JP3659333B2 - 蛍光x線分析装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料の下面側において励起X線の照射と蛍光X線の検出を行う下面照射型の蛍光X線分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光X線分析装置には、励起X線を試料の上面に照射する上面照射型と、試料の下面に照射する下面照射型が知られており、下面照射型では、簡易な構造によって試料をX線の照射位置に載置するだけでセットすることができる。
このような下面照射型の蛍光X線分析装置として、X線源や検出器を備える分析チャンバと、分析チャンバ上面のベース板の上に設けるカバーケースとを備える構成が用いられ、ベース板に開けた照射窓を通して試料の下面に励起X線を照射している。分析チャンバ内では、空気中の成分元素が一部波長の蛍光X線を吸収するため、検出器による蛍光X線の検出を阻害する要因となる。そのため、分析チャンバ及びカバーケースの内部を真空排気したりヘリウムガスで置換する構成としている。
【0003】
カバーケースは大型の試料に対応したサイズとすることによって、大型の試料にも小型の試料にも対応できるが、小型の試料の場合にはカバーケース内に大きな隙間が生じることになり、この隙間部分のために排気時間が延びるという問題があり、多数の試料を分析する場合には、この排気に要する時間によって分析時間が長時間となり分析効率が低下することになる。
【0004】
そこで、大型試料も小型試料も分析することができると共に、カバーケース内の排気に要する時間を短縮するために、大型試料用カバーケースの内側に小型試料用カバーケースを取り付け、試料を納めるカバーケース内のみを真空排気するよう排気経路を変更する構成が提案されている。
【0005】
図7は、カバーケースを備える蛍光X線分析装置の一例を示す図である。蛍光X線分析装置101は、ベース板105の下面にX線源103と検出器104を備える分析チャンバ102を設け、X線源103から励起X線をベース板105の開口した照射窓105aを通して試料S(S1,S2)に照射し、検出器104で蛍光X線を検出する。ベース板105の上面には大型試料用カバーケース110を取付け、当該大型試料用カバーケース110の内側には雌ネジ111とネジ121によって小型試料用カバーケース120を着脱自在としている。なお、大型試料用カバーケース110及び小型試料用カバーケース120は、ベース板105(あるいは取り付け用の図示しないプレート)との間にOリング112,122を介して密着させている。
【0006】
分析チャンバ102内は、排気管106aを通して真空ポンプ107によって排気され、小型試料用カバーケース120内は、ベース板105に開口した排気通路105c及び排気管106aを通して真空ポンプ107によって排気され、また、大型試料用カバーケース110内は、ベース板105に開口した排気通路105b及び排気管106bを通して真空ポンプ107によって排気される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
大型試料用カバーケースの内側に小型試料用カバーケースを取り付ける構成の蛍光X線分析装置によれば、大型試料と小型試料を分析することができると共に、カバーケース内の排気に要する時間を短縮することができるが、試料を納める内側の小型試料用カバーケース内のみを真空排気する必要があるため、図7に示すように、小型試料用カバーケース120の下面と、分析チャンバの上面との間を密着させる必要がある。そのため、小型試料用カバーケース120の高さを調節する必要があり、ベース板105(あるいは取り付け用の図示しないプレート)の上面には高い平坦性が求められる。
【0008】
さらに、小型試料S1を分析する場合には、図7(a)に示すように、開閉弁108を閉じて小型試料用カバーケース120と大型試料用カバーケース110との間の空間の排気を停止して、小型試料用カバーケース120内のみを排気し、大型試料S2を分析する場合には、図7(b)に示すように、開閉弁108を開いて小型試料用カバーケース120と大型試料用カバーケース110との間の空間を排気する。そのため、試料が納められるカバーケース内のみを排気するために、開閉弁等の追加部品が必要であり、排気経路を変更する必要があるという問題がある。排気経路の変更は、作業量を増加させると共に分析時間が長時間化する他、制御プログラムの変更も必要であるためコスト上昇の要因ともなる。
【0009】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、蛍光X線分析装置において、高さ調整が不要で、高い加工精度が不要であり、また排気経路の変更も要することなく、大型試料と小型試料に対応することができることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、小型試料に対応するカバーケースと分析チャンバ側とを非接触とすることによって、カバーケースの高さ調整や密着面の加工精度を不要とし、また、小型試料に対応するカバーケースが大型試料に対応するカバーケース内と排気側との間を遮断することによって、排気経路の変更を不要とする。
