JP3667577B2 - ローラ構造及びそのローラ構造を備えたシート搬送装置 - Google Patents

ローラ構造及びそのローラ構造を備えたシート搬送装置 Download PDF

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Description

【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成装置等に用いられる記録紙や原稿等のシートを搬送するローラ構造及びシート搬送装置に関する。
【0001】
【従来の技術】
画像形成装置等において、記録紙や原稿等のシートを搬送する際に用いられる搬送ローラは、用紙を搬送する際の摩擦等による摩耗や、設置された環境や使用の仕方等による破損等のため、定期的に交換が必要である。従来、交換された搬送ローラは、通常廃棄されていた。
【0002】
近年、オフィスや工場では、複数の画像形成装置が使用されており、定期的に交換される搬送ローラの数は膨大であり、交換した総ての搬送ローラを廃棄すると資源の有効利用の点で問題となる。そのため、リサイクル可能な素材を用い、リサイクル性を追及した構成の搬送ローラを使用する必要性が高まっている。
【0003】
そこで、リサイクル性を追求したローラに関する様々な技術が提案されている。例えば、特開平9−58895号公報では、ローラの軸に固定したフランジ部の間に、円筒状のゴムチューブとゴムチューブの外周面に積層して配置される第1及び第2ローラ膜とゴムチューブ内にエアの充填を可能にするチューブバルブとからローラの胴部を構成して、ローラ胴部のゴムチューブ内に空気を充填してローラとして機能できるように構成している。これにより、ローラ表面に損傷等が生じた場合には、ゴムチューブの外周面に積層配置されるローラ膜のみを交換することによって、ローラを構成する軸体を継続して使用することができ、効果的に資源の有効利用を果たすことを可能としている。
【0004】
しかしながら、特開平9−58895号公報に開示された技術では、ローラが複数の部材から構成されているために、ローラの組立時やリサイクルを行う際の分解時に工数がかかるものとなる。
【0005】
このような問題点を解消する技術として、特開平5−208460号公報及び特開平7−100961号公報に開示された技術が挙げられる。
【0006】
特開平5−208460号公報に開示された技術は、中空射出成型法によって、ローラ胴部、ローラ軸部及びローラ駆動部を一体的に形成することで、ローラ全体を一度に形成して組立を不要にするとともに、ローラ胴部内に中空部を形成することにより、軽量化が図れ、ローラの回転性能が向上される。また、中空部を形成することで、材料の使用量を低減できるという効果も有する。
【0007】
また、特開平7−100961号公報に開示された技術は、中空射出成型法によってローラ胴部及びローラ軸部を一体的に形成する際に、ローラ胴部の直径(R)とローラ軸部の直径(r)の比(R/r)が1.0〜4.0となるように設定することで、ローラ胴部及びローラ軸部を一体的に形成してこれらの組立を不要にするとともに、ローラ胴部の寸法精度(円筒度)を良好にし、成型後の切削加工を不要にして生産性を向上している。また、中空部を形成することで、材料の使用量が低減できるという効果も有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−208460号公報及び特開平7−100961号公報に開示された技術のように、中空射出成型法によってローラ胴部を中空に形成する場合に、
▲1▼ローラの強度をどのように向上させるのか、
▲2▼対をなす他方のローラとともに使用する際に相互にどのような関係性を持たせればよいのか、
▲3▼ローラの着脱を容易に行えるようにするにはどのようにするのか、
▲4▼ローラ胴部の肉厚を薄く成型したローラを使用するにはどのようにすればよいのか、
等のローラに関する詳細な点に関しては述べられていない。即ち、特開平5−208460号公報に開示された技術は、中空射出成型法によって、ローラ胴部、ローラ軸部及びローラ駆動部を一体的に形成することが記載されているのみである。また、特開平7−100961号公報に開示された技術は、ローラ胴部の円筒度の精度を向上するための条件が記載されるに留まっている。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は少ない材料で製造時やリサイクル時に手間をかけることなく容易に製造・リサイクルできる搬送ローラ構造及びその搬送ローラ構造を備えたシート搬送装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0011】
(1) 駆動ローラと
側面部胴部、及び該両側面部から突出する軸部を中空射出成型で一体的に、内部に気体を封入して形成するとともに、該胴部を外部からの圧力で撓む厚みに形成した従動ローラと、
該軸部を回転自在に支持する切り欠き部と、該従動ローラを該駆動ローラへ付勢する付勢手段と、
を含み、
該従動ローラの胴部の軸方向長さよりも該駆動ローラの胴部の軸方向長さを短くし、該従動ローラの胴部の端部間に該駆動ローラの胴部の端部間を当接させ、たことを特徴とする。
【0012】
この構成においては、軸部、側面部及び胴部を一体的に形成され、内部が中空の従動ローラの胴部の軸方向の長さよりも、駆動ローラの胴部の軸方向の長さが短くされて、従動ローラの胴部の端部間に駆動ローラの胴部の端部間が当接している。したがって、ローラの組立・分解作業が不要となり、廃棄する際の材料の分別が不要であるため、リサイクル性が高く、また組立・分解作業工数を削減することができる。また、中空射出成型した従動ローラの利用に際して、軸部に作用する圧接力により胴部に作用する曲げモーメントのために胴部が湾曲することがなく、従動ローラが撓むことにより駆動ローラ全体を従動ローラに当接させることが可能となり、駆動ローラと従動ローラとの接触域の端部と中央部との圧接力の差が小さくなり、シートを確実に保持することができる
【0013】
(2) 駆動ローラと
中央部に凹形状の軸受部を有する両側面部及び胴部を中空射出成型で一体的に、中空で内部に気体を封入して形成するとともに、該胴部を外部からの圧力で撓む厚みに形成した従動ローラと、
該軸受部に挿入して、該従動ローラを回転自在に支持する軸部と、
該軸部が取り付けられ、該軸部を介して従動ローラを該駆動ローラへ付勢する付勢手段と、
を含み、
該従動ローラの胴部の軸方向長さよりも該駆動ローラの胴部の軸方向長さを長くし、該駆動ローラの胴部の端部間に該従動ローラの胴部の端部間を当接させたことを特徴とする。
【0014】
