JP3667326B2 - 血圧測定用二重カフ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オシロメトリック方式の血圧測定に用いるカフに関し、特に、駆血用袋と脈波検出用袋の２つの袋を内部に備えている二重カフに関する。
【０００２】
【従来の技術】
オシロメトリック方式による血圧測定では、一般的に、生体の所定部位に装着したカフの圧迫圧力を徐速降圧させる過程で、カフに伝達される脈波を逐次検出し、その逐次検出される脈波の振幅の変化に基づいて血圧値を決定する。
【０００３】
このようなオシロメトリック方式の血圧測定では、カフの圧迫圧力の徐速降圧過程において、逐次検出される脈波の振幅が急激に大きくなった時点（すなわち振幅の立ち上がり点）の圧迫圧力が最高血圧値とされる。
【０００４】
カフ内に設けられた袋が一つだけであり、その一つの袋により生体の圧迫および脈波の検出の両方を行う場合には、逐次検出される脈波の振幅の立ち上がり点が不明確なために、決定される最高血圧値が不正確となってしまう場合がある。この原因は、カフの圧迫圧力が最高血圧値よりも高い場合であっても、カフの圧迫圧力が最高血圧値に近くなると、カフの上流端付近における動脈の脈動の影響が大きくなり始め、その脈動がカフに伝達されるからである。特に、足首など、カフによりその部位の動脈を完全に止血させることが困難な部位では、カフの圧迫圧力が最高血圧値よりも高い圧力であっても、カフの上流端付近での動脈の脈動が大きくなり易いので、脈波の振幅の立ち上がり点が不明確になり易い。
【０００５】
上記問題点を解決するために、動脈を駆血するための駆血用袋と、その動脈からの脈波を検出するための脈波検出用袋の２つの袋を備えたカフが提案されている。たとえば、特許文献１に記載されたカフがそれである。上記特許文献１に記載されたカフは、脈波検出用袋であるインナーカフが、駆血用袋であるアウターカフの内周面側（生体側）の略中央に配置されており、アウターカフの上流端付近で動脈の脈動が再開しても、その脈動はインナーカフに直接的には伝達されないので、インナーカフにより検出される脈波の振幅の立ち上がりが明確になり、最高血圧値の精度が向上する。
【０００６】
さらに、特許文献１では、アウターカフに生じた振動がインナーカフに伝達されることを防止するために、インナーカフの外側に振動遮蔽板が接着されている。この振動遮蔽板により、インナーカフにアウターカフからのノイズが伝達されることが防止されるので、血圧測定精度が一層向上する。
【０００７】
【特許文献１】
特開平５−２６９０８９号公報
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献１のように、インナーカフ（すなわち脈波検出用袋）の外側に振動遮蔽板を設けると、血圧測定のために駆血用袋および脈波検出用袋内の圧力が徐速変化させられているときに、脈波検出用袋が振動遮蔽板に対して相対移動してしまい、その相対移動すなわち脈波検出用袋と振動遮蔽板が擦れる際に生じるノイズが、脈波検出用袋から出力される信号に混入して血圧測定精度が低下してしまうという問題があった。
【０００９】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、血圧測定中に摩擦によって生じるノイズが少ない血圧測定用二重カフを提供することにある。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、(a)生体の所定部位の動脈を駆血するための駆血用袋と、(b)その駆血用袋が前記生体に装着されたときにその生体とその駆血用袋との間に位置するように、その駆血用袋の内周面側に配置され、前記動脈の脈波を検出する脈波検出用袋と、(c)前記駆血用袋に生じた振動が、その脈波検出用袋に伝達されることを防止するために、その駆血用袋とその脈波検出用袋との間に設けられた振動遮蔽部材とを備えた血圧測定用二重カフであって、(d)前記振動遮蔽部材と前記脈波検出用袋との間に、その振動遮蔽部材とその脈波検出用袋との接触を防止する布製の隔離部材が介在させられていることを特徴とする。
【００１１】
【発明の効果】
この発明によれば、振動遮蔽部材と脈波検出用袋との間に介在させられている隔離部材により、脈波検出用袋と振動遮蔽部材とが接触することが防止され、代わりに、振動遮蔽部材と隔離部材、および、隔離部材と脈波検出用袋とが接触させられるので、振動遮蔽部材と隔離部材との間および隔離部材と脈波検出用袋との間で摩擦が生じるが、隔離部材が布製であることから、振動遮蔽部材と隔離部材との間の摩擦係数および隔離部材と脈波検出用袋との間の摩擦係数は、振動遮蔽部材と脈波検出用袋との間の摩擦係数よりも小さくなる。従って、血圧測定中に摩擦によって生じるノイズが減少する。
