JP3667857B2 - 熱間帯鋼圧延設備 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間帯鋼圧延設備(ホットストリップミル)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱間帯鋼圧延設備に於いては、仕上圧延機によって所定の板厚にまで圧延されたストリップは、ダウンコイラのマンドレルに巻き取られるまでの間に、仕上圧延機とダウンコイラとの間に設けられたストリップ冷却ラインにより、所定の巻き取り温度にまで冷却される。このストリップ冷却ラインは、数百本の駆動式ローラテーブルからなるランアウトテーブルと、水スプレー式冷却装置または水ラミナー式冷却装置とから構成されており、ランアウトテーブルのローラ間から噴射される冷却水により、ランアウトテーブル上を搬送されるストリップの下面を冷却し、ランアウトテーブルの上方から噴射される冷却水により、ストリップの上面を冷却するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の如きローラテーブル式のランアウトテーブルによってストリップを高速搬送すると、ストリップの先端が上方へ浮き上がる所謂フライング現象が発生し、ダウンコイラへのストリップ先端の導入に支障を来すことがある。そのため、ストリップの先端がダウンコイラのマンドレルに巻き付くまでは搬送速度を700m/min程度に抑えねばならなくなり、仕上圧延機の能力(最大1500m/min程度)を常時一杯に活用することができず、生産性の向上が阻害されることとなっていた。
【0004】
このような不都合が生じないようにするための技術として、特公平2−25214号公報には、ストリップをランアウトテーブル上に電磁力で吸着する方法が提案されている。しかしながら、電磁力は距離の二乗に反比例する性質があるので、何らかの外乱でフライング現象が発生すると、これを再びランアウトテーブル上に吸着することは実質的に不可能であり、ストリップ先端の浮き上がりを防止して高速搬送を実現するための対策として、この技術は十分とは言えない。
【0005】
本発明は、このような従来技術に課せられた問題点、即ち、ランアウトテーブル上でストリップを高速搬送しようとするとフライング現象が発生する不都合、を解消し、仕上圧延機の通板能力を阻害せずに済むように改良された高能率な熱間帯鋼圧延設備を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を果たすために、本発明に於いては、仕上圧延機から送出され、ストリップ冷却ラインにて冷却されたストリップを巻き取るためのコイラを、ストリップ冷却ラインの全長に渡って延設されたガイドレール上をストリップの送出速度に同期して移動可能な走行台車上に搭載し、ストリップの先端部をコイラに巻き付けた状態でストリップに張力を付与しつつ冷却ラインの始端から終端へ向けて走行台車を走行させ、かつ冷却ラインの終端に於いてコイラにストリップを巻き取るものとした。
【0007】
特にストリップ冷却ラインとしては、走行台車が通過する間だけ走行台車の進路上から待避可能であり、かつ走行台車が通過した後にストリップの上下両面に近接可能なピンチロール並びに冷却水噴射装置を有するものとした。またストリップ冷却ラインには、ストリップを吸引するための磁気発生手段を設けるものとした。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面を参照して本発明の構成を詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明に基づく熱間帯鋼圧延設備に於ける仕上圧延機1の最終スタンドと、ストリップ冷却ライン3とを示している。ストリップ冷却ライン3は、通板方向について適宜な間隔を開けて列設された上下に対をなす多数のピンチロール4及び冷却水噴射装置5からなっている。これらのピンチロール4と冷却水噴射装置5とは、通板方向について交互に配置されている。
【0010】
ピンチロール4は、上下のロール対からなり、各ロールがそれぞれ上下に接離移動可能に支持されている。各ピンチロール4は、仕上圧延機1から送出されるストリップ6の上下両面を所定の押圧力をもって挟み込むと共に、各々が駆動力を与えられ、かつ回転速度が自由に制御されるようになっている。そして冷却水噴射装置5は、ピンチロール4と同様に、上下に対をなす冷却水噴射装置からなり、各冷却水噴射装置5が、ストリップ6の上下両面に接離移動可能に支持されている。この冷却水噴射装置5のストリップ6との対向面には、複数の冷却水ノズルが設けられており、ストリップ6の上下各面に冷却水を吹きかけることができるようになっている。
