JP3673703B2 - 研磨工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズやミラー等の光学素子あるいは金型等を研磨する時に使用される研磨工具に関し、特に、非球面等の自由曲面の超精密研磨加工に用いられる形状可変の研磨工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高度な形状精度が要求されるレンズやミラー等の光学素子あるいは金型等を仕上げ研磨する際には、一般に、弾性材料からなるポリッシャを用いる研磨工具が従来から使用されており、このポリッシャの研磨面を被加工面に対して押し付け、研磨面と被加工面の間に研磨液を供給しながら、ポリッシャを被加工面に対して回転運動あるいは揺動運動させて加工を行なっている。このとき、被加工面が球面ならば、求められる球面の曲率半径の合致するようにポリッシャの表面を高精度に成形しておくのが普通である。
【0003】
ところで、被加工物の形状は様々であり、例えば、非球面のような曲率半径が変化するような場合には、上記のように予め一定の曲率半径に成形された1種類の研磨工具だけで加工を行なうと、研磨工具は、被加工面上で変化する曲率に対応できず、研磨工具の研磨面と被加工面に曲率の差があるために、研磨工具の接触する被加工面上で圧力分布の差が生じ、一様に研磨加工することができない。極端な場合には、研磨面と被加工面の間に隙間が生じ、研磨面の一部しか加工に作用しないこともあり得る。
【0004】
また、研磨加工の進行にしたがって、ポリッシャの研磨面の形状が徐々に変形して劣化するため、一定の曲率を維持するためには、摺りあわせ等の作業により研磨面を再成形する必要がある。この摺りあわせ作業に費やされる労力と時間やその間に研磨加工を中断することが、製造効率の低下と製造コストの増大につながる。
【0005】
以上のことから、多様な曲率半径を加工することができるように工具部材の研磨面を任意に形成することが可能な加工用の研磨工具も提案され、例えば、特公平5−58864号公報には、複数のアクチュエータを用いて研磨面形状すなわち研磨面曲率を変化させるようにした研磨工具が開示されている。
【0006】
この従来の研磨工具は、図9に図示するように、基盤101上に不図示の制御手段により個別に作動可能な複数個の変位アクチュエータ102を二次元的に配置し、これらの変位アクチュエータ102の作動によって変位する出力側の部材103に全体として任意の曲率形状の工具面を形成する弾性体からなる工具部材104を取り付けた構成となっている。
【0007】
この研磨工具を用いて、被加工物に対して工具部材104を相対的に摺動させることにより加工を行なう際に、加工中に変位アクチュエータ102を各々作動させ、工具部材104の形状を部分的に独立変化させて、個々に被加工面を押圧する力を調整し、全体として所望の曲面を形成しようとするものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来の研磨工具においては、次のような問題点があった。
【0009】
複数個の変位アクチュエータ102を個々に制御して、所望の曲面形状を得るようにしているため、装置構成を複雑でかつ高価なものにし、特に連続的に微小に曲率が変化するような緩やかな曲面(例えば、球面からのずれである非球面量が0.1mm程度)のような場合には、工具部材104の研磨面内で部分的に曲率を変化させることを必要としないため、かかる労力および費用に対し効果が少ないという問題点があった。
【0010】
また、曲率変化が急激で大きな被加工面(例えば、球面からのずれである非球面量の最大値が0.5mm以上)に対しては、ポリッシャとなる部材の降伏応力、成形可能な大きさ等の制約により、十分小さい面積の研磨工具(例えば、φ20mm)を構成しなければならない。しかし、工具面に複数個の変位アクチュエータを二次元的に配置することは、現状のアクチュエータのサイズ(小さいものでも、φ10mm)では物理的に困難である。
【0011】
さらに、工具部材104とアクチュエータ102が接続されているために、工具面が摩耗あるいは損傷した場合に、迅速にかつ容易に工具を交換することができない構成となっている。
【0012】
そこで、本発明は、上記のような従来技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであって、非球面レンズ等のような多種多様な曲率をもつ被加工面に単一の工具で対応でき、かつ簡便な構成で被加工面をスムーズに平滑化することができる研磨工具を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の研磨工具は、研磨面を有する研磨パッドと、該研磨パッドを取り付ける板状部材と、押圧方向の位置基準となるベース部材と、該ベース部材に対して前記板状部材の中心部を位置決めするための位置決め部材と、前記板状部材の相対向する部位をそれぞれ移動し得るように保持する保持部材と、該保持部材を押圧方向に変位させる1個のアクチュエータとを備えており、前記保持部材は、前記アクチュエータに取り付けられるガイドベースと、前記板状部材の相対向する部位をそれぞれ前記押圧方向に直交する回転軸を介して該回転軸周りに回動自在に支持する一対のブロック体と、前記ガイドベースに連結され、前記一対のブロック体をそれぞれ前記回転軸に直交する方向に摺動可能に支持するガイドバーと、前記ガイドベースの各側面と前記ブロック体の各々との間に配設された弾性部材とを有し、さらに、加工位置に応じて加工面形状を算出する演算制御手段と、該演算制御手段により算出される面形状に前記研磨面を合致させるように前記アクチュエータを駆動する駆動制御手段を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の研磨工具において、前記位置決め部材は、前記板状部材の中心部に接続する部位を曲面形状に形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の研磨工具において、前記保持部材は、前記ガイドバーに平行する軸周りの前記板状部材の回転運動を拘束する機構を備えていることが好ましく、前記板状部材の回転運動を拘束する機構として、前記ガイドバーの断面形状を3以上の辺で閉じた図形形状とし、あるいは、前記ガイドバーを前記ブロック体1個に付き複数個並列配置する。
