JP3672646B2 - 表面加工積層ポリエステルフイルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面加工積層ポリエステルフイルムの製造方法に関するものであり、詳しくは、表面に均一且つ微細な凹凸が形成され、各種分野において好適な表面加工積層ポリエステルフイルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステルフイルムの表面を粗面化する手法として、ポリエステルに無機粒子や有機粒子を含有させて製膜する方法、フイルム製膜工程中あるいは工程後表面に粒子含有塗布液を塗布する所謂コーティング法、フイルム製膜後に表面にケイ砂等の粒子を叩きつけて表面を粗面化する所謂サンドブラスト法が知られている。
【0003】
また、特開平1−188533号公報には、ポリエステル成形物にヘキサフルオロイソプロパノール等の多ハロゲン化脂肪族アルコールを一定時間接触させて部分的に溶解させた後、溶媒をクロロホルム等で洗浄除去することにより、表面に均一微細な突起を密に形成する方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、ポリエステルに粒子を含有させて製膜する方法は、フイルム表面を高度に粗面化する場合、粒子の含有量を高くする必要があるため、ポリエステル原料調製上のみならず製膜上も限界があり、更に、フイルム表面に均一な突起を形成し難いと言う欠点もある。コーティング法は、フイルムと塗膜との密着性が悪いと言う問題があり、サンドブラスト法は、表面に形成された凹凸の形状が不規則であって、その大きさ、高さ、密度の制御が困難である。特に、サンドブラスト法は、ブラスト表面の残砂が後加工に影響を与えると言う欠点もある。特開平1−188533号公報に記載の方法は、均一な突起を形成し得るが、工程が複雑であり、連続処理性や生産性の点で問題である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑み成されたものであり、その目的は、実質的に粒子を含有しないポリエステル層の表面に均一且つ微細な凹凸を有する新規な表面加工積層ポリエステルフイルムの製造方法であって、上記の凹凸を短時間で広範囲に形成することが出来る上記フイルムの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、融点が5〜110℃異なる2種類以上のポリエステルを積層して成り、低融点ポリエステルは、実質的に粒子を含有しておらず且つその表面粗度(Rmax)が0.05〜20μmである表面加工積層ポリエステルフイルムの製造方法であって、融点が5〜110℃異なる低融点ポリエステルと高融点ポリエステルであって低融点ポリエステルが実質的に粒子を含有していない2種類以上のポリエステルを原料とし、先ず、共押出しによって低融点ポリエステルが表面に位置する積層シートを得、次いで、得られた積層シートを延伸した後、低融点ポリエステルの融点以上で且つ高融点ポリエステルの融点未満の温度で熱処理を行い、次いで、低融点ポリエステルのフイルム表面を塗工法により1〜20g/mの塗工量で溶剤処理した後、20〜150℃で2分以内の乾燥条件で乾燥することを特徴とする表面加工積層ポリエステルフイルムの製造方法に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0008】
また、本願発明で使用するポリエステルは、融点を変化させるために第三成分を共重した共重ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0009】
本発明における表面加工積層ポリエステルフイルムは、融点が5〜110℃異なる2種類以上のポリエステルを積層して成る。上記の融点の差は、例えば、共重合成分の含有量の差により制御することが出来る。上記の融点の差が5℃未満または110℃を超える場合は、フイルム製造時の連続製膜性が悪化する。上記の融点の差は、好ましくは10℃〜80℃である。
【0010】
低融点ポリエステル層の厚さは、通常、全体厚さの50%以下で且つ絶対厚さとして0.05μm以上、好ましくは、全体厚さの30%以下で且つ絶対厚さとして0.1μm以上とされる。低融点ポリエステル層の厚さが全体厚さの50%を超える場合は、フイルムの強度が低下する。また、低融点ポリエステル層の絶対厚さが0.05μm未満の場合は、積層厚さを制御することが困難となる。
【0011】
本発明における表面加工積層ポリエステルフイルムにおいて、低融点ポリエステルは、実質的に粒子を含有しておらず且つその表面粗度(Rmax)が0.05〜20μmであることが重要である。ここで、実質的に粒子を含有していないポリエステルとは、当該ポリエステルを単独でo−クロルフェノール溶媒に溶かした際の不溶残留粒子量が0.01wt%未満であるポリエステルを言う。
【0012】