この構成においては、ローラの軸受部、側面部及び胴部が一体的に形成され、内部が中空の従動ローラは軸受部を軸で支持されて従動ローラの胴部に駆動ローラの胴部が当接している。したがって、ローラの組立・分解作業が不要となり、廃棄する際の材料の分別が不要であるため、リサイクル性が高く、また組立・分解作業工数を削減することができる。また、従動ローラは内部が中空であるため、軸受部に作用する圧接力により胴部に作用する曲げモーメントが大きくならないので、胴部が湾曲して駆動ローラと従動ローラとの接触域の端部と中央部との圧接力の差が小さくなり、シートを確実に保持することができる
【0015】
(3) 前記従動ローラの側面部における軸部または軸受部の周囲に凹部及び凸部の少なくとも一方を複数形成したことを特徴とする。
【0016】
この構成においては、従動ローラの側面部における軸部または軸受部の周囲に凹部及び凸部、または凹部若しくは凸部を複数形成している。したがって、ローラ側面部の強度が上がるため、搬送ローラの押圧力による側面部のつぶれが無くなり、シートの搬送性を安定的に確保することができる。
【0017】
(4) (3) の構成において、従動ローラの側面部に形成した凸部はリブであるとすることができる。
【0018】
この構成においては、従動ローラの側面部にリブが形成されている。したがって、ローラ側面部の強度が上がるため、側面部のつぶれが無くなり、シートを安定して搬送することができる。
【0019】
(5) 前記従動ローラの胴部における中央部の径は、端部の径より大きいことを特徴とする。
【0020】
この構成においては、従動ローラの胴部における端部より中央部の径を大きくしている。したがって、従動ローラが駆動ローラと当接した際に、押圧力によって中央部が端部と同程度の径となるため、駆動ローラとの当接部において略均等な圧力で用紙を搬送できる。
【0021】
(6) 前記従動ローラの胴部は、その断面が軸方向に凹凸を繰り返す波打った形状であることを特徴とする。
【0022】
この構成においては、従動ローラの胴部はその断面が軸方向において、凹凸を繰り返す波打ち状に形成されている。したがって、従動ローラ胴部の面方向の強度が上がるので、用紙の搬送性を向上することができる。
【0023】
(7) 前記従動ローラの側面部は、同心円状に凹凸を繰り返す波打った形状であることを特徴とする。
【0024】
この構成においては、同心円状に凹凸を繰り返す波打った形状を従動ローラの側面部は有する。したがって、従動ローラの側面部は可撓性を有するので、従動ローラの着脱が容易となり、作業効率を高めることができる。
【0025】
(8) 前記従動ローラの軸受部は、内部に突起が形成されたことを特徴とする。
この構成においては、内部に突起が形成された従動ローラの軸受部は、軸で支持されている。したがって、従動ローラと軸との滑りを防止し、用紙の搬送性を高めることができる。
【0026】
(9) 前記従動ローラの軸受部と前記軸受部を支持する軸との接触点は、前記駆動ローラと前記従動ローラとの当接部の端部よりも前記従動ローラの中央側に位置することを特徴とする。
【0027】
この構成においては、駆動ローラと従動ローラとの当接部の端部よりも従動ローラの中央側に、従動ローラの軸受部と軸との接触点は位置する。したがって、従動ローラの軸受部と軸との接触点から押圧力により駆動ローラとの当接部における従動ローラの胴部中央部近傍に作用する曲げモーメントが引っ張りとなるので、従動ローラと駆動ローラとの接触部における圧接力が、端部と中央部とで差異が小さくなり、より確実にシートの搬送ができる。
【0028】
(10)駆動ローラと従動ローラとが回転自在に支持され、該駆動ローラの胴部と該従動ローラの胴部とが当接して配置され、該駆動ローラと該従動ローラとの間にシートを挟持して搬送するシート搬送装置であって、
前記(1) 乃至(9) のいずれかに記載のローラ構造を備えたことを特徴としている。
【0029】
この構成では、シート搬送装置において、駆動ローラの胴部と従動ローラの胴部が当接して配置され、また駆動ローラと従動ローラとは回転自在に支持され、ローラ間にシートを挟持して搬送し、前記(1) 乃至(9) のいずれかに記載のローラ構造を備えている。したがって、駆動ローラと従動ローラとによってシートを確実に搬送することができるとともに、少ない材料で製造が行え、製造時やリサイクル時に手間をかけることなく容易に製造・リサイクルできる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図に示す実施形態に基づいて本発明を記述するが、これによってこの発明は限定されるものではない。また本発明の内容は画像形成装置の搬送装置を例に挙げて、ローラ構造の説明を行う。
【0031】
図1は、画像形成装置の一例であるディジタル複写機の全体構成を示す断面図である。図1に示すように、ディジタル複写機30は大きく分けて、原稿読取り装置としてのスキャナ部31と、画像記録装置としてのレーザ記録部32と、から構成されている。
【0032】
スキャナ部31は、透明ガラスからなるプラテンガラスを含む構成の原稿載置台35、原稿載置台35上へ自動的に原稿を供給搬送するための両面対応自動原稿送り装置(以下、RADFと称する。)36、及び原稿載置台35上に載置された原稿の画像を走査して読み取るための原稿画像読み取りユニット、すなわちスキャナユニット40等から構成されている。
【0033】
このスキャナ部31によって読み取られた原稿画像は、画像データとして後述する画像データ入力部へと送られ、画像データに対して所定の画像処理が施される。
【0034】
RADF36は、所定の原稿トレイ上に複数枚の原稿を一度にセットしておき、セットされた原稿を1枚ずつ自動的にスキャナユニット40の原稿載置台35上へ給送する装置である。また、RADF36は、オペレータの選択に応じて原稿の片面または両面をスキャナユニット40に読み取らせるように、片面原稿のための搬送経路、両面原稿のための搬送経路、搬送経路切り換え手段等から構成されている。このRADF36については、従来から数多くの出願、商品化がなされているので、詳細な説明は省略する。
【0035】
スキャナユニット40は、原稿面を露光するランプリフレクタアセンブリ41と、原稿からの反射光像を光電変換素子(以下、CCDと称する。)44に導くための第1反射ミラー42aと、からなる第1走査ユニット40a、第1反射ミラー42aからの反射光像を反射する第2反射ミラー42b及び第3反射ミラー42cからなる第2走査ユニット40b、第3反射ミラーからの反射光像をCCD44上に結像させるための光学レンズ体43、及び原稿からの反射光像を電気的画像信号に変換するCCD44から構成される。
【0036】
スキャナ部31は、RADF36とスキャナユニット40との関連した動作により、原稿載置台35上に読み取るべき原稿を順次載置させながら、原稿載置台35の下面に沿ってスキャナユニット40を移動させて、原稿画像を読み取るように構成されている。
【0037】
