JP3658870B2 - シートリクライニング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートリクライニング装置に関するもので、シートバックのシートクッションに対する傾斜角微調整及び傾斜角粗調整が可能なシートリクライニング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シートバックのシートクッションに対する傾斜角微調整及び傾斜角粗調整がなされるこの種のシートリクライニング装置としては、特開平5−168538号公報に開示されている。この装置は、シートクッションの一方の側に位置する操作ハンドルを操作してシートバックの傾斜角を調整し、レリーズレバーによりシートバックを前倒しとなるように傾斜角を粗調整するものであり、操作ハンドルの動きを伝えるヒンジピンの先端に、一方のリクライニング機構の動きを反対側のリクライニング機構に伝達させる連結パイプが挿入される構成となっており、傾斜角微調整を伝える連結パイプの外側にはシートバックの前倒し動作(傾斜角粗調整)を反対側に伝える連結パイプが外周に覆い被さった構成になっている。
【0003】
このように左右にあるリクライニング機構を連結パイプにより確実に連結させる方法として、連結パイプとヒンジピンに穴を開け、両者の穴をネジ止めすることにより左右のリクライニング機構を連結している方法が特開平1−112741号公報に開示されている。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の特開平5−168538号公報に示されるシートバックのシートクッションに対する傾斜角微調整及び傾斜角粗調整がなされる装置においては、微調整用の連結パイプの外周に粗調整用の連結パイプが外周に覆われており、内側に位置する微調整用の連結パイプがしっかりとヒンジピンに接合されない場合に、内側及び外側の連結パイプが一方のリクライニング機構のヒンジピンに組付けされたものをシートクッションに対し反対側のクライニング機構に組付けるとき、内側の連結パイプがヒンジピンとの連結部から外れて、外部の連結パイプから抜け落ちてしまったり、外側の連結パイプに固着されるフックが前倒し動作をさせるレリーズレバーと一体回動する連結プレートの係合部分から外れてしまう恐れがある。
【0005】
この場合、特開平1−112741号公報に示されるように、連結パイプとその連結パイプが挿入されるヒンジピンに穴を開け、ネジ止めをする方法も考えられるが、この方法を同軸の2つの連結パイプの接合に適用した場合には、内側の連結パイプに穴を開けると共に、外側の連結パイプにも内側の連結パイプ固定用のネジが通るように内側の連結パイプよりも大きな穴を端部近傍に開けなければならず、最初にシートクッションの両側に位置するリクライニング機構の一方の側において内側の連結パイプとヒンジピンをネジで固定した後に、内側の連結パイプを外側の連結パイプに挿入し、内側の連結パイプの他端を外側の連結パイプの穴からネジ止めする必要がある。その後、外側の連結パイプから伸ばしたフックをレリーズレバーの回動を伝える連結プレートに接合させなくてはならず、両者をネジ止めする工程が必要となると共に、端部の狭い位置でのネジ止めの作業となるために作業性がよくないものとなる。
【0006】
そこで、本発明は、傾斜角微調整及び傾斜角粗調整が同軸の連結パイプによりシートクッションの両側に位置するリクライニング機構に伝達する装置において、組付け時に連結パイプが落ちたり外れたりしてしまうことを、作業性がよく簡単な方法で防止することを技術的課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の技術的課題を解決するために報じた技術的手段は、ヒンジピンの第1連結部材との連結部近傍に溝及び第2連結部材の端部近傍にスリットを設け、ヒンジピンの連結部の先端はテーパ状になっており、スリットに係止部材を嵌着し、ヒンジピンの連結部を第1、2連結部材に挿入して溝に係止部材が嵌着されること、としたことである。
【0008】
上記の構成によれば、第2連結部材の端部近傍にスリットを設け、スリットに係止部材を嵌着させることにより、第1連結部材の軸方向の動きが係止部材により規制され、第1連結部材は組付け時に第2連結部材から抜け落ちないものとなる。この場合、第2連結部材の内部の第1連結部材の端部が係止部材により軸方向の動きが規制されるように係止部材を嵌着させるとよい。その後、先端がテーパ状になった連結部を第1及び2連結部材に挿通すれば、ヒンジピンの溝と第2連結部材のスリットの位置で係止部材が嵌着されるので、第2連結部材とヒンジピンの十分な接合が保たれることから、第2連結部材がヒンジピンから外れることが防止される。
