JP3669529B2 - 形状記憶性加硫ゴム成形体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、形状記憶性加硫ゴム成形体に関し、さらに詳しくは、ゴム弾性に優れた形状記憶性加硫ゴム成形体、特にフィルム、シートまたはチューブ状の熱収縮性成形体である形状記憶性加硫ゴム成形体に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来、物品のシール、包装、電線や鋼管の被覆、ガラスビンのコートなどに用いられる熱収縮性のフィルム、シートおよびチューブとしては、ポリ塩化ビニル製の熱収縮性成形体が使用されていたが、ポリ塩化ビニル製の熱収縮性成形体は耐候性に劣り、可塑剤滲出などの欠点が見られるため、分野によってはポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱収縮性成形体が用いられている。しかしながら、従来のポリエチレン等の熱収縮性成形体はゴム弾性が不足するため、用途が限られていた。
【0003】
特公平3−60664号公報には、エチレン・1-ブテン・ポリエンランダム共重合ゴムの架橋延伸物からなる熱収縮性のフィルムないしシートに関する発明がが開示されており、本願発明者らがこの発明について追試したところ、得られた熱収縮性シートは、ゴム弾性が十分でなかった。
【0004】
また、EPTにポリエチレンを混ぜて熱収縮用のチューブを作製することも知られている。しかしながら、本願発明者らがこのチューブを追試したところ、上記の特公平3−60664号公報に記載の熱収縮性シートと同様、得られた熱収縮性チューブは、ゴム弾性が不十分であった。
【0005】
また、「化学技術誌 MOL,VOL.6 (1989),P.42〜46,武井澄夫著、オーム社発行」には、各種の形状記憶性樹脂が記載されているが、これらの形状記憶性樹脂は、いずれも熱収縮性成形体のゴム弾性が不足し、収縮(開始)温度が低すぎるなどの欠点があった。
【0006】
したがって、収縮(開始)温度をコントロールして使い勝手を良くすることができるとともに、ゴム弾性の高い形状記憶性加硫ゴム成形体、特にフィルム、シートおよびチューブ状の熱収縮性成形体の出現が望まれている。
【0007】
ところで、従来、加硫ゴム製品は、生ゴム、補強剤、軟化剤、充填剤、加硫剤などを混練して得られた配合ゴムコンパウンドを、プレス成形、押出成形あるいはカレンダー成形等の成形法により賦形した後に、加硫して製造される。
【0008】
たとえば、表面にシボなどの模様を有する加硫ゴムシート製品においては、シート表面へのシボなどの型付けは、配合ゴムコンパウンドをシート状に分出しする際に、そのシートを、シボなどの模様を彫り込んだロール(エンボスロール)に通すことにより行なわれる。
【0009】
しかしながら、この方法では、彫り込まれた模様の凹凸、あるいは部分的に深い場所が有れば、配合ゴムコンパウンドの必要量が一様でないため、型付けロールに送られる前の分出しロールで配合ゴムコンパウンドの量を制御しなければならなかった。また、細かい模様の場合、配合ゴムコンパウンドの粘度が低くなればなるほど、また粘着性が増せば増すほど、型付けロールの表面の細かい凹部個所に配合ゴムコンパウンドが詰まり、頻繁に型付けロール表面の清掃を行なう必要があった。さらに、型付け(賦形)工程と加硫工程が連続していない場合、分出しした長尺シートを一旦巻き取っておくが、加硫工程に入るまでの間に、その長尺シートの自重および巻き取り圧力により型付けしたシート表面の模様が薄くなったり、変形すしたりするなどの問題があった。
【0010】
また、断面が凹状の肉厚の薄いリボン状に押出成形された加硫ゴム製品においては、配合ゴムコンパウンドを押出機で凹状に賦形しても、加硫工程が終了するまでその賦形形状を保持することは非常に困難であるという問題があった。
【0011】
さらに、自動車用グラスランチャンネルのような比較的肉厚の厚い加硫ゴム製品でも、加硫時に起こる変形を考慮に入れてダイスの設計を木目細やかに行なわなければならないという問題があった。
【0012】
さらにまた、ウェザーストリップスポンジのように羽根の付いたチューブ状の加硫ゴム製品においては、ダイスの精密な設計を要するだけではなく、配合ゴムコンパウンドを、羽根を支えるための支柱を組み込んだ状態で成形し、加硫後、支柱を切り離して製品にするという複雑な製造方法が採用されており、生産コストが高いという問題があった。
【0013】
また、自動車用ラジエーターホースなどのジョイントに使用されるジョイントホースのような短い曲管の加硫ゴム製品は、配合ゴムコンパウンドをホース状に押し出して短く切断した後、マンドレルを挿入し、加硫を行なうことにより製造される。そのため、柔らかい配合ゴムコンパウンドでは、マンドレルの挿入が難しいだけではなく、その挿入時にホースが破れたり、その挿入時に付いた傷がそのまま製品に残ったりする場合があり、問題となることがあった。
【0014】
したがって、配合ゴムコンパウンドの加硫後に、型付け等の賦形を行なって得られる成形体であって、製品使用時に一時的に変形しても元の形状に戻る性質、すなわちゴム弾性に優れた形状記憶性加硫ゴム成形体の出現が望まれている。
【0015】
【発明の目的】
本発明の目的は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、収縮(開始)温度をコントロールして使い勝手を良くすることができるとともに、ゴム弾性の高い形状記憶性加硫ゴム成形体、特にフィルム、シートおよびフィルム状の熱収縮性成形体を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、配合ゴムコンパウンドの加硫後に、型付け等の賦形を行なって得られる成形体であって、製品使用時に一時的に変形しても元の形状に戻る性質、すなわちゴム弾性に優れた形状記憶性加硫ゴム成形体を提供することにある。
【0017】
【発明の概要】
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、
加硫性ゴム(A)からなる加硫物中に、ビカット軟化点[ ASTM D 1525 ]が70℃以上である樹脂(B)が粒状で分散されてなり、かつ、
樹脂(B)と加硫性ゴム(A)との重量比[ (B) (A) ]が3/100〜50/100の範囲にあり、
(i) 形状回復率が70%以上であり、
(ii)形状記憶率が50%以上であり、かつ、
(iii) 200%伸長後の永久伸びが20%以下である
