JP3657405B2 - 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体 - Google Patents

発泡性ポリウレタン組成物および発泡体 Download PDF

Info

Publication number
JP3657405B2
JP3657405B2 JP25483897A JP25483897A JP3657405B2 JP 3657405 B2 JP3657405 B2 JP 3657405B2 JP 25483897 A JP25483897 A JP 25483897A JP 25483897 A JP25483897 A JP 25483897A JP 3657405 B2 JP3657405 B2 JP 3657405B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
foam
laminate
polyurethane
thermoplastic polyurethane
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP25483897A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH1192581A (ja
Inventor
俊二 金田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP25483897A priority Critical patent/JP3657405B2/ja
Publication of JPH1192581A publication Critical patent/JPH1192581A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3657405B2 publication Critical patent/JP3657405B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,発泡性ポリウレタン組成物、該発泡性ポリウレタン組成物から得られる発泡体およびその製造方法、並びに前記の発泡体からなる層を有する積層体およびその製造方法に関する。本発明によれば、大きさの揃った微細な気泡が発泡体内部にムラなく均一に分布しており、表面状態が良好で外観に優れ、しかも柔軟性、力学的特性などにも優れる高品位のポリウレタン発泡体を、環境上や安全性などの点で大きな問題になっているフロンガスや有機溶剤などを使用することなく、円滑に、且つ高い生産性で提供することができる。さらに、本発明によれば、前記した優れた特性を有する発泡体からなる層を有し、且つ層間の剥離強度や耐摩耗性などの点においても優れる、高級感ある積層体を提供することができる。
【0002】
【従来の技術】
ポリウレタン発泡体またはポリウレタン多孔質体の製法としては、従来、(1)ポリウレタン原料に水を添加し、原料中のイソシアネート成分と水との反応により炭酸ガスを発生させながら、ポリウレタンの形成および発泡を行ってポリウレタン発泡体を製造する方法;(2)ポリウレタン用原料にフロンガスのようなフッ素系膨張剤を添加して、ポリウレタンの形成および発泡を行ってポリウレタン発泡体を製造する方法;(3)熱可塑性ポリウレタンに熱分解型発泡剤を添加し、ポリウレタンを加熱溶融すると共に発泡剤を分解させてガスを発生させて発泡体を製造する方法;(4)ポリウレタンを有機溶剤に溶解した溶液を支持体上に塗布し、ポリウレタンの非溶剤中で湿式凝固して、ポリウレタン多孔質体を製造する方法;(5)ポリウレタンを有機溶剤に溶解した溶液を支持体上に塗布し、溶剤を乾燥除去してポリウレタン多孔質体を製造する方法などが一般に採用されている。
【0003】
しかしながら、上記(1)の従来法では、発泡度が大きくなり、その結果、発泡体の気泡膜が薄くなるため、小さな圧縮応力で気泡膜が崩壊し、変形が生じ易いという欠点がある。そして、気泡膜の崩壊を防止しようとして水の添加量を少なくして発泡度を小さくすると、気泡の大きさが不均一になり、品質の良好な発泡体が得られにくい。上記(2)の従来法では、地球環境の破壊などの点から近年その使用が規制されているフロンガスなどのフッ素系膨張剤が使用されている。上記(3)の従来法では、熱分解型発泡剤を分解させるのに適した温度では、ポリウレタンの溶融粘度が著しく低いため、熱分解型発泡剤の分解によって発生したガスを充分に保持できず、気泡サイズの巨大化や不均一化、気泡膜の破裂などが生じ易い。その結果、得られるポリウレタン発泡体は、その表面に凹凸模様が多く発生して粗悪なものになり易く、発泡体の内部構造も粗大で不揃いな気泡が不均一に分布した状態となり、力学的特性にも劣ったものとなる。特に、溶融押出発泡成形で発泡フィルムや発泡シートなどの薄物を製造する場合には、押出機のダイ付近でフィルムやシートの破れが発生することが多く、押出発泡成形を円滑に行うことができない。上記(4)の湿式凝固法または上記(5)の乾式凝固法による場合は、多孔質体層の厚さが厚いもの(例えば1mm以上のもの)の場合に、ポリウレタンの凝固に長い時間を要し、そのために生産性が低く、工業的規模で製造するにはコスト高となる。さらに、上記(4)および(5)の従来法では、いずれもポリウレタンを有機溶剤に溶解した溶液を用いるために、有機溶剤の使用に伴う作業環境の悪化を生じ、安全面や衛生面で問題がある。しかも使用した有機溶剤の回収や処理のための工程や施設などが必要であり、製造工程が複雑になり、コスト高となる。
【0004】
ところで、熱可塑性ポリウレタンは、その柔軟性、弾性、耐摩耗性などの特性を活かして種々の分野で汎用されており、例えば、ポリウレタン層を特定の基材上に積層してなる積層体として多く用いられている。ポリウレタン層を有する積層体のうちでも、繊維質基材上に熱可塑性ポリウレタン層を積層してなる積層体は、天然皮革様の外観、触感、風合などを有していることから、合成皮革または人造皮革として、履物、衣料分野、袋物や鞄などの用途で汎用されている。
【0005】
従来、合成皮革様の熱可塑性ポリウレタン積層体の製造方法としては、(イ)離型紙上に熱可塑性ポリウレタンを有機溶剤に溶解した溶液を塗布し、乾燥して、ポリウレタンフイルムを形成した後、該フイルムを編織布または不織布からなる繊維質基材の表面に接着剤で貼り合わせてから離型紙を剥離する方法(乾式法);(ロ)編織布または不織布からなる繊維質基材の表面に、熱可塑性ポリウレタン溶液を塗布した後、湿式凝固法または乾式凝固法により多孔質の熱可塑性ポリウレタン層を形成し、その上に着色剤を含む樹脂溶液を塗布・乾燥して着色層を形成した後、エンボスロールで凹凸模様を形成する方法などが広く知られている。さらに、上記(イ)および(ロ)に挙げた従来法以外にも、合成皮革様の積層体の製造方法として、例えば、(ハ)基材上に設けた合成樹脂層の表面に、合成樹脂を膜状に溶融押出してスキン層を積層すると共に、そのスキン層表面をエンボス加工して天然皮革様のスキン層とする方法(特開昭53−62803号公報参照);(ニ)基材上に形成した金属蒸着層にT−ダイから押出した熱可塑性ポリウレタン溶融体を積層して皮革様シートを製造する方法(特開昭62−282078号公報参照);(ホ)合成繊維布帛の表面にシランカップリング剤を予め付与しておき、その上に熱可塑性樹脂を溶融押出して圧着し、布帛と熱可塑性樹脂層との接着強度を向上させた積層体を製造する方法(特開平2−307986号公報参照)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記(イ)および(ロ)の従来法による場合は、上記した(4)および(5)の従来の多孔質体の製造法による場合と同様に、ポリウレタンを有機溶剤に溶解した溶液を用いるために、有機溶剤の使用に伴う作業環境の悪化を伴い、安全性および衛生性などの点で問題がある。さらに、使用した有機溶媒の回収や処理のための工程や設備が必要であり、製造工程が複雑になり、コスト高になる。その上、上記(ロ)の従来法による場合は、ポリウレタン表面層の凝固に長い時間を要するため、製造速度を高めることができず、結果的に製造コストが高くならざるを得ないという点で問題がある。上記(ハ)〜(ホ)の従来法による場合は、得られた積層体を引っ張ったり、折り曲げたりした際に、表面に低品位のシワなどの凹凸模様が出現したり、スキン層の剥離や基材と表面層との剥離が生じ易いなどの欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、大きさの揃った微細な気泡が発泡体内部にムラなく均一に分布しており、表面状態が良好で外観に優れ、しかも柔軟性、力学的特性などにも優れる熱可塑性ポリウレタン発泡体を、環境上や安全性などの点で問題になっているフロンガスや有機溶剤などを使用せずに、円滑に、且つ生産性よく製造することができる発泡性ポリウレタン組成物を提供することである。そして、本発明の目的は、上記した高品位のポリウレタン発泡体およびその製造方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、繊維質基材層、上記した優れた特性を有するポリウレタン発泡体層および熱可塑性エラストマー無孔質層を有し、しかも繊維質基材層や無孔質層とポリウレタン発泡体層との層間剥離がなく、且つ良好な耐摩耗性を有していて耐久性に優れ、その上、特に柔軟性に富む高級感のある銀面層付きの積層体およびその製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者は研究を行い、熱分解型発泡剤を用いる上記(3)の従来法が、有機溶剤やフロンガスなどの環境悪化成分を使用しないですみ、生産性が高いなどの点で優れていることに着目して、この(3)の従来法の上記した種々の問題点を解決すべく、素材面、成形面などから更に種々検討を重ねた。その結果、熱可塑性ポリウレタンに熱分解型発泡剤を添加し、加熱溶融下に発泡剤を分解させて発泡体を製造するに当たって、熱可塑性ポリウレタンを単独で用いずに、熱可塑性ポリウレタンに、エチレン−α−オレフィン共重合体、および数平均分子量が100,000以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を特定の割合で配合した発泡性ポリウレタン組成物を用いると、その溶融弾性、溶融伸度が発泡に極めて適したものとなり、発泡剤の熱分解によって発生したガスが溶融物中に充分に、且つ均一に斑なく保持されて、微細で且つ大きさの揃った気泡が発泡体全体に均一に分布しており、発泡体内部および発泡体表面において気泡膜の破裂や気泡サイズ斑による凹凸模様の発生などのない、高品位のポリウレタン発泡体が得られることを見出した。そして、得られるポリウレタン発泡体は、良好な発泡構造によって力学的特性や外観にも優れており、更に柔軟性などの点でも極めて優れており、それらの諸特性を生かして広範な分野に有効に使用できることを見出した。
【0009】
さらに、本発明者は、上記の発泡性ポリウレタン組成物を用いて溶融押出発泡成形を行うと、押出機のダイ付近での押出物の破壊などを生ずることなく、用途などに応じて、厚い発泡体から薄い発泡体まで適宜円滑に製造でき、発泡フィルムや発泡シートなどの発泡製品を、良好な工程性で生産性よく製造できることを見出した。
【0010】
さらに、本発明者は、上記の発泡性ポリウレタン組成物より得られる発泡体層を繊維質基材層の表面に設け、更にその発泡体層の上に熱可塑性エラストマーよりなる無孔質層を設けた積層体は、耐摩耗性、柔軟性、触感、風合などの特性に優れており、天然皮革に極めて近似した性質を有しており、合成皮革または人造皮革などとして種々の用途に有効に使用し得ることを見出した。
【0011】
さらに、本発明者は、上記の発泡性ポリウレタン組成物を用いて溶融押出発泡成形を行うことによって、上記の積層体を、良好な工程性で、生産性よく製造できることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、熱可塑性ポリウレタン(I)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(II)からなり、成分(I)/成分(II)の重量比が40/60〜95/5である組成物100重量部に対して、数平均分子量が100,000以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)を1〜30重量部含有し、さらに熱分解型発泡剤を含有することを特徴とする発泡性ポリウレタン組成物に関する。
【0013】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン(I)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(II)からなり、成分(I)/成分(II)の重量比が40/60〜95/5である組成物100重量部に対して、数平均分子量が100,000以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)を1〜30重量部含有する熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる発泡体に関する。
【0014】
本発明は、上記の発泡性ポリウレタン組成物を用いて、溶融押出発泡成形を行うことを特徴とする発泡体の製造方法に関する。
【0015】
本発明は、繊維質基材層(A)の表面に、熱可塑性ポリウレタン組成物からなる発泡体層(B)を有し、その上に熱可塑性エラストマーからなる無孔質層(C)を有し、且つ該無孔質層(C)の表面に凹凸模様および/または鏡面模様が存在している積層体であって、該発泡体層(B)が上記の発泡体から形成されていることを特徴とする積層体に関する。
【0016】
さらに、本発明は、上記の発泡性ポリウレタン組成物を膜状に溶融押出発泡成形し、流動性を有している内に繊維質基材層(A)の表面に押し付けて接着することにより、繊維質基材層(A)の表面に発泡体層(B)を形成し、次に、熱可塑性エラストマーを膜状に溶融押出成形し、流動性を有している内に発泡体層(B)の表面に押し付けて接着することにより、発泡体層(B)の表面に無孔質層(C)を形成するとともに、無孔質層(C)が流動性を有している内に、無孔質層(C)の表面を型押しして凹凸模様および/または鏡面模様を形成することを特徴とする積層体の製造方法に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる熱可塑性ポリウレタン(I)は、加熱溶融し得る熱可塑性ポリウレタンであればいずれも使用可能である。そのうちでも、数平均分子量800〜8,000の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタンを用いるのが好ましい。
