図1および図2は本発明に係る車両用シートベルト装置の実施形態を示している。この車両用シートベルト装置は、シート1に着座した乗員を保護するシートベルト機構2と、後述するようにシートベルトに設けられたバッグ部6a,7aにエアを繰り返し供給可能に構成された送風手段3と、この送風手段3の作動状態を制御するエア供給制御手段4が設けられた制御ユニット5とを有している。
上記シートベルト機構2は、乗員の肩部および胸部を拘束するショルダーベルト6および乗員の腹部および腰部を拘束するラップベルト7を備えたシートベルトと、シート1の後方下部に配設されたショルダーベルト6用のリトラクター8と、シート1の後部上方において上記ショルダーベルト6を支持するアンカー9と、ショルダーベルト6およびラップベルト7の先端部に設けられたタング10と、このタング10をシート1の側方部において車体に係止するバックル11とを有する三点式シートベルト機構からなっている。
上記ショルダーベルト6には、タング10が設けられた先端部から上記アンカー9による支持部の手前に至る範囲にバッグ部6aが設けられるとともに、バッグ部6a内の圧力を検出する圧力センサ6bが設けられている。このバッグ部6aは、図3(a)に示すように収縮した状態から、図3(b)に示すように展開した状態となるように構成された袋状体からなり、その内部には、一対のチューブからなるエア供給通路12が導入されている。
上記エア供給通路12は、送風手段3に接続されるとともに、通路を開閉する開閉弁13を有している。また、上記アンカー9の設置部の近傍には、リトラクター8からショルダーベルト6が引き出されるのに対応して上記エア供給通路12を引き出すように駆動するとともに、リトラクター8によりショルダーベルト6が巻き取られるのに対応して上記エア供給通路12を巻き取るように駆動するエア供給通路12用のリトラクター14が設けられている。
そして、上記開閉弁13を開放した状態で送風手段3を作動させてエア供給通路12の周面に形成されたエア噴出口からバッグ部6a内に、エアを所定の圧力で供給することにより、バッグ部6aの厚みを増大させて図3(b)に示すように展開させるとともに、この状態で開閉弁13を閉止することにより上記展開状態を維持するようになっている。また、上記送風手段3およびエア供給通路12は、バッグ部6a内のエアを外部に排出するエア排出手段としての機能をも有し、開閉弁13を開放した状態で送風手段3を作動させてバッグ部7a内のエアを吸引することにより、バッグ部6aを図3(a)に示す収縮状態に復帰させるように構成されている。
上記ラップベルト7には、図4(a)に示すように収縮した状態から、図4(b)に示すように展開した状態となるように構成された袋状体からなるバッグ部7aが、乗員の腹部および腰部に当接する部分に設けられ、その内部には、一対のチューブからなるエア供給通路15が導入されるとともに、圧力センサ7bが設けられている。このエア供給通路15は、上記ショルダーベルト6用のエア供給通路12と同様に送風手段3に接続されるとともに、通路を開閉する開閉弁16を有している。
そして、上記開閉弁16を開放した状態で送風手段3を作動させてエア供給通路15の周面に形成されたエア噴出口からバッグ部7a内に、エアを所定の圧力で供給することにより、バッグ部7aの幅寸法を増大させて図4(b)に示すように展開させるとともに、この状態で開閉弁16を閉止することにより上記展開状態を維持するようになっている。また、上記送風手段3およびエア供給通路15は、バッグ部7a内のエアを外部に排出するエア排出手段としての機能をも有し、上記開閉弁16を開放した状態で送風手段3を作動させてバッグ部7a内のエアを吸引することにより、バッグ部7aを図4(a)に示す収縮状態に復帰させるように構成されている。
上記リトラクター8には、図5に示すように、ショルダーベルト6を引出可能に支持するとともに、ショルダーベルト6の巻取リール17aを回転駆動する電動モータからなる第1プリテンショナー17と、ショルダーベルト6の急激な引出を規制する図外のロードリミッタと、車両の衝突発生時にショルダーベルト6を巻き取ることにより所定の張力を付与する第2プリテンショナー18からなる張力付与手段とが設けられている。
上記第2プリテンショナー18は、巻取リール17aの駆動軸に連結されたピニオンギア19と、このピニオンギア19を回転駆動するラックギア20と、このラックギア20を駆動するインフレータ21とを有している。そして、車両の衝突発生時に上記インフレータ21を作動させてガスを発生させ、そのガス圧に応じて上記ラックギア20を下方の待機位置から上方の駆動位置に移動させることにより、上記ピニオンギア19を回転駆動してショルダーベルト6を急速に巻き取るように構成されている。
上記送風手段3は、図6に示すように、エアを加圧して供給する電動ブロア等からなる送風駆動源22と、この送風駆動源22から供給された加圧エアを蓄えるアキュームレータ23と、上記送風駆動源22またはアキュームレータ23をエア供給通路12,15に連通させるようにエアの流通方向を切り替える切替弁24とを有している。また、切替弁24は、必要に応じて送風駆動源22とアキュームレータ23とを連通させた状態とするとともに、これらと、上記エア供給通路12,15との連通を遮断した状態とすることが可能なように構成されている。
