JP3274907B2 - 窒化インジウムガリウム化合物半導体の成長方法 - Google Patents

窒化インジウムガリウム化合物半導体の成長方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は青色発光ダイオード、青
色レーザダイオード等に使用される窒化インジウムガリ
ウム半導体の成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】青色ダイオード、青色レーザーダイオー
ド等に使用される実用的な半導体材料として窒化ガリウ
ム(GaN)、窒化インジウムガリウム(InGa
N)、窒化ガリウムアルミニウム(GaAlN)等の窒
化ガリウム系化合物半導体が注目されており、その中で
もInGaNはバンドギャップが2eV〜3.4eVま
であるため非常に有望視されている。
【0003】従来、有機金属気相成長法(以下MOCV
D法という。)によりInGaNを成長させる場合、成
長温度500℃〜600℃の低温で、サファイア基板上
に成長されていた。なぜなら、InNの融点はおよそ5
00℃、GaNの融点はおよそ1000℃であるため、
600℃以上の高温でInGaNを成長させると、In
GaN中のInNの分解圧がおよそ10気圧以上とな
り、InGaNがほとんど分解してしまい、形成される
ものはGaのメタルとInのメタルの堆積物のみとなっ
てしまうからである。従って、InGaNを成長させよ
うとする場合は成長温度を低温に保持しなければならな
かった。
【0004】このような条件の下で成長されたInGa
Nの結晶性は非常に悪く、例えば室温でフォトルミネッ
センス測定を行っても、バンド間発光はほとんど見られ
ず、深い準位からの発光がわずかに観測されるのみであ
り、青色発光が観測されたことはなかった。しかも、X
線回折でInGaNのピークを検出しようとしてもほと
んどピークは検出されず、その結晶性は、単結晶という
よりも、アモルファス状結晶に近いのが実状であった。
つまり、発光デバイスとして使用できるようなInGa
Nの成長に成功したという報告は未だされておらず、ま
た当然InGaNにn型あるいはp型不純物をドープし
たという報告もされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】青色発光ダイオード、
青色レーザダイオード等の青色発光デバイスを実現する
ためには、高品質で優れた結晶性を有するInGaNの
実現が強く望まれている。よって、本発明はこの問題を
解決すべくなされたものであり、その目的とするところ
は、高品質で結晶性に優れた窒化インジウムガリウム半
導体の成長方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】我々はInGaNをMO
CVD法で成長するにあたり、600℃より高い温度
で、GaNの上に、In混晶比が0より大きく、0.5
より少ない範囲のInGaNを成長させることにより、
結晶性が良く、バンド間発光の強い結晶が得られること
を見いだし、しかもp型不純物をドープしながら成長さ
せることにより、その発光波長が450〜490nm付
近の視感度の良い、さらに強い青色発光が得られること
に成功し、本発明を成すに至った。
【0007】すなわち、本発明に係る窒化インジウムガ
リウム化合物半導体の成長方法は、有機金属気相成長法
により窒化インジウムガリウム化合物半導体を成長させ
る方法であって、原料ガスとしてガリウム源のガスと、
インジウム源のガスと、窒素源のガスと、p型不純物を
含むガスとを用い、600℃より高い成長温度で、窒化
ガリウム層の上に、p型不純物をドープしながら一般式
InGa1−XN(但し、Xは0<X<0.5)で表
される窒化インジウムガリウム半導体を成長させること
を特徴とする発光素子の発光層用の窒化インジウムガリ
ウム化合物半導体の成長方法である。
【0008】MOCVD法による本発明の成長方法にお
いて、原料ガスには、例えばGa源としてトリメチルガ
リウム{Ga(CH33:TMG}、トリエチルガリウ
ム{Ga(C253:TEG}、窒素源としてアンモ
ニア(NH3)、ヒドラジン(N24)、インジウム源
としてトリメチルインジウム{In(CH33:TM
I}、トリエチルインジウム{In(C253:TE
I}等を用いることができる。
