JP3659456B2 - コレットチャック装置及びコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法 - Google Patents
コレットチャック装置及びコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2枚のディスク又は平板状加工物の中心孔を芯出しした状態で確実にチャッキングできるコレットチャック装置及びコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
円板状の被保持物の内径保持孔にコレットチャックを被嵌したチャック装置が特開昭59ー209707号公報に開示されている。また、ディスク1枚をそのディスクの中心孔の内面を利用してコレットチャックの爪を拡張して保持するディスク保持が特開58ー153283号公報に開示され、更に、ディスク状媒体をスピンドルカップなどの支持部材上にクランプするディスクチャツク用コレットの構造が特開63ー127456号公報に開示されている。
【0003】
ところで、最近、2枚のディスクを貼り合わせたDVD用のディスクが開発されている。そして、この種の2枚のディスクを芯出しする光ディスクの製造装置が特開平4ー265547号公報には開示されているが、この公報によると、上側のディスクを吸着する吸着板に設けた芯出し治具を、下側のディスクを吸着保持する吸着板に凹凸嵌合させる際に、下側の吸着板と吸着板支持体との間に摩擦力を低減させる球体又はオイルレスベアリングなどの物体を介入し、上側の吸着板に対して下側の吸着板を左右に移動させることにより2枚のディスクを芯出しするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した従来例におけるコレットチャック装置は、いずれも1枚の円板状の被保持物の内径保持孔または1枚のディスクの中心孔をチャッキングできるものの、2枚重ねてチャッキングできるものでない。
【0005】
そこで、2枚のディスクの中心孔の孔寸法に多少バラツキがあっても2枚重ねて同軸的にチャッキングできるコレットチャック装置が望まれている。更に、2枚重ねてチャッキングできるコレットチャック装置が開発できれば、2枚のディスクを貼り合わせる際に、2枚のディスクの芯出しが確実になるものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、2枚のディスク又は平板状加工物に夫々形成した中心孔の孔寸法に多少のバラッキが生じていても、2枚の前記ディスク又は前記平板状加工物を重ねてチャッキングするコレットチャック装置であって、
弾性部材を用いた円筒状爪部の中心に中心孔を形成し、且つ、前記円筒状爪部の円周を軸方向に6か所の縦長なスリット部により6分割して、下層の前記ディスク又は前記平板状加工物をチャッキングするために軸方向に長い3つの長い爪部と、上層の前記ディスク又は前記平板状加工物をチャッキングするために軸方向に短い3つの短い爪部とを前記スリット部一つおきに弾性変位可能に形成したチャック爪と、
前記チャック爪を同軸的に取り付け、且つ、圧縮空気又はオイルが入出する入出口を形成してチャンバー内を密閉したシリンダと、
前記シリンダのチャンバーの内周と、前記チャック爪の中心孔とに沿いながら前記圧縮空気又は前記オイルにより軸方向に移動自在に設けられ、一つ方向の移動時に先端部が前記3つの短い爪部と係合して、上層の前記ディスク又は前記平板状加工物の中心孔に挿入した該3つの短い爪部を径方向に開く一方、一つ方向と反対方向への移動時に該3つの短い爪部を閉じる第1ピストンと、
前記第1ピストンの中心に形成した中心孔に沿いながら前記圧縮空気又は前記オイルにより軸方向に移動自在に設けられ、一つ方向の移動時に先端部が前記3つの長い爪部と係合して、下層の前記ディスク又は前記平板状加工物の中心孔に挿入した該3つの長い爪部を径方向に開く一方、一つ方向と反対方向への移動時に該3つの長い爪部を閉じる第2ピストンとを備えたことを特徴とするコレットチャック装置である。
【0007】
また、第2の発明は、弾性部材を用いた円筒状爪部の中心に中心孔を形成し、且つ、前記円筒状爪部の円周を軸方向に6か所の縦長なスリット部により6分割して、下層の前記ディスクをチャッキングするために軸方向に長い3つの長い爪部と、上層の前記ディスクをチャッキングするために軸方向に短い3つの短い爪部とを前記スリット部一つおきに弾性変位可能に形成したチャック爪をシリンダに取り付けると共に、前記シリンダ内に第1,第2ピストンを軸方向に移動可能に設けたコレットチャック装置を用い、2枚のディスクの中心孔を芯出しした状態で貼り合わせるディスクの製造方法であって、
