JP3671730B2 - 車両のエアバッグシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両のエアバッグシステムに関し、特に、チャイルドシートをシートに装着した場合にそのシートに対応するエアバッグの展開を強制的に禁止するようにしたエアバッグシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車に装備されるエアバッグシステムにおいては、衝突検出センサにより車両の衝突が検出されると、その衝突により乗員がステアリングホイールやダッシュボード等に二次衝突するまでの瞬時の間に、インフレータで発生する展開用のガスがエアバッグに供給されてエアバッグが展開し、その展開したエアバッグにより乗員を受け止めて保護する。
【0003】
従来のエアバッグシステムにおいては、衝突検出センサの他に、シートベルトの着用の有無を検出するバックルセンサを設け、車両が衝突した際、衝突速度やシートベルトの着用の有無に応じて、エアバッグを低圧又は高圧で展開させたり或いはエアバッグの展開を禁止するようにした技術が実用に供されている。
【0004】
更に、車両が衝突した際、乗員が小さな子供等の場合には、エアバッグの展開を抑制することが望まれている。その為に、シートにかかる荷重を検出する荷重検出センサを設けるとともに、ある荷重(設定荷重)を設定し、その設定荷重よりも小さな荷重が荷重検出センサにより検出された場合には、車両が衝突しても、エアバッグの展開を禁止する技術が実用に供されている。
【0005】
近年、乳幼児を自動車に乗車させる場合、その乳幼児の為にチャイルドシートの着用が義務付けられつつある。一般に、チャイルドシートを装着する場合には、チャイルドシートをシートに載置しシートベルトで拘束する。シートベルトの追加的な引出しを禁止するALR機構を設けたものでは、シートベルトでチャイルドシートを拘束し、ALR機構を作動させた状態で、シートを前方へ移動させることで、シートベルトによりチャイルドシートを強固に締付けて固定できる。
【0006】
ところで、車両の衝突時、チャイルドシートに着座した乳幼児に展開するエアバッグが影響を与えないように、チャイルドシートを装着する座席は、車両衝突時にエアバッグが展開しない座席に限られる。最近の自動車では、助手席用のエアバッグを装備したものが多く、この場合、後部座席にチャイルドシートを装着することになる。しかし、運転手が乳幼児に世話をする場合等に何かと不便であり運転に支障を来す虞があるし、最近では後部座席用のエアバッグを装備した自動車も広く実用化されつつあるため、エアバッグが展開可能な座席にチャイルドシートを装着した場合でも、車両衝突時、そのエアバッグが展開しないようにする何らかの対策を講じる必要がある。
【0007】
特開平7−196006号公報のエアバッグシステムでは、ダッシュボードの前端部に、上下1対の距離センサをエアバッグ収納部を挟んで設け、これら距離センサによりダッシュボードから助手席までの空間に存在する物体との距離を検出し、その距離から助手席にチャイルドシートが装着されたことを検出して、エアバッグの展開を禁止することが可能になる。
【0008】
尚、特開平10−236276号公報には、座席の座部にかかるシート圧を検出する第1圧力センサ、背もたれ部にかかるシート圧を検出する第2圧力センサ、シートベルトの引出し量を検出する引出し量検出センサを設け、これらのセンサから入力される信号に基づいて乗員の着座状態を検出し、着座状態が異常であると検出した場合に警報するエアバッグシステムが記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来のエアバッグシステムにおいて、シートにかかる荷重が予め設定された設定荷重よりも小さい場合に、エアバッグの展開を禁止するようにしたものでは、チャイルドシートをシートに装着し、そのチャイルドシートに乳幼児が着座した場合に、シートにかかる荷重(チャイルドシートと乳幼児の合計荷重)が前記設定荷重よりも小さい場合には、エアバッグの展開が禁止されるため問題はない。
【0010】
しかし、チャイルドシート自体の荷重が前記設定荷重よりも小さい場合でも、シートベルトでチャイルドシートを拘束し、前記ALR機構を作動させた状態でシートを前方へ移動させると、シートベルトによりチャイルドシートがシートに強固に締付けられ、シートにかかる荷重が増大して前記設定荷重を超えることが考えられるし、仮に、この状態ではシートにかかる荷重が前記設定荷重を超えなくても、その後乳幼児を乗せると前記設定荷重を超えてしまうことが考えられ、こうなると、チャイルドシートを装着しているにも関わらず、エアバッグの展開が許可されるという問題がある。特に、電動モータにより前後に移動駆動可能なシートの場合には、シートにかかる荷重を前記設定荷重以上に増大させることが多く、チャイルドシートを装着しているにも関わらず、エアバッグの展開が許可され易くなる。
【0011】
特開平7−196006号公報のエアバッグシステムでは、エアバッグ収納部とシートの間に、乗員やチャイルドシート以外の荷物等が存在すると、距離センサによりエアバッグ収納部から物体との正確な距離を測定できなくなり、実際にはチャイルドシートが装着されている場合でも装着されていないと誤検出し、エアバッグの展開を許可するという虞がある。しかも、既存のセンサ類とは別に距離センサを設ける必要があるので汎用性に劣り製作コストも高価になる。
【0012】
本発明の目的は、車両のエアバッグシステムにおいて、シートにチャイルドシートが装着されている場合にはエアバッグの展開を確実に禁止すること、センサ類として既存のものを適用し汎用性に優れたものにすること、等である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の車両のエアバッグシステムは、車両の衝突を検出する衝突検出手段と、シートにかかる荷重を検出する荷重検出手段と、車体に固定されたシートベルトにより、乗員をシートに拘束するシートベルト手段の使用の有無を検出する拘束検出手段と、これらの手段から入力される信号に基づいてエアバッグの展開を制御する展開制御手段とを備えた車両のエアバッグシステムにおいて、前記展開制御手段は、前記荷重検出手段により、予め設定された設定荷重よりも大きな荷重が検出された場合にエアバッグの展開を許可し、前記設定荷重よりも小さな荷重が検出された場合にエアバッグの展開を禁止するように構成されるとともに、前記拘束検出手段により前記シートベルト手段の使用が検出されている時に、前記荷重検出手段により、前記設定荷重よりも小さな荷重が検出された場合、その後荷重検出手段により前記設定荷重よりも大きな荷重が検出された場合でも、エアバッグの展開を強制的に禁止可能な強制禁止手段を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
