JP3657810B2 - 小便器の洗浄装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は小便器の洗浄装置に関し、詳しくはスプレッダーからの射水により小便器を洗浄する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、小便器の洗浄方式として小便器上部から鉢面に沿って洗浄水を流下させるとともに、洗浄水の一部を小便器側周縁の縦向きのリム内部のリム通水路に沿って流下させ、そのリム通水路に設けた複数の孔より鉢内面に射水して鉢面及び下部の垂れ受部を洗浄する方式と、小便器の鉢面上部にスプレッダーを取り付け、給水管からの水をそのスプレッダーから鉢面に向けて射水し洗浄する方式とが知られている。
【0003】
後者のスプレッダーを用いた洗浄方式の場合、即ちスプレッダーからの射水にて小便器を洗浄する洗浄装置の場合、少ない水量で小便器洗浄を行い得るとともに洗浄時間が短くて済み、また小便器の側周縁に縦向きのリムを設ける必要がないことから、小便器の製造が容易となり、また清掃の際そのリムが邪魔になるといったことがなく、小便器の清掃性が良いといった利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
反面においてこのスプレッダーを用いた小便器の洗浄装置の場合、給水管からの給水圧の変動等によってスプレッダーからの水量が少ない小流量時とスプレッダーからの水量が多い大流量時とで小便器の洗浄範囲が異なってしまうといった問題があった。
【0005】
具体的には、図6に示しているようにスプレッダー200からの水量が少ない小流量時には同図(B)に示しているように狭い領域Sだけしか小便器202を洗浄できず、逆に大流量時には同図(A)に示しているように広い領域Lに亘って小便器洗浄が可能であるものの、この大流量時にはスプレッダー200からの洗浄水の勢いが強いことから、洗浄水の一部が鉢外に流出してしまうといった不都合があった。
【0006】
尚、図7において204は小便器202の下部において垂れ受部206の内面を巡るように形成された段部であって、スプレッダー200からの洗浄水はその一部がこの段部204の上に乗ってその段部204に導かれて垂れ受部206の内面を巡るように流れつつ下方へと流下し、垂れ受部206の前部内面をも洗浄する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の小便器の洗浄装置はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、小便器の鉢面上部にスプレッダーを取り付け、給水管からの水を該スプレッダーから該鉢面に向けて射水し洗浄するようになした小便器の洗浄装置において、前記スプレッダーの下面に且つ左右方向に沿ってスリット状の主射水孔を、該スプレッダー内部の空洞部に連通する状態で設けるとともに、該空洞部内に且つ該空洞部及び該主射水孔の左右端より中心側に偏った位置に、左右の端部側に進むにつれて下方に移行する形状をなし、該空洞部を左右端に向って流れた水流の向きを下方且つ中心側と反対側の斜め外方に方向誘導する主ガイド面を、該ガイド面の下端が該主射水孔より所定距離上方に位置する形態で設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2のものは、請求項1に記載の洗浄装置において、前記空洞部内には前記主ガイド面より中心側に水流を該主ガイド面に向けて左右方向に案内する水平な補助ガイド面が設けてあることを特徴とする。
【0009】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかに記載の洗浄装置において、前記スプレッダーの下面且つ前記主ガイド面を延長した部分に、前記主射水孔よりも前後方向幅の大きな補助射水孔を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかに記載の洗浄装置において、前記主射水孔は左右方向中心部に向って下がり形状をなしており且つ該中心部に閉塞部が設けてあることを特徴とする。
【0011】
【作用及び発明の効果】
請求項1のものはスプレッダーの下面にスリット状の主射水孔を左右方向に沿って設けるとともに、スプレッダーの空洞部内に且つその空洞部及び主射水孔の左右端より中心側に偏った位置であって主射水孔よりも上方位置に、左右方向に流れた水流の向きを下方且つ斜め外方に方向誘導する主ガイド面を設けたもので、この洗浄装置においては、給水圧の低い小流量時においてはスプレッダーの空洞部内への洗浄水の流入の勢いが弱く、従って空洞部内に流入した洗浄水は主として空洞部の下部において左右末端まで比較的緩やかに広がった後、スリット状の主射水孔からその全長に亘って下向きに流出し、鉢面を広い範囲に亘って洗浄する。