下層のディスクの中心孔をターンテーブル上に突出したセンターピンに嵌合して、前記ターンテーブル上に載置した下層の前記ディスクを回転させながら下層の前記ディスクの上面の内周部分に紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、
上層のディスクの中心孔を前記センターピンに嵌合して、上層の前記ディスクを前記紫外線硬化樹脂を介して下層の前記ディスクの上に重ね合わせ、且つ、前記ターンテーブルを回転して前記紫外線硬化樹脂を遠心力により外周端まで略均一に伸ばした後に前記ターンテーブルの回転を停止する工程と、
前記ターンテーブルの停止時に前記3つの長い爪部が前記センターピンに接触するにつれて該センターピンを圧縮バネに抗して前記ターンテーブルの中心孔内に下降させて、前記3つの長い爪部を下層の前記ディスクの中心孔に挿入させ、且つ、前記3つの短い爪部を上層の前記ディスクの中心孔に挿入させ、前記第1ピストンの一つ方向の移動時に先端部が前記3つの短い爪部と係合して、上層の前記ディスクの中心孔に挿入した該3つの短い爪部を径方向に開くと共に、前記第2ピストンの一つ方向の移動時に先端部が前記3つの長い爪部と係合して、下層の前記ディスクの中心孔に挿入した該3つの長い爪部を径方向に開いて、2枚の前記ディスクの中心孔を芯出しする工程と、
2枚の前記ディスクを芯出しした後、紫外線を照射して前記紫外線樹脂を硬化させ、2枚の前記ディスクを貼り合わせる工程とからなるコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係るコレットチャック装置及びコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法の一実施例を図1乃至図9を参照して<第1実施例>,<第2実施例>の順に詳細に説明する。
【0009】
<第1実施例>
図1は本発明に係るコレットチャック装置の外観を示した斜視図、
図2(A),(B)は本発明に係るコレットチャック装置を説明するための図であり、(A)は(B)に示した二点鎖線に沿って断面した断面図,(B)はチャック爪の下面図、
図3(A),(B)は本発明に係るコレットチャック装置の動作を説明するための図、
図4は2枚の光ディスクの中心孔の孔寸法にバラツキが生じている際、チャック爪で芯出した状態を示した図である。
【0010】
本発明に係るコレットチャック装置は、2枚のディスク又は2枚の平板状加工物に夫々形成した中心孔の孔寸法に多少のバラッキが生じていても、2枚のディスク又は2枚の平板状加工物を重ねて同時にチャッキグできるように構成したことに特徴があるものである。尚、以下の説明では、2枚のディスクについて説明し、2枚の平板状加工物についての説明を省略するものの、2枚の平板状加工物は必ずしも円板状でなくてもそれぞれの中心孔がほぼ同寸法に形成されていれば良いものである。
【0011】
図1及び図2に示した如く、本発明に係るコレットチャック装置1では、図示しないモータの軸に嵌合したセンターピン33にターンテーブル34が回転可能に支持され、且つ、このターンテーブル34上に2枚のディスク(以下、光ディスクと記す)D1,D2が積層されて、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2がターンテーブル34の中心孔34a内を上下動(出没)するセンターピン33と対向している。
【0012】
上記コレットチャック装置1では、円筒状のシリンダ2の上部にシリンダキャップ3がこのシリンダ2のチャンバー2aを閉鎖するように取り付けられている。また、シリンダ2の下部には、本発明の要部となるチャック爪4が複数のネジ6を介して押さえ部材5で押さえ付けられながらシリンダ2のチャンバー2aを閉鎖するように取り付けられ、且つ、チャック爪4はシリンダ2の中心に対して同軸的に取り付けられている。
【0013】
上記チャック爪4は、弾性部材(スプリング鋼)を用いて円筒状取付部4aより細径な円筒状爪部4bが軸方向の下方に向かって突出形成され、且つ、円筒状爪部4bは押さえ部材5の内周に形成した雌ネジ5aと螺合した雄ネジ7aを有する爪開き制御部材7の段付き中心孔7bを貫通して下方に向かって突出形成されている。
【0014】
