JP3661977B2 - マグネシア−カーボン質スライドゲートプレート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、溶融金属の流量制御に使用されるマグネシア−カーボン質スライドゲートプレートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶融金属容器に装着されて溶融金属の流量制御に使用されるスライドゲートプレートは、アルミナ−カーボン質耐火物に代表される炭素含有耐火物が、耐蝕性と耐スポーリング性に優れているところから広く使用されている。この耐火物が耐蝕性に優れているのは、炭素が溶融スラグなどにぬれ難く、また化学的にも安定でスラグと反応しにくいためである。また、耐スポーリング性に優れているのは、炭素は熱伝導性が高く、しかも熱膨張率が小さいことなどによるものである。
【0003】
しかしながら、一方で炭素は酸化され易いといった欠点があり、スライドゲートプレートではこの酸化が起こると、スライドゲートプレートの強度低下や溶融スラグの浸潤を招き、これが生ずるとスライドゲートプレートの寿命を低下させる恐れがあった。また、炭素を多量に添加したものではれんがの強度低下を招き、スライドゲートプレートでは溶鋼流やプレート摺動時の耐摩耗性を低下させることになった。こうしたことで、カーボン原料は、適切な原料と適宜な添加量の選択が必要であった。
【0004】
一方、溶融金属精錬用耐火物としては、マグネシアに代表される塩基性骨材を使用した炭素含有耐火物が使用されてきた(特開昭55−116659、特開平5−4861、特公平7−108805)。マグネシアは高融点(2800℃)で、塩基性スラグや溶融金属に対して耐蝕性が優れているが、耐スポーリング性に劣る欠点を有している。このために、マグネシアに鱗状黒鉛などのカーボンを組み合せることで、高熱伝導性と低熱膨張性を付与して、耐スポーリング性と耐蝕性に優れたマグネシア−カーボンれんがとしていた。溶融金属精錬用耐火物として開発されたマグネシア−カーボンれんがは、耐スポーリング性を向上させるために鱗状黒鉛などのカーボン原料を10〜25重量%添加している。しかしながら、この材質のものをスライドゲートプレートに使用すると、強度が十分でないために摺動面の損傷が大きく耐摩耗性に劣るといった問題があった。
【0005】
スライドゲートプレートは、浸漬ノズルやロングノズルに要求されるような耐スポーリング性は必要でないが、金属製枠にボルトやコッターで拘束して使用されて、溶融金属の流量制御を安全かつスムーズに行うことが出来るように、耐摩耗性と高い耐蝕性を具えることが非常に重要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、原料に土状黒鉛を使用することによって成形体のかさ比重を向上させ、高強度で耐摩耗性に優れたマグネシア−カーボン質スライドゲートプレートを得ようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、Al、Si、Mgの金属粉末若しくはこれらの金属の合金粉末の1種または2種以上の2〜6重量%、自己焼結性を有するピッチ粉1.0〜6.2重量%、土状黒鉛0.3〜3.2重量%、残部がMgOを主成分とする骨材からなる原料に、熱硬化性樹脂を外割で3.0〜10重量%添加し、これを混練成形して非酸化性雰囲気で800〜1400℃で焼成してなるマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート(請求項1)、Al、Si、Mgの金属粉末若しくはこれらの金属の合金粉末の1種または2種以上が、Alの金属粉末にSiの金属粉末またはSiの合金粉末を加えた混合粉末であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート(請求項2)、ピッチ粉の添加量が、2.0〜6.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート(請求項4)、ピッチ粉の添加量が、3.0〜5.0重量%であることを特徴とする請求項3記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート(請求項5)、ピッチ粉の軟化点が300〜450℃であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート(請求項5)、土状黒鉛の添加量が0.5〜3.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート(請求項6)、土状黒鉛の添加量が1.0〜2.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート(請求項7)及び化学成分が、MgO 84〜91重量%、C 3.0〜9.5重量%、残部がAl2 O3 およびSiCからなり、圧縮強さが90MPa以上、1400℃の曲げ強さが20MPa以上のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート(請求項8)である。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレートは、主原料にAl、Si、Mgの金属粉末若しくはこれらの合金粉末、ピッチ粉、土状黒鉛、残部をMgOを主成分とする骨材とするものである。この発明では、黒鉛に土状黒鉛を用いた点が大きな特徴となっているものである。
