JP3660624B2 - 魚臭除去方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、魚臭除去方法に係り、特に、生臭さを除去することができる魚臭除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鰹・鮪等の魚類は、その加工の途中で骨が滓として出てくる。
一方、近年のカルシウム摂取への国民の関心の高まりから、一部に前述の魚類から製造された食品用のカルシウム素材の商品化がなされている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、水洗法、ボイル法等で魚臭を除去するようにしているが、得られたカルシウム素材は生臭さの除去が不十分で魚臭があり、その使用量が限定されるという問題点があった。
又、脱臭処理として焼成法もあるが、骨成分であるカルシウムやマグネシウムが酸化され、使用時に強いアルカリを示し、使用量が限定されてしまうという問題点があった。
従って、本発明の目的は、上述した点を考慮してなされたもので、生臭さを除去することができる魚臭除去方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、請求項1記載の魚臭除去方法は、魚骨を酸性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いし、水洗い後、アルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いして前記魚骨の臭いを除去するものである。
【0005】
また、請求項2記載の魚臭除去方法は、魚骨をアルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いし、水洗い後、酸性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いして前記魚骨の臭いを除去するものである。
【0006】
また、請求項3記載の魚臭除去方法は、魚骨をアルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いし、水洗い後、アルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いし、水洗い後、酸性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いして前記魚骨の臭いを除去するものである。
【0007】
また、請求項4記載の魚臭除去方法は、請求項3記載の魚臭除去方法において、アルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いする処理回数を、少なくとも2回以上行うものである。
【0008】
【実施例】
本発明の魚臭除去方法の一実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)
図1に示すように、前処理として魚骨(例えば、鰹、鮪等)をある程度砕き、骨の中にある髄質等をむき出しにし、骨表面に付着した肉質等を取り除き易い状態にして水洗し、デカンテーション等の手法を用い肉質や髄質を除去しておく(前処理工程)。
【0009】
次に、魚骨を酸性溶液に浸す(第1の酸性溶液浸し工程)。第1の酸性溶液浸し工程においては、例えば、重量1kgの魚骨を、該魚骨に対し0.1〜5重量%の酸を1.5〜3kgの水に溶解した溶液に浸すと共に、反応を促進させるために、該溶液を15〜45分程度ボイルする。
なお、第1の酸性溶液浸し工程における酸性溶液中のpHは、望ましくは、3〜5である。
【0010】
ボイル後、魚骨を沈降させ、上澄み液を流出させて分離させる所謂デカンテーションによりボイル液を廃棄する(第1の分離工程)。
第1の分離工程の後、魚骨を水洗いする(第1の洗浄工程)。
【0011】
第1の洗浄工程の後、魚骨をアルカリ性溶液に浸す(第1のアルカリ性溶液浸し工程)。第1のアルカリ性溶液浸し工程においては、例えば、重量1kgの魚骨を、該魚骨に対し0.1〜5重量%のアルカリ剤を1.5〜3kgの水に溶解した溶液に浸すと共に、反応を促進させるために、該溶液を15〜45分程度ボイルする。
なお、第1のアルカリ性溶液浸し工程におけるアルカリ性溶液中のpHは、望ましくは、9〜13である。
【0012】
ボイル後、魚骨を沈降させ、上澄み液を流出させて分離させる所謂デカンテーションによりボイル液を廃棄する(第2の分離工程)。
第2の分離工程の後、魚骨を水洗いする(第2の洗浄工程)。
【0013】