また、チャック爪4は、弾性部材を用いて形成した円筒状爪部4bの円周を軸方向に6か所の縦長なスリット部4b1により6分割して、下層の光ディスクD2をチャッキングするために軸方向に長い3つの長い爪部4b2と、上層の光ディスクD1をチャッキングするために軸方向に短い3つの短い爪部4b3とがスリット部4b1を一つおきに形成されている。また、チャック爪4の3つの長い爪部4b2及び3つの短い爪部4b3は、それぞれの両側のスリット部4b1の根元を支点として素材の弾性力により径方向に弾性変位自在に形成されている。ここで、長い爪部4b2の寸法は、少なくとも短い爪部4b3より光ディスクD1,D2の厚みを考慮した分だけ軸方向の下方に長く形成されている。
【0015】
また、段付き状の第1ピストン(以下、外側ピストンと記す)8がシリンダ2のチャンバー2aの内周と、チャック爪4の中心孔4cに沿いながら軸方向に対して上下動可能に設けられ、更に、頭部9aを段付き状に形成した第2ピストン(以下、内側ピストンと記す)9が外側ピストン8の頭部8aの中心に形成した段付き中心孔8bに沿いながら軸方向に対して上下動可能に設けられている。
【0016】
また、シリンダ2はシール材によってチャンバー2a内を密閉されており、且つ、シリンダ2には外側ピストン8の頭部8aを介した上下に圧縮空気とかオイル(油)が入出する入出口2b,2cが形成されている。そして、例えば、シリンダ2に形成した入出口2bから圧縮空気を挿入すると共に、入出口2cから圧縮空気を排出すると、同一のチャンバー2a内に設けた両ピストン8,9の頭部8a,9aが圧縮空気により押されるので両者8,9は同時に下降する一方、上記とは逆方向に圧縮空気を操作すると両ピストン8,9が同時に上昇するようになっている。
【0017】
また、図3(A)に拡大して示した如く、外側ピストン8の下方の先端部にテーパ部8cが形成されている。そして、外側ピストン8の下降動作に伴って、外側ピストン8のテーパ部8cがチャック爪4の中心孔4cの下方で3つの短い爪部4b3側に形成した3つのテーパ部4c1に係合して、素材の弾性力に抗して3つのテーパ部4c1を押し拡げることによりチャック爪4の3つの短い爪部4b3が同時に径方向の外側に向って開くようになっている。従って、チャック爪4の3つの短い爪部4b3は、ターンテーブル34上に積層した2枚の光ディスクD1,D2のうちで上側の光ディスクD1の中心孔d1をチャッキングすることができる。
この際、外側ピストン8の下降動作に伴って、外側ピストン8に形成したテーパ部8cは、図2(B)にも示したようにチャック爪4の中心孔4cの下方で3つの長い爪部4b2の内側に形成した3つの逃げ部4c2と対向するので、チャック爪4の3つの長い爪部4b2は外側ピストン8のテーパ部8cによって押し拡げられないようになっている。
一方、外側ピストン8が上動すれば、外側ピストン8のテーパ部8cがチャック爪4のテーパ部4c1から離れるので、チャック爪4の短い爪部4b3が素材の弾性力により光ディスクD1の中心孔d1の孔寸法より細径の方向に閉じる。
【0018】
また、図3(B)に拡大して示した如く、内側ピストン9の下方の先端部にテーパ部9bが形成されている。そして、内側ピストン9の下降動作に伴って、内側ピストン9のテーパ部9bがチャック爪4の中心孔4cの下方で3つの長い爪部4b2側に形成した3つのテーパ部4c3に係合して、素材の弾性力に抗して3つのテーパ部4c3を押し拡げることによりチャック爪4の3つの長い爪部4b2が同時に径方向の外側に向って開くようになっている。従って、チャック爪4の3つの長い爪部4b2は、ターンテーブル34上に積層した2枚の光ディスクD1,D2のうちで下側の光ディスクD2の中心孔d2をチャッキングするようになっている。
この際、チャック爪4の3つの長い爪部4b2の外側は、上層の光ディスクD1の中心孔d1に接しないように逃げ部4b21が細径に形成されている。
一方、内側ピストン9が上動すれば、内側ピストン9のテーパ部9bがチャック爪4のテーパ部4c3から離れるので、チャック爪4の長い爪部4b2が素材の弾性力により光ディスクD2の中心孔d2の孔寸法より細径の方向に閉じる。
【0019】
図2に戻り、前記したように、押さえ部材5と爪開き制御部材7との雄雌ネジ嵌合により爪開き制御部材7が回転することより軸方向に対して上下動できるようになっていると共に、爪開き制御部材7の段付き中心孔7bの下端の内径部7b1はチャック爪4の円筒状爪部4bより僅かに大径に形成されているものの、爪開き制御部材7の内径部7b1の上下動によって、チャック爪4のスリット部4b1の根元を支点として弾性変位する3つの長い爪部4b2及び3つの短い爪部4b3の径方向への開き具合を目的の開き外形寸法に制御している。従って、爪開き制御部材7の内径部7b1により3つの長い爪部4b2及び3つの短い爪部4b3の径方向への開き寸法を光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2の最大バラツキ径寸法より僅かに大きく設定することで、外側ピストン8及び内側ピストン9の下降量を最適な範囲以内に抑えることができる。