このエアバッグシステムには、車両の衝突を検出する衝突検出手段と、シートにかかる荷重を検出する荷重検出手段と、乗員をシートに拘束するシートベルト手段の使用の有無を検出する拘束検出手段と、これらの手段から入力される信号に基づいてエアバッグの展開を制御する展開制御手段とが設けられている。
【0015】
展開制御手段により、予め設定された設定荷重よりも大きな荷重が荷重検出手段により検出された場合に、エアバッグの展開が許可され、前記設定荷重よりも小さな荷重が荷重検出手段により検出された場合に、エアバッグの展開が禁止される。従って、車両が衝突した際、乗員が小さな子供等の場合、その乗員に展開するエアバッグが影響を与えることが知られているが、前記設定荷重を適宜設定することで、その問題を極力回避することができる。
【0016】
そして、展開制御手段に強制禁止手段を設けることにより、荷重検出手段により、シートベルト手段の着用時に前記設定荷重よりも小さな荷重が検出された場合は、その後荷重検出手段により前記設定荷重よりも大きな荷重が検出された場合でも、エアバッグの展開を強制的に禁止することが可能になる。
【0017】
ここで、チャイルドシート自体の荷重は、前記設定荷重よりも小さな荷重になる。従って、チャイルドシートを装着する際、シートベルト手段の着用時においては、シートにかかるチャイルドシートの荷重は前記設定荷重よりも小さいため、エアバッグの展開を強制的に禁止することが可能になり、チャイルドシートの装着後、チャイルドシートに乳幼児が着座した場合や、シートベルトでチャイルドシートをシートに強固に締付け固定した場合等、荷重検出手段により前記設定荷重よりも大きな荷重が検出されても、エアバッグの展開を強制的に禁止した状態を維持することが可能になる。しかも、荷重検出手段や拘束検出手段として、既存の荷重検出手段や拘束検出手段を適用すればよいので、汎用性に非常に優れたものになり製作コストも低減する。
【0018】
請求項2の車両のエアバッグシステムは、請求項1の発明において、前記展開制御手段は、強制禁止手段によりエアバッグの展開が強制的に禁止された状態で、荷重検出手段により検出された荷重が所定値以上増加した場合には、エアバッグの展開を許可することを特徴とするものである。
【0019】
ここで、前記所定値は、車両衝突時にエアバッグの展開が必要な乗員がシートに着座したことが明らかな荷重増加値に設定される。従って、強制禁止手段によりエアバッグの展開が強制的に禁止された状態でも、荷重検出手段により検出された荷重が所定値以上増加した場合、シートに荷物やチャイルドシートや子供が乗っていたところに、車両衝突時にエアバッグの展開が必要な乗員が乗ったと判断し、エアバッグの展開を許可することができる。
【0020】
請求項3の車両のエアバッグシステムは、請求項1の発明において、前記シートは電動モータにより前後に移動駆動可能に構成され、前記強制禁止手段は、電動モータが作動している時に、荷重検出手段で検出された荷重が前記設定荷重を超えた場合に、エアバッグの展開を強制的に禁止することを特徴とするものである。
【0021】
チャイルドシートをシートベルトで拘束し、シートベルトの追加的な引出しが禁止された状態でシートを前方へ移動駆動すると、シートベルトによりチャイルドシートを強固に締付けて固定することができる。そして、このとき、シートにかかる荷重が増大し前記設定荷重を超える場合が多く、これにより、チャイルドシートを装着したことを検出し、エアバッグの展開を強制的に禁止できる。
【0022】
請求項4の車両のエアバッグシステムは、請求項1の発明において、前記シートベルト手段のシートベルトの引出し量を検出する引出し量検出手段を設け、前記強制禁止手段は、引出し量検出手段により検出されたシートベルトの引出し量が予め設定された設定引出し量を超えた場合、或いは、荷重検出手段により前記設定荷重よりも小さく設定された第2の設定荷重以上の荷重が検出された場合に、エアバッグの展開を強制的に禁止することを特徴とするものである。
【0023】
通常、チャイルドシートを拘束したシートベルトの引出し量は、乗員を拘束したシートベルトの引出し量よりも長いため、前記設定引出し量をチャイルドシートを拘束する際の引出し量よりも小さく乗員を拘束する際の引出し量よりも大きく設定することで、或いは、第2の設定荷重をチャイルドシートよりも小さな荷重に設定することで、チャイルドシートを装着したことを検出し、エアバッグの展開を強制的に禁止できる。特に、第2の設定荷重よりも小さな荷物等がシートにシートベルトで固定されている状態から、車両衝突時にエアバッグの展開が必要な乗員がシートに着座した場合には、エアバッグの展開が禁止されないため有効である。
【0024】
【0025】
【0026】
請求項5の車両のエアバッグシステムは、請求項1の発明において、前記展開制御手段は、電力が供給されると作動するように構成され、その展開制御手段には蓄電装置から常時電力が供給されていることを特徴とするものである。つまり、展開制御手段に常時電力が供給されるため、シート上の状態を継続的に検出できることから展開制御手段による誤制御を防止することができる。
【0027】
請求項6の車両のエアバッグシステムは、請求項1の発明において、前記展開制御手段は、電力が供給されると作動する一方、電力が供給されなくなると非作動となるように構成され、電力が供給された状態で荷重検出手段により検出された第1荷重とエアバッグの展開の許否を決定する展開許否情報とを記憶可能な記憶手段と、電力供給が停止された後再度供給された時に荷重検出手段により検出された第2荷重と前記第1荷重とを比較する比較手段と、この比較手段により第1荷重と第2荷重とが略同じであると判定された時には記憶手段に記憶された展開許否情報を採用する一方、異なると判定された時には所定モードに設定する設定手段とを有することを特徴とするものである。
【0028】
展開制御手段において、比較手段により、電力供給が停止された後再度供給された時に荷重検出手段により検出された第2荷重と前記第1荷重とが比較され、設定手段により、比較手段により第1荷重と第2荷重とが略同じであると判定された時、つまり、シート上の状態が変化していない(チャイルドシートの着脱が行われていない)場合に、記憶手段に記憶された展開許否情報が採用され、異なると判定された時、つまり、シート上の状態が変化している(チャイルドシートの着脱が行われた)場合に、所定モードに設定される。
【0029】