【0018】
本発明の研磨工具において、前記ガイドバーは、前記ガイドベースの一部に固着され、前記ブロック体を摺動可能に支持することが好ましく、あるいはまた、前記ガイドバーは、前記ブロック体の一部に固着され、前記ガイドベースに対して摺動可能に設けられていることが好ましい。
【0019】
本発明の研磨工具において、前記保持部材のガイドベースは、凹球面または凹シリンドリカル面を設けた受け部材と凸球面または凸シリンドリカル面を設けた中子部材とをそれぞれの曲面をガイド部材を挟んで相対向するように配置して構成され、前記中子部材の凸球面または凸シリンドリカル面と前記受け部材の凹球面または凹シリンドリカル面の球心または曲率中心は前記研磨面の中心点に一致させてあることが好ましい。
【0020】
本発明の研磨工具において、前記位置決め部材と前記板状部材の間に押圧方向に引張りの予圧手段を配設することが好ましい。
【0023】
【作用】
本発明の研磨工具によれば、制御手段により任意の加工位置における設計された理想的な加工面形状(例えば、曲率半径)を算出し、該算出結果に基づいて1個のアクチュエータを駆動して、保持部材を押圧面に垂直な方向に移動させ、板状部材の相対向する部位を回転自在に支持する一対のブロック体の摺動と板状部材の相対向する部位の回転により、板状部材の長さを変えることなく、かつ板状部材の一部に局所的な応力集中や塑性変形を生じさせることなく、研磨パッドを取り付けた板状部材を任意の曲面に変形させることができ、研磨パッドの研磨面形状を理想的な加工面形状に一致させて、研磨パッドの研磨面を被加工面に隙間なく密着させ、加工圧を被加工面内に均一に加えることができる。これにより、被加工物の研磨加工をスムーズにかつ全面で行なわれ、比較的短波長の形状誤差成分である微小なうねり(リップル)を含めた被加工面の平滑化が可能となる。
【0024】
また、研磨加工される前の被加工面の形状は一般に設計された理想形状からずれているけれども、研磨工具の形状を強制的に変形させて加工することにより、さらに、研磨工具の研磨面の変位量をモニタして補正しながら加工することにより、研磨面内に形成される圧力の差異を利用して、被加工面の形状を補正し、理想形状に近づけることが可能になる。
【0025】
保持部材の一部材であるガイドバーの軸周りあるいはガイドバーに平行する軸周りの板状部材の回転運動を拘束することにより、被加工面から受ける摩擦力によって板状部材のローリング等の回転運動を抑制することができ、工具全体が転倒する危険性を回避することができる。
【0027】
さらに、板状部材の相対向する両端部を移動し得るように保持する保持部材を分割して、凹球面または凹シリンドリカル面を設けた受け部材と凸球面または凸シリンドリカル面を設けた中子部材とをそれぞれの曲面をガイド部材を挟んで相対向するように配置して構成し、前記中子部材の凸球面または凸シリンドリカル面と前記受け部材の凹球面または凹シリンドリカル面の球心または曲率中心は前記研磨面の中心点に一致させることにより、被加工面上で生じる摩擦力は常に回転中心において作用するために、研磨工具を転倒させるようなモーメントを生じさせることがなく、被加工面の圧力分布を一定に維持することができ、被加工物の研磨加工をよりスムーズに行なうことが可能となる。
【0028】
以上のように、本発明によれば、非球面レンズ等のような多種多様な曲率をもつ被加工面に単一の工具で対応でき、多種多様な曲率をもつ被加工面を常に均一な圧力分布で研磨でき、所望の形状を得ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1の(a)は本発明の研磨工具の第1実施例の概略構成図であり、同(b)はその研磨パッドと板状部材の下面図であり、図2は本発明の研磨工具の第1実施例を用いて、軸対称の凸の非球面形状(光学レンズ)を加工する態様を示す模式図である。
【0031】
図1の(a)において、研磨工具1は、研磨パッド(ポリッシャ)2と、研磨パッド2を取り付ける板状部材3と、研磨工具1の押圧方向(Z方向)の位置基準となるベース部材4と、ベース部材4に対して板状部材3の中央部分を位置決めするための位置決め部材(5〜7)と、板状部材3の相対向する部位(例えば、両端部)を移動し得るように保持する保持部材(10〜14)と、この保持部材(10〜14)を押圧方向に変位させる1個のアクチュエータ9とを備え、さらに、アクチュエータ9を駆動制御する駆動制御手段15および加工位置に応じてその加工面形状を算出しその算出結果を駆動制御手段15に送信する演算制御手段16を備えている。
【0032】
研磨パッド2は、ピッチや発泡ウレタン等で作製され、その形状は、図1の(b)に示すように長手方向と短手方向のある矩形状としている。なお、研磨パッドの形状は、円盤形状でもよく、その形状は限定されるものではない。この研磨パッド2は、りん青銅や薄板ばね鋼等で作製された板状部材3の下面に接着等の手段により固着されて取り付けられ、その下面が研磨面2aとなる。また、研磨パッド2は、図1の(a)および(b)においては、全体が繋がっている1枚のものとして示しているが、数箇所で分割された複数部片で形成することもでき、また、分割するのではなく、研磨面2a上に溝を形成するものであってもよい。