【００１２】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図１は、本発明が適用された足首血圧測定用の二重カフ１０の外周面側を展開した状態で示す図であり、図２は、図１に示す二重カフ１０の内周面側を展開した状態で示す図である。
【００１３】
図１の二重カフ１０は、やや扇状に湾曲させられている帯状の形状を有し、幅方向長さが約１４cmである。この二重カフ１０の一方の端には、二重カフ１０の幅方向に２つに分けられた細帯部１２が形成されている。この細帯部１２側が足首に巻き付けられる際の先端側となる。この細帯部１２の内周面側には面ファスナ１４が貼り付けられており、また、他方の端すなわち足首に巻き付けられる際の基部となる端側の外周面には、上記面ファスナ１４と係合する面ファスナ１６が貼り付けられている。二重カフ１０が図示しない足首に巻き付けられると、内周面に貼り付けられた面ファスナ１４と外周面に貼り付けられた面ファスナ１６とが係合することにより、二重カフ１０は足首に固定される。
【００１４】
二重カフ１０の内周面側の表面には、長手方向の略中央から基部側の端にかけて内周表面を形成する表布１８が配置されており、その表布１８と二重カフ１０の外形と略等しい形状を有する基布２０とが、二重カフ１０の外縁を一周する外縁布２２とともに縫い合わせられることにより収容袋２４が形成されている。脈波検出用袋２６および駆血用袋２８は、この収容袋２４内に収容されている。
【００１５】
図１に示されるように、駆血用袋２８は、略矩形状の袋であり、その幅方向の長さは、収容袋２４の幅方向長さ（すなわち二重カフ１０の幅方向長さ）よりもやや短い長さであり、長手方向長さも収容袋２４の長手方向長さよりもやや短い長さである。また、図２に示されるように、脈波検出用袋２６も略矩形状の袋であり、その幅方向長さは収容袋２４の幅方向長さの１／３〜１／４程度であり、長手方向長さは収容袋２４の長手方向長さよりもやや短い長さである。これら駆血用袋２８および脈波検出用袋３０は、柔らかい樹脂製である。
【００１６】
図１に示されるように、二重カフ１０の外周面には２つの接続管３２、３４が内部から突き出している。これら接続管３２、３４は、それぞれ脈波検出用袋２６および駆血用袋２８と一体化させられている。この接続管３２、３４に図示しない配管がそれぞれ接続され、その図示しない配管を介して脈波検出用袋２６および駆血用袋２８にそれぞれ空気が供給される。
【００１７】
図３は図１のIII-III線断面図である。図２、図３に示すように、収容袋２４内には、長手方向長さが表布１８と略同じであり、幅方向長さが表布１８の半分程度である矩形状のシート３０が、その１対の長辺のうち足首に装着されたときに下流となる側の長辺が収容袋２４の下流側の長辺と略重なるように配置されており、そのシート３０の幅方向の両側の縁が表布１８に接着させられることにより小収容室３６が形成されており、脈波検出用袋２６は、その小収容室３６内に収容されている。なお、このシート３０は柔らかい樹脂製である。
【００１８】
また、図３に示すように、脈波検出用袋２６の外周面側には、隔離部材として機能する滑り布３８が配置され、さらに、その外周面側には振動遮蔽部材として機能する振動遮蔽板４０が配置されている。これら、滑り布３８および振動遮蔽板４０の幅方向（図３の横方向）の長さは、脈波検出用袋２６と略同程度である。
【００１９】
図４の平面図および図５の正面図に示されるように、上記滑り布３８および振動遮蔽板４０はいずれも長手矩形状とされている。滑り布３８は、振動遮蔽板４０と接触する側の面に起毛処理が施されたナイロン織布により構成され、長手方向長さは脈波検出用袋２６の長手方向長さよりもやや長くされている。振動遮蔽板４０は高密度ポリエチレン製であり、長手方向長さが滑り布３８の長手方向長さよりもさらに少し長くされ、厚さが0.5mmとされている。これら脈波検出用袋２６、滑り布３８および振動遮蔽板４０は、脈波検出用袋２６の長手方向両端（図５のＡ点）において互いに縫い合わせられることにより一体化させられている。
【００２０】
図３に戻って、駆血用袋２８は、収容袋２４内においてシート３０よりも外周面側に収容されている。収容袋２４内には、駆血用袋２８の外周面側にさらに第１付勢板４４および第２付勢板４６が収容されている。これら第１付勢板４４および第２付勢板４６は、二重カフ１０を筒状となるように付勢するためのものであり、たとえば硬質樹脂により構成される。
【００２１】
