JP3663877B2 - 電子写真複写機用プラスチック無端転写ベルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルカラー複写機等の電子写真技術を採用した機器において、感光体上のトナー像を写し取る転写中間体等に用いられる電子写真複写機用プラスチック無端転写ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、フルカラー複写機等の電子写真複写機の実用化に伴って、感光体上に現像されたトナー像を複写紙に転写する際に、一旦トナー像を転写中間体に写し取った後、複写紙に転写するというプロセスが採用されている。
【0003】
その一例を図4に示す。すなわち、このプロセスでは、感光ドラム1の表面が帯電ロール2により帯電された後、露光機構部3を介して原稿光像のスリット露光4が感光ドラム1表面に到達し、原稿像に対応した静電潜像が感光ドラム1表面に形成され、現像装置5により現像剤が供給されてトナー像が形成されるようになっている。また、上記感光ドラム1の下部には、転写中間体である無端ベルト6が、一次転写ローラ7を介して感光ドラム1に圧接されており、上記感光ドラム1上に現像されたトナー像が、上記無端ベルト6の順逆両方向の繰り返し走行により、この無端ベルト6表面に各色順に転写されるようになっている。そして、この無端ベルト6の走行により、上記トナー像は、この無端ベルト6と二次転写ローラ8との間に挟まれた複写紙9に転写される。なお、二次転写後に無端ベルト6の表面上に残留する現像剤はクリーニングブレード10によって回収され、無端ベルト6はつぎの転写に備えるようになっている。また、一次転写後に感光ドラム1表面上に残留する現像剤はクリーニング装置11によって回収される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記無端ベルト6は、一次転写ローラ7、二次転写ローラ8等の数本のローラに張架されているため、長期使用によって、徐々に伸びて弛みが発生するという問題がある。このように弛みが発生すると、感光ドラム1表面のトナー像が忠実に無端ベルト6表面に転写されず、トナーの色重ね精度が悪くなる。また、無端ベルト6にかかる張架荷重が変化して一定の駆動力が伝わらなくなってスリップを起こしたりする。その結果、色ずれや色抜け等の画像不良が生じ、高画質化が実現できないという問題がある。そこで、弛みが発生しないように、無端ベルト6全体の柔軟性を小さくすることも考えられるが、その場合、回転によって負荷がかかると無端ベルト6外周側に割れが発生するという新たな問題が生じる。このように、フルカラー複写機等の転写中間体として満足のいく製品が得られていないのが実情である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、割れが発生せず、複写画像の高画質化が実現できる電子写真複写機用プラスチック無端転写ベルトの提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の電子写真複写機用プラスチック無端転写ベルトは、内層、中間層および外層からなる三層、ないし、その三層の外周面に現像剤担持層を設けた四層構造の無端ベルトであって、上記内層および外層が下記の(a)を用いて形成され、上記中間層がポリアミド樹脂を用いて形成され、かつ、上記多層のうち厚みの大きい順に抽出される二層が、上記内層および外層であり、その外層のヤング率(A)が、2000〜9000kgf/cm2 の範囲に設定され、内層のヤング率(B)が、下記の数式(1)を満たすように設定されているという構成をとる。
(a)フッ素樹脂、塩化ビニル系樹脂(PVC)、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルゴムおよびポリウレタン(PU)からなる群から選ばれた少なくとも一つ。
【0007】
【数2】
【0008】
すなわち、本発明の電子写真複写機用プラスチック無端転写ベルトは、内層、中間層および外層からなる三層、ないし、その三層の外周面に現像剤担持層を設けた四層構造の無端ベルトであって、無端ベルトの張架状態に大きな影響を及ぼす、厚みの大きい順に抽出された二層が、上記内層および外層であり、しかも、これらの層は特定の材料によって形成されており、外層のヤング率が特定の範囲に設定され、しかも内層のヤング率が上記外側の層のヤング率より大きく設定されるとともに、10000kgf/cm2 を超えない範囲に設定されている。このため、ローラに張架して長期使用した場合、主として内層によって無端ベルトの強度が保たれて、伸びによる弛みを防止できる。また、無端ベルト外周側により大きくかかる応力を外層によって緩和させて、割れが発生するのを防止できる。このように、内層と外層にそれぞれ役割を持たせることによって、無端ベルトの張架状態を良好にすることができる。その結果、特に無端ベルトの表面に各色順に転写される機構を有するフルカラー複写機に採用した場合、各色のトナーが色ずれを起こして複写画像に乱れが生じるといったことがなくなり、全体として高画質化を実現することができる。