【0033】
板状部材3の中央部分を押圧方向(Z方向)に位置決めするための位置決め部材は、研磨工具1のZ方向の位置基準となるベース部材4から下方に延びる支柱5の下端に取り付けられたV字状アーム6と、このV字状アーム6の下端部に取り付けられて板状部材3の中央部分に係合するピボット7とから構成され、板状部材3の中央部分をZ方向の位置基準となるベース部材4に対してZ方向の所定の位置に位置決めする。ピボット7は、その先端部が球面等の曲面形状に形成され、この曲面形状の先端部を介して板状部材3の中央部分に係合接続され、板状部材3が横ずれしあるいはたわみ変形した時の歪みを排除できるように構成されている。
【0034】
板状部材3の両端部を移動しうるように保持する保持部材は、ベース部材4に固定されたアクチュエータ9の下端部に中央部分が取り付けられたX方向に延びるガイドベース10と、ガイドベース10の両側面からそれぞれX方向外方に延出され、外端部に抜け止めを有するガイドバー11と、両ガイドバー11に沿ってそれぞれX方向に摺動可能に両ガイドバー11に装着された一対のブロック体12と、ガイドベース10と各ブロック体12との間でガイドバー11に巻装され各ブロック体12に予圧を与えるための(圧縮)コイルばね13と、各ブロック体12の下方部に板状部材3の両端部をY軸回りに回転自在に取り付けるための回転ピン14とから構成され、板状部材3の両端部の両側部にそれぞれ設けられた折曲げ片3aをブロック体12の下方部を挟むように位置付け、両者に設けられている貫通孔に回転ピン14を挿通することにより、板状部材3は、ブロック体12に対して、回転ピン14を介してY軸回りに回転自在となる。回転ピン14の外方端部には抜け止めが設けられており、板状部材3を確実に保持する。なお、ブロック体12には、ガイドバー11を挿入するX方向の貫通孔が設けられ、ガイドバー11を軸としてX方向に摺動自在なはめ合いになっている。これらのガイドベース10、ガイドバー11、ブロック体12およびコイルばね13は、組み合わされて、水平(X方向)並進方向のガイドとして機能する。また、ガイドバー11はガイドベース10に固着されてブロック体12の貫通孔と摺動するように構成する例を説明したが、逆に、ガイドバー11をブロック体12側に固着してガイドベース10に設けた孔に挿入して摺動するように構成することも可能である。コイルばね13は、各ブロック体12に予圧を与えるためのものであるが、その剛性は、ガイドベース10が押圧方向(Z方向)に変位したときに板状部材3のたわみ変形を妨げない程度に充分小さいものとし、また、コイルばね13の自然長は、ブロック体12に両端部がそれぞれ取り付けられている板状部材3に予め適度な張力をもたせるように、調整されている。
【0035】
アクチュエータ9は、その一端が押圧方向(Z方向)の位置基準となるベース部材4に固定され、Z方向に変位可能な他端部には保持部材を構成するガイドベース10の中央部分が取り付けられており、アクチュエータ9の駆動により、ガイドベース10およびブロック体12等の保持部材をZ方向に移動させる。このアクチュエータ9としては、高速な応答が求められる場合にはピエゾ素子等の電圧変位変換素子等を用い、また、応答性はあまり必要としないが大ストロークが求められる場合には、エアシリンダや油圧シリンダ等を選択して用いる。また、その他に直動パルスモータ、あるいは回転型モータに直動型に変換する機構(例えば、ラックとピニオン機構、ボールねじ)を取り付けて用いることもできる。
【0036】
また、15は、アクチュエータ9に接続され、アクチュエータ9を駆動制御するための駆動制御手段であり、16は、加工位置におけるXY平面上のZ座標や曲率半径等の加工面形状を算出する演算制御手段(例えば、CPU)で、駆動制御手段15に接続されて駆動制御手段15の駆動に必要な演算を行ない、その演算結果を駆動制御手段15に送信する作用を果たすためのものである。
【0037】
次に、アクチュエータ9の変位により研磨工具1の研磨面2aの形状を変更させる態様について説明する。
【0038】
ベース部材4を基準にしてアクチュエータ9が矢印A方向に変位すると、中央部分がアクチュエータ9に取り付けられているガイドベース10および両ガイドバー11にそれぞれ装着されている両ブロック体12も一体となって、矢印A方向に移動することになる。このとき、ブロック体12に回転可能に接続されている回転ピン14もZ方向に変位するが、コイルばね13の剛性と自然長を適度に調節したX並進方向ガイドを有しているため、無理な負荷がかかって板状部材3の長さが変化するのではなく、ブロック体12はガイドベース10に対してX方向に摺動して変位し、ガイドベース10との距離が縮められる。さらに、回転ピン14に沿って板状部材3の両端部がスムーズに回転しうるため、板状部材3には余計な負荷がかからない。また、板状部材3の中央部分は、ピボット7によりZ方向に位置決めされているために、Z方向に変位しない。このため、板状部材3は、その両端部がたわんで、凸あるいは凹の曲率面を形成し、板状部材3に固着されている研磨パッド2の研磨面2aも板状部材3の曲率面にならう形で凸あるいは凹の曲率面となる。このようなアクチュエータ9の変位と板状部材3の撓みは、1対1で対応するので、予めそれらの関係を把握しておけば、アクチュエータ9を変位させて研磨パッド2の研磨面2aを所望の曲率面に形成することが可能である。なお、いうまでもなく、この曲率面には、曲率半径が無限大のもの、すなわち平面も含まれる。
【0039】
次に、以上のように構成される本実施例の研磨工具1を用いて、被加工物Lを研磨加工する態様について図2を参照して説明する。
【0040】
