JP3672404B2 - 熱可塑性ポリウレタン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、梨地模様の成形物が容易に得られる熱可塑性ポリウレタン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱可塑性ポリウレタン樹脂成形品の表面に梨地模様を付ける最も一般的な方法としては、熱可塑性ポリウレタン樹脂の加工時に、成形温度を下げて加工する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来公知の前記方法では、押出機の先端圧力が高くなり、安定して梨地模様を得ることは難しい。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決して、梨地模様の成形物が容易に得られる熱可塑性ポリウレタン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような従来公知技術の問題点を解決するため鋭意検討した結果、熱可塑性ポリウレタン系樹脂に、該樹脂より軟化点が特定範囲だけ高いエラストマーを配合することによって、梨地模様の成形物が容易に得られる熱可塑性ポリウレタン系樹脂組成物ができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、熱可塑性ポリウレタン系樹脂と、該樹脂より軟化点が5〜50℃高いポリエステルエラストマーと、該ポリエステルエラストマー以外のエラストマーとからなることを特徴とする、梨地模様の成形物が容易に得られる樹脂組成物である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる熱可塑性ポリウレタン系樹脂(以下、TPUと略す)は、ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の3成分を、ポリオール及び鎖延長剤の全活性水素基モル数に対するポリイソシアネートのイソシアネート基モル数の比(R値)を好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.9〜1.05になるように配合して製造される。鎖延長剤とポリオールは、鎖延長剤の活性水素基モル数とポリオールの活性水素基モル数の比(R′値)が好ましくは1.0〜5.0、更に好ましくは2.0〜4.0になるように配合する。
このようにして得られるTPUは軟化点50〜170℃(JIS−K7206の方法により測定、以下同じ)のものが好ましく、軟化点60〜140℃のものが特に好適である。
【0007】
前記のTPUの製造に用いられるポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらの異性体などの芳香族ジイソシアネート、また、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、また、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチルなどの脂環族ジイソシアネートなどを挙げることができる。また、これらの化合物と活性水素基含有化合物との反応によるイソシアネート基末端化合物、あるいは、これらの化合物のカルボジイミド化反応などによるポリイソシアネート変性体なども挙げることができる。また、メタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、フェノール、クレゾールなどの活性水素を分子内に1個有するブロック剤でイソシアネート基の一部を安定化したポリイソシアネートも挙げることができる。
【0008】
前記TPUの製造に用いられるポリオールとしては、通常、ポリイソシアネートの反応相手に用いられる末端に水酸基を有する分子量400〜10000のポリエーテル類、ポリエステル類、ポリエステルアミド類、ポリエーテルエステル類、ポリカーボネート類などを挙げることができる。
ポリエーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの重合生成物、あるいはこれらの共重合生成物、又はポリエーテルのビニル単量体によるグラフト重合体などを挙げることができる。
ポリエステル類及びポリエステルアミド類としては、多価アルコール類と多価カルボン酸とから、場合によりジアミン又はアミノアルコール類を併用して、縮合反応により得られるものが挙げられる。この多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどがある。多価カルボン酸としては、例えば、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、フタル酸、フタル酸アルキルエステル類、トリメリット酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などがある。また、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンなどの環状エステル類の開環重合によって得られるものも挙げられる。
ポリエーテルエステル類としては、上記ポリエステル類を得る際の縮合反応に使用する多価アルコール類の一部あるいは全部にポリエーテル類を用いるほかはポリエステル類と同じようにして得られるものが挙げられる。
ポリカーボネート類としては、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類と、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートあるいはエチレンカーボネートのような環状カーボネートとのエステル交換反応によって得られるものが挙げられる。