【0018】
特に、熱可塑性ポリウレタン(I)の製造に用いられる高分子ジオールとしては、数平均分子量が800〜8,000のものが好ましく、900〜6,000のものがより好ましい。このような数平均分子量の高分子ジオールを用いると、得られる熱可塑性ポリウレタンの機械的強度や成形性がより良好になり、ひいては本発明の発泡体、および発泡体層を有する積層体の機械的強度や成形性がより良好になる。なお、本明細書でいう高分子ジオールの数平均分子量は、いずれもJIS K 1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量を意味する。
【0019】
熱可塑性ポリウレタン(I)を構成する高分子ジオールとしては、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリカーボネートジオール、ポリエステルポリエーテルジオールなどを挙げることができ、これらを1種または2種以上用いることができる。そのうちでも、ポリエステルジオールおよび/またはポリエーテルジオールを用いるのが好ましい。
【0020】
上記したポリエステルジオールとしては、例えば、常法に従って、ジカルボン酸、そのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体からなるジカルボン酸成分と低分子ジオール成分とを直接エステル化反応またはエステル交換反応させることにより製造したものを用いることができる。
【0021】
ポリエステルジオールの製造に用いられるジカルボン酸成分としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの炭素数5〜12の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸:またはそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そにうちでも、ジカルボン酸成分としては、炭素数5〜12の脂肪族ジカルボン酸が、得られる発泡体やその発泡体層を有する積層体の柔軟性、力学的特性が優れる点から好ましく用いられ、特に、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸がより好ましく用いられる。
【0022】
ポリエステルジオールの製造に用いられる低分子ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、3−メチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合が50モル%以上である低分子ジオール成分が、得られる発泡体やその発泡体層を有する積層体の柔軟性、反発弾性が良好なことから好ましく用いれる。
【0023】
上記したポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリテトラメチレングリコールが、得られる発泡体や発泡体層を有する積層体の柔軟性、耐加水分解性が良好な点から好ましく用いられる。
【0024】
上記したポリカーボネートジオールとしては、例えば、低分子ジオール成分と、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるポリカーボネートジオールを挙げることができる。その際の低分子ジオール成分としては、ポリエステルジオールの製造に用い得る低分子ジオール成分として上記で挙げたものを用いることができる。また、上記したジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0025】
上記したポリエステルポリカーボネートジオールとしては、例えば、上記した低分子ジオール成分、ジカルボン酸成分およびカーボネート化合物を同時に反応させることにより得られるポリエステルポリカーボネートジオール;予め合成しておいたポリエステルジオールおよびポリカーボネートジオールを、カーボネート化合物、ジオール成分および/またはジカルボン酸成分と反応させて得られるポリエステルポリカーボネートジオールなどを挙げることができる。
【0026】
熱可塑性ポリウレタン(I)の製造に用いられる有機ジイソシアネートの種類は特に制限されず、熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられている有機ジイソシアネートのいずれもが使用できる。そのうちでも、数平均分子量が500以下の芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートのうちの1種または2種以上が好ましく用いられる。有機ジイソシアネートの例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが、得られる発泡体および発泡体層を有する積層体の力学的特性が良好な点から好ましく用いられる。また、必要に応じて、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネートを少量併用してもよい。
【0027】
熱可塑性ポリウレタン(I)の製造に用いられる鎖伸長剤の種類は特に制限されず、熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できる。そのうちでも、鎖伸長剤としては、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物が好ましく用いられる。そのような鎖伸長剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジン、イソフタル酸ジヒドラジンなどのジアミン類、アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールが、発泡体および発泡体層を有する積層体の力学的特性が良好な点から好ましく用いられ、特に1,4−ブタンジオールがより好ましく用いられる。
【0028】
そして、本発明では、熱可塑性ポリウレタン(I)として、上記した高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を、下記の数式(1)を満足する割合で反応させて得られる熱可塑性ポリウレタンを用いるのがより好ましい。
【0029】
0.99≦b/(a+c)≦1.05 (1)
(式中、aは高分子ジオールのモル数、bは有機ジイソシアネートのモル数、cは鎖伸長剤のモル数を示す。)
【0030】
上記の数式(1)を満足するようにして製造された熱可塑性ポリウレタンは、溶融発泡性、特に溶融押出発泡性、力学的特性、耐摩耗性などの点で優れており、その結果、得られる発泡体および積層体の発泡体層の発泡状態、力学的特性などが良好になる。
【0031】
熱可塑性ポリウレタン(I)の製造法は特に制限されず、上記した高分子ジオール、有機ジイソシアネート、鎖伸長剤および必要に応じて他の成分を使用し、公知のウレタン化反応技術を利用して、プレポリマー法またはワンショット法により製造することができる。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合する方法、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合する方法が好ましく用いられる。
【0032】
熱可塑性ポリウレタン(I)としては、その硬度(JIS−A硬度)が55〜80のものを用いるのが好ましく、60〜75のものを用いるのがより好ましい。このような硬度の熱可塑性ポリウレタンを用いると、機械的強度や柔軟性に優れる発泡体および発泡体層を有する積層体が得られるので好ましい。
【0033】
熱可塑性ポリウレタン(I)としては、その対数粘度が0.5〜2.0dl/gのものを用いるのが好ましく、0.8〜1.8dl/gのものを用いるのがより好ましい。このような対数粘度の熱可塑性ポリウレタンを用いると、発泡に適した熱可塑性ポリウレタン組成物を得ることができ、力学的特性、耐摩耗性などの特性が一層良好な発泡体、および発泡体層を有する積層体が得られるので好ましい。なお、本明細書でいう熱可塑性ポリウレタンの対数粘度は、n−ブチルアミンを0.05モル/リットルの割合で含有するN,N−ジメチルホルムアミド溶液に、熱可塑性ポリウレタンを濃度0.5g/dlになるように溶解し、30℃で測定したときの値である。
【0034】
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(II)は、エチレン単位(a)およびα−オレフィン単位(b)から構成されており、構造単位(a)/構造単位(b)のモル比が75/25〜97/3であるのが好ましく、85/15〜95/5であるのがより好ましい。構造単位(a)と構造単位(b)の含有割合がこの範囲内のものは、熱可塑性ポリウレタンとの相溶性に優れており、力学的特性などに優れた発泡体および該発泡体層を有する積層体が得られる。
【0035】
エチレン−α−オレフィン共重合体(II)を構成するα−オレフィン単位(b)としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどの炭素数3以上のα−オレフィンから誘導される単位を挙げることができ、これらの単位を1種または2種以上含ませることができる。これらのなかでも、炭素数4以上のα−オレフィンから誘導される単位が好ましく、炭素数が4〜12のα−オレフィンから誘導される単位がより好ましく、炭素数が5〜10のα−オレフィンから誘導される単位がさらに好ましく、1−オクテンから誘導される単位が特に好ましい。
【0036】
エチレン−α−オレフィン共重合体(II)の数平均分子量(Mn)は、10,000〜180,000であるのが好ましく、20,000〜150,000であるのがより好ましい。さらに、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは、1.5〜4.0であるのが好ましく、1.5〜3.5であるのがより好ましい。また、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)の密度は、0.85〜0.92g/cm3であるのが好ましく、0.85〜0.91g/cm3であるのがより好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体(II)として、Mn、Mw/Mn、密度が上記の範囲内のものは、熱可塑性ポリウレタンとの相溶性に優れており、力学的特性などに優れた発泡体および該発泡体層を有する積層体が得られる。なお、本明細書でいうオレフィン系共重合体(II)のMnおよびMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値である。
【0037】
エチレン−α−オレフィン共重合体(II)の製造方法は、特に限定されず、上記した単量体を、例えば、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法などの方法で、通常、0〜250℃の温度下、常圧〜1000気圧(100MPa)で重合することにより得られる。その際に、重合活性点が均一なシングルサイト触媒を用いると、分子量分布が狭く、共重合組成分布が狭い重合体が容易に得られるため好ましい。シングルサイト触媒の中でも、特に、4価の遷移金属を含有するメタロセン化合物が好ましく、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、(t−ブチルアミド)(テトラメチル−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)(ジ−n−プロピルアミド)などを挙げることができる。メタロセン化合物を重合触媒として用いる場合には、単独では重合活性を発現しないので、メチルアルミノキサン、非配位性のホウ素系化合物などの助触媒を、メタロセン化合物1モルに対して2〜1,000,000モル、好ましくは50〜5,000モルの割合で併用する。
【0038】
熱可塑性ポリウレタン(I)にエチレン−α−オレフィン共重合体(II)を配合する割合は、成分(I)/成分(II)の重量比で40/60〜95/5であり、50/50〜90/10であるのが好ましい。成分(I)/成分(II)の重量比が95/5を越える場合〔成分(II)の配合割合が少なすぎる場合〕には、発泡体の低比重化、柔軟性、表面平滑性の改善が認められない。一方、成分(I)/成分(II)の重量比が40/60未満の場合〔成分(II)の配合割合が多すぎる場合〕には、各成分の相溶性が低下し、発泡体の柔軟性や表面平滑性が悪くなる。
【0039】
また、本発明では、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)として、その数平均分子量が100,000以上のものを使用する。(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)の数平均分子量が100,000未満であると、発泡性ポリウレタン組成物の溶融粘度(溶融弾性)が気泡の保持に適当なものにならず、発泡の粗大化や破裂などが生じて、大きさの揃った微細な気泡が斑なく分布している発泡体を形成することができなくなり、しかも発泡体や発泡体層の表面に凹凸模様や荒れが発生して、外観が不良になる傾向にある。特に、厚さの薄い発泡フィルムや発泡層では、そのような表面の凹凸模様や荒れの発生が著しくなる傾向が強い。(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の数平均分子量の上限値は特に制限されないが、発泡体における気泡の均一性、熱可塑性ポリウレタンとの相溶性などの点から5,000,000以下であるのが好ましい。
【0040】
本発明では、数平均分子量が100,000以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)であればいずれも好適に使用できるが、数平均分子量が100,000以上、好ましくは150,000以上、より好ましくは200,000以上、さらに好ましくは250,000以上であって、且つ(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)のエステルを形成しているアルキル基の炭素数が1〜10であるアクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルから主としてなるものが最も好ましく用いられる。