【0009】
なお、本発明において、「厚みの大きい順に二層を抽出し」とは、その文字どおり層の厚みが大きい順に二つの層を抽出するという意味であるが、抽出された二層が、同じ厚みであってもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明の電子写真複写機用プラスチック無端転写ベルト(以下、「プラスチック無端ベルト」と略す)は、例えば、図1に示すように、内層13と、これに隣接する中間層14と、この中間層14に隣接する外層15の三層構造を有している。そして、上記内層13と外層15の厚みは同じで、中間層14の厚みは両層13,15の厚みより小さく設定されている。
【0012】
上記内層13の形成材料としては、フッ素樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルゴム、ポリウレタン(PU)等があげられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。なかでも、フッ素樹脂とポリウレタンとのブレンド物が好ましい。
【0013】
上記フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体〔以下「Poly(VdF−TFE)」という〕、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂が用いられる。なかでも、Poly(VdF−TFE)が好ましい。
【0014】
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等があげられる。なかでも、数平均分子量が4000〜40000の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0015】
つぎに、上記内層13に隣接して形成される中間層14の形成材料としては、特に限定するものではないが、N−メトキシメチル化ナイロン、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド樹脂があげられる。なかでも、N−メトキシメチル化ナイロンが好ましい。
【0016】
そして、上記中間層14に隣接して形成される外層15の形成材料としては、特に限定するものではないが、上記内層13に用いるものと同種の材料が例示できる。なかでも、塩化ビニル系樹脂とポリウレタンとのブレンド物、あるいはフッ素樹脂とアクリルゴムとのブレンド物が好ましい。
【0017】
なお、上記内層13、中間層14および外層15の各形成材料には、必要に応じて、導電剤、帯電防止剤、架橋剤等を含有させてもよい。
【0018】
上記導電剤としては、アルミニウム粉末、ステンレス粉末等の金属粉末、c−ZnO、c−TiO2 、c−Fe3 O4 、c−SnO2 等の導電性金属酸化物、グラファイト、カーボンブラック等の導電性粉末、四級アンモニウム塩、リン酸エステル、スルホン酸塩、脂肪族多価アルコール、脂肪族アルコールサルフェート塩等のイオン性導電剤等があげられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。なかでも、分散性の点から、c−TiO2 、c−SnO2 が好ましい。なお、上記「c−」とは、導電性を有するという意味である。
【0019】
本発明のプラスチック無端ベルトは、例えばつぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、各層13〜15の形成材料およびその溶剤、ならびに必要に応じて導電剤等を、それぞれ適宜に配合し、サンドミル等で分散することにより各コーティング液を調製する。
【0020】
つぎに、図2に示すように、上記各コーティング液をそれぞれ槽17、槽18、槽19に収容する。一方、金属製の軸体(例えばアルミニウム、ステンレス等)20を準備し、この軸体20を垂直に立てて、まず槽17に収容されている内層13形成用のコーティング液中に繰り返し浸漬する。そして、所定の回数浸漬を繰り返した後、コーティング液中から軸体20を引き上げる。ついで、中間層14形成用のコーティング液および外層15形成用のコーティング液を用いて、この順に同様の操作を行い、三層からなる樹脂液膜を形成する。そして、上記樹脂液膜を乾燥し溶剤を除去した後、加熱処理(例えば60〜150℃×60分間)を行い、上記軸体20を抜き取ることにより、図1に示すプラスチック無端ベルトを得ることができる。