【0009】p型不純物としては、例えばCd、Zn、
Be、Mg、Ca、Sr、Baよりなる群のうちの少な
くとも一種を挙げることができ、例えばジエチルカドミ
ウム(C252Cd、ジメチルカドミウム(CH32
Cd、シクロペンタジエニルマグネシウムCp2Mg、
ジエチルジンク等のp型不純物を含む有機金属化合物ガ
スを使用することができる。その中でも特に原料の有機
金属化合物ガスソースを入手しやすい関係から、好まし
くCd、Zn、Mgが使用できる。
【0010】p型不純物濃度は1×1016/cm3
上、1×1022/cm3以下の範囲でドープすることが
好ましい。1×1016/cm3より少ないと、あまり青
色発光強度の増加が見られず、1×1022/cm3より
多いとInGaNの結晶性が悪くなる傾向にある。
【0011】また、成長中に供給する原料ガス中のイン
ジウム源のガスのインジウムのモル比は、ガリウム1に
対し、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは1.0
以上に調整することが好ましい。インジウムのモル比が
0.1より少ないと、InGaNの混晶が得にくく、結
晶性が悪くなる傾向にある。本発明の成長方法は600
℃より高い温度でInGaNを成長させるため、多少な
りともInNの分解が発生する。従ってInNがGaN
結晶中に入りにくくなるため、好ましくその分解分より
もインジウムを多く供給することによって、InNをG
aNの結晶中に入れることができる。従って、インジウ
ムのモル比は高温で成長するほど多くする方が好まし
く、例えば、900℃前後の成長温度では、インジウム
をガリウムの10〜50倍程度供給することにより、X
値を0.5未満とするInXGa1-XNを得ることができ
る。
【0012】成長温度は600℃より高い温度であれば
よく、好ましくは700℃以上、900℃以下の範囲に
調整する。600℃以下であると、GaNの結晶が成長
しにくいため、InGaNの結晶ができにくく、できた
としても従来のように結晶性の悪いInGaNとなる。
また、900℃より高い温度であるとInNが分解しや
すくなるため、InGaNがGaNになりやすい傾向に
ある。
【0013】供給するインジウムガスのモル比、成長温
度は目的とするInXGa1-XNのX値0<X<0.5の範
囲において、適宜変更できる。例えばInを多くしよう
とすれば650℃前後の低温で成長させるか、または原
料ガス中のInのモル比を多くすればよい。Gaを多く
しようとするならば900℃前後の高温で成長させれば
よい。しかしながら、結晶性に優れたInXGa1-XNが
得られるX値は0<X<0.5の範囲にあり、またX値を
0.5以上とするInXGa1-XNを発光ダイオード等の
発光デバイスの発光素子とした場合、その発光波長は黄
色の領域にあり、青色として使用し得るものではないた
め、X値は0.5未満を限定理由とした。
【0014】
【作用】図1および図2は、それぞれ基板上に形成され
たGaN層の上にCdをドープしたIn0.14Ga0.86N
層を形成したウエハー、同じくGaN層の上にノンドー
プのIn0.14Ga0.86N層を形成したウエハーに、10
mWのHe−Cdレーザーを照射して、そのフォトルミ
ネッセンスのスペクトルを測定した図である。
【0015】図1に示すように、p型不純物であるCd
をドープすることにより、In0.14Ga0.86N層は48
0nm付近に強い青色発光を示している。これに対し図
2のp型不純物をドープしないIn0.14Ga0.86N層は
400nm付近の紫色発光を示す。またこれらの図はC
dについて測定されたものであるが、同様に他のp型不
純物例えばZn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等に金
属についても同様の傾向があることを確認した。このよ
うにInGaNにp型不純物をドープすることにより、
その発光波長を長くして、視感度を向上させる作用があ
る。
【0016】さらに、p型不純物をドープすることによ
り、ドープしないものに比較して、フォトルミネッセン
ス強度を飛躍的に増大させることができる。これは、p
型不純物によりInGaN中に青色発光中心ができ、青
色発光強度が増加していることを顕著に示すものであ
る。図1はそれを示す図であり、図1の400nm付近
に現れている微弱なピークはノンドープのIn0.14Ga
