JP3663722B2 - 化合物半導体成長層及びその製造方法 - Google Patents

化合物半導体成長層及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3663722B2
JP3663722B2 JP04759396A JP4759396A JP3663722B2 JP 3663722 B2 JP3663722 B2 JP 3663722B2 JP 04759396 A JP04759396 A JP 04759396A JP 4759396 A JP4759396 A JP 4759396A JP 3663722 B2 JP3663722 B2 JP 3663722B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gas
hydrogen
nitrogen
substrate
compound semiconductor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP04759396A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09246596A (ja
Inventor
久幸 三木
隆 宇田川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Resonac Holdings Corp
Original Assignee
Showa Denko KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Showa Denko KK filed Critical Showa Denko KK
Priority to JP04759396A priority Critical patent/JP3663722B2/ja
Publication of JPH09246596A publication Critical patent/JPH09246596A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3663722B2 publication Critical patent/JP3663722B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Led Devices (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は窒素を含む III−V族化合物半導体(含窒素 III−V族化合物半導体)層及びそれを利用した半導体装置に係わり、特に結晶学的及び光学的な特性に優れる含窒素 III−V族化合物半導体の気相成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒素原子を含む III−V族化合物半導体(含窒素 III−V族化合物半導体)には、窒化ガリウム(GaN)並びにそれらの混晶である窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)等がある。
含窒素 III−V族化合物半導体の一例である窒化インジウム(InN)の室温での禁止帯幅(バンドギャップ)は約1.95eVである。窒化アルミニウム(AlN)のそれは約6eVである。
含窒素 III−V族化合物半導体の取り得る禁止帯幅はこの様に比較的広い範囲に及ぶため、従来から紫外から可視領域に至る発光をもたらす半導体発光材料として利用されている。また、禁止帯幅を大きく異にする含窒素 III−V族化合物半導体層を、ヘテロ(異種)接合させることによるヘテロ接合界面に閉じ込められた電子を利用する半導体装置などに利用されている。
具体的には青色及び青緑色発光ダイオード(LED)や電界効果トランジスタ(FET)などの半導体装置が知られている。
【0003】
また、従来からの主たる含窒素 III−V族化合物半導体層の気相成長方法には、MOCVD(有機金属熱分解気相成長法)、分子線エピタキシャル法(MBE法)、反応性マグネトロンスパッタリングやハライド或いはハイドライド気相成長法(VPE法)が挙げられる。
例えば、MOCVD法により含窒素 III−V族化合物半導体層を得る際には、 III族供給源としてトリアルキルガリウムやトリアルキルアルミニウム等の有機 III族化合物と、分子量を約17.03とするアンモニア (NH3 )等の窒素含有化合物を窒素の供給源として、1000℃近傍の高温に加熱された結晶基板上で供給原料ガスの熱分解反応を利用して成膜を行うのが一般的である。
成膜時の熱分解反応は、実際には何段階かの素反応を経て進むと考えられるが、単純化して一括すれば次の化学反応式(A)で概略される。
Ga(CH33 +NH3 =GaN+3CH4 ‥‥‥ (A)
窒化ガリウムのMOCVD成長に代表される様に、成膜を実施する温度を1000℃近傍の高温に設定するのは、主にアンモニア分子の熱分解を促進し成膜に必要とされる充分な窒素を成膜環境下に存在させることによる。
【0004】
従来のMOCVD法或いはVPE法等により含窒素 III−V族化合物半導体層を得るにあっては、水素ガス(H2 )からなる雰囲気内で成膜を実施するのが一般的な技術とされている。
水素ガス雰囲気を創出する主たる理由は、不活性ガス雰囲気中では基板上に成長するGaNの結晶中に未分解のメチル基(−CH3 )が多く取り込まれ、結晶性を損なうとされるからである(特開昭60−175412参照)。
また、水素ガスからなる成長環境下で水素を内に存在させる成膜では、前記の化学反応式(A)で示される熱分解反応の生成物側への反応が促進されるのと併せて、半導体層表面のモホロジーが向上するとされるからである(M.Hashimoto他、J.Cryst.Growth,68(1984)、163参照)。 しかし、水素ガスの気体(ガス)密度は0℃、1気圧下に於いて0.08988g/cc(例えば「改訂4版化学便覧−基礎編II(日本化学会編)」(平成5年9月30日、丸善(株)発行)、II−4頁、表5・1・2参照)と非常に小さい。
MOCVD法による窒化ガリウム或いは窒化アルミニウムの成膜に代表される様に、基板温度を1000℃近い高温とする必要がある含窒素 III−V族化合物半導体層の成膜にあっては、基板表面上で水素ガスの熱対流が顕著に起こり得る。
よって、水素ガスに随伴して供給される成膜原料が、基板からの熱エネルギーを受けて基板表面より上昇する水素気流によって運搬されて、基板表面迄到達せず、基板が配置された位置より遠隔な領域へと運搬される。
これにより、成膜が行われる基板表面上に到達する成膜原料の量が減ぜられ、成膜速度の著しい低下を招く不具合が生じる。結晶基板上に成膜が全く果たされない場合もある。また、気体密度の小さい水素ガスであるが故に格別顕著に生ずる熱対流のために、膜の連続性も損なわれる上に電気的特性の均一性も損なわれる不具合が生じている。具体的に記述すれば、水素雰囲気中での窒化ガリウムの成長にあっては、初期段階で生成される窒化ガリウムの結晶核は大型で、且つ密度も低くこれを核として成長する結晶成長物も大きな塊となるため粗面となることが示されている(前出の特開昭60−175412参照)。
【0005】
含窒素 III−V族化合物半導体層をVPE法やMOCVD法により成膜する場合には、表面状態の向上等のために水素ガスからなる成膜環境を創出することは不可欠ではあるものの、上記の如く水素の気体密度が小さい事による弊害も避けられない。
このため、最近では基板上方の熱対流を克服して基板表面への原料ガスの充分な供給を意図して、水素ガスと窒素ガスとの混合ガス気流中で含窒素 III−V族化合物半導体層を成膜する技術が示されている(特開平4−164895及びUSP5,334,277参照)。
窒素ガスは水素ガスに比し、約13.9倍である1.2506g/ccの気体密度(前出の「改訂4版化学便覧−基礎編II」、II−4頁)を有するため、水素ガスの熱上昇を抑制すると期待されるからである。
成長雰囲気に関する一つの応用例としては、第1の工程では水素ガスを混合せずに窒素(N2 )、アルゴン(Ar)並びにヘリウム(He)等の不活性ガス雰囲気中で成長を実施し、続く第2の工程に於いてこれらの不活性ガスを含まない水素ガスのみから構成される雰囲気中で成長を行う方法も提示されている(前出の特開昭60−175412)。
【0006】
ここで、水素と窒素との混合ガス雰囲気を利用して含窒素 III−V族化合物半導体層の成膜を果たすための従来技術の例を記す。
その一つの例は、基板の一主面に略平行に水平方向から原料を含むガスを供給し、尚かつ基板の一主面に垂直(鉛直)な方向からも熱対流により基板上部に上昇してくるガスを押さえつける為の『押圧』ガスを流通する方法を利用する技術である(前出の特開平4−164895及びUSP5,334,277)。
基板に対して水平並びに鉛直方向からガスを成膜環境内に流通させる方法は、現在では『ツーフロー(two flow)』方式と呼ばれているが、特に『押圧』ガスを利用する技術は、実際には古くから窒化ガリウム及び窒化アルミニウム・ガリウムのMOCVD成長に既に利用されている(前出の特開昭60−175412及びM.Matloubian and M.Gerschenzon、J.Electron.Mater.,14(5)(1985)、p.633−644.)。