原稿画像をスキャナユニット40で読み取って得られた画像データは、後述する画像処理部へ送られ、各種処理が施された後、レーザ記録部32のレーザ書き込みユニット46に送られて、電子写真プロセスにおいて感光体ドラム48上に可視画像として再現された後、用紙上に画像が転写形成される。
【0038】
レーザ記録部32は、シート搬送装置である用紙収納・搬送部50、レーザ書き込みユニット(以下、LSUと称する。)46及び画像を形成するための電子写真プロセス部47を備えている。
【0039】
用紙収納・搬送部50には、第1カセット51、第2カセット52、第3カセット53及びマルチ手差しトレイ54を有しており、さらに、用紙収納・搬送部50から送り出された画像が表面に記録された用紙の裏面側に、画像を記録させるための両面複写ユニット55が備えられている。
【0040】
この用紙収納・搬送部50における各カセットには、用紙の束がサイズ毎に収容されており、操作者が所望するサイズが収容されているカセットを選択すると、そのカセット内の用紙束の上から1枚ずつ送り出され、搬送経路59を経由して順次レーザ記録部32の画像形成部へ向けて搬送される。
【0041】
LSU46は、上述のメモリから画像データに応じたレーザ光を出射する半導体レーザ、レーザ光を等角速度偏向するポリゴンミラー、等角速度偏向されたレーザ光が電子写真プロセス部47の感光体ドラム48上で、等速度偏向されるように補正するf−θレンズ等を有している。
【0042】
電子写真プロセス部47は、周知の態様に従い、感光体ドラム48の周囲に帯電器、現像器、転写器、剥離器、クリーニング器、除電器及び定着器49を配置してなっている。
【0043】
定着器49より画像が形成されるべき用紙の搬送方向下流側には、用紙排出搬送路が設けられており、この用紙排出搬送路は後処理装置34へ通じている搬送路57と、両面複写ユニット55へ通じている搬送路56とに分岐している。
【0044】
LSU46及び電子写真プロセス部47において、画像メモリから読み出された画像データは、LSU46によってレーザ光線を走査させることにより、感光体ドラム48の表面上に静電潜像として形成され、トナーにより可視像化されたトナー像は、用紙収納・搬送部50の多段給紙ユニットから搬送された用紙の面上に静電転写され定着される。
【0045】
このようにして画像が形成された用紙は、定着器49から搬送路57を介して後処理装置34へ送られたり、搬送路56を介して両面複写ユニット55へと選択的に搬送される。
【0046】
後処理装置34に送られた用紙は、第1の排出トレイ341、又は第2の排出トレイ342にスタックされる。
【0047】
次に、このディジタル複写機30における、読み取られた原稿画像情報に画像処理を行う画像処理部の構成及び機能について説明する。
【0048】
図2は、図1に示したディジタル複写機30を構成している制御部における各種ユニット部、画像処理部等の全体ブロック構成図であり、メインの中央演算処理装置(以下、CPUと称する。)401により、各ユニット部毎に搭載されたサブのCPUとの連携を取りながら、動作管理している状態を示す図である。
【0049】
このブロック図から分かるように、ディジタル複写機30の制御部は、操作パネル103を管理制御するオペレーションパネルボード100と、ディジタル複写機30を構成する各ユニットを管理制御するマシンコントロールボード200と、原稿画像を電気的に読み取り電子データとするCCDボード300と、前記CCDボード300にて電子データ化された原稿画像に対して、所定の画像処理を施すメイン画像処理ボード400と、このメイン画像処理ボード400にて処理された画像情報に対してさらに所定の画像処理を施すサブ画像処理ボード500と、前記サブ画像処理ボード500にインターフェイスを介して接続されたその他の拡張ボード群600(プリンタボード、FAXボード、機能拡張ボード)等から構成されている。
【0050】
上記のように画像形成装置の一例であるディジタル複写機30には、原稿や用紙等のシートを搬送するシート搬送装置である用紙収納・搬送部50において、搬送路に沿って所定の位置に搬送ローラが配置されている。以下にこの搬送ローラを例に挙げて本発明の詳細な説明をする。
【0051】
図3は、本発明の第1実施形態に係るシート搬送装置における搬送ローラの概略の構成を示す正面図及び断面図である。また図4は、シート搬送装置における搬送ローラの概略の構成を示すA−A’矢視断面図(A)及びB−B’矢視断面図(B)である。
【0052】
シート搬送装置の搬送ローラが設けられた位置においては、シート案内部材3とシート案内部材4とが所定の間隔で対向して配設され、シートが搬送される搬送路6が構成される。シート案内部材3のシート案内部材4に対向する面と反対側の面において、所定距離だけ離れた位置に金属製、または樹脂製で円柱状の棒体である駆動ローラ軸2が回転自在に配置されている。この駆動ローラ軸2には、ネオプレンゴム等のゴム材料で形成された中実で円柱状の駆動ローラ1が、所定の間隔で複数個圧入して取り付けられている。駆動ローラ1は、その側面部の略中央部に設けられた孔部に駆動ローラ軸2が貫通されている。また、シート案内部材3には、矩形状の開口部3aが形成されている。この開口部3aを介して駆動ローラ1の一部が搬送路6に突出している。開口部3aは、駆動ローラ1の一部が突出した際に、駆動ローラ1に接触しない大きさである。駆動ローラ軸2は、図外のフレームに軸受を介して保持されており、その一端にギヤ等の駆動手段が設けられている。この駆動手段にモータ等の駆動源に連なる他の駆動手段が係合して、駆動源からの駆動力が、駆動手段から駆動ローラ軸2に伝達して、駆動ローラ1は回転する。
【0053】
一方、シート案内部材3の開口部3aに対向する位置におけるシート案内部材4には、矩形状の開口部4dが形成されている。開口部4dの用紙搬送方向の2辺には、シート案内部材4の面に垂直で搬送路6と反対側の方向に曲げ加工された矩形状の切り起こし部4aが形成されている。また、切り起こし部4aの開放端側の辺の略中央部にU字状に切り欠いた切欠き部4bが形成されている。そして、従動ローラ10の軸部10bがこの切欠き部4bに回転自在に支持されている。
【0054】
従動ローラ10は、円柱状で円柱の平面部である2つの側面部10cの略中央から所定の長さの軸部10bが突き出た形状である。また、円筒状の胴部10a、軸部10b及び側面部10cが一体的に形成されており、内部は中空である。従動ローラ10の両方の軸部10bの端部は、切り起こし部4aの切欠き部4bから突出している。そして、開口部4dの用紙搬送方向と垂直な方向の2辺における端部近傍の4箇所に、搬送路6と反対側の面に凸に形成された切り曲げ部4cに、両端を係止された付勢バネ5によって、従動ローラ10が切欠き部4bから外れないように、軸部10bが搬送路6方向に押圧されている。また、開口部4dを介して従動ローラ10の一部が搬送路6に突出している。開口部4dは、駆動ローラ1の一部が突出した際に駆動ローラ1に接触しない大きさである。