図2において、Lは、例えば中心軸対称の凸の非球面を有する光学レンズ等の被加工物であり、真空吸着あるいは不図示の治具を介したねじ止め、接着等の手段により保持体Hに固定され、保持体Hにはその中心軸Nの周りに一定速度で回転するモータ等の駆動手段(不図示)が取り付けられている。被加工物Lの被加工面Laは、図示しない研磨剤を介して研磨パッド2の研磨面2aが押圧接触され、研磨が行なわれるが、ここで、被加工面Laの研磨に使用される研磨パッド2および板状部材3は、被加工面Laに対して十分小さい寸法に設定される。例えば、直径φ200mmの被加工面Laに対して、20mm×6mmの矩形状の研磨パッド2を用いる。
【0041】
被加工物Lは、保持体Hに取り付けられて、不図示の駆動手段により、中心軸Nを右周りに任意の回転数Wr(例えば、10rpm)で回転され、研磨工具1は、被加工物Lの被加工面Laの頂点である中心軸N上の位置から半径方向を外側に向かって(図中、矢印C)、一定の速度v(例えば、5mm/min)で移動する。そのため、見かけ上は、被加工物Lに対し研磨工具1が、被加工面Laの中心から外周に向かって螺旋状に走査されることになる。
【0042】
またこのとき、研磨工具1は、研磨加工の能率を高くするために、振幅hおよび周波数f(例えば、振幅(h)2mmで周波数(f)5Hz)、すなわち、平均速度vr(vr>v、例えば20mm/sec)で半径方向に揺動運動(図中、矢印D)しながら、被加工面Laを加工する。さらに、研磨工具1において、研磨パッド2の研磨面2aから被加工面Laに対して加工に必要な荷重が付与されることはいうまでもない。
【0043】
被加工物Lの加工位置は、被加工物Lの回転数Wrと研磨工具の半径方向の移動速度vより、あらかじめ予測することができ、演算制御手段16によりその加工位置に対する設計曲率半径Rを求め、駆動制御手段15を介して、研磨工具1のアクチュエータ9を駆動し、板状部材3および研磨パッド2の形状を所望の曲率半径Rに一致させることができる。このことは、研磨工具1が、被加工物Lの中心付近にあるとき(曲率半径R1 、例えばR1 =300mm程度)でも、外周付近にあるとき(曲率半径R2 (R2 <R1 )、例えばR2 =200mm程度)でも全く同様である。
【0044】
このように、外部に設置された演算制御手段16により、任意の加工位置における理想的な加工面形状(例えば、曲率半径)を算出し、一端がベース部材4に固定されたアクチュエータ9を駆動させてガイドベース10をZ方向に移動させることにより、研磨パッド2をこの加工面形状に一致させるように、帯状の研磨パッド2を取り付けた板状部材3を局所的な応力集中や塑性変形を生じさせることなく、たわみ変形させることができる。これにより、研磨パッド2の研磨面2aは被加工面Laに隙間なく密着し、研磨工具1に付加された荷重が、加工圧として被加工面La内に均一に加わる。
【0045】
これにより、研磨工具1の移動する範囲内で、スムーズにかつ全面で加工が行なわれ、比較的短波長の形状誤差成分である微小なうねり(リップル)を含めた被加工面の平滑化が可能となる。
【0046】
また、被加工面Laの形状は、一般に、設計された理想形状からずれているため、強制的に研磨パッド2の形状を形成して加工することにより、研磨面2a内に形成される圧力の差異を利用して、被加工面Laの形状を補正し、理想形状に近づけることも可能になる。
【0047】
以上のように、本実施例の研磨工具を用いることにより、例えば非球面レンズのような多種多様な曲率を有する被加工面においても、均一な圧力分布で研磨することができ、しかも、多種多様な曲率を有する被加工面に、単一のアクチュエータで種々の曲率面を形成できことから、単一の工具で対応でき、さらに、簡便な構成で制御可能な研磨工具を得ることができる。なお、凹の非球面形状を加工する場合は、被加工物の凹形状に対応して、研磨工具の板状部材3のなす曲面形状を凸形状にすることにより、前述したと同様に研磨を行なうことができ、その詳細な説明は省略する。
【0048】
次に、本発明の研磨工具の第2実施例について図3を参照して説明する。図3の(a)は本発明の研磨工具の第2実施例の概略構成図であり、同(b)は同(a)におけるH−H線に沿って破断して示す部分拡大図であり、同(c)は第2実施例の変形例であって、同(b)と同様の部分拡大図である。なお、本実施例およびその変形例においては、前述した第1実施例における部材と同様な機能を有する部材には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0049】
本実施例においては、ガイドベース10の両側面からそれぞれX方向に延びて、ブロック体12をそれぞれX方向に摺動可能に支持するガイドバー11Aを、縦断面形状で矩形状にする点で前述した第1実施例と異なるものである。すなわち、図2の(b)に示すように、ガイドバー11Aを縦断面矩形状とし、ブロック体12にはガイドバー11Aを挿入する縦断面矩形状の貫通穴を設け、ブロック体12は、縦断面矩形状のガイドバー11Aを軸として摺動自在なはめ合いとしている。そして、ガイドベース10とブロック体12との間には、前述した第1実施例と同様に、ブロック体12と板状部材3に予圧を与えるための(圧縮)コイルばね13がガイドバー11Aに巻装されて配設されている。これらのガイドベース10、ガイドバー11A、ブロック体12およびコイルばね13は組み合わされて、水平(X方向)並進方向のガイドとして機能する。その他の部材および構成は、前述した第1実施例と同様である。
【0050】
本実施例の研磨工具においても、アクチュエータ9の変位により研磨パッド2の研磨面2aの曲面形状を変化させる作用は前述した第1実施例と同様であり、さらに、被加工物を加工する際の研磨工具の作用も同様であるが、本実施例の研磨工具においては次のような特有の作用効果を奏するものである。