【0009】
より好ましくは、係止部材にはリングを用いるとよく、リングをスリットに対して一方向に押し込めば簡単に第1連結部材、第2連結部材及びヒンジピンとを嵌着できるのでネジ止めよりも簡単に行え、作業性がよくなる。この場合、リングにはスナップリング、Oリング、Eリング等を用いることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は本発明を示すシートリクライニング装置の平面図であり、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図であり、まず最初に、図1及び及び図2を参照してリクライニング機構の構造について説明する。
【0012】
リクライニング機構とは、シートクッション30に対してシートバック31の傾斜角を調整するものであり、以下にこの構造を示す。
【0013】
シートクッション30に固定されたロアアーム1には、偏心部2a及び正心部2b,2cを有するヒンジピン2が正心部2bにて回転自在に支持され、このヒンジピン2の偏心部2aにはシートバック31に固定されたアッパアーム3が支持されており、正心部2cにはブッシュ4を介してロックアーム5が回転自在に支持されている。アッパアーム3には偏心部2aを中心とした内歯ギヤ3aが形成されており、ロックアーム5には内歯ギヤ3aよりも少なくとも一歯以上多い正心部2cを中心とした外歯ギヤ5aが形成されている。この内歯ギヤ3aと外歯ギヤ5aとは噛合関係となっており、ヒンジピン2が回転操作されることによって内歯ギヤ3aと外歯ギヤ5aとの噛合により、アッパアーム3がロックアーム5に対して回動される。また、ロックアーム5の外周部分には複数の係合歯5bが所定の間隔をもって形成されている。
【0014】
ロアアーム1にはロックアーム5の係合歯5bと係合する歯部6aを有するポール6がピン7bにより回動自在に支持されている。ヒンジピン2の正心部2cにはブッシュ4を介してレリーズレバー8が回動自在に支持されている。このレリーズレバー8にはこの回動操作によりポール6のカム面6bを押圧し、ポール6の係合片6cと係合するピン9が設けられている。
【0015】
このピン9がポール6のカム面6bを押圧してポール6の歯部6aとロックアーム5の係合歯5bとを係合させることによりロアアーム1とロックアーム5とをロック状態とする。また、ピン9がポール6の係合片6cと係合してポール6の歯部6aとロックアーム5の係合歯5との噛合を解除させることにより、ロアアーム1とロックアーム5とをロック解除状態とする。更に、レリーズレバー8とロアアーム1との間にはスプリング10が配設されており、このスプリング10の付勢力によりレリーズレバー8は歯部6aと係合歯5bとが係合するようにカム面6bがピン9により押圧される方向に常時付勢されている。
【0016】
このピン9はロアアーム1に形成された長穴1aによりその動きが案内され、ロアアーム1の内周でヒンジピン2を支持するためのフランジ部1bの外周に回動自在に支持された連結プレート11で支持されており、ヒンジピン2の有する溝部21でリング20により連結プレート11を軸方向で係止している。
【0017】
尚、ポール6、ロックアーム5、アッパアーム3はピン7b,12、ヒンジピン2及び押えピン13によってロアアーム1に支持されたサブプレート14により被覆されている。
【0018】
ブッシュ4は、ヒンジピン2が回転自在に挿通される貫通穴4a、ロックアーム5を回動自在に支持する小径部4bと、レリーズレバー8を回動自在に支持する大径部4cを有すると共に、サブプレート14とレリーズレバー8との間にはフランジ部4dを有している。サブプレート14はブッシュ4と大径部4cの内側の側面で固着されており、ブッシュ4の大径部4cの回りにはスパイラルスプリング15が巻かれて支持されている。このスパイラルリング15の一端はブッシュ4に形成された係止溝4eに係止されており、他端はロックアーム5に設けられた係止ピン5cに係止されている。これにより、ロックアーム5はスパイラルスプリング15の付勢力によって図1に示される反時計方向に回転するように常時付勢されている。このようにして一方のリクライニング機構が構成され、シートクッション30の反対側にも同じようなリクライニング機構が設けられている。尚、この場合に反対側のリクライニング機構は、操作ハンドル19を有していなくてもよい。
