JP3656838B2 - 切削工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超硬合金基材を持つ切削工具に関するものである。特に、ホルダーヘのクランプ時における着座面の衝撃吸収性を改善し、切削時の工具のぶれを抑えて耐欠損性を改善できる切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、超硬合金製の切削工具が広く知られ、切削工具の使用環境がますます苛酷になるのに伴い、超硬合金基材の表面に化学蒸着法や物理蒸着法で各種セラミックスの硬質層を形成した切削工具も実用化されている。特に、切削チップをホルダに固定して切削を行うスローアウェイタイプの切削チップが広く用いられている。これらの工具寿命を左右する重要な因子には、工作機械の剛性やホルダーのクランプ方式が挙げられると考えられており、工作機械やホルダーの観点からもいろいろな検討、改善がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、工作機械の剛性を上げたり、ホルダーの改善をしても、断続切削等の過酷な切削環境下においては、チップのクランプ着座面に負担がかかり、微少チッピングが生じたり、クランプ着座面が塑性変形を起こすことがある。それに伴って刃先部にぶれが生じ、チップの損傷を引き起こすという問題が生じている。
【0004】
また、現在、基材表面にAl含有被覆層を設けた工具が広範囲で使用されているが、このAl含有被覆層はクランプ時に欠損が起こりやすくなるという問題点がある。この場合も、やはり被覆層の欠損に伴って刃先部にぶれが生じる要因の一つとなる。
【0005】
従って、本発明の主目的は、優れた耐欠損性を有し、クランプ部に発生する欠損を抑制することで刃先部のぶれを防止して長寿命を実現できる切削工具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、切削工具の部位によって脱β層の厚みをコントロールすることで、上記の目的を達成する。
【0007】
すなわち、本発明切削工具は、表面に脱β層を有すると共に、取付孔が設けられた超硬合金の切削工具である。すくい面から逃げ面方向に沿って60μmを超えて200μm以内の範囲を第1領域とし、この第1領域における脱β層の平均厚みをa、逃げ面からすくい面方向に沿って80μmを超えて500μm以内の範囲を第2領域とし、この第2領域における脱β層の平均厚みをcとするとき、y>aかつy>cとなることを特徴とする。
【0008】
本発明者らは、切削寿命安定性にとって重要な因子であるチップとホルダーとの固定に対する安定性を向上するために、様々な検討を行ってきた。
【0009】
通常、脱β層を形成する超硬合金を焼結した場合、脱β層は基材表層に均一な厚みで形成されることが知られている。この脱β層は、Coリッチの靭性に富んだ層であり、切削時に被削材との間に生じる衝撃を吸収し、欠損を抑制する機能を果たしている。しかし、脱β層が厚すぎると、切削時に十分な硬度が得られないため、弾性変形を引き起こし、ついには塑性変形による亀裂から欠損に至る。また、脱β層が薄い、もしくは無いと、切削時の衝撃力に耐えきれず、チッピングが生じ、欠損に至るといった特徴を有している。
【0010】
本発明者らは、以上に示した脱β層の特徴に着目し、切削工具の部位による脱β層の厚みをコントロールすることで、切削性能(耐摩耗性、耐欠損性)と寿命安定性とを両立させることに成功した。以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0011】
この発明において、刃先稜線部は図1に示す通りである。すなわち、刃先断面において、すくい面1と逃げ面2との稜線で切刃を構成する部分を刃先稜線部Bとする。これら逃げ面、刃先稜線部、すくい面の各部の表面に脱β層3が形成されている。
【0012】
刃先稜線部Bは、刃先のチッピング等を防止するために施されるエッジホーニング部を含む。エッジホーニングには、丸ホーニングやチャンファーホーニングの他、チャンファーホーニングに丸ホーニングを組み合わせたコンビネーションホーニングがある。通常、エッジホーニング部は脱β層が除去されている。
【0013】
(取付孔の内壁部Yにおける脱β層の厚みy)