請求項7の車両のエアバッグシステムは、請求項1の発明において、前記展開制御手段は、電力が供給されると作動する一方、電力が供給されなくなると非作動となるように構成され、電力が供給された状態で引出し量検出手段により検出された第1引出し量とエアバッグの展開の許否を決定する展開許否情報とを記憶可能な記憶手段と、電力供給が停止された後再度供給された時に引出し量検出手段により検出された第2引出し量と前記第1引出し量とを比較する比較手段と、この比較手段により第1引出し量と第2引出し量とが略同じであると判定された時には記憶手段に記憶された展開許否情報を採用する一方、異なると判定された時には所定モードに設定する設定手段を有することを特徴とするものである。
【0030】
展開制御手段において、比較手段により、電力供給が停止された後再度供給された時に引出し量検出手段により検出された第2引出し量と前記第1引出し量とが比較され、設定手段により、比較手段により第1引出し量と第2引出し量とが略同じであると判定された時、つまり、シート上の状態が変化していない(チャイルドシートの着脱が行われていない)場合に、記憶手段に記憶された展開許否情報が採用され、異なると判定された時、つまり、シート上の状態が変化している(チャイルドシートの着脱が行われた)場合に、所定モードに設定される。
【0031】
請求項8の車両のエアバッグシステムは、請求項6又は7の発明において、前記所定モードは、エアバッグの展開を強制的に禁止する展開禁止モード、若しくは、警報を行う警報モード、若しくは、エアバッグの展開許否の決定を乗員に選択させる選択モードの少なくとも1つであることを特徴とするものである。
【0032】
例えば、種々のセンサ類により、チャイルドシートが装着されていることが確実に検出されれば、所定モードをエアバッグの展開を強制的に禁止する展開禁止モードとするように構成される。チャイルドシートが装着されているか否か、つまりエアバッグの展開を禁止するのか許可するのか判断できない場合には、所定モードを警報モードとするように構成される。エアバッグの展開許否の決定を乗員に選択させる場合、所定モードを選択モードとするように構成される。
【0033】
請求項9の車両のエアバッグシステムは、請求項6又は7の発明において、車両のドアを開くことで前記展開制御手段に電力が供給されることを特徴とするものである。通常、チャイルドシートを装着する場合、ドアを開いて行うため、チャイルドシートを装着する際に、前記展開制御手段を確実に作動させることができ,展開制御手段による誤制御を防止することができる。
【0034】
請求項10の車両のエアバッグシステムは、請求項6の発明において、車両のドアが開状態又はイグニションスイッチがオン状態で、前記展開制御手段に電力が供給されるとともに、車両のドアが閉状態又はイグニションスイッチがオフ状態で、前記展開制御手段への電力の供給が停止するように構成され、前記展開制御手段は、所定周期毎に荷重検出手段により検出された荷重を記憶手段に記憶するとともに、ドアが閉状態となる直前に検出された荷重を前記第1荷重として記憶手段に記憶し、ドアが開状態となった直後に検出された荷重を前記第2荷重とすることを特徴とするものである。
【0035】
展開制御手段において、所定周期毎に荷重検出手段により検出された荷重が記憶手段に記憶され、ドアが閉状態となる直前に検出された荷重が前記第1荷重として記憶手段に記憶され、ドアが開状態となった直後に検出された荷重が前記第2荷重とされる。従って、車両のドアが閉状態の際、又は、イグニションスイッチがオフ状態の際に、シート上に乗せた物体が変化したか否か(チャイルドシートの着脱が行われた否か)を確実に判定することができる。
請求項11の車両のエアバッグシステムは、車両の衝突を検出する衝突検出手段と、シートにかかる荷重を検出する荷重検出手段と、車体に固定されたシートベルトにより、乗員をシートに拘束するシートベルト手段の使用の有無を検出する拘束検出手段と、これらの手段から入力される信号に基づいてエアバッグの展開を制御する展開制御手段とを備えた車両のエアバッグシステムにおいて、前記シートベルト手段のシートベルトの追加的な引出しを禁止するALR機構と、ALR機構の作動の有無を検出するALR作動検出手段とを設け、前記展開制御手段は、前記ALR作動検出手段により検出されたALR機構の作動継続時間が所定時間よりも長くなった場合にエアバッグの展開を強制的に禁止することを特徴とするものである。
シートベルト手段のシートベルトによりチャイルドシートを拘束し、ALR機構を作動させた状態でシートを前方へ移動させることで、チャイルドシートをシートに強固に締付け固定することができる。通常、このようにチャイルドシートを装着するため、ALR作動検出手段により検出されたALR機構の作動継続時間が所定時間よりも長くなると、チャイルドシートを装着したと検出され、エアバッグの展開を強制的に禁止することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態は、自動車に装備される助手席用のエアバッグを含むエアバッグシステムに本発明を適用した場合の一例である。
【0037】
図1に示すように、自動車Cには、運転席用のエアバッグ2(展開状態を示す)が、運転席1の前方のステアリングホイール3の内部に収納され、助手席用のエアバッグ5(展開状態を示す)が、助手席4の前側のダッシュボード6に設けられた収納部7の内部に収納されている。
【0038】
ダッシュボード6には、助手席用のエアバッグ5の展開モード(許可モード又は禁止モード)を表示する展開モード表示ランプ8が設けられている。この展開モード表示ランプ8は、例えば、助手席用のエアバッグ5の展開を強制的に禁止している(禁止モード)時に点灯し、助手席用のエアバッグ5の展開を許可している(許可モード)時に消灯する。また、ダッシュボード6には警報ランプ9が設けられ、例えば、展開モードの確認を指示する場合に点灯する。
【0039】
図2は、助手席4にチャイルドシート10を拘束機構11を使用し装着した状態を示している。この助手席4はパワーシートであり、助手席4の座部4aの側部に設けられた操作レバー20を操作することで、駆動制御部21を介して電動モータ22が駆動制御され、助手席4を前後に移動駆動可能に構成されている。
【0040】
前記拘束機構11は、シートベルト12と、センターピラー19の下端部分に装着されシートベルト12を巻取る巻取ドラムを有するリトラクター13と、シートベルト12の先端に固着のタングプレート14と、助手席4の車体中央側側部に取付けられタングプレート14を連結解除可能に連結するバックル15等で構成されている。
【0041】
リトラクター13には、衝突時に巻取ドラムの回転をロックしシートベルト12の引出しを阻止するロック機構(図示略)と、シートベルト12の追加的な引出しを阻止するALR機構(図示略)が設けられている。このALR機構は、例えば、シートベルト12を略全て引出すことによりセットされ、その後シートベルト12を巻取ドラムに略全て巻取る迄の間作動するように構成されている。尚、ロック機構とALR機構については周知のものであるので説明を省略する。