【0021】
なお、上記製法以外に、多層押出成形法、スプレーコーティング法、インフレーション法等の方法により、プラスチック無端ベルトを得ることができる。
【0022】
このようにして得られたプラスチック無端ベルトは、その外層15のヤング率が2000〜9000kgf/cm2 の範囲に設定されていなければならない。より好ましくは、2000〜4500kgf/cm2 の範囲である。すなわち、2000kgf/cm2 未満であると、柔らかすぎて、トナーの色重ね精度が悪くなるからである。逆に、9000kgf/cm2 を超えると、硬すぎて、割れが発生しやすくなるからである。
【0023】
また、内層13のヤング率(A)が、下記の数式(1)を満たすように設定されていなければならない。すなわち、内層13のヤング率(A)が、上記外層15のヤング率(B)より大きくなるよう設定されているのは、主として内層13に強度を保つ役割を持たせて伸びによる弛みを防止するためである。そして、内層13のヤング率(A)が、10000kgf/cm2 以下に設定されているのは、硬すぎて割れが発生する事態を防止するためである。
【0024】
【数3】
【0025】
上記ヤング率はつぎのようにして求められる。すなわち、まず層形成材料をフィルムに成形した試験片を準備し、その断面積(Z)を測定する。ついで、この試験片に引張速度5mm/minの条件で荷重をかけ、歪みε=0.002となるところを、降伏時の最大荷重(F)とし、これを測定する。このようにして、降伏時の最大荷重(F)を測定した後、下記の数式(2)により、引張強さ(σ)を算出する。そして、この引張強さ(σ)を2点間の応力差とし、上記歪み(ε)を上記2点間の歪みの差として、下記の数式(3)により、ヤング率(Em)を算出する。
【0026】
【数4】
【0027】
【数5】
【0028】
上記プラスチック無端ベルトは、外層15のヤング率と内層13のヤング率が特定の範囲に設定されているため、図3に示すように、ローラ25に張架して長期使用した場合、ローラ25に接する内層13によって、全体の伸びを抑制して弛みの発生を防止できるとともに、ローラ25から無端ベルトの厚み方向に最も離れた位置にある外層15によって、外周側に大きくかかる応力を緩和して、割れの発生を防止できる。このように、張架時の不具合を解消して張架状態を良好にすることにより、フルカラー複写機に適用した場合に重要となるトナーの色重ね精度を高めることができるので、複写画像の高画質化が実現できる。
【0029】
また、上記プラスチック無端ベルトにおいて、内層13、中間層14および外層15の合計厚みは、50〜250μmの範囲に設定されていることが好ましい。より好ましくは、100〜200μmである。すなわち、厚みが50μm未満であると強度が不足するおそれがあり、250μmを超えると耐屈曲疲労性に劣るおそれがあるからである。
【0030】
そして、上記プラスチック無端ベルトは、内周長が200〜600mmで、幅が250〜500mm程度のものが好ましい。このような寸法であると、電子写真複写機等に組み込んで用いるのに適当な大きさとなるからである。
【0031】
本発明のプラスチック無端ベルトは、上記三層構造に限定されるものではなく、例えば、上記外層15の外周面にトナー離型性に優れた現像剤担持層を形成して四層構造にしてもよい。
【0032】
また、本発明のプラスチック無端ベルトは、主としてフルカラー複写機等の転写中間体として用いられるが、フルカラーではない、単色の電子写真複写機等の転写中間体として用いることもできる。さらに、本発明のプラスチック無端ベルトは、ローラに張架して長期使用した場合に発生する割れや伸びによる弛みを防止できるため、その用途は、ローラに張架されるベルト全てに応用できる。
【0033】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0034】
まず、実施例および比較例に先立って、中間層形成用コーティング液を調製した。
【0035】
〔中間層形成用コーティング液の調製〕
まず、N−メトキシメチル化ナイロン(帝国化学産業社製のトレジンEF−30T)100重量部と、c−SnO2 (三菱マテリアル社製の導電性酸化スズT−1)64重量部とを準備した。ついで、N−メトキシメチル化ナイロンをメタノール/水混合溶剤(メタノール/水=3/1)480重量部に溶解した後、上記c−SnO2 を添加し、サンドミルで、分散して、粘度100cps(B型粘度計)の中間層形成用コーティング液を調製した。
【0036】