尚、爪開き制御部材7は必要に応じて設けられるものであり、爪開き制御部材7を設けない場合は、光ディスクD1,D2の剛性が外側ピストン8及び内側ピストン9の押し下げ力に勝る位置で両ピストン8,9の下降が停止する。
【0020】
更に、シリンダ2の上下にシリンダキャプ3,チャック爪4などを取り付けた状態で、アーム部材11がシリンダキャップ3に位置決めピン12で位置規制されながら取り付けられている。上記アーム部材12は図示しない駆動手段によりXYZ軸方向に3次元的に移動できるようになっている。
【0021】
従って、アーム部材11を回動してシリンダ2に取り付けたチャック爪4の中心をターンテーブル34上に積層した2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2と対向させた後、アーム部材11を下動してチャック爪4の3つの長い爪部4b2を下層の光ディスクD2の中心孔d2に挿入すると共に、3つの短い爪部4b3を上層の光ディスクD1の中心孔d1に挿入する。そして、シリンダ2内の外側ピストン8及び内側ピストン9を同時に下降すると、図3(A)に示した動作と、図3(B)に示した動作とが同時に行なわれ、チャック爪4に形成した3つの長い爪部4b2と3つの短い爪部4b3とで2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2を同時に芯出しした状態でチャッキングできる。
この際、図4に示した如く、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2の孔寸法にバラツキが生じていても、チャック爪4に形成した3つの長い爪部4b2及び3つの短い爪部4b3はそれぞれの両側のスリット部4b1の根元を支点としてそれぞれ独立に弾性変位するので、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2の孔寸法のバラツキに対して何等の支障も生じることなく、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2を同時に芯出しできる。
【0022】
次に、本発明に係るコレットチャック装置の変形例について図5を用いて簡略に説明する。
【0023】
図5(A),(B)は本発明に係るコレットチャック装置の変形例を説明するための図であり、(A)は(B)に示した二点鎖線に沿って断面した断面図, (B)はチャック爪の下面図である。
尚、先に説明したコレットチャック装置1の構成部材と同一構成部材に対して同一の符号を付して適宜説明し、この変形例ではコレットチャック装置1と異なる点を中心に簡略に説明する。
【0024】
先に説明したコレットチャック装置1では、シリンダ2の同一のチャンバー2a内に入出する圧縮空気又はオイルにより外側ピストン8及び内側ピストン9を同時に動作させているのに対して、本発明の変形例のコレットチャック装置20では、シリンダ2の異なるチャンバー2a,2e内に入出する圧縮空気又はオイルにより外側ピストン8及び内側ピストン9を別々に動作させていること特徴とするものである。
【0025】
即ち、図5に示した変形例のコレットチャック装置20では、シリンダ2の上下から孔明け加工を施して、中間部2dを介して下方にチャンバー2aを、上方にチャンバー2eを別々に形成している。そして、各チャンバー2a,2eには圧縮空気又はオイルが入出する入出口(2b,2c),(2f,2g)が各チャンバー2a,2eごとに形成されている。勿論、各チャンバー2a,2e内はシール部材により密閉されている。
【0026】
そして、外側ピストン8は、下方のチャンバー2a内に入出する圧縮空気又はオイルにより軸方向に移動可能に設けられている。一方、内側ピストン9は、上方のチャンバー2e内に入出する圧縮空気又はオイルにより軸方向に移動可能に設けられている。これにより、外側ピストン8及び内側ピストン9は別々に移動を制御できるばかりでなく、圧縮空気又はオイルの圧力を別々に制御できる。これに伴って、チャック爪4に形成した3つの長い爪部4b2及び3つの短い爪部4b3を別々に開閉できることは明らかである。