【0011】
ストリップ冷却ライン3には、ガイドレール7が通板方向に沿って延設されている。このガイドレール7には、上下のガイドレール7に車輪が規制されて浮き上がりが防止されると共に、例えば、ガイドレールと平行に延設されたラックギヤに噛合するピニオンギヤで駆動される走行台車9が載置されている。この走行台車9には、仕上圧延機1から送出されたストリップ6の先端を上下から把持し、かつ後方のコイラへと導くためのコイラ前ピンチロール10が設けられると共に、ストリップ6を巻き取るためのコイラ2が搭載されている。
【0012】
次に上記実施例の作動要領について説明する。
【0013】
ストリップ6の先端が仕上圧延機1から送出される以前の状態に於いては、図1に示したように、全ての搬送ロール4並びに全ての冷却水噴射装置5が互いに上下に離間した位置に移動して待機している。そしてコイラ2を搭載した走行台車9は、仕上圧延機1の最終スタンドの出口の直近にて、仕上圧延機1からのストリップ6の送出速度よりもやや高い周速度でコイラ前ピンチロール10を回転させた状態で待機している。
【0014】
ストリップ6の先端が仕上圧延機1から出ると、コイラ前ピンチロール10間にストリップ6の先端を直ちに把持すると共にコイラ2へ導入し、かつコイラ2のマンドレルにストリップ6の先端部を巻き付ける。それとほぼ同時に走行台車9はストリップ冷却ライン3の終端へ向かっての加速を開始し、短時間で圧延速度に同期する。この間コイラ2のマンドレルは、ストリップ6に常時適正な張力を与えるようにその回転速度が制御される。
【0015】
一方、上下両方向に待避していたピンチロール4並びに冷却水噴射装置5の各対は、走行台車9の通過に連れて順にストリップ6の上下各面に接近するように移動する。そしてピンチロール4は、ストリップ6の上下各面に接触してストリップ6の張力を常時所定範囲に維持するように、その回転速度が制御される。また冷却水噴射装置5からは、ストリップ6の上下各面に向けて冷却水が吹きかけられる。このようにして、ストリップ6は、常時適切な張力が付与された状態で冷却されるので、冷却後の板形状が大幅に改善される。しかも冷却水噴射装置5もストリップ6の表面に対して接離移動可能なので、走行台車9の通過後に冷却水噴射装置5をストリップ6の表面に近接させて急速冷却することができることから、冷却ライン長を削減し得る。これに加えて、ストリップ6の表面に発生するスケール厚が小さくなるので、次工程の酸洗いの負荷が軽減される。
【0016】
なお、走行台車9の速度が圧延速度に達するまでの間にコイラ2に巻き取られたストリップは、走行台車9の速度を圧延速度より高くして巻き戻しながら急速冷却すれば良い。また、部分的に冷却モードが異なってしまうことで支障が生ずるような厳格材の場合は、走行台車9の速度が圧延速度に同期する以前にコイラ2に巻き取られた部分は切除することとなるが、従来に比して大きな歩留まり落ちを生ずることはない。
【0017】
走行台車9がストリップ冷却ライン3の終端に到達したならば、コイラ2のマンドレルを回転させ、仕上圧延機1から引き続いて送出されるストリップ6を巻き取る。この際、ストリップ6に対するバックテンションをピンチロール4にて常時加えることにより、ストリップ6は弛みなく均一に巻き取られる。従って、ストリップ冷却ライン3上でのストリップ6の減速が可能となるので、仕上圧延機1に於いてはストリップ尾端の圧延速度を減速する必要がなくなる。
【0018】
ストリップ6の尾端がピンチロール4を通過する際に、尾端への拘束力が途切れるために尾端が上下に振れるおそれがあるが、下側に位置する各冷却水噴射装置5に内蔵された電磁吸引装置12により、尾端の安定走行が維持される。そしてストリップ冷却ライン3の最終ピンチロール4を尾端が通過した後は、コイラ前ピンチロール10にてストリップ6が拘束される。これにより、コイラ2に巻き取られる際のストリップ尾端の安定性が増すので、尾端の搬送速度を大幅に減速する必要がなくなる。
【0019】