【0055】
従動ローラ10の胴部10aと駆動ローラ1の胴部1aとは、搬送路6の略中央で当接している。ここで、従動ローラ10の胴部10aの軸方向の長さよりも、駆動ローラ1の胴部1aの軸方向の長さは短く形成されており、従動ローラ10の胴部10aの両方の端部間に駆動ローラ1の胴部1aの両方の端部が位置するように配置されて、両ローラは当接している。
【0056】
上記の構成において、駆動ローラ1と従動ローラ10との間に挟持されて、シートが搬送される。
【0057】
次に、従動ローラ10の詳細な構造を説明する。図5は、従動ローラ10の構造を示した側面図及び断面図である。従動ローラ10は、前記のように円柱状で円柱の平面部である2つの側面部10cの略中央から所定の長さの軸部10bが突き出た形状である。即ち、駆動ローラ1との間でシートを挟持・搬送するための円筒状の胴部10aと、胴部10aを支持する平面状の側面部10cと、胴部10a及び側面部10cを回転可能に支持するための軸部10bと、胴部10aと側面部10cとによって形成された従動ローラの内部の空間である中空部10dと、により構成される。また、従動ローラ10は、中空射出成型で一体的に形成されている。胴部10aの肉厚は、胴部10aが駆動ローラ1に圧接された時に撓む程度の厚みである。また、胴部10aは胴部10aの軸方向の中央部が外方に凸となるように成型されている。即ち、胴部10aの中央部の径は、端部の径より大きくなるように成型されている。
【0058】
中空部10dには、空気等の気体が封入されている。封入気体の圧力は、外気圧以上の圧力となるとともに、付勢バネ5による圧接力に抗する程度の圧力となるように、製造時に調整されている。そのため、胴部10aの肉厚を薄く形成しても、外気圧によりローラ胴部10aが大きく変形して、シートの挟持力が低下するといった問題が発生することを防止できる。
【0059】
また、側面部10cには、駆動ローラ1と当接した際に、変形してシートの挟持力が低下するのを防止するために、台形状で中空部10d側に突出した凹部10eを環状に複数設けて、側面部10cの強度を補強している。なお、側面部10cに設けた凹部10eの代わりに、台形状で従動ローラ10の外側に突出した凸部を形成しても、凹部10eと同様に側面部10cを補強できる。また、凹部10e及び凸部の形状は、台形に限るものではなく、例えば三角形等、他の形状でもよい。
【0060】
上記のように、従動ローラ10は胴部10a、軸部10b及び側面部10cが同一材料で中空射出成型により一体的に形成されている。よって、図3のようなシート搬送装置内に、従動ローラ10を組み込む際には、従動ローラ10にローラの回転軸を通す組立作業が不要である。また、従動ローラ10の表面が傷ついたり、寿命等により従動ローラ10を交換する際には、従動ローラ10をローラの回転軸から外す必要が無いので、交換作業の作業数が低減できる。更に、交換後の従動ローラ10をリサイクルする場合にも、従動ローラ10の全てが同一材料で形成されているため、例えば軸部10bを分離するといった材料の分離作業を行う必要が無い。また、内部には中空部10dが形成されているために、中空部10dの空気を外部に出したり、破砕したりして、従動ローラ10の体積を小さくすれば、保管に際しても場所をとらないので、容易にリサイクルすることができる。さらに、ローラの全体積のほとんどを占めるローラ胴部が空洞であることにより、従動ローラの形成に際しても、材料の量が節約できる。
【0061】
なお、従動ローラの成型の際には、シート搬送時にシートと当接する胴部10aに成型材料注入用のゲートを設けると、成型後にゲートが胴部10aから突出するため、シートの搬送性を損なう。よって、側面部10c又は軸部10bの先端部にゲートを設けると、成型後にゲートが突出して、シートの搬送性を損なうことはない。また、成型後に、ゲート近傍にバリが形成された際には、不要な部分を削除するか、バリが形成されないように成型条件を調整すればよい。
【0062】
次に、図6乃至10を用いて、図3に示した構成が最も効果を得られることを説明する。図6は、中実の従動ローラと駆動ローラとの当接状態を示す正面断面図である。図7は、軸が挿入された従動ローラと駆動ローラとの当接状態を示す正面断面図である。図8は、中空の従動ローラと駆動ローラとの当接状態を示す正面断面図である。図9は、図6から図8に示した駆動ローラと従動ローラとの接触域における圧接力の強度を示す図である。図10は、図9に示した駆動ローラと従動ローラとの接触域における圧接力を閾値以下に調整した場合の強度を示す図である。
【0063】
なお、図6から図8においては、駆動ローラと従動ローラとの当接状態を説明するため、シート案内部材等の部材は省略して図示する。
【0064】
図6において、駆動ローラ11と駆動ローラ軸2とは、図3に示した構成と同様の構成である。即ち、駆動ローラ軸2には、ネオプレンゴム等のゴム材料で形成された中実で円柱状の駆動ローラ11が、圧入して取り付けられている。また、従動ローラ20の外形は、従動ローラ10と同様の形状であり、胴部20a、軸部20b及び側面部20cが一体的に形成された中実の形状である。従動ローラ20の胴部20aの軸方向の長さよりも、駆動ローラ11の胴部11aの軸方向の長さは長く形成され、駆動ローラ11の胴部11aの両方の端部間に従動ローラ10の胴部10aの両方の端部間が位置するように配置される。また、図外の付勢バネによって、軸部20bは所定の押圧力Fで押圧されて、従動ローラ20は駆動ローラ11に当接している。
【0065】
図7において、駆動ローラ11と駆動ローラ軸2とは、図3に示した構成と同様の構成である。また、従動ローラ21の外形は、従動ローラ10と同様の形状であるが、円柱状で中実のローラ21の側面部21cの略中央に形成された孔部に、金属製または樹脂性の従動ローラ軸19が貫通されて、両方の側面部21cにおいて所定の長さずつ従動ローラ19が突出している。従動ローラ21の胴部21aの軸方向の長さよりも、駆動ローラ11の胴部11aの軸方向の長さは長く形成され、駆動ローラ11の胴部11aの両方の端部間に従動ローラ21の胴部21aの両方の端部が位置するように配置される。また、図外の付勢バネによって、従動ローラ軸19は所定の押圧力Fで押圧されて、従動ローラ21は駆動ローラ11に当接している。
【0066】
図8(A)において、駆動ローラ11と駆動ローラ軸2とは、図3に示した構成と同様の構成である。また、従動ローラ22の外形は、従動ローラ10と同様の形状であり、胴部22a、軸部22b及び側面部22cが一体的に形成された中実の形状である。但し、側面部22cには、強度を補強する凹部または凸部は形成されていない。従動ローラ22の胴部22aの軸方向の長さよりも、駆動ローラ11の胴部11aの軸方向の長さは長く形成され、駆動ローラ11の胴部1aの両方の端部間に従動ローラ22の胴部22aの両方の端部が位置するように配置される。また、図外の付勢バネによって、軸部22bは所定の押圧力Fで押圧されて、従動ローラ22は駆動ローラ11に当接している。
