JP3657117B2 - 移植機のマーカ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用田植機等の移植機のマーカ制御装置に係り、詳しくは作業状態に応じて左右マーカの繰り出しを制御可能とした移植機のマーカ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、乗用田植機等の移植機は、苗の植付条間を適正に保持し、また機体の直進性を良好にするために、植付作業時に、次工程の機体走行基準線となる線を田面に引くマーカ装置を備えている。
【0003】
そして従来、この種マーカ装置として、例えば本件出願人の出願に係る特公平7−102006号公報に記載の技術が公知であり、この従来例によれば、マーカを機体側方に下降繰り出す作業位置から上昇収納する非作業位置へ移動するのに、植付部の昇降動作に連動して行い、かつ左右いずれか一方のマーカを非作業位置にて保持する機械的なロック部材を植付部の昇降作動に伴って左右交互に切換えて、圃場端における機体回向時に、植付部を昇降することにより左右マーカを自動的に繰り出しを切換えるように構成されている。
【0004】
これにより、例えば最初に右マーカを作業位置に繰り出して圃場面に線を引き、枕地にて回向した後は、次に反対側の左マーカを作業位置に繰り出して圃場面に線を引きながら移植作業を行えば、前記基準線を目安として走行しながら、該基準線に沿って整列状の移植が可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のように自動切換え可能なマーカ装置において、路上走行時等のようにマーカ装置を使用しない状況下にあって、しかも左右マーカを植付部側に収納固定しておくのを忘れたまま、誤操作により植付部を下降させる動作を行った場合、左右マーカが下方に繰り出されるおそれがあった。
【0006】
本発明は、斯かる課題を解消するためになされたもので、その目的とするところは、マーカ装置を使用しない状況下においては作業部が下降しても左右マーカが自動的に下方に繰り出されるのを防止し得る移植機のマーカ制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、運転席(9)を有する走行機体(5)にリンク機構(8)を介して作業部(10)を昇降自在に支持し、かつ圃場面に走行機体(5)の走行基準線を引く左右マーカ(50R,50L)を備えた移植機(1)において、
前記作業部(10)の上昇に伴い、作業位置に下降繰り出された前記左右マーカ(50R,50L)を非作業位置に引上げる引上げ手段(40)と、
前記作業部(10)の下降に伴い、前記左右マーカ(50R,50L)のいずれか一方又は双方を作業位置に下降繰り出すマーカ切換え手段(46)と、
該マーカ切換え手段(46)にマーカ下降信号を送出する制御手段(39)と、
前記作業部(10)の各種モニタや警報を作動状態にするモニタスイッチ(90)と、
前記マーカ切換え手段(46)により作業位置に下降繰り出される一方のマーカを選択操作する選択手段(54)と、を備え、
前記制御手段(39)は、前記モニタスイッチがオン作動状態にあるときにのみ、前記マーカ切換え手段(46)に向けてマーカ下降信号を送出可能とすると共に、前記作業部が上昇状態にあるときのみ前記選択手段による選択操作信号を受付可能とした、ことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記左右マーカ(50R,50L)の繰り出しを交互に切換える自動モードと、前記左右マーカ(50R,50L)を同時に繰り出す双方モードと、前記左右マーカ(50R,50L)の繰り出しを停止する停止モードと、の各種モードに選択的に切換え可能なモード切換え部(52)を有し、
前記モニタスイッチ(90)がオン作動状態にあり、かつ前記作業部(10)に動力を伝達する作業機クラッチが接続状態にあるときにのみ、前記自動モードによる前記左右マーカ(50R,50L)の交互の切換えを可能とした、ことを特徴とする。
【0009】
[作用]
以上の発明特定事項に基づき、移植機(1)は、走行機体(5)にリンク機構(8)を介して作業部(10)が昇降自在に支持され、かつ圃場面に走行機体(5)の走行基準線を引く左右マーカ(50R,50L)が装着されている。そして、前記作業部(10)の上昇に伴い、作業位置に下降繰り出された前記左右マーカ(50R,50L)は、引上げ手段(40)により非作業位置に引き上げられると共に、前記作業部(10)の下降に伴い、前記左右マーカ(50R,50L)のいずれか一方又は双方がマーカ切換え手段(46)により作業位置に下降繰り出されるようになっている。このマーカ切換え手段(46)は、制御手段(39)からの信号により制御される。
