JP3674813B2 - 搬送用粘着ロ−ル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に粘着性を有し、クリーニング機能を有する搬送用粘着ロールに関し、テレホンカード、プリペイドカード、キャッシュカード等のカード類、又は紙幣、切符等に印刷するためのカード類印刷機、または一般的なプリンタ、複写機等において、被印刷物を搬送するために用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
テレホンカード、プリペイドカード、キャッシュカード等のカード類、あるいは紙幣、切符等を搬送しながら印刷を行うカード類印刷機、または一般的なプリンタ、電子写真複写機等には、被印刷物を搬送するための搬送用粘着ロールが用いられている。また、このような搬送用粘着ロールで搬送される被印刷物は、静電気等により表面に埃等が付着し易く、印刷品質が低下するという問題を解消するために、被印刷物の表面に付着したゴミ、埃等をクリーニングしながら搬送するクリーニング機能付き搬送用粘着ロールが用いられるようになってきた。
【0003】
従来のクリーニング機能付き搬送ロールとしては、ゴム硬度が、JIS Aで30〜50度のポリウレタンゴム、シリコーンゴム等で成形して表面を研磨したもの、または、クロロプレンゴム(CR)、EPDM等のゴム層の表面にポリウレタンゴム、シリコーンゴム等をコーティングして粘着性を付与したものが知られている。さらに、粘着成分を配合することにより粘着性を出した搬送用ロールも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したクリーニング機能付き搬送用粘着ロールは、粘着性が低く、クリーニング性能が十分でないという問題がある。一方、配合剤によって粘着性を発現するような搬送用ロールについては、ブリードによって粘着成分が徐々に失われ、最終的には粘着性がなくなってしまうという問題がある。
【0005】
また、表面にコーティング層を有するものは、複層構造のために層間剥離が生じやすく、耐久性に劣るという問題があり、これに伴い、搬送ロールを所定期間毎に交換しなければならず、手間やコストがかかるという問題がある。一方、層間の接着性を高めるためにコーティング層の下地としてプライマーを用いたものがあるが、プライマーの作用によりコーティング層の粘着性が低下するという問題がある。さらに、理想的な粘着性を得るためには、様々な要求に対してそれぞれ種類の異なる粘着層を用意しなければならず、製造工程が煩雑になり、手間とコストがかかるという問題もある。
【0006】
なお、加硫時間を意識的に短くして反応を途中で停止させて分子量の低い粘着層を形成することにより粘着性を上昇させることも検討したが、内部に未反応の反応剤・低分子量化合物などが残存していることにより、物性が安定せず、長期間の使用や溶剤による洗浄による内部物質の溶出等により、クリーニング性能が変化してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑み、優れた粘着性を長期に亘って有し、交換などの手間をかけることなく、長期に亘って使用することができる搬送用粘着ロールを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明は、ゴム加硫物からなるゴム層と、このゴム層の表面に設けられて粘着性を有する粘着層とを具備する搬送用粘着ロールにおいて、前記粘着層は、二液を所定割合で混合することによりシリコーンゴム層を形成するシリコーンゴム材料から形成され、前記二液の混合割合を前記所定割合から変更して架橋密度を低下させることにより硬度調節された粘着シリコーンゴム層からなることを特徴とする搬送用粘着ロールにある。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記所定割合が1:1であり、前記粘着シリコーンゴム層が、10:9〜10:1の混合割合にすることにより硬度調節されていることを特徴とする搬送用粘着ロールにある。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記所定割合が1:1であり、前記粘着シリコーンゴム層が、3:2〜4:1の混合割合にすることにより硬度調節されていることを特徴とする搬送用粘着ロールにある。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記粘着シリコーンゴム層は、完全に加硫され且つ二次加熱されて、未反応の反応剤や低分子化合物を含まないことを特徴とする搬送用粘着ロールにある。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記粘着層と前記ゴム層との間には、両者を強固に接着するプライマ層を有することを特徴とする搬送用粘着ロールにある。