上記の表面粗度(Rmax)は、好ましくは0.07μm〜15μm、更に好ましくは0.1μm〜10μmの範囲である。この値が0.05μm未満の場合は、印刷性や接着性などが改良されず、20μmを超える場合は、表面の凹凸が微細とならず且つ不均一となり、印刷性や接着性などが悪化する。
【0013】
本発明における表面加工積層ポリエステルフイルムにおいて、高融点ポリエステルは、粒子を含有しているのが好ましい。高融点ポリエステルが粒子を含有していない場合は、製膜時などにおいて、フイルムの滑り性が悪く、特に、巻き作業性が不良となる。
【0014】
上記の粒子の種類は、添加粒子と析出粒子とに分類することが出来る。添加粒子としては、二酸化ケイ素、カオリン、タルク、二酸化チタン、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、ゼオライト、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、特公昭59−5216号公報に記載されている様な耐熱性高分子微粉体、バテライト型炭酸カルシウム、天然炭酸カルシウム、合成法によるカルサイト型炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0015】
ポリエステルに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することが出来るが、エステル化の段階またはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加した後に重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出機を使用してエチレングリコール又は水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を使用して乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法なども採用し得る。
【0016】
析出粒子とは、例えば、エステル交換触媒としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物を使用した系を常法により重合することにより、反応系内に析出する粒子である。また、析出粒子としては、エステル交換反応または重縮合反応時にテレフタル酸を添加することにより、析出させた粒子であってもよい。これらの場合、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、酸性リン酸エチル、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル等のリン化合物の一種以上を当該系内に存在させておいてもよい。
【0017】
また、エステル化工程中に、上述の方法で不活性物質粒子を反応系内に析出させることが出来る。例えば、エステル化反応終了前または後にアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物を存在させ、リン化合物の存在下または不存在下に重合反応を行うことにより、ポリエステル中に不活性物質粒子を析出させる。ポリエステル生成反応中に生成する微細な析出粒子には、カルシウム、リチウム、アンチモン、リン等の元素が一種以上含まれている。
【0018】
高融点ポリエステルに含有させる粒子の平均粒径は、特に限定するものではないが、通常0.01μm〜3.5μm、好ましくは0.05μm〜2.0μm、更に好ましくは0.1μm〜1.5μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合は、フイルムの滑り性が改良されない。粒子の含有量は、特に限定するものではないが、通常0.01wt%〜10wt%、好ましくは、0.05wt%〜7.5wt%、更に好ましくは、0.1wt%〜5.0wt%の範囲である。粒子の含有量が0.01wt%未満の場合は、フイルムの滑り性が改良されない。
【0019】
本発明においては、低融点ポリエステル及び/又は高融点ポリエステルに有機滑剤を含有させることも出来る。有機滑剤の種類としては、特に限定するものではないが、脂肪族化合物、脂肪酸エステル類、アルキレンビス脂肪族類および芳香族アミド等が好ましい。脂肪族化合物としては、モンタン酸などの炭素数の多いものが好ましい。また、脂肪族エステルとしては、モンタン酸エチレングリコールエステル等が挙げられる。アルキレンビス脂肪族および/または芳香族アミドとしては、ヘキサメチレンビスベヘンアミド、ヘキサメチレンビスステアリルアミド、N,N’−ジステアリルテレフタルアミド等が挙げられる。
【0020】
有機滑剤の含有量は、通常500ppm以下、好ましくは200ppm以下とされる。有機滑剤の含有量が多すぎる場合は、蒸着または塗布などをフイルムにを施す際の接着性が低下したり、フイルムの色目として黄味が強くなり過ぎるので好ましくない。
【0021】