ところで、1つのコイルが巻き終わったならば、次のストリップの送出に備えて仕上圧延機1の直後の位置へ走行台車9を復帰させねばならないが、この復帰時間はロスタイムとなる。このロスタイムが生じないようにするためには、図3に示すように、ストリップ冷却ライン3に設けられたガイドレール7と平行に戻し専用のガイドレール21を設け、これら2組のガイドレール7・21の始端部と終端部とのそれぞれに、走行台車9が載る程度の短尺レール22a・22bを接続可能なようにすると共に、この短尺レール22a・22bが左右に横移動自在なように横行レール23a・23bを設け、2台の走行台車9を短尺レール22a・22bと共に交互に横移動させるようにすると良い。このようにすれば、一方の走行台車がガイドレール7上を走行している間に、他方の走行台車を戻し専用のガイドレール21上を走行させて仕上圧延機1側へ戻し、コイルを巻き終わってピンチロール4と冷却水噴射装置5とが上下に開かれた際に、既に始端側に帰還している他方の走行台車を始端側の短尺レール22aと共に横移動させてストリップ冷却ライン3のガイドレール7に整合させ、かつストリップ冷却ライン3の終端まで走行した一方の走行台車を終端側の短尺レール22bと共に横移動させて戻し専用のガイドレール21に整合させることができるので、次のストリップの送出に対する待機状態をロスタイムを生ずることなく実現することができる。
【0020】
【発明の効果】
このように本発明によれば、仕上圧延機から送出されるストリップの先端を機械的に拘束した上で、圧延機の送出速度に同期して走行台車が走行するので、ストリップに一定の張力を与えて冷却ラインを通板することができる。これにより、ストリップの全長に渡ってフライングや蛇行の発生を防止し得る。従って、通板速度を仕上圧延機の能力に対応して高速化し得るので、生産性を向上する上に多大な効果を奏することができる。
【0021】
また、冷却時に一定の張力をストリップに与えることができ、しかも冷却水噴射装置をストリップに近接させることで冷却効率を向上し得るので、ストリップの全長に渡って冷却状態が均一化されることとなり、ストリップの品質向上をも企図し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明設備に於けるストリップ冷却ラインへストリップを通板する以前の状態を示す概念的構成図。
【図2】本発明設備に於けるストリップ冷却ラインへストリップを通板した状態を示す概念的構成図。
【図3】走行台車のガイドレールの配置図。
【符号の説明】
1 仕上圧延機
2 コイラ
3 ストリップ冷却ライン
4 ピンチロール
5 冷却水噴射装置
6 ストリップ
7 ガイドレール
9 走行台車
10 コイラ前ピンチロール
12 電磁吸引装置
21 戻し専用ガイドレール
22a・22b 短尺レール
23a・23b 横行レール

Claims (4)

  1. 仕上圧延機と、該仕上圧延機から送出されたストリップを冷却するストリップ冷却ラインと、冷却されたストリップを巻き取るコイラとを有する熱間帯鋼圧延設備であって、
    前記コイラが、前記ストリップ冷却ラインの全長に渡って延設されたガイドレール上をストリップの送出速度に同期して移動可能な走行台車上に搭載されており、
    前記ストリップの先端部を前記コイラに巻き付けた状態でストリップに張力を付与しつつ前記冷却ラインの始端から終端へ向けて前記走行台車を走行させ、かつ冷却ラインの終端に於いてコイラにストリップを巻き取るようにしたことを特徴とする熱間帯鋼圧延設備。
  2. 前記ストリップ冷却ラインは、前記走行台車が通過する間だけ走行台車の進路上から待避可能であり、かつ走行台車が通過した後に前記ストリップの上下両面に接触可能なピンチロールを有するものであることを特徴とする請求項1に記載の熱間帯鋼圧延設備。
  3. 前記ストリップ冷却ラインは、前記走行台車が通過する間だけ走行台車の進路上から待避可能であり、かつ走行台車が通過した後に前記ストリップの上下両面に近接可能な冷却水噴射装置を有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間帯鋼圧延設備。
  4. 前記ストリップ冷却ラインに、前記ストリップを吸引するための磁気発生手段が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱間帯鋼圧延設備。
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