窒素ガスの気体(ガス)密度は前記した様に水素ガスのそれよりは大きいものの、原料ガスを被堆積(基板)面まで安定して到達させる効果を充分に発揮するには至っていない。成膜の再現性に乏しい問題が依然として残留している。
【0007】
また、別の従来技術の例を挙げれば、水素及び窒素ガスからなる混合気体から構成される雰囲気を使用する含窒素 III−V族化合物半導体の成膜にあって、原料を含む成長雰囲気を創出するガス気流に対し、被堆積面である基板の一主面を傾斜させて配置する成膜方法も開示されている(特開昭63−188935)。被堆積物の表面に対し、鉛直方向から原料を含むガスを供給した場合、基板表面に衝突した原料の分子は高温に加熱された基板からの熱エネルギーを受けて略鉛直方向に逃避、飛散する。成膜速度を高めるにはいわゆる境界層内の原料分子の濃度を高くする必要がある。境界層とは、被堆積物の極く表面を被覆する『層』であり、原料分子がこの境界層内に滞留する機会が多い程、一般には大きな成膜速度が与えられる。境界層に対し鉛直方向から原料分子が侵入し、略鉛直方向に逃避すると云う事態は、原料分子がほぼ最短の距離をもって境界層内を通過することを意味する。
原料分子を随伴する気流を被堆積物の表面に対し斜め方向から入射させると、原料分子は境界層に斜め方向から侵入し、その層内を斜めに横切るが如く脱出する。即ち、境界層内に滞留する機会(時間)が増加する。従って、成膜速度の増大がもたらされる。これが、成膜に関与する原料分子を随伴する気流の方向に対し、被堆積物の表面を傾斜させる主たる理由である。特に、連続した膜を得るのが比較的困難とされる窒化ガリウム或いは窒化アルミニウムの様な含窒素 III−V族化合物半導体層の成膜にあっては、気流に対してこの様な傾斜的な基板の配置は特に有効であるとされる(前出の特開昭63−188935)。
しかし、たとえ水素ガスに比し10倍を越える気体密度を有する窒素ガスを混合させた水素−窒素混合ガスからなる成膜雰囲気下であっても、含窒素 III−V族化合物半導体層の高温成長に伴う熱対流を克服して、安定的に成膜を実施するには困難が残存する。一つの具体例を挙げれば、窒化ガリウムの微結晶粒が相互に融合して連結してなる連続膜が得られる領域は、上記した原料を含む気流が吹き付けられる基板の極く一部の領域に限られていることにある。
【0008】
次に、従来の水素と窒素からなる雰囲気中で成膜した含窒素 III−V族化合物半導体層の光学的特性の一例を述べる。
図1は温度1050℃で水素雰囲気中で成膜させた窒化ガリウムの室温フォトルミネッセンス(PL)スペクトルの一例である。トリメチルガリウムの成膜環境への導入量は約4×10-4モル(mol)/分であり、アンモニア(NH3 )(濃度100%)のそれは4.0リットル/分である。波長365nmの近傍に出現するピークが窒化ガリウムのバンド端のピーク(101)である。そのフォトルミネッセンス発光強度を本発明では記号I0 で表す。また、約570nmの波長を中心として半値幅の広いブロードなピーク(102)も出現する。このピークは、結晶内の欠陥や不純物などに由来する準位に起因するもので、一般的にこの様なエネルギー準位は“深い”準位と呼ばれる。その強度を本発明ではIで表す。
水素と窒素との混合ガスなどからなる従来の雰囲気内で成膜された窒化ガリウムから得られるIはI0 に比較して強く、その強度比(I0 /I)は通常では最大で0.50程度となる。希にI0 /Iが約1、或いは極く希にI0 /Iは8程度即ち、I0 がIを上回る場合が認められる。
しかし、従来の水素と窒素との混合気体からなる成長雰囲気で成長した膜では強度比I0 /Iは不安定であり、特にその強度比を10以上とする含窒素 III−V族化合物半導体層を安定した再現性をもって得るには至らない。
発光素子等の光半導体装置にこの様な“深い”エネルギー準位を保有する含窒素 III−V族化合物半導体層を利用する、特に活性層である発光層に利用するのは好ましくない。何故ならば、発光層から発せられる発光の一部がこの“深い”準位の欠陥などに吸収され発光素子の高輝度化を阻害するからである。従って、高輝度のLEDなどの性能の優れた光半導体装置を安定的に得るには、極めて大きなI0 /Iを有する含窒素 III−V族化合物半導体層を再現性良く得る必要があった。
【0009】
MOCVD法或いはVPE法による含窒素 III−V族化合物半導体層の従来の成膜技術に於いては、分子量を39.95とするアルゴン等の不活性ガスのみをキャリアガスとして用いた例が知られている(前出の特開昭60−175412及びM.Sano他、Jpn.J.Appl.Phys.、15(1976)、1943−1950)。反応性マグネトロンスパッタリング法による含窒素 III−V族化合物半導体層の従来の成膜技術に於いては、窒素とアルゴン(Ar)からなる混合気体がキャリアガスとして用いられた例もある(N.Newman、et al.、Appl.Phys.Lett.、62(1993)、1242−1244)。
この従来例に於いては、キャリアガスをアルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合気体をキャリアガスとし、それを成膜環境内に導入することによって、不活性ガスのみからなる成膜雰囲気を創出している。
しかし、水素ガスが含まれない雰囲気は、半導体装置の作製に供与できる充分に良好な表面モホロジーを呈する III−V族化合物半導体層を与え難いことが指摘されている(上記のM.Sano、et al.、Jpn.J.Appl.Phys.、15(1976)、1943−1950)。また、不活性ガスのみの成長雰囲気からは結晶性が著しく悪い窒化ガリウムが形成されると記されている(前出の特開昭60−175412)。
これは、含窒素 III−V族化合物半導体層の気相成長には水素ガスを含む混合気体からなる雰囲気の必要性を示唆していることに他ならない。水素のみからなる成膜雰囲気では、前記した如く基板表面近傍から上方への舞い上がりを充分に防止するに至らない。従って、成膜効率の向上がもたらされ、且つ良好な表面状態を与えるために都合の良い雰囲気を構成する水素ガスの混合比率を明確にする必要がある。しかし、従来に於いて水素と窒素以外の例えば第VIII族元素の気体との都合の良い混合比率を明確に規定した例は開示されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
含窒素 III−V族化合物半導体層を成膜するための従来の気相成長技術を省みれば、これらの化合物半導体層の成膜には主に1000℃前後の高温が必要とされることに起因して次の問題点が存在している。
(a)基板上方への原料を含む雰囲気ガスの激しい上昇気流の発生
これに関連する
(b)成膜原料の基板表面近傍の領域からの離脱、逃避
(c)基板表面近傍の領域に於ける成膜原料の濃度不足
【0011】
上記の従来の問題点が帰結するところは、
(1)膜の連続性の欠如
(2)表面モホロジー(表面状態)の悪化
これらに付随する
(3)光学的並びに電気的特性の悪化
に代表される。
FETやホール素子等の電子デバイスの特性改善には、特にそれらの素子を構成する含窒素 III−V族化合物半導体層の電気的特性の向上が必要である。フォトダイオード(PD)、レーザーやLED等の光半導体装置の特性改善には発光層等の機能層を構成する含窒素 III−V族化合物半導体層の光学的特性の向上が要求される。
これらの特性向上は、含窒素 III−V族化合物半導体層の特性は勿論のこと、膜(層)の連続性や表面状態に強く依存する。膜の連続性の欠如は電子移動度の低下などを来し、FETの相互コンダクタンス(gm )を向上させる上で好ましくはない。
連続性を有する含窒素 III−V族化合物半導体層を得るには成膜時の熱対流を抑制する必要がある。反面、良好な表面状態を得るには水素ガスの存在が必要となる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明では成膜を実施する雰囲気に特に注目し、従来技術に新たな改良を加え、連続性を有し且つ良好な表面モホロジーが与えられる成長環境をもって成膜された、電気的或いは光学的特性に優れた含窒素 III−V族化合物半導体層と該半導体層を備えてなる半導体装置を提供することを目的とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
(I)即ち、本発明は結晶基板上に深いエネルギー準位からの発光が抑制された良質の窒素を含む III−V族化合物半導体(含窒素 III−V族化合物半導体)層の製造方法に於いて、分子量を(M’)とする窒素供給源を使用し、水素と分子量を(M)とする第VIII族元素の単原子分子気体とが混合されてなり、且つ水素と第VIII族元素の単原子分子気体との混合比率(r)を
0.80{(M’−2)/(M−2)}≦r≦1.2{(M’−2)/(M−2)} ‥‥‥ (1)
とする混合気体の雰囲気中で成長させる手段を採用した。
これにより、含窒素 III−V族化合物半導体層であって、バンド端のフォトルミネッセンス発光強度(I0 )と550nm以上650nm以下の波長領域に中心波長を有するフォトルミネッセンス発光の強度(I)との強度比(I0 /I)を10以上とする化合物半導体の効率よい成長方法を提供する。
【0014】
第VIII族元素には分子量(M)が4.00のヘリウム(He)、M=20.18のネオン(Ne)、M=39.948のアルゴン(Ar)、M=83.80のクリプトン(Kr)やM=131.30のキセノン(Xe)などがある。