本発明においては、フイルムの印刷性や接着性を向上させる目的で、低融点ポリエステルにポリアルキレングリコール類を含有させることが好ましい。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。ポリアルキレングリコールの分子量は、フイルムの透明性を損なわない様にするとの観点から、通常10000以下、好ましくは8000以下とされる。
【0022】
ポリエステルにポリアルキレングリコールを含有させる方法としては、エステル交換中または重合中に反応系に添加する方法、ポリアルキレングリコールを共重合させた重合体をブレンドする方法、ポリエステルの乾燥時または押出時に練り込む方法が挙げられる。ポリアルキレングリコールの含有量は、通常1.0wt%以下、好ましくは0.5wt%以下とされる。
【0023】
また、本発明においては、ポリエステルフイルムには、必要に応じ、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0024】
本発明におけるポリエステルフイルムの厚さ(全体厚さ)は、通常1μm〜500μm、好ましくは2μm〜250μmとされるが、特に5μm〜200μm厚さの場合に優れた効果を発揮する。
【0025】
本発明におけるフイルムは、前述の低融点ポリエステルと高融点ポリエステルを原料とし、先ず、共押出しによって低融点ポリエステルが表面に位置する積層シートを得、次いで、得られた積層シートを延伸した後、低融点ポリエステルの融点以上で且つ高融点ポリエステルの融点未満の温度で熱処理を行い、次いで、低融点ポリエステルのフイルム表面を溶剤処理した後に乾燥する方法によって製造することが出来る。
【0026】
共押出しは、複数台の押出機、複数層のマルチマニホールドダイ又はフィードブロックを使用し、それぞれのポリエステルを積層して口金から複数層の溶融シートを押出し、冷却ロールで冷却固化することにより行われる。この場合、積層シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法や液体塗布密着法を採用するのが好ましい。
【0027】
静電印加密着法とは、通常、シートの上面側にシートの流れと直行する方向に線状電極を張架し、該電極に約5〜10kVの直流電圧を印加することにより、シートに静電荷を付与してシートとドラムとの密着性を向上させる方法である。また、液体塗布密着法とは、回転冷却ドラム表面の全体または一部(例えばシート両端部と接触する部分のみ)に液体を均一に塗布することにより、ドラムとシートとの密着性を向上させる方法である。本発明においては必要に応じ両者を併用してもよい。
【0028】
積層シートの延伸において、積層シートは、ロール又はテンター方式の延伸機により一方向に延伸され、次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸される。一段目の延伸において、延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。二段目の延伸において、延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜115℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。
【0029】
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行うことも出来る。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となる様に行うのが好ましい。また、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になる様に同時二軸延伸を行うことも可能である。更に、必要に応じて熱処理を行う前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
【0030】
また、上記の延伸工程においては、高融点側ポリエステルフイルム表面を処理する所謂インラインコーティングを施すことが出来る。例えば、1段目の延伸が終了して2段目の延伸前に、帯電防止性、滑り性、接着性などの改良、2次加工性改良などの目的で、水溶液、水系エマルジョン、水系スラリー等のコーティング処理を施すことが出来る。
【0031】
熱処理は、緊張条件下または30%以内の弛緩条件下で行われ、低融点ポリエステルは実質的に無配向とされる。
【0032】
本発明における溶剤処理とは、実質的に無配向層とされた低融点ポリエステルの表面に溶剤を塗布することを言う。溶剤処理前の表面は、Rmaxが0.01μm以下、Raが0.001μm以下であることが好ましい。溶剤処理に使用される溶剤は、常温(23℃)で固体または液体の何れであってもよい。
【0033】
上記の溶剤としては、脂肪族または芳香族の炭化水素類、アルコール類、高級アルコール類、チオアルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、グリコールエーテル類、石油類、ハロゲン類、フェノール類などが挙げられる。これらは、単独使用の他、2種以上の混合物として使用される。