【0013】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記粘着シリコーンゴム層のゴム硬度が、JIS Aで10〜90°であることを特徴とする搬送用粘着ロールにある。
【0014】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記粘着シリコーンゴム層のゴム硬度が、JIS Aで20〜60°であることを特徴とする搬送用粘着ロールにある。
【0015】
かかる本発明では、シリコーンゴム材料の二液の混合割合を所定割合から変更することにより、意図的に硬化後の架橋密度を低下させて粘着シリコーンゴム層を形成する。ここで、本発明では二液の混合割合を所定割合から変更するが、加硫条件、二次加熱の条件は通常とすることにより、未反応の反応剤または副生成物、溶剤などの残留がない状態で粘着性を発現することができる。また、このため、アルコール等による洗浄の際に内部物質が溶出することなく、クリーニング性能が変化することがない。さらに、トルエン、アセトンなどによる洗浄では表面粘着層が膨潤するが、長時間風乾あるいは加熱乾燥することによって粘着性及び耐久性を完全に元の状態に回復することが可能である。
【0016】
なお、架橋密度の低下により、粘着層自体の強度は多少低下するが、後述するようなプライマを併用することにより、使用の際に発生する剥離力に対して優れた抵抗力を有するようになり、粘着性と耐久性との高度なレベルでの両立が可能である。
【0017】
粘着層を形成するシリコーンゴム材料の二液の混合割合は、所定割合が1:1である場合、10:9〜10:1、好ましくは、3:2〜4:1とするのがよい。混合割合がこれより所定割合の1:1に近づくと、粘着性に乏しくなり、クリーニング性能に劣ると同時に、クリーニング性能の持続時間も短くなる傾向にあり好ましくない。また、この範囲を超えて偏らせると、粘着性は向上するものの、強度が著しく低下し、長期間の使用に耐えるだけの耐久性が得られ難くなる。
【0018】
本発明で、ゴム層を形成するゴム加硫物の種類、配合等は特に限定されないが、粘着層と同様の構造を有し且つ温度依存性の小さいシリコーンゴム、あるいはポリウレタンゴムなどの分子鎖中に官能基を有するゴムが好ましい。また、シリコーンゴム、ポリウレタンゴムの他、EPDM(エチレンプロピレン3元共重合体)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、IIR(ブチルゴム)、BR(ポリブタジエン)及びこれらのブレンドゴム並びに各種熱可塑性ゴムを用いることもできる。さらに、接着性を向上するためにプラズマ処理、酸、アルカリ処理に代表される表面処理を施してもよい。また、ゴム層のゴム硬度は、JIS Aで20〜60°程度とするのが好ましい。
【0019】
また、かかる粘着層とゴム層との間に、プライマ層、好ましくは、シリコーン系のプライマ層を用いることにより、ゴム層と十分な接着性を示し、また、耐久性が相乗的に増加する。このプライマとしては、ゴム層と粘着シリコーンゴム層との間で化学結合するものであれば種類は特に限定されず、例えば、プライマNo.101A/B(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0020】
従来の粘着ゴムロールでは、プライマを用いることにより粘着性の低下を引き起こしていたが、粘着層の混合割合を所定割合から変更することにより、プライマの影響による粘着性の低下を回避することができ、高い粘着性と強固な剥離性とを両立することができる。また、配合割合の制御を確立するだけで、従来と同一の材料を用いつつも所望の粘着性を得ることができ、設備、作業の工数等の面で余分のコストアップを必要としない。
【0021】
このような本発明の搬送用粘着ロールは、45度に傾斜させたガラス板上に静置可能な程度の粘着性を有し、クリーニング機能付き搬送用粘着ロールとして優れたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
(実施例1〜5)
ゴム硬度がJIS Aで40°のシリコーンゴムを170℃で10分間電熱プレス成形して円筒状の灰色のゴム素材を加硫形成し、210℃で4時間の二次加硫を行った後、これに軸を圧入し、外径を17.0になるように、表面粗さ30μm以内に研磨してゴム基体を得た。
【0024】