【0027】
<第2実施例>
図6(A)〜(E)は本発明に係るコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法を工程順に示した工程図、
図7は図6(C)に示した工程で2枚の光ディスク間に紫外線硬化樹脂を介在させた状態で芯ずれが生じている状態を示した図、
図8は従来方法により2枚の光ディスクの中心孔をセンターピンに嵌合して芯出しを行う方法を説明するための図、
図9(A),(B)は本発明に係るコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法による効果を従来方法と比較するために、30枚の芯ずれを測定した結果を示した図であり、(A)は本発明の実施例の方法の場合を示し、 (B)は従来方法の場合を示した図である。
【0028】
図6(A)〜(E)に示した本発明に係るコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法では、2枚の光ディスクD1,D2を貼り合わせするにあたって、先に説明した本発明に係るコレットチャック装置1又は本発明に係る変形例のコレットチャック装置20を用いて、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔の芯がずれることなく、貼り合わせすることに特徴があるものである。
【0029】
まず、図6(A)に示した如く、ベース台31上にモータ32が取り付けられ、このモータ32と嵌合し且つ光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2の孔寸法より僅かに小径なセンターピン33がターンテーブル34の中心孔34a内を圧縮バネ35を介して出没自在に設けられている。また、ターンテーブル34の上方で且つ内周側に接着材となる紫紫外線硬化樹脂Jを収納したディスペンサー36が設置されている。
【0030】
ここで、下層となる光ディスクD2の中心孔d2をターンテーブル34上に突出したセンターピン33に嵌合して、光ディスクD2をターンテーブル34上に載置する。次いで、ディスペンサー36から接着材となる紫外線硬化樹脂Jを光ディスクD2の上面の内周部分に滴下しながら、モータ32を30〜60rpmの回転速度で回転させる。ここで、ターンテーブル34が5〜6回転した時点でディスペンサー36からの紫外線硬化樹脂Jの滴下を停止し、同時にターンテーブル34の回転を停止する。
【0031】
次に、図6(B)に示した如く、上層となる光ディスクD1の中心孔d1をターンテーブル34上に突出したセンターピン33に嵌合して、上層となる光ディスクD1を紫外線硬化樹脂Jを介して下層の光ディスクD2の上に重ね合わせて載置する。
【0032】
次に、図6(C)に示した如く、ターンテーブル34上に2枚の光ディスクD1,D2を紫外線硬化樹脂Jを介して重ね合わせた状態で、モータ32を1000〜4000rpmの回転速度で回転させると、2枚の光ディスクD1,D2の間で紫外線硬化樹脂Jが遠心力によって内周から外周端に向かってほぼ均一に伸ばされ、且つ、紫外線硬化樹脂Jの余分な量が外周端から外に飛ばされると共に、2枚の光ディスクD1,D2間に介在する空気が排除される。そして、2枚の光ディスクD1,D2間に介在する紫外線硬化樹脂Jの厚みが0.02〜0.1mmの範囲内に至った時にモータ32の回転を停止する。ここでは、紫外線硬化樹脂Jが硬化していない状態であり、図7に示したように、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2の孔寸法にバラツキが生じていると、2枚の光ディスクD1,D2は芯ずれが生じたまま停止している。
【0033】
次に、図6(D)に示した如く、先に説明した本発明に係るコレットチャック装置1又は本発明に係る変形例のコレットチャック装置20を用いて、チャック爪4の3つの長い爪部4b2を下層の光ディスクD2の中心孔d2に挿入すると共に、3つの短い爪部4b3を上層の光ディスクD1の中心孔d1に挿入する。ここで、長い爪部4b2の先端部がセンターピン33に接触することにより、センターピン33は圧縮バネ35の付勢力に抗してターンテーブル34の中心孔34a内を下降する。この後、第1実施例で詳述したように、シリンダ2内の外側ピストン8及び内側ピストン9が下降すると、図3(A)に示した動作と、図3(B)に示した動作とが同時に行なわれ、チャック爪4に形成した3つの長い爪部4b2と3つの短い爪部4b3とで2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2を同時に芯出した状態でチャッキングできる。
