)n-1 720と失火判定値REF720とを比較し、△(△ω)n-1 720>REF720であれば、ステップS161で前記図2の仮失火カウンタ904の気筒別カウンタCMISn(ここではCMIS720として示す)をインクリメントする。
【0155】
また、ECU9は、ステップS162で上記△(△ω)n-1 360と失火判定値REF360とを比較し、△(△ω)n-1 360>REF360であれば、ステップS163で仮失火カウンタ904の気筒別カウンタCMISn(ここではCMIS360として示す)をインクリメントする。更に、ECU9は、ステップS164で上記△(△ω)n-1 120と失火判定値REF120とを比較し、△(△ω)n-1 120>REF120であれば、ステップS165で仮失火カウンタ904の気筒別カウンタCMISn(ここではCMIS120として示す)をインクリメントする。
【0156】
その後、点火数が所定数に達していることを条件に(ステップS166)、ECU9は、ステップS167で上記各カウンタCMIS720,CMIS360,CMIS120の最大値を最終失火数に相当するカウンタCMISの計数値とする(CMIS=max(CMIS720,CMIS360,CMIS120))。このとき、最終失火数を表すカウンタCMISは、一旦、気筒毎の失火数を算出した後で求めるようにしてもよい。
【0157】
そして、同図17の処理後、ECU9は前記図5のステップS120に進み、それ以降、カウンタCMISに応じた失火判定処理を実施する(既述した処理と同様であるため、ここでは説明を省略する)。
【0158】
本第3の実施の形態でもやはり、上記第1の実施の形態と同様に、各々の差分法により異なる失火パターンが検出できることから、失火の検出漏れが回避され、内燃機関1に発生するあらゆる失火パターンを精度良く検出することができる。また、特に本実施の形態では、各差分法について、いずれの差分法をも同時に実施するようにしたため、失火の検出漏れがより一層確実に回避できるという効果が得られる。
【0159】
更に、本実施の形態では、所定点火数が経過するまでの期間内において複数実施された差分演算法による失火数の最大値を最終的な失火検出数とし、この失火検出数に基づいて失火判定を実施するようにしたため、失火パターンが同一パターンで継続する場合に好適に失火検出が実施できる。
【0160】
(第4の実施の形態)
ところで、上記各実施の形態では触れなかったが、内燃機関の特性として、機関本体の振動等により、ある特定の回転速度においてクランク角偏差が著しく不均一となることがある。その一例として、機関本体の振動により、クランク角度を検出するための前述した電磁ピックアップの取り付け腕(ステー)が共振し、同ピックアップとロータ被検出部との位置関係が変化することなどが挙げられる。
【0161】
このような場合、電磁ピックアップによるロータ被検出部の検出間隔(検出時間)が変則的になってしまうことから、同検出時間に基づき前記(12)式を通じて算出されるクランク角偏差(角度公差)Δθにも図18に示されるような特異点SP、SP’が生じることとなる。因みに図18は、排気量1800cc直列4気筒エンジンについて測定した回転速度と同角度公差Δθとの関係についての実測データである。
【0162】
そして、このような特異点SP、SP’が生じる場合、同クランク角偏差Δθについての前記運転条件(回転速度)別の公差学習を行い、それ以外の回転速度領域ではそれら公差学習値からの直線補間によってその角度公差を求めたとしても当該角度公差特性を正確に角速度変動量に反映させることはできず、ひいては前記メインルーチン(図3〜図5)を通じて実行される失火判定についての誤判定をも招きかねなくなる。
【0163】
なお、このような特異点SP、SP’の生じ方は、機関の種類や形状、更にはそのおかれる環境等によって区々であり、機関のどのような運転条件で該特異点SP、SP’生じるかを特定することは困難である。また、そうかといって、対象となる内燃機関の全運転領域に亘ってそれら角度公差を全て学習するにはメモリ容量等の制限を受けることとなり、やはり現実的ではない。
【0164】
