JP3664427B2 - ゴルフボール射出成形用金型およびゴルフボールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゲートチップなどを防止して生産性を向上しうるゴルフボール射出成形用金型およびゴルフボールの製造方法に関し、特にゴルフボールのコアを被覆する樹脂カバーを射出成形するのに好適なものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばコアの外側に樹脂からなるカバー層を形成してゴルフボールを製造する場合、図6、およびそれを分割面bから見た図7に示す如く、上下に接離可能な一対の割型a1、a2からなる金型aが用いられる。前記各割型a1、a2は、分割面bが当接することにより、ゴルフボールの外表面を成形しうる球状のキャビティcと、このキャビティcの外側に同心円状で配されるリング状ランナー部dと、このリング状ランナー部dに一端が接続されて該リング状ランナー部dに溶融材料を供給する主ランナー部e(図7に示す)と、一端が前記キャビティcで開口しかつ他端が前記リング状ランナー部dに連通する横断面積を絞った複数個のゲートgとを具える。なお前記リング状ランナー部eは、その内周部に、円周方向の材料の流れを半径方向へと導くノズル部fを含む。
【0003】
前記キャビティcの中には、該キャビティcと中心を揃えてゴルフボールのコアhが配置される。そして、そのカバーとなる例えばアイオノマー樹脂等の溶融材料は、前記主ランナー部eからリング状ランナー部dへと導入されるとともに、各ノズル部fよりゲートgを通り前記キャビティc内へと射出供給され、コアhの回りを覆って固化する。
【0004】
ところで、このような金型aにてゴルフボールを製造した場合、成形後に型からゴルフボールを取り外すと、図8に示す如く、ゴルフボールiには、前記リング状ランナー部d、ノズル部f及びゲートg内でそれぞれ残存しかつ固化したリング状固化物jおよび放射状固化物kなども一体となって成形される。なお放射状固化物kは、前記ノズル部f内で固化した相対的に大径のノズル固化物mと、前記ゲートg内で固化した小径のゲート固化物nとを含む。
【0005】
このような固化物jないしkをゴルフボールiから除去するために、通常、放射状固化物k、中でも横断面積が小さく剛性の小さいゲート固化物nを断面Yなどにて切断ないし破断する、いわゆるゲートカット処理が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記ゲートgは、通常、横断面積を小かつ一定としたままキャビティcで開口しているため、ゴルフボールiを金型aから取り外す脱型時や前記ゲートカット処理時においては、ゲート固化物nとゴルフボールiとの境界部pに大きな応力が集中しやすくなる。このような応力集力は、前記境界部pないしこれに非常に接近した位置でゲート固化物nの破断をもたらし、ゴルフボールiの表面がえぐれたり部分的に欠落した欠損部(以下、このような損傷を「ゲートチップ」という。)を生じさせる場合がある。このようなゲートチップは、外観不良としてゴルフボールの生産性を低下させる不具合がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑み案出なされたもので、ゲートに、射出方向上流側に配される小径部と、下流側に配されかつキャビティで開口するとともに横断面積を前記小径部よりも大としたフレア部とを含ませることを基本として、ゴルフボールの表面にゲートチップが生じるのを抑制し前記問題点を解決しうるゴルフボール射出成形用金型およびゴルフボールの製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、分割面Xを当接させる閉止により、ゴルフボールの外表面を成形しうる球状のキャビティCが形成される接離可能な一対の割型を具え、
前記球状のキャビテイに一端が開口しかつ他端が溶融材料を供給されるランナーに連通するゲートを有し、1ピースボール、2〜4ピースゴルフボールのカバー,又は糸巻きボールのカバーを成形するゴルフボール射出成形用金型であって、
前記ゲートは、前記分割面Xに凹設された窪みにより形成され、
かつ分割面Xには円周方向に沿って、複数本のゲートが隔設されるとともに、
該ゲートは、射出方向上流側に配される小径部と、小径部に連なりかつ前記一端が前記キャビティで開口するフレア部とを含み、