そして、上記制御ユニット5のエア供給制御手段4から出力される制御信号に応じ、上記アキュームレータ23をエア供給通路12,15に連通させるように上記切替弁24が切り替えられると、アキュームレータ23内に蓄えられた高圧のエアが、上記エア供給通路12,15を介してショルダーベルト6のバッグ部6aおよびラップベルト7のバッグ部7aにそれぞれ供給されることになる。また、上記送風駆動源22をエア供給通路12,15に連通させるように上記切替弁24を切り替えた状態で送風駆動源22を作動させることにより、この送風駆動源22から上記エア供給通路12,15を介してショルダーベルト6のバッグ部6aおよびラップベルト7のバッグ部7aにエアがそれぞれ供給されるとともに、上記送風駆動源22の回転速度を変化させることにより上記エアの供給圧力が調節されるようになっている。
上記制御ユニット5には、図1に示すように、車両の衝突を予知する衝突予知手段25と、車両が衝突状態となったか否かを検出する衝突検出手段26と、上記開閉弁13,16に開閉指令信号を出力する開閉制御手段27と、上記第1,第2プリテンショナー17,18に作動指令信号を出力するプリテンショナー制御手段28と、上記送風手段3からのエアが適正に供給されたか否かを検出するフェイル検出手段29とが設けられている。
上記衝突予知手段25は、車体の前部、後部および左右両側部に設けられた超音波センサ、赤外線センサまたはレーダー等からなる前方距離検出手段31、後方距離検出手段32および側方距離検出手段33の検出信号に応じて自車の前方、後方または側方に位置する他車等との相対距離および相対速度を計測する等により、衝突事故が発生する可能性が極めて高い状態にあるか否かを判別し、高いと判別された場合に、上記エア供給制御手段4および開閉制御手段27に衝突予知信号を出力するように構成されている。また、衝突予知手段25は、上記他車等との相対距離および自車の車速等に応じて衝突発生時の衝撃力を予測し、この予測値を上記エア供給制御手段4に出力するように構成されている。
上記衝突検出手段26は、車室の前部等に設けられた加速度センサ34の検出信号に応じて自車が他車に衝突する等により大きな衝撃荷重が作用したことが確認された場合等に、自車が衝突状態となったと判定して衝突検出信号を上記開閉制御手段27およびプリテンショナー制御手段28に出力するように構成されている。
上記開閉制御手段27は、衝突予知手段25から衝突予知信号が入力された時点で開閉弁13,16に開放指令信号を出力して開閉弁13,16を開放状態とするとともに、上記エア供給制御手段4からシートベルトのバッグ部6a,7aにするエアの供給が開始された後に予め設定された供給時間が経過したか否かを判別し、この供給時間が経過したことが確認された時点で、上記開閉弁13,16に閉止指令信号を出力して開閉弁13,16を閉止状態とする制御を実行するように構成されている。上記供給時間は、送風手段3から送風されるエアの供給圧力に基づき、シートベルトのバッグ部6a,7a内に所定量のエアを供給することによりバッグ部6a,7aを適正な展開状態とすることができる値に設定されている。
また、上記エア供給制御手段4は、衝突予知手段25から衝突予知信号が入力された時点で送風手段3のアキュームレータ23をエア供給通路12,15に連通させる切替指令信号を上記切替弁24に出力することにより、アキュームレータ23から上記エア供給通路12,15を介してショルダーベルト6のバッグ部6aおよびラップベルト7のバッグ部7aに高圧のエアをそれぞれ供給するように構成されている。そして、上記高圧エアの供給を開始した後、予め設定された所定時間が経過した時点で、上記送風手段3の送風駆動源22をエア供給通路12,15に連通させる切替信号を上記切替弁24に出力するとともに、送風駆動源22を作動させる作動指令信号を出力し、かつ上記衝突予知手段25から出力された衝突発生時の衝撃力の予測値に基づいて上記送風駆動源22の回転速度を調節する制御が上記エア供給制御手段4において実行されるようになっている。
なお、車両の通常走行時に、上記アキュームレータ23に蓄えられたエアの圧力が一定値以下に低下したことが確認された時点、あるいは定期的に、送風手段3の送風駆動源22とアキュームレータ23とを連通させるように上記切替弁24を切り替えた状態で、送風駆動源22を作動させてアキュームレータ23内に高圧のエアを供給することにより、アキュームレータ23内の圧力が一定値以下となるのを防止するように構成されている。
また、上記シート1の側方部等には、シートベルトのバッグ部6a,7aにエアを供給してこのバッグ部6a,7aを所定の展開状態とするための設定スイッチ35が設けられている。この設定スイッチ35により、シートベルトのバッグ部6a,7aを所定の展開状態とする設定操作が行われた場合には、その時点で上記送風手段3の送風駆動源22をエア供給通路12,15に連通させた状態で、送風駆動源22を作動させることにより、上記シートベルトのバッグ部6a,7a内に所定量のエアを供給する制御が上記エア供給制御手段4において実行されるようになっている。
上記プリテンショナー制御手段28は、車両の衝突が予知されて上記エア供給制御手段4によりシートベルトのバッグ部6a,7aを展開させる制御が行われた後に、第1プリテンショナー17を作動させる制御信号を出力してショルダーベルト6を巻き取るとともに、この第1プリテンショナー17によるショルダーベルト6の巻取量を、後述するように上記送風手段3からシートベルトのバッグ部6a,7a内に供給されたエア量に応じて調節する制御を実行するように構成されている。