ことを特徴としている。
【0019】
前記樹脂(B)の平均分散粒径は、通常0.1〜200μmの範囲にある。
本発明で好ましく用いられる加硫性ゴム(A)は、エチレンと炭素原子数3〜20のα- オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムである。
【0020】
本発明で好ましく用いられる樹脂(B)は、結晶性プロピレン単独重合体、もしくはプロピレンと1種以上の炭素原子数2〜12のα- オレフィンとの結晶性プロピレン・α- オレフィン共重合体、またはスチレン含有非晶性樹脂である。
【0021】
本発明に係る好ましい形状記憶性加硫ゴム成形体としては、次のような成形体が挙げられる。
(1)加硫性ゴム(A)である前記エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A1)からなる加硫物中に、ビカット軟化点が70℃以上の樹脂(B)である結晶性プロピレン単独重合体または前記結晶性プロピレン・α- オレフィン共重合体(B1)が粒状で分散されてなり、かつ、
(共)重合体(B1)と加硫性ゴム(A1)との重量比[(B1)/(A1)]が3/100〜50/100の範囲にある形状記憶性加硫ゴム成形体。
【0022】
(2)加硫性ゴム(A)である前記エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A1)からなる加硫物中に、ビカット軟化点が70℃以上の樹脂(B)であるスチレン含有非晶性樹脂(B2)が粒状で分散されてなり、かつ、 樹脂(B2)とゴム(A1)との重量比[(B2)/(A1)]が3/100〜50/100の範囲にある形状記憶性加硫ゴム成形体。
【0023】
上記のような、本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、
樹脂(B)のビカット軟化点以上の温度で賦形された後に、ビカット軟化点未満の温度に冷却されることにより得られた成形体であることが好ましい。
【0024】
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、通常フィルム、シートまたはチューブ状の熱収縮性成形体として好適に用いられる。
【0025】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体について具体的に説明する。
形状記憶性加硫ゴム成形体
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、特定の形状回復率、形状記憶率および200%伸長後の永久伸びを有する。
【0026】
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、
(i) 形状回復率が70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上であり、
(ii)形状記憶率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であり、かつ、
(iii) 200%伸長後の永久伸びが20%以下、好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下である。
【0027】
上記の200%伸長後の永久伸びは、ゴム弾性の指標となり、この永久伸びが20%以下の形状記憶性加硫ゴム成形体はゴム弾性が高い。
上記の形状回復率、形状記憶率および200%伸長後の永久伸びは、次のようにして求められる。
(1)形状回復率および形状記憶率
まず、厚さ3mmの未加硫シートをプレス成形機[コータキ精機社製]を用い、金型中で160℃で20分間加硫し、2mm(厚さ)×15cm(縦)×12cm(横)の加硫シートを調製し、この加硫シートを打ち抜いて幅20mm、長さ70mmの長方形試験片を調製する。
【0028】
次いで、この試験片の中央長さ方向に30mmの標線を引き、この標線が60mmになるように治具を用いて試験片を変形し、180℃のオーブンに入れ3分間放置した後、この試験片をオーブンより取り出して水冷する。治具を取り外し、1日後に試験片表面に引いた標線間距離(L1)を測定する。
【0029】
次いで、この試験片を、180℃のオーブンに入れて3分間放置した後取り出し、常温下に30分間放置し、上記標線間距離(L2)を測定する。
形状回復率および形状記憶率は、上記のようにして測定された標線間距離(L1)および(L2)を用いて、次式より算出することができる。
【0030】
形状回復率[%]=[(L1−L2)×100]/[L1−30]
形状記憶率[%]=[(L1−30)×100]/[60−30]
(2)200%伸長後の永久伸び
200%伸長後の永久伸びは、JIS K 6301に準拠して測定する。試験片は、上記(1)で調製した2mm(厚さ)×15cm(縦)×12cm(横)の加硫シートから打ち抜いて調製したJIS3号試験片を使用する。
【0031】
上記のような特性を有する、本発明に係る好ましい形状記憶性加硫ゴム成形体は、
加硫性ゴム(A)からなる加硫物中に、ビカット軟化点[ASTM D 1525 ]が70℃以上、好ましくは80℃以上である樹脂(B)が粒状で分散されてなり、かつ、樹脂(B)と加硫性ゴム(A)との重量比[(B)/(A)]が3/100〜50/100、好ましくは5/100〜40/100、より好ましくは5/100〜30/100の範囲にある。
【0032】
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体においては、加硫性ゴム(A)は架橋構造をとっている。
樹脂(B)のビカット軟化点が70℃以上であると、形状安定性に優れた形状記憶性加硫ゴム成形体、たとえばフィルム、シートおよびチューブ状の熱収縮性成形体を得ることができる。
【0033】
また、樹脂(B)と加硫性ゴム(A)との重量比[(B)/(A)]が上記範囲内にあると、熱による変形回復性とゴム弾性とのバランスに優れた形状記憶性加硫ゴム成形体を得ることができる。
【0034】
加硫性ゴム(A)
[エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム]
本発明で好ましく用いられる加硫性ゴム(A)としては、たとえばエチレンと、炭素原子数3〜20のα- オレフィンと、非共役ポリエンとをランダム共重合して得られるエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムなどの加硫可能なゴムが挙げられる。