従って、水素と第VIII族元素の混合気体には水素−ヘリウム、水素−ネオン、水素−アルゴン、水素−クリプトンや水素−キセノンなどがある。本発明ではこれらの第VIII族元素からなる気体と水素とを混合させてなる混合気体からなる雰囲気を創出し、含窒素 III−V族化合物半導体層の成膜を実施する。
気体密度を0.0898g/ccとする水素ガスを含む成膜雰囲気膜への第VIII族元素からなる気体の混合は、第VIII族元素からなる気体が水素ガスよりも気体密度を大とするため、水素ガスのみから構成される雰囲気中よりも高温環境下に於ける上方への熱対流を抑制するのに効果がある。
原料ガスを随伴する気流の基板表面からの上昇が抑制されれば、基板表面近傍に効率的に原料が供給され得る。基板表面での原料の濃度が高められることにより、基板表面へ堆積する結晶核や結晶粒の密度が増大すると共に、成膜速度が増加するため連続性のある含窒素 III−V族化合物半導体膜が得られる利点がある。
しかし、一方では成長雰囲気中の水素の比率が小さすぎる場合には、例えばトリメチルガリウムの分解が完全に行われずに、結晶中にメチル基がとりこまれて結晶の特性が低下することは前述の通りである。
我々は、水素と第VIII族元素からなる気体との混合比(r)を変えた条件で実験を試み、rが式(1)の最左辺よりも小さい場合、基板全体を覆う半導体結晶膜の成長がみられず、島状の結晶粒の付着を見るのみであり、式(1)の最右辺よりも大きい場合には、結晶は深い準位を発生するような欠陥を多く含み、半導体装置として従来のものを上回る特性が得られない事を見いだした。
【0015】
トリメチルガリウム((CH33 Ga)をガリウム(Ga)源とし、分子量を約17.03(M’=17.03)とするアンモニア(NH3 )を窒素供給源とする常圧(大気圧)MOCVD気相成長方式による窒化ガリウムの成膜を例にして、連続性を有する含窒素 III−V族化合物半導体層の成膜の容易さを説明する。
トリメチルガリウムを約4×10-4(mol/分)、アンモニア(濃度100%)を4.0(リットル/分)をもって成膜環境へ添加した場合、水素のみからなる雰囲気内では1時間の成膜継続時間をもってしても、サファイア基板上の一部の結晶粒は融合するものの、全体的に連続な膜とはならない。この場合、r=0.4であり、(M’−2)/(M−2)=0.39である。従って、(1)式の関係を満足している。
一方、本発明に係わる水素(体積比=60%)−アルゴン(体積比=40%)混合気体からなる雰囲気内では緩衝層を備えていないサファイア基板上に約20分程度の成膜時間で連続膜を安定してもたらす作用がある。
本発明では上記の水素とアルゴンとの混合雰囲気の例の様な水素と第VIII族元素の気体との混合雰囲気内で成膜した含窒素 III−V族化合物半導体層を利用して半導体装置を構成する。
【0016】
(II)また、本発明では、前記水素と第 III族元素の混合気体の中でも、特に水素と気体密度を窒素より大とする第VIII族元素の気体との混合気体からなる雰囲気中で成長させる方法を提供する。
空隙や間隙の密度が著しく小さい連続性のある含窒素 III−V族化合物半導体膜を得ると云う観点からすれば、水素と窒素よりも気体密度が大きい第VIII族元素の気体とを主成分とする混合気体雰囲気中での成膜は、特に効果が顕著となるからである。
気体密度を1.2506g/ccとする窒素よりも大きな気体密度の第VIII族元素からなる気体にはアルゴン(気体密度=1.7832)、クリプトン(気体密度=3.708)やキセノン(気体密度=5.85)がある(前出の「改訂4版化学便覧−基礎編」、II−4頁)。従って、水素ガスと窒素ガスよりも気体密度を大とする第VIII族元素の気体とからなる混合気体の例には水素−アルゴン、水素−クリプトンや水素−キセノン等が挙げられる。
窒素より気体密度の大きな第VIII族元素の気体を混合させるとことにより、原料分子の舞い上がりが抑制され、基板表面近傍での原料分子の濃度を高濃度に維持することができる。水素ガスと混合させる気体が特に窒素より気体密度の大きな第VIII族元素の気体である場合には、原料分子の舞い上がりを抑制するのに水素ガスに対する混合比率を格別に高める必要もない。これによって成膜雰囲気を形成する混合気体にあって、占有する水素ガスの量を極端に減少させる必要も無くなる。従って、この場合でも水素との混合割合は式(1)を満足するようにすればよい。
水素ガスと窒素ガスより気体密度を大とする第VIII族元素からなる気体との混合気体からなる成膜雰囲気の創出は、連続した且つ表面モホロジーに優れる含窒素 III−V族化合物半導体層の成膜を容易にする。本発明では、この様な連続性を有し表面状態に優れる含窒素 III−V族化合物半導体層を利用して半導体装置を構成する。
【0017】
また、水素と第VIII族元素ガスとからなる混合雰囲気としては、水素と複数種の第VIII族元素の気体との混合雰囲気であってもよい。この例には水素−アルゴン−ヘリウム、水素−アルゴン−ネオン、水素−アルゴン−クリプトンや水素−ヘリウム−ネオン等が該当する。複数種の第VIII族元素の気体と水素ガスとの具体的な混合例には、3.0リットル/分の水素ガスと1.8リットル/分のアルゴンと0.2リットル/分のヘリウムとを成膜反応系内に流通することによって創出される水素(体積比60%)−アルゴン(体積比36%)−ヘリウム(体積比4%)雰囲気がある。
複数種の第VIII族元素の気体を混在させる主たる理由は、雰囲気を構成する気体の平均分子量を調節するためである。
ここでは、混合気体の平均分子量(記号Mave.で表す。)は各気体の分子量(記号M1 、M2 、M3 、‥‥‥、Mn で表す。)と体積比率(%)(記号V1 、V2 、V3 、‥‥‥、Vn )を基に次式(2)から単純に算出する。
ave.=Σ(Mn ×Vn )/100 ‥‥‥ (2)
特に分子量をM’とする窒素供給源ガスと雰囲気を構成する混合気体との分子量を概略同一とすることによって、雰囲気内での原料分子の選択的な舞い上がりを防止するためである。
原料分子を熱対流を克服して効率良く基板表面近傍に到達させることができれば連続膜の形成を容易にする。本発明ではこの様な成膜環境下で成膜した含窒素 III−V族化合物半導体層を備えた化合物半導体装置を提供する。
【0018】
水素と第VIII族元素の気体との混合気体からなる雰囲気を創出するに際して、水素と第VIII族元素の気体との混合比率(r)は特許請求の範囲に記載の式(1)を満足する様に設定する。複数種の第VIII族元素の気体を混合させてなる気体のM’は各第VIII族元素の気体の分子量とその体積分率から求められる重平均値とする。即ち、前記したMave.をMとする。
混合比率(r)は水素ガスの占有する体積をVH 、第VIII族元素の気体が占める体積をVI とすれば次の式(3)で与えられる。
r=VI /(VH +VI ) ‥‥‥ (3)
即ち、rは雰囲気を構成する気体の総体積に占める第VIII族元素の気体の体積比率を表す。VH 及びVI は成膜環境に流通させる水素ガスの総流量及び第VIII族元素の気体の総流量とみなすことができる。
例えば、窒素供給源としてアンモニア(式(1)に於ける分子量M’=17.03)を使用し、水素とアルゴンとの混合気体雰囲気内で窒化ガリウム等を成膜する場合を想定する。
アルゴンのMは39.95であるから、rの好ましい範囲は式(3)より、0.316≦r≦0.473となる。従って、成膜環境内に流通させる水素キャリアガス等の水素ガスの量と第VIII族元素の気体と量との和である気体の総量が5.0リットル/分と固定されている場合、VI は1.580≦VI ≦2.365となり、一方、VH はVH +VI =5.0であるから2.635≦VH ≦3.420となる。
rの値はVI 及びVH を相互に調整することによって式(3)で示される範囲に収納させる。rをこの範囲に収納することによって水素キャリアガス等が随伴する原料ガスの分子を効率良く成膜が実施される領域へと搬送できる。これにより連続性のある含窒素 III−V族化合物半導体層の成長を安定して達成できる。rを式(1)を満足する以外の値とするとその効果は必ずしも充分とはならない。
【0019】
本発明に係わる化合物半導体装置を構成する含窒素 III−V族化合物半導体層は、上記の混合比率(r)の範囲をもって水素ガスと第VIII族元素の気体との混合気体からなる雰囲気内で成膜された含窒素 III−V族化合物半導体層である。すなわち、バンド端のフォトルミネッセンス発光強度(I0 )と、550nm以上で650nm以下の波長領域に中心波長を有するフォトルミネッセンス発光の強度(I)との強度比(I0 /I)が10以上である含窒素 III−V族化合物半導体層である。
さらに本発明により成膜された、深いエネルギー準位を形成する結晶欠陥や不純物等の密度が減少された良質の含窒 III−V族化合物半導体層を利用して、デバイス特性に優れた化合物半導体装置を提供する。
深いエネルギー準位とは、例えば室温での禁止帯幅を約3.4eVとする窒化ガリウム半導体の伝導帯、または価電子帯から数百ミリエレクトロンボルト(meV)に形成される準位である。
本発明では特に550nm以上で650nm以下の波長領域にフォトルミネッセンス発光を与える深いエネルギー準位の結晶欠陥或いは不純物等の密度が化合物半導体のデバイス特性に好ましからぬ影響を与える主たる要因として注目しているものである。