【0009】
従来のマグネシア−カーボンれんがでは鱗状黒鉛がもっぱら使用されてきた。鱗状黒鉛は耐スポーリング性向上には効果が大きいが、強度の低下が大きくスライドゲートプレートに用いた場合は耐摩耗性に劣るといった問題があった。そこで、この発明では土状黒鉛を使用してスライドゲートプレートとするものである。土状黒鉛を使用すると、成形体とした場合にかさ比重を向上させ、組織が緻密となって強度を向上させる効果がある。また、土状黒鉛は平均粒径が2μm程度の微粉が入手可能であるので、酸化後の強度劣化も抑制することができる。土状黒鉛は少量の添加でも効果があるので、その添加量の下限は0.5重量%とする。逆に、これを多量に添加すると酸化後の強度低下を大きくするので、添加量の上限は3.0重量%とする。土状黒鉛のさらに好ましい添加量は1.0〜2.0重量%である。カーボンは酸化され易いので、カーボンの酸化を抑制し強度低下を防ぐために、さらに、Al、Si、Mgの金属粉末若しくはこれらの合金粉末の1種または2種以上を添加する。これらの金属粉末の添加量は2〜6重量%とする。これが2重量%未満ではカーボンの酸化防止の効果がなく、またこれが6重量%を超えると耐スポーリング性が低下する。
【0010】
ピッチ粉は動弾性率を低くし耐スポーリング性を向上させる効果がある。ピッチ粉は、自己焼結性から黒鉛と比較しても製品の強度低下が少ない。ピッチ粉は、粒度が1mm下で細かいものほどレジンと馴染みやすく、耐酸化性に優れ強度向上に有効である。ピッチ粉の軟化点は低いほど強度向上に有効であるが、軟化点があまり低いと逆にれんが組織がポーラスとなり好ましくない。ピッチ粉の軟化点の好ましい範囲は300〜450℃である。ピッチ粉の添加量が多量であると、れんががポーラスとなって強度が低下する。ピッチ粉の添加量は1.0〜6.2重量%、好ましくは2〜6重量%とする。さらに好ましいピッチ粉の添加量は3.5〜5.0重量%である。その他は、MgOを主成分とする骨材とする。
【0011】
以上の原料にバインダーとして、フェノールレジンなどの熱硬化性樹脂を外割で3.0〜10重量%加えて混練して成形する。熱硬化性樹脂が3.0重量%未満では成形体の強度が不足してハンドリングに支障を来す。焼成温度は800〜1400℃とする。焼成温度が800℃未満では強度発現剤の働きをするAlの反応が少なく、製品強度を上げることができない。また、焼成温度が1400℃を超えると、金属Alや金属Siが酸化物となって耐蝕性の向上が期待できなくなる。金属Alは、炭素存在下で加熱するとAl4 C3 が生成するが、これは常温で吸湿性があり消化現象を発生させる原因となる。しかし、ここに金属Si或いはSi合金粉末が存在すると、Al4 C3 とSiの化合物或いは固溶体を形成して消化を防ぐことができる。このため、金属Alは金属Si或いはSi合金との併用が好ましい。
【0012】
【実施例】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
表1に示す各種原料組成に、ノボラックタイプのフェノールレジンを外割で同表に示す量で添加し混練した。なお、マグネシアクリンカーは焼結マグネシアを用いた。この混練物を油圧プレスで成形し、その後に200℃まで昇温させて乾燥した。この乾燥した成形体を、カーボンブリーズを充填した還元性雰囲気で1200℃で焼成しマグネシア−カーボンれんがとした。表1には、比較例としてこの発明の範囲外のものも示した。
【0013】
即ち、比較例1は土状黒鉛を使用しないもの、比較例2は土状黒鉛とともに鱗状黒鉛を用いたもの、比較例3は土状黒鉛を本発明で規定した範囲を超えて使用したうえに鱗状黒鉛を使用したもの、比較例4は土状黒鉛を本発明で規定した範囲を超えて使用したものである。表1に示す原料を用いたれんがの見掛け気孔率(%)、かさ比重、圧縮強さ(MPa)、曲げ強さ(MPa)、1200℃・3時間加熱処理後の圧縮強さ(MPa)、耐摩耗性、耐スポーリング性を調べた。その結果を表2に示した。さらに、表2には、比較例1〜4のれんがについて同様の試験をした結果について示した。また、実施例1〜3、比較例1〜4の各れんがの圧縮強さは図1に示して対比した。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
表2に示すように、実施例1ないし3は、いずれも圧縮強さ、耐摩耗性が優れているのに対し、比較例1ないし4は、いずれも圧縮強さ、耐摩耗性の点で劣っていることが分かる。
(実施例4〜7、比較例5および6)
実施例4〜7は、ピッチ粉の添加量を一定にして、土状黒鉛の添加量を変えたもので表3の原料を用い、実施例1〜3と同様にしてマグネシア−カーボンれんがとしたものである。なお、焼成温度は1200℃とした。表3には比較例5および6を示した。比較例5は黒鉛を使用しないもの、比較例6は土状黒鉛を本発明で規定した範囲を超えて用いたものである。
【0017】