【0010】
また、移植機(1)は、作業部(10)の各種モニタや警報を作動状態にするモニタスイッチ(90)を備えており、このモニタスイッチ(90)がオン作動状態にあるときにのみ、前記制御手段(39)からマーカ切換え手段(46)に向けてマーカ下降信号が送出されるようになっている。このため、モニタスイッチ(90)がオフの場合は、たとえ作業部(10)が下降したとしても左右マーカ(50R,50L)が繰り出されることはない。
【0011】
なお、上述したカッコ内の符号は図面を参照するために示すものであって、本発明の発明特定事項を何ら限定するものではない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1に示すように、乗用田植機1は、前輪2及び後輪3により支持された走行機体5を有しており、該走行機体5にはその前輪前方部分のボンネット4内にエンジン6が搭載され、走行機体5の前後方向の中間部には座席シート7を有する運転席9が配設されている。この座席シート7の側方には、手動操作レバー17が設けられていて、この手動操作レバー17は、レバーガイド21に沿い「上げ」、「固定」、「下げ(自動)」、「植付(自動)」の各位置に操作可能となっている。
【0014】
前記走行機体5の後方には、昇降リンク機構8を介して作業部としての植付部10が昇降自在に支持され、該植付部10には多数のプランタ、フロー卜14及びマット苗を縦方向に載置し得る苗載せ台12が備えられている。また、植付部10の左右両端部には、左右マーカ50R,50Lが取り付けられている。この左右マーカ50R,50Lは、例えば植付部10の昇降に伴い機体側方に下降繰り出す作業位置と上昇収納する非作業位置とに自動的かつ交互に切換えられるようになっており、作業位置においては圃場面に走行機体5の走行基準線を引くことができる。
【0015】
前記走行機体5には、昇降リンク機構8に固着されたリンクブラケット44との間に油圧シリンダ装置19が配設されていて、前記手動操作レバー17の操作に基づき、座席シート7下部のリヤカバー26内に配置された制御部(制御手段)39を介して油圧コントロールバルブ35が制御され、更に該油圧コントロールバルブ35により前記油圧シリンダ装置19が伸縮制御されて、植付部10が昇降作動する。なお、前記手動操作レバー17の操作位置は、レバー位置検出ポテンショメータ42により検出され、この検出値に応じて前記制御部39を介して油圧コントロールバルブ35が制御される。
【0016】
また、図2に示すように、前記運転席9の前部には、ステアリングホイール13が設けられ、該ステアリングホイール13のステアリングコラム13a上部には、手元操作レバー38が設けられている。この手元操作レバー38は、ステアリングホイール13の下方のステアリングコラム13aに設けられたスイッチボックス51に取り付けられていて、レバー軸芯を中心として所定位置に回動保持し得るモード切換部52と、制御部39による左右マーカ50R,50Lの交互の切換えを選択する切換え操作部54とを有している。
【0017】
前記モード切換部52は、スイッチボックス51内に切換えスイッチを有していて、手元操作レバー38の回動操作により、左右マーカ50R,50Lの繰り出しを停止する停止モード(切位置)と、左右マーカ50R,50Lの繰り出しを自動的に切換える自動モード(自動位置)と、左右マーカ50R,50Lを同時に繰り出す双方モード(左右位置)とに選択可能とされている。
【0018】
すなわち、停止モードの場合、前記切換えスイッチはオフであり、左右マーカ50R,50Lの繰り出しは行わない。また、自動モードの場合、例えば植付部10が一回昇降される毎に、繰り出される左右マーカ50R,50Lの順序が自動的に切換えられる。更に、双方モードの場合、一方のマーカを繰り出し状態にしておき、かつ植付部10の下降途中で他方のマーカを繰り出し状態にすることで左右マーカ50R,50Lの両方が繰り出される。
【0019】
また、前記切換え操作部54は、押圧操作で作動し得る自動復帰式の押しボタンスイッチ54aを有し、この押しボタンスイッチ54aを一回押すごとに、左右マーカ50R,50Lのうち下降繰り出すべきマーカを選択できるようになっている。そして、この押しボタンスイッチ54aを、前記モード切換部52が自動モードにあるときで、かつ植付部10が上昇した状態にあるときに操作すると、植付部10が所定位置に下降したことを後述のリフト角ポテンショメータ87が検出した時点で、左右マーカ50R,50Lの交互の繰り出し順序が切換えられる。