そこで以下に、この発明にかかる失火検出装置の他の実施の形態として、クランク角偏差(角度公差)Δθに上記特異点が生じる場合であっても、少ないメモリ容量で、しかも好適に該特異点による影響を回避することのできる装置についてその一例を示す。
【0165】
ここでは、先の実施の形態の装置による前記公差学習に併せて、その公差学習値と上記特異点を含む実公差との偏差についての図19及び図20に示されるような偏差学習制御を実行し、その偏差学習値に基づき前記メインルーチン(図3〜図5)で用いられる失火判定値REF120を補正して上記特異点の存在に起因する誤った失火判定が行われることを回避する。
【0166】
因みにこの場合、前記公差学習を実行した各々特定の回転速度(運転条件)の合間の補間領域で上記公差学習値と実公差との偏差を求める必要があるため、同図19及び図20に示す偏差学習制御ルーチンでは、公差学習を実行した回転速度区間をそれら学習域に対応した所定の回転数毎の(例えば500rpm毎の)ゾーンに区分けし、それら区分けしたゾーンの単位で上記公差学習値(補間値)と実公差との偏差による影響を抑制するようにしている。なおこの偏差学習制御ルーチンは、前記内燃機関1の一点火毎(6気筒の場合には120゜CA毎、4気筒の場合には180゜CA毎)に、前記ECU9を通じて起動、実行される。
【0167】
以下、この図19及び図20に示す偏差学習制御ルーチンについてその詳細を順次説明する。
すなわちいま、内燃機関1の任意気筒の点火に伴って同偏差学習制御ルーチンが起動されると、ECU9は先ず、ステップS500にて、同機関の現在の回転速度(運転条件)に対応したゾーンにおいて前記公差学習が完了しているか否かを判別する。公差学習が完了していなければ、その対応する実公差との比較もできないため、本ルーチンを一旦終了する。
【0168】
一方、当該ゾーンにおいて公差学習が完了していれば、ECU9は次のステップS501にて、偏差学習実行中フラグがセットされているか否かを判別する。この偏差学習実行中フラグとは、通常はセット状態におかれ、次に述べる条件によってはリセットされて、不十分な偏差学習の完了を未然に防止するためのフラグである。
【0169】
すなわち、上記区分けした各々のゾーンに対応した偏差学習を行う上で、あるゾーンでの公差学習値(補間値)と実公差との偏差測定が部分的に行われただけでは、最も影響の大きい上記特異点が測定されていない可能性がある。そこでここでは、例えば、
・先の図6に例示した公差学習制御ルーチンのステップS210にかかる「公差学習実行条件のチェック処理(図9、図10)」やステップS212にかかる「公差学習実行条件の成否判定処理(図13)」において学習を実行してはいけない状態であることが認識されている場合(ステップS502)、或いは、
・回転速度が急激に変動するなどして、特定ゾーンの偏差測定を入念に行うことができない場合(ステップS503)、
等々、当該ゾーンで偏差学習が完了したとするには不十分な状態では、ステップS504にて上記偏差学習実行中フラグをリセットして、同ゾーンでの少なくとも今回の偏差学習を完了させないようにしている。
【0170】
上記ステップS501にて偏差学習実行中フラグがセットされている旨判別され、且つこれら学習をキャンセルすべき要因が生じていない旨判別される場合、ECU9は、ステップS505にて、該当する公差学習値ΔθLと実公差Δθとの偏差Δ(Δθ)を求める。実公差Δθが電磁ピックアップによるロータ被検出部の検出間隔(検出時間)に基づき前記(12)式を通じて算出されることは上述した通りである。
【0171】
こうして偏差Δ(Δθ)を求めたECU9は、次のステップS506にて、同偏差Δ(Δθ)についての最も大きな値を求めるべく、当該ゾーンにおいて保持している偏差Δ(Δθ)の値と今回求めた偏差Δ(Δθ)の値との大きい方の値を前記RAM9c(図1)内の所定の領域に保持していく。これは、上記特異点等、最も影響の大きい偏差を学習値とするための配慮である。
【0172】
こうしてより大きな偏差Δ(Δθ)を保持した、若しくはステップS504にて偏差学習実行中フラグをリセットした、若しくはステップS501にて同偏差学習実行中フラグがセットされていない旨判別したECU9は、ステップS507にて、回転速度がそれまでのゾーンを抜け、新しいゾーンに移行したか否かを判別する。新しいゾーンに移行していない場合には、当該ゾーンでの上記偏差Δ(Δθ)の算出、並びにそのより大きな値による更新と、後述するステップS516(図20)以降の処理のみが繰り返し実行される。
