JP3670093B2 - 樹脂添加剤の配合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂添加剤の配合方法に関し、より詳しくは熱可塑性樹脂とそれとは親和性が乏しい添加剤との配合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂には、様々な目的で多種多様な添加剤が配合されることがあるが、熱可塑性樹脂にそれとは親和性が乏しい添加剤を配合する場合、両者若しくは一方を変質させず、かつ均一に安定して配合させることは困難である。
【0003】
例えば、酸素吸収能があるアスコルビン酸等の親水性有機化合物をポリオレフィン等の疎水性の熱可塑性樹脂に配合する場合、ポリオレフィンが発泡したり、熱分解したアスコルビン酸が表面にブリードアウトしたりするが、これは両者に相溶性がないことと、アスコルビン酸に充分な耐熱性がないためである。
【0004】
上記の弊害が発生せずに両者を安定的に配合できれば、酸素吸収性がある素材を提供することができるが、従来、アスコルビン酸を予め無機担体に担持するとか、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物等の親水性の熱可塑性樹脂に配合するとかした後、それらをポリオレフィンに配合することにより目的の配合物を得ていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の方法はいずれも二段の工程を必要として複雑であり、無機担体に担持する方法では湿式の工程とならざるを得ず、親水性の熱可塑性樹脂に配合する方法ではポリオレフィンに配合する迄に二度の熱履歴を経ることにより、良好な品質の添加剤配合樹脂組成物を得ることができなかったりして、経済的にも工程の増加や中間製品の保管等の負担が多くなる等の問題があった。
【0006】
本発明は、熱可塑性樹脂とそれと親和性が乏しい添加剤を安定的に配合することができ、しかも得られる組成物が優れた物性を示すことが可能な簡易な配合方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、添加剤とは親和性が乏しい熱可塑性樹脂と親和性が良好な熱可塑性樹脂とを溶融混練すると共に、その混練時に添加剤を添加することにより、本発明の目的を達成し得ることを見出して本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、添加剤とは親和性が乏しい熱可塑性樹脂と該添加剤とは親和性が良好な熱可塑性樹脂とを溶融混練すると共に、その混練時に該添加剤を添加混練することを特徴とする樹脂添加剤の配合方法を要旨とする。
【0009】
又、本発明は、上記添加剤が親水性の還元性有機化合物であることを特徴とする。
【0010】
又、本発明は、上記添加剤が親水性の還元性有機化合物に無機化合物を混合したものであることを特徴とする。
【0011】
又、本発明は、上記親水性の還元性有機化合物がアスコルビン酸類、多価フェノール類及びカテキン類から選ばれる化合物であることを特徴とする。
【0012】
又、本発明は、上記無機化合物がゼオライト、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン及びけいそう土からなる群から選ばれる化合物であることを特徴とする。
【0013】
又、本発明は、上記添加剤とは親和性が乏しい熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする。
【0014】
又、本発明は、上記添加剤とは親和性が良好な熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体、けん化度95%以上のポリビニルアルコール又はポリアミド樹脂であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる添加剤としては、添加剤を配合しようとする熱可塑性樹脂とは親和性が乏しいものである。従って、本発明においてはそのような添加剤は総て使用可能な対象物になり得るが、本発明で用いられるもう一方の熱可塑性樹脂とは良好な親和性を示すものである必要がある。
【0016】
熱可塑性樹脂をその界面的性質を基準として大別すると、親水性のものと疎水性のものになる。従って、本発明で用い得る添加剤としては、疎水性の熱可塑性樹脂には貧親和性を示すが親水性の熱可塑性樹脂には良親和性を示すものか、その逆に親水性の熱可塑性樹脂には貧親和性を示すが疎水性の熱可塑性樹脂には良親和性を示すものである。
【0017】
疎水性の熱可塑性樹脂には貧親和性を示すが親水性の熱可塑性樹脂には良親和性を示す添加剤としては、代表的にその分子内にカルボキシル基、水酸基等の親水基を持ち比較的低分子量の有機化合物が挙げられ、その具体例として界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤、酸素吸収剤(以下、親水性の還元性有機化合物という。)等が挙げられる。
【0018】
親水性の熱可塑性樹脂には貧親和性を示すが疎水性の熱可塑性樹脂には良親和性を示す添加剤としては、代表的にその分子内に炭化水素基等の疎水基を有し分子量が比較的大きい有機化合物が挙げられ、その具体例として可塑剤、滑剤等が挙げられる。
【0019】
本発明は、疎水性の熱可塑性樹脂には貧親和性を示すが親水性の熱可塑性樹脂には良親和性を示す添加剤を疎水性の熱可塑性樹脂に配合する場合特に有効であり、上記の添加剤としては、特に親水性の還元性有機化合物が好ましい。
【0020】
親水性の還元性有機化合物としては、アスコルビン酸類、多価フェノール類、カテキン類等が挙げられ、アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸、アラボアスコルビン酸およびそれらの塩類(ナトリウム塩、カリウム塩等)等が挙げられ、それらの混合物も使用することができる。
【0021】
多価フェノール類としては、ピロガロール、カテコール、沒食子酸、レゾルシン、ヒドロキノン等が挙げられ、それらの混合物も使用できる。
【0022】