【0035】
上記α- オレフィンは、炭素原子数3〜20のα- オレフィンであり、中でもプロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、特にプロピレン、1-ブテンが好ましく用いられる。すなわち、本発明では、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体ゴム、エチレン・1-ブテン・非共役ポリエン共重合体ゴムが特に好ましく用いられる。
【0036】
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、エチレンとα- オレフィンとのモル比(エチレン/α- オレフィン)が60/40〜85/15、好ましくは65/35〜80/20の範囲にある。
【0037】
上記非共役ポリエンとしては、環状あるいは鎖状の非共役ポリエンが用いられる。環状非共役ポリエンとしては、たとえば5-エチリデン-2- ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2- ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデンなどが挙げられる。また、鎖状の非共役ポリエンとしては、たとえば1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン、8-メチル-4- エチリデン-1,7- ノナジエン、4-エチリデン-1,7- ウンデカジエンなどが挙げられる。これらの非共役ポリエンは、単独あるいは2種以上混合して用いられ、その共重合量は、ヨウ素価表示で1〜40、好ましくは2〜35、より好ましくは3〜30であることが望ましい。
【0038】
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.8〜4.0dl/g、好ましくは1.0〜3.5dl/g、より好ましくは1.1〜3.0dl/gの範囲にある。
【0039】
上記のような特性を有するエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、「ポリマー製造プロセス((株)工業調査会、発行、P.309〜330)」などに記載されるているような従来公知の方法により調製することができる。
【0040】
[その他の加硫性ゴム]
本発明で加硫性ゴム(A)として上記エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムのほかに用いられるゴムとしては、たとえば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、水添NBRなどが挙げられる。
【0041】
樹脂(B)
本発明で用いられる樹脂(B)は、結晶性樹脂および非晶性樹脂である。
本発明で樹脂(B)として用いられる結晶性樹脂は、炭素原子数2〜12のα- オレフィンの単独重合体もしくは共重合体である。
【0042】
この重合形式は、ランダム重合、ブロック重合の何れでも良い。ランダム共重合体の場合、少ない方のα- オレフィン構成単位が通常40モル%以下、好ましくは30モル%以下で含まれているα- オレフィン共重合体が望ましい。
【0043】
炭素原子数2〜12のα- オレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。
【0044】
上記のようなα- オレフィンの単独重合体および共重合体の中でも、炭素原子数3〜6のα- オレフィンの(共)重合体、特にプロピレンの単独重合体、プロピレンと他のα- オレフィンとの共重合体が好ましく用いられる。
【0045】
本発明で樹脂(B)として用いられる非晶性樹脂としては、たとえば(1) ポリスチレン、(2) アクリロニトリルとブタジエンとスチレンとの共重合体であるABS樹脂、(3) アクリロニトリルとEPDMとスチレンとの共重合体であるAES樹脂、(4) アクリロニトリル、スチレンおよび特殊ゴムを主原料とした三元重合系の樹脂であるAAS樹脂、(5) エチレン・環状オレフィン共重合体などが挙げられる。これらの非晶性樹脂の中でも、スチレン含有非晶性樹脂、すなわち上記(1)、(2)、(3)および(4)の樹脂が好ましく用いられる。
【0046】
上記のような結晶性樹脂および非晶性樹脂は、上述したように、ビカット軟化点[ASTM D 1525] が70℃以上、好ましくは80℃以上であることが望ましい。これらの樹脂のビカット軟化点が70℃未満であると、得られる形状記憶性加硫ゴム成形体、たとえばフィルム、シートおよびチューブ状の熱収縮性成形体は、その形状安定性が保てず、商品としての実用性がなくなる。
【0047】
本発明においては、上記のような樹脂(B)がエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合ゴム等の加硫性ゴム(A)からなる加硫ゴム中に分散しており、その平均分散粒子径は、通常0.1〜200μm、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜50μmの範囲にあることが望ましい。
【0048】
このような樹脂(B)のモルフォロジー(相形態)は、上記のような樹脂(B)を溶融状態にして樹脂(B)に剪断作用を与えることにより達成できる。たとえば、プロピレン単独重合体の場合、200℃の温度条件で、二軸押出機中でプロピレン単独重合体に比エネルギーを0.01kW・hr/kg以上、好ましくは0.02kW・hr/kg以上を与えれば良い。温度条件、剪断エネルギーの不足により、樹脂(B)の平均分散粒子径が200μmを超えると、得られる形状記憶性加硫ゴム成形体の強度が低下したり、あるいは樹脂(B)の流動性が低下し形状記憶性加硫ゴム成形体の加工性に支障をきたす傾向がある。
【0049】
一方、樹脂(B)が加硫性ゴム(A)との親和性があまりに良過ぎて、たとえば上述したエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムとポリエチレンとが分子レベルで相溶すると、得られる形状記憶性加硫ゴム成形体のゴム弾性が低下するという欠点が生じる傾向がある。したがって、樹脂(B)と加硫性ゴム(A)の種類は両者が分子レベルで相溶しない範囲で選択する必要がある。
【0050】
本発明においては、上記のような樹脂(B)は、樹脂(B)と加硫性ゴム(A)との重量比[(B)/(A)]が3/100〜50/100、好ましくは5/100〜40/100、より好ましくは5/100〜30/100の範囲内になる量で用いられる。