【0067】
図8(B)は、図3に示した構成であり、駆動ローラ軸2が圧入された駆動ローラ1は、従動ローラ10と当接している。前記のように、従動ローラ10の胴部10aの軸方向の長さよりも、駆動ローラ1の胴部1aの軸方向の長さは短く形成され、駆動ローラ1の胴部1aの両方の端部間に従動ローラ10の胴部10aの両方の端部が位置するように配置される。また、図外の付勢バネによって、軸部10bは所定の押圧力Fで押圧されて、従動ローラ10は駆動ローラ1に当接している。
【0068】
なお、図6乃至図8において、各図外の付勢バネの圧接力Fが作用する位置、各従動ローラの径、各従動ローラの軸径、駆動ローラ1・11の径、駆動ローラ軸2の径、各従動ローラと駆動ローラ1・11の接触域長L及び各部材の材質は同一のものとする。また、駆動ローラ11の胴部11aの端部間の長さは、駆動ローラ1の胴部1aの端部間の長さより短いものとし、従動ローラ20、21、22の各胴部20a、21a、22aの端部間の長さは、従動ローラ10の胴部10aの端部間に長さと同じ長さとする。さらに、各軸の中央部に記した1点鎖線m及びnは、それぞれ、従動ローラ及び駆動ローラの回転軸の中心を示すものである。
【0069】
図9に示すように、図6に示した中実の従動ローラ20、及び図7に示した従動ローラ軸19が貫通された従動ローラ21における駆動ローラ11に対する圧接力分布は、多少の相違は有るものの、グラフk2のようになる。グラフk2では、接触域の両端部と中央部の圧接力は両端部が中央部よりやや大きい値となる。ここで、接触域で一方のローラの両端部が当接する部位において、ローラで搬送されるシートにローラ痕が生じる圧接力をh1とする。
【0070】
また、図8(A)に示した中空で側面部22cに補強のない中空の従動ローラ22における駆動ローラ11に対する圧接力分布は、グラフk1のようになる。即ち、グラフk1では、接触域の中央部の圧接力に対して両端部の圧接力は、かなり強くなり、圧接力の差は大きいことを示している。また、従動ローラ22の端部近傍では、シートにローラ痕が生じる。
【0071】
したがって、グラフk1とk2とを比較すると、接触域の両端部と中央部との圧接力の差は、グラフk2の方がグラフk1よりも小さいことを示している。グラフk1がグラフk2に比べて、このように接触域の両端部と中央部との圧接力が異なるのは、以下の理由による。
【0072】
図6に示した軸を一体的に形成した中実の従動ローラ20、及び図7に示した従動ローラ軸が貫通された従動ローラ21は、従動ローラ20、21が回転する際に切欠き部4bと軸部20b及び従動ローラ軸19との摩擦力を低減して回転しやすくするために、胴部20a及び21aの径に比べて軸部20b及び従動ローラ軸19の径を小さく形成している。そのため、ローラ胴部20a、21aの曲げモーメントに対する剛性は、軸部20b、21bの曲げモーメントに対する剛性よりも非常に大きくなる。その結果、軸部20b、従動ローラ軸19は撓むが、ローラ胴部20a、21aは中実であるので、ほとんど撓まない。よって、各従動ローラの胴部と駆動ローラ11の胴部11aとの間の圧接力は、接触域の両端と中央部で大きな差異は生じない。
【0073】
これに対して、図8(A)に示した構成において、側面部22cに補強を行っていない中空の従動ローラ22を駆動ローラ11に圧接する場合は、胴部22aは薄肉であるため剛性が低いので、接触域の端点P1、P2を支点として、図外の付勢バネの圧接力Fが曲げモーメントM1として作用して、胴部22aが湾曲する。その結果、駆動ローラ11の外周面との間の圧接力は、接触域の両端と中央部で大きな差異が生じることになる。また、ローラ側面部22cの剛性も低いので、ローラ側面部22cが変形して回転に支障を与え、シートの搬送が的確に行われなくなる。
【0074】
この図8(A)の場合には、前記のように胴部22aが湾曲すると、圧接力が作用する面積がより狭い範囲になる。そのため、シートに本来加えるべき強さ以上の圧接力を胴部22aの端部に作用させてしまい、シートにローラ痕が付いてしまう。また、ローラ痕の発生を防止すべく圧接力を低下させると、接触域全体に対する圧接力が低下して、シートの保持力が低下することとなる。そのため、シート案内部材との接触によりシート作用する回転モーメント等によるシートの斜行や、重力に対して垂直上方に搬送するような搬送路におけるシートの斜行等が生じてしまう。
【0075】
ところが、図8(B)に示したように、本発明の従動ローラ10では、胴部10aの形状はローラ胴部10aの軸方向中央部において外方に凸となるように成型されている。また、従動ローラ10の胴部10aの端部間に駆動ローラ1の胴部1aの両端部が位置するように配置している。そのため、従動ローラ10と駆動ローラ1の接触域における圧接力分布は、図9に示したグラフk3のようになる。即ち、グラフk1、k2に比べて、端部の圧接力は低下し、中央部の圧接力は増大する。
【0076】
また、付勢バネによる圧接力Fを図10に示すように、接触域で一方のローラの両端部が当接する部位において、他方のローラにローラ痕が生じる圧接力h1を閾値として、その値を越えないように端部の圧接力を調節すると、グラフk1・k2・k3は、それぞれ、グラフk4・k5・k6に示す圧接力の分布となる。
【0077】
よって、図8(B)に示した構成とすることで、グラフk6のように、接触域の中央部と端部の圧接力の差が小さくできるとともに、接触域両端部のローラ痕が生じること無しに、接触域全体の圧接力を上げることができて、シートの斜行等の問題の発生をより確実に防止できる。
【0078】
次に、従動ローラ10の中空部10dにおける気体の圧力調整について、図11・12を用いて以下に説明する。図11は、気体注入部を側面部に設けた従動ローラの概略の形状を示す側面図及び断面図である。図12は、気体注入部を軸部に設けた従動ローラの概略の形状を示す側面図及び断面図である。
【0079】
図5に示した従動ローラ10に中空部10dの圧力調整用の孔等を設けずに、中空部10dが密封された状態になるように、中空射出成型で従動ローラ10を成型すると、成型後、外気で冷却されて従動ローラ10の温度の低下に伴って、中空部10dの気体の温度も低下するので、中空部10dの気体の圧力は徐々に下がる。この時、大気圧と中空部10dとの圧力差により、胴部10aに大気圧が作用して、胴部10aが変形する場合もある。また、従動ローラ10の成型条件により、中空部10dの内圧にはバラツキが生じる。
【0080】