【0012】
一方給水圧の高い大流量時には、スプレッダーの空洞部がそこに勢い良く流入した洗浄水によって全高に亘り充たされ、更に引き続いて空洞部内に勢い良く流入する洗浄水によって左右に勢いよく押し流される。
而して左右に勢いよく押し流された洗浄水は端部近傍の主ガイド面に突き当たって、その主ガイド面の案内作用で流れの方向を下方斜め外方に方向誘導され、同方向に勢いよく射水される。
【0013】
ここで主ガイド面は空洞部及び主射水孔の左右両端よりも中心側に偏った位置に設けてあり、従って高流量時においてスプレッダーからの洗浄水が不必要に広がり過ぎることがなく、小便器に対する洗浄範囲を広く確保しつつ、スプレッダーからの洗浄水がその勢いによって鉢外に流出するのが防止される。
【0014】
ここで上記主ガイド面は、その延長線が、小便器下部の垂れ受部の前部に洗浄水を導くための段部の上端に達するような向きで形成しておくことができる。
【0015】
上記空洞部内には、主ガイド面より中心側に、水流を主ガイド面に向けて案内する左右方向に水平な補助ガイド面を設けておくことができる(請求項2)。
このようにしておけば、大流量時において空洞部内に勢いよく流入した洗浄水を、その補助ガイド面により主ガイド面に向けて良好に案内でき、従って主ガイド面による水流の方向誘導作用を効果的に行わせることができる。
【0016】
本発明においては、スプレッダーの下面且つ主ガイド面を延長した部分に、上記スリット状の主射水孔よりも前後方向幅の大きな補助射水孔を設けておくことが望ましい(請求項3)。
このような補助射水孔を設けておくと、主ガイド面の作用で方向誘導した洗浄水を、その大きな補助射水孔を通じて強い勢いでスプレッダー外部に射水することができる。そしてこれにより、空洞部内且つ補助射水孔よりも左右端部側にある洗浄水を、その補助射水孔を通る強い勢いの水流に巻き込む形で、主射水孔両端よりも内側(中心側)の位置から射水することができる。
これにより大流量時において洗浄水が不必要に広がり過ぎるのをより有効に防止することができる。
【0017】
請求項4の洗浄装置は、上記主射水孔を左右方向中心部に向って下がり形状と成し且つその中心部に閉塞部を設けたものである。
スプレッダー式の洗浄装置の場合、従来、主射水孔の各部で水滴が発生且つ成長し、そして大きくなった水滴が主射水孔の各部から滴下する現象、所謂雨だれ現象を起こすことが問題となっていた。
【0018】
これに対し請求項4の洗浄装置では、その主射水孔が中心部に向って下がり形状をなしており且つその中心部が閉塞部となしてあるため、主射水孔に沿った各部で水滴が発生成長してそれぞれが小便器下部の垂れ受部に向って滴下するのを防止して水滴をその中心部に向けて誘導することができる。しかもその中心部は閉塞部とされているため、同部分から水滴が滴下するのを抑制することができる。
【0019】
この場合においてスプレッダーの下面を鉢面に向って斜め下方に傾斜させておくことができ、このようにした場合、その閉塞部に集めた水滴を表面張力で鉢面に滑らかに移行させることができ、スプレッダーからの水滴の滴下をより確実に防止することができる。
【0020】
【実施例】
次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は小便器で下部に垂れ受部12を有し、また鉢面14上部にはスプレッダー16が取り付けられていて、そのスプレッダー16からの射水により小便器洗浄が行われるようになっている。
18は小便器10上端部のカバーであって、そのカバー18の前面には人体を感知するセンサ20が設けられているとともに、カバー18の内部には図示を省略する自動開閉弁が内蔵されている。
而して本例の小便器10の場合、センサ20による人体感知に基づいて、具体的には小便器10から使用者が立ち去ったことを感知して自動開閉弁が働き、給水管からの水をスプレッダー16に導いてそこから射水させる。
【0021】
本例において、小便器10の下部には段部21が設けられている。
段部21は、図1(C)に示しているように小便器10の側壁部内面の所定位置の始端(上端)から下向き且つ垂れ受部12内面を巡るように設けられており、そして垂れ受部12の最前部において高さが最も低く形成されている。
本例において、スプレッダー16から射水された洗浄水の一部がこの段部21の上に乗って垂れ受部12内面を巡るように流れ、そして垂れ受部12の最前部に到った後、小便器10底部へと流れて垂れ受部12内面を洗浄し、その後排水口22から排出される。
【0022】