【0041】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好ましい例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸アルキルエステルなどを挙げることができ、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)は、前記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上から形成されていることができる。そのうちでも、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとを主とする共重合体を用いるのが好ましい。
【0042】
また、本発明に用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)は、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位と共に、必要に応じて少量(一般に25モル%以下)の他の共重合性不飽和モノマーから誘導される単位を有していてもよく、そのような共重合性不飽和モノマーとしては、例えばエチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリルなどが挙げることができ、これらの共重合性不飽和モノマーの1種または2種以上から誘導される単位を有していることができる。
【0043】
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、熱可塑性ポリウレタン(I)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(II)からなる組成物100重量部に対して、数平均分子量が100,000以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)を1〜30重量部含有していることが必要であり、2〜20重量部含有していることが好ましい。成分(I)および成分(II)からなる組成物100重量部に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)の使用割合が1重量部未満であると、熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融弾性(溶融粘度)が低くなって、熱分解型発泡剤の分解により発生したガスを良好に保持できなくなり、発泡の粗大化や破れが生じ、発泡体内部の気泡構造が不良になり、しかも発泡体表面に粗大な凹凸模様や荒れが生じて平滑な表面状態にならず、さらに発泡体の機械的特性の低下、発泡体層とその上に積層する無孔質層との接着不良などを生ずる。そして、そのような物性や品質の低下は、発泡フィルムのような薄物の発泡体や発泡体層の厚さの薄い積層体において特に顕著に現れる。また、場合によっては、溶融粘度の低下によって気泡を充分に保持できず、発生した気泡が外部に逃げてしまって、発泡倍率の低下を招くこともある。一方、成分(I)および成分(II)からなる組成物100重量部に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)の使用割合が30重量部を越えると、熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度が高くなり過ぎて、膨脹が抑制されて発泡倍率が小さくなり、所望の発泡倍率の発泡体を得ることができなくなり、しかも熱可塑性ポリウレタン中への(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の分散が不良になって発泡体や発泡体層の表面などに未溶融のブツなどが発生し易くなる。
【0044】
本発明では、熱可塑性ポリウレタン(I)、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)および(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)に、さらに熱分解型発泡剤を配合して発泡性ポリウレタン組成物を調製し、そしてその発泡性ポリウレタン組成物を加熱溶融発泡させることにより発泡体を形成する。その場合の熱分解型発泡剤としては、従来から知られている熱分解型発泡剤のいずれもが使用でき、特に限定されない。本発明で用い得る熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジアミノベンゼン、アゾヘキサヒドロベンゾジニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド、t−ブチルアミノニトリル、p−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾンなどの有機系熱分解型発泡剤;重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの無機系熱分解型発泡剤などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。このうちでも、本発明では、アゾジカルボンアミド系の発泡剤が、熱可塑性ポリウレタン(I)、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)および数平均分子量が100,000以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)からなるポリウレタン組成物の溶融温度以上の分解温度を有していて、取扱い性に優れており、ガス発生量が多く、しかもその分解挙動がポリウレタン組成物の溶融成形に適しているなどの点から好ましく用いられる。また、上記の熱分解型発泡剤のうちで、例えば、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルヒドラジド、重炭酸ナトリウムなどはポリウレタンの分子量低下を引き起こす作用があり、一方、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどはポリウレタンの架橋を促進する作用を有する。そのため、ポリウレタンの分子量低下を引き起こす発泡剤と、架橋を促進する発泡剤を併用した場合には、ポリウレタンに適度な架橋をもたらし、溶融粘度の低下の抑制が可能となり、機械的特性、物理的特性、化学的特性に優れ、発泡状態の良好な発泡体を形成させることができる。
【0045】
熱分解型発泡剤の添加量は、目的とする発泡体や発泡体層の発泡倍率(比重)、発泡体や積層体の用途、発泡剤のガス発生量などに応じて調節が可能であるが、一般に、熱可塑性ポリウレタン(I)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(II)の合計重量100重量部に対して、0.05〜10重量部であるのが好ましく、0.1〜5重量部であるのがより好ましく、0.3〜3重量部であるのが更に好ましい。
【0046】
また、本発明では、上記した熱分解型発泡剤を用いて発泡体を製造するに当たって、発泡を円滑に行わせて、より均一で微細な気泡を有する発泡体を得るために、発泡助剤を併用してもよい。その場合の発泡助剤としては、それぞれの熱分解型発泡剤に対して従来から用いられている発泡助剤を用いることができる。例えば、アゾ系発泡剤、重炭酸ナトリウム、ヒドラジン系発泡剤に対してはカルボン酸金属、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、シリカ、アルミナなど金属酸化物、タルクなどの鉱物などの発泡助剤を用いることができ、また例えば、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンに対しては尿素系化合物や有機酸などの発泡助剤を用いることができる。
【0047】
発泡助剤を使用する場合は、その使用量を製造を目的とする発泡体や発泡体層の発泡倍率(比重)、発泡体や積層体の用途、発泡剤のガス発生量などに応じて適宜調節することができるが、通常、熱可塑性ポリウレタン(I)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(II)の合計重量100重量部に対して、0.005〜10重量部であることが好ましく、0.01〜5重量部であることがより好ましく、0.1〜2重量部であることが更に好ましい。また、熱分解型発泡剤に対する使用割合としては、熱分解型発泡剤1重量部に対して、発泡助剤を0.1〜1重量部とすることが好ましい。
【0048】
さらに、本発明の発泡性ポリウレタン組成物、発泡体、積層体における発泡体層は、他の添加剤、例えば、均一で微細な気泡を形成するための気泡調節剤(無機微粉末など)、充填剤、補強材、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤などの添加剤の1種または2種以上を必要に応じて含有していてもよい。
【0049】
本発明の発泡性ポリウレタン組成物を調製するに当たっては、その調製方法は特に制限されないが、熱可塑性ポリウレタンが吸湿すると発泡状態や力学的特性などが影響を受けるため、熱可塑性ポリウレタン組成物の調製時に出来るだけ吸湿をさける方法、さらに、発泡助剤を使用する場合には、その発泡助剤の機能が失われないような方法であればいずれも採用される。限定されるものではないが、本発明の発泡性ポリウレタン組成物の調製に当たっては、例えば、熱可塑性ポリウレタン(I)、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)、並びに熱分解型発泡剤、さらに必要に応じて、発泡助剤やその他の成分を、樹脂材料の混合に通常用いられているような縦型、または水平型の混合機を用いて所定の割合で予備混合した後、一軸または二軸の押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどを用いて、回分式または連続式で加熱下に溶融混練することにより製造することができる。
【0050】
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は熱可塑性であり、使用する熱可塑性ポリウレタン(I)、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)および(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)の種類、あるいはこれらの配合割合などにもよるが、一般に約150〜250℃の温度に加熱することにより溶融する。そのため、本発明の発泡性ポリウレタン組成物を用いて溶融発泡成形を行うと、大きさが揃った微細な気泡が全体に斑なく分布していて、しかも機械的特性、物理的特性、外観などに優れる発泡体を円滑に製造することができる。その際に、溶融押出発泡成形を採用すると、前記した優れた特性を備える、発泡フィルム、発泡シート、発泡板、積層体、その他の発泡押出物を、有機溶剤やフロンガスなどのような環境汚染物質を使用することなく、良好な作業性で、生産性よく製造することができるので好ましい。
【0051】
発泡性ポリウレタン組成物を用いて成形、加工と同時に発泡を行わせる場合は、成形、加工の少なくともある段階で熱分解型発泡剤の分解温度以上の温度を採用して、成形、加工を行えばよい。そして、熱分解型発泡剤の種類や併用する発泡助剤の種類などによってその温度は異なるが、上記したような熱分解型発泡剤は一般に約100〜250℃の範囲で分解するので、熱分解型発泡剤を分解させて発泡体を製造するには、使用する熱分解型発泡剤や発泡助剤の種類などに応じて、100〜250℃またはそれ以上の温度を採用して加熱発泡するとよい。
【0052】
また、本発明の発泡体や積層体などの製造に当たっては、発泡性ポリウレタン組成物を予め調製しておかずに、熱可塑性ポリウレタン(I)、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)、熱分解型発泡剤および必要に応じて他の成分を、例えば、溶融押出発泡装置やその他の溶融発泡成形装置などに直接供給して発泡体を製造することもできる。
【0053】
上記のようにして得られる発泡体は、そのまま使用してもよいし、繊維質基材層(A)の上に上記した発泡体層(B)を形成し、更に発泡体層(B)の上に熱可塑性エラストマーよりなる無孔質層(C)を形成した積層体として使用してもよい。この積層体は、繊維質基材層(A)の強靱性、発泡体層(B)の柔軟性や適度な弾力性、無孔質層(C)のしなやかな風合や触感などの、3層の性質が複合的に発揮されて、天然皮革に極めて近似した良好な風合、外観、触感など有しているので、合成皮革または人造皮革として有用である。
【0054】
以下に、繊維質基材層(A)、発泡体層(B)および無孔質層(C)を有する本発明の積層体(以下、これを「3層構造積層体」と称することがある)について説明する。
【0055】
繊維質基材層(A)として用いられる繊維質基材は、適度な厚みと充実感を有し、且つ柔軟な風合を有するシート状の繊維質基材であればいずれも使用でき、従来から皮革様の積層体の製造に用いられている各種の繊維質基材を使用することができる。限定されるものではないが、繊維質基材としては、例えば極細繊維またはその束状繊維、特殊多孔質繊維、通常の合成繊維、半合成繊維、天然繊維、無機繊維などを用いて形成された絡合不織シートや編織物シートなどの繊維質シート;前記した繊維質シートにポリウレタンなどのような高分子材料を含有させた繊維質シート;前記したいずれかの繊維質シートの表面にさらに高分子材料の多孔質被覆層を形成した繊維質シートなどを用いることができる。
【0056】
上記したうちでも、繊維質基材としては、極細繊維または極細繊維束を用いて形成されている繊維質シートが好ましく用いられ、その場合に得られる3層構造積層体の風合などの点から、極細繊維の単繊維繊度が0.5デニール以下であるのが好ましく、0.1デニール以下であるのがより好ましい。また、繊維質基材を極細繊維束から形成する場合は、極細繊維束のトータルデニールが0.5〜10デニールであるのが、得られる3層構造積層体の風合などの点から好ましい。また、繊維質基材を構成する極細繊維は、ポリエステル系繊維および/またはナイロン系繊維から形成されているのが、得られる積層体の強度、感触、コストなどの点から好ましい。
【0057】