この際、図4に示した如く、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2の孔寸法にバラツキが生じていても、チャック爪4に形成した3つの長い爪部4b2及び3つの短い爪部4b3はそれぞれ独立に弾性変位するので、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2の孔寸法のバラツキに対して何等の支障も生じることなく、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2を同時に芯出しできる。
そして、2枚の光ディスクD1,D2の芯出しが終了したら、チャック爪4に形成した3つの長い爪部4b2及び3つの短い爪部4b3を閉じて、コレットチャック装置1又は変形例のコレットチャック装置20を別な場所に移動させる。
【0034】
次に、図6(E)に示した如く、2枚の光ディスクD1,D2の上方から紫外線ランプ37で紫外線を照射して、紫外線樹脂Jを硬化させると、2枚の光ディスクD1,D2が芯出しした状態で両者D1,D2の貼り合わせが完了する。
次に、本実施例の方法により貼り合わせた光ディスクと従来方法により貼り合わせた光ディスクとの芯ずれの値を測定した結果について、図8,図9(A),(B)を用いて説明する。
【0035】
まず、図8に示したように、従来方法では、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2をターンテーブル34上に突出したセンターピン33に嵌合して芯出しを行う。この際、センターピン33の外径と、光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2の孔寸法との差により、クリアランス部分が180°ずれて配置されると、最大でδ1+δ2の芯ずれ値(偏芯値)が発生する。
【0036】
本実施例では、図6(D)に示したように、本発明に係るコレットチャック装置1又は本発明に係る変形例のコレットチャック装置20を用いて、2枚の光ディスクD1,D2の中心孔d1,d2を芯出ししている。
【0037】
ここで、図9(A),(B)中、L1は上層の光ディスクD1の芯ずれ値(偏芯)を示し、L2は下層の光ディスクD2の芯ずれ値(偏芯値)を示している。
【0038】
また、2枚の光ディスクD1,D2の芯ずれ(偏芯)の測定は、下層の光ディスクD2の厚み分だけセンターピンが突出した測定機(図示せず)を用いて、下層の光ディスクD2の中心孔d2をセンターピンに嵌合させた状態で、下層の光ディスクD2を基準として上層の光ディスクD1の芯ずれ値(偏芯値)L1を測定している。
【0039】
一方、下層の光ディスクD2の芯ずれ値(偏芯値)L2は、中心孔d2に対するスタンパ(図示せず)の芯ずれに起因する光ディスク本来の芯ずれを表している。
【0040】
従って、図9(A)に示した本実施例の方法により貼り合わせた光ディスクと、図9(B)に示した従来方法により貼り合わせた光ディスクとの芯ずれの値を比較すると、いずれの場合も下層の光ディスクD2の芯ずれ値(偏芯値)L2は上記したようにスタンパ(図示せず)の芯ずれに起因するものであるから平均値及び標準偏差値も差がすくないものの、上層の光ディスクD1については30枚の芯ずれ(偏芯)を測定した平均値は、従来方法では84.78μmに対して本実施例の方法では52.17μmとなり、ほぼ30μm程度改善している。これに伴って、上層の光ディスクD1の芯ずれ(偏芯)の標準偏差値も従来方法より本実施例の方法の方が良く、本実施例による方法の効果が顕著であることが証明できる。これにより、貼り合わせディスクのダイナミックバランス,反り性能などの品質を良好に維持することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述した本発明に係るコレットチャック装置によると、とくに、弾性部材を用いた円筒状爪部の中心に中心孔を形成し、且つ、円筒状爪部の円周を軸方向に6か所の縦長なスリット部により6分割して、下層のディスク又は平板状加工物をチャッキングするために軸方向に長い3つの長い爪部と、上層のディスク又は平板状加工物をチャッキングするために軸方向に短い3つの短い爪部とをスリット部一つおきに弾性変位可能に形成したチャック爪をシリンダに同軸的に取り付けて、第1ピストンの一つ方向の移動時に第1ピストンの先端部が3つの長い爪部と係合して、下層のディスク又は平板状加工物の中心孔に挿入した3つの長い爪部を径方向に開くと共に、第2ピストンの一つ方向の移動時に第2ピストンの先端部が3つの短い爪部と係合して、下層のディスク又は平板状加工物の中心孔に挿入した3つの長い爪部を径方向に開くので、2枚のディスク又は平板状加工物の中心孔を芯出しした状態で確実にチャッキングできる。