【0173】
同ステップS507において、新しいゾーンに移行している旨判別される場合ECU9は更に、次のステップS508にて、その移行がもといたゾーンへの逆戻りではなく、移行前のゾーンを全て通った次のゾーン(1段階だけ高速側のゾーン)への移行であるか否かを判別する。同移行がもといたゾーンへの逆戻りであった場合、移行前のゾーンの全域に亘って上記偏差Δ(Δθ)の測定を行ったことにはならないため、以下に説明する学習処理は行われずに、後述するステップS514(図20)以降の処理が行われる。
【0174】
一方、ステップS508において、新しいゾーンへの移行が上記次のゾーンへの移行である旨判別される場合、ECU9は、ステップS509にて上記偏差学習実行中フラグがセットされていることを確認した上で、次のステップS510〜ステップS513にかかる偏差学習を実行する。偏差学習実行中フラグがセットされていない場合、すなわち移行前のゾーンにおいて一度、ステップS502〜ステップS504を通じて学習の実行が不適当である旨判別されている場合にも移行前のゾーンの全域に亘って上記偏差Δ(Δθ)の測定を行ったことにはならないため、以下に説明する学習処理は行われずに、後述するステップS514以降の処理が行われる。
【0175】
偏差学習の実行に際しては先ず、ステップS510(以下、図20)にて、該学習対象となるゾーン、すなわち移行前のゾーンでの偏差学習実行条件の成立が初回であるか否かが判別される。
【0176】
この結果、同条件の成立が初回である旨判別される場合には、ステップS512にて、上記移行前のゾーンに関して上記RAM9c内の所定領域に保持されている最大の偏差Δ(Δθ)を同ゾーンの偏差学習値として偏差学習値メモリに登録し、次のステップS513にて、同ゾーンについての偏差学習が完了したことを示す偏差学習完了フラグをセットする。この偏差学習値メモリも、先の図8に例示した公差学習値メモリ910と同様、前記バックアップRAM9d(図1)内の所定領域に予め用意されていて、上述した各ゾーン(回転速度範囲)の別にそれら偏差学習値Δ(Δθ)が登録される構造となっている。
【0177】
他方、ステップS510において、上記移行前のゾーンでの偏差学習実行条件の成立が初回ではなく、2回目以降である旨判別される場合には、ステップS511にて、上記偏差学習値メモリに登録されている同ゾーンについての偏差学習値Δ(Δθ)を同ゾーンに関して上記RAM9c内の所定領域に保持されている最大の偏差Δ(Δθ)によって更新する。なお、この更新に際しては、前述したなまし(徐変)処理を併用するようにしてもよい。
【0178】
こうして偏差学習の実行を終えるとECU9は次に、該移行した新しいゾーンについての偏差学習を行うため、ステップS514にて、上記RAM9c内の所定領域に保持されている偏差Δ(Δθ)の値を「0」にクリアすると共に、ステップS515にて、上記偏差学習実行中フラグを標準(デフォルト)の状態であるセット状態とする。
【0179】
その後、ECU9は、ステップS516にてその対象となっているゾーン(移行前のゾーン)に関する上記偏差学習完了フラグがセットされていることを確認した上で、次のステップS517〜ステップS518にかかる失火判定値補正処理を実行する。同ゾーンに関する偏差学習完了フラグがセットされていない場合には、このステップS517〜ステップS518にかかる失火判定値補正処理を行わずに、本ルーチンを一旦終了する。
【0180】
失火判定値補正処理の実行に際しては先ず、ステップS517にて、当該ゾーンの偏差学習値Δ(Δθ)から前記失火判定値REF120に加えるべきオフセット量REFofsを算出する。このオフセット量REFofsの算出は、
REFofs=Kofs×Δ(Δθ)×回転速度 …(22)
といったように、偏差学習値Δ(Δθ)の角度(rad)情報を角速度(rad/sec)の変動量に換算するかたちで行われる。ここで係数Kofsは、偏差学習値Δ(Δθ)をこうした失火判定値REF120と同じ次元の値に換算するための換算係数である。