特に、繊維質基材として、上記したような極細繊維束の不織布から形成されていて、且つ不織布中に高分子材料を含有させてある繊維質シートを使用すると、天然皮革に一層近似した良好な風合や触感などを有する3層構造積層体を得ることができるので好ましい。その場合に不織布中に含有させる高分子材料としては、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、塩化ビニル系重合体、ポリビニルブチラール系重合体、アクリル系重合体、ポリアミノ酸系重合体、シリコン系重合体などを挙げることができ、これらの重合体は単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。そのうちでも、ポリウレタン系重合体を含有させた繊維質シートを繊維質基材として用いると、繊維質基材層(A)上に積層する発泡体層(すなわち前記した発泡性ポリウレタン組成物から形成された発泡体層)(B)との親和性が高く、繊維質基材層(A)と発泡体層(B)との間の接着が強固になるので、特に好ましい。そして、高分子材料を含浸させた繊維質シートからなる繊維質基材を用いる割合は、該繊維質基材における高分子材料の含有量は、高分子材料を含浸させる前の繊維質シートの重量に基づいて、約10〜70重量%程度であるのが好ましい。
【0058】
また、繊維質基材層(A)と発泡体層(B)との接着を向上させるために、繊維質基材層(A)の表面に、発泡体層(B)と親和性の高い重合体を含む表面処理剤の被覆層を形成しておいてもよく、その場合の被覆層の厚さは5μm以下とするのが好ましい。この被覆層の厚さが厚くなると、柔軟で一体感のある風合を有する、3層構造積層体が得られにくくなる。
【0059】
3層構造積層体における繊維質基材層(A)の厚さは、得られる積層体の用途などに応じて決めることができるが、繊維質基材層(A)上に積層される発泡体層(B)、さらには無孔質層(C)の厚さとのバランスの点から、繊維質基材層(A)の厚さが0.3mm〜3mm程度であるのが好ましく、0.5mm〜2mm程度であるのがより好ましい。
【0060】
また、柔軟な風合を有し、且つ適度な反発性および腰感のある3層構造積層体を得るためには、繊維質基材の見掛け比重が0.25〜0.5g/cm3であるのが好ましいく、0.3〜0.35g/cm3であるのがより好ましい。繊維質基材の見掛け比重が大きすぎるとゴム様の風合となり易く、一方、繊維質基材の見掛け比重が小さ過ぎると反発性および腰のない風合となり、やはり天然皮革に近似した風合が得られにくくなる。
【0061】
繊維質基材層(A)上に積層する発泡体層(B)は、前記した本発明の発泡性ポリウレタ組成物を用いて発泡させることによって形成させる。3層構造積層体における発泡体層(B)の厚さは、用途などに応じて選択することができるが、一般的には、100〜1000μm程度であるのが好ましく、200〜600μm程度であるのがより好ましい。また、発泡体層(B)の発泡倍率[(発泡させる前の発泡性ポリウレタン組成物の比重)÷(発泡体の見掛け比重)]は約1.5〜4倍であるのが好ましい。発泡体層(B)の発泡倍率が、前記した範囲内であると、柔軟性および適度な弾力性があり、積層体を引っ張ったり、折り曲げたりしたときに表面に低品位の皺や凹凸模様などが生じず、高級感のある皮革様の積層体となり、しかも繊維質基材層(A)と発泡体層(B)との接合強度が大きくなり、層間剥離などが生じない。
【0062】
また、発泡体層(B)上の無孔質層(C)を形成する熱可塑性エラストマーとしては、柔軟性、弾力性、耐摩耗性、機械的強度、耐候性、耐加水分解性などに優れていて、且つ発泡体層(B)と親和性のある熱可塑性エラストマーであればいずれも使用できる。無孔質層(C)を形成する熱可塑性エラストマーとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの結晶性の芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ガラス転移温度の低い脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリエステルポリカーボネートなどをソフトセグメントとするポリエステルエラストマー;6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミドをハードセグメントとし、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルエーテルなどをソフトセグメントとするポリアミドエラストマー;スチレン系重合体をハードセグメントとし、ポリイソプレン、ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンなどをソフトセグメントとするスチレン系エラストマー;シリコーン系エラストマー;塩素化ポリマー系エラストマー;ポリプロピレンをハードセグメントとしエチレンプロピレンゴムや部分架橋エチレンプロピレンゴムなどをソフトセグメントとするポリオレフィン系エラストマー;フッ素系樹脂をハードセグメントとしフッ素系ゴムをソフトセグメントとするフッ素系重合体エラストマー;1,2−ブタジエン系重合体エラストマー;ウレタン/塩ビ系エラストマー;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム三元共重合体などのエチレン系共重合体などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いて無孔質層(C)を形成することができる。
【0063】
そして、本発明の3層構造積層体では、その無孔質層(C)を、上記した熱可塑性エラストマーのうちでも、熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタンと他の熱可塑性エラストマーとの混合物から成形するのが好ましい。そしてその場合には、無孔質層(C)を形成するポリマーの材質と、上記した発泡性ポリウレタン組成物から形成された発泡体層(B)の材質が近似したものとなり、発泡体層(B)と無孔質層(C)との間の接着強度が大きくなって両層間の剥離などが生じなくなり、物性に極めて優れる3層構造積層体を得ることができる。無孔質層(C)を熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタンと他の熱可塑性エラストマーとの混合物から成形するに当たっては、無孔質層(C)を形成する熱可塑性ポリウレタンとして、発泡性ポリウレタン組成物に用いることができる前記した種々の熱可塑性ポリウレタンを使用することができる。その場合に、3層構造積層体の発泡体層(B)を構成する熱可塑性ポリウレタンと無孔質層(C)を構成する熱可塑性ポリウレタンとは同じものであっても、または異なるものであってもよい。一般的には、無孔質層(C)を構成する熱可塑性ポリウレタンとして、発泡体層(B)の形成に用いる熱可塑性ポリウレタンに比べて多少硬度の高いものを使用すると、3層構造積層体の耐摩耗性を一層向上させることができる。
【0064】
また、無孔質層(C)の厚さは、無孔質層(C)を形成する熱可塑性エラストマーの種類、3層構造積層体の用途などによって調節し得るが、天然皮革様の風合を3層構造積層体に付与し、しかも表面強度、発泡体層(B)との接着強度、屈曲に対する耐久性などを付与できる点から、無孔質層(C)の厚さが10〜200μm程度であるのが好ましく、30〜100μm程度であるのがより好ましい。無孔質層(C)が薄すぎると、得られる3層構造積層体の表面の耐摩耗性が低下し易くなる。一方、無孔質層(C)が厚すぎると、3層構造積層体の屈曲性が低下し、ゴム様の劣った風合となり、天然皮革様の風合が失われる傾向がある。無孔質層(C)は、気泡を含有していないことが必要である。気泡があると、3層構造積層体表面の耐摩耗性、強度、平滑性が低下し、色斑などを発生しやすくなる。
【0065】
さらに、本発明の3層構造積層体では、無孔質層(C)の表面に、エンボス模様、シボ模様などの凹凸加工および/または鏡面加工などを施しておいてもよい。そして、無孔質層(C)の表面に凹凸加工を施した場合には、天然皮革に一層近似したエンボス模様やシボ模様などを3層構造積層体表面に出現させることができる。一方、無孔質層(C)の表面に鏡面加工を施した場合には、エナメル調の光沢のある表面が3層構造積層体に付与される。また、本発明の3層構造積層体では、無孔質層(C)の表面に凹凸加工および鏡面加工の両方を施してもよく、その場合には光沢のあるエナメル調の表面に更に凹凸模様が施された状態になる。
【0066】
3層製造積層体の製造方法は特に制限されず、繊維質基材層(A)/発泡体層(B)/無孔質層(C)からなる積層構造体を、それらの層間の剥離などを生じることなく円滑に製造し得る方法であれば、いずれの方法で製造してもよい。例えば、(1)本発明の発泡性ポリウレタン組成物を用いて、溶融押出発泡成形し、T−ダイから溶融発泡状態で膜状に押し出して、流動性を有している内に繊維質基材層(A)の表面に発泡体層(B)を積層する方法、いわゆる溶融製膜法によって繊維質基材層(A)および発泡体層(B)からなる積層体を製造する工程;並びに、(2)上記した積層体を製造した後に、発泡体層(B)の上に熱可塑性エラストマーを溶融押出成形し、T−ダイから溶融状態で膜状に押し出して、流動性を有する内に積層させる方法、いわゆる溶融製膜法によって繊維質基材層(A)/発泡体層(B)/無孔質層(C)からなる3層構造積層体を製造する工程を有する方法によって製造すると、層間剥離がなく、しかもそれぞれの層の特性を充分に活用した高品位の3層構造積層体を、有機溶剤やフロンガスなどのような有害成分を使用することなく、生産性よく、円滑に製造することができるので好ましい。
【0067】
そして、3層構造積層体を製造する際の上記(1)の工程では、溶融押出発泡時の発泡温度などの成形条件は、発泡体の製造について前記で説明したのと同様の条件を採用して行うことができる。
【0068】
また、上記(2)の熱可塑性エラストマーの積層工程を行うに当たっては、例えば、(i)繊維質基材層(A)と発泡体層(B)とからなる積層体の発泡体層(B)上に、熱可塑性エラストマーを直接溶融押出して積層し、その積層体をロールおよびそれと対向するバックロールとの間を通して押圧する方法;(ii)熱可塑性エラストマーをロール上に溶融押出した後、そのロールとそれと対向するバックロールとの間に、繊維質基材層(A)と発泡体層(B)とからなる積層体を供給し、前記積層体の発泡体層(B)上に熱可塑性エラストマー層を転写積層して押圧する方法;(iii)繊維質基材層(A)と発泡体層(B)とからなる積層体における発泡体層側にロールを配置しておき、その発泡体層(B)とロールとの間隙に熱可塑性エラストマーを直接溶融押出し、さらに繊維質基材層(A)と発泡体層(B)からなる積層体の背面側(繊維質基材側)にバックロールを配置しておいて、押圧しながら積層させる方法などを採用することができる。そして、熱可塑性エラストマーが流動性を有している限り、上記(i)〜(iii)のいずれの方法を採用しても、目的の3層構造積層体を円滑に得ることができる。
【0069】
3層構造積層体の無孔質層(C)表面に、凹凸加工および/または鏡面加工を施す方法は特に制限されないが、例えば、(1)上記(i)〜(iii)の熱可塑性エラストマーの積層工程のいずれかを行うに当たって、繊維質基材層(A)と発泡体層(B)からなる積層体の発泡体層(B)側に配置する上記のロール表面に、凹凸加工および/または鏡面加工を施しておいて、熱可塑性エラストマーからなる溶融状態にある無孔質層(C)を発泡体層(B)上に押圧積層すると同時に該無孔質層(C)の表面に凹凸加工および/または銀面加工を行う方法;(2)熱可塑性エラストマーからなる無孔質層(C)を発泡体層(B)上に形成した後に、該無孔質層(C)が未だ賦型が可能な可塑化状態にある間に、凹凸加工および/または鏡面加工用の上記ロールを用いて無孔質層(C)表面に凹凸加工および/または鏡面加工を施す方法などにより行うことができる。そのうちでも、上記(1)の方法が、工程数が少なくてすみ、生産性が高い点から好ましい。そして、上記(1)の方法を採用する場合には、上記したロールおよびバックロールによってもたされる押圧力を、5〜15kg/cm2のゲージ圧としておくと、無孔質層(C)表面への凹凸加工および/または鏡面加工を円滑に行うことができる。
【0070】
無孔質層(C)の表面に凹凸加工および/または鏡面加工を行うに当たっては、例えば、凹凸加工および/または鏡面加工を施したロールを無孔質層(C)の表面に直接当接させて無孔質層(C)表面に凹凸模様および/または鏡面模様を形成する方法;凹凸加工および/または鏡面加工を施してある離型性の加工シートを無孔質層(C)の表面に当接させ該加工シートの背部からロールなどによって押圧して無孔質層(C)の表面に凹凸模様および/または鏡面模様を形成させる方法などを採用することができる。そして、離型性の加工シートを用いる後者の方法を採用した場合には、該加工シートを取り替えるだけで、無孔質層(C)の表面に任意の凹凸模様および/または鏡面模様を形成することができ、便利である。
【0071】
そして、上記したいずれの方法による場合にも、無孔質層(C)表面に凹凸模様および/または鏡面模様を形成するための表面加工ロールや離型性の加工シートを、無孔質層(C)がもはや流動しなくなってから無孔質層(C)から剥離させるようにすることが好ましい。もし、無孔質層(C)が未だ流動性を有しているうちに表面加工ロールや離型性の加工シートを無孔質層(C)表面から剥離すると、無孔質層(C)表面に形成された凹凸模様および/または鏡面模様が無孔質層(C)の流動性によって崩れたり、消失したりして、鮮明な凹凸模様や、光沢に優れる鏡面模様が得られなくなる恐れがある。無孔質層(C)表面に凹凸模様および/または鏡面模様を形成させるための表面加工ロールや離型性の加工シートの背部に配置する押圧ロールとして、内部に冷却液を循環するようにした形式のものを採用したり、該凹凸加工および/または鏡面加工を施す近辺に冷風を強制的に送って、表面加工ロールや離型性の加工シートが無孔質層(C)から剥離する付近を積極的に冷却する方法などを採用すると、凹凸加工および/または鏡面加工された無孔質層(C)が速やかに冷却されて、表面加工ロールや離型性の加工シートの剥離を早期に行うことができるので好ましい。
【0072】
発泡体層(B)上に無孔質層(C)を形成する際のロールおよび/または無孔質層(C)の表面に凹凸加工および/または鏡面加工を行う際のロールとしては、無孔質層(C)に直接接触させて用いられるロールの場合は、一般に、金属製のロールが好ましく用いられる。また、無孔質層(C)に直接接触させないで用いるバックロールや、上記した離型性の表面加工シートの背部に用いられるロールとしては、金属製ロール、弾性体ロールなどのいずれでもが使用可能であり、そのうちでも弾性体ロールを用いると押圧を安定して行うことができるので望ましい。