前記振動遮蔽板４０は、駆血用袋２８に生じた圧力振動が脈波検出用袋２６に伝達されるのを防止するためのものである。また、滑り布３８は、振動遮蔽板４０に対する脈波検出用袋２６の相対移動する際に生じる摩擦を低くするためのものである。
【００２２】
このように構成された二重カフ１０を用いた血圧測定は、たとえば以下のようにして行う。まず、二重カフ１０を図示しない足首に装着する。二重カフ１０を足首に装着した状態では、脈波検出用袋２６は駆血用袋２８と足首との間に位置させられる。続いて、駆血用袋２８および脈波検出用袋２６にそれぞれ空気を供給して、駆血用袋２８および脈波検出用袋２６の内圧を足首における最高血圧値よりも高い値に設定された目標圧力値（たとえば250mmHg）まで一旦昇圧し、その後、駆血用袋２８および脈波検出用袋２６の内圧を徐速降圧させ、その間に足首の動脈から脈波検出用袋２６に伝達される圧力振動（すなわち足首の脈波）を逐次検出して、その足首の脈波の振幅の変化に基づいて血圧値を決定する。なお、この圧迫圧力の変化過程では、駆血用袋２８および脈波検出用袋２６の膨脹あるいは収縮に起因して、脈波検出用袋２６が振動遮蔽板４０に対して相対移動することがあるが、滑り布３８により、脈波検出用袋２６に対する振動遮蔽板４０の相対移動は低摩擦となるので、その相対移動の際に生じるノイズは比較的少ない。
【００２３】
上述の実施例に示した二重カフ１０は、振動遮蔽板４０と脈波検出用袋２６との間に介在させられている滑り布３８により、脈波検出用袋２６と振動遮蔽板４０とが接触することが防止され、代わりに、振動遮蔽板４０と滑り布３８、および、滑り布３８と脈波検出用袋２６とが接触させられるので、振動遮蔽板４０と滑り布３８との間および滑り布３８と脈波検出用袋との間で摩擦が生じるが、滑り布３８が布製であることから、振動遮蔽板４０と滑り布３８との間の摩擦係数および滑り布３８と脈波検出用袋２６との間の摩擦係数は、振動遮蔽板４０と脈波検出用袋２６との間の摩擦係数よりも小さくなる。従って、血圧測定中に摩擦によって生じるノイズが減少する。
【００２４】
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【００２５】
たとえば、前述の実施例では、滑り布３８はナイロン製の織布であったが、滑り布は、麻、木綿などの天然繊維であってもよく、また、ナイロン以外の化学繊維であってもよい。また、不織布であってもよい。
【００２６】
また、前述の実施例では、滑り布３８は、振動遮蔽板４０と接触する側の面に起毛処理が施されていたが、反対側の脈波検出用袋２６と接触する側の面が起毛処理されていてもよいし、両面とも起毛処理されていなくてもよい。
【００２７】
また、前述の実施例では、振動遮蔽部材として用ている振動遮蔽板４０は高密度ポリエチレン製であったが、振動遮蔽板４０の材質は、前述の実施例に限定されず、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、塩化ビニルなどを用いてもよい。また、液体またはゲルなどの非圧縮性流体が内部に充填された袋が振動遮蔽部材として用いられてもよい。
【００２８】
なお、本発明はその主旨を逸脱しない範囲においてその他種々の変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明が適用された足首血圧測定用の二重カフの外周面側を展開した状態で示す図である。
【図２】図１に示す二重カフの内周面側を展開した状態で示す図である。
【図３】図１のIII-III線断面図である。
【図４】脈波検出用袋、滑り布、振動遮蔽板を示す平面図である。
【図５】脈波検出用袋、滑り布、振動遮蔽板を示す正面図である。
【符号の説明】
１０：二重カフ
２６：脈波検出用袋
２８：駆血用袋
３８：滑り布（隔離部材）
４０：振動遮蔽板

Claims (1)

1. 生体の所定部位の動脈を駆血するための駆血用袋と、
   該駆血用袋が前記生体に装着されたときに該生体と該駆血用袋との間に位置するように、該駆血用袋の内周面側に配置され、前記動脈の脈波を検出する脈波検出用袋と、
   前記駆血用袋に生じた振動が、該脈波検出用袋に伝達されることを防止するために、該駆血用袋と該脈波検出用袋との間に設けられた振動遮蔽部材と
   を備えた血圧測定用二重カフであって、
   前記振動遮蔽部材と前記脈波検出用袋との間に、該振動遮蔽部材と該脈波検出用袋との接触を防止する布製の隔離部材が介在させられていることを特徴とする血圧測定用二重カフ。

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