また、上記プリテンショナー制御手段28は、衝突検出手段26から衝突検出信号が出力され、車両が衝突状態となったことが確認された時点で第2プリテンショナー18のインフレータ21に作動指令信号を出力し、上記インフレータ21を作動させてガスを発生させることにより、ショルダーベルト6を急速に巻き取って所定の力で乗員をシート1に拘束する制御を実行するように構成されている。
上記フェイル検出手段29は、送風手段3からエア供給通路12,15を介してシートベルトのバッグ部6a,7a内にエアが供給されるのに応じてバッグ部6a,7aの圧力が適正値に上昇したか否かを判別することにより、上記送風手段3からバッグ部6a,7a内にエアが正常に供給されたか否かを検出し、エアの供給不良が発生したことが確認された場合に、フェイル検出信号を上記エア供給制御手段4およびプリテンショナー制御手段28に出力するように構成されている。上記フェイル検出手段29からフェイル検出信号が出力された場合には、送風手段3からシートベルトのバッグ部6a,7a内に供給されたエアを外部に排出させる制御が上記エア供給制御手段4において実行されるとともに、後述するように上記第1プリテンショナー17によるショルダーベルト6の巻取状態をフェイルが発生した状態にない通常時と変化させる制御が上記プリテンショナー制御手段28において実行されるようになっている。
上記のように構成された車両用シートベルト装置の制御ユニット5において実行される制御動作を、図7および図8に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、まず上記設定スイッチ35を使用してバッグ部6a,7aを所定の展開状態とする設定操作が行われたか否かを判定し(ステップS1)、YESと判定された場合には、送風手段3の送風駆動源22をエア供給通路12,15に連通させた状態で、送風駆動源22を作動させて上記シートベルトのバッグ部6a,7a内に所定量のエアを供給することにより、このバッグ部6a,7aを乗員の設定操作に応じた展開状態とする制御を実行する(ステップS2)。次いで、衝突予知手段25において車両の衝突が予知されたか否かを判定し(ステップS3)、NOと判定された場合には、下記ステップS13に移行する。
上記ステップS3でYESと判定されて車両の衝突が予知されたことが確認された場合には、自車の車速および他車との相対距離等に基づいて衝突発生時の衝撃力を予測する(ステップS4)。また、上記開閉弁13,16を開放状態とする制御信号を開閉制御手段27から開閉弁13,16に出力するとともに(ステップS5)、上記送風手段3を作動させてシートベルトのバッグ部6a,7aにエアを供給する制御を上記エア供給制御手段4において実行する(ステップS6)。
具体的には、上記衝突予知手段25から衝突予知信号が入力された時点で送風手段3のアキュームレータ23をエア供給通路12,15に連通させるように上記切替弁24を切り替えるとともに、アキュームレータ23から上記エア供給通路12,15を介してシートベルトのバッグ部6a,7aに高圧のエアをそれぞれ供給した後、予め設定された供給時間が経過した時点で、上記送風手段3の送風駆動源22をエア供給通路12,15に連通させるように上記切替弁24を切り替えるとともに、上記衝突予知手段25から出力された衝突発生時の衝撃力の予測値に対応した回転速度で送風駆動源22を正転駆動してシートベルトのバッグ部6a,7aにエアを供給する制御を上記エア供給制御手段4において実行する。
次いで、上記エア供給制御手段4においてバッグ部6a,7aに対するエアの供給開始後に予め設定された供給時間が経過した否かを判別することにより、エアの供給停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS7)。このステップS7でYESと判定され、エアの供給開始後に予め設定された供給時間が経過したことが確認された時点で、上記圧力センサ6b,7bの検出信号に応じてエアの供給不良が発生したか否かを判定する(ステップS8)。
ステップS8でYESと判定され、上記供給時間が経過したにも拘わらず、エアの供給不良が発生してバッグ部6a,7a内の圧力が適正値に上昇していないことが確認された場合には、上記開閉弁13,16を開放状態としてシートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを外部に排出する制御を実行し(ステップS9)、かつ通常時とは異なる態様で上記第1プリテンショナー17を作動させてフェイル時おけるショルダーベルト6の巻取制御を実行する(ステップS10)。
すなわち、上記ステップS8で送風手段3によるエアの供給不良が発生したことが確認された場合には、ステップS9で上記送風手段3の送風駆動源22をエア供給通路12,15に連通させるように上記切替弁24を切り替えた状態で、送風駆動源22を逆転駆動してシートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを外部に排出することにより、バッグ部6a,7aを初期状態に復帰させる制御を上記エア供給制御手段4において実行する。次いで、ステップS10において、上記第1プリテンショナー17によるショルダーベルト6の巻取速度を通常時よりも遅く設定し、あるいはその巻取量を非フェイル時よりも多く設定する等により、フェイル時の巻取制御を実行した後、下記ステップS13に移行する。