【0042】
図2、図3に示すように、このエアバッグシステムのセンサ類として、車体前部に、衝突を検出する衝突検出センサ30が設けられ、助手席4の座部4aに、座部4aにかかる荷重をシート圧Pとして検出可能なシート圧センサ31が設けられ、バックル15に、拘束機構11の使用(シートベルト12の着用)の有無を検出するバックルスイッチ32(拘束検出手段に相当する)が設けられている。また、リトラクター13に、シートベルト12の引出し量Xを検出する引出し量検出センサ33と、ALR機構の作動の有無を検出するALR作動検出センサ34が設けられている。
【0043】
図3は、本実施形態のエアバッグシステムの概要を示す構成図である。このエアバッグシステムの制御装置40には、CPU41、ROM42、RAM43(2次電池でバックアップ可能)、タイマ44、入力インターフェース45(入力I/F)、出力インターフェース46(出力I/F)等が設けられ、これらはデータバス等のバス47で接続され、入力I/F45に、前記センサ類30〜34と電動モータ22を駆動制御する駆動制御部22が接続されている。
【0044】
出力I/F46には、運転席用のエアバッグ2に展開用のガスを供給する運転席用インフレータ48と、助手席用のエアバッグ5を展開させる助手席用インフレータ49と、展開モード表示ランプ8及び警報ランプ9が接続されている。インフレータ48,49は、エアバッグ2,5を夫々低圧と高圧の2段階で展開させることが可能なものである。尚、出力I/F46には、インフレータ48,49とランプ8,9を夫々駆動する駆動回路を含むものとする。
【0045】
制御装置40のROM42に、前記センサ類30〜34から入力される信号に基づいて、運転席用のエアバッグ2と助手席用のエアバッグ5の展開を夫々制御する展開制御の制御プログラムが格納され、特に、助手席用のエアバッグ5の展開を制御する本願特有の展開制御には、エアバッグ(A/B)展開規制制御(図4参照)と、展開禁止フラグ設定制御(図5、図6参照)が含まれている。尚、制御装置40が展開制御手段に相当する。
【0046】
A/B展開規制制御について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
この制御は例えばイグニションスイッチのONとともに開始されOFFにより終了する。展開禁止フラグF=1のときには(S1;Yes )、車両が衝突した場合でも、エアバッグ5の展開が禁止され(S8)リターンし、F=1でないときには(S1;No)S2以降が実行される。尚、S1の判定で使用される展開禁止フラグFが後で説明する展開禁止フラグ設定制御により設定される。
【0047】
F=1でないときには(S1;No)、各種センサ信号(衝突検出センサ信号、シート圧センサ信号、バックルスイッチ信号)が読込まれ(S2)、シート圧センサ31により検出されたシート圧Pが予め設定された設定シート圧P0よりも大きいとき(P>P0のとき)には(S3;Yes )、衝突速度が(例えば、衝突検出センサ30により検出される衝突加速度を積分して)演算される(S4)。P>P0でないとき(S3;No)、つまり、助手席4(シート)にシート圧P0となる体重(荷重)以下の乗員(小さな子供等)が着座しているときには、エアバッグ5の展開が禁止され(S8)リターンする。
【0048】
衝突速度の演算(S4)の後、その衝突速度が予め設定された低速以下のときには(S5;Yes )、エアバッグ5の展開が禁止され(S8)リターンする。また、衝突速度が前記低速よりも大きくしかも予め設定された中速以下のときに(S5;No、S6;Yes )、シートベルト12が着用されているときには(S7;Yes )、エアバッグ5の展開が禁止され(S8)リターンし、シートベルト12が着用されていないときには(S7;No)、エアバッグ5が低圧展開され(S9)リターンする。
【0049】
一方、衝突速度の演算(S4)の後、その衝突速度が前記中速よりも大きくしかも予め設定された高速以下のときに(S5;No、S6;No、S10;Yes )、シートベルト12が着用されているときには(S11;Yes )、エアバッグ5が低圧展開され(S9)リターンし、シートベルト12が着用されていないときには(S11;No)、エアバッグ5が高圧展開され(S12)リターンする。また、衝突速度が前記高速よりも大きいときにも(S5;No、S6;No、S11;No)、エアバッグ5が高圧展開され(S12)リターンする。
【0050】
尚、運転席用のエアバッグ2のA/B展開規制制御のフローチャートは、例えば、図4のフローチャートにおいてS1を省略したものである。但し、運転席用のエアバッグ2と運転席用インフレータ48の構造や性能等を加味して、前記P0、低速、中速、高速に相当する値が設定される。
【0051】
次に、前記展開禁止フラグ設定制御について、図5、図6のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0052】
この展開禁止フラグ設定制御においては、例えば、前記A/B展開規制制御に微小時間毎に割込んで略並行的に実行されるが、車両のドアが開状態(S20;Yes )で、給電ON(S21)となり、制御装置40に電力が給電されて作動する。一方、車両のドアが閉状態(S20;No)ではリターンし、制御装置40に電力が給電されないため非作動となる。
【0053】
給電ON(S21)となると、次に、各種センサ信号等(シート圧センサ信号、バックルスイッチ信号、引出し量検出センサ信号、ALR作動検出センサ信号)が読込まれ(S22)、バックルスイッチ32がOFFのときには(S23;Yes )、展開禁止フラグFに0がセットされて(S24)リターンする。
【0054】
バックルスイッチ32がONのとき(S23;No)、つまり、拘束機構11が使用(シートベルト12が着用)されているときには、展開禁止フラグFに1がセットされているか否かが判定され(S25)、Fに1がセットされていないときには(S25;No)S26以降が実行され、Fに1がセットされているときには(S25;Yes )S40以降(図6参照)が実行される。
【0055】
Fに0がセットされている場合(S25;No)、次に、ALR機構の作動継続時間が所定時間継続しているときには(S26;Yes )S32へ移行する。尚、ALR機構の作動継続時間は、ALR作動検出センサ34からの信号に基づいてタイマ44を用いて演算される。ALR機構の作動継続時間が所定時間継続していないときには(S26;No)、シート圧センサ31により検出されたシート圧Pと予め設定された設定シート圧P0との比較が行われ(S27)、P<P0でないときには(S27;No)、Fに0がセットされ(S28)リターンする。