【0011】
本発明の蛍光X線分析装置は、分析チャンバ上面にカバーケースと共に載置セットされた試料に対し、試料の下面から励起X線を照射するようにした蛍光X線分析装置において、外側カバーケースと、この外側カバーケースの内側に着脱自在に取り付けられる内側カバーケースとを備え、内側カバーケースは外周部に鍔状体を備え、外側カバーケースへの装着時において、鍔状体の外周端は前記外側カバーケースの内周に密着し、鍔状体の下面と分析チャンバの試料支持面との間に隙間を有する構成とする。
【0012】
上記構成において、内側カバーケースの鍔状体の外周端を外側カバーケースの内周に密着させる構成とすることによって、小型試料に対応するカバーケースと分析チャンバ側とを非接触とすることができ、内側カバーケース及び鍔状体とを非接触とした状態で内側カバーケース内を真空状態とすることができるため、従来のカバーケースの高さ調整や、接触面の高い加工精度は不要とすることができる。
【0013】
また、内側カバーケースの鍔状体の下面と分析チャンバの試料支持面との間に隙間を有する構成とすることによって、小型試料に対応するカバーケースを取付けることで大型試料に対応するカバーケース内と排気側との間を遮断することができるため、従来の大型試料の分析と小型試料の分析との間で要した排気経路の変更も不要とすることができる。
【0014】
また、分析チャンバ上面において外側カバーケースを支持するベース板に、外側カバーケースの内側位置に開口する排気通路を形成する。この排気通路は、内側カバーケースの装着時には、鍔状体の下面と分析チャンバの試料支持面との間の隙間を介して内側カバーケース内を排気し、内側カバーケースの未装着時には、外側カバーケース内を排気する。また、開口位置を分析チャンバの外側とする場合には、外側カバーケース内あるいは内側カバーケース内を排気通路を通して直接に排気する。一方、開口位置を分析チャンバの内側とする場合には、外側カバーケース内あるいは内側カバーケース内を分析チャンバを介して排気する。
【0015】
また、本発明の蛍光X線分析装置の他の形態は、カバーケースを通してカバーケースの内部を排気するものであり、外側カバーケースは内部を排気する第1の排気通路を備え、内側カバーケースは外側カバーケースへの装着に伴って第1の排気通路と連通する第2の排気通路を備える。外側カバーケースの内部は第1の排気通路を通して排気され、内側カバーケースの内部は連通する第1の排気通路及び第2の排気通路を通して排気される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照しながら詳細に説明する。
図1,2は本発明の蛍光X線分析装置の第1の形態の概要を説明するための概略図であり、図1は小型試料を分析する場合を示し、図2は大型試料を分析する場合を示している。
【0017】
蛍光X線分析装置1は、ベース板5の下面にX線源3と検出器4を備える分析チャンバ2を設け、X線源3から励起X線をベース板5の開口した照射窓5aを通して試料S(S1,S2)に照射し、検出器4で蛍光X線を検出する。ベース板5の上面には大型試料用の外側カバーケース10を取付け、この外側カバーケース10の内側には雌ネジ11とネジ21によって小型試料用の内側カバーケース20を着脱自在としている。なお、雌ネジ11は外側カバーケース10に設けられ、ネジ21は内側カバーケース20に設けられる。
外側カバーケース10は例えば筒状体に形成され、内部に大型試料S2を収納する空間部分Bを形成し、Oリング12を介して端部周辺をベース板105に密着させて空間部分Bを密閉している。
【0018】
一方、内側カバーケース20は例えば筒状体に形成され、小型試料S1を内部に収納する空間部分Aaを形成する。さらに、筒状体の端部外周部分に鍔状体23を備える。鍔状体23の外径は外側カバーケース10の内径よりわずかに小径とし、内側カバーケース20を外側カバーケース10内に取り付けた際に、鍔状体23の外周部分は外側カバーケース10の内周面とOリング22を介して接触するよう形成する。また、内側カバーケース20の筒状体の外側部分の高さを、外側カバーケース10の内側の高さよりも小さく形成し、内側カバーケース20を外側カバーケース10内に取り付けた際に、鍔状体23と試料の支持面(ベース板5の上面)との間にわずかな隙間Cを形成させる。この隙間Cは、鍔状体23と試料の支持面とは非接触状態とすると共に、内側カバーケース20内の排気通路を形成する。
【0019】