第2の洗浄工程の後、魚骨を再度アルカリ性溶液に浸す(第2のアルカリ性溶液浸し工程)。第2のアルカリ性溶液浸し工程においては、例えば、重量1kgの魚骨を、該魚骨に対し0.1〜5重量%のアルカリ剤を1.5〜3kgの水に溶解した溶液に浸すと共に、反応を促進させるために、該溶液を15〜45分程度ボイルする。
なお、第2のアルカリ性溶液浸し工程におけるアルカリ性溶液中のpHは、望ましくは、9〜13である。
【0014】
ボイル後、魚骨を沈降させ、上澄み液を流出させて分離させる所謂デカンテーションによりボイル液を廃棄する(第3の分離工程)。
第3の分離工程の後、処理骨をアルカリ性液の影響がなくなる程度水洗いする(第3の洗浄工程)。
第3の洗浄工程の後、魚骨を乾燥(乾燥工程)し、用途に合う粒度(例えば、100 メッシュ程度)に粉砕(粉砕工程)し、使用に供することができる。
【0015】
(実施例2)
実施例1においては、魚骨を最初に酸性溶液に浸したが、アルカリ性溶液に浸しても良い。
即ち、図2に示すように、実施例1と同様に、前処理として魚骨(例えば、鰹、鮪等)をある程度砕き、骨の中にある髄質等をむき出しにし、骨表面に付着した肉質等を取り除き易い状態にして水洗し、デカンテーション等の手法を用い肉質や髄質を除去しておく(前処理工程)。
【0016】
次に、魚骨をアルカリ性溶液に浸す(第1のアルカリ性溶液浸し工程)。第1のアルカリ性溶液浸し工程においては、例えば、重量1kgの魚骨を、該魚骨に対し0.1〜5重量%のアルカリ剤を1.5〜3kgの水に溶解した溶液に浸すと共に、反応を促進させるために、該溶液を15〜45分程度ボイルする。
なお、第1のアルカリ性溶液浸し工程におけるアルカリ性溶液中のpHは、望ましくは、9〜13である。
【0017】
ボイル後、魚骨を沈降させ、上澄み液を流出させて分離させる所謂デカンテーションによりボイル液を廃棄する(第1の分離工程)。
第1の分離工程の後、魚骨を水洗いする(第1の洗浄工程)。
【0018】
第1の洗浄工程の後、魚骨を再度アルカリ性溶液に浸す(第2のアルカリ性溶液浸し工程)。第2のアルカリ性溶液浸し工程においては、例えば、重量1kgの魚骨を、該魚骨に対し0.1〜5重量%のアルカリ剤を1.5〜3kgの水に溶解した溶液に浸すと共に、反応を促進させるために、該溶液を15〜45分程度ボイルする。
なお、第2のアルカリ性溶液浸し工程におけるアルカリ性溶液中のpHは、望ましくは、9〜13である。
【0019】
ボイル後、魚骨を沈降させ、上澄み液を流出させて分離させる所謂デカンテーションによりボイル液を廃棄する(第2の分離工程)。
第2の分離工程の後、魚骨を水洗いする(第2の洗浄工程)。
【0020】
第2の洗浄工程の後、魚骨を酸性溶液に浸す(第1の酸性溶液浸し工程)。第1の酸性溶液浸し工程においては、例えば、重量1kgの魚骨を、該魚骨に対し0.1〜5重量%の酸を1.5〜3kgの水に溶解した溶液に浸すと共に、反応を促進させるために、該溶液を15〜45分程度ボイルする。
なお、第1の酸性溶液浸し工程における酸性溶液中のpHは、望ましくは、3〜5である。
【0021】
ボイル後、魚骨を沈降させ、上澄み液を流出させて分離させる所謂デカンテーションによりボイル液を廃棄する(第3の分離工程)。
第3の分離工程の後、処理骨を酸液の影響がなくなる程度水洗いする(第3の洗浄工程)。
第3の洗浄工程の後、魚骨を乾燥(乾燥工程)し、用途に合う粒度(例えば、100 メッシュ程度)に粉砕(粉砕工程)し、使用に供することができる。
【0022】
上述した実施例1、2における酸処理及びアルカリ処理の手順の差についての結果は下記の通りであった。
(結果)
a、アルカリ→アルカリ→酸の場合(実施例2)、生臭除去効果大であり、b、アルカリ→酸→アルカリの場合、生臭除去効果大であり、c、酸→アルカリ→アルカリの場合(実施例1)、生臭除去効果ありとなった。そして、前記の粉砕品(100mesh pass)10g を100ml の水に溶かしたところ、次の差が出た。b とc は水を吸いにくく水に分散し難い。a はb、c に比べ明かに速く分散した。
(考察)
酸処理を後にする事は、生臭除去効果がやや高まるばかりで無く、食品利用上大切な水への親和力も増大させる。
【0023】
(実施例3)
次に、上述の実施例1、2における種々の酸・アルカリ処理し乾燥粉砕したものを官能評価を実施し評価した(表1参照)。(濃度は魚骨に対し2%)
【表1】
【0024】
その他、アルカリ剤として、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムと同様であった。クエン酸ナトリウムやリンゴ酸ナトリウムは効果は小さかった。酸剤としてクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸も効果は認められた。