表3に示す原料を用いたれんがについても、見掛け気孔率(%)、かさ比重、圧縮強さ(MPa)、曲げ強さ(MPa)、1200℃・3時間加熱処理後の圧縮強さ(MPa)を調べその結果を表4に示した。さらに、表4には、比較例5および6のれんがについて同様の試験結果を示した。また、実施例4〜6、比較例5および6の各れんがの土状黒鉛添加量に対する圧縮強度およびかさ比重の関係を図2に示して対比した。
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】
表4に示すように、実施例4〜7は、いずれも圧縮強さが優れているのに対し、比較例5及び6は圧縮強さの点で劣る。図2は、実施例および比較例に相当する土状黒鉛の添加率に対する、圧縮強さおよびかさ比重を示したものである。これによると、土状黒鉛の添加量は0.3〜3.2重量%で圧縮強度およびかさ比重が大きくなることが分かる。
(実施例8〜10、比較例7〜9)
実施例8〜10は、主に土状黒鉛を一定にしてピッチ粉の添加量を変えて表5の原料を用い、実施例1〜3と同様にしてマグネシア−カーボンれんがとしたものである。なお、焼成温度は1200℃とした。表5には比較例7〜9を示した。比較例7はピッチ粉を使用しないもの、比較例8および9はピッチ粉を本発明で規定した範囲を超えて使用したものである。
表5に示す原料を用いたれんがについても、見掛け気孔率(%)、かさ比重、圧縮強さ(MPa)、曲げ強さ(MPa)、1200℃・3時間加熱処理後の圧縮強さ(MPa)を調べその結果を表6に示した。さらに、表6には、比較例7〜9のれんがについて行った同様の試験結果について示した。また、実施例8〜10、比較例7〜9の各れんがのピッチ粉添加量に対する圧縮強度および見掛け気孔率の関係を図3に示した。
【0021】
【表5】
【0022】
【表6】
【0023】
表6に示すように、実施例8〜10は、いずれも圧縮強さが優れている。これに対し、比較例7〜9は圧縮強さおよび曲げ強さが小さい。図3は、実施例および比較例に相当するピッチ粉の添加量に対する、圧縮強さおよび見掛け気孔率を示したものである。これによると、ピッチ粉の好ましい添加量は2〜6%であることが分かる。
(実施例11および比較例10)
表1の実施例2と比較例1の原料を用いて実施例2と同じ方法でスライドゲートプレートを製造して実機で使用した。その結果を表7に示した。表7に示すように、実施例11は摺動面の損傷が低減されて使用回数が向上した。また、亀裂もなく問題はなかった。これに対して、比較例10は使用回数が2回であった。
【0024】
【表7】
【0025】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば鱗状黒鉛を使用したマグネシア−カーボンれんがと比較して高強度で耐摩耗性に優れた材質とすることができるので、これを用いてスライドゲートプレートとしたものは、高い耐蝕性と耐摩耗性をもって溶融金属の流量制御を安全かつスムースに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1ないし3および比較例1ないし4のマグネシア−カーボンの圧縮強度(MPa)を示した説明図。
【図2】土状黒鉛の添加量(%)と圧縮強さ(MPa)およびかさ比重の関係を示す線図。
【図3】ピッチ粉の添加量(%)と圧縮強さ(MPa)および見掛気孔率の関係を示す線図。
Claims (8)
- Al、Si、Mgの金属粉末若しくはこれらの金属の合金粉末の1種または2種以上の2〜6重量%、自己焼結性を有するピッチ粉1.0〜6.2重量%、土状黒鉛0.3〜3.2重量%、残部がMgOを主成分とする骨材からなる原料に、熱硬化性樹脂を外割で3.0〜10重量%添加し、これを混練成形して非酸化性雰囲気で800〜1400℃で焼成してなるマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート。
- Al、Si、Mgの金属粉末若しくはこれらの金属の合金粉末の1種または2種以上が、Alの金属粉末にSiの金属粉末またはSiの合金粉末を加えた混合粉末であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート。
- ピッチ粉の添加量が、2.0〜6.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート。
- ピッチ粉の添加量が、3.0〜5.0重量%であることを特徴とする請求項3記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート。
- ピッチ粉の軟化点が300〜450℃であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート。
- 土状黒鉛の添加量が0.5〜3.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート。
- 土状黒鉛の添加量が1.0〜2.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート。
- 化学成分が、MgO 84〜91重量%、C 3.0〜9.5重量%、残部がAl2 O3 およびSiCからなり、圧縮強さが90MPa以上、1400℃の曲げ強さが20MPa以上のマグネシア−カーボン質スライドゲートプレート。
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