我々が行った、一般的なフォトルミネッセンス法と一般的なホール効果によって測定した移動度およびキャリア濃度との対応を付けた実験では、I0 /I 100cm2 /V・secを超える事はなく、デバイスを形成するに充分な特性を備えているとは言えない。よって、デバイスを形成するに足る結晶性は、I0 /Iが10以上を示すものと規定する
【0020】
(III)また、本発明は上記の混合比率(r)の範囲をもって水素ガスと第VIII族元素との混合気体からなる雰囲気内で成膜された含窒素 III−V族化合物半導体層であって、バンド端のフォトルミネッセンス発光強度(I0 )と、550nm以上で650nm以下の波長領域に中心波長を有するフォトルミネッセンス発光の強度(I)との強度比(I0 /I)を10以上とする含窒素 III−V族化合物半導体層を提供する。
【0021】
図2に前記のrを0.300とする水素−アルゴン混合雰囲気内に於いて成膜された窒化ガリウムのフォトルミネッセンススペクトルの一例を示す。窒化ガリウムの成膜条件は図1に説明を加えた窒化ガリウムと成長温度並びに成長条件を同一としている。
rを(式1)に示される範囲内の0.300とすることによって、I0 /Iを10以上とすることができる。しかも、安定してI0 /I≧10を達成することが可能となる。更に、rを0.400±0.020の範囲に収納させるとI0 /I≧20とする含窒素 III−V族化合物半導体層を安定して得ることができる。即ち、本発明の成膜雰囲気を利用すれば、rを調節してある範囲に収納させると云う単純な操作によってI0 /Iを高比率とすることができる。
この比率の増大は主にIの低下に依ってもたらされるものである。従って、
“深い”不純物準位が少なくなったことに基づくものである。この様な“深い”不純物準位が少ない含窒素 III−V族化合物半導体層はバンド端からの純粋な発光にあって、強度的に優れることから結晶性も当然良好で光半導体装置の発光層とするに好都合である。
【0022】
含窒素 III−V族化合物半導体層の一般的な気相成長方法には常圧または減圧MOCVD法、ハロゲンまたはハライドVPE法等が挙げられる。これらの気相成長方法では通常、原料を随伴するに水素ガスがキャリアガスとして利用される。このキャリアガスは成膜環境内に導入され、成膜雰囲気を創出する。この水素キャリアガスに適宣、第VIII族元素の気体を混合させればrを調整することができる。
rは成膜を継続中に随時、式(1)に示される範囲内で変化を与えることもできる。例えば、基板上に最初に堆積する緩衝層にあっては、継続して堆積する層の表面状態を良好に保持するために表面状態の優良性が得られる範囲内にrを設定する。これに対し、活性層には電気的並びに光学的に優れる高品質の含窒素 III−V族化合物半導体層が要求されるため、優れた表面状態が得られ、尚且特性の優位性が得られるrに変化させる例がある。
【0023】
(IV)これより、本発明では特にrに変化を与えることによって得た、I0 /Iを10以上とする含窒素 III−V族化合物半導体層を緩衝層として備え、I0 /Iを20以上とする含窒素 III−V族化合物半導体層を活性層として備えてなる化合物半導体装置を提供する。
前記した如く式(1)で与えられるrの範囲内に於いて、rを変化させれば、それに伴ってI0 /Iが変化する。従って、例えば水素−アルゴン混合気体からなる成膜雰囲気内に於いて、緩衝層は式(1)を満足するrの範囲に於いて成膜を実施し、然る後、rを0.400±0.020の範囲内とし、活性層を成膜する。
当然のことながら、rをI0 /Iを20以上とする含窒素 III−V族化合物半導体層が定常的に得られる上記の0.380≦r≦0.420に固定して緩衝層と活性層とを成長させても差し支えない。
我々は、積層構造を形成して素子構造とし通電発光させる実験により、I0 /Iが20以上の結晶を発光層として使用したところ、発光強度が1cdを越える事を見いだした。この素子は、従来のものより優れているため、発光層として用いる結晶の結晶性はI0 /Iが20以上を示すものと規定する。
【0024】
本発明に係わる化合物半導体装置を構成する含窒素 III−V族化合物半導体層を得るにあたって、基板材料には特に制限は加わらない。
各面方位のサファイア(アルミナ単結晶)やスピネル基板等の絶縁性基板の他、シリコン(Si)、リン化ガリウム(GaP)やヒ化ガリウム(GaAs)等の半導体単結晶基板を使用できる。アルミニウム(Al)等の金属や低温での成膜が可能であれば導電性ガラスなどの導電性基板を用いることができる。
【0025】
本発明に依って成膜する含窒素 III−V族化合物半導体層は単結晶に限定されない。
従来から、いわゆる緩衝層と基板との中間に挿入される、単結晶層より低温で成長される非晶質の含窒素 III−V族化合物半導体層の成膜にも利用できる。この非晶質の含窒素 III−V族化合物半導体層は、単結晶層の表面モホロジーの改善のために挿入されるもので、前出の緩衝層とは区別して、特に『低温緩衝層』と称する。一般に使われている緩衝層は混晶層やドーパントを添加した層の下地層として形成されるものであって、単結晶で構成されている。
本発明の作用、効果は含窒素 III−V族化合物半導体層の導電型の如何を問わず得られる。
【0026】
【作用】
水素と不活性気体の混合気体からなる成長雰囲気は含窒素 III−V族化合物半導体層の連続性を与える作用を有す。また、水素と不活性気体の混合比率の規定は深い準位の格子欠陥を排除し、含窒素 III−V族化合物半導体層の発光特性の改善をもたらす。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
本発明の実施形態の一つとして、水素とアルゴンとの混合気体をキャリアガスとしたGaNのMOCVD成長についての実施例を基に具体的に説明する。
図3に本実施例で使用したMOCVD成長気相成長装置の概略模式図を示す。反応室(320)に通ずるメイン配管(301)には、ヘリウム、アルゴンなどの第VIII族ガス(302)と水素ガス(303)が流通できる。この配管には、液化アンモニアボンベ(304)およびステンレス鋼製容器((305)、(307)及び(309))に収容したトリメチルガリウム(Ga(CH33 )(306)、トリメチルアルミニウム(Al(CH33 )(308)及びシクロペンタジエニルインジウム(C55 In)(310)が各々、接続されている。
これら第 III族元素の供給源の内、ステンレス鋼製容器((305)及び(307))は恒温槽((311)及び(312))によって、0℃に保持した。一方、シクロペンタジエニルインジウム(310)を収納したステンレス容器(309)は恒温槽(313)によって70℃に保持した。
【0028】
成長を開始する以前にはバルブ(314−1)は閉じて、(314−2)は開けた状態とし、気化したトリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素ガスは配管(315)を通じて成長系外に排気させておいた。
液体状態となる様に加温され保温されたトリメチルガリウム(306)及びトリメチルアルミニウム(308)は、それらの液面下に高純度水素からなるキャリアガス((316−1)及び(316−2))を流通しバブリング(発泡)させる事により気化を促進した。気化したこれらガリウム及びアルミニウム供給源の蒸気を含む水素キャリアは成長時には、メイン配管(301)内を流通する成長雰囲気を創出するキャリアガスに合流させる。
【0029】
基板(319)としたサファイア結晶は反応室(320)に導入する直前に、有機溶剤及びフッ酸アンモニウム水溶液で洗浄して充分に乾燥させた後、加熱体(317)上にほぼ室温で載置した。
その後、配管(303)から3.0リットル/分の流量の高純度水素ガスと配管(302)から2.0リットル/分の流量の精製アルゴンガスを供給した。メイン配管(301)内で合流させることで得た水素とアルゴンからなる混合ガスはメイン配管(301)内を通じて反応室(320)に流通した。
混合気体からなるキャリアガスの反応室(320)への導入を開始して20分後に、加熱体に通電を開始して基板(319)を1000℃に加熱した。成長室(320)内の圧力はほぼ大気圧に継続して保持した。
【0030】
加熱体(317)の内部に配置された熱電対によって基板(319)の温度が1000℃に到達したと測温されてから20分間、同温度に基板(319)を保持した後、液化アンモニアガスボンベ(304)より気化したアンモニアガスを4.0リットル/分の流量をもってメイン配管(301)に導入した。
引き続いて、バルブ(314−2)を開状態から閉状態に切り替えると同時にバルブ(314−1)を逆に閉状態から開状態に切り替えて、0.02リットル/分の高純度水素ガスによるバブリング操作で気化したトリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素ガスを、配管(301)に導入して水素とアルゴンの混合気体であるキャリアガスと合流させた。
基板(319)の温度を1000℃に、また成長室(320)内の圧力をほぼ大気圧に保ちながら、第 III族元素を含む混合気体からなるキャリアガスを石英ノズル(318)の内部に流入させ、サファイア基板(319)の表面に向けて60分間に亘り断続なく供給し、アンドープの窒化ガリウム層を成膜した。