(考察)
酸・アルカリ剤での生臭除去効果はほとんどの食品添加物の範疇で認め、強酸・強アルカリの組合せは高濃度では、生臭除去効果も大きいが骨の溶解等により歩留低下の原因となる。アルカリ剤として溶解しアルカリ性を示す炭酸ナトリウムのような塩も効果があった。酸も塩酸の場合、高濃度では歩留が低下する。これも骨のミネラルを溶出するたのと考えられた。
【0025】
(実施例4)
次に、上述の実施例1、2の実施フロ−に従い、酸・アルカリの濃度検討を実施した(表2及び表3参照)。
(結果)
【表2】
【表3】
その他、強アルカリ剤(水酸化カリウム・カルシウム )は水酸化ナトリウムとほぼ同じ、炭酸カリウム・炭酸カルシウムについては、炭酸カリウムは炭酸ナトリウムと同じ、炭酸カルシウムについては僅かに効果は低かった。リンゴ酸ナトリウムと酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムについては5%程度でも異臭は無かったが、効果としては強アルカリ剤に比べ劣った。有機酸(乳酸・リンゴ酸等)はクエン酸と同程度だった。
(考察)
添加溶解しアルカリ性を呈する炭酸ナトリウムのようなものは至適濃度は上限が非常に高かった。しかしリンゴ酸ナトリウム等は高濃度でも生臭除去効果はやや劣った。酸剤も有機酸類が比較的高濃度で効果があった。しかし酢酸はそれ自体の臭気の為、至適濃度は有機酸類に比べて低かった。
【0026】
(実施例5)
次に、酸・アルカリ剤の各々の処理回数について、実施フローの処理回数を変え検討を実施した(表4参照)。
(結果)
【表4】
(考察)
アルカリ処理の方がやや生臭除去効果は高いことが認められた。最低の処理回数はアルカリ処理1回以上、酸処理1回以上で効果は認められるが、アルカリ処理については2回以上が特に有効と判断した。
【0027】
なお、本実施例で得られた鰹・鮪の魚骨カルシウム素材は食品用として生臭さが除去され、且つ水親和性も高く使い易いものが出来た。尚、成分分析を行ったが従来製法のものとほぼ同一であった。
別効果として、従来肥料等の用途が大部分であった魚骨に新たな高付加価値をつける本製法は水産業界全体への波及効果が期待出来る。
【0028】
【発明の効果】
請求項1記載の魚臭除去方法によれば、魚骨を酸性溶液に浸して酸性で抜ける臭いを除去し、その後、魚骨をアルカリ性溶液に浸してアルカリ性で抜ける臭いを除去するため、従来生じていた生臭さを除去することができる。
【0029】
また、請求項2記載の魚臭除去方法によれば、魚骨をアルカリ性溶液に浸してアルカリ性で抜ける臭いを除去し、その後、魚骨を酸性溶液に浸して酸性で抜ける臭いを除去するため、従来生じていた生臭さを除去することができると共に、魚骨をアルカリ性溶液で処理した後、酸性溶液で処理すると、魚骨を酸性溶液で処理した後、アルカリ性溶液で処理したものに比べ、水親和性が良好となる効果等を奏する。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例の魚臭除去方法の概略的工程図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施例の魚臭除去方法の概略的工程図である。
Claims (4)
- 魚骨を酸性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いし、水洗い後、アルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いして前記魚骨の臭いを除去する
ことを特徴とする魚臭除去方法。 - 魚骨をアルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いし、水洗い後、酸性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いして前記魚骨の臭いを除去する
ことを特徴とする魚臭除去方法。 - 魚骨をアルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いし、水洗い後、アルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いし、水洗い後、酸性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いして前記魚骨の臭いを除去するものである
ことを特徴とする魚臭除去方法。 - アルカリ性溶液に浸し、ボイルし、その後、水洗いする処理回数を、少なくとも2回以上行うことを特徴とする請求項3記載の魚臭除去方法。
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