【0073】
何ら限定されるものではないが、無孔質層(C)表面に凹凸模様および/または鏡面模様が施された3層構造積層体を製造する場合は、例えば、図1に示すような工程によって、3層構造積層体を製造することができる。なお、図1において、1は繊維質基材、2は鏡面加工を施した金属製ロール、3は弾性体バックロール、4は押出機、5は発泡体層、6は繊維質基材層と発泡体層からなる積層体、7は凹凸模様を施した金属製エンボスロール、8は弾性体バックロール、9は押出機、10は無孔質層、および11は3層構造積層体をそれぞれ示す。
【0074】
本発明の発泡体、繊維質基材層(A)/発泡体層(B)/無孔質層(C)を有する3層構造積層体などは、その優れた柔軟性、弾力性、耐摩耗性、機械的特性、クッション性、緩衝性、感触などを活かして、人工皮革、壁材や床材などの建築材、椅子などの家具類や車両のシート、車両などの内装材、履物、鞄類、袋物、衣類、衣料雑貨、手袋、クッション材、断熱材、緩衝材、軽量ベルトなどとして、広範囲な用途に有効に使用することができる。特に、繊維質基材層(A)/発泡体層(B)/無孔質層(C)からなる上記した3層構造積層体は、天然皮革の代替素材として、例えば、コート、ブレザー、スカートなどの衣類、靴やブーツなどの履物、バック、カメラケース、財布などのカバン類や袋物、ベルトなどの衣料関連品、バスケットボール、バレーボールなどのスポーツ分野などに有効に用いることができる。
【0075】
【実施例】
以下に、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、各種物性値の測定、および得られた発泡体または3層構造積層体の物性の評価は次のようにして行った。
【0076】
[熱可塑性ポリウレタンの対数粘度]
n−ブチルアミンを0.05モル/リットルの割合で含有するN,N−ジメチルホルムアミド溶液に、熱可塑性ポリウレタンを濃度0.5g/dlになるように溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて、その熱可塑性ポリウレタン溶液の温度30℃における流下時間を測定し、下式の数式により対数粘度を測定した。
【0077】
熱可塑性ポリウレタンの対数粘度={ln(t/to)}/c
[式中、tは熱可塑性ポリウレタン溶液の流下時間(秒)、toは溶媒の流下時間(秒)、そしてcは熱可塑性ポリウレタン溶液の濃度(g/dl)を示す。]
【0078】
[熱可塑性ポリウレタンの硬度]
熱可塑性ポリウレタンを射出成形(シリンダー温度180〜200℃、金型温度30℃)して直径120mm、厚さ2mmの円板状試験片を成形し、それを2枚重ね合わせたものを用いて、JIS K 6301に準拠してショアー硬度Aを測定した。
【0079】
[発泡体層の見掛比重]
JIS K 6767に準拠して、発泡フィルムの見掛比重を測定した。
【0080】
[発泡フィルムの引張強度]
JIS K 7311に準拠して、発泡フィルムの長さ方向(押出方向)の引張強度を測定した。
【0081】
[発泡フィルムの外観]
発泡フィルムの表面状態を目視により観察して、発泡フィルムの表面に気泡の破れや気泡径の斑などに伴う凹凸模様や荒れなどが生じておらず、表面が薄いスキン層で覆われていて平滑なものを良好(○)とし、発泡フィルムの表面に気泡の破れや気泡径の斑などに伴う凹凸模様や荒れなどが生じているものを不良(×)として評価した。
【0082】
[3層構造積層体の表面の耐摩耗性]
ペーパー式ロータリーアブレッサー装置(吸塵ユニット付)(東洋精機社製「ロータリーアブレイションテスター」)を用いて、JIS L1096 6.17.3に準拠して、3層構造積層体を構成する無孔質層の表面の摩耗減少量を測定した。
【0083】
[3層構造積層体の剥離強度]
3層構造積層体の無孔質層を2液型ウレタン系接着剤を用いて支持体に接着し、25℃、65%RHで24時間放置した後、JIS K 6301に準拠して180度剥離強度を測定した。
【0084】
下記の表で用いた略号の内容を下記の表1に示す。
【0085】
【表1】
Figure 0003657405
【0086】
《実施例1》
(1) 3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位とアジピン酸単位とからなる数平均分子量3,500のポリエステルジオール(PMPA)、1,4−ブタンジオール(BD)および50℃で加熱溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を、PMPA:BD:MDIのモル比が1:2:3のモル比となるような割合で用い、且つそれらの合計供給量が300g/分になるようにして、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機(30mmφ、L/D=36、シリンダー温度:75〜260℃)に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタンを製造した。生成した熱可塑性ポリウレタンの溶融物をストランド状で水中に連続的に押出した後、ペレタイザーでペレット状に細断し、このペレットを80℃で20時間除湿乾燥することにより、下記の表2に示す対数粘度および硬度を有する熱可塑性ポリウレタンを製造した。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン80重量部、エチレン−α−オレフィン共重合体〔エチレン単位/1−オクテン単位のモル比=92.5/7.5、Mn=139,500、Mw/Mn=3.4、密度=0.87g/cm3、ダウ・ケミカル社製「ENGAGE EG8150」〕20重量部、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体〔メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの重量比=75/25、三菱レイヨン株式会社製「メタプレンP530A」、数平均分子量300,000)〕5重量部およびアゾジカルボンアミド系発泡剤(永和化成製「ビニホームAC#3」)1重量部を混合し、発泡性ポリウレタン組成物を製造した。
(3) 上記(2)で調製した発泡性ポリウレタン組成物を、単軸押出機(25mmφ)に仕込み、溶融帯温度170〜210℃、ダイス部温度180℃、T−ダイ(リップ幅0.2mm、ダイ幅350mm)より膜状に溶融押出発泡成形を行って、厚さ500μm、幅300mmの発泡フィルムを製造した。得られたフィルムの見掛比重、引張強度および外観を、上記した方法で測定または評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0087】
《実施例2〜4》
(1) 実施例1で使用したのと同じポリエステルジオールを用い、これに1,4−ブタンジオール、および50℃で加熱溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、下記の表2に示すモル比で用いる以外は、実施例1の(1)と同様にして熱可塑性ポリウレタンを製造した。得られた熱可塑性ポリウレタンの対数粘度および硬度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体〔エチレン単位/1−オクテン単位のモル比=92.5/7.5、Mn=139,500、Mw/Mn=3.4、密度=0.87g/cm3、ダウ・ケミカル社製「ENGAGE EG8150」〕、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体〔メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの重量比=75/25、三菱レイヨン株式会社製「メタプレンP530A」、数平均分子量300,000)〕、アゾジカルボンアミド系発泡剤(永和化成製「ビニホームAC#3」)を、下記の表2に示す割合で用いる以外は、実施例1の(2)と同様にして発泡性ポリウレタン組成物を製造した。
(3) 上記(2)で製造した発泡性ポリウレタン組成物を用いて、実施例1の(3)と同様にして、膜状に溶融押出発泡成形を行って、下記の表3に示す厚さを有する発泡フィルムを製造した。得られたフィルムの見掛比重、引張強度および外観を、上記した方法で測定または評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0088】
《実施例5〜6》
(1) 数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール(PTG)、1,4−ブタンジオール(BD)および50℃で加熱溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を、下記の表2に示すモル比で用いる以外は実施例1の(1)と同様にして熱可塑性ポリウレタンを製造した。得られた熱可塑性ポリウレタンの対数粘度および硬度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体〔エチレン単位/1−オクテン単位のモル比=92.5/7.5、Mn=139,500、Mw/Mn=3.4、密度=0.87g/cm3、ダウ・ケミカル社製「ENGAGE EG8150」〕、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体〔メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの重量比=75/25、三菱レイヨン株式会社製「メタプレンP530A」、数平均分子量300,000)〕、アゾジカルボンアミド系発泡剤(永和化成製「ビニホームAC#3」)を、下記の表2に示す割合で用いる以外は、実施例1の(2)と同様にして発泡性ポリウレタン組成物を製造した。
(3) 上記(2)で製造した発泡性ポリウレタン組成物を用いて、実施例1の(3)と同様にして、膜状に溶融押出発泡成形を行って、下記の表3に示す厚さを有する発泡フィルムを製造した。得られたフィルムの見掛比重、引張強度および外観を、上記した方法で測定または評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0089】
《比較例1〜3》
実施例1の(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体〔エチレン単位/1−オクテン単位のモル比=92.5/7.5、Mn=139,500、Mw/Mn=3.4、密度=0.87g/cm3、ダウ・ケミカル社製「ENGAGE EG8150」〕、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体〔メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの重量比=75/25、三菱レイヨン株式会社製「メタプレンP530A」、数平均分子量300,000)〕、アゾジカルボンアミド系発泡剤(永和化成製「ビニホームAC#3」)を、下記の表2に示す割合で用いる以外は、実施例1の(2)と同様にして発泡性ポリウレタン組成物を製造し、この発泡性ポリウレタン組成物を用いて、実施例1の(3)と同様にして、膜状に溶融押出発泡成形を行って、下記の表3に示す厚さを有する発泡フィルムを製造した。得られたフィルムの見掛比重、引張強度および外観を、上記した方法で測定または評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0090】
《比較例4〜5》
実施例5の(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン、エチレン−α−オレフィン共重合体〔エチレン単位/1−オクテン単位のモル比=92.5/7.5、Mn=139,500、Mw/Mn=3.4、密度=0.87g/cm3、ダウ・ケミカル社製「ENGAGE EG8150」〕、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体〔メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの重量比=75/25、三菱レイヨン株式会社製「メタプレンP530A」、数平均分子量300,000)〕、アゾジカルボンアミド系発泡剤(永和化成製「ビニホームAC#3」)を、下記の表2に示す割合で用いる以外は、実施例1の(2)と同様にして発泡性ポリウレタン組成物を製造し、この発泡性ポリウレタン組成物を用いて、実施例1の(3)と同様にして、膜状に溶融押出発泡成形を行って、下記の表3に示す厚さを有する発泡フィルムを製造した。得られたフィルムの見掛比重、引張強度および外観を、上記した方法で測定または評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0091】
【表2】
Figure 0003657405
【0092】
【表3】
Figure 0003657405
【0093】
上記の表3の結果から明らかなように、実施例1〜6の発泡性ポリウレタン組成物を用いた場合には、引張強度に優れ、しかも平滑な外観を有する発泡フィルムが得られる。それに対して、熱可塑性ポリウレタン(I)とエチレン−α−オレフィン共重合体(II)との重量比が40/60〜95/5の範囲外の比較例3の場合は、発生したガスの保持性が悪いことから発泡フィルムの見掛比重が高く、しかも引張強度も低く、機械的特性にも劣っている。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)を含有しない比較例1および比較例4の場合は、溶融粘度が低すぎて発泡に適したものとならず、溶融押出発泡成形により得られる発泡フィルムは、気泡の破れや、気泡径などによる凹凸模様や荒れなどが表面に生じていて外観が不良であること、しかも引張強度も低く、機械的特性にも劣っている。さらに、熱可塑性ポリウレタン(I)とエチレン−α−オレフィン共重合体(II)の合計重量100重量部に対して、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(III)を30重量部より多く配合した比較例2および比較例5の場合は、溶融粘度が高くなりすぎて、発生したガスによって充分に膨らまず、発泡フィルムの見掛比重が高くなってしまい、しかも外観も不良である。
【0094】
《実施例7》