【0042】
また、本発明に係わるコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法によると、2枚のディスクを貼り合わせる際、弾性部材を用いた円筒状爪部の中心に中心孔を形成し、且つ、円筒状爪部の円周を軸方向に6か所の縦長なスリット部により6分割して、下層のディスクをチャッキングするために軸方向に長い3つの長い爪部と、上層のディスクをチャッキングするために軸方向に短い3つの短い爪部とをスリット部一つおきに弾性変位可能に形成したチャック爪をシリンダに同軸的に取り付けて、第1ピストンの一つ方向の移動時に第1ピストンの先端部が3つの長い爪部と係合して、下層のディスクの中心孔に挿入した3つの長い爪部を径方向に開くと共に、第2ピストンの一つ方向の移動時に第2ピストンの先端部が3つの短い爪部と係合して、下層のディスクの中心孔に挿入した3つの長い爪部を径方向に開くので、2枚のディスクの中心孔を芯出しした状態で貼り合わせることができ、これにより貼り合わせディスクのダイナミックバランス,反り性能などの品質を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコレットチャック装置の外観を示した斜視図である。
【図2】本発明に係るコレットチャック装置を説明するための図である。
【図3】本発明に係るコレットチャック装置の動作を説明するための図である。
【図4】2枚の光ディスクの中心孔の孔寸法にバラツキが生じている際、チャック爪で芯出しした状態を示した図である。
【図5】本発明に係るコレットチャック装置の変形例を説明するための図である。
【図6】本発明に係るコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法を工程順に示した工程図である。
【図7】図6(C)に示した工程で2枚の光ディスク間に紫外線硬化樹脂を介在させた状態で芯ずれが生じている状態を示した図である。
【図8】従来方法により2枚の光ディスクの中心孔をセンターピンに嵌合して芯出しを行う方法を説明するための図である。
【図9】本発明に係るコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法による効果を従来方法と比較するために、30枚の芯ずれを測定した結果を示した図である。
【符号の説明】
1…本発明に係るコレットチャック装置、
2…シリンダ、2a,2e…チャンバー、
2b,2c,2f,2g…入出口、
3…シリンダキャップ、
4…チャック爪、4b…円筒状爪部、4b1…スリット部、
4b2…長い爪部、4b3…短い爪部、
4b21…3つの長い爪部の外側に形成した逃げ部、
4c…中心孔、4c2…3つの長い爪部の内側に形成した逃げ部、
5…押さえ部材、7…爪開き制御部材、7b1…内径部、
8…第1ピストン(外側ピストン)、8c…先端部(テーパ部)、
9…第2ピストン(内側ピストン)、9b…先端部(テーパ部)、
20…本発明に係る変形例のコレットチャック装置、
33…センターピン、34…ターンテーブル、35…圧縮バネ、
D1,D2…光ディスク、d1,d2…光ディスクD1,D2の中心孔。
Claims (7)
- 2枚のディスク又は平板状加工物に夫々形成した中心孔の孔寸法に多少のバラッキが生じていても、2枚の前記ディスク又は前記平板状加工物を重ねてチャッキングするコレットチャック装置であって、
弾性部材を用いた円筒状爪部の中心に中心孔を形成し、且つ、前記円筒状爪部の円周を軸方向に6か所の縦長なスリット部により6分割して、下層の前記ディスク又は前記平板状加工物をチャッキングするために軸方向に長い3つの長い爪部と、上層の前記ディスク又は前記平板状加工物をチャッキングするために軸方向に短い3つの短い爪部とを前記スリット部一つおきに弾性変位可能に形成したチャック爪と、
前記チャック爪を同軸的に取り付け、且つ、圧縮空気又はオイルが入出する入出口を形成してチャンバー内を密閉したシリンダと、