【0181】
こうしてオフセット量REFofsを算出したECU9は最後に、ステップS518にて同算出したオフセット量REFofsを前記失火判定値REF(REF120)に加えて、本ルーチンを終了する。
【0182】
このような偏差学習制御が内燃機関1の一点火毎に行われることにより、上記各ゾーン毎に測定された公差学習値補間値と実公差との偏差Δ(Δθ)の最大値(偏差学習値)に応じた角速度変動量が別途求められると共に、この求められた角速度変動量がオフセット量REFofsとして、その都度、前記失火判定値REF120に加えられるようになる。
【0183】
したがって、たとえクランク角偏差(実公差)Δθに上述した特異点が生じる場合であっても、すなわちメインルーチン(図3〜図5)において失火判定値REF120と比較されるクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 に該特異点に基づく増加が生じる場合であっても、その角速度変動量増加分に応じたオフセット量REFofsが失火判定値REF120に加わることで、同特異点に起因する誤った失火判定が行われることも好適に回避されるようになる。
【0184】
しかも、同偏差学習制御ルーチンによれば、上記ゾーンを単位として偏差学習を行うようにしたことで、その必要とされるメモリ容量の増加を最小限に抑えることができるようにもなる。
【0185】
なお、同実施の形態の装置にあっては、失火判定値REF120に上記オフセット量REFofsを加えて上記特異点に対処することとしたが、同メインルーチンにおいて比較対象となるクランク角速度変動量Δ(Δω)n-1 から上記オフセット量REFofsを引いてその対処とする構成であっても勿論よい。
【0186】
また、上記偏差学習値としても、クランク角偏差(気筒間角度公差)との偏差量に限らず、それに相当する値、すなわち公差学習値に応じて、例えばクランク角速度との偏差量、或いはその変動量、等々を採用することができる。
【0187】
(第5の実施の形態)
また、以上各実施の形態では何れも、学習の実行条件を適正に判別するための要素として上記空燃比センサ(酸素センサ、リニア空燃比センサ)の出力や空燃比フィードバック制御にかかる空燃比補正係数を参照するようにした。しかし、図10に例示したそれら判別内容からも明らかなように、こうした空燃比センサの出力や空燃比フィードバック制御にかかる空燃比補正係数から直接、当該機関の失火発生の有無を検出する構成とすることもできる。
【0188】
すなわち、同図10に例示した正常点火を判定するルーチンのみを同実施の形態にかかる装置のクランク角速度変動量を用いた失火検出に代えて用いる構成とすることもできる。そしてこのときであれ、同図10におけるチェック項目の選択、或いは組み合わせ等は任意であり、対象となるシステムの規模に応じて自由にそれら項目の選択、或いは組み合わせを行うことができる。
【0189】
また更には、それら自由に選択、若しくは組み合わせた失火検出方法を、上記実施の形態にかかる装置の失火検出方法以外の方法と組み合わせて、それら方法による失火検出精度の更なる向上を図るようにすることもできる。
【0190】
また、図10に例示したチェックルーチンでは、360°CA対向気筒の連続失火を検出する3つの方法が示されているが、この中のステップS311の処埋を図21のステップS311’の処理として示すように変更してもよい。
【0191】
すなわち、図10のチェックルーチンでは空燃比補正係数cfbとその平均値との和を初期公差と比較して失火検出していたが、他に図21に示すように、空燃比補正係数と同補正係数の学習値との和を初期公差と比較して失火検出するようにしてもよい。
【0192】
また更に、図10のチェックルーチンでは、そのステップS314の処理において、O2 センサ振幅周期が予め設定されている正常点火時の振幅周期Fsよりも短いとき失火が発生している旨判別しているが、図21のチェックルーチンにおけるステップS314’の処理として示すように、下限の判定値(Fs)だけでなく、所定範囲を設定して、この範囲外のときには失火が発生している旨判別するようにしてもよい。このように所定範囲を設定することにより、図11に示すような失火だけでなく、図12に示すような失火も検出することができるようになる。