また、上記ステップS8でNOと判定されて送風手段3からシートベルトのバッグ部6a,7a内にエアが正常に供給されたことが確認された場合には、上記開閉弁13,16を閉止状態とする指令信号を出力して開閉弁13,16を閉止するとともに(ステップS11)、上記第1プリテンショナー17によるショルダーベルト6の巻取量を上記バッグ部6a,7a内に供給されたエア量に応じて調節する通常時、つまり非フェイル時の巻取制御を実行する(ステップS12)。すなわち、上記送風手段3からエア供給通路12,15を介してシートベルトのバッグ部6a,7a内に供給されるエアの圧力と供給時間とに基づき、上記バッグ部6a,7a内に供給されたエア量を算出し、このエア量が多い場合には、エア量が少ない場合に比べて上記ショルダーベルト6の巻取量を少なくする通常時の巻取制御を実行する。
その後、上記衝突検出手段26において車両が衝突状態となったことが検出されたか否かを判定し(ステップS13)、YESと判定された場合には、第2プリテンショナー18のインフレータ21に作動指令信号を出力することにより、このインフレータ21を作動させてショルダーベルト6を巻き取る制御を実行した後に(ステップS14)、制御動作を終了する。
また、上記ステップS13でNOと判定された場合には、上記衝突予知手段25による衝突の予知が行われた後に予め設定された所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS15)。この所定時間は、上記衝突の予知後に衝突が回避されたか否かを判別するのに充分な時間に設定されている。上記ステップS15でYESと判定された場合には、上記第1プリテンショナー17によるショルダーベルト6の巻取状態を解除し、その張力を元の状態に復帰させた後(ステップS16)、上記開閉弁13,16を開放状態としてシートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを外部に排出することにより、バッグ部6a,7aを元の状態に復帰させる制御を実行する(ステップS17)。すなわち、上記送風手段3の送風駆動源22をエア供給通路12,15に連通させるように上記切替弁24を切り替えた状態で、送風駆動源22を逆転駆動してシートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを外部に排出することにより、バッグ部6a,7aの内部圧力を、設定スイッチ35により設定された設定圧とする制御を上記エア供給制御手段4において実行する。
次いで、シートベルトの解放操作またはイグニッションキースイッチ(IG)のOFF操作の何れかが行われたか否かを判定し(ステップS18)、YESと判定された場合には、上記第1プリテンショナー17によるショルダーベルト6の巻取状態を解除し、その張力を元の状態に復帰させた後(ステップS19)、上記開閉弁13,16を開放状態としてシートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを外部に排出することにより、このバッグ部6a,7aを初期状態に復帰させる制御を実行した後(ステップS20)、リターンする。
例えば、シートベルト機構2のタング10がバックル11から外されたことを検出するバックルスイッチの出力信号に応じ、シートベルトの解放操作が行われたことが検出された時点、あるいはイグニッションキースイッチの出力信号に応じ、イグニッションキースイッチがOFF操作されたことが検出された時点で、上記送風手段3の送風駆動源22をエア供給通路12,15に連通させるように上記切替弁24を切り替えた状態で、送風駆動源22を逆転作動させてシートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを全て排出することにより、シートベルトのバッグ部6a,7aを収縮させた初期状態に復帰させる制御を上記エア供給制御手段4において実行する。
上記のように乗員を保護するショルダーベルト6およびラップベルト7からなるシートベルトにエアが供給されることにより展開するバッグ部6a,7aが設けられた車両用シートベルト装置において、車両の衝突を予知する衝突予知手段25と、車両が衝突状態となったことを検出する衝突検出手段26と、上記バッグ部6a,7aにエアを繰り返し供給可能に構成された送風手段3と、この送風手段3とバッグ部6a,7aとを接続するエア供給通路12,15と、バッグ部6a,7aに供給されたエアを排出するエア排出手段と、上記シートベルトを巻き取ることにより乗員を拘束する第1プリテンショナー17と、上記衝突検出手段26により車両の衝突が検出された時点でシートベルトに張力を付与して乗員を拘束する第2プリテンショナー18からなる張力付与手段とを設け、上記衝突予知手段25により車両の衝突が予知された場合に、上記送風手段3からエア供給通路12,15を介してシートベルトのバッグ部6a,7a内にエアを供給することによりバッグ部6a,7aを展開させるとともに、上記第1プリテンショナー17を作動させてシートベルトを巻き取るように構成したため、必要に応じて上記送風手段3からシートベルトのバッグ部6a,7a内にエアを供給することにより、このバッグ部6a,7aを何回でも展開して乗員を適正に保護できるという利点がある。