【0034】
溶剤が水溶性液体の場合は、水で希釈して使用することも出来る。また、溶剤に溶解し得る限り、例えば、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、帯電防止剤などの各種添加剤を溶剤に配合して使用してもよい。溶剤の塗布量は1〜20g/mとされる。
【0035】
溶剤の塗布方法としては、公知の任意の塗工法を適用することが出来る。例えば、キスコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、ディップコート法、カーテンコート法などを単独または適宜組み合わせて適用することが出来る。
【0036】
溶剤の乾燥は、20℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃の温度で行われ、乾燥時間は、2分以内、好ましくは1分以内とされる。本発明においては、上記の溶剤処理および乾燥から成る一連の表面加工工程により、実質的に粒子を含有しないポリエステル層の表面に均一且つ微細な凹凸を形成することが出来る。
【0037】
なお、上記の表面加工は、フイルム製造工程と直結した所謂インラインコーティング法や、直結させないで表面加工処理を単独で行う所謂オフラインコーティング法の何れか又は両者を併用させて行うことが出来る。
【0038】
本発明における表面加工積層ポリエステルフイルムは、印刷性、接着性、易滑性等に優れているため、グラフィック用、精密製図用、拡散シート用、建材用、離型用、電気電子の材料(例えばエレクトロニクスデバイス等の基板用)等多くの工業分野の材料として好適に利用される。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で使用した測定法は、次の通りである。
【0040】
(1)表面凹凸の微細均一性
複写機(リコー(株)社製「IMAGIO MF530」)を使用し、試料フイルムにファクシミリテストチャート(画像電子学会製「No.2(1972)」)を複写し、複写後の仕上がり具合を目視により観察し、下記の評価基準にて評価した。
【0041】
【表1】
○:複写の状態が良好。
△:複写の状態が若干不鮮明であるが実用上問題ない。
×:複写の状態が不鮮明であり不良。
【0042】
(2)易滑性
傾斜角度の変えられる平坦な板の上に試料フイルムを乗せ、その上に2cm×2cmの表面仕上げが0.2Sで重さ100gのステンレス板を乗せて徐々に傾斜させて行き、ステンレス板の滑り出す傾斜角度を測定し、下記の評価基準にて評価した。
【0043】
【表2】
45°以下 :○(滑り性良好)
45°を超える:×(滑り性不良)
【0044】
(3)最大高さ(Rmax)
表面粗さ測定機((株)小坂研究所製「SE−3F」)によって得られた断面曲線から、基準長さ(2.5mm)だけ抜き取った部分(以下「抜き取り部分という)の平均線に平行な2直線で抜き取り部分を挟んだ時、この2直線の間隔を断面曲線の縦倍率の方向に測定してその値をマイクロメートル(μm)単位で表わしたものを抜き取り部分の最大高さとした。最大高さは、試料フイルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の最大高さの平均値で表わした。なお、使用した触針の半径は2.0μm、荷重は30mg、カットオフ値は0.08mmとした。
【0045】
(4)印刷インキ接着性
セロカラー用印刷インキ(藍)(東洋インキ製造(株)製「CCST39」)を使用し、乾燥後の塗膜厚さが1.5μになる様にフイルム表面に塗布し、80℃で1分間熱風乾燥し、評価用フイルムを得る。評価用フイルムを23℃、湿度50%RHにて24時間調温調湿し、当該フイルムのインキ塗布面に18mm幅のセロテープ(ニチバン(株)製)を気泡の入らぬ様に7cmの長さに貼り、この上から3Kgの手動式荷重ロールで一定の荷重を与える。フイルムを固定し、セロテープの一端を500gの錘に接続し、錘が45cmの距離を自然落下後に、180°方向の剥離試験が開始する方法で評価する。接着性は、次の5段階の基準で評価した。なお、実用的には、評価4以上であれば問題なく使用できる。
【0046】
【表3】
評価5:インキが全く剥離しない。
評価4:インキがセロテープ面に剥離する面積が10%未満である。
評価3:インキがセロテープ面に剥離する面積が10%〜50%である。
評価2:インキがセロテープ面に剥離する面積が50%を超えている。
評価1:インキがセロテープ側に完全に剥離する。
【0047】
(5)融点(Tm)
差動熱量計(パーキンエルマー社製「DSC7型」)を使用し、16℃/minの昇温速度で得られた結晶融解による吸熱ピーク温度を融点とした。なお、使用した試料は、測定対象のポリエステルを単独で二軸延伸したフイルムである。
【0048】