そこで、図11のように、中空部23dと従動ローラ23の外部とを連通する気体注入部23fを設ける。そして、従動ローラ23が常温まで冷却したら、注射器の針のように中空の管状の部材で、従動ローラの常温の空気等の気体を気体注入部23fから注入し、中空部23dの内圧を所定の値にする。その後、気体注入部23fを高温で融着させて、外部との連通を断てば、中空部23dの圧力は常温において略一定に保つことができる。
【0081】
また、図12に示すように、従動ローラ24の軸部24bの一方を管状に成型して、中空部24dと従動ローラ24とを連通する気体注入部24fを設ける。そして、従動ローラ10が常温まで冷却したら、気体注入部24fから気体を注入して、中空部24dの内圧を所定の値にする。その後、外部と連通する気体注入部24fの封入代を融着させて切断し、外部との連通を断てば、従動ローラ23と同様に中空部24dの圧力は常温において略一定に保つことができる。
【0082】
次に、本発明の第1実施形態における別の形態に関して、図13乃至15を用いて説明する。図13は、胴部が軸方向に凹凸した形状の従動ローラの外観を示す側面図及び断面図である。図14は、胴部が軸方向に凹凸した図13とは別の形状の従動ローラの外観を示す断面図である。図15は、側面部が同心円状に凹凸した形状の従動ローラの外観を示す側面図及び断面図である。
【0083】
図13に示す従動ローラ25は、円柱状で円柱の平面部である2つの側面部25cの略中央から所定の長さの軸部25bが突き出た形状である。また、胴部25a、軸部25b及び側面部25cが一体的に形成されており、内部は中空である。ローラ側面部25cには補強のために、軸部25bを中心とした十字形のリブ25gが形成されている。これにより、図5に示した凹部10eと同様の効果を持たせることができる。なお、リブ25gは、上記の形状に限らず、他の形状でもよい。
【0084】
また、胴部25aの軸方向に所定の周期で複数の凹凸を設けた波打った形状とし、各凸部の頂点において径を等しくする。このことにより、胴部25aの強度が向上し、駆動ローラ1と従動ローラ25の接触域の中央部の圧接力を高めることができる。この時、胴部25aの凸部を3ヵ所以上形成した形状とすることにより、シートの保持力をより高めることができる。
【0085】
図14に示す従動ローラ26は、図13に示した従動ローラと略同様の形状であるが、胴部26aの形状が胴部25aとは異なる形状である。即ち、胴部26aは軸方向に所定の周期で複数の凹凸を設けた波打った形状とし、各凸部の頂点において径は等しくするが、両端部に設けた凸部28の径は、他の凸部27の径より小さくする。よって、従動ローラ26の両端部における凸部28の径をD1、他の凸部27の径をD2とすると、Dl<D2となる。これにより、胴部26aの剛性を補強するとともに、駆動ローラ1と従動ローラ26との接触域の中央部における圧接力を、図13に示した従動ローラ25の場合よりもさらに高めて、端部と中央部での圧接力の差異を小さくして、駆動ローラ1と従動ローラ26との間で搬送されるシートにローラ痕を発生させずに、接触域全体の圧接力を高めることができる。
【0086】
図15に示す従動ローラ29は、円柱状で円柱の平面部である2つの側面部29cの略中央から所定の長さの軸部29bが突き出た形状である。また、胴部29a、軸部29b及び側面部29cが一体的に形成されており、内部は中空である。側面部29cは、従動ローラ29の内部が中空であるため、側面部29cの肉厚は薄く形成され、また、側面部29cは同心円状に凹凸を形成した波打った形状であるため、側面部29cは可撓性を有する。この形状であるため、従動ローラ29をシート搬送装置内に設置・離設する際には、軸部29bが形成された側面部29cを、中空部29d側に押し込んで軸方向に変形させる。これにより、容易に従動ローラ29の着脱ができる。側面部29cが変形した際には、中空部29dの内圧が上昇するが、変形した側面部29cは中空部29d内の圧力が低下しようとする反作用によって、元の形状に戻る。
【0087】
本発明の第1実施形態においては、従動ローラの胴部、軸部及び側面部を中空射出成型により一体的に形成した形状であるが、以下に本発明の第2実施形態である従動ローラの胴部と側面部中央に形成した軸受部を中空射出成型により一体的に形成した形状について、図16及び17を用いて説明する。図16は、本発明の第2実施形態の従動ローラの形状を示す側面図及び断面図である。図17は、本発明の第2実施形態の従動ローラと駆動ローラとの当接状態を示す正面断面図である。なお、図17以降の図においては、駆動ローラと従動ローラとの当接状態を説明するため、シート案内部材等の部材は省略して図示する。
【0088】
従動ローラ70は、円柱状で円柱の平面部である2つの側面部70cの略中央に所定の深さで凹に形成された軸受部70jが設けられている。また、胴部70a、側面部70c及び軸受部70jが一体的に形成されている。さらに、内部は中空であり、胴部70a、側面部70c及び軸受部70jに囲まれた空間である中空部70dが形成されている。加えて、側面部70cには、駆動ローラ1と当接した際に、変形してシートの挟持力が低下するのを防止するために、台形状で中空部70d側に突出した凹部70eを環状に複数設けて、側面部70cの強度を補強している。なお、側面部70cに設けた凹部70eの代わりに、台形状で従動ローラ70の外側に突出した凸部を形成しても、凹部70eと同様に側面部70cを補強できる。また、凹部70e及び凸部の形状は、台形に限るものではなく、他の形状でもよい。
【0089】
図17(A)において、回転自在な駆動ローラ軸2には、ネオプレンゴム等のゴム材料で形成された中実で円柱状の駆動ローラ1が、圧入して取り付けられている。また、従動ローラ70は、側面部70cに垂直な方向から両方の軸受部70jに軸62が挿入されて、回転自在に支持されている。また、断面がL字状で弾性を有する板バネ支持部材61の側面部70cに対向し、側面部70cと所定の距離で平行に配置された立設部61aに、軸62が取り付けられている。従動ローラ70の胴部70aと、駆動ローラ1の胴部1aとは当接して配置されている。
【0090】
また、従動ローラ70の取付は、板バネ支持部材61の立設部61aを駆動ローラ軸2と反対側の方向に撓ませて、従動ローラ軸62を従動ローラ10の軸受部10jに挿入すればよい。
【0091】
