JP3665158B2 - 二輪車用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆるスパイラルベルト構造を採用した二輪車用空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
二輪車用空気入りラジアルタイヤにおいて、スパイラルベルト構造を採用したものは、交差ベルト構造のものと比較して発熱が少なく高速性能に優れ、高速安定性にも優れる利点がある反面、コーナーリングフォースの絶対値が若干低いという欠点がある。このため、スパイラルベルト層を2層にする試みがなされた。これによりコーナーリングフォースの絶対値が向上し上記欠点は解消されるが、新たに高速耐久性およびベルト耐久性が低下するという問題が生じた。これは、上下2層のスパイラルコード層がタイヤ製造段階においてタイヤ加硫時に圧着されて上下のコードどうしが互いに密着するために生じる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、2層のスパイラルコード層の上下のコードどうしがタイヤ加硫時に互いに密着するのを防止し、もって高速耐久性およびベルト耐久性の低下を来さない二輪車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【0004】
【発明を解決するための手段】
そこで、本発明は、単線または並列した複数本の有機繊維コードを被覆ゴム中に埋設してなるリボン状のゴム被覆コード層を、タイヤの略周方向に向かう角度でスパイラル状に順次タイヤ軸線方向に位置をずらしつつ巻回してなる2層のスパイラルコード層と、両スパイラルコード層間に配置される補強層とを有する二輪車用空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記補強層を、直径または最大径が0.1〜100μmで長さが8mm以上の繊維をゴムで被覆一体化した1層以上の繊維/ゴム複合体からなる構造とした。
【0005】
スパライラルベルト構造の二輪車用空気入りラジアルタイヤは、周方向の剛性が高いため、高速走行した場合でもスパイラルコード層がラジアル方向(タイヤ径方向)にせり出すことがないため、発熱が小さく、接地性もよいという特徴があるが、タイヤ軸方向の剛性が弱いため交差ベルト構造のものに比較してコーナーリングフォースの絶対値が小さいという欠点がある。これを解決するため、発明者らはスパイラルコード層を2層にすることを試みた結果、交差ベルト構造のものに比較しても十分なコーナーリングフォースを得ることが可能となった。
【0006】
しかしながら、高速耐久性およびベルト耐久性が低下するという問題が新たに露呈してきた。この原因を詳細に調べた結果、2層のスパイラルコード層がタイヤ加硫時に圧着されて上下2層のコードどうしが互いに密着し、走行時にこれらのコードが互いに擦れ合うため高速耐久性およびベルト耐久性が低下するということを見出した。
【0007】
これを解決するために2層のスパイラルコード層の間にゴムシートを挿入することを試みたが、スパイラルコード層の剛性が高いため加硫時にゴムが押し出され、若干の改善は見られるものの依然として高速耐久性およびベルト耐久性が低下するという欠点は克服することができなかった。
【0008】
そこで、発明者らは、繊維を交差型多方向配列してなる不織布をゴム成分で被覆してなる補強層を2層のスパイラルコード層の間に挿入配置することを試みた結果、加硫時に2層のスパイラルコード層の間で上下のコードどうしが密着しなくなった。これは、不織布がある程度の剛性をもっており、2層のスパイラルコード層間でタイヤ加硫時に上下コードの密着を防ぐ役割をしているためである。さらに、補強層を配置したことによりタイヤ軸方向の剛性も高くなるため操縦安定性の向上も見られた。
【0009】
不織布は、タイヤ用繊維コードのすだれ織りとは異なり、多数本の繊維束を撚り合わせたり、織り合わせたりせずに直接に布としたものであり、その製法としては、カーディング法、抄紙法、メルトブロー法、スパンボンド法などがある。
【0010】
本発明においては、繊維/ゴム複合体は、繊維の間にゴムが含侵する構造を有していること、比較的長い距離、広い範囲で繊維とゴムが相互に連続層を形成できる構造を有していることが重要な基本要件である。このため、繊維/ゴム複合体に適合できる上記不織布および不織布以外の繊維の要件として、繊維の直径または最大径が0.1〜100μmであることを要する。好ましくは0.1〜50μmである。但し、断面形状は円状のもの、円と異なる断面形状のもの、中空部を有するもの等を用いることができる。また、異なる材質を内外層に配置した構造や、米字型、花弁型、層状型等の複合繊維も用いることができる。
【0011】
また繊維の長さは8mm以上を要する。好ましくは10mm以上である。繊維の長さが8mm未満では、繊維−繊維間を交絡させることが困難となり、繊維/ゴム複合体の強度を保持できなくなる。
【0012】
繊維/ゴム複合体は、厚さが0.05〜2.0mm(より好ましくは0.1〜0.5mm)の範囲にあり(20g/cm2 の加圧下で測定)、繊維成分が4〜50重量%の範囲にあり、目付け(1m2 当りの重量)が10〜300g(より好ましくは10〜100g)の範囲内にあることが好ましい。
【0013】
厚さが0.05mm未満では繊維の均一性を維持することが困難となり、ゴムとの複合体としての強度、剛性が不足し、コードの密着防止効果が十分でない。一方、2.0mmを超えるとゲージが厚くなり、タイヤ部材としての観点より好ましくない。
【0014】
繊維成分が4重量%未満では繊維/ゴム複合体中の繊維の均一性を維持することが困難になって繊維のムラの多い繊維/ゴム複合体となり、加硫後の繊維/ゴム複合体とした時の強度、剛性、破断伸度のバラツキが大きくなるため、好ましくない。一方、50重量%を超えるとゴムの流動性にもよるが、繊維間の空隙へのゴムの浸透が不完全となり、タイヤ部材として考えた場合に、好ましくない。
【0015】
目付けが10g未満では繊維/ゴム複合体中の繊維の均一性を維持することが困難になって繊維のムラの多い繊維/ゴム複合体となり、加硫後の繊維/ゴム複合体とした時の強度、剛性、破断伸度のバラツキが大きくなるため、好ましくない。一方、300gを超えるとゴムの流動性にもよるが、繊維間の空隙にゴムが浸透しなくなり、タイヤ部材として考えた場合に、好ましくない。
【0016】