【実施例1〜6、比較例1〜7、従来例】
そして、下記の表1〜表3に示す割合で配合し、サンドミルで分散することにより、外層形成用コーティング液および内層形成用コーティング液を調製した。なお、各コーティング液の粘度をB型粘度計で測定し、その結果を同表に併せて示した。そして、前述の方法に従い、軸体の周囲に順次、内層,中間層,外層となる樹脂液膜を形成し、乾燥し溶剤を除去した後、加熱処理(105℃×60分間)を行うことにより各層を形成した。ついで、上記軸体を抜き取って、三層からなる無端ベルトを作製した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
このようにして得られた無端ベルトについて、各層の厚み、内層のヤング率、外層のヤング率、複写画像の画質、耐久性を測定・評価し、その結果を下記の表4〜表6に示した。なお、各測定方法は以下の通りである。
【0041】
〔厚み〕
マイクロメータを用いて測定した。
【0042】
〔ヤング率〕
前述の方法で測定した。
【0043】
〔画質評価〕
得られた無端ベルトをフルカラー複写機に組み込み、これを常温常湿条件下(23℃×50%)にて起動させ、2万枚複写後に得られる複写画像の画質を評価した。そして、複写画像に色ずれや色抜け等の画像不良が確認されなかったものを○、確認されたものを×として表示した。
【0044】
〔耐久性〕
単位幅あたり300gf/cmの荷重をかけた状態でフルカラー複写機2万枚分に相当するだけ無端ベルトを駆動させて評価した。そして、無端ベルトに割れが発生していないものを○、割れが発生しているものを×として表示した。
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
上記実施例1品〜6品は全て、外層のヤング率が特定の範囲に設定されており、しかも内層のヤング率が上記外層のヤング率より大きく、かつ10000kgf/cm2 以下に設定されているため、ローラに張架して長期使用した場合、弛みや割れといった不具合を生じない。そのため、フルカラー複写機に組み込んで用いると、色ずれ等の画像不良が発生していない、高画質な複写画像を得ることができる。これに対して、比較例1品〜7品および従来例品は、外層のヤング率および内層のヤング率の少なくとも一方が、特定の範囲から外れているため、割れが発生したり、色ずれ等の画像不良が発生したりしている。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明のプラスチック無端ベルトは、内層、中間層および外層からなる三層、ないし、その三層の外周面に現像剤担持層を設けた四層構造の無端ベルトであって、厚みの大きい順に抽出される二層が、上記内層および外層であり、その外層のヤング率が特定の範囲に設定され、内層のヤング率も特定の範囲に設定されている。このため、ローラに張架して長期使用した場合、主として内層によって無端ベルトの強度が保たれて、伸びによる弛みを防止できる。また、無端ベルト外周側により大きくかかる応力を外層によって緩和させて、割れが発生するのを防止できる。したがって、本発明のプラスチック無端ベルトをフルカラー複写機の転写中間体として用いた場合、各色のトナーが色ずれを起こして複写画像が乱れるといったことがなくなり、全体として高画質化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプラスチック無端ベルトの一例を示す断面図である。
【図2】 上記プラスチック無端ベルトの製法の一例を示す説明図である。
【図3】 上記プラスチック無端ベルトをローラに張架させた状態を示す説明図である。
【図4】 電子写真複写機の複写機構を示す構成図である。
【符号の説明】
13 内層
15 外層
Claims (1)
- 内層、中間層および外層からなる三層、ないし、その三層の外周面に現像剤担持層を設けた四層構造の無端ベルトであって、上記内層および外層が下記の(a)を用いて形成され、上記中間層がポリアミド樹脂を用いて形成され、かつ、上記多層のうち厚みの大きい順に抽出される二層が、上記内層および外層であり、その外層のヤング率(A)が、2000〜9000kgf/cm2 の範囲に設定され、内層のヤング率(B)が、下記の数式(1)を満たすように設定されていることを特徴とする電子写真複写機用プラスチック無端転写ベルト。
(a)フッ素樹脂、塩化ビニル系樹脂(PVC)、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルゴムおよびポリウレタン(PU)からなる群から選ばれた少なくとも一つ。
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