0.86Nのバンド間発光のピークであり、即ち図2のピー
クと同一である。これより、図1は図2と比較して50
倍以上発光強度が増大していることがわかる。
【0017】また本発明の成長方法において、600℃
より高い成長温度で、GaNの上にInGaNを成長さ
せることにより高品質なInGaNを得ることができ
る。このGaNのGaの一部をAlで置換してもよく、
さらにGaNにSi、Ge等のn型不純物をドープして
もよく、本発明の範囲内である。
【0018】
【実施例】以下、図面を元に実施例で本発明の成長方法
を詳説する。図3は本発明の成長方法に使用したMOC
VD装置の主要部の構成を示す概略断面図であり、反応
部の構造、およびその反応部と通じるガス系統図を示し
ている。1は真空ポンプおよび排気装置と接続された反
応容器、2は基板を載置するサセプター、3はサセプタ
ーを加熱するヒーター、4はサセプターを回転、上下移
動させる制御軸、5は基板に向かって斜め、または水平
に原料ガスを供給する石英ノズル、6は不活性ガスを基
板に向かって垂直に供給することにより、原料ガスを基
板面に押圧して、原料ガスを基板に接触させる作用のあ
るコニカル石英チューブ、7は基板である。TMG、T
MI等の有機金属化合物ソース、およびジエチルカドミ
ウム、ジメチルカドミウム、シクロペンタジエニルマグ
ネシウム、ジエチルジンク等のp型不純物有機金属化合
物ソースはTMG、TMIと同様に微量のバブリングガ
スによって気化され、メインガスであるキャリアガスに
よって反応容器内に供給される。
【0019】[実施例1]まず、よく洗浄したサファイ
ア基板7をサセプター2にセットし、反応容器内を水素
で十分置換する。
【0020】次に、石英ノズル5から水素を流しながら
ヒーター3で温度を1050℃まで上昇させ、20分間
保持してサファイア基板7のクリーニングを行う。
【0021】続いて、温度を510℃まで下げ、石英ノ
ズル5からアンモニア(NH3)4リットル/分と、キ
ャリアガスとして水素を2リットル/分で流しながら、
TMGを27×10ー6モル/分流して1分間保持してG
aNバッファー層を約200オングストローム成長す
る。この間、コニカル石英チューブ7からは水素を10
リットル/分と、窒素を10リットル/分とで流し続
け、サセプター2をゆっくりと回転させる。
【0022】バッファ層成長後、TMGのみ止めて、温
度を1030℃まで上昇させる。温度が1030℃にな
ったら、同じく水素をキャリアガスとしてTMGを54
×10ー6モル/分で流して30分間成長させ、GaN層
を2μm成長させる。
【0023】GaN層成長後、温度を830℃にして、
キャリアガスを窒素に切り替え、窒素を2リットル/
分、TMGを2×10-6モル/分、TMIを24×10
-6モル/分、アンモニアを4リットル/分、およびジエ
チルカドミウムを4×10-6モル/分で流しながら、C
dドープInGaN層を60分間で約0.1μmの膜厚
で成長させる。なお、この間、コニカル石英チューブ7
から供給するガスも窒素のみとし、20リットル/分で
流し続ける。
【0024】以上のようにして得られたInGaN層の
X線ロッキングカーブを取ると、In0.14Ga0.86Nの
組成を示すところにピークを有しており、その半値幅は
約6分であった。またこのIn0.14Ga0.86N層にHe
−Cdレーザーを照射して、フォトルミネッセンスのス
ペクトルを測定すると、図1に示すように、400nm
付近に微弱なIn0.14Ga0.86Nのバンド間発光が見ら
れ、480nm付近にCdによる強い発光が検出され
た。
【0025】[実施例2]GaN層成長後、成長温度を
810℃にする他は実施例1と同様にしてCdドープI
nGaN層を成長させた。
【0026】得られたInGaN層にHe−Cdレーザ
ーを照射してそのフォトルミネッセンスを測定すると、
490nm付近に強い発光ピークを有しており、X線ロ
ッキングカーブを測定すると、In0.16Ga0.84Nの組
成を示すところにピークを有しており、その半値幅は同
じく6分であった。
【0027】[実施例3]実施例1のバッファ層成長
後、TMGのみ止めて、温度を1030℃まで上昇させ
る。温度が1030℃になったら、同じく水素をキャリ
アガスとしてTMGを54×10ー6モル/分、TMAを
6×10-6モル/分で流して30分間成長させ、Ga0.