【0020】
本発明においては、前記作業部10の上昇に伴い、作業位置に下降繰り出された前記左右マーカ50R,50Lを非作業位置に引上げる引上げ手段と、前記作業部10の下降に伴い、前記左右マーカ50R,50Lのいずれか一方又は双方を作業位置に下降繰り出すマーカ切換え手段と、該マーカ切換え手段にマーカ下降信号を送出する前記制御手段39と、前記作業部10の各種モニタや警報を作動状態にするモニタスイッチとを備えている。
【0021】
図3及び図4に示すように、引上げ手段としてのマーカ引上げ機構40は、昇降リンク機構8による植付部10の上昇に伴い、作業位置に下降繰り出された前記左右マーカ50R,50Lを、非作業位置に引上げて上昇収納する機能を有する。
【0022】
前記マーカ引上げ機構40は、座席シート7の下方に設けられていて、機体側のベース板56上にピン57が立設されており、このピン57に切換えレバー58が回動可能に軸着されている。この切換えレバー58は、断面略々L字形をなすと共に、側方に突出した舌片59を有し、前記ピン57を中心とする左右略々対称位置に夫々孔60,60が形成されている。
【0023】
一方、前記切換えレバー58の側部近傍には、マーカ切換え手段としてのマーカ切換えモータ46が配置されていて、そのモータ軸46aには作動アーム48が固定されている。そして、この作動アーム48が時計方向又は反時計方向に回転することにより、その先端部が前記舌片59に当接して押圧付勢すると、前記切換えレバー58は前記ピン57を中心として同方向に回動する。また、前記マーカ切換えモータ46の側方には、作動アーム48の初期位置(ホームポジション)を検出するリミットスイッチ49が設けられていて、作動アーム48の回動に伴い、このリミットスイッチ49の接触子を押圧等してスイッチをオン・オフ操作する。
【0024】
また、前記ピン57の後方のベース板56上には、左右端側を機体フレームに支持された軸61が横設されていて、該軸61にはカム62,62が機体前後方向に揺動可能に軸着されている。このカム62,62は、その高さ方向中途部に孔63,63が形成され、かつその後方に突出する突起部62a,62aを有している。そして、前記孔63,63と切換えレバー58に形成された孔60,60との間に、夫々ロッド64,64が取り付けられている。このロッド64,64の一端側はボルト65,65により切換えレバー58に取り付けられ、他端側は内側に折曲されて前記カム62,62に係止されている。なお、これらのカム62,62は、捩りバネ66,66により軸61を中心として図4の時計方向に付勢されている。
【0025】
更に、このカム62,62に対峙するように、アーム67,67が支点軸68を中心として揺動可能に軸着されている。このアーム67,67には、前記カム62,62に対峙する前端側に、前記カム62,62に当接するピン69,69が植設され、後端側にはローラ受け70,70が固定され、更に中央先端側にはワイヤ取付孔71,71が形成されている。
【0026】
前記支点軸68の下方には、横軸75が機体フレームに枢支されており、この横軸75にブラケット76,76の中間部が回動可能に軸着されている。そして、これら左右ブラケット76の前端側には、前記アーム67,67のローラ受け70,70に当接可能にローラ77が取り付けられ、後端側には連結ピン79を介してプレート78の前端部が連結されている。このプレート78の後端部は、ピン85によりリンクブラケット44に取り付けられている。このリンクブラケット44は、昇降リンク機構8の基端部に固設されている。この昇降リンク機構8は、左右の機体フレーム間に橋絡されている軸86に枢支されている。
【0027】
また、前記ワイヤ取付孔71,71には、インナワイヤ73a,73aの連結ピン72,72が係合され、該インナワイヤ73a,73aの他端は、前記左右マーカ50R,50Lに夫々連結されている。なお、アウタワイヤ73,73の一端はブラケット74にネジ92により調節自在に取り付けられ、他端は後述するマーカ基部回動部材93に固定されている。
【0028】