前記シリンダのチャンバーの内周と、前記チャック爪の中心孔とに沿いながら前記圧縮空気又は前記オイルにより軸方向に移動自在に設けられ、一つ方向の移動時に先端部が前記3つの短い爪部と係合して、上層の前記ディスク又は前記平板状加工物の中心孔に挿入した該3つの短い爪部を径方向に開く一方、一つ方向と反対方向への移動時に該3つの短い爪部を閉じる第1ピストンと、
前記第1ピストンの中心に形成した中心孔に沿いながら前記圧縮空気又は前記オイルにより軸方向に移動自在に設けられ、一つ方向の移動時に先端部が前記3つの長い爪部と係合して、下層の前記ディスク又は前記平板状加工物の中心孔に挿入した該3つの長い爪部を径方向に開く一方、一つ方向と反対方向への移動時に該3つの長い爪部を閉じる第2ピストンとを備えたことを特徴とするコレットチャック装置。 - 前記第1ピストンの先端部が前記3つの短い爪部と係合する際、該先端部が前記3つの長い爪部と係合しないように該長い爪部の内側に逃げ部を形成したことを特徴とする請求項1記載のコレットチャック装置。
- 前記3つの長い爪部を下層の前記ディスク又は前記平板状加工物の中心孔に挿入する際、該3つの長い爪部が上層の前記ディスク又は前記平板状加工物の中心孔に接触しないように該3つの長い爪部の外側に逃げ部を形成したことを特徴とする請求項1記載又は請求項2記載のコレットチャック装置。
- 前記シリンダの同一のチャンバー内に入出する前記圧縮空気又は前記オイルにより前記第1,第2ピストンを同時に移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のうちでいずれか1項記載のコレットチャック装置。
- 前記シリンダの異なるチャンバー内に夫々入出する前記圧縮空気又は前記オイルにより前記第1,第2ピストンを別々に移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のうちでいずれか1項記載のコレットチャック装置。
- 前記チャック爪の円筒状爪部を嵌め込んだ内径部を該円筒状爪部の径より僅かに大径に形成して前記シリンダの軸方向に移動可能に設けられ、軸方向の移動に応じて前記3つの長い爪部及び前記3つの短い爪部の径方向への開き寸法を制御する爪開き制御部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のうちでいずれか1項記載のコレットチャック装置。
- 弾性部材を用いた円筒状爪部の中心に中心孔を形成し、且つ、前記円筒状爪部の円周を軸方向に6か所の縦長なスリット部により6分割して、下層の前記ディスクをチャッキングするために軸方向に長い3つの長い爪部と、上層の前記ディスクをチャッキングするために軸方向に短い3つの短い爪部とを前記スリット部一つおきに弾性変位可能に形成したチャック爪をシリンダに取り付けると共に、前記シリンダ内に第1,第2ピストンを軸方向に移動可能に設けたコレットチャック装置を用い、2枚のディスクの中心孔を芯出しした状態で貼り合わせるディスクの製造方法であって、
下層のディスクの中心孔をターンテーブル上に突出したセンターピンに嵌合して、前記ターンテーブル上に載置した下層の前記ディスクを回転させながら下層の前記ディスクの上面の内周部分に紫外線硬化樹脂を滴下する工程と、
上層のディスクの中心孔を前記センターピンに嵌合して、上層の前記ディスクを前記紫外線硬化樹脂を介して下層の前記ディスクの上に重ね合わせ、且つ、前記ターンテーブルを回転して前記紫外線硬化樹脂を遠心力により外周端まで略均一に伸ばした後に前記ターンテーブルの回転を停止する工程と、
前記ターンテーブルの停止時に前記3つの長い爪部が前記センターピンに接触するにつれて該センターピンを圧縮バネに抗して前記ターンテーブルの中心孔内に下降させて、前記3つの長い爪部を下層の前記ディスクの中心孔に挿入させ、且つ、前記3つの短い爪部を上層の前記ディスクの中心孔に挿入させ、前記第1ピストンの一つ方向の移動時に先端部が前記3つの短い爪部と係合して、上層の前記ディスクの中心孔に挿入した該3つの短い爪部を径方向に開くと共に、前記第2ピストンの一つ方向の移動時に先端部が前記3つの長い爪部と係合して、下層の前記ディスクの中心孔に挿入した該3つの長い爪部を径方向に開いて、2枚の前記ディスクの中心孔を芯出しする工程と、
2枚の前記ディスクを芯出しした後、紫外線を照射して前記紫外線樹脂を硬化させ、2枚の前記ディスクを貼り合わせる工程とからなるコレットチャック装置を用いた貼り合わせディスクの製造方法。
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