カテキン類としては、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等が挙げられ、それらの混合物も使用し得る。
【0023】
これらの還元性有機化合物の中でも、アスコルビン酸類及びカテキン類、特にアスコルビン酸及びアラボアスコルビン酸が望ましい。
【0024】
又、本発明においては、上記の親水性の還元性有機化合物に、ゼオライト、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、けいそう土等の無機化合物を混合して添加剤として使用することもできる。これら無機化合物は、二種以上併用することができる。
【0025】
本発明で用いられる添加剤とは親和性が乏しい熱可塑性樹脂としては、疎水性のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、エチレン−α−不飽和カルボン酸共重合体、アイオノマー、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン、環状オレフィン共重合体等が挙げられ、これらは二種以上併用することができる。
【0026】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン系樹脂(ホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体等)、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1、ポリメチルペンテン−1等を挙げることができる。
【0027】
エチレン−α−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレンと、アクリル酸、メタクリル酸等のα−不飽和カルボン酸若しくはそのメチル、エチル等の低級アルキルエステルとの共重合体が挙げられる。
【0028】
本発明で用いられる不飽和カルボン酸変性ポリオレフィンは、上記ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸若しくはその誘導体をグラフトさせて得たものである。
【0029】
不飽和カルボン酸としては、α−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸、環内にシス型二重結合を有する脂環式不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。α−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が、α,β−不飽和ジカルボン酸若しくはその誘導体としては、マレイン酸、無水マレイン酸等が、環内にシス型二重結合を有する脂環式不飽和ジカルボン酸若しくはその誘導体としては、ナジック酸、無水ナジック酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、クロリデン酸等が、それぞれ挙げられる。
【0030】
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィンとエチレン若しくはα−オレフィンとの共重合体である。
【0031】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−ノルボルネン等が、α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が、それぞれ挙げられる。
【0032】
上記の熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン樹脂、特にポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0033】
添加剤とは親和性が良好な熱可塑性樹脂としては、親水性のエチレン−ビニルアルコール共重合体、けん化度95%以上のポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・12、ナイロン11、ナイロン12等)、ポリエステル樹脂、アセチルセルロース等が使用できる。これらの中でも、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0034】
本発明は、添加剤とは親和性が乏しい熱可塑性樹脂(以下、A成分という。)と添加剤とは親和性が良好な熱可塑性樹脂(以下、B成分という。)とを溶融混練すると共に、その混練時に添加剤(以下、C成分という。)を添加混練することからなる。
【0035】
A成分とB成分の溶融混練は、両成分を適当な混練機、特に望ましくは押出機中で混練することにより行われる。A成分とB成分の溶融混練時に、C成分を添加して混練する。A成分とB成分の溶融混練は、A成分及びB成分の溶融温度以上の温度で行われるが、C成分の分解を防ぐ意味からも、C成分の分解温度以下のできるだけ低温で行うのが望ましい。
【0036】
A成分とB成分、更にはC成分を連続して混練するには、押出機のホッパーにA成分とB成分を供給すると共に押出機のベント部等の中間部にC成分を供給して行う方法が好適である。又、A成分とB成分を供給する際に、C成分をA成分及びB成分にまぶして供給することも可能である。
【0037】
上記A成分、B成分及びC成分の混練において、例えば、C成分に親水性の還元性有機化合物を用いた場合、該有機化合物は親和性の違いにより、A成分には移行しにくく、B成分に移行し易いため、混練中に該有機化合物はB成分に配合されることとなる。この結果、該有機化合物は、B成分により安定化され、混練中での劣化が抑えられる。
【0038】
A成分、B成分及びC成分の混練割合は、A成分、B成分及びC成分の種類、得られる組成物の使用目的等により一概に規定できないが、例えば、C成分に親水性の還元性有機化合物を用いた場合、得られる組成物中、A成分が通常50〜96重量%、好ましくは65〜95重量%、B成分が通常3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、C成分が通常0.05〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%となるような割合で各成分を用いる。A成分とB成分を混練する際に、必要に応じて、無水マレイン酸変性ポリオレフィン等のA成分とB成分との相溶化剤を用いることも可能である。