【0193】
なお、本発明は、上記各実施の形態の他にも次の形態にて実現可能である。
(1)上記実施の形態では、6気筒内燃機関について720°CA差分法、360°CA差分法及び120°CA差分法を適用した具体例を開示したが、これに限らず他の形態にて具体化してもよい。例えば、同じく6気筒内燃機関について、240°CA差分法や480°CA差分法等を複数個組み合わせて適用してもよい。また、奇数個の気筒を有する内燃機関(例えば5気筒内燃機関)については、一例として720°CA差分法と144°CA差分法(或いは、288°CA差分法等)を用いて失火検出を実施するようにすればよい。要は、各気筒の1燃焼サイクルに要するクランク角(720°CA)を気筒数で除したクランク角を最小単位とし、その整数倍のクランク角度だけ離れた複数の組み合わせの気筒について、気筒別回転速度変動量の差分を算出して前記複数の組み合わせの気筒別回転速度変動量の差分演算結果を個々に所定の失火判定値と比較する構成であれば、任意に実現できる。
【0194】
さらに、上記実施の形態において第1の差分演算法としての720°CA差分法に代えて、720°CAの整数倍のクランク角だけ離れた気筒の気筒別回転速度変動量の差分を検出する、例えば1440°CA差分法を適用したり、第2の差分演算法としての360°CA差分法に代えて、360°CAの奇数倍のクランク角だけ離れた気筒の気筒別回転速度変動量の差分を検出する、例えば1080°CA差分法を適用したりすることもできる。以上各々の場合についても、上記各実施の形態で既述した通り、内燃機関に発生するあらゆる失火パターンを精度良く検出するという本発明の目的が達せられる。
【0195】
(2)最終的な失火数の総和を求める際において、第1の実施の形態では図5のステップS118でカウンタCMIS720、CMIS360及びCMIS120を加算したが、これに代えて上記カウンタの最大値maxを最終的な失火数として求めるようにしてもよい。つまり、最終の失火数を求める際には、一義的に固定手段を用いるのではなく、その方法を任意に変更してもよい。
【0196】
(3)上記実施の形態において、360°CA差分法、120°CA差分法等、連続失火のみを検出対象とする場合には、各気筒毎に平滑化(なまし処理)をしてばらつきを抑え、検出精度を向上させるようにしてもよい。この場合、360°CA差分法により算出される気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 360、及び120°CA差分法により算出される気筒間の角速度変動量△(△ω)n-1 120が次の(23),(24)式により平滑化され、それにより、変動量なまし値dωn-1 360、dωn-1 120が算出される。
【0197】
ここで、dωn360は、n番気筒の前回のなまし値である。また、定数kは、コンピュータの処理上、2のべき乗とするのが望ましく、例えば「8」とする。以上のなまし処理により、正常気筒と連続失火気筒との角速度変動量を分離することができ、失火検出が容易となる。なおこの場合には、間欠失火の検出はできなくなるため、連続失火判定で現在連続失火状態の判定がなされていない間は連続失火検出方法の判定を禁止してもよい。
【0198】
(4)連続失火時において、気筒間の角速度変動量△(△ω)の出力を各気筒毎になまし処理する場合、それ同時に判定レベルにもなまし処理をかけ、運転条件急変時のなましによる更新遅れの発生による誤検出の発生を防止するようにしてもよい。また、△(△ω)出力や判定レベルにかけるなましは機関の回転域により可変としてもよい。
【0199】
(5)連続失火の検出状態である場合、失火発生と判定される気筒数が所定の気筒数範囲内であれば検出し、それ以外の場合には失火発生をキャンセルする。具体的には、気筒別に失火判定を行い、6気筒中、3気筒以上が失火発生とされれば最終的に失火発生の旨を判断し、警告ランプを点灯させる。
【0200】
(6)また、以上の各実施の形態では、回転角速度変動量としてクランク角偏差Δθnを運転条件の別に学習しているが、これに限られることはなく、これに相当する値として、例えばクランク角偏差Δθnを求めるために用いるクランク角偏差時間ΔTnを学習するようにしてもよい。