【0051】
研磨工具は、加工中にその研磨面2aが被加工面と接触していることにより、摩擦力が生じる。特に、被加工物の回転によって回転の接線方向に生じる摩擦力によって接触面幅の狭い短手方向に研磨工具は転倒しやすいが、本実施例では、ガイドバー11Aの縦断面形状を矩形状にしてあるためにX軸周りの回転方向は拘束されており、板状部材のX軸周りの回転運動(特に、ローリング)を拘束し、研磨工具の転倒等の危険性を回避することができる。
【0052】
前述した本実施例においては、図3の(b)に示すように、ガイドバー11Aとブロック体12の貫通孔を縦断面形状で矩形状としたが、これらの縦断面形状は矩形に限定されるものではなく、3つ以上の辺で閉じた図形形状とすることによっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
また、ガイドバー11Aとブロック体12の貫通孔の縦断面形状を矩形等の3辺以上の図形形状にするのに代えて、図3の(c)に図示するように、2個の並列した丸棒でガイドバーを構成することもできる。ガイドバーとして2個の並列した丸棒11Bを用い、ブロック体12の貫通孔も2個の並列した丸棒11Bに対応して2個の縦断面円形状とする。このように1個のブロック体12に付き2個のガイドバー11Bを並列配置することにより、X軸周りの回転を拘束する。もちろん、ガイドバー11Bの縦断面形状は、ブロック体12の貫通孔の縦断面形状に合致していれば、円形に限定されるものではない。同様に、ガイドバー11Bの個数も2個以上であればいくつでも良い。
【0054】
このように構成することにより、第2の実施例において説明した作用効果に加え、次のような作用効果をさらに奏することができる。
【0055】
ガイドバーの縦断面形状を円形とすることで、縦断面矩形状のガイドバーに比べ、ガイドバーおよびブロック体の貫通穴を簡単にかつ精度よく製作することができるため、製作コストや製作時間を削減することができ、また、部品製作精度が高くなるので、互いを組み合わせた場合に、摺動性能の高いはめ合いにすることができ、水平並進方向の動きをよりスムーズにすることができる。
【0056】
また、前述した第2実施例およびその変形例においても、ガイドバー11A、11Bは、ガイドベース10に固着されてブロック体12の貫通孔と摺動するように構成する例を説明したが、逆に、ガイドバー11A、11Bをブロック体12側に固着してガイドベース10に設けた孔に挿入して摺動するように構成することもできる。
【0057】
次に、本発明の研磨工具の第3実施例について図4を参照して説明する。図4の(a)は本発明の研磨工具の第3実施例の概略構成図であり、同(b)は本発明の研磨工具の第3実施例における曲面ユニットの上面図であり、同(c)は同じく曲面ユニットの側面図である。なお、本実施例においても、前述した第1および第2実施例における部材と同様な機能を有する部材には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0058】
本実施例は、前述した各実施例におけるアクチュエータ9の下端部に中央部分が取り付けられたガイドベース10に代えて、アクチュエータ9に固定された可動ベース30に対して着脱自在に取り付けられるガイドベース31を用い、研磨パッド2を取り付ける板状部材3と、ガイドベース31、ガイドバー11、ブロック体12およびコイルばね13からなる保持部材(水平並進方向ガイド)を一体化して曲面ユニットとし、この曲面ユニットをアクチュエータ9の可動ベース30に対して着脱可能とするものである。
【0059】
図4の(b)および(c)に示すように、曲面ユニットは、複数個のねじ穴32が設けられたガイドベース31、ガイドベース31の両側面からそれぞれX方向外方に延出され、外端部に抜け止めを有するガイドバー11と、両ガイドバー11に沿ってそれぞれX方向に摺動可能に両ガイドバー11に装着された一対のブロック体12と、ガイドベース31と各ブロック体12との間でガイドバー11に巻装され各ブロック体12に予圧を与えるためのコイルばね13と、各ブロック体12の下方部において回転ピン14によりY軸回りに回転自在に取り付けられた板状部材3とから構成され、この曲面ユニットのガイドベース31をアクチュエータ9に固定された可動ベース30に取り付けねじ33により取り付けることによって着脱自在に固定される。
【0060】
このように、曲面ユニットを着脱自在の構成とすることにより、工具の摩耗や損傷が生じた場合に、曲面ユニットのみを交換することができ、従来のように研磨工具全体を交換するという大掛かりな作業をすることなく、必要最小限の作業で済む。さらに、工具の摩耗や損傷等に備えて製作した研磨パッドを板状部材に取り付ける作業や、研磨面を被加工面にフィットさせる皿合わせの作業等を別段取りで行なうことができ、時間を有効に使うことが可能となる。
【0061】
また、曲面ユニットを着脱可能なユニットとしたことにより、例えば、アクチュエータ9のストロークが短く、凹面と凸面の被加工物に1種類の曲面ユニットでは対応できない場合にも、単に曲面ユニットのみを交換することで対応することができ、研磨工具全体の大掛かりな交換をせずに済む。このように、予め、凹面専用のユニットや凸面専用のユニットをそれぞれ作製しておき、適宜交換して使用することにより、比較的簡便にかつ安価に、多種多様な加工面形状に対応できるという効果もある。
【0062】
次に、本発明の研磨工具の第4実施例について図5を参照して説明する。図5の(a)は本発明の研磨工具の第4実施例の概略構成図であり、同(b)は本発明の研磨工具の第4実施例における曲面ユニットの上面図であり、同(c)は同じく曲面ユニットの側面図である。なお、本実施例においても、前述した各実施例における部材と同様な機能を有する部材には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0063】