従動ローラ70は、軸62と軸受部70jとの接触点において、板バネ支持部材61によって所定の押圧力Fで押圧されて、駆動ローラ1に当接している。この場合、本発明の第1実施形態の従動ローラである、例えば図3に示した側面部10bに軸部10bを一体的に成型した従動ローラ10とは異なり、板バネ支持部材11の圧接力Fの接触域端点P3、P4でのモーメントの腕の長さが短い。そのため、胴部70aに対して小さい曲げモーメントM2が作用するので、側面部70cを補強しておけば、胴部70aの湾曲は小さくなる。そして、図3に示したように従動ローラ10の胴部10bの端部間に駆動ローラ1の胴部1aの両端部が位置するようにする必要はなく、駆動ローラ1の胴部1aの両端部間に胴部70cの両端部が位置するように配置しても良い。圧接力を大きくする際には、駆動ローラ1の軸方向の長さを従動ローラ70の軸方向の長さより短くして、従動ローラ70の胴部70aの両端部間に、駆動ローラ1の胴部1aの両端部が位置するように配置する方がよい。それは、接触域の中央部と端部での圧接力の差が大きくならないので、接触域全体の圧接力を大きくでき、シートを安定して挟持できるからである。
【0092】
また、図5に示した本発明の第1実施形態の従動ローラ10のように、ローラ胴部70aの中央部が外方に凸となるように湾曲して形成すると、中央部における圧接力を大きくでき、シートを安定して挟持できる。
【0093】
また、図17(b)に示すように、ローラ胴部70aの胴部70aは円柱状に形成し、駆動ローラ12の胴部12aを外方に凸に形成しても、中央部における圧接力を大きくできるので、同様の効果が得られる。
【0094】
次に、図16に示した従動ローラ70とは、別の形状の従動ローラについて説明する。図18は、本発明の第2実施形態に係る別の形状の従動ローラの外観を示す側面図及びC−C’断面図である。図19は、従動ローラと搬送ローラとの当接状態を示す正面断面図である。
【0095】
図18に示す従動ローラ71は、図16に示した従動ローラと略同様の形状である。但し、胴部71aが胴部70aと異なり、胴部71aはローラ外方に凹となるように形成している。この従動ローラ71を使用する場合、図19に示すように、胴部13aを外方に凸に形成した駆動ローラ13を使用すればよい。即ち、図17(A)に示した構成と同様に配置して、駆動ローラ13と従動ローラ71とを当接して使用する。
【0096】
このような形状にすることで、駆動ローラ13と従動ローラ71との接触域の中央部と端部での圧接力の差を小さくできるので、接触域全体の圧接力を大きくでき、シートを安定して挟持できる。
【0097】
また、図20は、図18に示した従動ローラとは別の形状の従動ローラを示す図である。図20において、従動ローラ72を軸で保持する構成は図17(A)と略同様である。但し、板バネ支持部材61の立設部61aに軸62aを固定して取り付けずに、軸12aの支持部において複数のボールベアリング63を回転自在に配設し、軸62aを回転自在とする。また、従動ローラ72の軸受部72jには、突起部72hを一体的に形成する。そして、軸62aを軸受部72jに挿入して、従動ローラ72を支持する。この構成により、従動ローラ72は回転する際に、軸62aに対して滑ることがなくなり、従動ローラ72の回転むらが発生するのを防止でき、シートの搬送性を向上できる。なお、軸62aの端部において突起部72hが当接する部分を切り欠いて、軸受部72jに軸62aを挿入すると、軸62aと軸受部72jとの当接状態がさらに向上する。
【0098】
さらに、図21は、軸受部が別の形状の従動ローラと駆動ローラの当接状態を示す正面図である。図21において、従動ローラ73を支持する構成は図17(A)と同様である。但し、従動ローラ73の軸受部73jの軸方向の長さを図16に示した従動ローラ70よりも長くする。そして、軸受部73jに作用する板バネ支持部材61の圧接力Fの作用位置(軸62bと軸受部73jとの接触点)を、接触域の端点P5、P6よりも軸方向で従動ローラ73の内側(中央側)に配置する。このような構成にすると、胴部73aには胴部73aを引き延ばす方向に曲げモーメントM3が作用するので、胴部73aの両端部より外側に駆動ローラ1の両端部が位置するように配置しても、従動ローラ73と駆動ローラ1との接触域において、端部と中央部との圧接力の差がより小さくでき、シートの安定搬送性が更に向上する。
【0099】
加えて、図示しないが、図17(A)に示した従動ローラ70の胴部70aの形状を図13・14に示した軸方向に凹凸を繰り返す波打った形状にすることで、駆動ローラ1と従動ローラ70との圧接領域における端部と中央部での圧接力の差異を小さくして、ローラ痕を発生させずに、接触域全体の圧接力を高めることができる。
【0100】
また、図示しないが、図17(A)に示した従動ローラ70の側面部70cを図15に示した同心円状に凹凸を形成した波打った形状にする。側面部70cは可撓性を有するので、従動ローラ70をシート搬送装置内に設置・離設する際には、軸受部70jが形成された側面部70cを、中空部70d側に押し込んで軸方向に変形させることができる。これにより、容易に従動ローラ70の着脱ができる。側面部10cが変形した際には中空部70dの内圧が上昇するが、変形した側面部10cは中空部70d内の圧力が低下しようとする反作用によって、元の形状に戻る。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0102】
(1) 軸部、側面部及び胴部を一体的に形成され、内部が中空の従動ローラの胴部の軸方向の長さよりも、駆動ローラの胴部の軸方向の長さが短くされて、従動ローラの胴部の端部間に駆動ローラの胴部の端部間が当接している。これにより、ローラの組立・分解作業が不要となり、廃棄する際の材料の分別が不要であるため、リサイクル性が高く、また組立・分解作業工数を削減することができる。また、中空射出成型した従動ローラの利用に際して、軸部に作用する圧接力により胴部に作用する曲げモーメントのために胴部が湾曲することがなく、従動ローラが撓むことにより駆動ローラ全体を従動ローラに当接させることが可能となり、駆動ローラと従動ローラとの接触域の端部と中央部との圧接力の差が小さくなり、シートを確実に保持することができる
【0103】
(2) ローラの軸受部、側面部及び胴部が一体的に形成され、内部が中空の従動ローラは軸受部を軸で支持されて従動ローラの胴部に駆動ローラの胴部が当接している。これにより、ローラの組立・分解作業が不要となり、廃棄する際の材料の分別が不要であるため、リサイクル性が高く、また組立・分解作業工数を削減することができる。また、従動ローラは内部が中空であるため、軸受部に作用する圧接力により胴部に作用する曲げモーメントが大きくならないので、胴部が湾曲して駆動ローラと従動ローラとの接触域の端部と中央部との圧接力の差が小さくなり、シートを確実に保持することができる
【0104】
(3) 従動ローラの側面部における軸部または軸受部の周囲に凹部及び凸部、または凹部若しくは凸部を複数形成することにより、ローラ側面部の強度が上がるため、搬送ローラの押圧力による側面部のつぶれが無くなり、シートの搬送性を安定的に確保することができる。
【0105】
(4) 従動ローラの胴部における端部より中央部の径を大きくしていることにより、従動ローラが駆動ローラと当接した際に、押圧力によって中央部が端部と同程度の径となるため、駆動ローラとの当接部において略均等な圧力で用紙を搬送できる。