【0201】
(7)以上の実施の形態では、4サイクル式内燃機関を対象として失火検出装置を具現化したが、2サイクル式内燃機関にも本発明を適用することができる。この場合には、1燃焼サイクルに要するクランク角が360°CAとして取り扱われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる失火検出装置の一実施の形態を示すブロック図。
【図2】同実施の形態にかかるECUの機能的構成を示すブロック図。
【図3】同実施の形態の失火判定のメインルーチンを示すフローチャート。
【図4】図3に続き、失火判定のメインルーチンを示すフローチャート。
【図5】図3及び図4に続き、失火判定のメインルーチンを示すフローチャート。
【図6】同実施の形態の公差学習制御ルーチンを示すフローチャート。
【図7】気筒間クランク角偏差(公差)の積算値メモリ構造例を示す略図。
【図8】気筒間クランク角偏差(公差)の学習値メモリ構造例を示す略図。
【図9】公差学習実行条件のチェックルーチンを示すフローチャート。
【図10】公差学習実行条件のチェックルーチンを示すフローチャート。
【図11】失火時における酸素センサの出力例を示すタイムチャート。
【図12】失火時における酸素センサの出力例を示すタイムチャート。
【図13】公差学習実行条件の成否判定ルーチンを示すフローチャート。
【図14】負荷−気筒間クランク角偏差(公差)特性を示すグラフ。
【図15】回転速度−気筒間クランク角偏差(公差)特性を示すグラフ。
【図16】第2の実施の形態における失火判定のメインルーチンの一部を示すフローチャート。
【図17】第3の実施の形態における失火判定のメインルーチンの一部を示すフローチャート。
【図18】クランク角偏差(公差)に生じる特異点の様子を示すグラフ。
【図19】第4の実施の形態において、特異点対策である偏差学習制御ルーチンを示すフローチャート。
【図20】図19に続き、特異点対策である偏差学習制御ルーチンを示すフローチャート。
【図21】第5の実施の形態において、公差学習実行条件の他のチェックルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
1…内燃機関、5…回転信号出力手段としての回転角センサ、9…回転速度算出手段,失火検出手段(変動量差分算出手段,比較判定手段,失火数計数手段,最終失火判定手段),学習手段を構成するECU(電子制御装置)、12…警告ランプ、9a…CPU、9b…ROM、9c…RAM、9d…バックアップRAM。
Claims (13)
- 多気筒内燃機関の出力軸の回転に応じた回転信号を出力する回転信号出力手段と、
前記回転信号に基づき、同機関出力軸の気筒別回転速度を算出する回転速度算出手段と、
2つの気筒について前記気筒別回転速度の変動量を求め、該求めた気筒別回転速度変動量に基づいて当該機関の失火発生を検出する失火検出手段と
を備えた内燃機関の失火検出装置において、
前記失火検出手段は、
各気筒の1燃焼サイクルに要するクランク角を気筒数で除したクランク角を最小単位とし、その整数倍のクランク角度だけ離れた複数の組み合わせの気筒について、前記気筒別回転速度変動量の差分を算出する変動量差分算出手段と、
前記複数の組み合わせの気筒別回転速度変動量の差分演算結果を、個々に所定の失火判定値と比較する比較判定手段と
を備えることを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 多気筒内燃機関の出力軸の回転に応じた回転信号を出力する回転信号出力手段と、
前記回転信号に基づき、同機関出力軸の気筒別回転速度を算出する回転速度算出手段と、
2つの気筒について前記気筒別回転速度の変動量を求め、該求めた気筒別回転速度変動量に基づいて当該機関の失火発生を検出する失火検出手段と
を備えた内燃機関の失火検出装置において、
前記失火検出手段は、