図5(a)(b)に示すように、苗載せ台12支持用の左右ステー81には、マーカ基部回動部材93を介してマーカ枢支ピン91により左右のマーカ50R,50Lが回動自在に支持されている。この左右のマーカ50R,50Lは、苗載せ台12の裏面に上昇収納された非作業位置と、植付部10の側部下方に繰り出されてその折曲側の先端aが圃場面に接触する作業位置とに切り換えられ、かつこれらマーカ50R,50Lは植付フレーム82,82との間に張設された繰り出しスプリング83,83により作業位置になるように付勢されている。
【0029】
以上により、前述したマーカ引上げ機構40の作動は、図3及び図4において、例えば制御部39からの右マーカ50Rの繰り出し指令に基づき、マーカ切換えモータ46が初期位置から図3の時計方向に一回転して元の位置に戻って停止する。このとき、作動アーム48も同方向に回転し、該作動アーム48が切換えレバー58の舌片59を押圧付勢する。これにより、切換えレバー58はピン57を中心として反時計方向に揺動し、右ロッド64を図面右方に引っ張る。すると、右側カム62が軸61を中心として図4の時計方向に回動し、その突起部62aと右側アーム67のピン69との係合が外れる。これにより、右側アーム67は、支点軸68を中心として時計方向に回動し、先端のワイヤ取付孔71が同方向に回動し、インナワイヤ73aが繰り出しスプリング83により引っ張られ、右マーカ50Rが作業位置に繰り出される。
【0030】
一方、植付け走行により走行機体5が枕地に至り、該枕地において走行機体5を回向する際、油圧シリンダ装置19が作動して植付部10が上昇すると、昇降リンク機構8の基部に固定されたリンクブラケット44が軸86を中心として時計方向に回動するため、プレート78が図4の左方に引かれ、ブラケット76が横軸75を中心として時計方向に回転し、ローラ77がアーム67のローラ受け70を持ち上げる。すると、アーム67は支点軸68を中心として反時計方向に回転し、ワイヤ取付孔71を介してインナワイヤ73aを引っ張り、右マーカ50Rを上昇させて該右マーカ50Rを非作業位置に収納する。
【0031】
次いで、走行機体5を回向して植付部10が下降し、リフト角ポテンショメータ87にて植付部10が所定位置に下降したことを検知すると、モード切換部52が自動モードの場合、制御部39から前記と反対の左マーカ50Lの繰り出し指令が発せられ、この指令に基づき、マーカ切換えモータ46が初期位置から図3の反時計方向に一回転して元の位置に戻って停止する。このとき、作動アーム48も同方向に回転し、該作動アーム48が切換えレバー58の舌片59を押圧付勢する。これにより、切換えレバー58はピン57を中心として時計方向に揺動し、左ロッド64を図面右方に引っ張る。すると、左側カム62が軸61を中心として図4の時計方向に回動し、その突起部62aと左側アーム67のピン69との係合が外れる。これにより、左側アーム67は、支点軸68を中心として時計方向に回動し、先端のワイヤ取付孔71が同方向に回動し、インナワイヤ73aが繰り出しスプリング83により引っ張られ、左マーカ50Lが作業位置に繰り出される。
【0032】
更に、走行機体5が枕地に至り、植付部10が上昇して昇降リンク機構8の基部のリンクブラケット44が軸86を中心として時計方向に回動すると、プレート78が図4の左方に引かれ、ブラケット76が横軸75を中心として時計方向に回転し、ローラ77がアーム67のローラ受け70を持ち上げる。すると、アーム67は支点軸68を中心として反時計方向に回転し、ワイヤ取付孔71を介してインナワイヤ73aを引っ張り、左マーカ50Lを上昇させて該左マーカ50Lを非作業位置に収納する。
【0033】
以下、同様にして、走行機体5が枕地に至り、植付部10が昇降する毎に左右マーカ50R,50Lが交互に切り換えられる。なお、左右マーカ50R,50Lの交互の繰り出し順序を変更するためには、手元操作レバー38の押しボタンスイッチ54aを一回押せば、変更できるようになっている。
【0034】
ところで、前記において、例えば路上走行時等においては、通常マーカ50が下方に繰り出されないように機体側に収納固定しておくが、本実施の形態においては、この固定忘れがあっても植付部10の下降に伴い自動的にマーカ50が繰り出されないように、モニタスイッチとしての植付スイッチ90(図6参照)がオンの場合にのみマーカ50の繰り出しを可能としている。
【0035】
この植付スイッチ90は、該スイッチがオン作動状態にあるときは植付部10の各種モニタや警報を作動状態にするものであり、従って植付作業時以外のときには、通常オフに操作されているものである。
【0036】