このフレア部は、射出方向と直角な横断面積が前記小径部の横断面積よりも大であることを特徴とする。
なお、そのとき、前記ゲートは、一方の割型の分割面Xに凹設された窪みと、他方の割型の分割面Xとによって形成することができる。
【0009】
また前記フレア部は、前記一端での横断面積(Sf)が、前記小径部の横断面積(Sg)の1.5〜16.0倍とすることが望ましい。
【0010】
また、これらのゴルフボール射出成形用金型を用いた成形工程を含むゴルフボールの製造方法とすることが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本実施形態のゴルフボール射出成形用金型(以下、単に「金型」ということがある。)1の断面図を、図2には、その上部の割型1aを分割面Xから見た平面図を示している。
【0012】
本実施形態の金型1は、接離可能な一対の割型1a、1bを有し、かつその分割面Xを当接させる閉止により、ゴルフボールB(図3に略示)の外表面を成形しうる球状のキャビティCが形成される。また、前記割型1a、1bの閉止により、本例ではキャビティCを囲む同心円状のリング状ランナー部3と、このリング状ランナー部3に一端が接続されて該リング状ランナー部3に溶融材料を供給する主ランナー部2と、一端Sが前記キャビティCで開口しかつ他端Eが前記リング状ランナー部3に連通する複数のゲート5が形成されるものを例示している。
【0013】
前記キャビティCは、配列設計されたボール表面のディンプルを成形するための複数の突起(図示せず)が形成される。なお前記金型1の分割面Xは、例えば前記キャビティCの球中心を通る平面をなす。このため本例の各割型1a、1bには、前記キャビティCを2分割した半球状のくぼみがそれぞれ形成されるものが示される。なお図示していないが適宜のエアベントなどが該キャビティCへと接続されている。
【0014】
前記リング状ランナー部3は、本例では連続したリング状を例示しているが、例えば主ランナー部2との接続口の反対側の部分に途切れ部を有していても良い。また、本例では、リング状ランナー部3は、周方向にのびるリング部3aと、このリング部3aの内周部3iに、半径方向内側に小長さでのびるノズル部3bを有するものを例示している。そして、これらの主ランナー部2、リング状ランナー部3により溶融した成形材料の主たる流路としてのランナーRが形成される。またこれらのランナーRの横断面は、種々の形状が採用できる。
【0015】
前記ノズル部3bは、前記リング部3a内を円周方向に流れる溶融材料を、放射方向内側、つまりキャビティC側へと円滑に導きうる。このノズル部3bは、例えばリング部3aの横断面積と同じか又は若干小さな横断面積で形成され、射出方向の下流側となる前記ゲート5に比べると大きな横断面積で形成され、該ゲート5へと材料を送給しうる。なお本明細書において、横断面積と言うときは、特に断りがない限り、溶融材料の射出方向と直角な方向の断面積とする。
【0016】
前記ゲート5は、本例では前記リング部3aの円周方向に沿って隔設された複数本を例示している。前記ゲート5の配設本数としては、例えば4〜15本、好ましくは6〜10本程度が望ましく、本例では8本を例示している。このゲート本数が過小のとき、射出成形時の溶融材料の充填効率が低下する傾向があり、逆に多すぎるとディンプルとの干渉が生じる虞がある。またこれらのゲート5は、円周方向に等間隔で配されるとともに、その射出方向がキャビティCの中心を向く放射状とするのが望ましい。
【0017】
そして、本実施形態のゲート5は、図1、図2に示す如く、射出方向の上流側に配される小径部5aと、下流側に配されかつ前記一端SでキャビティCに開口するとともにこの一端Sの横断面積Sfが前記小径部5aの横断面積Sgよりも大であるフレア部5bとから構成されるものを例示している。
【0018】
前記小径部5aは、その横断面積が前記ノズル部3bに比して絞りこまれ、かつ本例では軸方向に一様であるものが例示される。また、その横断面形状は、図5(b)の如く横長矩形としたものを例示し、例えば上部の割型1aに凹設された窪みと、割型1bの分割面Xとによって形成されているものを示す。また前記フレア部5bは、前記一端Sにおいて、図5(a)に示すような半円状の断面形状のものを例示している。なお、フレア部5bは、前記小径部5aとの接続部から横断面積が漸増しているものを示す。
【0019】