【0056】
一方、P<P0のときには(S27;Yes )、次に、電動モータ22が作動しているときに(S30;Yes )、シート圧センサ31で検出されたシート圧PがP0を超えたとき(S31;Yes )、また、上述のように、ALR機構の作動継続時間が所定時間継続しているときには(S26;Yes )、Fに1がセットされ(S32)、シート圧センサ31により検出されたシート圧PがRAM43に第1シート圧Pmとして記憶され(S33)リターンする。尚、電動モータ22の作動状態は、駆動制御部21からの信号に基づいて判定可能である。
【0057】
ここで、RAM43にPmとして記憶されるシート圧Pは、電動モータ22が作動を終了したときのシート圧とすることが望ましい。即ち、図示していないが、S32とS33の間に、電動モータ作動中か否かを判定するステップを設け、電動モータ22が停止した場合にS33へ移行し、その時のシート圧PをPmとしてRAM43に格納することが望ましい。尚、RAM43は二次電池によりバックアップされ、蓄電装置(バッテリー)から制御装置50に電力が供給されない状態でも、RAM43に記憶された情報は消去されないようになっている。
【0058】
一方、バックルスイッチ32がONのときに(S23;No)、Fに1がセットされているとき(S25;Yes )、つまりエアバッグ5の展開が強制的に禁止されているときには、図6に示すように、シート圧センサ31により検出されたシート圧PがPmよりも所定値P1以上増加しているか否か、つまり、P−Pm>P1か否かが判定される(S40)。ここで、P1は、車両衝突時にエアバッグ5の展開が必要な乗員がシート4に着座したことが明らかなシート圧増加値に設定される。
【0059】
そして、P−Pm>P1でないときには(S40;No)、シート圧センサ31により検出されたシート圧P(第2シート圧)と第1シート圧Pmとが比較され(S41)、PとPmとが略同じであると判定されたとき(S41)、続いて、ALR機構がOFFでないときには(S42;No)、RAM43に記憶された展開許否情報つまりF=1が採用され(S43)リターンする。
【0060】
一方、P−Pm>P1のときには(S40;Yes )、Fに0がセットされ(S45)リターンし、また、PとPmとが略同じでないとき(S41;No)と、PとPmとが略同じであっても(S41;Yes )ALR機構がOFFのときには(S42;Yes )、警報を行う警報モードになり、警報ランプ9を点灯させて確認警報(S44)が行われ、Fに0がセットされ(S45)リターンする。
【0061】
このエアバッグシステムの作用・効果について説明する。
シート圧センサ31により予め設定された設定シート圧P0よりも大きなシート圧Pが検出された場合(S3;Yes )、エアバッグ5の展開を許可し、前記設定シート圧P0よりも小さなシート圧Pが検出された場合(S3;No)、エアバッグ5の展開を禁止することができる(S8)。従って、車両が衝突した際、乗員が小さな子供等の場合、その乗員に展開するエアバッグ5が影響を与えることが知られているが、前記設定シートP0を適宜設定することで、上記の問題を極力回避することができる。
【0062】
シートベルト12の着用時、つまりバックルスイッチ32がONのとき(S23;No)、シート圧センサ31により、前記設定シート圧P0よりも小さなシート圧Pが検出された場合(S27;Yes )、更に、電動モータ22が作動している時に(S30;Yes )、シート圧センサ31で検出されたシート圧Pが前記設定シート圧P0を超えた場合に(S31;Yes )、展開禁止フラグFに1がセットされ(S32)、エアバッグ5の展開を強制的に禁止できる(S8)。
【0063】
つまり、チャイルドシート10の装着後、チャイルドシート10に乳幼児が着座した場合や、シートベルト12でチャイルドシート10を強固に締付け固定した場合等、シート圧センサ31により前記設定シート圧P0よりも大きなシート圧が検出されても、Fに1がセットされているため、図5、図6に示すように、S20〜S25、S40〜が実行され、シート4にかかるシート圧が前記P1以上増加する場合(S40;Yes )、PとPmとが略同じでない場合(S41;No)、ALR機構がOFFでない場合(S42;Yes )を除き、エアバッグ5の展開を強制的に禁止した状態を維持することができ、車両が衝突しても、エアバッグ5は展開しなくなる。
【0064】
シートベルト12によりチャイルドシート10を拘束し、ALR機構を作動させた状態で、シート4を前方へ移動駆動することで、チャイルドシート10をシート4に強固に締付け固定することができる。そして、このようにチャイルドシート10を装着するため、ALR作動検出センサ34により検出されたALR機構の作動継続時間が所定時間よりも長くなると、チャイルドシート10を装着したことを検出し、エアバッグ5の展開を強制的に禁止できる。
【0065】
電力供給が停止された後再度供給された時にシート圧センサ31により検出された第2シート圧Pと第1シート圧Pmとを比較し(S41)、PとPmとが略同じであると判定されたとき(S41;Yes )、更に、ALR機構がOFFでないとき(S42;No)、つまり、シート5上の状態が変化していない(チャイルドシート10の着脱が行われていない)場合には、RAM43に記憶された展開許否情報としての展開フラグF=1を採用する一方、異なると判定された時には(S41;No)、警報を行う警報モードに設定し、警報ランプ9を点灯させて確認警報(S44)を行うことができる。
【0066】
つまり、電源が遮断されている状態において、シート上の状態の変化(チャイルドシート10の着脱が行われたか否か)を確実に検出し、展開制御による誤制御を防止することができる。 しかも、既存のセンサ類30〜34を適用できるため、汎用性に非常に優れたものになり製作コストも低減する。
【0067】
次に、第1変更形態のエアバッグシステムの展開禁止フラグ設定制御について、図7のフローチャートを参照して説明する。但し、前記実施形態のフローチャートのステップと同じステップには同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
この展開禁止フラグ設定制御においては、展開禁止フラグFに0がセットされているときに(S25;No)、ALR機構の作動継続時間が所定時間継続していないときには(S26;No)、シート圧センサ31により検出されたシート圧Pと予め設定された設定シート圧P0との比較が行われ(S27)、P<P0のときには(S27;Yes )、シート圧センサ31により前記設定シート圧P0よりも小さく設定された第2の設定シート圧P2以上の荷重が検出されるとき、つまりP>P2のときに(S50;Yes )、Fに1がセットされる(S51)。