(1)単繊維繊度2.5デニールのポリエステル繊維を用いて製造した絡合不織布(目付360g/m2)にポリウレタン弾性体((株)クラレ製「クラミロンU2195」、対数粘度1.05dl/g、ショアーA硬度95)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を含浸させ、乾燥して、厚さ1.3mm、目付455g/m2の繊維質基材を準備した(繊維質基材におけるポリエステル絡合不織布:ポリウレタン弾性体の重量比=8:2)。
(2)数平均分子量3,500の3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位とアジピン酸単位とからなるポリエステルジオール(PMPA)、1,4−ブタンジオール(BD)および50℃で加熱溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を、PMPA:BD:MDIのモル比が1:2:3のモル比となるような割合で用い、且つそれらの合計供給量が300g/分になるようにして、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機(30mmφ、L/D=36、シリンダー温度:75〜260℃)に連続的に供給して、連続溶融重合を行った。生成した熱可塑性ポリウレタンの溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出した後、ペレタイザーでペレット状に細断し、このペレットを80℃で20時間除湿乾燥することにより、対数粘度が1.05dl/gおよびシアー硬度Aが65の熱可塑性ポリウレタン(以下「PU−1」と称することがある)を製造した。
(3)上記(2)で得られた熱可塑性ポリウレタン(PU−1)80重量部、エチレン−α−オレフィン共重合体〔エチレン単位/1−オクテン単位のモル比=92.5/7.5、Mn=139,500、Mw/Mn=3.4、密度=0.87g/cm3、ダウ・ケミカル社製「ENGAGE EG8150」〕20重量部、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体〔メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの重量比=75/25、三菱レイヨン株式会社製「メタプレンP530A」、数平均分子量300,000)〕5重量部およびアゾジカルボンアミド系発泡剤(永和化成製「ビニホームAC#3」)1重量部を混合し、発泡性ポリウレタン組成物を製造した。
(4)図1に示すようにして、上記(1)で準備した繊維質基材1を、鏡面加工を施した金属製ロール2と弾性体バックロール3との間に通して供給すると共に、前記金属製ロール2と繊維質基材1との間に、上記(3)で得られた発泡性ポリウレタン組成物を単軸押出機(65mmφ)4に仕込み、溶融帯温度180〜210℃、ダイ部温度180℃で、T−ダイ(リップ幅0.2mm、ダイ幅350mm)より膜状に溶融押出発泡させたものを流動状態で供給し、ゲージ圧8kg/cm2でコールドプレスして、繊維質基材層1の表面に厚さ350μmの発泡体層5が形成された積層体6を製造した。この積層体6における発泡体層5の発泡倍率は1.9倍であった。
(5)上記(3)とは別に、数平均分子量1,500の3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位とアジピン酸単位とからなるポリエステルジオール(PMPA)、1,4−ブタンジオール(BD)および50℃で加熱溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を、PMPA:BD:MDIのモル比が1:2.6:3.6となるような割合で用いて、上記(2)と同様にして対数粘度1.02dl/gおよびショアー硬度Aが90の熱可塑性ポリウレタン(以下「PU−2」と称することがある)を製造した。
(6)上記(5)で得られた熱可塑性ポリウレタン(PU−2)100重量部に対して、黒色顔料ペレット(顔料濃度20重量%のポリエチレンペレット)5重量部を混合し、無孔質層用の熱可塑性ポリウレタン組成物を製造した。
(7)上記(4)で得られた繊維質基材層1と発泡体層5とからなる積層体6を毛穴シボ状の凹凸加工を施してある金属製エンボスロール7と弾性体バックロール8との間に通して供給すると共に、前記金属製エンボスロール7と前記積層体6の発泡体層5の表面との間に、上記(6)で得られた無孔質層用に調製した熱可塑性ポリウレタン組成物を、単軸押出機(65mmφ)9に仕込み、溶融帯温度180〜230℃、ダイ部温度220℃で、T−ダイ(リップ幅0.5mm、ダイ幅350mm)より膜状に溶融押出させたものを流動状態で供給し、ゲージ圧8kg/cm2でコールドプレスして、発泡体層5の表面に厚さ35μmの無孔質層10を有する繊維質基材層/発泡体層/無孔質層よりなる3層構造積層体11を製造した。この3層構造積層体11は10m/分のライン速度で安定して製造することができた。
(8)上記(7)で得られた3層構造積層体11は、その表面強力が大きく、柔軟性に優れ、外観も天然皮革の毛穴シボ品に極めて近い良好な毛穴状シボ模様を有しており、引っ張ったり、折れ曲げたときに表面に低品位の凹凸シワなどが生じず、外観、風合、触感などにおいて極めて優れており、高級感のある皮革様積層体であった。また、その3層構造積層体11の剥離強度を上記した方法で測定したところ15kg/25mmと高い値であった。一方、摩耗減少量は8mgと小さく、耐摩耗性に優れるものであった。
【0095】
《実施例8》
(1) 単繊維繊度0.007デニールの極細ナイロン繊維を約300本収束した極細繊維束を用いて製造した極細ナイロン繊維絡合不織布(目付300g/m2)にポリウレタン弾性体((株)クラレ製「クラミロンU9198」、対数粘度1.05dl/g、ショアーA硬度98)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を含浸させ、乾燥して、厚さ1.3mm、目付442g/m2の繊維質基材を準備した(繊維質基材における極細ナイロン繊維絡合不織布:ポリウレタン弾性体の重量比=6:4)。
(2) 数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール(PTG)、1,4−ブタンジオール(BD)および50℃で加熱溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を、PTG:BD:MDIのモル比が1:0.6:1.6となるような割合で用いて、実施例7の(2)と同様にして対数粘度1.05dl/gおよびショアー硬度Aが75の熱可塑性ポリウレタンを製造した(以下「PU−3」と称することがある)。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性ポリウレタン(PU−3)80重量部、エチレン−α−オレフィン共重合体〔エチレン単位/1−オクテン単位のモル比=92.5/7.5、Mn=139,500、Mw/Mn=3.4、密度=0.87g/cm3、ダウ・ケミカル社製「ENGAGE EG8150」〕20重量部、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体〔メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの重量比=75/25、三菱レイヨン株式会社製「メタプレンP530A」、数平均分子量300,000)〕5重量部およびアゾジカルボンアミド系発泡剤(永和化成製「ビニホームAC#3」)1重量部を混合し、発泡性ポリウレタン組成物を製造した。
(4) 図1に示すようにして、上記(1)で準備した繊維質基材1を、鏡面加工を施した金属製ロール2と弾性体バックロール3との間に通して供給すると共に、前記金属製ロール2と繊維質基材1との間に、上記(3)で得られた発泡性ポリウレタン組成物を単軸押出機(65mmφ)4に仕込み、溶融帯温度180〜210℃、ダイ部温度180℃で、T−ダイ(リップ幅0.2mm、ダイ幅350mm)より膜状に溶融押出発泡させたものを流動状態で供給し、ゲージ圧8kg/cm2でコールドプレスして、繊維質基材層1の表面に厚さ480μmの発泡体層5が形成された積層体6を製造した。この積層体6における発泡体層5の発泡倍率は1.8倍であった。
(5) 上記(3)とは別に、数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール(PTG)、1,4−ブタンジオール(BD)および50℃で加熱溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を、PTG:BD:MDIのモル比が1:1.7:2.7となるような割合で用いて、実施例7の(2)と同様にして対数粘度1.03dl/gおよびショアー硬度Aが90の熱可塑性ポリウレタン(以下「PU−4」と称することがある)を製造した。
(6) 上記(5)で得られた熱可塑性ポリウレタン(PU−4)100重量部に対して、黒色顔料ペレット(顔料濃度20重量%のポリエチレンペレット)5重量部を混合し、無孔質層用の熱可塑性ポリウレタン組成物を製造した。
(7) 上記(4)で得られた繊維質基材層1と発泡体層5とからなる積層体6を、毛穴シボ状の凹凸加工を施してある金属製エンボスロール7と弾性体バックロール8との間に通して供給すると共に、前記金属製エンボスロール7と前記積層体6の発泡体層5の表面との間に、上記(6)で得られた無孔質層用に調製した熱可塑性ポリウレタン組成物を、単軸押出機(65mmφ)9に仕込み、溶融帯温度180〜230℃、ダイ部温度220℃で、T−ダイ(リップ幅0.5mm、ダイ幅350mm)より膜状に溶融押出させたものを流動状態で供給し、ゲージ圧10kg/cm2でコールドプレスして、発泡体層5の表面に厚さ35μmの無孔質層10を有する繊維質基材層/発泡体層/無孔質層よりなる3層構造積層体11を製造した。この3層構造積層体11は10m/分のライン速度で安定して製造することができた。
(8) 上記(7)で得られた3層構造積層体11は、その表面強力が大きく、柔軟性に優れ、外観も天然皮革の毛穴シボ品に極めて近い良好な毛穴状シボ模様を有しており、引っ張ったり、折れ曲げたときに表面に低品位の凹凸シワなどが生じず、外観、風合、触感などにおいて極めて優れており、高級感のある皮革様積層体であった。また、その3層構造積層体11の剥離強度を上記した方法で測定したところ13kg/25mmと高い値であった。一方、摩耗減少量は7mgと小さく、耐摩耗性に優れるものであった。
【0096】
《比較例6》
実施例7の(3)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(「メタプレンP530」)を使用しないこと以外は、実施例7と全く同様にして、繊維質基材層/発泡体層/無孔質層よりなる3層構造積層体をラインスピード10m/分で製造した。
その結果、繊維質基材層と発泡体層とからなる積層体を製造する際に、発泡性ポリウレタン組成物の溶融粘度が低いことにより、押し出し直後から気泡の巨大化、潰れ、破壊などを生じ、発泡体層の表面は凹凸の大きい粗悪なものであった。また、最終的に得られた3層構造積層体においても、無孔質層の下の発泡体層の粗悪な表面形状の影響を受けて、無孔質層の表面にエンボスロールによる毛穴状のシボ模様が充分に成形されず、凸部の角が流れて(崩れて)不鮮明になり、シボ流れが生じていた。その上、積層体の一体感も乏しく、柔軟性に欠ける硬い風合であった。また、その3層構造積層体の剥離強度を上記した方法で測定したところ5kg/25mmと低い値であった。一方、摩耗減少量は15mgと大きく、耐摩耗性に劣っていた。
【0097】
《比較例7》
実施例8の(3)において、熱可塑性ポリウレタン(PU−3)とエチレン−α−オレフィン共重合体〔エチレン単位/1−オクテン単位のモル比=92.5/7.5、Mn=139,500、Mw/Mn=3.4、密度=0.87g/cm3、ダウ・ケミカル社製「ENGAGE EG8150」〕の配合重量比を、80/20から30/70に変更した以外は、実施例8と同様にして、繊維質基材層/発泡体層/無孔質層よりなる3層構造積層体をラインスピード10m/分で製造した。
その結果、繊維質基材層と発泡体層とからなる積層体を製造する際に、発泡性ポリウレタン組成物の溶融粘度が低いことにより、押出し直後から気泡の巨大化、潰れ、破壊などを生じ、発泡体層の表面は凹凸の大きい粗悪なものであった。また、最終的に得られた3層構造積層体においても、無孔質層の下の発泡体層の粗悪な表面形状の影響を受けて、無孔質層の表面にエンボスロールによる毛穴状のシボ模様が充分に成形されず、凸部の角が流れて(崩れて)不鮮明になりシボ流れが生じていた。その上、積層体の一体感も乏しく、柔軟性に欠ける硬い風合であった。また、その3層構造積層体の剥離強度を上記した方法で測定したところ5kg/25mmと低い値であった。一方、摩耗減少量は18mgと大きく、耐摩耗性に劣っていた。
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、大きさの揃った微細な気泡が発泡体内部にムラなく均一に分布しており、表面に気泡の破れや気泡径の斑などに起因する荒れや凹凸模様がなくて表面状態が良好であり、しかも柔軟性、機械的特性、耐摩耗性などにも優れる高品質のポリウレタン発泡体および該ポリウレタン発泡体からなる層を有する積層体が提供される。そして、繊維質基材層(A)/発泡体層(B)/無孔質層(C)よりなる本発明の3層構造積層体は、柔軟性、弾力性、耐摩耗性、機械的強度などの諸特性に優れ、層間剥離がなく、引っ張ったり、折り曲げたりしたときに表面に低品位の皺や凹凸模様が生じない、天然皮革に近似した、高級感のある外観、風合、触感などを有している。さらに、本発明の発泡性ポリウレタン組成物を用いて、本発明の方法によってポリウレタン発泡体あるいは3層構造積層体を製造した場合には、環境上や安全面などの点で大きな問題になっているフロンガスや有機溶剤などを使用することなく、上記した高品質の製品を円滑に且つ高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】繊維質基材層(A)/発泡体層(B)/無孔質層(C)からなる本発明の3層構造積層体の製造に好ましく採用される製造工程の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 繊維質基材
2 鏡面加工を施した金属性ロール
3 弾性体バックロール
4 押出機
5 発泡体層
6 繊維質基材層と発泡体層からなる積層体
7 凹凸模様を施した金属性エンボスロール
8 弾性体バックロール
9 押出機
10 無孔質層
11 3層構造積層体