【0019】
このような構成のリクライニング機構は、連結パイプ16,18により回動動作が連係され、ヒンジピン2の連結パイプ16,18に接続される側の一端は、連結パイプ16,18によって反対側のリクライニング機構に回動動作を伝達する構成となっている。
【0020】
そこで、本発明に係わる連結パイプ16,18の構造について説明する。
【0021】
連結パイプ16は端部内側にセレーションが設けられ、このセレーションがヒンジピン2の連結部23に挿入され、両者のセレーションが噛合することにより一体回転して連結パイプ16によって操作ハンドル19の動きが反対側のリクライニング機構に伝達されるようになっている。
【0022】
また、連結パイプ16の外周には連結パイプ16よりも長い連結パイプ18が設けられている。この連結パイプ18の端部近傍には各々2箇所のスリット24が設けられており、端部にフック7が溶接等により固着される。このフック7の先端は連結プレート11の穴22に挿入されていることで、レリーズレバー8の動きを連結パイプ18により反対側のリクライニング機構に伝達できるようになっている。上記のスリット24には連結パイプ16の端部が当接する状態で係止部材25が嵌着される。この係止部材25は連結パイプ18内部の連結パイプ16の軸方向に動きを規制するものであり、例えば、スナップリング、Oリング、Eリング等を用いて、連結パイプ16の端部を上記のリングに当接させて動きを規制してやればよい。この場合、係止部材25と連結パイプ16の端部は必ずしも当接している必要はなく、連結パイプ16の軸方向の動きが規制される状態にすればよい。上記のように係止部材25を嵌着させるときには、一方向に係止部材25を押し込むだけでよいので簡単に取り付けることができる。
【0023】
次に、リクライニング機構の作動について説明する。
【0024】
図1は操作部材となる操作ハンドル19、レリーズレバー8を操作していないときの通常状態で、ロックアーム5はポール6の歯部6aとロックアーム5の噛合歯5bとの係合によってロアアームにロックされた状態となっている。
【0025】
この状態において、操作ハンドル19を操作してヒンジピン2を回転操作することにより、内歯ギヤ3aと外歯ギヤ5aとの噛合によって、アッパアーム3がロックアーム5に対して揺動しながら回動する。これにより、アッパアーム3に固定されたシートバック31のロアアーム1に固定されたシートクッション30に対する傾斜角微調整がなされる。この際、ロックアーム5及びブッシュ4は何ら回動しないためにスパイラルリング15は作用しない。
【0026】
一方、レリーズレバー8をスプリング10の付勢力に抗して回動操作することにより、ピン9がレリーズレバー8のカム面6bより外れると共に係合片6cと係合してポール6が回動する。これによりポール6の歯部6aとロックアーム5の係合歯5bとの係合が外れ、ロックアーム5とロアアーム1とのロックが解除される。この結果、アッパアーム3がロックアーム5と共にスプリング15の付勢力を受けてロアアーム1に対して回動する。スパイラルリング15は、アッパアーム3及びロックアーム5の回動中心上に位置するため、付勢力が有効に引き出されて利用される。これにより、シートバック31のシートクッション30に対する前倒しがなされると共に、レリーズレバー8の回動操作を解除してポール6の歯部6aとロックアーム5の係合歯5bとを再び係合させてロックアーム5とロアアーム1とをロックすることによりシートバック31のシートクッション30に対する傾斜角粗調整がなされる。
【0027】
次に、連結パイプ16,18を両側のリクライニング機構に組付ける場合について、本発明に係わるところを図4を参照して説明する。
【0028】
ここでは各々のリクライニング機構の組付けについては省略し、各々組付けられた(サブアッシー化された)状態で、連結パイプ16,18を連結させるところについて述べる。
【0029】