【0069】
つまり、第2の設定シート圧P2をチャイルドシート10の荷重対応するシート圧よりも小さなシート圧に設定することで、拘束機構11のシートベルト12の着用時、P0>P>P2のときに、チャイルドシート10を装着したことを検出して、エアバッグ5の展開を強制的に禁止できる。つまり、第2の設定荷重P2よりも小さな荷物等がシートに乗っている状態から、車両衝突時にエアバッグ5の展開が必要な乗員がシートに着座した場合には、エアバッグ5の展開が禁止されないため有効である。その他前記実施形態と略同様の作用・効果を奏する。
【0070】
次に、第2変更形態のエアバッグの展開制御について、図8、図9のフローチャートを参照して説明する。但し、前記実施形態のフローチャートのステップと同じステップには同じ符号を付して説明する。
【0071】
この展開禁止フラグ設定制御においては、図8に示すように、展開禁止フラグFに0がセットされているときに(S25;No)、ALR機構の作動継続時間が所定時間継続していないときには(S26;No)、シート圧センサ31により検出されたシート圧Pと予め設定された設定シート圧P0との比較が行われ(S27)、P<P0のときには(S27;Yes )、引出し量検出センサ33により検出されたシートベルト12の引出し量が予め設定された設定引出し量X1を超えたか否かが判定される(S60)。
【0072】
ここで、X1は、チャイルドシート10を拘束した際のシートベルト12の引出し量よりも短く、また、乗員を拘束した際のシートベルト12の引出し量よりも長く設定される。次に、X>X1のとき(S60;Yes )には、Fに1がセットされ(S61)、その時に引出し量検出センサ33により検出され引出し量XがRAM43に第1引出し量Xmとして記憶され(S62)リターンする。
【0073】
一方、バックルスイッチ32がONのときに(S23;No)、Fに1がセットされているとき(S25;Yes )、つまりエアバッグ5の展開が強制的に禁止されているときには、図9に示すように、引出し量検出センサ33により検出された引出し量X(第2引出し量)と第1引出し量Xmとが比較される(S70)。そして、第1引出し量Xmと第2引出量Xとが略同じときに(S70;Yes )、続いて、ALR機構がOFFでないときには(S71;No)、RAM43に記憶された展開許否情報つまりF=1が採用され(S72)リターンする。
【0074】
一方、第1引出し量Xmと第2引出量Xとが略同じでないとき(S70;No)と、ALR機構がOFFのときには(S71;Yes )、警報を行う警報モードになり、警報ランプ9を点灯させて確認警報(S73)が行われ、その後、Fに0がセットされ(S74)リターンする。
【0075】
このように、引出し量検出センサ33により検出されたシートベルト12の引出し量が設定引出し量X1を超えた場合(S60;Yes )、チャイルドシート10を装着したことを検出し、展開禁止フラグに1がセットされ(S61)、エアバッグ5の展開を強制的に禁止することができる(S8)。
【0076】
電力供給が停止された後再度供給された時に第1引出し量Xmと第2引出し量Xとを比較し(S70)、XとXmとが略同じであると判定されたとき(S70;Yes )、更に、ALR機構がOFFでないとき(S71;No)、つまり、シート5上の状態が変化していない(チャイルドシート10の着脱が行われていない)場合には、RAM43に記憶された展開許否情報としての展開フラグF=1を採用する一方、異なると判定されたときに(S70;No)、また、ALR機構がOFFのときには(S71;Yes )、警報を行う警報モードに設定し、警報ランプ9を点灯させて確認警報(S74)を行うことができる。その他前記実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0077】
その他の変更形態について説明する。
1〕前記実施形態では、助手席用のエアバッグの展開を制御する展開制御に本発明を適用したものであるが、後部座席用のエアバッグを有するエアバッグシステムに、本発明を適用することが勿論可能である。
2〕図6のS41とS42の一方、図9のS70とS71の一方を省略可能である。また、図5と図7と図8のS26を省略可能である。
【0078】
3〕図6のS44、図9のS73の確認警報の代わりに、或いは確認警報を省略せずにその前後に、エアバッグ5の展開許否の決定を乗員に選択させる選択モード(選択処理)を設けてもよい。エアバッグの展開を禁止するのか許可するのかを認識できない場合、乗員が実際に見て、チャイルドシート10を装着しているときにはエアバッグの展開を禁止するように、チャイルドシート10を装着していないときにはエアバッグ5の展開を許可するように決定することができる。
【0079】
4〕所定周期毎にシート圧センサ31により検出されたシート圧や、引出し量検出センサ33により検出された引出し量を記憶するとともに、ドアが閉状態となる直前に検出されたシート圧を前記第1荷重Pm、引出し量を前記第1引出しXmとしてRAM43に記憶し、ドアが開状態となった直後に検出された荷重を前記第2シート圧、引出し量を前記第2引出し量としてもよい。
【0080】
5〕フローチャートのS20において、イグニションスイッチがオン状態(S20;Yes )で、給電ON(S21)となり、制御装置40に電力が供給されるように構成してもよいし、制御装置40に蓄電装置から常時電力が供給されるように構成してもよい。
6〕尚、本発明の車両のエアバッグシステムは、前記実施形態に限られるものではなく、種々の変更を加えて、種々のエアバッグシステムに適用することが勿論可能である。
【0081】
【発明の効果】
請求項1の車両のエアバッグシステムによれば、特に、強制禁止手段を設けることにより、荷重検出手段により、シートベルト手段の着用時に前記設定荷重よりも小さな荷重が検出された場合は、その後荷重検出手段により前記設定荷重よりも大きな荷重が検出された場合でも、エアバッグの展開を強制的に禁止することが可能になる。
【0082】
つまり、チャイルドシートを装着する際、シートベルト手段の着用時においては、シートにかかるチャイルドシートの荷重は前記設定荷重よりも小さいため、エアバッグの展開を強制的に禁止することが可能になり、チャイルドシートの装着後、チャイルドシートに乳幼児が着座した場合や、シートベルトでチャイルドシートをシートに強固に締付け固定した場合等、荷重検出手段により前記設定荷重よりも大きな荷重が検出されても、エアバッグの展開を強制的に禁止した状態を維持することが可能になる。しかも、荷重検出手段や拘束検出手段として、既存の荷重検出手段や拘束検出手段を適用すればよいので、汎用性に非常に優れたものになり製作コストも低減する。