ここで、分析チャンバ2内の排気は、排気管6aを通して真空ポンプ7によって行い、一方、内側カバーケース20内の空間部分Aa、及び外側カバーケース10内の空間部分B内の排気は、ベース板5に開口した排気通路5b及び排気管6bを通して真空ポンプによって行う。
【0020】
小型試料S1を分析する場合には、図1に示すように、ベース板5上に試料S1を載置すると共に分析点が照射窓5aの位置となるように位置合わせした後、外側カバーケース10内に取付けた内側カバーケース20を試料S1を覆うようにベース板5に取付ける。この後、排気管6aを通して真空ポンプ7によって分析チャンバ2内を排気すると共に、隙間C,排気通路5b,及び排気管6bを通して真空ポンプ7によって内側カバーケース20内の空間部分Aaを排気する。
【0021】
一方、大型試料S2を分析する場合には、図2に示すように、小型試料S1の場合と同様に、ベース板5上に試料S2を載置すると共に分析点が照射窓5aの位置となるように位置合わせした後、外側カバーケース10のみを試料S2を覆うようにベース板5に取付ける。この後、排気管6aを通して真空ポンプ7によって分析チャンバ2内を排気すると共に、排気通路5b,及び排気管6bを通して真空ポンプ7によって外側カバーケース10内の空間部分Bを排気する。
【0022】
本発明の蛍光X線分析装置によれば、内側カバーケース20が備える鍔状体23のベース板5と接触することなく外側カバーケース内と内側カバーケース内とを遮断するため、ベース板5や内側カバーケース20は高い加工精度を必要としない。また、内側カバーケースを大型試料に対応する外側カバーケース内に取り付けるだけで、鍔状体の部分が外側カバーケースと排気側との間を遮断するため、開閉弁等によって排気経路の変更する必要がない。
【0023】
次に、図3から図6を用いて本発明の蛍光X線分析装置の他の形態例について説明する。
図3は本発明の蛍光X線分析装置の第2の形態の概要を説明するための概略図である。第2の形態は、内側カバーケース20の筒状体の内側部分の高さを低く形成する例である。なお、ここでは、内側カバーケース20の形状以外の構成は第1の形態と同様であるため、共通する部分の説明は省略する。
【0024】
第2の形態は、試料S1の高さに合わせて筒状体の内側部分の高さが低く内側カバーケース20を選択し、これによって、内側カバーケース20内の空間部分Aaの容積を少なくし、排気時間を短縮する。内側カバーケース20内の空間部分Abの容積を少なくすることによって、外側カバーケース10と内側カバーケース20との間の空間部分Bの容積は増えるが、この部分の排気は行わないため、排気時間には影響しない。
【0025】
図4,5は本発明の蛍光X線分析装置の第3,4の形態の概要を説明するための概略図である。第3,4の形態は、ベース板5に、外側カバーケース10の内側位置であって、分析チャンバ2の内側位置に開口部を形成し、排気通路5cとする例である。なお、ここでは、排気通路5b,5c、排気管6a,6b以外の構成は第1の形態と同様であるため、共通する部分の説明は省略する。
【0026】
第3の形態は、図4に示すように、分析チャンバ2の内側位置に形成した排気通路5cによって、分析チャンバ2内と内側カバーケース20内とを連通させる。これによって、排気管6aから一つの真空ポンプ7によって、分析チャンバ2内を排気すると共に、隙間C,排気通路5c,及び分析チャンバ2を通して内側カバーケース20内を排気することができる。
【0027】
また、第4の形態は、図5に示すように、分析チャンバ2の内側位置に形成した排気通路5cによって、分析チャンバ2内と内側カバーケース20内とを連通させると共に、外側カバーケース10の内側であって分析チャンバ2の外側の位置に排気通路5bを備え、排気通路5bには排気管6bを介して真空ポンプ7が接続される。
【0028】
第4の形態では、隙間C,排気通路5b,及び排気管6aを通して一つの真空ポンプ7によって内側カバーケース20内を排気すると共に、排気通路5c,隙間C,排気通路5b,及び排気管6aを通して分析チャンバ2内を排気することができる。第4の形態によれば排気管6aを省略することができる。
【0029】
図6は本発明の蛍光X線分析装置の第5,6の形態の概要を説明するための概略図である。第5,6の形態は、外側カバーケースあるいは内側カバーケースに設けた排気通路を通して排気を行う形態例であり、外側カバーケース10は内部を排気する第1の排気通路30を備え、内側カバーケース20は外側カバーケース10への装着に伴って第1の排気通路30と連通する第2の排気通路24を備える。第1の排気通路30と第2の排気通路24とは、例えば、第1の排気通路30に形成した雌ネジと、第2の排気通路24に形成した雄ネジによって連通した状態で接続することができる。第1の排気通路30には、真空ポンプ8と接続する排気管31が接続される。なお、ここでは、排気通路30、排気管31、排気通路5c以外の構成は第1の形態と同様であるため、共通する部分の説明は省略する。