(6)フイルム積層厚み
フイルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フイルムの断面を透過型電子顕微鏡にて観察した。フイルム表面とほぼ平行に、明暗によってその界面が観察される。その界面とフイルム表面までの距離を透過型電子顕微鏡写真1枚について平均して厚みを計算した。少なくとも50枚の写真について計算を行い、測定値の大きい方から10点、小さい方から10点を削除して30点の相加平均をフイルム厚さとした。
【0049】
製造例1(ポリエステルA1)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器に採り、加熱昇温すると共にメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、平均粒径(d50)1.54μmのシリカ粒子を0.3部含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加し、更に、エチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を添加した後100分で温度を280℃、圧力を15mmHgに達せしめ、以後も徐々に圧力を減じ最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻しポリエステルA1を得た。ポリエステルA1の融点は260℃、シリカ粒子の含有量は0.3%であった。
【0050】
製造例2(ポリエステルA2)
製造例1において、シリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加しない以外は、製造例1と同様にして融点260℃のポリエステルA2を得た。
【0051】
製造例3(共重合ポリエステルB1)
製造例1において、シリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加せず、ジカルボン酸成分をジメチルテレフタレート80部とジメチルイソフタレート20部に変更した以外は、製造例1と同様にして融点200℃の共重合ポリエステルB1を得た。
【0052】
製造例4(共重合ポリエステルB2)
製造例1において、シリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加せず、ジカルボン酸成分をジメチルテレフタレート85部とジメチルイソフタレート15部に変更した以外は、製造例1と同様にして融点215℃の共重合ポリエステルB2を得た。
【0053】
製造例5(共重合ポリエステルB3)
製造例1において、シリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加せず、ジカルボン酸成分をジメチルテレフタレート90部とジメチルイソフタレート10部に変更した以外は、製造例1と同様にして融点230℃の共重合ポリエステルB3を得た。
【0054】
製造例6(共重合ポリエステルB4)
製造例1において、シリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加せず、ジカルボン酸成分をジメチルテレフタレート91部とジメチルイソフタレート9部に変更した以外は、製造例1と同様にして融点233℃の共重合ポリエステルB4を得た。
【0055】
製造例7(共重合ポリエステルB5)
製造例3において、シリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加せず、ジカルボン酸成分をジメチルテレフタレート95部とジメチルイソフタレート5部に変更した以外は、製造例1と同様にして融点245℃の共重合ポリエステルB5を得た。
【0056】
製造例8(積層フイルムF1)
ポリエステルA1とB1の各チップを160℃で24時間真空乾燥機中で乾燥し、別個の溶融押出機により290℃で溶融押出しを行い、これらのポリマーをフィードブロック内で合流して積層し、静電印加密着法を使用して表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸積層シートを得た。得られたシートを85℃で3.2倍縦方向に延伸した。次いで、得られた一軸延伸フイルムをテンターに導き100℃で3.2倍横方向に延伸した後、230℃にて熱固定を行い、層構成がA1/B1であり、各層の厚さが60/15(μm)である厚さ75μmの二軸延伸積層フイルムを得た。
【0057】
製造例9(積層ポリエステルフイルムF2)
製造例8と同様の方法により、層構成がB5/B2であり、各層の厚さが65/10(μm)である厚さ75μmの二軸延伸積層フイルムを得た。
【0058】
製造例10(積層ポリエステルフイルムF3)
製造例8と同様の方法により、層構成がA1/A2であり、各層の厚さが65/10(μm)である厚さ75μmの二軸延伸積層フイルムを得た。
【0059】
製造例11(積層ポリエステルフイルムF4)