【0083】
請求項2の車両のエアバッグシステムによれば、強制禁止手段によりエアバッグの展開が強制的に禁止された状態でも、荷重検出手段により検出された荷重が所定値以上増加した場合、シートに荷物やチャイルドシートや子供が乗っていたところに大人等が乗ったと判断し、エアバッグの展開を許可することができる。尚、前記所定値は、車両衝突時にエアバッグの展開が必要な乗員がシートに着座したことが明らかな荷重増加値に設定される。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0084】
請求項3の車両のエアバッグシステムによれば、チャイルドシートをシートベルトで拘束し、シートベルトの追加的な引出しが禁止された状態で、シートを前方へ移動駆動すると、シートベルトによりチャイルドシートを強固に締付けて固定することができるとともに、このとき、シートにかかる荷重が増大し前記設定荷重を超える場合が多く、これにより、チャイルドシートを装着したことを検出し、エアバッグの展開を強制的に禁止できる。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0085】
請求項4の車両のエアバッグシステムによれば、通常、チャイルドシートを拘束したシートベルトの引出し量は、乗員を拘束したシートベルトの引出し量よりも長いため、前記設定引出し量をチャイルドシートを拘束する際の引出し量よりも小さく乗員を拘束する際の引出し量よりも大きく設定することで、或いは、第2の設定荷重をチャイルドシートよりも小さな荷重に設定することで、チャイルドシートを装着したことを検出し、エアバッグの展開を強制的に禁止できる。特に、第2の設定荷重よりも小さな荷物等がシートにシートベルトで固定されている状態から、車両衝突時にエアバッグの展開が必要な乗員がシートに着座した場合には、エアバッグの展開が禁止されないため有効である。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0086】
【0087】
請求項5の車両のエアバッグシステムによれば、展開制御手段は、電力が供給されると作動するように構成され、その展開制御手段には蓄電装置から常時電力が供給されているので、シート上の状態を継続的に検出できることから展開制御手段による誤制御を防止することができる。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0088】
請求項6の車両のエアバッグシステムによれば、展開制御手段は、電力が供給されると作動する一方、電力が供給されなくなると非作動となるように構成されているため、電力節電に寄与するとともに、比較手段により、電力供給が停止された後再度供給された時に荷重検出手段により検出された第2荷重と前記第1荷重とが比較され、設定手段により、比較手段により第1荷重と第2荷重とが略同じであると判定された時、つまり、シート上の状態が変化していない(チャイルドシートの着脱が行われていない)場合には、記憶手段に記憶された展開許否情報(展開禁止フラグ)を採用し、異なると判定された時、つまり、シート上の状態が変化している(チャイルドシートの着脱が行われた)場合には、所定モードに設定することができる。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0089】
請求項7の車両のエアバッグシステムによれば、展開制御手段は、電力が供給されると作動する一方、電力が供給されなくなると非作動となるように構成されているため、電力節電に寄与するとともに、比較手段により、電力供給が停止された後再度供給された時に荷重検出手段により検出された第2引出し量と前記第1引出し量とが比較され、設定手段により、比較手段により第1引出し量と第2引出し量とが略同じであると判定された時、つまり、シート上の状態が変化していない(チャイルドシートの着脱が行われていない)場合には、記憶手段に記憶された展開許否情報(展開禁止フラグ)を採用し、異なると判定された時、つまり、シート上の状態が変化している(チャイルドシートの着脱が行われた)場合には、所定モードに設定することができる。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0090】
請求項8の車両のエアバッグシステムによれば、前記所定モードは、エアバッグの展開を強制的に禁止する展開禁止モード、若しくは、警報を行う警報モード、若しくは、エアバッグの展開許否の決定を乗員に選択させる選択モードの少なくとも1つであるので、例えば、種々のセンサ類により、チャイルドシートが装着されていることが確実に検出されれば、所定モードをエアバッグの展開を強制的に禁止する展開禁止モードとし、また、チャイルドシートが装着されているか否か、つまりエアバッグの展開を禁止するのか許可するのか判断できない場合には、所定モードを警報モードとし、また、エアバッグの展開許否の決定を乗員に選択させる場合、所定モードを選択モードとすることができる。その他請求項6又は7と同様の効果を奏する。
【0091】
請求項9の車両のエアバッグシステムによれば、車両のドアを開くことで前記展開制御手段に電力が供給されるので、通常、チャイルドシートを装着する場合、ドアを開いて行うことから、チャイルドシートを装着する際に、前記展開制手段を確実に作動させることができ、展開制手段による誤制御を防止できる。その他請求項6又は7と同様の効果を奏する。
【0092】
請求項10の車両のエアバッグシステムによれば、展開制御手段において、所定周期毎に荷重検出手段により検出された荷重が記憶手段に記憶され、ドアが閉状態となる直前に検出された荷重が前記第1荷重として記憶手段に記憶され、ドアが開状態となった直後に検出された荷重が前記第2荷重とされるので、車両のドアが閉状態の際、又は、イグニションスイッチがオフ状態の際に、シート上の状態が変化したか否か(チャイルドシートの着脱が行われた否か)を確実に判定することができる。その他請求項6と同様の効果を奏する。
請求項11の車両のエアバッグシステムによれば、シートベルト手段のシートベルトによりチャイルドシートを拘束し、ALR機構を作動させた状態でシートを前方へ移動させることで、チャイルドシートをシートに強固に締付け固定することができるとともに、ALR作動検出手段により検出されたALR機構の作動継続時間が所定時間よりも長くなると、チャイルドシートを装着したと検出され、エアバッグの展開を強制的に禁止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車の概略平面図である。