このため、図3に示すように、成形されたゴルフボールBは、リング部3a内で残存しかつ固化したリング状固化物12、ノズル部3b内で残存しかつ固化したノズル固化物11、更にゲート5内で残存しかつ固化したゲート固化物10とが一体的に形成される。ここで、前記ゲート固化物10は、前記フレア部5bにて固化したフレア固化物7と、前記小径部5aにて固化することにより前記フレア固化物10よりも横断面積が小の小径部固化物9とを含むものである。
【0020】
従って、図4に示すように、ゴルフボールBの外表面とゲート固化物10との境界部P1は、前記フレア固化物7によって補強することができる。他方、フレア固化物7と小径部固化物9との境界部P2や、小径部固化物9自体の剛性は、前記境界部P1に比して相対的に小となる。このため、脱型時やゲートカット処理時などでは、この境界部P2ないし小径固化物9で切断されやすくなるため、ゲートチップの発生を効果的に防止しうる。
【0021】
なお前記ゴルフボールBの表面には、ゲートカット処理後もフレア固化物7が残存することとなるが、これは、従来も行われていたバフ研磨処理やトリミング処理などの工程において容易に除去することができ、これに伴う生産性の悪化といった不具合もない。
【0022】
また上述の効果は、前記フレア部5bの前記一端Sでの横断面積Sfを、例えば前記小径部5aの横断面積Sgの1.5〜16.0倍とすることにより、さらに向上させることができる。
【0023】
前記フレア部5bの前記横断面積Sfが、小径部5aの横断面積Sgの1.5倍未満のときには、フレア部5bで固化するフレア固化物7によるゴルフボール表面補強効果が相対的に低下していく傾向があり、逆に16.0倍を超えると、フレア固化物7がディンプルと干渉したり、あるいはディンプルの設計自由度を阻害したり、さらには研磨に時間を要するなどの問題を招く虞がある。このような観点より、フレア部5bの前記横断面積Sfを、小径部5aの横断面積Sgの1.9〜10.0倍、さらに好ましくは1.9〜7.0倍とすることが望ましい。
【0024】
なお前記小径部5aの横断面積Sgが過度に小であると、成形後に割型1a、1bを離間し、成型品を脱型する時点で既に小径部固化物9などで切断され、成形品の一部が全型1内へと残り、成形サイクルが中断されることが考えられる。またフレア部5bの横断面積Sfが小さすぎることにより、小径部5aの横断面積Sgが過小にせざるを得ない場合がある。また小径部5aの横断面積Sgが過大であると、これに応じてフレア部5bの横断面積Sfが大きくなってディンプルとの干渉等が考えられる。
【0025】
このような観点より、前記小径部5aの横断面積Sgは、0.125〜0.975mm2 、より好ましくは0.200〜0.800mm2 とするのが望ましい。同様に、フレア部5bの横断面積Sfは、0.7〜2.0mm2 、より好ましくは1.0〜1.7mm2 とするのが望ましい。ただし、これらの数値範囲に限定されるものではない。
【0026】
また、前記小径部5a、フレア部5bの横断面形状は、上記実施形態では図5(b)と図5(a)に示した矩形と半円形の組み合わせを例示したが、これに限定されることなく種々の組み合わせが可能である。例えば、各小径部5a、フレア部5bの横断面形状は、図5(c)の如く三角形状、図5(d)の如く四角形状、さらには図示しない平行四辺形状、菱形状、楕円状などをそれぞれに用いることができ、かつこれら小径部5aとフレア部5bに任意に用いて種々組み合わせて用いても良い。
【0027】
またゲート5は、その一部が前記分割面Xからなり、周方向に隣り合うゲート5を、割型1a側及び1b側の交互に形成しても良い。
【0028】
本実施形態の金型1は、従来とほぼ同様の手順で射出成形による成形工程を行うことにより、2ないし4ピースといったゴルフボールのカバーを特に好適に成形しうる。そして、ゲートカット、研磨等の処理を行うことによりゴルフボールを製造しうる。また本実施形態の金型1ないし製造方法は、糸巻きコアの回りに射出成形によりカバーを成形することは勿論のこと、ワンピースのソリッドゴルフボールを射出成形する場合にも適用しうる。
【0029】
さらに、上記実施形態で説明したランナーR、ノズル4、金型の分割面Xの位置、ゲート5の本数、その断面形状などについては例示であって、種々の構成によって置換、変更を行うことができるのは言うまでもなく、また公知の冷却構造などを付加しうることは勿論である。