【0030】
第5の形態は、排気管31を通して真空ポンプ8によって外側カバーケース10内、あるいは内側カバーケース20内を排気し、排気管6aを通して真空ポンプ7によって分析チャンバ2内を排気する。なお、図6(a)は内側カバーケース20内を排気する例を示しており、外側カバーケース10内を排気する場合には内側カバーケース20を取り外した状態とする。
【0031】
また、第6の形態は、排気管31を通して真空ポンプ8によって外側カバーケース10内、あるいは内側カバーケース20内、及び分析チャンバ2内を排気する。内側カバーケース20内の排気と共に分析チャンバ2内を排気する場合には、排気通路5c,隙間C,内側カバーケース20内,及び排気管31を通して排気を行う。なお、図6(b)は内側カバーケース20内を排気する例を示しており、外側カバーケース10内を排気する場合には内側カバーケース20を取り外した状態とし、分析チャンバ2内の排気は、排気通路5c,外側カバーケース10内,及び排気管31を通して排気を行う。
【0032】
なお、外側カバーケース及び内側カバーケースの形状は、前記形態例では筒状体としているが、断面形状は矩形や長方形など任意の形状とする柱状体とすることができる。そして上述の鍔状体はその断面形状に合わせた形状とすることができる。
【0033】
本発明の蛍光X線分析装置の実施の形態によれば、内側カバーケースはベース板等の分析チャンバ上面と接触することなく、外側カバーケース内と内側カバーケース内とを遮断することができるため、接触面の加工精度を要求されない。
【0034】
また、本発明の蛍光X線分析装置の実施の形態によれば、小型試料に対応する内側カバーケースを大型試料に対応する外側カバーケース内に取り付けるだけで、外側カバーケースと排気側との間を遮断することができ、排気経路の変更することなく試料が設けられるカバーケース内の排気を行うことができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の蛍光X線分析装置によれば、カバーケースの高さ調整を不要とすることができ、高い加工精度を不要とすることができる。また、排気経路や制御プログラムを変更することなく、大型試料の分析と小型試料の分析との切り替えを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蛍光X線分析装置の第1の形態の概要を説明するための概略図であり、小型試料を分析する場合を示す。
【図2】本発明の蛍光X線分析装置の第1の形態の概要を説明するための概略図であり、大型試料を分析する場合を示す。
【図3】本発明の蛍光X線分析装置の第2の形態の概要を説明するための概略図である。
【図4】本発明の蛍光X線分析装置の第3の形態の概要を説明するための概略図である。
【図5】本発明の蛍光X線分析装置の第4の形態の概要を説明するための概略図である。
【図6】本発明の蛍光X線分析装置の第5,6の形態の概要を説明するための概略図である。
【図7】カバーケースを備える従来の蛍光X線分析装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1…蛍光X線分析装置、2…分析チャンバ、3…X線源、4…検出器、5…ベース板、5a…照射窓、5b、5c…排気通路、6a,6b…排気管、7、8…真空ポンプ、10…外側カバーケース、11…雌ネジ、12…Oリング、20…内側カバーケース、21…ネジ、22…Oリング、23…鍔状体、24…第2の排気通路、30…第1の排気通路、31…排気管、Aa,Ab…内側カバーケース空間部分、B…外側側カバーケース空間部分、C…隙間、S,S1,S2…試料。

Claims (3)

  1. 分析チャンバ上面にカバーケースと共に載置セットされた試料に対し、試料の下面から励起X線を照射するようにした蛍光X線分析装置において、
    外側カバーケースと、当該外側カバーケースの内側に着脱自在に取り付けられる内側カバーケースとを備え、
    前記内側カバーケースは外周部に鍔状体を備え、外側カバーケースへの装着時において、鍔状体の外周端は前記外側カバーケースの内周に密着し、鍔状体の下面と分析チャンバの試料支持面との間に隙間を有することを特徴とするX線分析装置。
  2. 分析チャンバ上面において外側カバーケースを支持するベース板に、外側カバーケースの内側位置に開口する排気通路が形成され、当該排気通路を通して直接にあるいは分析チャンバを介して排気することを特徴とする請求項1記載の蛍光X線分析装置。
  3. 前記外側カバーケースは内部を排気する第1の排気通路を備え、前記内側カバーケースは前記外側カバーケースへの装着に伴って前記第1の排気通路と連通する第2の排気通路を備えることを特徴とする請求項1記載の蛍光X線分析装置。
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