本実施例は、前述した第3実施例における曲面ユニットの着脱機構としてのねじ止めに代えて、アクチュエータ側の可動ベースと曲面ユニット側のガイドベースの対向する面に磁石を配置して、より簡便に着脱可能とするものである。
【0064】
本実施例においては、曲面ユニットは、第3実施例と同様に、図5の(b)および(c)に示すように、ガイドベース36、ガイドベース36の両側面からそれぞれX方向外方に延出され、外端部に抜け止めを有するガイドバー11と、両ガイドバー11に沿ってそれぞれX方向に摺動可能に両ガイドバー11に装着された一対のブロック体12と、ガイドベース31と各ブロック体12との間でガイドバー11に巻装され各ブロック体12に予圧を与えるためのコイルばね13と、各ブロック体12の下方部において回転ピン14によりY軸回りに回転自在に取り付けられた板状部材3とから構成されている。そして、アクチュエータ9に固定された可動ベース35に磁石37を固着し、可動ベース35に取り付けるガイドベース36は全体をあるいは磁石37に対応する吸着部を磁性体で構成する。これにより、ガイドベース36は、磁石37の磁力により可動ベース35に吸着保持される。このとき、磁石37の磁力は、曲面ユニット全体の自重よりも大きく、かつ着脱時に加えられる負荷(人間の手で取り付け取り外しが可能な負荷)よりも小さくなるように適切に調整されているものとする。
【0065】
また、可動ベース35の取り付け面から磁石37を突出させているために、ガイドベース36の吸着面の一部を掘り下げて凹部38を設け、磁石37を収納するような入れ子構造にしてある。このとき、磁石37の幅寸法と入れ子部分幅寸法をほぼ同一にしてはめ合いを調整し、位置決めをすることができる。
【0066】
なお、本実施例では、可動ベース35側に磁石37を固着しているが、逆にガイドベース36側に磁石を取り付けて、可動ベース35を入れ子構造にしても、同様の作用をもたせることができる。また、磁石37の形状は直方体の場合を例にしているが、他に円柱形状、三角柱なども可能であり、形状は限定されるものではない。
【0067】
以上のように、本実施例では、曲面ユニットの着脱をより簡単にかつ容易にでき、作業時間の短縮を図ることができる。
【0068】
次に、本発明の研磨工具の第5実施例について図6および図7を参照して説明する。図6は本発明の研磨工具の第5実施例の概略構成図であり、図7は本実施例におけるモーメントを0にする機構を説明するための構成概念図である。
【0069】
本実施例は、前述した第1実施例や第2実施例等の構成に加えて、被加工面Laから受けるモーメントを0にするための機構を備えるものである。なお、本実施例においても、前述した各実施例における部材と同様な機能を有する部材には同一符号を付して、それらの説明は省略する。
【0070】
本実施例において、前述した第1実施例や第2実施例におけるガイドベース10は、受け部材41と中子部材42の2つの上下の部材に分割され、受け部材41はアクチュエータ9に接続され、その下面は凹球面aに形成され、また、中子部材42は、ブロック体12を摺動可能に支持するガイドバー11を備え、その上面は凹球面aに対応するように凸球面bに形成され、これらの受け部材41と中子部材42は、凹球面aと凸球面bをガイド部材43が挿入される間隙をもって対向するように組み合わされて構成され、球座機構を形成する。このとき、凹球面aと凸球面bの球心はともに研磨パッド2の研磨面2aの中心点Oに位置するように形成する。ガイド部材43は、摺動性を考慮してデルリン等の樹脂で球状の部材を作製して用いたが、寸法を高精度に管理するため精密な鋼球を選択することも可能である。
【0071】
ここで、図7を用いて球座機構の作用について説明する。
【0072】
図7において、凸球面bを設けた中子部材42側に研磨パッド2が取り付けられており、研磨パッド2の研磨面2aは、被加工面La上に対し、凹球面aを設けた受け部材41を介して荷重Pで押し付けられる。このとき、研磨工具1が、被加工面Laに沿って運動すると、研磨面2a上および被加工面La上に動く方向と反対向きに摩擦力Fが生じる。この摩擦力Fは、本来なら研磨工具1を転倒させるようなモーメントとして作用するが、凹球面aと凸球面bの球心はともに研磨面2a(すなわち、被加工面La)の中心点Oに位置するため、摩擦力の作用点と回転中心とが一致し、モーメントが発生しない。
【0073】
これにより、研磨工具1がどのように傾斜した場合でも、研磨工具1と被加工面Laの相対運動で生じた摩擦力Fのうち、被加工面Laの中心点Oで生じる力の作用点は常に被加工面La上の中心点Oに位置するため、研磨工具1を転倒させようとするモーメントを発生せず、また、被加工面La上の中心点O以外では形状の対称性により摩擦力が打ち消し合う。よって、モーメントは働かず、研磨工具1は被加工面Laの様々な形状に充分追随するため、被加工面Laの圧力分布は一定に保たれ、被加工面をアス、クセ等の形状むらのない状態で加工することができる。
【0074】
本実施例においては、前述した第1実施例や第2実施例等において述べて作用効果に加えて、前記のような作用効果を奏することができるものである。
【0075】
なお、上記の説明では、受け部材41と中子部材42の相対向する面をそれぞれ凹球面aと凸球面bとしているけれども、これらの面を凹シリンドリカル面と凸シリンドリカル面とし、両シリンドリカル面の間にデルリン等の樹脂で円筒状、ドーナツ状等に作製したガイド部材43を介在させるとともに、両シリンドリカル面の曲率中心をともに研磨面2aの中心点Oに位置するように形成することもでき、前述したと同様の作用効果を得ることができる。
【0076】