【図2】自動車内部の要部の概略側面図である。
【図3】エアバッグシステムの概要を示す構成図である。
【図4】A/B展開規制制御のフローチャートである。
【図5】展開禁止フラグ設定制御の一部のフローチャートである。
【図6】展開禁止フラグ設定制御の残り一部のフローチャートである。
【図7】第1変更形態に係る展開禁止フラグ設定制御のフローチャートである。
【図8】第2変更形態に係る展開禁止フラグ設定制御のフローチャートである。
【図9】第2変更形態に係る展開禁止フラグ設定制御のフローチャートである。
【符号の説明】
C 自動車
4 シート
5 エアバッグ
11 拘束機構
12 シートベルト
22 電動モータ
30 衝突検出センサ
31 シート圧センサ
32 バックルスイッチ
33 引出し量検出センサ
34 ALR作動検出センサ
40 制御装置
Claims (11)
- 車両の衝突を検出する衝突検出手段と、シートにかかる荷重を検出する荷重検出手段と、車体に固定されたシートベルトにより、乗員をシートに拘束するシートベルト手段の使用の有無を検出する拘束検出手段と、これらの手段から入力される信号に基づいてエアバッグの展開を制御する展開制御手段とを備えた車両のエアバッグシステムにおいて、
前記展開制御手段は、前記荷重検出手段により、予め設定された設定荷重よりも大きな荷重が検出された場合にエアバッグの展開を許可し、前記設定荷重よりも小さな荷重が検出された場合にエアバッグの展開を禁止するように構成されるとともに、
前記拘束検出手段により前記シートベルト手段の使用が検出されている時に、前記荷重検出手段により、前記設定荷重よりも小さな荷重が検出された場合、その後荷重検出手段により前記設定荷重よりも大きな荷重が検出された場合でも、エアバッグの展開を強制的に禁止可能な強制禁止手段を備えたことを特徴とする車両のエアバッグシステム。 - 前記展開制御手段は、強制禁止手段によりエアバッグの展開が強制的に禁止された状態で、荷重検出手段により検出された荷重が所定値以上増加した場合には、エアバッグの展開を許可することを特徴とする請求項1に記載の車両のエアバッグシステム。
- 前記シートは電動モータにより前後に移動駆動可能に構成され、前記強制禁止手段は、電動モータが作動している時に、荷重検出手段で検出された荷重が前記設定荷重を超えた場合に、エアバッグの展開を強制的に禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両のエアバッグシステム。
- 前記シートベルト手段のシートベルトの引出し量を検出する引出し量検出手段を設け、前記強制禁止手段は、引出し量検出手段により検出されたシートベルトの引出し量が予め設定された設定引出し量を超えた場合、或いは、荷重検出手段により前記設定荷重よりも小さく設定された第2の設定荷重以上の荷重が検出された場合に、エアバッグの展開を強制的に禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両のエアバッグシステム。
- 前記展開制御手段は、電力が供給されると作動するように構成され、その展開制御手段には蓄電装置から常時電力が供給されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のエアバッグシステム。
- 前記展開制御手段は、電力が供給されると作動する一方、電力が供給されなくなると非作動となるように構成され、
電力が供給された状態で荷重検出手段により検出された第1荷重とエアバッグの展開の許否を決定する展開許否情報とを記憶可能な記憶手段と、
電力供給が停止された後再度供給された時に荷重検出手段により検出された第2荷重と前記第1荷重とを比較する比較手段と、
この比較手段により第1荷重と第2荷重とが略同じであると判定された時には記憶手段に記憶された展開許否情報を採用する一方、異なると判定された時には所定モードに設定する設定手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の車両のエアバッグシステム。 - 前記展開制御手段は、電力が供給されると作動する一方、電力が供給されなくなると非作動となるように構成され、
電力が供給された状態で引出し量検出手段により検出された第1引出し量とエアバッグの展開の許否を決定する展開許否情報とを記憶可能な記憶手段と、
電力供給が停止された後再度供給された時に引出し量検出手段により検出された第2引出し量と前記第1引出し量とを比較する比較手段と、
この比較手段により第1引出し量と第2引出し量とが略同じであると判定された時には記憶手段に記憶された展開許否情報を採用する一方、異なると判定された時には所定モードに設定する設定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の車両のエアバッグシステム。 - 前記所定モードは、エアバッグの展開を強制的に禁止する展開禁止モード、若しくは、警報を行う警報モード、若しくは、エアバッグの展開許否の決定を乗員に選択させる選択モードの少なくとも1つであることを特徴とする請求項6又は7に記載の車両のエアバッグシステム。
- 車両のドアを開くことで前記展開制御手段に電力が供給されることを特徴とする請求項6又は7に記載の車両のエアバッグシステム。
- 車両のドアが開状態又はイグニションスイッチがオン状態で、前記展開制御手段に電力が供給されるとともに、車両のドアが閉状態又はイグニションスイッチがオフ状態で、前記展開制御手段への電力の供給が停止するように構成され、
前記展開制御手段は、所定周期毎に荷重検出手段により検出された荷重を記憶手段に記憶するとともに、ドアが閉状態となる直前に検出された荷重を前記第1荷重として記憶手段に記憶し、ドアが開状態となった直後に検出された荷重を前記第2荷重とすることを特徴とする請求項6に記載の車両のエアバッグシステム。 - 車両の衝突を検出する衝突検出手段と、シートにかかる荷重を検出する荷重検出手段と、車体に固定されたシートベルトにより、乗員をシートに拘束するシートベルト手段の使用の有無を検出する拘束検出手段と、これらの手段から入力される信号に基づいてエアバッグの展開を制御する展開制御手段とを備えた車両のエアバッグシステムにおいて、
前記シートベルト手段のシートベルトの追加的な引出しを禁止するALR機構と、ALR機構の作動の有無を検出するALR作動検出手段とを設け、
前記展開制御手段は、前記ALR作動検出手段により検出されたALR機構の作動継続時間が所定時間よりも長くなった場合にエアバッグの展開を強制的に禁止することを特徴とする車両のエアバッグシステム。
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