スプレッダー16は、図2に示しているように本体部(この例では樹脂製)24と、後側の円筒形状の給水部(この例では樹脂製)26と、本体部24を覆う金属製のカバー28とを有している。
ここで給水部26は、図示を省略する給水管からの水を本体部24へと給水する部分である。
【0023】
この給水部26には、図3に示しているように本体部24の背面に接する位置において四角形状の嵌合部30が設けられており、この嵌合部30が、陶器製の小便器10に形成された対応する四角形状の嵌合孔32に回転不能に嵌合されている。
【0024】
本体部24は全体として左右方向に細長い函体状を成していて、その内部に左右方向に長い空洞部34を有している。
そしてその空洞部34の左右方向中央部において給水部26の給水口36が開口している。
【0025】
本体部24の下面38は、図2(A)に示しているように左右端から中心部に向って下向きの傾斜形状をなしており、更に図2(C)に示しているように下面38全体が小便器10の鉢面14に向かって斜め下方に傾斜した傾斜面とされている。
その下面38には、図2(B)に示しているように本体部24の略左右全長に亘ってスリット状の主射水孔40が内部の空洞部34に連通する状態で形成されている。
ここで主射水孔40は、左右全長に亘って空洞部34に連通状態とされている。
この主射水孔40は最下部位置となる左右中央部が部分的に閉塞部42とされている。
【0026】
尚、上記金属製のカバー28には図4に示しているように掛止爪44が内向きに突設されており、ビス48を本体部24の雌ねじ孔50にねじ込むことで、図4(II),(III)に示しているようにその掛止爪44が本体部24の掛止凹部46に掛止状態となって、カバー28が本体部24に固定状態に装着される。
【0027】
図2(A)に示しているように空洞部34の上面には、給水口36から空洞部34内部に流入した洗浄水の流れを水平且つ左右方向に案内する補助ガイド面52が形成されている。更にこの補助ガイド面52に連続して主ガイド面54が形成されている。
主ガイド面54は、左右の端部側に進むにつれて下方に移行する湾曲形状をなしており、且つその下端が空洞部34の下底部、即ち上記スリット状の主射水孔40よりも所定距離上方に位置させられている。
【0028】
ここで左右一対の主ガイド面54は、空洞部34及び主射水孔40の左右両端よりもそれぞれ中心側に偏った位置に形成されている。
これら主ガイド面54は、空洞部34内部を左右端に向って流れる水流の向きを下方且つ中心側と反対側の斜め外方に方向誘導する作用をなす。
尚これら主ガイド面54は、その延長線が図1の段部21の上端(始端)に到るように形成されている。
【0029】
本体部24の下面38には、主射水孔40と併せてこれよりも前後方向に幅の大きい補助射水孔58が空洞部34に連通する状態で設けられている。
ここで補助射水孔58は主ガイド面54を延長した部分において下面38に設けられている。
この補助射水孔58はまた左右方向に所定長さを有しており、そしてこの補助射水孔58の形成部分において、主射水孔40が閉塞部60にて部分的に閉塞されている。
【0030】
本例においては、図2(A)に示しているように空洞部34の上面且つ上記主ガイド面54よりも左右の端部側の部分が上方に凹形状をなす凹形状部56とされている。凹形状部56は、その端が主射水孔40の端とほぼ一致している。
尚、図2(C),(D)に示しているように主射水孔40,補助射水孔58何れも孔内面が小便器10の鉢面14に向って斜め下方に傾斜している。
【0031】
本例の洗浄装置においては、給水圧の低い小流量時においては、給水口36からスプレッダー16の空洞部34内への洗浄水の流入の勢いが弱く、従って空洞部34内に流入した洗浄水は、図5(A)中矢印Aの流れに従って主として空洞部34の下部において左右末端まで比較的緩やかに広がった後、スリット状の主射水孔40からその全長に亘って下向きに流出し、鉢面14を広い範囲に亘って洗浄する。
【0032】
一方給水圧の高い大流量時には、図5(B)に示すようにスプレッダー16の空洞部34がそこに勢い良く流入した洗浄水によって全高に亘り充たされ、主射水孔40から射水されるとともに、更に引き続いて空洞部34内に勢い良く流入する洗浄水によって、空洞部34内の洗浄水が左右に勢いよく押し流される。
【0033】
このとき洗浄水は、水平をなす補助ガイド面52の案内作用で左右端部側に向って誘導され、端部近傍の主ガイド面54に勢い良く突き当る。そしてその主ガイド面54の案内作用により水流の方向を、矢印Bで示しているように下方斜め外方に方向誘導される。
