JP3663930B2 - 自動二輪車の車体前部構造 - Google Patents

自動二輪車の車体前部構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロジェクターランプを内蔵した前照灯装置が車体前頭部に設置された自動二輪車の車体前部構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車体前部がフロントカウリングに覆われた自動二輪車では、前照灯装置がフロントカウリングの前頭部に設けられる。その多くの場合、前照灯装置は前面が透明なレンズカバーで覆われた箱状のランプハウジングの内部に複数(普通は2個)のランプが縦置きまたは横置きに設置され、レンズカバーの形状は流線形に造形されたフロントカウリングの表面に滑らかに繋がるように形成される。
【0003】
このような前照灯装置において、各ランプはレンズカバーとの間に所定の間隔を持ってランプハウジング内に設置されるが、特に点灯時の放熱量が大きいプロジェクターランプが組み込まれる場合は、レンズカバーとの間に充分な間隔が取られ、レンズカバーにプロジェクターランプの熱害が及ばないようにされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようにプロジェクターランプとレンズカバーの間隔を広く取る必要があるため、必然的にプロジェクターランプの位置を後退させざるを得ず、これによってランプハウジングの後面が後方に出っ張る形となり、前照灯装置と車体フレームの前頭部(フロントフォーク)との間のスペースが狭まってしまう。このため、前照灯装置のバルブ交換や、メーターパネルの調整、さらに車体フレームの前頭部に設置されるステアリングダンパーの調整を始めとする各種のメンテナンスが行いにくくなるという問題があった。
【0005】
本発明に係る自動二輪車の車体前部構造は、上記の問題点を解決するために発明されたものであり、その目的は、プロジェクターランプが組み込まれた前照灯装置と車体フレーム前頭部との間のスペースを広く確保し、前照灯装置のバルブ交換や、メーターパネル、ステアリングダンパー等の調整を始めとする前照灯装置後部におけるメンテナンス性を向上させることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係る自動二輪車の車体前部構造は、請求項1に記載したように、車体の前部が流線形のフロントカウリングで覆われ、このフロントカウリングの先端に前照灯装置を配置した自動二輪車において、前記前照灯装置は、ランプハウジングの前面を透明なレンズカバーで覆い内部にリフレクターランプとプロジェクターランプを設置して2灯形式に形成し、上記レンズカバーは、前記フロントカウリングの表面に滑らかに繋がるよう流線面に造形される一方、上記プロジェクターランプの正面に位置する部分に前記流線面よりも前方へ球面状に突出する膨出部を形成したことを特徴とする。
【0007】
また、同じく前記目的を達成するため、本発明に係る自動二輪車の車体前部構造は、請求項2に記載したように、前記前照灯装置は、上段にリフレクターランプを設置し、下段にプロジェクターランプを、前記リフレクターランプよりもやや前方の位置に設置して縦置き2灯形式に形成され、前記前照灯装置の下段に設置されたプロジェクターランプの後方に伸縮式のステアリングダンパーを配置し、このステアリングダンパーの長手方向を車幅方向にほぼ沿わせて車体フレームのヘッドパイプ前部とフロントフォークのロアーブラケットに連結した。
【0008】
さらに、同じく前記目的を達成するため、本発明に係る自動二輪車の車体前部構造は、請求項3に記載したように、前記前照灯装置を自動二輪車の車体前部を覆うフロントカウリングの前頭部に設け、上記フロントカウリングには前照灯装置の下方に位置する開閉部を設けた。
【0009】
請求項1のように自動二輪車の車体前部構造を構成すれば、前照灯装置のレンズカバーに形成された膨出部がプロジェクターランプの正面に位置し、これによってプロジェクターランプのレンズ面からレンズカバーまでの間隔が広く確保されるため、従来のようにプロジェクターランプの位置を後退させてレンズカバーまでの間隔を広げる必要がなくなり、その分だけ前照灯装置後面の出っ張りを小さくして前照灯装置と車体フレーム前頭部との間のスペースを広く取ることができる。このため、前照灯装置の後部におけるメンテナンス性が大きく向上する。
【0010】