すなわち、車両の衝突が予知された時点で送風手段3を作動させ、シートベルトのバッグ部6a,7a内にエアを供給してバッグ部6a,7aを展開させることにより、シートベルトを広範囲に亘って乗員に圧接させるとともに、上記第1プリテンショナー17を作動させてシートベルトを巻き取ることにより、乗員をシート1に拘束することができるため、その拘束力をシートベルトの広範囲に亘り均一に分散させた状態で、シートベルトにより乗員を適正に保護できるとともに、必要に応じて上記エア排出手段によってバッグ部6a,7a内のエアを排出した後、再び送風手段3からシートベルトのバッグ部6a,7a内にエアを供給することにより、このバッグ部6a,7aを何回でも展開できるという利点がある。
そして、上記のように車両の衝突予知時点で送風手段3を作動させることにより、シートベルトのバッグ部6a,7a部内にエアを供給してシートベルトのバッグ部6a,7aを展開させた後、上記衝突検出手段26により車両が衝突状態となったことが検出された時点で、上記インフレータ21を備えた第2プリテンショナー18からなる張力付与手段を作動させてシートベルトを急激に巻き取ることによって乗員を拘束するように構成したため、その拘束力をシートベルトの広範囲に分散させた状態で、このシートベルトにより乗員を安定してシート1に保持させることができる。
また、上記実施形態では、衝突予知手段25により車両の衝突が予知された場合に、上記送風手段3からエア供給通路12,15を介してシートベルトのバッグ部6a,7a内にエアを供給することによりバッグ部6a,7aを展開させた後、上記第1プリテンショナー17を作動させてシートベルトを巻き取るように構成したため、このシートベルトを巻き取る際に、上記展開状態となったバッグ部6a,7aが広範囲に亘って乗員に圧接されることになる。したがって、上記シートベルトが局部的に大きな力で乗員に圧接されることを効果的に防止しつつ、乗員を適正に拘束して安全に保護できるという利点がある。
さらに、上記実施形態では、衝突予知手段25により車両の衝突が予知された場合に、上記送風手段3からエア供給通路12,15を介してシートベルトのバッグ部6a,7a内に供給されたエア量に応じ、上記第1プリテンショナー17によるシートベルトの巻取量を調節するように構成したため、この第1プリテンショナー17によりシートベルトを巻き取る際に、乗員がシートベルトにより必要以上に大きな拘束力を受けるのを効果的に防止することができるとともに、乗員を適正に拘束して安全に保護することができる。
例えば、上記送風手段3からエア供給通路12,15を介してシートベルトのバッグ部6a,7a内に供給されるエアの圧力と供給時間とに基づき、上記バッグ部6a,7a内に供給されたエア量を算出し、このエア量が多いことに起因してシートベルトによる乗員の拘束力が大きくなる傾向がある場合には、エア量が少ない場合に比べて上記ショルダーベルト6の巻取量を少なく設定することにより、乗員がシートベルトにより必要以上に大きな拘束力を受けるのを効果的に防止することができる。また、上記エア量が少ないことに起因してシートベルトによる乗員の拘束力が小さくなる傾向がある場合には、エア量が多い場合に比べて上記ショルダーベルト6の巻取量を多く設定することにより、シートベルトよる乗員の拘束力が不足するのを防止できるという利点がある。
また、上記第2プリテンショナー18からなる張力付与手段のインフレータ21を作動させることにより発生するガス量を調節可能に構成するとともに、車両の衝突予知時点で上記送風手段3からシートベルトのバッグ部6a,7aに供給されるエア量および上記第1プリテンショナー17を作動させることにより巻き取られたシートベルトの巻取量に基づき、上記衝突検出手段26により車両の衝突が検出された時点でシートベルトに張力を付与して乗員を拘束する上記張力付与手段(第2プリテンショナー18のインフレータ21)の作動量を変化させるようにしてもよい。
上記のように車両の衝突が予知された際にシートベルトのバッグ部6a,7aに供給されたエア量および第1プリテンショナー17により巻き取られたシートベルトの巻取量に基づき、車両の衝突が検出された時点で上記第2プリテンショナー18からなる張力付与手段の作動量を変化させるようにした場合には、この張力付与手段による乗員の拘束力を適正値に設定して乗員が不必要に大きな拘束力を受けるのを抑制しつつ、上記シートベルトにより乗員を適正に拘束してその安全性を効果的に確保できるという利点がある。
そして、本発明では、車両の衝突が予知された時点で、送風手段3からシートベルトのバッグ部6a,7a内にエアが正常に供給されたか否かを検出するフェイル検出手段29を設けるとともに、このフェイル検出手段29により上記エアの供給不良が発生したことが検出された場合に、下記のように上記第1プリテンショナー17によるシートベルトの巻取状態を非フェイル時と変化させるように構成したため、上記エアの供給不良に起因してシートベルトのバッグ部6a,7aにエアが充分に供給されていないにも拘わらず、上記第1プリテンショナー17によるシートベルトの巻取量が少なく設定される等の不都合が生じるのを防止できるという利点がある。