【0030】
【実施例】
本発明の効果を確認するために、ポリブタジエンを基材ゴムとした加硫ゴムからなる直径39mmのコアを前記金型のキャビティ内にセットし、その回りにアイオノマー樹脂からなる溶融材料を射出供給してカバーを成形するとともに、これを脱型後、ゲートカット処理、バフ研磨処理して直径42.7mmのゴルフボールを製造した。そして、これらのゴルフボールの外観を観察してゲートチップの有無を調べた。
テストの結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
テストの結果、実施例のものは、ゲートチップが全く発生していないことが確認できた。このように本発明を実施した場合には、従来に比べて不良率を大幅に低減しうる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明では、ゲートが、射出方向上流側に配される小径部と、下流側に配されかつ前記一端で開口するとともに該一端での横断面積が小径部よりも大であるフレア部とを含んでいるため、成形後のゴルフボールの外表面は、フレア部で固化した横断面積が相対的に大きいフレア固化物を介してフレア固化物よりも断面積の小さい小径部固化物が一体的に成形される。従って、ゴルフボールの外表面はフレア固化物で補強される反面、小径固化部は剛性が小となって破断容易となるため、ゴルフボールの外表面が欠損するゲートチップを確実に防止でき、製造時の外観不良などを低減しうる。またこのような金型を用いた成形工程を含んでゴルフボールを製造することにより、不良率などを低減でき、生産性を大幅に向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す金型(閉止状態)の断面図である。
【図2】その分割面から上部の割型を見た平面図である。
【図3】その金型により成形されたゴルフボールの斜視図である。
【図4】その部分断面図である。
【図5】(a)〜(e)は、小径部又はフレア部の横断面形状を例示する断面図である。
【図6】従来の金型(閉止状態)の断面図である。
【図7】その分割面から上部の割型を見た平面図である。
【図8】その金型により成形されたゴルフボールの斜視図である。
【符号の説明】
1 ゴルフボール射出成形用金型
1a、1b 割型
3 リング状ランナー部
3a リング状ランナー部
3b ノズル部
5 ゲート
5a 小径部
5b フレア部
7 コア
B ゴルフボール
E ゲートの他端
S ゲートの一端
C キャビティ
R ランナー
Claims (5)
- 分割面Xを当接させる閉止により、ゴルフボールの外表面を成形しうる球状のキャビティCが形成される接離可能な一対の割型を具え、
前記球状のキャビテイに一端が開口しかつ他端が溶融材料を供給されるランナーに連通するゲートを有し、1ピースボール、2〜4ピースゴルフボールのカバー,又は糸巻きボールのカバーを成形するゴルフボール射出成形用金型であって、
前記ゲートは、前記分割面Xに凹設された窪みにより形成され、
かつ分割面Xには円周方向に沿って、複数本のゲートが隔設されるとともに、
該ゲートは、射出方向上流側に配される小径部と、小径部に連なりかつ前記一端が前記キャビティで開口するフレア部とを含み、
このフレア部は、射出方向と直角な横断面積が前記小径部の横断面積よりも大であることを特徴とするゴルフボール射出成形用金型。 - 前記ゲートは、一方の割型の分割面Xに凹設された窪みと、他方の割型の分割面Xとによって形成されたことを特徴とする請求項1記載のゴルフボール射出成形用金型。
- 前記窪みは、周方向に隣り合いかつ一方、他方の割型の分割面Xで交互に形成、されたことを特徴とする請求項2記載のゴルフボール射出成形用金型。
- 前記フレア部は、前記一端での横断面積(Sf)が、前記小径部の横断面積(Sg)の1.5〜16.0倍である請求項1又は2記載のゴルフボール射出成形用金型。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフボール射出成形用金型を用いた成形工程を含むゴルフボールの製造方法。
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JP2000185116A (ja) | 2000-07-04 |
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