次に、本発明の研磨工具の第6実施例について図8を参照して説明する。図8は本発明の研磨工具の第6実施例の概略構成図であり、前述した実施例における部材と同様な機能を有する部材には同一符号を付して、それらの説明は省略する。
【0077】
本実施例は、前述した第1実施例や第2実施例等の研磨工具に、板状部材3の端部の変位(たわみ量)を測定する変位量検出手段21を付設するともに、V字状アーム6と板状部材3との間に引張りばね22を介在させて押圧方向に予圧する機構を付設するものである。
【0078】
変位量検出手段21は、板状部材3の端部の実際の変位量(以下、実際変位量ともいう)を測定して、この実際変位量を駆動制御手段15と演算制御手段16に送り込み、これらの制御手段15、16において、実際変位量と理想的な加工面形状とを比較し、理想的な加工面形状と一致させるために必要な変位量(以下、必要変位量ともいう)を算出して、この差分を補正するフィードバック制御を行なうように構成するものである。
【0079】
変位量検出手段21として、歪みゲージを用いることができ、歪みゲージを用いる場合には、歪みゲージは板状部材3の裏面(研磨パッド2を取り付ける面と反対側)の端部に貼り付けられる。歪みゲージで検出される検出量を板状部材3の端部の変位量に換算するため、歪みゲージを研磨工具内に組み込む以前に、歪みと変位の関係を実測して両者の関係を明確にしておくものとする。
【0080】
また、変位量検出手段21として、変位センサを用いることも可能であり、この場合には、変位センサをベース部材4に固定し、板状部材3の端部の押圧方向の変位を検出する構成とする。
【0081】
変位量検出手段21は、駆動制御手段15を介して演算制御手段16に接続され、演算制御手段16において、変位量検出手段21で検出された量(例えば、歪み)が取り込まれ、実際変位量に変換された後に、必要変位量と比較し、その差分を補正すべき量として、駆動制御手段15からアクチュエータ9へ制御信号が送られる。その結果、板状部材3のたわみ量は、常にモニタされて、所望の曲率を形成するのに必要なたわみ量と一致するように補正されるために、板状部材3および研磨パッド2を、理想的な加工面形状をより高精度に維持できるという利点がある。
【0082】
また、本実施例においては、板状部材3の中央部分に接続されるピボット7を支持するV字状アーム6と板状部材3の中央部分の近傍との間に引張りばね22を介在させて、押圧方向に予圧する作用をさせる。この引張りばね22による予圧機構を付加することにより、特に、凹の非球面を有するレンズを加工する場合には、板状部材3の中央部分の押圧方向(Z方向)の位置決めをより確実にすることができる。
【0083】
なお、前述した各実施例の研磨工具においても、板状部材の変位量を測定する変位量検出手段や引張りばねによる予圧機構を適宜設けることができることはいうまでもない。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、制御手段により任意の加工位置における設計された理想的な加工面形状(例えば、曲率半径)を算出し、該算出結果に基づいて1個のアクチュエータを駆動して、保持部材を押圧面に垂直な方向に移動させ、板状部材の相対向する部位を回転自在に支持する一対のブロック体の摺動と板状部材の相対向する部位の回転により、板状部材の長さを変えることなく、かつ板状部材の一部に局所的な応力集中や塑性変形を生じさせることなく、研磨パッドを取り付けた板状部材を任意の曲面に変形させることができ、研磨工具に1個のアクチュエータを組み込むことで所望の研磨面形状を得ることができ、制御可能な研磨工具を簡略にかつ安価に構成することができる。
【0085】
特に連続的に曲率が変化する非球面形状を研磨する場合、研磨面内で部分的に曲率を変化させることを必要とせず、必要最小限の労力と費用で任意の理想的な加工面形状を作ることができ、最大限の効果を得ることができる。
【0086】
また、曲率変化の大きな被加工面に対しては、研磨パッドとなる部材の降伏応力、成形可能な大きさ等の制約により、十分小さい面積の研磨工具を構成しなければならない場合もあるが、かかるときに、本発明の研磨工具は、単一のアクチュエータしか用いないため、小さな曲率の面に対応する研磨面の寸法が小さな工具を構成するのに好適である。
【0087】
さらに、研磨工具の研磨面形状を理想的な加工面形状に強制的に一致させることができ、研磨パッドの研磨面と被加工面は隙間なく密着し、研磨工具に与えられた荷重が加工圧として被加工面内に均一に加えることができ、研磨工具の移動する範囲内で、スムーズにかつ全面で加工が行なわれ、微小なうねり(リップル)を含めた被加工面の平滑化が可能となる。
【0088】
また、研磨加工される前の被加工面の形状は一般に設計された理想形状からずれているため、研磨工具の形状を強制的に形成して加工することにより、さらに、研磨工具の研磨面の変位量をモニタして補正しながら加工することにより、研磨面内に形成される圧力の差異を利用して、被加工面の形状を補正し、理想形状に精度よく近づけることが可能になる。
【0089】
また、保持部材の一部材であるガイドバーの軸周りあるいはガイドバーに平行する軸周りの板状部材の回転運動を拘束することにより、被加工面から受ける摩擦力によって板状部材のローリング等の回転運動を抑制することができ、工具全体が転倒する危険性を回避することができる。
【0091】
さらに、板状部材の相対向する部位を移動し得るように保持する保持部材のガイドベースを分割して、凹球面または凹シリンドリカル面を設けた受け部材と凸球面または凸シリンドリカル面を設けた中子部材とをそれぞれの曲面をガイド部材を挟んで相対向するように配置して構成し、前記中子部材の凸球面または凸シリンドリカル面と前記受け部材の凹球面または凹シリンドリカル面の球心または曲率中心は前記研磨面の中心点に一致させることにより、被加工面上で生じる摩擦力は常に回転中心において作用するために、研磨工具を転倒させるようなモーメントを生じさせることがなく、被加工面の圧力分布を一定に維持することができ、被加工物の研磨加工をよりスムーズに行なうことが可能となる。