【0009】
前記TPUの製造に用いられる鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ビス−β−ヒドロキシエトキシベンゼン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、N−フェニルジイソプロパノールアミン、モノエタノールアミンなどの分子量400未満の化合物が挙げられる。
【0010】
本発明におけるTPUを製造する際には、必要に応じ触媒を添加することができる。使用できる触媒は、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルイミダゾール、N−エチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7(DBU)などのアミン類、酢酸カリウム、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレートなどの有機金属類、トリブチルホスフィン、ホスフォレン、ホスフォレンオキサイドなどのリン系化合物である。
【0011】
本発明のTPUの製造には、公知のTPUの製造方法、例えば、ワンショット法、プレポリマー法、バッチ反応法、連続反応法、ニーダーによる方法、押出機による方法などの方法が採用できる。例えば、ニーダーによる方法では、ニーダーにポリオール及び鎖延長剤を仕込み、80℃に加温後、ポリイソシアネートを投入し、10〜60分間反応させ、冷却することにより粉末状又はブロック状のTPUを製造することができる。これらの粉末状又はブロック状の樹脂は、必要に応じ押出機などによりペレット状にする。製造に用いる装置は、多成分計量混合機などを連結したニーダー、一軸あるいは多軸押出機などが使用できる。
【0012】
本発明に用いられるポリエステルエラストマー(以下、TPEEと略す)は、TPUとの相溶性、分散性などの点から、TPUの軟化点より5〜50℃高い軟化点を持つものである。軟化点の差が5℃未満の場合には成形品に梨地模様が得られず、また50℃を越えた場合には成形品にブツなどの不溶解物が発生し好ましくない。
【0013】
本発明においてTPEEは、ハードセグメントが芳香族ポリエステルで、ソフトセグメントが脂肪族ポリエーテルあるいは非晶性のポリエステルから構成されるブロック重合体が好適である。TPEEは、ハードセグメント及びソフトセグメントの化学組成、分子量、及び量比を変えることにより色々な性能を持たせることができ、従って多くのメーカーから色々なグレードの商品が上市されている。本発明においてTPEEは、これらの商品から特定の性能を持ったものを選択して使用することができる。
【0014】
ハードセグメントを構成する好適なポリエステルとしては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビ安息香酸などの芳香族ジカルボン酸の残基と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール残基とからなるポリエステル、あるいはこれらの2種以上のジカルボン酸あるいは2種以上のジオールを用いたコポリエステル、あるいはp−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、p−オキシ安息香酸などのオキシ酸及びそれらの残基から誘導されるポリエステル、ポリピバロラクトンなどのポリラクトン、1,2−ビス(4,4´−ジカルボキシメチルフェノキシ)エタンなどの芳香族エーテルジカルボン酸の残基と前述のジオール残基とからなるポリエーテルエステル、さらに上記のジカルボン酸、オキシ酸、ジオール類などを組み合わせたコポリエステルなどを挙げることができる。
【0015】
好適なソフトセグメント構成成分としては、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコール及びこれらの混合物、さらにこれらのポリエーテル構成成分を共重合した共重合ポリエーテルグリコールなどを挙げることができる。さらに炭素数2〜12の脂肪族又は脂環族ジカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族又は脂環族グリコールからなるポリエステル、たとえばポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル、及び2種以上の脂肪族ジカルボン酸あるいは2種以上のグリコールを用いてできる脂肪族コポリエステルなどを挙げることができる。さらにソフトセグメント構成成分として、上記脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとを組み合わせたポリエステルポリエーテルブロック共重合体なども挙げることができる。
【0016】
これらのTPEEは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのジメチルエステルとソフトセグメント形成性ジオールと低分子量ジオールとを触媒の存在下に約150〜260℃に加熱しエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで真空下に過剰の低分子量ジオールを除去しつつ重縮合反応を行うことによりTPEEを得る方法、あらかじめ調製したハードセグメント形成性プレポリマー及びソフトセグメント形成性プレポリマーにそれらのプレポリマーの末端基と反応する2官能性の鎖延長剤を混合し反応させた後、系を高真空に保ち揮発成分を除去することによりTPEEを得る方法、高重合度の高融点ポリエステルとラクトン類とを加熱混合し、ラクトンを開環重合させつつエステル交換反応させることによりTPEEを得る方法により製造することができる。