然る後、バルブ((314−1)及び(314−2))の開閉状態を逆転させて、トリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−1)のメイン配管(301)への合流を停止した。瞬時後、加熱体(317)への通電も停止し、基板(319)の温度を室温迄、降温させ窒化ガリウムの成膜を完了した。
【0031】
本実施例に於いては、アルゴンガスの流量は2.0リットル/分であり、水素ガスの流量は3.0リットル/分であるから本文中で式(1)で定義される第VIII族ガスの混合比率を示すrは0.400となる。また、本文中(1)式左辺で示される0.80{(M’−2)/(M−2)}は、0.8×(17.03−2)/(39.948)=0.3168、右辺で示される1.2×{(M’−2)/(M−2)}は、1.2×(17.03−2)/(39.948)=0.4752で、式(1)は0.3168<0.4<0.4752となり、満足されている。
以上の気相成長操作により、サファイア基板(319)上に得られた層厚を約1μmとするGaN成長層の表面状態を通常の走査型電子顕微鏡によって観察した。本発明に係わる方法によって得たGaN結晶層の密度は充分に密であり、その表面状態も平坦性に優れたものとなった。また、一般的なフォトルミネッセンス法により発光スペクトルを観測したところ、バンド端のフォトルミネッセンス強度(I0 )と550nm以上で650nm以下の波長領域に中心波長を有するフォトルミネッセンス発光の強度(I)との強度比(I0 /I)は約50であった。
即ち、本発明によれば特性に優れる半導体装置を得るに充分に足る連続性があり、且つまたフォトルミネッセンス発光特性に優れる窒化ガリウム層が得られることが示された。
【0032】
(実施例2)
図3に示す成長装置でキャリアガスとして水素とアルゴンの混合気体及び水素とアルゴンとヘリウムの混合気体を使用し、直径2インチの円形のサファイア基板上に低温で成長させたAl0.7 Ga0.3 N低温緩衝層を形成させた後に、In0.1 Ga0.9 Nを成長する実施例を述べる。
成長を開始する以前の段階に於いて、バルブ((314−1)及び(314−3)及び(314−5))は閉じて、バルブ((314−2)及び(314−4)及び(314−6))は開状態に維持して於いた。このバルブの開閉状態では、気化したトリメチルガリウム(306)及びトリメチルアルミニウム(308)及びシクロペンタジエニルインジウム(310)の蒸気を含む水素キャリアガス((316−1)及び(316−2)及び(316−3))は配管(315)を通じて成長系外へと排気させている。
【0033】
基板(319)としたサファイア(アルミナ単結晶)は上述の(実施例1)と同様の洗浄を施した後、反応室(320)内の加熱体(317)上に載置した。
その後、配管(302)を経て供給される2.3リットル/分の流量の精製されたアルゴンガスと、配管(303)を経て供給される2.7リットル/分の流量の水素ガスとを混合させてなるキャリアガスをメイン配管(301)を通じて反応室(320)内に導入した。これにより、反応室(320)内を、本文中に式(1)により示されるrを0.46とする水素とアルゴンからなる成長雰囲気とした。この場合の式(1)の右辺、左辺は実施例1と同じであり、故に式(1)を満足している。
【0034】
水素−アルゴン混合キャリアガスの反応室(320)内への導入を開始して20分を経過した後に、反応室(320)内の圧力をほぼ大気圧に保持しながら、加熱体(317)に通電を開始して基板(319)を600℃に加熱した。
基板(319)の温度が600℃に到達してから20分間に亘り同温度に基板(319)を保持した後、液化アンモニアボンベ(304)から気化させた第V族元素の供給源としたアンモニアを流量にして1リットル/分に調節してメイン配管(301)に導入した。
暫く後に、ガリウム供給源(306)に付帯するバルブ(314−2)を閉じてバルブ(314−1)を開け、同じくアルミニウム供給源(308)に付帯するバルブ(314−4)を閉じてバルブ(314−3)を開け、気化させるための水素ガス(316−1)の流量を3ミリリットル/分としたトリメチルガリウム(306)と、気化させるための水素ガス(316−2)の流量を17ミリリットル/分としたトリメチルアルミニウム(308)をメイン配管(301)に導入した。
【0035】
基板(319)の温度を600℃に保持し、また反応室(320)内の圧力をほぼ大気圧としたまま、第 III族元素を含む混合気体からなるキャリアガスを石英ノズル(318)の内部に流入させ、サファイア基板(319)の表面に向けて15分間に亘り断続なく供給して、膜厚50nmのアンドープのAl0.7 Ga0.3 N低温緩衝層を成膜した。
【0036】
しかる後、バルブ((314−1)及び(314−2))及びバルブ((314−3)及び(314−4))の開閉状態を逆転させてトリメチルガリウム(306)、及びトリメチルアルミニウム(308)の蒸気を含む水素キャリアガス((316−1)及び(316−2))のメイン配管(301)への合流を停止した。その後、加熱体(317)に通電する電流を制御しながら増加させ、基板(319)の温度を20分後に800℃となるように上昇させた。この間、アルゴンと水素の混合ガスからなるキャリアガスとアンモニアガスは、配管(301)を通じてノズル(318)より基板(319)の表面に向けて流通させておいた。
【0037】
加熱体(317)の内部に配置された熱電対によって基板(319)の温度が800℃に到達したと測温されてから20分間、同温度に基板(319)を保持した後、メイン配管(301)に導入するアルゴンガス(302)の流量を1.8リットル/分及び水素ガス(303)の流量を3.0リットル/分とし、更にヘリウムガス(He)の流通を0.2リットル/分の流量で開始した。ヘリウムガスはアルゴンガスと共に配管(302)を流通させてメイン配管に添加した。この水素−アルゴン−ヘリウム混合気体はrを0.40とする第VIII族元素を含む混合雰囲気をほぼ大気圧に保持されている反応室(320)内に創出する。この場合、(2)式よりMave.を計算すると、1.8×39.948+0.2×4.003=36.4であり、(1)式のM’にこれを代入すると、左辺の0.8×{(Mave.−2)/(M−2)}=0.8×(15/34.4)は0.349、右辺の1.2×{(Mave.−2)/(M−2)}=1.2×(15/34.4)は0.523となり、式(1)は0.349<0.4<0.523となる。よってこの成長雰囲気は、式(1)を満足している。
しばらく後にアンモニアガスの流量を4.0リットル/分に変更した。
引き続いて、バルブ(314−2)を開状態から閉状態に切り替えると同時にバルブ(314−1)を逆に閉状態から開状態に切り替えて、20ミリリットル/分の高純度水素ガスによるバブリング操作で気化したトリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素ガスを、配管(301)に導入して水素とアルゴン及びヘリウムの混合気体であるキャリアガスと合流させた。
その後に、バルブ(314−6)を開状態から閉状態に切り替えると同時にバルブ(314−5)を逆に閉状態から開状態に切り替えて、100ミリリットル/分の高純度水素ガスによって気化させたシクロペンタジエニルインジウムの蒸気を含む水素ガスを、配管(301)に導入して水素とアルゴン及びヘリウムの混合気体であるキャリアガスと合流させた。粉末の状態でステンレス鋼製の容器(309)に収納されたシクロペンタジエニルインジウム(310)は、その粉末の隙間にキャリアガス(316−3)を流通させる事により昇華を促した。
【0038】
基板(319)の温度を800℃に、また反応室(320)内の圧力をほぼ大気圧に保ちながら第 III族元素を含む水素−アルゴン−ヘリウム混合気体からなるキャリアガスとアンモニアガスを石英ノズル(318)の内部に流入させ、サファイア基板(319)の表面に向けて60分間に亘り断続なく供給し、Al0.7 Ga0.3 N低温緩衝層の上に層厚約1μmのアンドープのIn0.1 Ga0.9 N層を成膜した。
然る後、バルブ((314−1)及び(314−2))の開閉状態を逆転させて、トリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−1)のメイン配管(301)への合流を停止し、バルブ((314−5)及び(314−6))の開閉状態を逆転させて、トリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−1)のメイン配管(301)への合流を停止した。加熱体(317)への通電も停止して基板(319)の温度を室温迄降温させ、In0.1 Ga0.9 Nの成膜を完了した。
【0039】
以上の気相成長操作により、サファイア基板(319)上に得た層厚を約50nmとするAl0.7 Ga0.3 N低温緩衝層と、その上に成膜した層厚約1μmとするIn0.1 Ga0.9 N成長層の表面状態を通常の走査型電子顕微鏡によって観察した。
得られたIn0.1 Ga0.9 N結晶層の表面は平坦性に優れたものとなった。また、一般的なフォトルミネッセンス法により発光スペクトルを観測したところ、バンド端のフォトルミネッセンス強度(I0 )と550nm以上で650nm以下の間の波長領域に中心波長を有するフォトルミネッセンス発光の強度(I)との強度比(I0 /I)は約50であった。