このゴム基体の表面に、シリコーン系プライマ(No.101A,B;信越化学工業(株)製)を用いてディッピング法によりプライマ層を形成した。また、乾燥後、さらに、シリコーンゴム(KE−1380)のA液及びB液を、下記表1の割合で混同し且つ粘度を5ポイズに調整したものを、ディッピング法によりコーティングし、150℃の電熱槽の中で10分間加硫した後、210℃で4時間2次加硫を行い、赤色のコーティング層を形成した。さらに、幅が45mmになるように両端をカットして本実施例の搬送用粘着ロールを得た。
【0025】
かかる搬送用粘着ロールは、図1に示すように、ゴム層1上に、プライマ層2を介して粘着層3を有するものであり、本実施例では、中心に軸4を有する。
【0026】
【表1】
【0027】
(比較例1)
HTVシリコーンゴム170℃で10分間電熱プレス成形して筒状のゴム成形体を加硫成形し、その表面を研磨して比較例1の搬送用ロールとした。このゴム層のゴム硬度は、JIS Aで40度であった。なお、これは、従来使用されているものである。
(比較例2)
比較例1と同様にゴム成形体を成形した後、表面に、粘度を5ポイズに調整したシリコーンゴム(KE−1380A液及びB液の混合物(50:50);信越化学工業(株)製)を用い、実施例と同様にして搬送用ロールを形成した。
【0028】
(試験例)
上述した実施例1〜5および比較例1及び2の搬送用粘着ロール用の軸を除去したものを、図2に示すように、ガラス基板30上に載せてガラス基板30を傾け、各搬送用粘着ロールが転がり落ちる角度を測定し、粘着性の比較を行った。この結果を表2に示す。なお、表2の粘着力は、搬送用粘着ロールが30秒以上静止しても、転がり落ちない場合の、ガラス基板30の最大傾き角度を示す。
【0029】
一方、比較例1および2のゴム成形体は、35度で転がり落ちた。
【0030】
これらの結果から、実施例1〜5の搬送用粘着ロールは、比較例1および2に示すような従来の搬送用粘着ロールと比較して粘着性が優れていることが判った。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来より優れた粘着性を有し且つコーティング層が剥離し難い搬送用ロールを得ることができる。また、このコーティング層は本来的に粘着性を有しているので、アルコールなどの洗浄によってもクリーニング性能が低下することがなく、長期に亘って繰り返し使用することができ、経済性に優れた搬送用ロールを提供することができるという効果を奏する。さらに、シリコーンゴム材料の配合割合を種々変更するだけで、且つ同一の材料を用いて要求される粘着性を理想的に実現できるので、同一工程、同一手順で粘着性のみをコントロールでき、設備、作業工程などの面でコストを抑えることができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送用粘着ロールである。
【図2】本発明の試験例を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 ゴム層
2 プライマ層
3 粘着層
Claims (7)
- ゴム加硫物からなるゴム層と、このゴム層の表面に設けられて粘着性を有する粘着層とを具備する搬送用粘着ロールにおいて、前記粘着層は、二液を所定割合で混合することによりシリコーンゴム層を形成するシリコーンゴム材料から形成され、前記二液の混合割合を前記所定割合から変更して架橋密度を低下させることにより硬度調節された粘着シリコーンゴム層からなることを特徴とする搬送用粘着ロール。
- 請求項1において、前記所定割合が1:1であり、前記粘着シリコーンゴム層が、10:9〜10:1の混合割合にすることにより硬度調節されていることを特徴とする搬送用粘着ロール。
- 請求項1において、前記所定割合が1:1であり、前記粘着シリコーンゴム層が、3:2〜4:1の混合割合にすることにより硬度調節されていることを特徴とする搬送用粘着ロール。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、前記粘着シリコーンゴム層は、完全に加硫され且つ二次加熱されて、未反応の反応剤や低分子化合物を含まないことを特徴とする搬送用粘着ロール。
- 請求項1〜4の何れかにおいて、前記粘着層と前記ゴム層との間には、両者を強固に接着するプライマ層を有することを特徴とする搬送用粘着ロール。
- 請求項1〜5の何れかにおいて、前記粘着シリコーンゴム層のゴム硬度が、JIS Aで10〜90°であることを特徴とする搬送用粘着ロール。
- 請求項1〜6の何れかにおいて、前記粘着シリコーンゴム層のゴム硬度が、JIS Aで20〜60°であることを特徴とする搬送用粘着ロール。
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