すなわち、上記フェイル検出手段29によりエアの供給不良が発生したことが検出された場合に、第1プリテンショナー17によるショルダーベルト6の巻取量を非フェイル状態にない通常時よりも多く設定することにより、シートベルトのバッグ部6a,7aにエアが充分に供給されていないことに起因して乗員の拘束力が不足するという事態を効果的に防止し、シートベルトによって乗員を適正に拘束することができる。また、フェイル検出手段29によりエアの供給不良が発生したことが検出された場合に、第1プリテンショナー17によるショルダーベルト6の巻取速度を非フェイル時よりも遅く設定することにより、上記バッグ部6a,7aにエアが充分に供給されていない状態で、急激にシートベルトが巻き取られることに起因して乗員が不快感を受けるという事態の発生を効果的に防止することができる。
特に、上記実施形態では、フェイル検出手段29によりエアの供給不良が発生したことが検出された場合に、送風駆動源22を逆転作動させてシートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを排出することにより、上記バッグ部6a,7aを初期状態に復帰させる制御をエア供給制御手段4において実行した後、上記第1プリテンショナー17を作動させてショルダーベルト6を巻き取るように構成したため、シートベルトのバッグ部6a,7a内に供給されたエア量が分からないことに起因して第1プリテンショナー17によるシートベルトの巻取制御を適正に実行できなくなるという不都合の発生を防止できるという利点がある。
さらに、上記実施形態では、車両の衝突予知時にシートベルトのバッグ部6a,7aに対するエアの供給を開始した後、予め設定された供給時間が経過した時点で開閉弁13,16を閉止するように構成したため、適正な展開状態となった上記バッグ部6a,7aからのエアの漏出を効果的に防止することにより、シートベルトのバッグ部6a,7aを安定した展開状態に維持できるという利点がある。
なお、上記エアの供給を開始した後に予め設定された供給時間が経過した時点で開閉弁13,16を閉止するように構成した上記実施形態に代え、車両の衝突予知時にエアの供給を開始した後、シートベルトのバッグ部6a,7a内の圧力を検出する圧力センサ6b,7bの検出信号に応じて上記バッグ部6a,7a内の圧力が設定圧力となった時点で開閉弁13,16を閉止するようにしてもよく、あるいは車両の衝突予知時にシートベルトのバッグ部6a,7aに対してエアの供給を開始した後、車両が衝突状態となったことが衝突検出手段26において検出された時点で、上記開閉弁13,16を閉止するようにしてもよい。
また、上記実施形態に示すように、車両の衝突が予知された時点で送風手段3を作動させてシールベルトのバッグ部6a,7aに高圧のエアを供給した後、エアの供給圧力を衝撃力の予測値に基づいて調節するように構成した場合には、車両の衝突が予知された時点でシールベルトのバッグ部6a,7aに高圧のエアを供給して皺を伸ばすことにより、このバッグ部6a,7a内にエアを流動させるための通路を確保した状態で、エアの供給圧力を適正値に調節することにより、シートベルトのバッグ部6a,7aを適正に展開させることができる。
特に、上記実施形態では、エアを加圧して送風する電動ブロア等からなる送風駆動源22と、加圧されたエアを蓄えるアキュームレータ23とを上記送風手段3に設け、車両の衝突が予知された時点で、上記アキュームレータ23からシールベルトのバッグ部6a,7aに高圧のエアを供給するように構成したため、図9に示すように、車両の衝突が予知された時点t1で、上記アキュームレータ23をエア供給通路12,15に連通させることにより高圧のエアをシールベルトのバッグ部6a,7aに対して迅速に供給し、このバッグ部6a,7a内にエアを流動させるための通路を早期に確保することができる。そして、上記アキュームレータ23から供給された高圧のエアによりバッグ部6a,7a内のエアの流動通路が確保された時点t2で、上記送風駆動源22を作動させてその回転速度を上昇させることにより、この送風駆動源22からシートベルトのバッグ部6a,7a内にエアを供給してバッグ部6a,7aを適正に展開させることができる。
また、上記実施形態に示すように、車両の衝突予知時における車両の状態、例えば自車と他車との相対距離および相対速度に応じて予測された衝突発生時の衝撃力等に応じ、上記送風駆動源22の回転速度を制御して上記バッグ部6a,7aに対するエアの供給圧力を調節するように構成した場合には、車両の衝突予知時に、シートベルトのバッグ部6a,7aを衝突発生時に作用する衝撃力等に対応した展開状態とすることにより、乗員を効果的に保護できるという利点がある。
すなわち、上記衝突発生時の衝撃力が大きいと予測された場合には、この衝撃力が小さいと予測された場合に比べて上記送風駆動源22の回転速度を高い値に設定し、エアの供給圧力を高めて予め設定された供給時間内に上記バッグ部6a,7a内に多くのエアを供給することにより、上記シートベルトのバッグ部6a,7aを大きく展開させて乗員の拘束力を増大させるとともに、その拘束力をシートベルトの広範囲に分散させることができるため、衝突時に作用する大きな衝撃力から乗員を効果的に保護することができる。
さらに、上記実施形態では、車両の衝突が予知された後、予め設定された所定時間が経過しても車両が衝突状態となったと判定されない場合に、上記送風手段3およびエア供給通路12,15からなるエア排出手段によりシートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを外部に排出してバッグ部6a,7aを元の状態に復帰させるようにしたため、車両の衝突が予知された後に車両の衝突が回避された場合等に、シートベルトのバッグ部6a,7a内に供給されたエアを外部に排出してシートベルトのバッグ部6a,7aを元の状態に復帰させることにより、シートベルトを通常の着用状態とすることができる。
また、車両の衝突が予知された後に、シートベルトの解放操作またはイグニッションキースイッチのOFF操作の何れかが行われた時点で、エア排出手段によりシートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを外部に排出してバッグ部6a,7aを収縮状態とするようにした上記実施形態によれば、シートベルトによる拘束が不要になった時点で、シートベルトのバッグ部6a,7aを収縮させてシートベルトを初期状態に復帰させることにより、乗員が再乗車する際に、上記シートベルトを装着する作業を容易に行うことができる等の利点がある。
なお、上記実施形態では、エア供給通路12,15に設けられた開閉弁13,16を開放した状態で送風手段3を逆転駆動することにより、シートベルトのバッグ部6a,7a内に供給されたエアを外部に排出するように構成し、送風手段3およびエア供給通路15を上記エアの排出手段として機能させるようにした例について説明したが、上記シートベルトのバッグ部6a,7a内のエアを外部に排出する排出通路と、この排出通路を開閉する開閉弁とを別体に設け、この開閉弁を開放状態として上記排出通路からバッグ部6a,7a内のエアを外部に排出するように構成してもよい。
また、上記ショルダーベルト6のリトラクター8内に第2プリテンショナー18を設けてなる上記実施形態に代え、図10に示すように、車両の衝突が検出された時点で、ショルダーベルト6の先端部に設けられたタング10が係止されたバックル11を下方に引っ張ることにより上記ショルダーベルト6およびラップベルト7に所定の張力を作用させて乗員を拘束するインフレータ41からなる張力付与手段を設けた構造としてもよい。また、上記ラップベルト7を引出可能に支持するとともに、ラップベルト7を巻取駆動する電動モータからなるラップベルト7用の第1プリテンショナー42と、このラップベルト7の巻取動作に応じてラップベルト7用のエア供給通路15を巻取駆動するエア供給通路用リトラクター43を設けた構造としてもよい。
また、衝突検出手段26により車両の衝突が検出された時点で、ショルダーベルト6を巻き取ることにより乗員を拘束する上記インフレータ21,41からなる張力付与手段を設けてなる上記実施形態に代え、エア供給通路12,15を介してシートベルトのバッグ部6a,7a内にガスを供給するインフレータからなる張力付与手段を設け、車両の衝突が検出された時点で、上記インフレータからシートベルトのバッグ部6a,7a内に多量のエアを瞬時に供給してバッグ部6a,7aを急展開させることにより、上記シートベルトを乗員に圧接させて乗員を拘束するように構成してもよい。
また、図11に示すように、シート1のシートバック1aに、着座した乗員との距離を検出する距離センサからなるシートセンサ51〜53を上下の複数個所に配設し、上記衝突予知手段25において、各シートセンサ51〜53の検出信号に応じてシート1に対する乗員の着座姿勢を判別するとともに、車体の前部、後部および左右両側部に設けられた超音波センサ、赤外線センサまたはレーダー等からなる上記前方距離検出手段31、後方距離検出手段32および側方距離検出手段33の検出信号に応じて車両の衝突状態を判別し、上記判別結果に応じて図12および図13に示すように、シートベルトのバッグ部6a,7aに対するエアの供給状態を変化させる制御を上記エア供給制御手段4において実行するように構成してもよい。
すなわち、図12のステップS3でYESと判定されて車両の衝突が予知されるとともに、ステップS4で自車の車速および他車との相対距離等に基づいて衝突発生時の衝撃力が予測された後に、前方距離検出手段31の検出信号(前方信号)に基づいて上記衝突の予知が行われたか否かを判定し(ステップS21)、YESと判定された場合には、車両の衝突予想モードを前突モードに設定する(ステップS22)。
また、上記ステップS21でNOと判定された場合には、側方距離検出手段33の検出信号(側方信号)に基づいて上記衝突の予知が行われたか否かを判定し(ステップS23)、YESと判定された場合には、車両の衝突予想モードを側突もしくはロールオーバ(横転)モードに設定する(ステップS24)。上記ステップS23でNOと判定され、後方距離検出手段32の検出信号(後方信号)に基づいて上記衝突の予知が行われたことが確認された場合には、車両の衝突予想モードを後突モードに設定する(ステップS25)。
次に、シート1のシートバック1aが起立した状態で上記シートセンサ51〜53の全てから乗員の背中とシートバック1aとの距離が短いことを示す近接信号が出力された否かを判定し(ステップS26)、YESと判定された場合には、乗員の着座姿勢を、背中の略全体がシートバック1aに当接した正規姿勢に設定する(ステップS27)。
一方、上記ステップS26でNOと判定された場合には、上記各シートセンサ51〜53のうち上方に位置するシートセンサ51から乗員の背中とシートバック1aとの距離が長いことを示す離間信号が出力された否かを判定し(ステップS28)、YESと判定された場合には、乗員の着座姿勢を、背中の上部がシートバック1aから離間した前傾姿勢または乗員がシート1の前寄りに着座した半身姿勢に設定する(ステップS29)。また、上記ステップS28でNOと判定された場合には、乗員の着座姿勢を、乗員の背中が後傾した後傾姿勢に設定する(ステップS30)。