目視で成長層を形成させたウエハ表面を観察した結果、基板面には層厚の違いに由来する干渉縞や干渉リングは認められず、無色透明な表面を呈した。このウエハを割り、その断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、膜厚はウエハ全面に亘りほぼ均一であった。
即ち、本発明によれば特性に優れる半導体装置を得るに充分に足る連続性があり、且つまたフォトルミネッセンス発光特性に優れる窒化ガリウムインジウム層が水素−アルゴン−ヘリウム混合雰囲気の創出により得られることが示された。
【0040】
(実施例3)
図4に本実施例で使用したMOCVD気相成長装置の概略模式図を示す。反応室(320)に通ずるメイン配管(301)には、第VIII族のアルゴンガス(302)と水素ガス(303)が流通できる。この配管には、液化アンモニアボンベ(304)、高純度水素ガスによって濃度10ppmに希釈されたジシラン(Si26 )ガスボンベ(321)、高純度水素ガスによって濃度100ppmに希釈されたジメチル亜鉛(Zn(CH32 )ガスボンベ(322)およびステンレス鋼製容器((305)、(307)、(309)および(323))に収容したトリメチルガリウム(306)、トリメチルアルミニウム(308)、シクロペンタジエニルインジウム(310)およびビスシクロペンタジエニルマグネシウム((C552 Mg)(324)が各々、接続されている。
図4に示す成長装置の構成をもってキャリアガスとして水素とアルゴンの混合気体を使用し、サファイア基板(319)上に低温で成長させたAl0.5 Ga0.5 N低温緩衝層(501)を形成した後にSiをドープしたn型のGaN緩衝(502)を成長し、この上に発光層としてZnとSiをドープしたIn0.1 Ga0.9 N層(503)、クラッド層としてMgをドープしたp型Al0.15Ga0.85N層(504)を順次成長させ、発光素子用途の積層構造を得た実施例を述べる。
これら第 III族元素の供給源の内、ステンレス鋼製容器((305)及び(307))は恒温槽((311)及び(312))によって、0℃に保持した。一方、シクロペンタジエニルインジウム(310)を収納したステンレス鋼製容器(309)およびビスシクロペンタジエニルマグネシウム(324)を収容したステンレス鋼製容器(323)は、恒温槽((313)、(325))によって70℃に保持した。
成長を開始する以前の段階に於いて、バルブ((314−1)、(314−3)、(314−5)及び(314−7))は閉じて、バルブ((314−2)、(314−4)、(314−6)及び(314−8))は開状態に維持して於いた。このバルブの開閉状態では気化したトリメチルガリウム(306)、トリメチルアルミニウム(308)、シクロペンタジエニルインジウム(309)及びビスシクロペンタジエニルマグネシウム(324)の蒸気を含む水素キャリアガス((316−1)、(316−2)、(316−3)及び(316−4))は配管(315)を通じて成長系外へと排気されている。
【0041】
基板(319)としたサファイア(アルミナ単結晶)は上述の(実施例1)と同様の洗浄を施した後、反応室(320)内の加熱体(317)上に載置した。その後、配管(302)を経て供給される1.8リットル/分の流量の精製されたアルゴンガスと、配管(303)を経て供給される3.2リットル/分の流量の水素ガスとを混合させてなるキャリアガスをメイン配管(301)を通じて基板(319)の上方より、反応室(320)内に導入した。
これにより、反応室(320)内に本文中に式(2)により示されるrを0.36とする水素とアルゴンからなる圧力をほぼ大気圧とする成長雰囲気を創出した。式(1)の関係は、実施例1と同じであり、式(1)は満足されている。
【0042】
水素−アルゴン混合キャリアガスの反応室(320)内への導入を開始して20分を経過した後に、反応室(320)内の圧力をほぼ大気圧に保持しながら、加熱体(317)に通電を開始して基板(319)を550℃に加熱した。
基板(319)の温度が550℃に到達してから20分間に亘り同温度に基板(319)を保持した後、液化アンモニアボンベ(304)から気化させた第V族元素の供給源としたアンモニアを流量1リットル/分に調節しながらメイン配管(301)に導入した。
暫く後に、ガリウム供給源(306)に付帯するバルブ(314−2)を閉じてバルブ(314−1)を開け、同じくアルミニウム供給源(308)に付帯するバルブ(314−4)を閉じてバルブ(314−3)を開け、気化させるための水素ガス(316−1)の流量を7ミリリットル/分としたトリメチルガリウム(306)と、気化させるための水素ガス(316−2)の流量を13ミリリットル/分としたトリメチルアルミニウム(308)をメイン配管(301)に導入した。
【0043】
基板(319)の温度を550℃に保持したままで、第 III族元素を含む混合気体からなるキャリアガスを石英ノズル(318)の内部に流入させ、サファイア基板(319)の表面に向けて10分間に亘り断続なく供給し、膜厚30nmのアンドープのAl0.5 Ga0.5 N低温緩衝層(501)を成膜した。
【0044】
然る後、バルブ((314−1)及び(314−2))及びバルブ((314−3)及び(314−4))の開閉状態を逆転させて、トリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−1)及びトリメチルアルミニウム(308)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−2)のメイン配管(301)への合流を停止した。
加熱体(317)に通電する電圧を制御しながら増加させ、基板(319)の温度を30分後に1000℃となるように昇温を開始した。この間、成長雰囲気を創出するアルゴンと水素の混合ガスからなるキャリアガスとアンモニアガスは配管(301)を通じて、ノズル(318)より、基板(319)表面に向けて依然として流通させておいた。
【0045】
加熱体(317)の内部に配置された熱電対によって基板(319)の温度が1000℃に到達したと測温されてから20分間、同温度に基板(319)を保持した後、メイン配管(301)に導入するアルゴンガス(302)および水素ガス(303)の流量を同じに保ったまま、アンモニアガスの流量を4.0リットル/分とした。
高純度水素ガスによって10ppmに希釈されたジシランのボンベ(321)より、ドーパント元素であるSi源としたジシランを流量0.01リットル/分に調整しながら、配管(301)に導入し、キャリアガスである水素とアルゴンの混合気体に混入させた。
引き続いて、バルブ(314−2)を開状態から閉状態に切り替えると同時にバルブ(314−1)を逆に閉状態から開状態に切り替えて、20ミリリットル/分の高純度水素ガスによるバブリング操作で気化したトリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素ガスをメイン配管(301)に導入して、水素とアルゴンの混合気体であるキャリアガスと合流させた。
【0046】
基板(319)の温度を1000℃に、また反応室(320)内の圧力をほぼ大気圧に保ちながら、第 III族元素を含む混合気体からなるキャリアガスを石英ノズル(318)の内部に流入させ、サファイア基板(319)の表面に向けて60分間に亘り間断なく供給し、前記のAl0.5 Ga0.5 N低温緩衝層(501)上に、層厚約1μmの濃度約1×1019cm-3のSiをドープしたn型窒化ガリウム緩衝層(502)を成膜した。
然る後、バルブ((314−1)及び(314−2))の開閉状態を逆転させて、トリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−1)のメイン配管(301)への合流を停止した。
加熱体(317)に通電する電圧を制御しながら減少させ、基板(319)の温度を5分後に800℃となるように降温を開始した。この間、成長雰囲気を創出するアルゴンと水素の混合ガスからなるキャリアガス、アンモニアガス、ジシランを含む高純度水素ガスは配管(301)を通じて、ノズル(318)より、基板(319)表面に向けて依然として流通させておいた。
【0047】
加熱体(317)の内部に配置された熱電対によって基板(319)の温度が800℃に到達したと測温されてから20分間、同温度に基板(319)を保持した。高純度水素ガスによって100ppmに希釈されたジメチル亜鉛のボンベ(322)より、ドーパント元素であるZn源としたジメチル亜鉛を流量0.01リットル/分に調整しながら、メイン配管(301)に導入し、キャリアガスである水素とアルゴンの混合気体に混入させた。
バルブ((314−2)及び(314−6))を開状態から閉状態に切り替えると同時にバルブ((314−1)及び(314−5))を逆に閉状態から開状態に切り替えて、20ミリリットル/分の高純度水素ガスによるバブリング操作で気化したトリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素ガスと0.1リットル/分の高純度水素ガス(316−3)によって気化させたシクロペンタジエニルインジウム(310)の蒸気を含む水素ガスをメイン配管(301)に導入して水素とアルゴンの混合気体であるキャリアガスと合流させた。
【0048】