図4において、まず最初に、粗調整用の連結パイプ18の端部近傍に設けられたスリット24に係止部材25を嵌着させる。この場合、係止部材25には弾性体であるリングを用い、例えば、スナップリング、Oリング、Eリング等を用いることができる。この嵌着時には、連結パイプの両端近傍に設けられた各々2つのスリット24に対して一方向に押し込むだけでよいので簡単に嵌着させることができる。次に、連結パイプ18の中に微調整用の連結パイプ16をB方向から挿入した後、他端のスリット24aに連結パイプ16の端部が当接するように係止部材25aを嵌着させる。このように連結パイプ16の端部が当接する状態で係止部材25を嵌着させたので、連結パイプ16の軸方向の動きが両側で規制されるものとなり、連結パイプ16は連結パイプ18から外に抜け落ちることはなくなる。こうして組付けられた連結パイプ16,18を、一方のリクライニング機構のヒンジピン2の連結部26に挿入させる。この場合、ヒンジピン2の連結部23の先端28はテーパ状になっているために挿入時に係止部材25がスリット24に嵌着されていても、係止部材25の弾性力により外側に伸び、ヒンジピン2の連結部近傍26に設けられた溝27まで挿入された後、係止部材25は溝27にしっかりと嵌着される。こうして連結パイプ18とヒンジピン2の接合も係止部材25により保たれる。
【0030】
また、反対側も上記を同じように、組付けられた連結パイプ16,18を、他方のリクライニング機構の連結部26aに挿入させる。この場合、ヒンジピン2の連結部23aの先端28aはテーパ状になっているために挿入時に係止部材25aがスリット24aに嵌着されていても、係止部材25aの弾性力により外側に伸び、連結部近傍26aに設けられた溝27aまで挿入された後、係止部材25aは溝27aにしっかりと嵌着される。こうして連結パイプ18と反対側のリクライニング機構の接合も係止部材25aにより保たれる。
【0031】
つまり、この係止部材25,25aを連結部材16の軸方向の動きを規制する状態で嵌めることにより連結パイプ16,18の組付け時に連結パイプ16が連結パイプ18から抜け落ちることが防止できると共に、連結パイプ18とシートクッヨン30の両側に位置するリクライニング機構の接合を係止部材25,25aをスリット24,24aと溝27,27aに嵌着させてしっかりと接合を保つことができる。
【0032】
尚、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではなく、微調整用の連結パイプと粗調整用の連結パイプの配置は相互に入れ換えるようにしてもよい。また、ヒンジピン2を動かす動作を付与するものは電動駆動のものであってもよい。
【0033】
【効果】
本発明によれば、外側の連結部材の端部近傍にスリットを設け、このスリットに係止部材を嵌着させることにより、内側の連結部材の軸方向の動きが規制されるので、内側の連結部材が外側の連結部材から抜け落ちることが防止できる。
【0034】
また、ヒンジピンの溝と外側の連結部材のスリットに係止部材が嵌着されるので、ヒンジピンと外側の連結部材の接合が係止部材によりなされることから、外側の連結部材がヒンジピンから外れることが防止できる。
【0035】
更に、係止部材にはリングを用いれば、スリットに対して一方向に押し込めばよいので、作業性が良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示すシートリクライニング装置の平面図である。
【図2】 図1のA−A断面図である。
【図3】 図1のB−B断面図である。
【図4】 本発明の一実施形態を示す連結パイプの組付け図である。
【図5】 シートの側面図である。
【符号の説明】
1 ロアアーム
2 ヒンジピン
3 アッパアーム
8 レリーズレバー(第2操作部材)
16,18 連結パイプ(連結部材)
19 操作ハンドル(第1操作部材)
24 スリット
25 係止部材
26 連結部
27 溝
Claims (2)
- シートクッションに固定されたロアアームと、該ロアアームに回転自在に支持されたヒンジピンと、シートバックに固定され前記ヒンジピンの回動により回動可能なアッパアームと、前記ヒンジピンを回動させ前記ロアアームに対して前記アッパアームの傾斜角を微調整する第1操作部材と、この傾斜角を粗調整する第2操作部材と、前記ヒンジピンに挿入され前記第1操作部材及び前記第2操作部材の一方の動きをシートクッションに対して他方に位置するリクライニング機構に伝達する第1連結部材と、その外周に位置する第2連結部材とを有するシートリクライニング装置において、前記ヒンジピンの前記第1連結部材との連結部近傍に溝及び前記第2連結部材の端部近傍にスリットを設け、前記ヒンジピンの前記連結部の先端はテーパ状になっており、該スリットに係止部材を嵌着し、前記ヒンジピンの前記連結部を前記第1、2連結部材に挿入して前記溝に前記係止部材が嵌着されることを特徴とするシートリクライニング装置。
- 前記係止部材はリングであることを特徴とする請求項1に記載のシートリクライニング装置。
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