【0051】
樹脂(B)を上記のような量で用いると、熱による変形回復性とゴム弾性とのバランスに優れた形状記憶性加硫ゴム成形体を得ることができる。
その他の成分
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体の成分として、上述したような加硫性ゴム(A)および樹脂(B)のほかに、少なくとも加硫剤が使用され、必要により、その他の従来公知の配合剤、たとえば加硫促進剤、加硫助剤、軟化剤、補強材、充填材、加工助剤、顔料、老化防止剤、発泡剤等の通常ゴムの製造に使用される配合剤が本発明の目的を損なわない範囲で使用される。
【0052】
加硫剤としては、イオウ系化合物および有機過酸化物を挙げることができる。
イオウ系化合物としては、たとえばイオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレンなどが挙げられる。中でも、イオウが好ましい。
【0053】
イオウ系化合物は、加硫性ゴム(A)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1.0〜3.0重量部の割合で用いられる。
【0054】
有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5- ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ -t-ブチルペルオキシド、ジ -t-ブチルペルオキシ-3,3,5- トリメチルシクロヘキサン、t-ジブチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。中でも、ジクミルペルオキシド、ジ -t-ブチルペルオキシド、ジ -t-ブチルペルオキシ-3,3,5- トリメチルシクロヘキサンが好ましく用いられる。
【0055】
有機過酸化物は、加硫性ゴム(A)100gに対して、通常3×10-3〜5×10-2モル、好ましくは1×10-3〜3×10-2モルの割合で用いられる。
加硫剤としてイオウ系化合物を使用する場合には、加硫促進剤の併用が好ましい。加硫促進剤としては、たとえば、
N-シクロヘキシル-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'- ジイソプロピル-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4- モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル- ジスルフィド等のチアゾール系化合物;
ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系化合物;
アセトアルデヒド- アニリン縮合物、ブチルアルデヒド- アニリン縮合物等のアルデヒドアミン系化合物;
2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;
ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系化合物;
テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系化合物;
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系化合物;
ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系化合物;
その他亜鉛華などを挙げることができる。
【0056】
これらの加硫促進剤は、加硫性ゴム(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の割合で用いられる。
【0057】
加硫剤として有機過酸化物を使用する場合は、加硫助剤の併用が好ましい。加硫助剤としては、たとえば、硫黄; P-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の(メタ)アクリル系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系化合物;その他マレイミド系化合物、ジビニルベンゼン(DVB)などが挙げられる。
【0058】
このような加硫助剤は、使用する有機過酸化物1モルに対し、0.5〜2モル、好ましくは均等モルの割合で使用する。
軟化剤としては、通常ゴムに用いられる軟化剤が用いられる。たとえば、
プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;
コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;
ヒマシ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;
トール油;
密ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩;
ナフテン酸またはその金属石鹸;
パイン油、ロジンまたはその誘導体;
テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;
ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;
ジイソドデシルカーボネート等の炭酸エステル系可塑剤;
その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。
【0059】
これらの軟化剤は、加硫性ゴム(A)100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは70重量部以下の割合で用いられる。
補強材としては、たとえばSRF、GPF、FEF、MAF、ISAF、SAF、FT、MT等の各種カーボンブラック、微粉ケイ酸などが適宜用いられる。
【0060】
充填材としては、たとえば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが用いられる。
これらの補強材および充填材は、加硫性ゴム(A)100重量部に対して、通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下の割合で用いられる。
【0061】
加工助剤としては、通常のゴム加工に使用される加工助剤を使用することができる。このような加工助剤としては、たとえばリシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸塩;リシノール酸エステル、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ラウリン酸エステル等の高級脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0062】
これらの加工助剤は、通常、加硫性ゴム(A)100重量部に対して、約10重量部以下、好ましくは約1〜5重量部の割合で用いられる。
顔料としては、従来公知の無機顔料(たとえばチタンホワイト)および有機顔料(たとえばナフトールグリーンB)が使用される。
【0063】
これらの顔料は、加硫性ゴム(A)100重量部に対して、最大20重量部、好ましくは最大10重量部の量で用いられる。
老化防止剤としては、たとえば、
フェニルブチルアミン、N,N'- ジ-2- ナフチル-p- フェニレンジアミン等の芳香族第二アミン系安定剤;
ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t- ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系安定剤;
ビス[2-メチル-4-(3-n- アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t- ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系安定剤;
ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系安定剤などが挙げられる。
【0064】
これらの老化防止剤は、単独あるいは2種以上の組み合わせて用いることができる。このような老化防止剤は、加硫性ゴム(A)100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部の割合で用いられる。
【0065】
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、老化防止剤を使用しなくても、優れた耐熱性、耐久性を示すが、さらに老化防止剤を使用すれば、製品寿命を長くすることが可能である。
【0066】
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、非発泡体であってもよいし、また発泡体であってもよい。
発泡体形成に際して使用される発泡剤としては、市販の発泡剤の何れもが好適に使用することができる。たとえば、
重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系発泡剤;
N,N'- ジニトロソテレフタルアミド、N,N'- ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;
アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;
ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、P,P'- オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)ジフエニルスルフォン-3,3'-ジスルフェニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;
カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、パラトルエンスルホニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。なかでも、アゾ化合物、スルフォニルヒドラジド化合物、アジド化合物が好適に使用される。
【0067】
これらの発泡剤の配合量は、加硫発泡後の発泡体の比重が0.01〜0.9になるよう適宜選択されるが、発泡剤は通常、加硫性ゴム(A)100重量部に対し、0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは2〜10重量部の割合で用いられる。
【0068】
また、必要に応じて発泡剤とともに発泡助剤を併用しても差し支えない。発泡助剤の添加は、発泡剤の分解温度の調節、気泡の均一化などに効果がある。発泡助剤としては、たとえばサリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸等の有機酸、尿素およびその誘導体などが挙げられる。
【0069】
形状記憶性加硫ゴム成形体の調製
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、上述したように、非発泡体または発泡体であって、たとえば次のような方法で調製することができる。
【0070】
すなわち、本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体の必須成分である、上述したエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム等の加硫性ゴム(A)と、結晶性あるいは非晶性である樹脂(B)とを、たとえば二軸押出機で250℃で1分間混合、混練する。
【0071】
次いで、得られた混練物と補強材、充填材、軟化剤、顔料などの添加剤とを、バンバリーミキサー等のミキサー類を用いて約80℃〜170℃の温度で約3〜10分間混練する。
【0072】
次いで、上記のようにして得られた混練物に、加硫剤、加硫助剤をオープンロール等のロール類を用いて追加混合し、ロール温度約40℃〜80℃で約3〜30分間混練して分出しし、リボン状またはシート状の未加硫ゴム配合物(加硫性ゴム組成物)を調製する。
【0073】
このようにして調製された未加硫ゴム配合物は、押出機、カレンダーロール、プレス、射出成形機、トランスファー成形機などにより所望の形状に成形され、成形と同時にまたはその成形体を加硫槽内で、通常約150℃〜270℃で約1〜30分間加熱する方法により加硫されるか、または発泡されるとともに加硫される。
【0074】
加硫槽としては、スチーム加硫缶、熱空気加硫槽、ガラスビーズ流動床、溶融塩加硫槽、マイクロ波槽などが挙げられる。これらの加硫槽は、単独あるいは組み合わせで使用される。
【0075】
次いで、上記のようにして得られた加硫ゴム成形体を、樹脂(B)のビカット軟化点以上の温度で賦形してビカット軟化点以上の温度雰囲気下に置くか、あるいはビカット軟化点以上の温度雰囲気下に置いた後に樹脂(B)のビカット軟化点以上の温度で賦形し、そのままビカット軟化点未満の温度に冷却する。冷却方法は、放冷、水冷、空冷等、特に制限はない。
【0076】
上記のようにして得られた本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、最終賦形のために加えた力を除いても、賦形された形状、たとえばフィルム、シートまたはチューブ状の形態が保持される。
【0077】
上記のようにして得られた、本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体を再びビカット軟化点以上の温度雰囲気下に置くと、最終賦形前の加硫ゴム成形体の形態に戻る。本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、たとえば最終賦形後の形状が内径の大きいチューブ状の加硫ゴム成形体であり、最終賦形前の形状がこの内径よりも小さいチューブ状加硫ゴム成形体である場合、チューブ状加硫ゴム成形体の収縮と膨張を繰り返すことが可能である。
【0078】
【発明の効果】
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、収縮(開始)温度のコントロールをビカット軟化点70℃以上の樹脂(B)により行なっているので使い勝手が良く、しかも加硫性ゴム(A)を併用しているのでゴム弾性が高い。
【0079】
本発明によれば、配合ゴムコンパウンドの加硫後に、シボなどの型付け等の賦形を行なって得られる成形体であって、製品使用時に一時的に変形しても元の形状に戻る性質、すなわちゴム弾性に優れた形状記憶性加硫ゴム成形体が得られる。
【0080】
本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、上記のような効果を有するので、特にフィルム、シートおよびフィルム状の熱収縮性成形体として好適に用いることができる。
【0081】
このような効果を有する形状記憶性加硫ゴム成形体を提供することができる理由は明確ではないが、次のように推察される。すなわち、加硫性ゴム(A)からなる加硫物中に、粒状に分散している樹脂(B)が、樹脂(B)のビカット軟化点以上の温度で加硫ゴムが賦形されると変形方向にシート状に変形し、これがゴム弾性(変形回復性)を妨げる。熱収縮時には、樹脂(B)は元の粒状に戻る。粒状に戻った樹脂(B)は、加硫ゴム成形体中の充填材として働くため、収縮後の加硫ゴム成形体は、使用温度下では高いゴム弾性を発現する。
【0082】
上記のような効果を有する、本発明に係る形状記憶性加硫ゴム成形体は、シボなどの模様を有していてもよいフィルム、シートまたはチューブ状の熱収縮性成形体として、各種シール材、グロメット類、衣服のギャザー類、異形パイプの接続などの用途、さらには、自動車用ラジエーターホース等のジョイントホース、グラスランチャンネル、ウェザーストリップスポンジなどの自動車用部品の用途などに広く利用することができる。
【0083】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0084】
【実施例1】
まず、EPT[エチレン/プロピレン(モル比)=63/37、非共役ポリエン=5-エチリデン-2- ノルボルネン、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]=1.5dl/g、ヨウ素価=22、以下、EPT(1)と略す]と、
結晶性樹脂としてポリプロピレン[プロピレン・エチレン共重合体;ビカット軟化点(ASTM D 1525 )=150℃、メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)=55g/10分、エチレン含量=3モル%、密度(ASTM D 1505 )=0.91g/cm3 、PP(1)と略す]と
を、第1表に示す割合で、二軸押出機[東芝機械(株)製:50φ二軸押出機、L/D=45)]を用いて、設定温度230℃、スクリュー回転数200rpmの条件で混合、混練し、配合物−Aを得た。
【0085】
【表1】
Figure 0003669529
【0086】
次いで、配合物−Aの切片をルテニウム酸で染色し、走査型電子顕微鏡[日本電子(株)製:T330A]で10,000倍の写真をとり、画像解析装置[(株)ピアス:LA−500]で、写真中のポリプロピレン粒子の平均粒径を求めたところ、平均粒子径は0.8μmであった。
【0087】
次に、この配合物−Aに、第2表に示す配合処方になるように配合材を添加し、14インチオープンロール[日本ロール社製]で5分間混練し、配合物−Bを得た。
【0088】
この混練時のロール表面温度は、前ロール50℃、後ロール60℃であった。
【0089】
【表2】
Figure 0003669529
【0090】
さらに、この配合物−Bを14インチオープンロール[日本ロール社製]に巻き付けた。このときのロール表面温度は、前ロール50℃、後ロール60℃であった。このオープンロール上で第3表に示す配合処方になるように配合剤を、配合物−Bに添加し、3分間混練した後、分出しして厚さ3mmの未加硫シートを得た。
【0091】
【表3】
Figure 0003669529
【0092】
この未加硫シートをプレス成形機[コータキ精機社製]を用い、金型中で160℃で20分間プレス加硫し、2mm(厚)×15cm(縦)×12cm(横)の加硫シートを得た。
【0093】
次いで、この加硫シートから幅20mm、長さ70mmの長方形試験片を打ち抜いた。この試験片を用いて、上述した方法により形状記憶率と形状回復率を求めた。
【0094】
さらに、この加硫シートからJIS3号試験片を打ち抜き、JIS K 6301に従って、引張強さ、伸びを測定した。また、硬さと200%伸長後の永久伸びをJIS K 6301に準拠して測定した。
【0095】
結果を第11表に示す。
【0096】
【比較例1】
実施例1において、PP(1)の混合を行なわず、EPT(1)をそのまま用い、第2表および第3表に示す処方をそれぞれ第4表、第5表に示す処方に変更した以外は、実施例1と同様に行なった。
【0097】
【表4】
Figure 0003669529
【0098】
【表5】
Figure 0003669529
【0099】
結果を第11表に示す。
【0100】
【比較例2】
実施例1において、PP(1)の混合を行なわず、EPT(1)をそのまま用い、第2表に示す処方を第6表に示す処方に変更した以外は、実施例1と同様に行なった。
【0101】
【表6】
Figure 0003669529
【0102】
結果を第11表に示す。
【0103】
【比較例3】
実施例1において、PP(1)の代わりにポリエチレン[ビカット軟化点(ASTM D 1525 )=114℃、メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)=20.0g/10分、密度(ASTM D 1505 )=0.945g/cm3 ]を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
結果を第11表に示す。
【0104】
【実施例2】
実施例1において、PP(1)の配合量を10重量部にし、かつ第2表および第3表に示す処方をそれぞれ第7表、第8表に示す処方に変更した以外は、実施例1と同様に行なった。
【0105】
【表7】
Figure 0003669529
【0106】
【表8】
Figure 0003669529
【0107】
結果を第11表に示す。
【0108】
【実施例3】
実施例1において、PP(1)の配合量を30重量部にし、第2表および第3表に示す処方をそれぞれ第9表、第10表に示す処方に変更した以外は、実施例1と同様に行なった。
【0109】
【表9】
Figure 0003669529
【0110】
【表10】
Figure 0003669529
【0111】
結果を第11表に示す。
【0112】
【実施例4】
実施例1において、PP(1)の代わりに非晶性樹脂であるポリスチレン[電気化学工業(株)製:デンカスチロールQP−2、ビカット軟化点(ASTM D 1525 )=80℃]を用い、粒径測定の際オスミウム酸を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
【0113】
結果を第11表に示す。
【0114】
【実施例5】
実施例1において、PP(1)の代わりに非晶性樹脂であるAES樹脂[宇部サイコン社製:UCL AXS WS20、ビカット軟化点(ASTM D 1525)=100℃]を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
【0115】
結果を第11表に示す。
【0116】
【比較例4】
実施例1において、PP(1)の配合量を100重量部にしたが、EPT(1)とPP(1)との混練物は非常に硬く、以降の作業ができなかった。
【0117】
【実施例6】
実施例1において、EPT(1)とPP(1)との混合を容量1.7リットルのバンバリーミキサー[(株)神戸製鋼所:BR]で6kg/cm2 スティームを流しながら2分間混練、混合した以外は、実施例1と同様に行なった。混練温度は150℃であった。
【0118】
結果を第11表に示す。
【0119】
【表11】
Figure 0003669529
【0120】
【実施例7】
まず、EPT[エチレン/プロピレン(モル比)=73/27、非共役ポリエン=5-エチリデン-2- ノルボルネン(以下、ENBと略す)およびジシクロペンタジエン(以下、DCPDと略す)、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]=2.3dl/g、ヨウ素価=12(ENB)、6(DCPD)、以下、EPT(2)と略す]と、
結晶性樹脂としてポリプロピレン[プロピレン単独重合体;ビカット軟化点(ASTM D 1525 )=155℃、メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)=11g/10分、密度(ASTM D 1505 )=0.91g/cm3 、以下、PP(2)と略す]と
を、第12表に示す割合で、二軸押出機[東芝機械(株)製:50φ二軸押出機、L/D=45)]を用いて、設定温度230℃、スクリュー回転数200rpmの条件で混合、混練し、配合物−Cを得た。
【0121】
【表12】
Figure 0003669529
【0122】
次いで、配合物−Cの切片をルテニウム酸で染色し、走査型電子顕微鏡[日本電子(株)製:T330A]で10,000倍の写真をとり、画像解析装置[(株)ピアス:LA−500]で、写真中のポリプロピレン粒子の平均粒径を求めたところ、平均粒子径は0.9μmであった。
【0123】
次に、この配合物−Cに、第13表に示す配合処方になるように配合材を添加し、14インチオープンロール[日本ロール社製]で5分間混練し、混練物−Dを得た。このときのロール表面温度は、前ロール50℃、後ロール60℃であった。
【0124】
【表13】
Figure 0003669529
【0125】
さらに、この配合物−Dを14インチオープンロール[日本ロール社製]に巻き付けた。このときのロール表面温度は、前ロール50℃、後ロール60℃であった。このオープンロール上で第14表に示す配合処方になるように配合剤を、配合物−Dに添加し、3分間混練した後、未加硫の配合ゴム、または分出しして厚さ3mmの未加硫シートを得た。
【0126】
【表14】
Figure 0003669529
【0127】
この未加硫シートをプレス成形機[コータキ精機社製]を用い、金型中で170℃で12分間プレス加硫し、2mm(厚)×15cm(縦)×12cm(横)の加硫シートを得た。
【0128】
次いで、この加硫シートから幅20mm、長さ70mmの長方形試験片を打ち抜いた。この試験片を用いて、上述した方法により形状記憶率と形状回復率を求めた。
【0129】
さらに、この加硫シートからJIS3号試験片を打ち抜き、JIS K 6301に従って、引張強さ、伸びを測定した。また、200%伸長後の永久伸び(PS)をJIS K 6301に準拠して測定した。
【0130】
上記のようにして得られた未加硫の配合ゴムを、板状ダイス(幅30mm、高さ2mm)を装着した50mm押出機を用いて、ダイス温度80℃、シリンダー温度60℃の条件で、押出してリボン状に成形し、引き続き220℃の熱空気加硫槽中で5分間加硫を行なった。
【0131】
次いで、加硫槽から出てきた加硫ゴムリボンを、直ちにエンボスの深さが0.05mmのエンボスロールに通し、直ちに冷却し、片面にエンボスが施された加硫ゴムリボンを得た。加硫ゴムリボン表面に形成されたエンボスの深さは、0.05mmであった。
【0132】
結果を第15表に示す。
【0133】
【比較例5】
実施例7において、PP(2)の混合を行なわず、EPT(2)をそのまま用い、かつ、MAFカーボンブラックの配合量を60重量部から80重量部に変えた以外は、実施例7と同様に行なった。
【0134】
結果を第15表に示す。
【0135】
【表15】
Figure 0003669529
【0136】
【実施例8】
まず、EPT[エチレン/プロピレン(モル比)=78/22、非共役ポリエン=ENB、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]=3.0dl/g、ヨウ素価=12、以下、EPT(3)と略す]と、
結晶性樹脂として4-メチル-1- ペンテン樹脂[ビカット軟化点(ASTM D 1525 )=173℃、メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)=26g/10分、密度(ASTM D 1505)=0.83g/cm3、以下、4MPと略す]と
を、EPT(3)と4MPとの重量比[EPT(3)/4MP]が100/30重量部になるようにして、二軸押出機[東芝機械(株)製:50φ二軸押出機、L/D=45)]を用いて、設定温度270℃、スクリュー回転数200rpmの条件で混合、混練し、配合物−Eを得た。
【0137】
次いで、配合物−Eの切片をルテニウム酸で染色し、走査型電子顕微鏡[日本電子(株)製:T330A]で10,000倍の写真をとり、画像解析装置[(株)ピアス:LA−500]で、写真中の4MP粒子の平均粒径を求めたところ、平均粒子径は1.5μmであった。
【0138】
次に、この配合物−Eに、第16表に示す配合処方になるように配合材を添加し、14インチオープンロール[日本ロール社製]で5分間混練し、配合物−Fを得た。この混練時のロール表面温度は、前ロール50℃、後ロール60℃であった。
【0139】
【表16】
Figure 0003669529
【0140】
さらに、この配合物−Eを14インチオープンロール[日本ロール社製]に巻き付けた。このときのロール表面温度は、前ロール50℃、後ロール60℃であった。このオープンロール上で第17表に示す配合処方になるように配合剤を、配合物−Eに添加し、3分間混練した後、分出しして厚さ3mmの未加硫シートを得た。
【0141】
【表17】
Figure 0003669529
【0142】
次いで、上記のようにして得られた未加硫シートを、ダイおよびバレルの温度を60℃、またスクリュー温度を40℃に制御した60mm径の押出機でチューブ状に押出成形し、その成形品を引き続き220℃に制御された熱風槽に連続的に導き、5分間加熱して内径14mm、厚さ2mmの長尺チューブ(加硫ゴム製品)を得た。
【0143】
この長尺チューブを図1に示すように長さ200mmにカットした後、得られたチューブ1を250℃のオーブンに3分間放置し、続いて、チューブ1の中に、シリコーンオイルを塗布した図2に示す形状の金属棒2を100mmの長さまで挿入し、放置空冷した。1時間後に、この金属棒2をチューブ1から引き抜き、図3に示すような内径の異なる端面を持つチューブ3を得た。
【0144】
なお、上記のようにして得られた未加硫シートを、上述した形状記憶特性の測定試験に供し、形状記憶率と形状回復率を求めた。この形状記憶特性の測定は、上記試験方法において、オーブンの温度を250℃にして行なった。
【0145】
結果を第18表に示す。
【0146】
【表18】
Figure 0003669529
【0147】
【実施例9】
実施例8で得た長尺チューブを図1に示すように長さ200mmにカットした後、得られたチューブ1を250℃のオーブンに3分間放置し、続いて、チューブ1の中に、シリコーンオイルを塗布した図4に示す形状の金属棒4を挿入し、水槽に入れ冷却した。1時間後に、この金属棒4をチューブ1から引き抜き、図5に示すような曲管形状に賦形されたチューブ5を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本願の実施例8、9における長さ200mmの長尺チューブの斜視図である。
【図2】図2は、本願の実施例8で用いた金属棒の斜視図である。
【図3】図3は、本願の実施例8で得られた内径の異なる端面を持つチューブの斜視図である。
【図4】図4は、本願の実施例9で用いた金属棒の斜視図である。
【図5】図5は、本願の実施例9で得られた曲管形状のチューブの斜視図である。
【符号の説明】
1 ・・・ チューブ
2 ・・・ 金属棒
3 ・・・ チューブ
4 ・・・ 金属棒
5 ・・・ チューブ

Claims (7)

  1. 加硫性ゴム(A)からなる加硫物中に、ビカット軟化点が70℃以上である樹脂(B)が粒状で分散されてなり、かつ、
    樹脂(B)と加硫性ゴム(A)との重量比[ (B) (A) ]が3/100〜50/100の範囲にあり、
    (i) 形状回復率が70%以上であり、
    (ii)形状記憶率が50%以上であり、かつ、
    (iii) 200%伸長後の永久伸びが20%以下である
    ことを特徴とする形状記憶性加硫ゴム成形体。
  2. 前記樹脂(B)の平均分散粒径が0.1〜200μmの範囲にあることを特徴とする請求項に記載の形状記憶性加硫ゴム成形体。
  3. 前記加硫性ゴム(A)が、エチレンと炭素原子数3〜20のα- オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項に記載の形状記憶性加硫ゴム成形体。
  4. 前記樹脂(B)が、結晶性プロピレン単独重合体またはプロピレンと1種以上の炭素原子数2〜12のα- オレフィンとの結晶性プロピレン・α- オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項に記載の形状記憶性加硫ゴム成形体。
  5. 前記樹脂(B)が、スチレン含有非晶性樹脂であることを特徴とする請求項に記載の形状記憶性加硫ゴム成形体。
  6. 前記加硫ゴム成形体は、樹脂(B)のビカット軟化点以上の温度で賦形された後に、ビカット軟化点未満の温度に冷却されることにより得られた成形体であることを特徴とする請求項に記載の形状記憶性加硫ゴム成形体。
  7. フィルム、シートまたはチューブ状の熱収縮性成形体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の形状記憶性加硫ゴム成形体。
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