基板(319)の温度を800℃に、また反応室(320)内の圧力をほぼ大気圧に保ちながら、第 III族元素を含む混合気体からなるキャリアガスを石英ノズル(318)の内部に流入させ、サファイア基板(319)の表面に向けて6分間に亘り間断なく供給し、前記のSiをドープしたGaN緩衝層(502)上に、層厚約0.1μmとした濃度約1×1019cm-3のSiと濃度約5×1018cm-3のZnをドープしたGa0.1 In0.9 N層(503)を成膜した。
然る後、バルブ((314−1)及び(314−2))の開閉状態を逆転させて、トリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−1)のメイン配管(301)への合流を停止し、バルブ((314−5)及び(314−6))の開閉状態を逆転させて、シクロペンタジエニルインジウム(310)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−3)のメイン配管(301)への合流を停止した。
【0049】
加熱体(317)に通電する電圧を制御しながら増加させ、基板(319)の温度を5分後に1050℃となるように昇温を開始した。加熱体(317)の内部に配置された熱電対によって基板(319)の温度が1050℃に到達したと測温されてから20分間、同温度に基板(319)を保持した。
バルブ(314−8)を開状態から閉状態に切り替えると同時にバルブ(314−7)を逆に閉状態から開状態に切り替えて、100ミリリットル/分の高純度水素ガスによるバブリング操作で気化したビスシクロペンタジエニルマグネシウム(324)の蒸気を含む水素ガスをメイン配管(301)に導入して水素とアルゴンの混合気体であるキャリアガスと合流させた。
引き続いて、バルブ((314−2)及び(314−4))を開状態から閉状態に切り替えると同時にバルブ((314−1)及び(314−3))を逆に閉状態から開状態に切り替えて、13ミリリットル/分の高純度水素ガスによるバブリング操作で気化したトリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素ガスを7ミリリットル/分の高純度水素ガスによるバブリング操作で気化したトリメチルアルミニウム(308)の蒸気を含む水素ガスをメイン配管(301)に導入して水素とアルゴンの混合気体であるキャリアガスと合流させた。
【0050】
基板(319)の温度を1050℃に、また反応室(320)内の圧力をほぼ大気圧に保ちながら、第 III族元素を含む混合気体からなるキャリアガスを石英ノズル(318)の内部に流入させ、サファイア基板(319)の表面に向けて20分間に亘り間断なく供給した。
然る後、バルブ((314−1)及び(314−2))の開閉状態を逆転させて、トリメチルガリウム(306)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−1)のメイン配管(301)への合流を停止し、バルブ((314−3)及び(314−4))の開閉状態を逆転させて、トリメチルアルミニウム(308)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−3)のメイン配管(301)への合流を停止し、引き続いて、バルブ((314−7)及び(314−8))の開閉状態を逆転させて、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(324)の蒸気を含む水素キャリアガス(316−4)を配管(315)を通じて反応系外へ排出されるようにした。瞬時後に、液化アンモニアボンベ(304)からメイン配管(301)へのアンモニアガスの合流を停止し、精製した水素ガス(303)のメイン配管(301)への合流への供給も停止した。この手順により、反応室(320)へ通じるメイン配管(301)に流通する気体を、アルゴンガスのみとした。
【0051】
加熱体(317)に通電する電圧を制御しながら減少させ、基板(319)の温度を10分後に750℃となるように降温を開始した。加熱体(317)の内部に配置された熱電対によって基板(319)の温度が750℃に到達したと測温されてから20分間、同温度に基板(319)を保持した。
以上の操作により前記のSiおよびZnをドープしたGa0.1 In0.9 N層(503)上に層厚約0.2μmの濃度約1×1020cm-3のMgをドープしたp型Al0.15Ga0.85N層(504)を成膜した。
然る後、加熱体(317)への通電を停止して基板(319)の温度を室温迄降温させ、積層構造の形成の工程を終了した基板を取り出した。
【0052】
以上の積層工程により、Al0.5 Ga0.5 N低温緩衝層(501)、Siをドープしたn型窒化ガリウム緩衝層(502)、SiおよびZnをドープしたIn0.1 Ga0.9 N発光層(503)、MgをドープしたAl0.15Ga0.85Nクラッド層(504)をサファイア基板上に順次形成した。
ドーパントとしてZnが添加されたGaN系化合物半導体層は、430nm近くにドーパントに由来する発光ピークを示すため、波長約365nmにピークを持つバンド端のフォトルミネッセンス強度(I0 )と550nm以上で650nm以下の波長領域に中心波長を有するフォトルミネッセンス発光の強度(I)との強度比(I/I0 )を測定することができない。フォトルミネッセンス測定法により結晶の(I/I0 )を測定するために、上の手順により形成された積層体と同様の手順でノンドープのGa0.1 In0.9 N層(図5の(503)に相当するので(503’)と記す)を成長させた。この層について室温における一般的なフォトルミネッセンス測定法により測定したところ、(I/I0 )は約50を示した。
一方、上の手順により形成された、サファイア基板(319)上にAl0.5 Ga0.5 N低温緩衝層(501’)を介して形成したSiドープのGaN半導体層(502’)のI0 /Iは約15であった。
【0053】
上記の積層構造に、従来の一般的なフォトリソグラフィー技術やドライエッチング技術等を応用して加工を施し、金(Au)よりなる二つの球状電極を形成した。一つの電極は積層構造の最表層であるAl0.15Ga0.85N層(504)上に設け、もう一つの電極はSiをドープしたn型のGaN層(502)に設けた。図5に本実施例で得たLED構造の模式図を示す。
【0054】
上記した、本文中の式(1)で定義したrが0.40であるアルゴンと水素の混合気体を成長雰囲気で成長させたSi、Znをドープした含窒素 III−V族化合物半導体層を備えた積層構造から構成されたLED構造からは、青色帯域の可視光が発せられるのが認められた。また、動作電流を20mAに設定した通電時の一般的な積分球を用いての発光強度の試験においては、通電時の発光強度が、従来の窒素と水素からなる混合気体を成長雰囲気として成長させた含窒素 III−V族化合物半導体を備えた積層構造からなるLEDに比較し強いことが認められた。これは、成長雰囲気を適正に調整したことにより、禁制帯中に形成される“深い”不純物準位が低減され、無輻射過程によって発光に寄与せずに励起緩和するキャリアが減り、発光強度が増大したことを示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のGaN膜のフォトルミネッセンススペクトルの一例である。
【図2】本発明に依るGaN膜のフォトルミネッセンススペクトルの一例である。
【図3】本発明の実施例1、2に係わる成長設備の概略図である。
【図4】本発明の実施例3に係わる成長設備の概略図である。
【図5】本発明の実施例3に係わるLED構造の模式図である。
【符号の説明】
(101) バンド端フォトルミネッセンス発光
(102) 550nmから650nmの波長領域に中心波長を持つフォトルミネッセンス発光
(301) 反応成長容器へ通じるメイン配管
(302) 第VIII族元素ガス導入用配管
(303) 水素ガス導入用配管
(304) アンモニアガス収納ボンベ
(305) ガリウム供給源収納用ステンレス鋼製容器
(306) ガリウム(Ga)供給源
(307) アルミニウム供給源収納用ステンレス鋼製容器
(308) アルミニウム(Al)供給源
(309) インジウム供給源収納用ステンレス鋼製容器
(310) インジウム(In)供給源
(311) ガリウム供給源用恒温槽
(312) アルミニウム供給源用恒温槽
(313) インジウム供給源用恒温槽
(314−1) バルブ
(314−2) バルブ
(314−3) バルブ
(314−4) バルブ
(314−5) バルブ
(314−6) バルブ
(314−7) バルブ
(314−8) バルブ
(315) 排気用配管
(316−1) ガリウム源をバブリングするためのキャリアガス
(316−2) アルミニウム源をバブリングするためのキャリアガス
(316−3) インジウム源を気化するためのキャリアガス
(316−4) マグネシウム源を気化するためのキャリアガス
(317) 加熱体
(318) ノズル
(319) 基板
(320) 反応室
(321) 珪素(Si)供給源用ガスボンベ
(322) 亜鉛(Zn)供給源用ガスボンベ
(323) マグネシウム(Mg)供給源用ステンレス鋼製容器
(324) マグネシウム(Mg)供給源
(325) マグネシウム供給源用恒温槽
(501) 窒化アルミニウムガリウム低温緩衝層
(502) 窒化ガリウム緩衝層
(503) 窒化ガリウムインジウム発光層
(504) 窒化アルミニウムガリウムクラッド層
(505) 電極