また、請求項2のように自動二輪車の車体前部構造を構成した場合、前照灯装置と車体フレーム前頭部との間のスペースの最も車体フレーム寄りの部分にステアリングダンパーが配置されるので、上記スペースに下方から手が入り易くなり、前照灯装置やステアリングダンパーおよびメーターパネル等のメンテナンス性が向上する。
【0011】
さらに、請求項3のように自動二輪車の車体前部構造を構成すれば、開閉部を開くことによって前照灯装置の後部に下方から容易に手を入れられるため、前記メンテナンスが一段と容易になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る車体前部構造が適用された自動二輪車の車体前部を示す左側面図であり、図2は図1のII部を拡大した縦断面図であり、図3は図2の III矢視図である。
【0013】
この自動二輪車1は、車体の前部が流線形のフロントカウリング2で覆われており、このフロントカウリング2の先端に前照灯装置3が設置され、その左右両側に方向指示灯装置4が設置されている。なお、フロントカウリング2の上部には透明なウインドスクリーン5が設けられ、その左右両側にサイドビューミラー6が配置されている。
【0014】
また、図1中に符号8で示す部材はフロントフォークである。このフロントフォーク8は、図2および図3に示す車体フレーム9の前頭部に設けられたヘッドパイプ10に軸支されて左右方向に回動自在であり、その下端に前輪11が支持され、上端にハンドルバー12が固定される。また、フロントフォーク8には前輪11の上部を覆うフロントフェンダー13が設けられる。
【0015】
図2に示すように、前照灯装置3は縦置き2灯形式であり、そのランプハウジング15の内部にリフレクターランプ16とプロジェクターランプ17が上下に設置されている。リフレクターランプ16はLOビーム用であり、ハロゲンバルブ18の光を凹面鏡状のリフレクター19で集光し、前方に反射して路面を照射する。また、プロジェクターランプ17はHIビーム用であり、ハロゲンバルブ20の光を半球形のプロジェクターレンズ21で増幅して前方を照射する。
【0016】
ランプハウジング15は、前方に向かって開口するハウジング本体23と、その前面を覆う透明なレンズカバー24とが接合された構造であり、ハウジング本体23の上段にリフレクターランプ16が設置され、下段にプロジェクターランプ17が設置されている。なお、レンズカバー24がフロントカウリング2の前面に合わせて後傾している関係上、リフレクターランプ16はプロジェクターランプ17よりもやや後方に下がった位置に設けられる。また、プロジェクターランプ17の前下部にはポジションランプ25が設けられる。
【0017】
レンズカバー24の形状は、流線形のフロントカウリング2の表面に滑らかに繋がるように造形されている。そして、このレンズカバー24には、プロジェクターランプ17の正面に位置する部分に膨出部26が形成されている。この膨出部26は、プロジェクターランプ17(プロジェクターレンズ21)のレンズ面21aから離反して前方へ突出するように球面的に造形される。
【0018】
従って、この膨出部26が設けられたレンズカバー24下部の表面は、レンズカバー24上部の表面を下方に延長した本来の流線面24aよりも大きく前方に張り出している。これにより、プロジェクターランプ17が点灯した時の熱がレンズカバー24に及ばなくなる。なお、例えば膨出部26の中央部の厚みと周囲部の厚みを異ならせて膨出部26にレンズ機能を付与し、プロジェクターランプ17の光量増幅を図ってもよい。
【0019】
一方、前照灯装置3の後方には伸縮式のステアリングダンパー28が配置されている。このステアリングダンパー28は、高速走行時における前輪11からのキックバックを緩衝してフロントフォーク8のふらつきを防止する油圧ダンパーであり、その長手方向が自動二輪車1の車幅方向にほぼ沿うように取り付けられている。
【0020】
即ち、ステアリングダンパー28は、ダンパーシリンダー29にダンパーロッド30が摺動可能に挿入され、ダンパーロッド30の摺動に油圧による減衰抵抗が加わるように構成されているが、ダンパーシリンダー29に一体に形成されたシリンダーブラケット31が車体フレーム9のヘッドパイプ10前側に設けられた固定ボス32にボルト33で回動可能に連結され、ダンパーロッド30の先端がフロントフォーク8のロアーブラケット34左端付近に形成された固定アーム35にボルト36で回動可能に連結されている。
【0021】
そして、フロントフォーク8が回動すると、ダンパーロッド30がダンパーシリンダー29に対して伸縮し、フロントフォーク8の速い回動に対して油圧による減衰力が作用するため、高速走行時における前輪11からのキックバックが緩衝され、フロントフォーク8のふらつきが防止される。
【0022】
ところで、車体フレーム9のヘッドパイプ10には、ダンパーシリンダー29が固定される固定ボス32の上部にもう1つの固定ボス38が設けられており、これら上下2つの固定ボス32,38にカウリングブレース39が固定される。このカウリングブレース39は、例えば鋼管と鋼板を組み合わせて構成されており、図示しない複数の取付ブラケットが形成されていて、これらの取付ブラケットにフロントカウリング2や前照灯装置3が取り付けられる。また、カウリングブレース39の上部に設けられたメーターホルダー40にメーターパネル41が設置される。
【0023】
さらに、フロントカウリング2には、前照灯装置3の下方に位置する開閉部43が設けられている。この開閉部43は、フロントカウリング2の前部下面に形成された開口縁部44をロアーカバー45で閉塞するものであり、ロアーカバー45を取り外して前照灯装置3の後部に下方から手を入れ、前照灯装置3のバルブ交換やステアリングダンパー28およびメーターパネル40の調整といったメンテナンスを行う。
【0024】
自動二輪車1の車体前部は以上のように構成されている。ここにおいて、前照灯装置3のレンズカバー24には、プロジェクターランプ17の正面に位置して前方に突出する膨出部26が形成されているため、プロジェクターランプ17のレンズ面21aからレンズカバー24までの間隔が広がっている。
【0025】
このため、従来のようにプロジェクターランプ17の位置を後退させることによりレンズカバー24までの間隔を広げてプロジェクターランプ17の熱害を除去する必要がなく、その分だけ前照灯装置3(ハウジング本体23)後面の出っ張りを小さくして前照灯装置3と車体フレーム9の前頭部(ヘッドパイプ10)およびフロントフォーク8との間のスペースを広く取ることができる。
【0026】
よって、前照灯装置3の後部におけるメンテナンス性が大きく向上している。例えば、前照灯装置3のバルブ交換を行う際にも、上側に配置されたリフレクターランプ16の後部まで容易に手が届くため、迅速にバルブ交換作業を行える。同様に、ステアリングダンパー28の減衰力調整やメーターパネル41の整備等も楽に行える。
【0027】
ステアリングダンパー28は、その長手方向が車幅方向に沿うように車体フレーム9のヘッドパイプ10前部に取り付けられており、前照灯装置3とヘッドパイプ10との間のスペースの最も後方寄りに配置されているので、フロントカウリング2の前端下部に設けられた開閉部43の設置と相俟って、前照灯装置3の後部に下方から手が入り易く、各部のメンテナンス性の向上に大きく貢献している。
【0028】
なお、図4は本発明に係る車体前部構造の別な実施形態を示す自動二輪車の正面図であり、図5は図4に示す自動二輪車の前頭部の平面図である。この自動二輪車51も車体の前部が流線形のフロントカウリング52で覆われており、フロントカウリング52の先端に前照灯装置53が設置されている。
【0029】
前照灯装置53は、図示しない2つのランプが横並びに配置された2灯形式であり、例えば左側のランプがHIビーム用のプロジェクターランプとされている。各ランプの前方は透明なレンズカバー54によって覆われ、このレンズカバー54は流線形のフロントカウリング52の表面に滑らかに繋がるように造形されている。
【0030】
そして、レンズカバー54には、プロジェクターランプの正面に位置する部分に膨出部55が形成されている。この膨出部55は、プロジェクターランプのレンズ面から離反して前方へ突出する球面状に造形される。このため、前の実施形態と同じく、プロジェクターランプの位置を後退させなくても、プロジェクターランプのレンズ面からレンズカバー54までの間隔を広く取ることができ、プロジェクターランプの熱害がレンズカバー54に及ぶことがない。
【0031】
従って、その分だけ前照灯装置53の後面の出っ張りを小さくして車体フレームの前頭部までのスペースを広く取り、前照灯装置53の後部におけるメンテナンス性を大きく向上させることができる。なお、自動二輪車に限らず、自動車や他の車両の前照灯装置のレンズカバーにも膨出部を設ければ同様な効果を得ることができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る自動二輪車の車体前部構造は、車体の前部が流線形のフロントカウリングで覆われ、このフロントカウリングの先端に前照灯装置を配置した自動二輪車において、前記前照灯装置は、ランプハウジングの前面を透明なレンズカバーで覆い内部にリフレクターランプとプロジェクターランプを設置して2灯形式に形成し、上記レンズカバーは、前記フロントカウリングの表面に滑らかに繋がるよう流線面に造形される一方、上記プロジェクターランプの正面に位置する部分に前記流線面よりも前方へ球面状に突出する膨出部を形成したため、上記膨出部によってプロジェクターランプのレンズ面からレンズカバーまでの間隔が広く確保され、プロジェクターランプの熱害が除去される。
【0033】
従って、プロジェクターランプの位置を後退させてレンズカバーまでの間隔を広げる必要がなく、その分だけ前照灯装置後面の出っ張りを小さくして前照灯装置と車体フレーム前頭部との間のスペースを広く取り、前照灯装置の後部におけるメンテナンス性を大きく向上させることができる。
【0034】
また、本発明に係る自動二輪車の車体前部構造は、前記前照灯装置は、上段にリフレクターランプを設置し、下段にプロジェクターランプを、前記リフレクターランプよりもやや前方の位置に設置して縦置き2灯形式に形成され、前記前照灯装置の下段に設置されたプロジェクターランプの後方に伸縮式のステアリングダンパーを配置し、このステアリングダンパーの長手方向を車幅方向にほぼ沿わせて車体フレームのヘッドパイプ前部とフロントフォークのロアーブラケットに連結したので、前照灯装置と車体フレーム前頭部との間のスペースの最も車体フレーム寄りの部分にステアリングダンパーが配置されることになり、前照灯装置と車体フレーム前頭部との間のスペースに下方から手が入り易くなって前照灯装置やステアリングダンパーおよびメーターパネル等のメンテナンス性が向上する。
【0035】
さらに、本発明に係る自動二輪車の車体前部構造は、前記前照灯装置を自動二輪車の車体前部を覆うフロントカウリングの前頭部に設け、上記フロントカウリングには前照灯装置の下方に位置する開閉部を設けたため、上記開閉部を開くことによって前照灯装置の後部に下方から容易に手を入ることができ、各種メンテナンスを一段と容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車体前部構造が適用された自動二輪車の車体前部を示す左側面図。
【図2】図1のII部を拡大した縦断面図であり、本発明の一実施形態を示す図。
【図3】図2の III矢視図。
【図4】本発明に係る車体前部構造の別な実施形態を示す自動二輪車の正面図。
【図5】図4に示す自動二輪車の前頭部の平面図。
【符号の説明】
1 自動二輪車
2 フロントカウリング
3 前照灯装置
8 フロントフォーク
9 車体フレーム
10 ヘッドパイプ
16 リフレクターランプ
17 プロジェクターランプ
21 プロジェクターレンズ
21a レンズ面
24 レンズカバー
26 膨出部
28 ステアリングダンパー
34 ロアーブラケット
41 メーターパネル
43 開閉部

Claims (3)

  1. 車体の前部が流線形のフロントカウリングで覆われ、このフロントカウリングの先端に前照灯装置を配置した自動二輪車において、前記前照灯装置は、ランプハウジングの前面を透明なレンズカバーで覆い内部にリフレクターランプとプロジェクターランプを設置して2灯形式に形成し、上記レンズカバーは、前記フロントカウリングの表面に滑らかに繋がるよう流線面に造形される一方、上記プロジェクターランプの正面に位置する部分に前記流線面よりも前方へ球面状に突出する膨出部を形成したことを特徴とする自動二輪車の車体前部構造。
  2. 前記前照灯装置は、上段にリフレクターランプを設置し、下段にプロジェクターランプを、前記リフレクターランプよりもやや前方の位置に設置して縦置き2灯形式に形成され、前記前照灯装置の下段に設置されたプロジェクターランプの後方に伸縮式のステアリングダンパーを配置し、このステアリングダンパーの長手方向を車幅方向にほぼ沿わせて車体フレームのヘッドパイプ前部とフロントフォークのロアーブラケットに連結した請求項1に記載の自動二輪車の車体前部構造。
  3. 前記前照灯装置を自動二輪車の車体前部を覆うフロントカウリングの前頭部に設け、上記フロントカウリングには前照灯装置の下方に位置する開閉部を設けた請求項1または2に記載の自動二輪車の車体前部構造。
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