そして、上記衝突モードの判別結果および着座姿勢の判別結果に基づき、予め設定された制御マップからエア供給特性を制御するための制御値、つまり上記ショルダーベルト6のバッグ部6aおよびラップベルト7のバッグ部7aに対するエアの供給タイミングおよび供給圧力を読み出して設定する(ステップS32)。
上記制御マップは、図14に示すように、衝突予知時の衝突予想モードと乗員の着座姿勢とをパラメータとし、例えば乗員が正規の着座姿勢にあるとともに、衝突予想モードが前突モードである場合に、ショルダーベルト6側の制御値S>ラップベルト7側の制御値Rと設定されている。これはショルダーベルト6のバッグ部6aに対するエアの供給タイミングおよび供給圧力が、ラップベルト7側に比べて早くかつ高圧に設定されることを示し、これにより正規の着座姿勢で前突事故の発生が予知された場合に、ショルダーベルト6で乗員の肩部および胸部が重点的に拘束されることになる。
また、乗員が正規の着座姿勢にあるとともに、衝突予想モードが側突またはロールオーバモードである場合には、逆にショルダーベルト6側の制御値S<ラップベルト7側の制御値Rと設定され、正規の着座姿勢で側突またはロールオーバ事故が発生した時に、ラップベルト7で乗員の腹部および腰部が重点的に拘束されるように構成されている。さらに、乗員が正規の着座姿勢にあるとともに、衝突予想モードが後突モードである場合には、ショルダーベルト6側の制御値Sとラップベルト7側の制御値Rとが等しく設定されることにより、乗員がショルダーベルト6とラップベルト7の両方で効果的に拘束されることになる。
一方、乗員の着座姿勢が前傾姿勢または半身姿勢にあるとともに、衝突予想モードが前突モードである場合には、ショルダーベルト6側の制御値S>>ラップベルト7側の制御値Rと設定され、これはショルダーベルト6のバッグ部6aに対するエアの供給タイミングおよび供給圧力が、ラップベルト7側に比べて著しく早期かつ高圧に設定されることを示している。これにより前傾姿勢または半身姿勢の着座姿勢で前突事故の発生が予知された場合には、ショルダーベルト6で乗員の肩部および胸部が、より迅速かつ重点的に拘束されることになる。
また、乗員の着座姿勢が前傾姿勢または半身姿勢にあるとともに、衝突予想モードが側突またはロールオーバモードである場合には、ショルダーベルト6側の制御値Sとラップベルト7側の制御値Rとが等しく設定されることにより、乗員をショルダーベルト6とラップベルト7の両方で効果的に拘束されるようになっている。さらに、乗員の着座姿勢が前傾姿勢または半身姿勢にあるとともに、衝突予想モードが後突モードである場合には、ショルダーベルト6側の制御値S>ラップベルト7側の制御値Rに設定され、これにより乗員の肩部および胸部がショルダーベルト6で重点的に拘束されることになる。
一方、乗員の着座姿勢が後傾姿勢にあるとともに、衝突予想モードが前突モードである場合には、ショルダーベルト6側の制御値Sとラップベルト7側の制御値Rとが等しく設定されることにより、乗員がショルダーベルト6とラップベルト7の両方で効果的に拘束されるようになっている。また、乗員の着座姿勢が後傾姿勢にあるとともに、衝突予想モードが側突またはロールオーバモードである場合には、ショルダーベルト6側の制御値S<<ラップベルト7側の制御値Rと設定されることにより、ラップベルト7で乗員の腹部および腰部が、より迅速に重点的に拘束されるように構成されている。さらに、乗員の着座姿勢が後傾姿勢にあるとともに、衝突予想モードが後突モードである場合には、ショルダーベルト6側の制御値S<ラップベルト7側の制御値Rに設定され、これにより乗員の腹部および腰部がラップベルト7で重点的に拘束されるようになっている。
そして、開閉弁13,16を開放状態とする制御信号を開閉制御手段27から開閉弁13,16に出力するとともに(ステップS5)、上記送風手段3を作動させてシートベルトのバッグ部6a,7aにエアを供給する制御を上記エア供給制御手段4において実行することにより(ステップS6)、上記ステップS32で設定されたエアの供給タイミングおよび供給圧力で、上記ショルダーベルト6のバッグ部6aおよびラップベルト7のバッグ部7aに対するエアの供給制御を実行する。
また、上記エア供給制御手段4においてバッグ部6a,7aに対するエアの供給開始後に予め設定された供給時間が経過した否かを判別することにより、エアの供給停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS7)。このステップS7でYESと判定され、エアの供給開始後に予め設定された供給時間が経過したことが確認された時点で、図8のステップS8に移行する。
上記のように衝突モードの判定結果および着座姿勢の判別結果に基づき、予め設定された制御マップから上記ショルダーベルト6のバッグ部6aおよびラップベルト7のバッグ部7aに対するエアの供給タイミングおよび供給圧力からなる制御値を読み出して設定するように構成した場合には、車両の衝突状態および乗員の着座姿勢に対応してシートベルトの巻取状態を適正に制御することにより、乗員を安全に保護できるという利点がある。