Claims (2)

  1. 単結晶基板上に、水素と分子量が(M’)である窒素供給源と分子量を(M)とする第VIII族元素の単原子気体とを使用して含窒素III−V族化合物半導体層を製造する方法であって、水素と分子量を(M)とする第VIII族元素の単原子気体が混合されてなり、かつ水素と分子量を(M)とする第VIII族元素の単原子気体の混合比率(r)が
    0.80{(M’−2)/(M−2)}≦r≦1.2{(M’−2)/(M−2)}・・・・・・(1)
    である混合気体雰囲気中で気相成長させることを特徴とする化合物半導体成長層の製造方法。
  2. 第VIII族元素の分子量(M’)が窒素の分子量よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の半導体成長層の製造方法。
JP04759396A 1996-03-05 1996-03-05 化合物半導体成長層及びその製造方法 Expired - Fee Related JP3663722B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP04759396A JP3663722B2 (ja) 1996-03-05 1996-03-05 化合物半導体成長層及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP04759396A JP3663722B2 (ja) 1996-03-05 1996-03-05 化合物半導体成長層及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09246596A JPH09246596A (ja) 1997-09-19
JP3663722B2 true JP3663722B2 (ja) 2005-06-22

Family

ID=12779557

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP04759396A Expired - Fee Related JP3663722B2 (ja) 1996-03-05 1996-03-05 化合物半導体成長層及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3663722B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3349931B2 (ja) * 1997-10-30 2002-11-25 松下電器産業株式会社 半導体レーザ装置の製造方法
US20110001142A1 (en) * 2007-07-17 2011-01-06 Sumitomo Eleclectric Industries, Ltd. Method for manufacturing electronic device, method for manufacturing epitaxial substrate, iii nitride semiconductor element and gallium nitride epitaxial substrate
WO2014181527A1 (ja) * 2013-05-09 2014-11-13 国立大学法人徳島大学 原料流体濃度検出器
WO2019225112A1 (ja) * 2018-05-23 2019-11-28 株式会社Sumco Iii族窒化物半導体基板及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09246596A (ja) 1997-09-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6852161B2 (en) Method of fabricating group-iii nitride semiconductor crystal, method of fabricating gallium nitride-based compound semiconductor, gallium nitride-based compound semiconductor, gallium nitride-based compound semiconductor light-emitting device, and light source using the semiconductor light-emitting device
US8882910B2 (en) AlGaN substrate and production method thereof
JP3994623B2 (ja) Iii族窒化物系化合物半導体素子の製造方法
US6362496B1 (en) Semiconductor light emitting device having a GaN-based semiconductor layer, method for producing the same and method for forming a GaN-based semiconductor layer
JP3198912B2 (ja) 3−5族化合物半導体の製造方法
JPH09134878A (ja) 窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法
KR100806262B1 (ko) 3족 질화물 p형 반도체의 제조방법, 및 3족 질화물 반도체발광 소자
JP3940673B2 (ja) Iii族窒化物半導体結晶の製造方法、および窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法
US6617235B2 (en) Method of manufacturing Group III-V compound semiconductor
JP3663722B2 (ja) 化合物半導体成長層及びその製造方法
JP3064891B2 (ja) 3−5族化合物半導体とその製造方法および発光素子
JP3288300B2 (ja) 半導体の製造方法
JPH09107124A (ja) 3−5族化合物半導体の製造方法
JPH0997921A (ja) 3−5族化合物半導体の製造方法
JP3771987B2 (ja) 窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法
JP2005101623A (ja) Iii族窒化物半導体結晶、その製造方法、iii族窒化物半導体エピタキシャルウェーハ
JPH09134881A (ja) 窒化物系化合物半導体の製造方法
JP2001308017A (ja) p型窒化物系III−V族化合物半導体の製造方法および半導体素子の製造方法
JPH07283436A (ja) 3−5族化合物半導体と発光素子
JPH09148626A (ja) 3−5族化合物半導体の製造方法
JP3214349B2 (ja) InGaN層を有する半導体ウエハ及びその製造方法並びにそれを具備する発光素子
JP3393425B2 (ja) 窒化物系化合物半導体の熱処理方法
JP2002154900A (ja) 窒化ガリウム系化合物半導体の結晶成長方法と窒化ガリウム系化合物半導体
JPH06209121A (ja) 窒化インジウムガリウム半導体およびその成長方法
JPH0936428A (ja) 半導体装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040930

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20041012

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041213

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050308

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050321

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080408

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110408

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110408

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140408

Year of fee payment: 9

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees