JP3660021B2 - 空間型光偏向素子 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、光インターコネクションに関し、例えば光コンピュータ内のボード間、プロセッサ間の光スイッチング、並列光情報伝送システム等のキーデバイスとして好適な空間型光偏向素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報処理、通信等の分野において、例えば光コンピュータ内のボード間、プロセッサ間等の情報伝送用配線として従来一般の手段である電気的な配線を用いた場合、配線が占める空間的、時間的なロスはかなり大きなものとなってしまう。そこで、近年、この点を改善するために空間的、時間的に情報伝送量の大きい光を用いた、いわゆる光インターコネクション(光を用いた相互接続)が用いられてきている。コンピュータ内で光インターコネクションを実現する場合、光インターコネクションの持つ空間的、時間的に情報伝送量が大きいという利点を生かすためには、ボード間、プロセッサ間等で空間的に信号の切り替えを行なう光スイッチングや並列的な光情報伝送を実現することが必要であり、これら光スイッチングや並列光情報伝送に対応し得る光デバイスの提供が望まれていた。
【0003】
そこで、本発明者らは、図9に示すような空間型光偏向素子を提案した(図9(a)は素子の縦方向断面図、図9(b)は同横方向断面図、なお、以下の説明では素子の光軸方向を縦方向、光軸に垂直な方向を横方向と記載する)。図9に示す空間型光偏向素子1は、n−InP基板2上にn−InPバッファ層3が形成され、その上方に、井戸層とバリア層が交互に多層積層された(図示せず)多重量子井戸(Multi Quantum Well 、以下、MQWと称する)層4と導波路層5がストライプ状に形成され、フォトリソグラフィ・エッチング技術により導波路層5上に回折格子6が形成されたものである。
【0004】
そして、MQW層4と導波路層5からなるストライプ7の上方にはn−InPクラッド層8が形成されるとともに、ストライプ7の側方には横方向の光の閉じ込めのためにInPブロック層9が埋込成長されている。また、この積層構造の上面には窓部を有する上部電極層10が形成され、下面には下部電極層11が形成されている。
【0005】
上記構成の空間型光偏向素子1において上部、下部電極層10、11間に電圧印加を行なうと、電圧に見合う量だけMQW層4の屈折率が変化し、ブラッグの式に基づく入射光S0 の回折が生じる際に屈折率変化に伴って回折角が変化する。そこで、電圧の大きさを調節することにより回折光S1 を光軸方向に沿う鉛直面内で所望の角度だけ偏向させて(S2 、S3 )、素子1の外部空間に出射することができる。そこで、この回折光S1 の偏向機能を利用することにより光コンピュータにおける光スイッチングシステムや並列光情報伝送システムにおける光インターコネクションに対してこの空間型光偏向素子1を適用することができるのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したように、この種の空間型光偏向素子は回折格子による光の回折現象を利用して導波路層内を導波してきた光を上方に偏向して素子の外部に出射し得るものである。この際、出射光の強度分布は、導波路方向については導波路長とほぼ同等の長さとなりそれ程広がることはない(図9においては出射光S1 、S2 、S3 を模式的に1本の線(矢印)で示したが、実際の出射光は強度の広がりを持っている)。一方、導波路に垂直な方向については、導波路層の光の閉じ込め状態にも左右されるが、導波路方向に比べて大きく広がってしまう。すなわち、出射光のビームの断面形状は導波路に垂直な方向に長い楕円状となる。
【0007】
そこで、マザーボードに配した空間型光偏向素子と子ボードに配した多数の受光素子との間で光インターコネクションを構成しようとする場合、空間型光偏向素子の導波路に垂直な方向については光信号の分解能が極めて悪いという欠点があった。したがって、子ボード上の多数の受光素子に光信号を送信したいという要求があっても、導波路に垂直な方向に空間型光偏向素子を接近させて配置することができず、敢えてそのように配置すると信号のクロストークという問題が生じることになる。この問題が光インターコネクションにおける集積度の向上にとって大きな障害となっていた。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、光スイッチングや並列光情報伝送システムにおける光インターコネクションに適用した際に集積度の向上を図ることができる空間型光偏向素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の空間型光偏向素子は、半導体基板上に、導波路層とクラッド層からなる複数本のストライプが前記半導体基板の幅方向に並べられて互いに平行に形成され、これらストライプには前記導波路層に入射された光を上方に回折させるための回折格子がそれぞれ形成されるとともに、これら回折格子の溝の方向と前記半導体基板の幅方向のなす角度が素子中央側の回折格子から素子周辺側の回折格子に向けて大きくなる方向に変化し、かつ、前記溝の各々の両端は、基板中央側端部が前記導波路層の入射面側、基板周辺側端部が前記導波路層の出射面側にずれて位置するものとされ、前記ストライプの上方に回折光を出射する窓部を有する上部電極層が形成され、前記半導体基板の下方に下部電極層が形成されてなる偏向素子アレイ領域を有し、前記素子中央側の回折格子から前記素子周辺側の回折格子に向けて光の導波方向と前記溝の方向とのなす角度が順次大きくなることにより、素子中央側の導波路層から素子周辺側の導波路層に向けて光の出射方向の鉛直方向からのずれが順次大きくなっていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の空間型光偏向素子は、半導体基板上に、導波路層とクラッド層からなる複数本のストライプが前記導波路層の入射面側から出射面側に向けて放射状に形成され、これらストライプには前記導波路層に入射された光を上方に回折させるための回折格子がそれぞれ形成されるとともに、それら全ての回折格子にわたって回折格子の溝の方向が前記半導体基板の幅方向に平行なものとされ、前記ストライプの上方に回折光を出射する窓部を有する上部電極層が形成され、前記半導体基板の下方に下部電極層が形成されてなる偏向素子アレイ領域を有し、前記素子中央側の回折格子から前記素子周辺側の回折格子に向けて光の導波方向と前記溝の方向とのなす角度が順次大きくなることにより、素子中央側の導波路層から素子周辺側の導波路層に向けて光の出射方向の鉛直方向からのずれが順次大きくなっていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3に記載の空間型光偏向素子は、前記偏向素子アレイ領域の前記導波路層の入射面側に、入射光を分岐しその分岐光を前記偏向素子アレイ領域の各導波路層に向けて導波するための導波路層を有するスイッチ領域が設けられたことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4に記載の空間型光偏向素子は、前記上部電極層の窓部を通して外部空間に露出する前記クラッド層の上面に出射光を少なくとも前記半導体基板の幅方向に集束するための光集束部が形成されたことを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
本発明の空間型光偏向素子によれば、各ストライプの導波路層に光を入射するとその光が回折格子の作用により上方に向けて回折され窓部から素子の外部空間に出射されるが、その際に上部、下部電極層間に電圧印加または電流注入を行なうと電圧または電流の大きさに依存して各導波路層の屈折率が変化し、それに伴って光の回折角(偏向角)がそれぞれ変化する。
【0014】
そこで、請求項1に記載の空間型光偏向素子には、複数の導波路層が半導体基板の幅方向に並んで互いに平行に形成され、また、各回折格子の溝の方向と半導体基板の幅方向のなす角度が基板中央側の回折格子から基板周辺側の回折格子に向けて大きくなっている。すなわち、各回折格子の溝の方向が、素子中央側の回折格子では光の導波方向に対して垂直に近く、周辺側の回折格子になる程、光の導波方向に対して素子の外側に向いている。したがって、光が上方に回折される場合に、素子中央側の導波路層からは鉛直方向上方に出射されるが、周辺側の導波路層になる程、光の出射方向が鉛直方向からずれていき、導波路層の入射面側から見たときに各導波路層からの出射光は放射状になる。
【0015】
また、請求項2に記載の空間型光偏向素子には、複数の導波路層がその入射面側から出射面側に向けて放射状に形成され、全ての回折格子にわたって回折格子の溝の方向が半導体基板の幅方向に平行となっている。すなわち、請求項1に記載の素子が複数のストライプにわたって導波路層の方向を共通に、回折格子の溝の角度を変化させたのに対して、請求項2に記載の素子は回折格子の溝の方向を共通に、導波路層の方向を変化させ全体として放射状にしたものであり、複数のストライプにわたる光の導波方向と回折格子の溝のなす角度の関係は請求項1、請求項2ともに共通である。したがって、請求項2に記載の空間型光偏向素子の場合も、光が上方に回折される場合に、素子中央側の導波路層からは鉛直方向上方に出射されるが、周辺側の導波路層になる程、光の出射方向が鉛直方向からずれていき、導波路層の入射面側から見たときに各導波路層からの出射光が放射状になる。
【0016】
また、請求項3に記載の空間型光偏向素子においては、偏向素子アレイ領域の入射面側に設けられたスイッチ領域の導波路層に対して光を入射すると、入射光が分岐され、その分岐光が偏向素子アレイ領域の各導波路層に向けてそれぞれ導波されることによって、偏向素子アレイ領域への光の入射がなされる。
【0017】
また、請求項4に記載の空間型光偏向素子においては、上部電極層の窓部を通して外部空間に露出するクラッド層の上面に形成された光集束部により、各導波路層からの光が放射状に出射される際に各出射光が少なくとも半導体基板の幅方向に集束される。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の第1の実施例を図1ないし図5を参照して説明する。
図1は本実施例の空間型光偏向素子14の全体構成を示す図であって、この空間型光偏向素子14はスイッチ領域15と偏向素子アレイ領域16から構成されている。また、図2は本発明の特徴点を示す偏向素子アレイ領域16のみの構成を示す図である。図中符号17は半導体基板、18はバッファ層、19はMQW層、20は導波路層、21はクラッド層、22は上部電極層、23は下部電極層、24は絶縁層、25a〜25eは回折格子である。
【0019】
図1に示すように、半導体基板17はn−InPを材料としてチップ状に形成したものであり、この半導体基板17上にn−InPバッファ層18、MQW層19が順次積層されている。MQW層19はInGaAsPからなる井戸層とInPからなるバリア層が交互に多層積層(図示は省略する)されており、いわゆるMQW構造をなす層である。そして、半導体基板17からMQW層19までの積層構造はスイッチ領域15と偏向素子アレイ領域16で共通である。
【0020】
次に、スイッチ領域15においては、上記MQW層19上に1本の導波路が複数本(この場合5本)に分岐した形の導波路層20aが形成されている。このスイッチ領域15の部分は光路の切り替えを行なう、いわゆる周知一般の光スイッチであって、本実施例では一例として、導波路の分岐部に設けた電極26、26、…により屈折率変化を生じさせて光を全反射させる型の内部全反射型光スイッチを適用している。なお、内部全反射型光スイッチに限ることなく、方向性結合器型光スイッチ等、他の型の光スイッチを適用してもよい。
【0021】
一方、図2に示すように、偏向素子アレイ領域16においては、MQW層19上面の基板17の幅方向には、スイッチ領域15の導波路層20aから連続した導波路層20、20、…と、その上部に形成されたクラッド層21、21、…からなる複数本(この場合5本)のストライプ27、27、…が互いに平行に形成されている。ここでは、導波路層20はInGaAsPにより形成され、クラッド層21はp−InPにより形成されている。そして、これら各ストライプ27の延びる方向がそれぞれ入射光S0 の導波方向となっている。
【0022】
また、各ストライプ27における導波路層20の上面には、一定の周期を持つ三角波形の回折格子25a〜25eがそれぞれ形成されている。この回折格子25a〜25eは導波路層内を導波する光S0 を上方に向けて回折させるためのものである。そして、この素子14を平面視した際に、これら各回折格子25a〜25eの溝の方向と基板17の幅方向のなす角度は、基板中央の回折格子25cで0°(溝の方向が光S0 の導波方向に対して垂直)であるのに対して、基板最外周の回折格子25a、25eに向けて0°から漸次大きくなる(溝の方向が光S0 の導波方向に対して直角より小さくなる)方向に変化し、かつ、各回折格子25a〜25eにおける各溝の両端は、基板中央側端部が導波路層20の入射面側(図2における手前側)、基板周辺側端部が導波路層の出射面側(図2における奥側)に位置している。
【0023】
一方、各ストライプ27は、後述する上部電極層22と下部電極層23との間で注入電流を遮断するための、アンドープのInP(以下、u−InPと記載する)からなる絶縁層24により埋め込まれている。なお、絶縁層24としてはu−InPを用いる代わりに、上側がn−InP、下側がp−InPの積層構造を用いて基板とクラッド層がなす導電型に対して逆接合(p−n−p−n)となるような構造としたり、絶縁材料であるポリイミド等の樹脂を用いた構造としてもよい。
【0024】
また、各ストライプ27のクラッド層21の上面には、上部電極層22(図2では左端のストライプのみについて図示し、残りは省略する)がそれぞれ形成され、半導体基板17の下面全面には下部電極層23が形成されている。そして、各上部電極層22には、上方に回折した光を素子外部へ出射させるための矩形の窓部28が形成されている。これら上部、下部電極層22、23は、ともにCrとAuとの積層、またはn側はAu−Ge−Ni合金とAuとの積層、p側はAu−Zn合金とAuとの積層、さらにはこれらの上にCrとAuを積層した構造となっている。
【0025】
上記構成の空間型光偏向素子14を使用する際は、スイッチ領域15の電極26、26、…、および偏向素子アレイ領域16の上部電極層22、22、…と下部電極層23の間に電源を接続する。そして、スイッチ領域15の導波路層20aに対して光S0 を入射するとともにスイッチ領域15の電極26、26、…に電圧を印加して屈折率を変化させると、入射光が分岐して偏向素子アレイ領域16に入射される。
【0026】
ここで、偏向素子アレイ領域16において光が入射された導波路層20上の上部、下部電極層22、23間に電圧を適宜印加してMQW層19の屈折率を変化させると、屈折率変化に伴って回折角が変化し、すなわち、回折光が光の導波方向に沿う面内においてその出射角度が変化し、各窓部28から素子14の外部にそれぞれ出射される。なお、上部、下部電極層22、23間に印加する電圧の極性はいずれが正または負であってもよいし、電圧印加に代えて電流を注入する方法でもMQW層19の屈折率を変化させることが可能である。
【0027】
本実施例の空間型光偏向素子14においては、偏向素子アレイ領域16に電圧印加を行なった場合のMQW層19の最大屈折率変化量は0.2%程度であり、この値からブラッグの式を用いて計算すると各ストライプ27からの出射光S1を光の導波方向に沿う面内で5°程度の範囲において偏向させることができる。この際、図3に示すように、複数のストライプ27、27、…(なお、図3では図示の都合上、ストライプの本数を4本とする)からそれぞれ光S1 〜S4 が出射されるが、各回折格子の溝の方向が、基板中央の回折格子から周辺の回折格子になる程、光の導波方向に対して外側に向いている。したがって、図4に示すように、光が上方に回折されたときに、出射光は基板中央側のストライプ27からは鉛直に近い方向(S2 、S3 )に出射されるが、周辺側のストライプ27になる程、光の出射方向が鉛直方向からずれ(S1 、S4 )、入射面側から見たときに各ストライプ27からの光が放射状に出射されることになる。
【0028】
そこで、マザーボードに配置した空間型光偏向素子と子ボードに配置した複数の受光素子との間で光インターコネクションを構成する場合に、導波路に垂直な方向に関する光信号の分解能が従来の素子を用いた場合に比べて向上する。従来は、導波路に垂直な方向に空間型光偏向素子を接近配置して多数の受光素子に対して光信号を送信することができなかったが、図5に示すように、本実施例の空間型光偏向素子14によれば、この素子1つで導波路に垂直な方向に並ぶ子ボード29上の多数の受光素子群30a〜30dに対してクロストークを生じることなく光信号を送ることが可能となる。したがって、この空間型光偏向素子14の適用により光インターコネクションにおける集積度の向上を図ることができる。
【0029】
また、本実施例の空間型光偏向素子14はスイッチ領域15を有しているので、スイッチ領域15の1本の導波路層20aに光ファイバ等を介して信号源を接続し、後はスイッチを機能させるだけで偏向素子アレイ領域16から出射光が得られるため、別体の光スイッチや複数の入射用光ファイバを要することがなく、光ファイバ接続等を含むシステム組立作業の簡単化、部品点数の低減を図ることができる。
【0030】
さらに、本実施例では、各ストライプ27毎に上部電極層22を設け、各導波路層20下のMQW層19に対して個別に電圧印加を行なう構成としたため、各出射光毎に偏向角の制御、すなわち光スイッチングを独立して行なうことができる。
【0031】
以下、本発明の第2の実施例を図6ないし図8を参照して説明する。
図6は本実施例の空間型光偏向素子31の全体構成を示す図であって、この空間型光偏向素子31も第1実施例と同様、スイッチ領域32と偏向素子アレイ領域33から構成されている。また、図7は偏向素子アレイ領域33のみの構成を示す図である。
【0032】
第2実施例の空間型光偏向素子31が第1実施例の素子14と異なる点は、複数のストライプ相互の位置関係、および回折格子の溝の方向の2点のみであり、素子の全体構成、および積層構造は第1実施例と全く同様である。したがって、以下では上記異なる点のみ説明し、共通点については図面に同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
図7は偏向素子アレイ領域33の構成を示す図である。MQW層29上面の基板17の幅方向には、スイッチ領域32の導波路層20aと連続する導波路層34a〜34eとその上部に積層されたクラッド層35からなる複数本(この場合5本)のストライプ36a〜36eが、導波路層34の入射面側から出射面側(図7における手前側から奥側)に向けて放射状に形成されている。また、各ストライプ36における導波路層34の上面には、一定の周期を持つ三角波形の回折格子37、37、…がそれぞれ形成されており、この素子31を平面視した際にこれら全ての回折格子37の溝の方向が半導体基板17の幅方向に平行となっている。
【0034】
すなわち、第1実施例の空間型光偏向素子14が複数のストライプ27、27、…において導波路層20の方向を共通に、回折格子25a〜25eの溝の角度を漸次変化させたのに対して、第2実施例の空間型光偏向素子31は回折格子37の溝の方向を共通に、導波路層34a〜34eの方向を漸次変化させて放射状にしたものである。したがって、複数のストライプにわたる光の導波方向と回折格子の溝のなす角度の関係は第1、第2実施例ともに共通である。そこで、第1実施例の場合と同様、図8に示すように、光が上方に回折される際に導波路層34a〜34eの入射面側から見たときに各導波路層34a〜34eからの光が放射状に出射される。
【0035】
したがって、本実施例の空間型光偏向素子31においても、導波路に垂直な方向に並ぶ複数の受光素子に対する光信号の分解能が上がることから光インターコネクションにおける集積度の向上が図れる、スイッチ領域32を有することから光ファイバ接続等を含むシステム組立作業の簡易化、部品点数の低減が図れる等、第1実施例と同様の効果を奏することができる。
【0036】
ところで、空間型光偏向素子の製造方法について考慮すると、回折格子の溝の形成は極めて微細な加工技術を要するため、通常、電子ビーム露光法または干渉露光法が用いられる。そこで、第1実施例の空間型光偏向素子14の場合、各回折格子25a〜25eでそれぞれ角度が異なるため、電子ビーム露光法、干渉露光法のいずれを用いるにしても処理を数回に分けて行なわなければならず、製造工程が複雑となり、処理時間が長くなるという欠点を有していた。それに対して、第2実施例の空間型光偏向素子31の場合、全ての回折格子37、37、…にわたって溝の方向が一定なため、電子ビーム露光法または干渉露光法の処理が1回で済み、かつ、複数のストライプ36a〜36eを放射状に形成することについてはパターニングだけの問題のため、工程を複雑にするものではない。したがって、第2実施例の空間型光偏向素子31の構造によれば、第1実施例の場合に比べて製造工程が減り、処理時間を短縮することができる。
【0037】
なお、第1、第2実施例の空間型光偏向素子14、31の構成に加えて、クラッド層21、35の上面に出射光を少なくとも基板17の幅方向に集束するための光集束部を設けてもよい。この光集束部は、具体的にはクラッド層の上面自体を凸レンズ状に加工する、クラッド層の上面に例えばポリイミド等の材料で別途作製した凸レンズを固着する、等の種々の手段を用いることができる。そして、この種の光集束部を設けることにより出射光の各々が基板の幅方向に集束されるため、本発明の効果に加えて導波路に垂直な方向の光信号の分解能をさらに向上させることができる。
【0038】
また、両実施例における偏向素子アレイ領域16、33の上部電極層22の構成については、各ストライプ27、36a〜36e毎に上部電極層22を設け、各ストライプ27、36a〜36e毎に個別に電圧印加を行なう構成としたが、素子14、31の上面を全面的に覆うとともに各ストライプ27、36a〜36e上に窓部を設けた上部電極層を形成し、全てのストライプ27、36a〜36eに対して同時に電圧印加を行なう構成としてもよい。
【0039】
そして、半導体基板17の材料としてn−InPを、クラッド層21、35の材料としてp−InPを用いたが、これらの導電型は逆であっても良いし、InP系に限らず、GaAs系等、他の化合物半導体材料を用いることもできる。さらに、MQW層19の材料としても実施例のInGaAsP/InPの他、InGaAsP/InGaAsP等のInP系材料、AlGaAs/GaAs等のGaAs系材料を用いても良い。また、本発明を適用し得る光偏向素子の基本構造はこれら実施例に限るものではない。例えばMQW構造またはバルクの単層構造の導波路層を有するもの、光閉込補償層、裏面反射膜のような他の層を有するもの、回折格子の形成位置が異なるもの等、種々の構造を持つ空間型光偏向素子に対して本発明を適用することが可能である。
【0040】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、請求項1に記載の空間型光偏向素子によれば、複数の導波路層が互いに平行に形成され、また、各回折格子の溝の方向と半導体基板の幅方向のなす角度が基板中央側の回折格子から基板周辺側の回折格子に向けて大きくなっている。すなわち、各回折格子の溝の方向が、素子中央側の回折格子では光の導波方向に対して垂直に近く、周辺側の回折格子になる程、光の導波方向に対して外側に向いている。したがって、光が上方に回折される際に導波路層の入射面側から見たときに各導波路層からの光が放射状に出射されることになる。
【0041】
そこで、この空間型光偏向素子を用いた光インターコネクションを実現する場合に、導波路に垂直な方向に関する光信号の分解能が従来の空間型光偏向素子を用いた場合に比べて向上する。したがって、この空間型光偏向素子によれば、導波路に垂直な方向に並ぶ複数の受光素子に対してクロストークを生じることなく光信号を送ることが可能となる。したがって、この空間型光偏向素子の適用により光インターコネクションにおける集積度の向上を図ることができる。
【0042】
また、請求項1に記載の空間型光偏向素子が複数のストライプにおいて導波路層の方向を共通に、回折格子の溝の角度を変化させたのに対して、請求項2に記載の空間型光偏向素子は回折格子の溝の方向を共通に、導波路層の方向を変化させ全体として放射状にしたものであり、複数のストライプにわたる光の導波方向と回折格子の溝のなす角度の関係は請求項1、請求項2ともに共通である。したがって、この場合も各導波路層からの出射光が放射状となるため、請求項1と同様の効果を奏することができる。さらに、請求項2に記載の空間型光偏向素子によれば、全ての回折格子にわたって溝の方向が一定なため、溝の形成に係わる電子ビーム露光法または干渉露光法を含む製造工程が簡単になり、処理時間を短縮することができる。
【0043】
また、請求項3に記載の空間型光偏向素子はスイッチ領域を有しているので、別体の光スイッチや複数本の入射用光ファイバを要することがなく、光ファイバ接続等を含むシステム組立作業の簡易化、部品点数の低減を図ることができる。