Claims (5)

  1. 熱可塑性ポリウレタン(I)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(II)からなり、成分(I)/成分(II)の重量比が40/60〜95/5である組成物100重量部に対して、数平均分子量が100,000以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)を1〜30重量部含有し、さらに熱分解型発泡剤を含有することを特徴とする発泡性ポリウレタン組成物。
  2. 熱可塑性ポリウレタン(I)およびエチレン−α−オレフィン共重合体(II)からなり、成分(I)/成分(II)の重量比が40/60〜95/5である組成物100重量部に対して、数平均分子量が100,000以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(III)を1〜30重量部含有する熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる発泡体。
  3. 請求項1記載の発泡性ポリウレタン組成物を用いて溶融押出発泡成形を行うことを特徴とする請求項2記載の発泡体の製造方法。
  4. 繊維質基材層(A)の表面に、熱可塑性ポリウレタン組成物からなる発泡体層(B)を有し、その上に熱可塑性エラストマーからなる無孔質層(C)を有し、且つ該無孔質層(C)の表面に凹凸模様および/または鏡面模様が存在している積層体であって、該発泡体層(B)が請求項2記載の発泡体から形成されていることを特徴とする積層体。
  5. 請求項1記載の発泡性ポリウレタン組成物を膜状に溶融押出発泡成形し、流動性を有している内に繊維質基材層(A)の表面に押し付けて接着することにより、繊維質基材層(A)の表面に発泡体層(B)を形成し、次に、熱可塑性エラストマーを膜状に溶融押出成形し、流動性を有している内に発泡体層(B)の表面に押し付けて接着することにより、発泡体層(B)の表面に無孔質層(C)を形成するとともに、無孔質層(C)が流動性を有している内に、無孔質層(C)の表面を型押しして凹凸模様および/または鏡面模様を形成することを特徴とする請求項4記載の積層体の製造方法。
JP25483897A 1997-09-19 1997-09-19 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体 Expired - Lifetime JP3657405B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25483897A JP3657405B2 (ja) 1997-09-19 1997-09-19 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25483897A JP3657405B2 (ja) 1997-09-19 1997-09-19 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1192581A JPH1192581A (ja) 1999-04-06
JP3657405B2 true JP3657405B2 (ja) 2005-06-08