【0106】
(5) 従動ローラの胴部を軸方向において、その断面が凹凸を繰り返す波打ち状に形成することにより、従動ローラ胴部の面方向の強度が上がるので、用紙の搬送性を向上することができる。
【0107】
(6) 同心円状に凹凸を繰り返す波打った形状を従動ローラの側面部は有するので、従動ローラの側面部は可撓性を有し、従動ローラの着脱が容易となり、作業効率を高めることができる。
【0108】
(7) 内部に突起が形成された従動ローラの軸受部は、軸で支持されているため、従動ローラと軸との滑りを防止し、用紙の搬送性を高めることができる。
【0109】
(8) 駆動ローラと従動ローラとの当接部の端部よりも従動ローラの中央側に、従動ローラの軸受部と軸との接触点は位置するので、従動ローラの軸受部と軸との接触点から押圧力により駆動ローラとの当接部における従動ローラの胴部中央部近傍に作用する曲げモーメントが引っ張りとなるので、従動ローラと駆動ローラとの接触部における圧接力が、端部と中央部とで差異が小さくなり、より確実にシートの搬送ができる。
【0110】
(9) シート搬送装置において、駆動ローラの胴部と従動ローラの胴部が当接して配置され、また駆動ローラと従動ローラとは回転自在に支持され、ローラ間にシートを挟持して搬送し、前記(1) 乃至(8) のいずれかに記載のローラ構造を備えているので、駆動ローラと従動ローラとによってシートを確実に搬送することができるとともに、少ない材料で製造が行え、製造時やリサイクル時に手間をかけることなく容易に製造・リサイクルできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディジタル複写機の全体構成を示す断面図である。
【図2】ディジタル複写機を構成している制御部における各種ユニット部、画像処理部等の全体ブロック構成図である。
【図3】シート搬送装置における搬送ローラの概略の構成を示す正面図及び断面図である。
【図4】シート搬送装置における搬送ローラの概略の構成を示す側面図及び断面図である。
【図5】従動ローラの構造を示した側面図及び断面図である。
【図6】中実の従動ローラと駆動ローラとの当接状態を示す正面断面図である。
【図7】軸が挿入された従動ローラと駆動ローラとの当接状態を示す正面断面図である。
【図8】中空の従動ローラと駆動ローラとの当接状態を示す正面断面図である。
【図9】駆動ローラと従動ローラとの接触域における圧接力の強度を示す図である。
【図10】駆動ローラと従動ローラとの接触域における圧接力を閾値以下に調整した場合の強度を示す図である。
【図11】気体注入部を側面部に設けた従動ローラの概略の形状を示す側面図及び断面図である。
【図12】気体注入部を軸部に設けた従動ローラの概略の形状を示す側面図及び断面図である。
【図13】胴部が軸方向に凹凸した形状の従動ローラの外観を示す側面図及び断面図である。
【図14】胴部が軸方向に凹凸した別の形状の従動ローラの外観を示す断面図である。
【図15】側面部が同心円状に凹凸した形状の従動ローラの外観を示す側面図及び断面図である。
【図16】本発明の第2実施形態の従動ローラの形状を示す側面図及び断面図である。
【図17】本発明の第2実施形態の従動ローラと駆動ローラとの当接状態を示す正面断面図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る別の形状の従動ローラの外観を示す側面図及び断面図である。
【図19】従動ローラと搬送ローラとの当接状態を示す正面図である。
【図20】図19とは別の形状の従動ローラを示す図である。
【図21】軸受部が別の形状の従動ローラと駆動ローラの当接状態を示す正面図である。
【符号の説明】
1−駆動ローラ
2−駆動ローラ軸
6−搬送路
10−従動ローラ
10a−胴部
10b−軸部
10c−側面部
10e−凹部

Claims (9)

  1. 駆動ローラと
    側面部胴部、及び該両側面部から突出する軸部を中空射出成型で一体的に、内部に気体を封入して形成するとともに、該胴部を外部からの圧力で撓む厚みに形成した従動ローラと、
    該軸部を回転自在に支持する切り欠き部と、該従動ローラを該駆動ローラへ付勢する付勢手段と、
    を含み、
    該従動ローラの胴部の軸方向長さよりも該駆動ローラの胴部の軸方向長さを短くし、該従動ローラの胴部の端部間に該駆動ローラの胴部の端部間を当接させ、たことを特徴とするローラ構造。
  2. 駆動ローラと
    中央部に凹形状の軸受部を有する両側面部及び胴部を中空射出成型で一体的に、中空で内部に気体を封入して形成するとともに、該胴部を外部からの圧力で撓む厚みに形成した従動ローラと、
    該軸受部に挿入して、該従動ローラを回転自在に支持する軸部と、
    該軸部が取り付けられ、該軸部を介して従動ローラを該駆動ローラへ付勢する付勢手段と、
    を含み、
    該従動ローラの胴部の軸方向長さよりも該駆動ローラの胴部の軸方向長さを長くし、該駆動ローラの胴部の端部間に該従動ローラの胴部の端部間を当接させたことを特徴とするローラ構造。
  3. 前記従動ローラの側面部における軸部または軸受部の周囲に凹部及び凸部の少なくとも一方を複数形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のローラ構造。
  4. 前記従動ローラの胴部における中央部の径は、端部の径より大きいことを特徴とする請求項1または3に記載のローラ構造。
  5. 前記従動ローラの胴部は、その断面が軸方向に凹凸を繰り返す波打った形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のローラ構造。
  6. 前記従動ローラの側面部は、同心円状に凹凸を繰り返す波打った形状であることを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれかに記載のローラ構造。
  7. 前記従動ローラの軸受部は、内部に突起が形成されたことを特徴とする請求項2、3、5、6のいずれかに記載のローラ構造。
  8. 前記従動ローラの軸受部と前記軸受部を支持する軸との接触点は、前記駆動ローラと前記従動ローラとの当接部の端部よりも前記従動ローラの中央側に位置することを特徴とする請求項2、3、5乃至7のいずれかに記載のローラ構造。
  9. 駆動ローラと従動ローラとが回転自在に支持され、該駆動ローラの胴部と該従動ローラの胴部とが当接して配置され、該駆動ローラと該従動ローラとの間にシートを挟持して搬送するシート搬送装置であって、
    前記請求項1乃至8のいずれかに記載のローラ構造を備えたことを特徴とするシート搬送装置。
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