繊維の素材としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリビニルアルコールに代表される合成素材や、レーヨン、セルロース等の天然繊維の単独または2種類以上混合したものを挙げることができるが、上記以外の繊維素材であってもよい。また、繊維自身は、内層、外層を異なる素材とする2層構造の繊維も使用することができる。
【0017】
補強層はタイヤ軸方向に沿う幅寸法がスパイラルコード層のタイヤ軸方向に沿う幅寸法よりも大きくする方が良い。これによってスパイラルコード層の両端部をカバーしこの部分の故障を防ぐことができる。
【0018】
加硫工程での熱・圧力により繊維間にゴムが浸透(または進入)するため、一般的には繊維への特別の接着剤の塗布等の処理は要らないが、一層の接着力が必要な場合には、接着処理をしても良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に従う二輪車用空気入りラジアルタイヤの幅方向断面図である。
【0020】
図1に示すタイヤTは、折返し端部2Aをビード3及びフィラー4の内側から外側に巻き上げて成る2層のカーカス層2、2をタイヤ周方向に対し75度のコード角度で交差配置して成るカーカス1と、このカーカス1の半径方向外側に位置するベルト5とを有している。
【0021】
ベルト5は、単線の有機繊維コードを被覆ゴム中に埋設してなるゴム被覆コードをタイヤ周方向に沿う角度でスパイラル状に順次タイヤ軸方向に位置をずらして巻回してなる上下2層のスパイラルコード層6、6と、両スパイラルコード層6、6間に配置された1層の不織布/ゴム複合体(繊維/ゴム複合体)から成る補強層7とから構成されている。
【0022】
補強層7を構成する不織布/ゴム複合体は、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維を交差型多方向配列してなる不織布を上下よりゴムで被覆して成る。また、カーカス層2を構成するコードはポリアミド繊維からなり、スパイラルコード層6を構成するコードはポリアラミド繊維からなる。
【0023】
スパイラルコード層6、6は、単線の他、並列した複数本の有機繊維コードを被覆ゴム中に埋設してなるリボン状のゴム被覆コード層を、隣接する側部どうしを突き合わせた状態でまたは一部を重ねた状態でタイヤ軸線方向に位置をずらしつつスパイラル状に巻回することによって構成するようにしてもよい。またカーカス1は2層のカーカス層の他、1層のカーカス層からなってもよい。
【0024】
【実施例】
実施例では、タイヤの構造を図1に従って配置し、繊維/ゴム複合体は、表1に示す構造を有する不織布をゴムと複合化したものを2層のスパイラルコード層の間に配置した。かかる構造で、サイズ160/60R17の二輪車用空気入りラジアルタイヤ(リムサイズはMT4.50)を試作した。また、補強層を用いないスパイラルコード層1層とスパイラルコード層2層の従来の二輪車用空気入りラジアルタイヤを比較例とした。比較例の他の構造は実施例のタイヤと同一構造である。
【0025】
実施例、比較例の各タイヤの評価を以下の項目について実施した。
(ベルト耐久性)(高速耐久性)
耐久ドラム試験を実施し、ドラム上で試験タイヤを走行させた。比較例1のタイヤが故障するまでの距離を100として指数評価した。
(実車操縦安定性)
試験タイヤを400ccの自動二輪車の後輪に装着しドライバーがテストコースを走行してフィーリング評価した。比較例1を100として指数評価した。
選られた結果を表1に併記する。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、スパイラルベルト構造の二輪車用空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト耐久性および高速耐久性の低下を防止できるとともに、操縦安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるタイヤの幅方向断面図である。
【符号の説明】
1 カーカス
2 カーカス層
3 ビード
4 フィラー
5 ベルト
6 スパイラルコード層
7 補強層
Claims (6)
- 単線または並列した複数本の有機繊維コードを被覆ゴム中に埋設してなるリボン状のゴム被覆コード層を、タイヤの略周方向に向かう角度でスパイラル状に順次タイヤ軸線方向に位置をずらしつつ巻回してなる2層のスパイラルコード層と、両スパイラルコード層間に配置される補強層とを有する二輪車用空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記補強層は、直径または最大径が0.1〜100μmで長さが8mm以上の繊維をゴムで被覆一体化した1層以上の繊維/ゴム複合体からなることを特徴とする二輪車用空気入りラジアルタイヤ。 - 前記繊維/ゴム複合体は、0.05〜2.0mmの範囲内の厚さ(20g/cm2 の加圧下で測定)を有することを特徴とする請求項1に記載の二輪車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記繊維/ゴム複合体は、繊維を交差型多方向配列してなる不織布をゴム成分で被覆して成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二輪車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記繊維/ゴム複合体は、繊維成分が4〜50重量%の範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の二輪車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記被覆/ゴム複合体は、繊維成分の目付けが10〜300g/m2 の範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の二輪車用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記補強層は、そのタイヤ軸方向に沿う幅寸法が前記スパイラルコード層のタイヤ軸方向に沿う幅寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の二輪車用空気入りラジアルタイヤ。
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