Family

ID=17270565

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP25483897A Expired - Lifetime JP3657405B2 (ja) 1997-09-19 1997-09-19 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3657405B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011073157A (ja) * 2009-09-29 2011-04-14 Yokohama Rubber Co Ltd:The 板状ゴム製品の加硫成形方法および板状ゴム製品
CN105330883B (zh) * 2015-11-11 2018-01-12 烟台恒美塑业有限公司 一种交联聚烯烃微孔发泡板材的生产方法及其混合冷却装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH1192581A (ja) 1999-04-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4184178B2 (ja) 熱可塑性重合体組成物
KR100784656B1 (ko) 열가소성 폴리우레탄 발포체, 이의 제조방법 및 이로부터제조된 연마 패드
JP4050438B2 (ja) 表面被覆を施したポリオレフィン系樹脂成形品
JP2739435B2 (ja) 皮革様シートおよびその製造方法
JP3693458B2 (ja) 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体
JP3481766B2 (ja) 積層体およびその製造方法
JP3645679B2 (ja) 積層体を製造する方法
JP2004035669A (ja) 熱可塑性ポリウレタン発泡体およびそれからなる研磨パッド
JP3990664B2 (ja) ポリウレタン発泡体およびポリウレタン発泡体層を有する積層体
JP3532354B2 (ja) 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体の製造方法
JP3657405B2 (ja) 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体
JP2002371154A (ja) 熱可塑性ポリウレタン発泡体およびその製造方法並びに該発泡体からなる研磨パッド
JPH10278182A (ja) 積層体およびその製造方法
JP4408778B2 (ja) 合成皮革
JP2000143969A (ja) 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体
JP3638702B2 (ja) 積層体およびその製造方法
JP3609887B2 (ja) 合成皮革及びその製造方法
JPH11256031A (ja) 発泡性ポリウレタン組成物および発泡体
JPH09300546A (ja) 積層体およびその製造方法
JP3583222B2 (ja) 積層体およびその製造方法
JP4522313B2 (ja) 合成皮革用の積層体
JP4043359B2 (ja) ウレタン系樹脂発泡シート
JP3127606B2 (ja) オレフィン系天然皮革調シート状物およびその製造法
JP2001031790A (ja) 熱可塑性ポリウレタンの射出発泡成形物
JP3516845B2 (ja) 表面物性に優れた立体感のある合成皮革

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20041125

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050215

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050309

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090318

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100318

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110318

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120318

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130318

Year of fee payment: 8