【0039】
上記のようにして押出機で混練されて得られた組成物は、押出機のダイスから押し出されペレタイザーでペレット状に成形される。組成物を冷却後にペレタイズするストランド方式の場合は、カッター刃の表面温度を40〜70℃程度に設定してストランドを切断するのが望ましい。該組成物は、例えば、液体食品保存用の包装材料として、そのまま、或いは他の材料と積層して、使用することができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、詳細に説明する。
【0041】
(実施例1)
低密度ポリエチレン(密度0.924g/cm3 )80重量部とエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量47モル%、融点160℃)20重量部を混合して二軸押出機のホッパーに供給すると共に、アスコルビン酸1重量部をその押出機のベント部に供給して180℃で溶融混練し、押出機に装着されたダイから混練物を吐出してペレットを得た。
【0042】
得られたアスコルビン酸含有ペレットの色調及び臭気を評価した。又、同ペレット50gと蒸留水10mlとを内容積180mlの酸素不透過性のカップ容器に入れた後、酸素不透過性のフィルムでヒートシールして密封した。
【0043】
上記のようにして得られた試料を15℃の恒温槽に保管し、ヒートシール直後、1週間後及び2週間後の容器内の酸素濃度を微量酸素分析計にて測定し、酸素減少量を計算し、これを酸素吸収量とした。結果を表1に示した。
【0044】
(実施例2)
低密度ポリエチレンの代わりに、ポリプロピレン(密度0.90g/cm3 )を用いた以外は実施例1と同様にして、アスコルビン酸含有ペレットを得、上記と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。
【0045】
(実施例3)
エチレン−ビニルアルコール共重合体の代わりに、ナイロン6・12(密度1.05g/cm3 、融点130℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、アスコルビン酸含有ペレットを得、上記と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。
【0046】
(実施例4)
アスコルビン酸の代わりに、アラボアスコルビン酸を用いた以外は実施例1と同様にして、アラボアスコルビン酸含有ペレットを得、上記と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。
【0047】
(実施例5)
アスコルビン酸の代わりに、アスコルビン酸50重量部と疎水性合成ゼオライト(ユニオン昭和(株)製、商品名ABSCENTS−2500)微粉末50重量部の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、アスコルビン酸及びゼオライト含有ペレットを得、上記と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。
(比較例1)
熱可塑性樹脂として、エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いずに、低密度ポリエチレンのみを用いた以外は実施例1と同様にして、アスコルビン酸含有ペレットを得、上記と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。
【0048】
(比較例2)
アスコルビン酸10重量部を上記のエチレン−ビニルアルコール共重合体90重量部に180℃で混練して得られたペレット10重量部を、更に上記の低密度ポリエチレン90重量部と混合して二軸押出機のホッパーに供給し,180℃で溶融混練し、押出機に装着されたダイから混練物を吐出してペレットを得た。
【0049】
このアスコルビン酸含有ペレットを実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。
【0050】
表1から明らかなように、本発明の方法で配合することにより得られた組成物は、比較例の方法で得られた組成物に比べて、酸素吸収能力を保持しながら、良好な色調及び臭気を有している。
【0051】
【表1】
(*)アスコルビン酸の分解によるものと考えられる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の方法により、目的とする添加剤をそれとは親和性が乏しい熱可塑性樹脂に添加剤を変質させることなく一段階で配合することができ、しかも得られた組成物は物性に優れている。
Claims (5)
- 添加剤とは親和性が乏しい熱可塑性樹脂と該添加剤とは親和性が良好な熱可塑性樹脂とを溶融混練すると共に、その混練時に該添加剤を添加混練することを特徴とする樹脂添加剤の配合方法であって、前記添加剤がアスコルビン酸類、多価フェノール類及びカテキン類から選ばれる親水性の還元性有機化合物である樹脂添加剤の配合方法。
- 上記添加剤が更に無機化合物を混合したものである請求項1記載の樹脂添加剤の配合方法。
- 上記無機化合物がゼオライト、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン及びけいそう土からなる群から選ばれる化合物である請求項1又は2記載の樹脂添加剤の配合方法。
- 上記添加剤とは親和性が乏しい熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂添加剤の配合方法。
- 上記添加剤とは親和性が良好な熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体、けん化度95%以上のポリビニルアルコール又はポリアミド樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂添加剤の配合方法。
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