9Al0.1N層を2μm成長させる他は実施例1と同様に
してGa0.9Al0.1N層の上にCdドープInGaN層
を成長させた。その結果、得られたInGaN層のX線
ロッキングカーブを取ると、In0.14Ga0.86Nの組成
を示すところにピークを有しており、その半値幅は同じ
く6分であった。またこのIn0.14Ga0.86N層のフォ
トルミネッセンスのスペクトルを測定すると、同じく4
00nm付近にIn0.14Ga0.86Nのバンド間発光が見
られ、480nm付近にCdによる強い発光が検出され
た。
【0028】[比較例]GaN層成長後、ジエチルカド
ミウムを流さない他は、実施例1と同様にしてノンドー
プIn0.14Ga0.86N層を約0.1μmの膜厚で成長さ
せた。このInGaNのフォトルミネッセンスのスペク
トルは図2に示すように400nm付近にのみ発光が見
られ、480nm付近の青色発光は観測できなかった。
なお、この400nmの紫色の発光強度は、実施例1の
480nmの発光強度の1/50であった。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明の成長方法に
よると、従来では不可能であったInGaN層の単結晶
を成長させることができ、さらにp型不純物をInGa
Nにドープして成長することにより、450nm〜49
0nm領域で発光させることが可能となり、視感度を良
くすることができる。従って本発明のInGaNを青色
レーザー、青色発光ダイオード等の発光デバイスの発光
素子として利用した場合、樹脂モールドに蛍光染料、着
色剤等を添加して波長を変換する必要がない。また、実
施例2に示すようにInXGa1-XNのInのモル比Xを
0<X<0.5の範囲で変えることにより430nm〜
550nmの範囲でInGaNの発光波長を変えること
もできる。
【0030】さらに、本発明により実用的なInGaN
が得られるため、将来開発される青色発光デバイスに積
層される半導体材料をダブルへテロ構造にでき、青色レ
ーザーダイオードが実現可能となり、その産業上の利用
価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例のInGaNのフォトルミ
ネッセンス測定によるスペクトルを示す図。
【図2】 ノンドープのInGaNのフォトルミネッセ
ンス測定によるスペクトルを示す図。
【図3】 本発明の一実施例に使用したMOCVD装置
の主要部の構成を示す概略断面図。
【符号の説明】
1・・・・・・・・反応容器 2・・・・・・・・サセプター 3・・・・・・・・ヒーター 4・・・・・・・・制御軸 5・・・・・・・・石英ノズル 6・・・・・・・・コニカル石英
チューブ 7・・・・・・・・基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−229475(JP,A) 特開 平3−203388(JP,A) 特開 昭54−71590(JP,A) 特開 平2−257678(JP,A) 特開 平4−321280(JP,A) Jpn.Jour.of Appl. Phys.Vol.31(1992)L.1457 〜1459

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機金属気相成長法により窒化インジウ
    ムガリウム化合物半導体を成長させる方法であって、原
    料ガスとしてガリウム源のガスと、インジウム源のガス
    と、窒素源のガスと、p型不純物を含むガスとを用い、
    600℃より高い成長温度で、窒化ガリウム層の上に、
    p型不純物をドープしながら一般式InGa1−X
    (但し、Xは0<X<0.5)で表される窒化インジウ
    ムガリウム半導体を成長させることを特徴とする発光素
    子の発光層用の窒化インジウムガリウム化合物半導体の
    成長方法。
  2. 【請求項2】 前記p型不純物がCd、Zn、Be、M
    g、Ca、Sr、Baよりなる群のうちの少なくとも1
    種であることを特徴とする請求項1記載の発光素子の発
    光層用の窒化インジウムガリウム化合物半導体の成長方
    法。
  3. 【請求項3】 前記窒化ガリウム層はそのガリウムの一
    部をアルミニウムで置換した窒化ガリウムアルミニウム
    層であることを特徴とする請求項1記載の発光素子の発
    光層用の窒化インジウムガリウム化合物半導体の成長方
    法。
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