【0017】
本発明に用いられるTPEE以外のエラストマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリオキシメチレン系などの1種又は2種以上が挙げられる。これらのエラストマーの軟化点は必ずしもTPUの軟化点より5〜50℃高いことを必要としない。
TPEE以外のエラストマーの配合量は50重量%以下が好ましい。
【0018】
TPEEとこれ以外のエラストマーは、TPU100重量部に対して、3〜100重量部使用するのが好ましい。TPEEとこれ以外のエラストマーが3重量部未満のときは、成形機の先端圧力が高くなり安定して梨地模様を得ることが難しい。TPEEとこれ以外のエラストマーの配合量が100重量部を超えると、得られる樹脂成形物の物性にTPUの優れた特性が失われるので好ましくない。
【0019】
TPUとTPEEとこれ以外のエラストマーとの混合方法としては、単純ブレンドでも可能であるが、均一性の点で溶融混合の方が優れている。溶融混合には、単軸押出機、多軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの凡用熱可塑性樹脂の混練り装置が適用できる。
【0020】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて他の物質を添加することができる。添加できる物質は、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱向上剤、可塑剤、滑材、帯電防止剤、導電付与剤、着色剤、無機及び有機充填剤、繊維系補強剤、加水分解防止剤、反応遅延剤などである。
【0021】
本発明の樹脂組成物には、一般に用いられている熱可塑性ポリウレタン樹脂の成形方法及び成形条件が全て適用される。例えば、押出し成形、射出成形、吹込成形、カレンダー加工、ロール加工、プレス加工、遠心成形、回転成形などの成形方法が適用される。
【0022】
【実施例】
本発明について、実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定して解釈されるものでない。実施例及び比較例において、「部」は全て「重量部」を意味する。
【0023】
比較例1
ポリエーテル系TPUのペレットを単軸押出機を用い、加工温度160〜180℃、押出機先端圧力170〜190(kgf/cm2)で丸ベルト(直径5mm)を成形した。その結果、丸ベルトの梨地模様は不完全であった。
【0024】
比較例2
ポリエーテル系TPU(日本ミラクトラン(株)製E385PNAT、軟化点97℃)100部にポリエーテル系TPEE(東レ・デュポン(株)製ハイトレル4767、軟化点160℃)20部をドライブレンドし、単軸押出機を用い、加工温度210℃で溶融混合して樹脂ペレットを得た。
このペレットを単軸押出機を用い、加工温度160〜180℃、押出機先端圧力150〜170(kgf/cm2)で丸ベルト(直径5mm)を成形した。その結果、丸ベルトの表面に不溶解物が発生し、丸ベルトの外観としては不適切なものであった。
【0025】
比較例3
ポリエステル系TPUを単軸押出機を用い加工温度185℃で溶解混合してTPUペレットを得た。このペレットを単軸押出機を用い、加工温度145〜165℃、押出機先端圧力155〜175(kgf/cm2)で丸ベルト(直径5mm)を成形した。その結果、丸ベルトの梨地模様は不完全であった。
【0026】
実施例1
ポリエステル系TPU(日本ミラクトラン(株)製E665PNAT、軟化点70℃)100部にポリエーテル系TPEE(東レ・デュポン(株)製ハイトレル4057、軟化点110℃)15部及びスチレン・ブタジエン系エラストマー(旭化成(株)製タフプレンA)10部をドライブレンドし、単軸押出機を用い、加工温度185℃で溶融混合して樹脂ペレットを得た。
このペレットを単軸押出機を用い、加工温度140〜160℃、押出機先端圧力145〜165(kgf/cm2)で丸ベルト(直径5mm)を成形した。その結果、梨地模様の丸ベルトが安定して得られた。
【0027】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明により、梨地模様の成形物が容易に安定的に得られる熱可塑性ポリウレタン系の樹脂組成物を提供することが可能となった。
本発明の熱可塑性ポリウレタン系の樹脂組成物は、例えば、高圧ホース、医療チューブ、油・空圧チューブ、燃料チューブ、塗装用ホース、消防用ホースなどの各種ホース・チューブ類、コンベアベルト、エアーマット、ダイヤフラム、キーボードシート、合成皮革、ライフジャケット、ウエットスーツ、ホットメルトなど各種フィルム類、電力・通信ケーブル、コンピュータ配線、自動車配線、カールコードなどの各種電線・ケーブル類、その他各種ロープ類、各種駆動ベルト類、スリップ止めなど各種押出成形品に有効に使用することができる。
Claims (1)
- 熱可塑性ポリウレタン系樹脂と、該樹脂より軟化点が5〜50℃高いポリエステルエラストマーと、該ポリエステルエラストマー以外のエラストマーとからなることを特徴とする、梨地模様の成形物が容易に得られる樹脂組成物。
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