この主ガイド面54の延長線上には前後方向幅の大きな補助射水孔58が設けてあり、従って主ガイド面54により下方斜め外方に方向誘導された洗浄水は、その大きな補助射水孔58を通じて同方向にスプレッダー16から勢い良く射水される。
【0034】
ここで主ガイド面54は空洞部34及び主射水孔40の左右両端よりも中心側に偏った位置に設けてあるため、高流量時においてスプレッダー16からの洗浄水が不必要に広がり過ぎることがなく、小便器10に対する洗浄範囲を広く確保しつつ、スプレッダー16からの洗浄水がその勢いによって鉢外に流出するのが防止される。
【0035】
本例においては上記のように補助射水孔58が設けてあって、主ガイド面54の作用で方向誘導した洗浄水を、その大きな補助射水孔58を通じて強い勢いでスプレッダー16外部に射水することができる。そしてこれにより、空洞部34内且つ補助射水孔58よりも左右端部側にある洗浄水を、その補助射水孔58を通る強い勢いの水流に巻き込む形で補助射水孔58から射水でき、これにより大流量時において洗浄水が不必要に広がり過ぎるのをより有効に防止することができる。
【0036】
本例では、空洞部34の上面であって主ガイド面54よりも左右端部側の部分が凹形状部56とされているため、小流量時において空洞部34内に流入した洗浄水が、主ガイド面54の下端をくぐり抜けてより広く左右方向端部まで広がることができ、広範囲に亘る洗浄をより効果的に行うことができる。
【0037】
本例では、スプレッダー16の主射水孔40が中心部に向って下がり形状をなしていることから、主射水孔40の各部で水滴が発生成長してそれぞれが小便器10下部の垂れ受部12に滴下するといったことを防止でき、水滴をその中心部に向けて誘導することができる。しかもその中心部は閉塞部42とされているため、同部分から水滴が滴下するのを抑制できる。
【0038】
しかもスプレッダー16の下面は鉢面14に向って斜め下方に傾斜しているため、その閉塞部42に集めた水滴を表面張力で鉢面14に滑らかに移行させることができ、スプレッダー16からの水滴の滴下をより確実に防止できる。
【0039】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記主ガイド面54の形状はあくまで一例であって、この主ガイド面54の形状を例えば傾斜形状にするなど他の形状とすることも可能であるし、また場合によって凹形状部56を省略することも可能であるなど、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である小便器の洗浄装置を小便器とともに示す図である。
【図2】 図1の洗浄装置の主体を成すスプレッダーを拡大して示す図である。
【図3】 図2のスプレッダーを小便器への取付前の状態で示す図である。
【図4】 図2のスプレッダーにおけるカバーの取付手順の説明図である。
【図5】 図2のスプレッダーの作用説明図である。
【図6】 スプレッダーを用いた小便器洗浄装置の従来の不具合の説明図である。
【図7】 図6における小便器の斜視図である。
【符号の説明】
10 小便器
12 垂れ受部
14 鉢面
16 スプレッダー
26 給水部
34 空洞部
38 下面
40 主射水孔
42 閉塞部
52 補助ガイド面
54 主ガイド面
56 凹形状部
58 補助射水孔
Claims (4)
- 小便器の鉢面上部にスプレッダーを取り付け、給水管からの水を該スプレッダーから該鉢面に向けて射水し洗浄するようになした小便器の洗浄装置において、
前記スプレッダーの下面に且つ左右方向に沿ってスリット状の主射水孔を、該スプレッダー内部の空洞部に連通する状態で設けるとともに、該空洞部内に且つ該空洞部及び該主射水孔の左右端より中心側に偏った位置に、左右の端部側に進むにつれて下方に移行する形状をなし、該空洞部を左右端に向って流れた水流の向きを下方且つ中心側と反対側の斜め外方に方向誘導する主ガイド面を、該ガイド面の下端が該主射水孔より所定距離上方に位置する形態で設けたことを特徴とする小便器の洗浄装置。 - 請求項1に記載の洗浄装置において、前記空洞部内には前記主ガイド面より中心側に水流を該主ガイド面に向けて左右方向に案内する水平な補助ガイド面が設けてあることを特徴とする小便器の洗浄装置。
- 請求項1,2の何れかに記載の洗浄装置において、前記スプレッダーの下面且つ前記主ガイド面を延長した部分に、前記主射水孔よりも前後方向幅の大きな補助射水孔を設けたことを特徴とする小便器の洗浄装置。
- 請求項1〜3の何れかに記載の洗浄装置において、前記主射水孔は左右方向中心部に向って下がり形状をなしており且つ該中心部に閉塞部が設けてあることを特徴とする小便器の洗浄装置。
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