【0092】
以上のように、非球面レンズ等のような多種多様な曲率をもつ被加工面に単一の工具で対応でき、かつ多種多様な曲率をもつ被加工面を均一な圧力分布で研磨することができ、簡便な構成で、制御可能な研磨工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の研磨工具の第1実施例の概略構成図であり、(b)は研磨パッドと板状部材の下面図である。
【図2】本発明の研磨工具の第1実施例を用いて、軸対称の凸の非球面形状を加工する態様を示す模式図である。
【図3】(a)は本発明の研磨工具の第2実施例の概略構成図であり、(b)は同(a)におけるH−H線に沿って破断して示す部分拡大図であり、(c)は第2実施例の変形例であって、同(b)と同様の部分拡大図である。
【図4】(a)は本発明の研磨工具の第3実施例の概略構成図であり、(b)は本実施例における曲面ユニットの上面図であり、(c)は同じく曲面ユニットの側面図である。
【図5】(a)は本発明の研磨工具の第4実施例の概略構成図であり、(b)は本実施例における曲面ユニットの上面図であり、(c)は同じく曲面ユニットの側面図である。
【図6】本発明の研磨工具の第5実施例の概略構成図である。
【図7】本発明の研磨工具の第5実施例におけるモーメントを0にする球座機構を説明するための構成概念図である。
【図8】本発明の研磨工具の第6実施例の概略構成図である。
【図9】従来の研磨工具の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 研磨工具
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 板状部材
4 ベース部材
5 支柱
6 V字状アーム
7 ピボット
9 アクチュエータ
10 ガイドベース
11 ガイドバー
11A、11B ガイドバー
12 ブロック体
13 コイルばね
14 回転ピン
15 駆動制御手段
16 演算制御手段
21 変位量検出手段
22 引張りばね
30、35 可動ベース
31、36 ガイドベース
33 取り付けねじ
37 磁石
41 受け部材
42 中子部材
43 ガイド部材
L 被加工物(光学レンズ)
La 被加工面

Claims (9)

  1. 研磨面を有する研磨パッドと、該研磨パッドを取り付ける板状部材と、押圧方向の位置基準となるベース部材と、該ベース部材に対して前記板状部材の中心部を位置決めするための位置決め部材と、前記板状部材の相対向する部位をそれぞれ移動し得るように保持する保持部材と、該保持部材を押圧方向に変位させる1個のアクチュエータとを備えており、
    前記保持部材は、前記アクチュエータに取り付けられるガイドベースと、前記板状部材の相対向する部位をそれぞれ前記押圧方向に直交する回転軸を介して該回転軸周りに回動自在に支持する一対のブロック体と、前記ガイドベースに連結され、前記一対のブロック体をそれぞれ前記回転軸に直交する方向に摺動可能に支持するガイドバーと、前記ガイドベースの各側面と前記ブロック体の各々との間に配設された弾性部材とを有し、
    らに、加工位置に応じて加工面形状を算出する演算制御手段と、該演算制御手段により算出される面形状に前記研磨面を合致させるように前記アクチュエータを駆動する駆動制御手段を備えることを特徴とする研磨工具。
  2. 前記位置決め部材は、前記板状部材の中心部に接続する部位を曲面形状に形成されていることを特徴とする請求項1載の研磨工具。
  3. 前記保持部材は、前記ガイドバーに平行する軸周りの前記板状部材の回転運動を拘束する機構を備えていることを特徴とする請求項または記載の研磨工具。
  4. 前記板状部材の回転運動を拘束する機構として、前記ガイドバーの断面形状を3以上の辺で閉じた図形形状とすることを特徴とする請求項記載の研磨工具。
  5. 前記板状部材の回転運動を拘束する機構として、前記ガイドバーを前記ブロック体1個に付き複数個並列配置することを特徴とする請求項記載の研磨工具。
  6. 前記ガイドバーは、前記ガイドベースの一部に固着され、前記ブロック体を摺動可能に支持することを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載の研磨工具。
  7. 前記ガイドバーは、前記ブロック体の一部に固着され、前記ガイドベースに対して摺動可能に設けられていることを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載の研磨工具。
  8. 前記保持部材のガイドベースは、凹球面または凹シリンドリカル面を設けた受け部材と凸球面または凸シリンドリカル面を設けた中子部材とをそれぞれの曲面をガイド部材を挟んで相対向するように配置して構成され、前記中子部材の凸球面または凸シリンドリカル面と前記受け部材の凹球面または凹シリンドリカル面の球心または曲率中心は前記研磨面の中心点に一致させてあることを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載の研磨工具。
  9. 前記位置決め部材と前記板状部材の間に押圧方向に引張りの予圧手段を配設することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の研磨工具。
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