製造例8と同様の方法により、層構成がB4/B3であり、各層の厚さが65/10(μm)である厚さ75μmの二軸延伸積層フイルムを得ようとしたが、熱処理工程において、破断が頻発して目的とするフイルムを得ることが出来なかった。
【0060】
実施例1
積層フイルムF1のポリエステルB1面上に酢酸ブチルをグラビアロールにて8g/m2 の塗布量でコーティングし、乾燥温度120℃、滞留時間30秒で処理を行い表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0061】
実施例2
実施例1と同様の方法により、酢酸ブチルを酢酸エチル/n−ヘキサン:50/50(重量比)の混合溶媒に変えて表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0062】
実施例3
実施例1と同様の方法により、酢酸ブチルをモノクロルベンゼン/n−ヘキサン:50/50(重量比)の混合溶媒に変えて表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0063】
実施例4
実施例1と同様の方法により、酢酸ブチルをアセトンに変えて表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0064】
実施例5
積層ポリエステルフイルムF2のポリエステルB2面上にベンゼンをグラビアロールにて8g/m2 の塗布量でコーティングし、乾燥温度120℃、滞留時間30秒で処理を行い表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0065】
実施例6
実施例5と同様の方法により、ベンゼンを1,4ジオキサン/水:60/40(重量比)の混合溶媒に変えて表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0066】
実施例7
実施例5と同様の方法により、ベンゼンを酢酸エチルに変えて表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0067】
実施例8
実施例5と同様の方法により、ベンゼンをメチルエチルケトンに変えて表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0068】
実施例9
実施例5と同様の方法により、ベンゼンを1,4ジオキサン/n−ヘキサン:20/80に変えて表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0069】
比較例1
積層ポリエステルフイルムF3のポリエステルA2面上に酢酸エチルをグラビアロールにて8g/m2 の塗布量でコーティングし、乾燥温度120℃、滞留時間30秒で処理を行い表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0070】
比較例2
比較例1と同様の方法により、酢酸エチルをアセトンに変えて表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0071】
比較例3
比較例1と同様の方法により、酢酸エチルをメチルエチルケトンに変えて表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0072】
比較例4
積層ポリエステルフイルムF3のポリエステルA2面にケイ砂を叩きつけ、凹凸を付けた後、水洗、乾燥してサンドブラスト表面加工積層ポリエステルフイルムを得た。
【0073】
【表4】
【0074】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、実質的に粒子を含有しないポリエステル層の表面に均一且つ微細な凹凸を有する新規な表面加工積層ポリエステルフイルム及上記の凹凸を短時間で広範囲に形成することが出来る上記フイルムの製造方法が提供される。
Claims (1)
- 融点が5〜110℃異なる2種類以上のポリエステルを積層して成り、低融点ポリエステルは、実質的に粒子を含有しておらず且つその表面粗度(Rmax)が0.05〜20μmである表面加工積層ポリエステルフイルムの製造方法であって、融点が5〜110℃異なる低融点ポリエステルと高融点ポリエステルであって低融点ポリエステルが実質的に粒子を含有していない2種類以上のポリエステルを原料とし、先ず、共押出しによって低融点ポリエステルが表面に位置する積層シートを得、次いで、得られた積層シートを延伸した後、低融点ポリエステルの融点以上で且つ高融点ポリエステルの融点未満の温度で熱処理を行い、次いで、低融点ポリエステルのフイルム表面を塗工法により1〜20g/mの塗工量で溶剤処理した後、20〜150℃で2分以内の乾燥条件で乾燥することを特徴とする表面加工積層ポリエステルフイルムの製造方法。
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