【0044】
また、請求項4に記載の空間型光偏向素子によれば、光集束部により放射状に出射される出射光の各々が半導体基板の幅方向に集束されるため、導波路に垂直な方向の光信号の分解能をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例である空間型光偏向素子の全体構成を示す斜視図である。
【図2】 同、空間型光偏向素子の偏向素子アレイ領域のみの構成を示す斜視図である。
【図3】 同、空間型光偏向素子から光が出射する状態を示す平面図である。
【図4】 同、正面図である。
【図5】 同、空間型光偏向素子を用いた光インターコネクションの構成の一例を示す図である。
【図6】 本発明の第2実施例である空間型光偏向素子の全体構成を示す斜視図である。
【図7】 同、空間型光偏向素子の偏向素子アレイ領域のみの構成を示す斜視図である。
【図8】 同、空間型光偏向素子から光が出射する状態を示す平面図である。
【図9】 従来の空間型光偏向素子の一例を示す(a)側断面図、(b)正断面図である。
【符号の説明】
14,31…空間型光偏向素子、15,32…スイッチ領域、16,33…偏向素子アレイ領域、17…半導体基板、19…MQW層、20,34a〜34e…導波路層、20a…(スイッチ領域の)導波路層、21,35…クラッド層、22…上部電極層、23…下部電極層、25a〜25e,37…回折格子、27,36,36a〜36e…ストライプ、28…窓部、S0 …入射光、S1 〜S4 …出射光
Claims (4)
- 半導体基板上に、導波路層とクラッド層からなる複数本のストライプが前記半導体基板の幅方向に並べられて互いに平行に形成され、
これらストライプには前記導波路層に入射された光を上方に回折させるための回折格子がそれぞれ形成されるとともに、これら回折格子の溝の方向と前記半導体基板の幅方向のなす角度が素子中央側の回折格子から素子周辺側の回折格子に向けて大きくなる方向に変化し、かつ、前記溝の各々の両端は、基板中央側端部が前記導波路層の入射面側、基板周辺側端部が前記導波路層の出射面側にずれて位置するものとされ、
前記ストライプの上方に回折光を出射する窓部を有する上部電極層が形成され、前記半導体基板の下方に下部電極層が形成されてなる偏向素子アレイ領域を有し、
前記素子中央側の回折格子から前記素子周辺側の回折格子に向けて光の導波方向と前記溝の方向とのなす角度が順次大きくなることにより、素子中央側の導波路層から素子周辺側の導波路層に向けて光の出射方向の鉛直方向からのずれが順次大きくなっていることを特徴とする空間型光偏向素子。 - 半導体基板上に、導波路層とクラッド層からなる複数本のストライプが前記導波路層の入射面側から出射面側に向けて放射状に形成され、
これらストライプには前記導波路層に入射された光を上方に回折させるための回折格子がそれぞれ形成されるとともに、それら全ての回折格子にわたって回折格子の溝の方向が前記半導体基板の幅方向に平行なものとされ、
前記ストライプの上方に回折光を出射する窓部を有する上部電極層が形成され、前記半導体基板の下方に下部電極層が形成されてなる偏向素子アレイ領域を有し、
前記素子中央側の回折格子から前記素子周辺側の回折格子に向けて光の導波方向と前記溝の方向とのなす角度が順次大きくなることにより、素子中央側の導波路層から素子周辺側の導波路層に向けて光の出射方向の鉛直方向からのずれが順次大きくなっていることを特徴とする空間型光偏向素子。 - 請求項1または2に記載の空間型光偏向素子において、
前記偏向素子アレイ領域の前記導波路層の入射面側に、入射光を分岐しその分岐光を前記偏向素子アレイ領域の各導波路層に向けて導波するための導波路層を有するスイッチ領域が設けられたことを特徴とする空間型光偏向素子。 - 請求項1ないし3のいずれか一項記載の空間型光偏向素子において、
前記上部電極層の窓部を通して外部空間に露出する前記クラッド層の上面に、出射光を少なくとも前記半導体基板の幅方向に集束するための光集束部が形成されたことを特徴とする空間型光偏向素子。
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