図6は、制御ブロック図を示しており、前記制御部39はマイクロコンピュータ(以下、CPUという)を有し、このCPUに、前記モード切換部52、切換え操作部54、植付スイッチ90、リミットスイッチ49、リフト角ポテンショメータ87、クラッチモータポテンショメータ88からの信号が入力され、該CPUにより、マーカ50が作業位置にあるか否かを知らせるランプ84L,84Rや前記マーカ切換えモータ46が制御される。前記リフト角ポテンショメータ87は、植付部10の昇降位置を検出するものであり、クラッチモータポテンショメータ88は、植付クラッチの入切状態を検出するものである。
【0037】
以上において、本発明は、前記モニタスイッチ90がオン作動状態にあり、かつ前記作業部10に動力を伝達する作業機クラッチが接続状態にあるときにのみ、前記自動モードによる左右マーカ50の交互の切換えを可能としている。
【0038】
すなわち、植付作業前にマーカ50にて圃場の外周にラインのみを引きたい場合があるが、このような場合にモード切換部52が自動モードで、かつ植付部10に動力を伝達する植付クラッチが「入」の時にのみ自動的に左右マーカ50R,50Lの交互の繰り出し(切換え)が行われるようにしている。従って、例えばモード切換部52が自動モードでも、植付クラッチが「切」の時には、植付部10の上昇に伴い左右マーカ50R,50Lの交互の繰り出しは行われず、いずれか一方のマーカのみが繰り出される。
【0039】
図7は、運転操作部の前面に配置された表示パネル80を示している。
【0040】
この表示パネル80には、植付作業中に左右マーカ50R,50Lが繰り出されていることを知らせるマーカランプ84R,84L等の各種モニタランプ、植付スイッチ90、ホーンスイッチ94、ライトON・OFFスイッチ95、コンビネーションスイッチ96、ウィンカーレバー97等の各種スイッチや計器関係が配置されている。
【0041】
前記植付スイッチ90は、押釦式のものが採用されており、各種モニタとしては前記マーカランプ84R,84Lの他、苗補給モニタランプ100、施肥モニタランプ102、燃料・肥料残量モニタランプ104等があり、植付スイッチ90はこれら各種モニタ及び警報ブザーを作動状態にする役目をなすもので、植付作業時には通常オン作動状態に操作され、それ以外のときにはオフ状態に操作されている。また、前記マーカランプ84R,84Lは、植付部10が上昇している時には次に繰り出されるマーカ(左右)側のランプが点灯し、植付部10が下降している時には使用中のマーカ(左右)側のランプが点灯する。
【0042】
従って、運転者はこの表示パネル80を見ながら植付作業を効率良く行うことができるが、本実施の形態では、前記植付スイッチ90がオン作動状態にある場合にのみ、植付部10の下降動作に伴い左右マーカ50R,50Lが繰り出し可能とされ、植付スイッチ90がオン作動状態にない場合には、植付部10が下降しても左右マーカ50R,50Lが繰り出されないようにしている。
【0043】
次に、図8〜図11のフローチャートに基づき、本実施の形態の制御動作を説明する。
【0044】
図8において、作業に先立ち、先ずステップAにおいて前記植付スイッチ90がオンかオフかを判断し、オンならステップBにおいてモード切換部52によって選択された「自動モード」、「双方モード」等のマーカモードのセットを行い、次いでステップCにおいて運転席前方の表示パネル80でのマーカモニタ表示を可能とし、更にステップDにおいて、セットされたマーカモード等に基づきマーカコントロールを行う。また、前述のステップAにおいて、植付スイッチ90がオフなら、ステップEにおいてオートマーカモードフラグ、マーカ左右繰り出しモードフラグ、方向切換フラグ、マーカ指示フラグ等を全てクリアにする。
【0045】
すなわち、本実施の形態においては、前記植付スイッチ90がオン作動状態にあるときにのみ、植付部10の下降に伴い自動的に左右マーカ50R,50Lが交互に繰り出され、又は左右双方のマーカ50R,50Lが同時に繰り出されるようになっている。これは、乗用田植機1は、通常、植付作業以外の路上走行時等においては、マーカ50は使用されることがなく、しかも植付スイッチ90はオフにされているので、マーカ50の収納固定忘れがあった状態で、誤操作等により植付部10を下降させた場合であっても、植付部10の下降動作に伴いマーカ50が下方に繰出されるのを防止できるためである。
【0046】
図9は、マーカモードセットに関するフローチャートを示す。
【0047】
同図において、S1では植付部10がマーカ収納が可能な位置にあるか否か、すなわち植付部10が固定位置又は上げ位置にあるか否かを判断し、YesならS2でマーカモニタフラグをセットし、S3に進む。若しもS1において、植付部10がマーカ収納可能な位置にない場合には最初の位置に戻る。
【0048】
S3では、手元操作レバー38のモード切換部52の操作により、オートモード(自動モード)が選択されているか否かを判断し、オートモードが選択されていればS4にてオートマーカモードフラグをセットし、S7に進む。若しもS3において、オートモードが選択されていなければ、S5〜S6において、オートマーカモードフラグをリセットすると共に、方向切換フラグをリセットしてS7に進む。
【0049】
S7においては、オートマーカモードフラグがセットされているか否かを判断し、セットされているならS8に進み、ここでマーカ左右振出し(双方繰出し)作動フラグがセットされているか否かを判断する。そして、S8でマーカ左右振出し作動フラグがリセットされているならS12に進み、ここで更にマーカ作動フラグがセットされているか否かを判断し、セットされていればS14にてマーカ作動フラグをリセットし、S15に進む。このS15では、植付クラッチの入フラグがセットされているか否かをクラッチモータポテンショメータ88(図6参照)にて判断し、セットされているならS16にて左右マーカ50の繰り出しを切換える方向切換フラグを左右反転させた後、S17で植付クラッチ入フラグをリセットし、S18に進む。
【0050】
なお、前述したS8において、マーカ左右振出し作動フラグがセットされているなら、S13でマーカ左右繰出し作動フラグとマーカ作動フラグをリセットし、S17に進む。また、S12でマーカ作動フラグがリセット状態の場合と、S15で植付クラッチの入フラグがリセット状態の場合は、S17に進む。
【0051】
つまり、オートマーカモードに設定されている場合は、植付スイッチ90がオンでかつ植付クラッチが入り状態のときのみ、左右マーカ50の左右繰り出しの切換えを可能としている。これは、図12に示すように、植付作業前に圃場106の外周側にマーカ50にてライン108のみを引きたい場合、オートマーカモードで行おうとすると、植付部10の昇降動作によって左右マーカ50の繰り出しが自動的に切換わってしまうので、これでは植付部10を昇降するたびにその都度マーカの左右切換え操作を必要とし煩わしいからである。
【0052】
次いで、S18では方向切換スイッチ、すなわち手元操作レバー38の切換え操作部54による左右マーカ50の切換え操作があるか否かを判断し、切換え操作があればS19にて方向切換フラグをリセットからセット(又はセットからリセット)に反転した後にS20に進む。
【0053】
一方、前述したS7において、オートマーカモードフラグがリセット状態なら、S9においてマーカ左右繰出し作動スイッチ、すなわち手元操作レバー38のモード切換部52が左右モード(双方繰出しモード)に設定(オン状態)されているか否かを判断し、オンならS10でマーカ左右繰出しモードフラグをセットし、オフならS11においてマーカ左右繰出しモードフラグをリセットしてS20に進む。
【0054】
S20では、オートマーカモードフラグがセットされているか否かを判断し、セットされていればS21に進み、このS21では、方向切換フラグがセットされているか否かを判断し、リセットされていればS26で右(R)のマーカ指示フラグをセットし、方向切換フラグがセットされていればS25で左(L)のマーカ指示フラグをセットする。また、前述のS20において、オートマーカモードフラグがリセットされていればS22に進み、このS22では、マーカ左右繰出しモードフラグがセットされているか否かを判断し、セットされていればS23でマーカ指示フラグをR&L(左右マーカの双方繰出し)にセットし、リセットならS24でマーカ指示フラグをリセットする。
【0055】
次に、図10は、マーカコントロールのフローチャートを示す。
【0056】
同図において、S31では植付部10が左右マーカ50の作動可能位置、すなわち下げ位置(又は植付位置)にあるか否かが判断されるが、これは、リフト角ポテンショメータ87(図6参照)により植付部10の昇降位置が検出されることで可能となる。そして、植付部10がマーカ50の作動可能位置にあれば、S32にてマーカ切換えモータ46の初期位置を検出するリミットスイッチ49(図3参照)がオンかオフかが判断される。ここでリミットスイッチ49がオンなら、S33で前回のリミットスイッチ49がオンかオフかを判断し、前回のリミットスイッチ49がオンならS34でマーカ切換えモータ46の駆動を停止し、S37に進む。
【0057】
このS37では、マーカ指示フラグが双方繰出しモード(R&L)にセットされているか否かが判断され、R&Lモード以外にセットされていれば、S38でマーカ指示フラグをリセットしてS41に進む。
【0058】
一方、前述したS33において、前回のリミットスイッチ49がオフなら、S35に進み、ここで植付部10に動力を伝達する植付クラッチの入切を判断し、「切」ならS41に進み、「入」ならS36で植付クラッチ入フラグをセットしてS41に進む。また、上述したS37において、マーカ指示フラグがR&Lモードにセットされていれば、S39でマーカ指示フラグを左(L)にセットすると共に、S40でマーカ切換えモータ46のOFFタイマをスタートさせてS41に進む。
【0059】
S41では、マーカ指示フラグがセットされているか否かを判断し、リセットならS44でマーカ切換えモータ46の駆動を停止し、セットされていればS42でマーカ切換えモータ46のOFFタイマが0か否かを判断する。このS42では、OFFタイマが0ならS43に進み、0でなければS44でマーカ切換えモータ46の駆動を停止する。
【0060】
更に、S43ではマーカ指示フラグが左(L)にセットされているか否かを判断し、左(L)以外にセットされていれば、S45でマーカ切換えモータ46を右(R)方向に駆動し、S46に進む。一方、S43でマーカ指示フラグが左(L)にセットされていれば、S49でマーカモータを左(L)方向に駆動し、更にS50でマーカ作動フラグをセットする。
【0061】
S46では、マーカ指示フラグがR&Lモードにセットされているか否かを判断し、R&Lモードにセットされていれば、S47でマーカモータ左右繰出し作動フラグをセットし、S46でR&Lモード以外にセットされていれば、S48でマーカ作動フラグをセットする。
【0062】
一方、前述したS31で、植付部10がマーカ50の作動可能位置にない場合は、S51に進み、ここで植付部10がマーカ収納位置(固定位置又は上げ位置)にあるか否かが判断され、植付部10がマーカ収納位置にあれば、S52に進み、以下、マーカ切換えモータ46の作動アーム48の定位置外れを検出した場合、自動的に作動アーム48の定位置ズレを補正する。しかし、植付部10がマーカ収納位置になければ、S44においてマーカ切換えモータ46の駆動を停止する。
【0063】
これは、作動アーム48が定位置(ホームポジション)にある場合は、リミットスイッチ49がオン状態であり、この状態からマーカ切換えモータ46が駆動してリミットスイッチ49がオフとなり、モータが1回転して作動アーム48が定位置に戻るとリミットスイッチ49が再びオンとなってマーカ切換えモータ46の駆動が停止するが、乗用田植機1の電源をオンにした初期状態において、作動アーム48が定位置ズレを起こしてリミットスイッチ49がオフとなっていると、マーカ50が作用する前にマーカ切換えモータ46の駆動が停止するおそれがあるため、自動的に定位置に復帰させて位置ズレを補正するものである。
【0064】
この定位置ズレの補正は、上述したS52で、油圧コントロールバルブ35の回動位置を制御するカム位置が「上げ」又は「固定」位置にあるか否かを判断し、「上げ」又は「固定」位置になければS44でマーカ切換えモータ46の駆動を停止し、「上げ」又は「固定」位置にあればS53に進む。このS53では、リミットスイッチ49がオンかオフかが判断され、オンならS44でマーカ切換えモータ46の駆動を停止し、オフならS54に進む。このS54では、マーカ指示フラグが左(L)にセットされているか否かを判断し、左(L)以外にセットされていればS55でマーカ切換えモータ46を右(R)方向に駆動し、左(L)にセットされていれば、S56にてマーカ切換えモータ46を左(L)方向に駆動する。
【0065】
図11は、マーカモニタ表示のフローチャートを示す。
【0066】
同図において、S61では、マーカモニタフラグがセットされているか否かが判断され、セットされていればS62に進み、リセット状態ならS68でマーカモニタを消灯する。S62では、オートマーカモードフラグがセットされているか否かが判断され、セットされていればS63において、更に方向切換フラグがセットされているか否かが判断され、リセットならS64でマーカモニタRを点灯し、セットされていればS65でマーカモニタLを点灯する。また、S62では、オートマーカモードフラグがリセット状態なら、S66でマーカ左右繰出しモードフラグがセットされているか否かが判断され、セットされているならS67でマーカモニタのR&Lを点灯し、リセットならS68でマーカモニタを消灯する。
【0067】
【発明の効果】
以上説明した通り、請求項1記載の発明によれば、モニタスイッチがオン作動状態にあるときにのみ、制御手段からマーカ切換え手段に向けてマーカ下降信号を送出可能とし、作業部の昇降に伴う左右マーカの交互の繰り出しや同時繰り出しを可能としたことにより、例えば移植作業時以外の路上走行時等にあるときは、モニタスイッチをオフにしておけば、たとえ左右マーカを作業部側に収納固定しておくのを忘れ、更に誤操作により作業部を下降させることがあったとしても、左右マーカが自動的に作業位置に繰り出されるのを防止することができる。
選択手段は、作業部が上昇状態にあるときのみ、選択操作可能であるので、例え、作業部の下降状態で選択手段を操作しても、非作業位置にあるマーカが下降繰り出されることはない。
【0068】
また、請求項2記載の発明によれば、モニタスイッチがオン作動状態にあり、かつ作業機クラッチが接続状態にあるときにのみ、自動モードによる前記左右マーカの交互の切換えを可能としたことで、例えば作業機クラッチを切断した状態では左右マーカのうちいずれか一方のマーカのみを作業位置に繰り出すことができ、よってこの繰り出した一方のマーカにより移植作業を伴わないライン引き作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された乗用田植機を模式的に表した側面図である。
【図2】ステアリングコラムに取り付けた手元操作レバーの外観斜視図である。
【図3】マーカ切換え機構の平面図である。
【図4】マーカ切換え機構の側面図である。
【図5】(a)(b)は、マーカ装置の概要を示す図である。
【図6】制御部の構成ブロック図である。
【図7】運転操作部の前面に配置された表示パネルの概要を示す図である。
【図8】マーカ制御におけるメインフローチャートを示す図である。
【図9】マーカ制御におけるモードセット部分のフローチャートを示す図である。
【図10】マーカ制御におけるマーカコントロール部分のフローチャートを示す図である。
【図11】マーカ制御におけるマーカモニタ表示部分のフローチャートを示す図である。
【図12】圃場でのマーカによる線引き作業例を示す図である。
【符号の説明】
1 乗用田植機
5 走行機体
7 座席シート
8 昇降リンク機構
9 運転席
10 植付部
13 ステアリングホイール
38 手元操作レバー
39 制御部
40 マーカ引上げ機構
46 マーカ切換えモータ
46a 軸
48 作動アーム
49 リミットスイッチ
50R,50L 左右マーカ
52 モード切換部
54 切換え操作部
54a 押釦スイッチ
58 切換えレバー
59 舌片
62 カム
67 アーム
68 支点軸
88 クラッチモータポテンショメータ
90 植付スイッチ
Claims (2)
- 運転席を有する走行機体にリンク機構を介して作業部を昇降自在に支持し、かつ圃場面に走行機体の走行基準線を引く左右マーカを備えた移植機において、
前記作業部の上昇に伴い、作業位置に下降繰り出された前記左右マーカを非作業位置に引上げる引上げ手段と、
前記作業部の下降に伴い、前記左右マーカのいずれか一方を作業位置に下降繰り出すマーカ切換え手段と、
該マーカ切換え手段にマーカ下降信号を送出する制御手段と、
前記作業部の各種モニタや警報を作動状態にするモニタスイッチと、
前記マーカ切換え手段により作業位置に下降繰り出される一方のマーカを選択操作する選択手段と、を備え、
前記制御手段は、前記モニタスイッチがオン作動状態にあるときにのみ、前記マーカ切換え手段に向けてマーカ下降信号を送出可能とすると共に、前記作業部が上昇状態にあるときのみ前記選択手段による選択操作信号を受付可能とした、
ことを特徴とする移植機のマーカ制御装置。 - 前記左右マーカの繰り出しを交互に切換える自動モードと、前記左右マーカを同時に繰り出す双方モードと、前記左右マーカの繰り出しを停止する停止モードと、の各種モードに選択的に切換え可能なモード切換え部を有し、
前記モニタスイッチがオン作動状態にあり、かつ前記作業部に動力を伝達する作業機クラッチが接続状態にあるときにのみ、前記自動モードによる前記左右マーカの交互の切換えを可能とした、
ことを特徴とする請求項1記載の移植機のマーカ制御装置。
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