720クランク角度の整数倍だけ離れた気筒の前記気筒別回転速度変動量の差分を算出する第1の差分演算法と、360クランク角度の奇数倍だけ離れた気筒の前記気筒別回転速度変動量の差分を算出する第2の差分演算法と、各気筒の1燃焼サイクルに要するクランク角を気筒数で除したクランク角を最小単位とし、360クランク角度の整数倍を除く前記最小単位の整数倍のクランク角度だけ離れた気筒の前記気筒別回転速度変動量の差分を算出する第3の差分演算法とのうち、少なくともいずれか2つを同時に若しくは選択的に実施する変動量差分算出手段と、
前記変動量差分算出手段が実施した前記第1〜第3の差分演算法による気筒別回転速度変動量の差分演算結果を、個々に所定の失火判定値と比較する比較判定手段と
を備えることを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 請求項1又は2に記載の内燃機関の失火検出装置において、
前記失火検出手段は、
前記比較判定手段の比較結果から前記気筒別回転速度変動量の差分演算結果に基づく失火数を各々に計数する失火数計数手段と、
該計数された複数の失火数データを用いて最終的な失火判定を実施する最終失火判定手段と
を備えることを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 前記最終失火判定手段は、所定点火数が経過するまでの期間内において複数実施された差分演算法による失火数の総和を最終的な失火検出数とし、この失火検出数に基づいて失火判定を実施することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の失火検出装置。
- 前記最終失火判定手段は、所定点火数が経過するまでの期間内において複数実施された差分演算法による失火数の最大値を最終的な失火検出数とし、この失火検出数に基づいて失火判定を実施することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の失火検出装置。
- 請求項2に記載の内燃機関の失火検出装置において、
前記第1〜第3の差分演算法のうち、いずれか1つの実施により失火発生の旨が検出された場合には、他の差分演算法の演算結果を用いた失火判定を実施しないことを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 前記第1の差分演算法、前記第2の差分演算法、前記第3の差分演算法の優先順位で各演算を実施することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関の失火検出装置。
- 請求項2に記載の内燃機関の失火検出装置において、
前記第1〜第3の差分演算法を各々独立して実施することを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 前記回転信号出力手段により得られる各気筒間の回転信号の偏差を学習値として逐次演算する学習手段を備え、
前記変動量差分算出手段により実施される第3の差分演算法においては、前記学習手段により得られた学習値を用いて気筒別回転速度変動量の差分を算出することを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の内燃機関の失火検出装置。 - 前記学習手段は、前記内燃機関が正常点火されていることを条件に、前記学習を実行する請求項9に記載の内燃機関の失火検出装置。
- 前記学習手段は、前記内燃機関が失火していないこと、或いは路面状況による外乱や運転操作による回転変動が発生していないことを条件に、前記学習を実行する請求項9又は10に記載の内燃機関の失火検出装置。
- 前記変動量差分算出手段により実施される第1の差分演算法から個々の気筒に対して不連続に発生する失火を検出し、前記第2及び第3の差分演算法から少なくとも1つの気筒に対して連続的に発生する失火を検出する請求項2〜11のいずれかに記載の内燃機関の失火検出装置。
- 偶数個の気筒を有する内燃機関において、
前記前記変動量差分算出手段により実施される第3の差分演算法から360クランク角度離れた対向気筒の連続失火の発生を検出し、前記第2の差分演算法から上記対向気筒の連続失火以外の連続失火を検出する請求項2〜12のいずれかに記載の内燃機関の失火検出装置。
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