取付孔の内壁部はチップをホルダに固定するためのボルトが貫通される個所であり、切削時に生じる衝撃を吸収して欠損を抑制する必要がある。一方、切削抵抗の作用する刃先稜線部周辺は耐欠損性だけでなく高い耐摩耗性も要求される。そこで、本発明では、刃先稜線部周辺の脱β層の厚みを取付孔内壁部の脱β層の厚みよりも薄くしてホルダへのチャッキングに伴う取付孔周辺での変形・欠損を抑制すると共に、刃先稜線部の耐摩耗性も両立している。
【0014】
ただし、内壁部Yにおける脱β層が厚すぎると切削時に十分な硬度が得られず、弾性変形を引き起こし、ついには塑性変形による亀裂から欠損に至る。そのため、ホルダーとのチャッキング性を安定化させる観点から、取付孔内壁部の脱β層の厚みは10<y<50μmが好ましい。脱β層の厚みがy≦10であると、切削時にホルダーとのチャッキング部で衝撃が吸収しきれずに負荷がかかり、取付孔上部付近に欠損が生じることから著しく切削寿命が劣る。逆にy≧50であると、チャッキング部への断続的な負荷により、弾性変形を生じて固定があまくなり、チップが微少移動することより切削寿命が短くなる。
【0015】
(逃げ面側の第1領域における脱β層の厚みa)
第1領域は、逃げ面側においても実質的に切削抵抗が作用する範囲を基準に、すくい面から逃げ面に沿って60μmを超えて200μm以内の範囲とした。すくい面から逃げ面に沿った距離は、図1に示す距離Aとする。従って、第1領域は、距離Aが60μmの地点と、距離Aが200μmの地点との差を言う。
【0016】
この第1領域における脱β層の厚みは、5≦a<25μmであることが好ましい。脱β層の厚みがa≧25である場合、十分な耐摩耗性を得ることが難しく、逆にa<5であると、逃げ面側の靭性が低下するため、切刃稜線部から逃げ面にかけて微少チッピングが発生する。
【0017】
また、第1領域における脱β層の厚みは、y−a≧2、特にy−a≧5であることが好適である。取付孔内壁部における脱β層の厚みとの関係が前記の関係式を満たすことで、耐摩耗性と耐クレータ性およびクランプ性が向上する。
【0018】
(すくい面側の第2領域における脱β層の厚みc)
第2領域は、すくい面側においても実質的に切削抵抗が作用して切り屑が接触する範囲を基準に、逃げ面からすくい面に沿って80μmを超えて500μm以内の範囲とした。逃げ面からすくい面に沿った距離は、図1に示す距離Cを示す。従って、第2領域は、距離Cが80μmの地点と、距離Cが500μmの地点との差を言う。
【0019】
この第2領域における脱β層の厚みは、5<c<20μmであることが好ましい。脱β層の厚みがc<5である場合、逃げ面と同様、母材の靭性が低下することから切削時にすくい面に欠けが生じ易い。逆にc>20であると、母材の弾性変形によって亀裂が発生したり、耐クレータ性の劣化が顕著になる。
【0020】
この第2領域の脱β層の厚みcは第1領域のその厚みaよりも薄いこと、つまりa>cであることが好ましい。c≧aであると、逃げ面摩耗より母材の欠損が生じ易く、すくい面側の耐クレータ性が悪くなって切削寿命が短くなる。
【0021】
また、第2領域における脱β層の厚みは、y−c≧2、特にy−c≧5であることが好適である。取付孔内壁部における脱β層の厚みとの関係が前記の関係式を満たすことで、耐摩耗性と耐クレータ性およびクランプ性が向上する。
【0022】
(刃先稜線部の脱β層の厚みb)
刃先稜線部の脱β層の厚みはb=0であることが好ましい。b≠0であると、切削時に刃先稜線部の耐摩耗性が維持できなくなることより、異常摩耗の原因となる。通常、刃先稜線部の脱β層は刃先処理を施す際に除去される。
【0023】
(脱β層の厚み調整方法)
脱β層のチップ全体の厚み調整は焼結条件により調整することができる。例えば、真空雰囲気下または一定圧力の窒素雰囲気下で1350〜1500℃にて数十分〜1時間前後程度の範囲とし、組成、真空度、窒素圧力、保持時間を制御することで脱β層の厚みを調整できる。
【0024】
また、チップの各部における脱β層の厚みを調整するには研摩が好適である。前記焼結条件の制御による脱β層の厚み調整はチップ全体にわたっての厚さ制御しかできないが、研摩によれば工具の部位ごとに厚さ制御を行うことができる。より具体的な研摩方法としては、ブラシやブラストにより工具の各部位を選択的に研摩することが挙げられる。
【0025】
なお、刃先処理の方法として、焼結後の母材にバレル研摩を施すことが知られている。しかし、刃先処理で行われるバレル研摩では平面に対する研削力がほとんどなく、刃先部分のみに研摩が行われ、工具の特定の部位のみ選択的に脱β層の厚みを調整することは難しい。
【0026】
(刃先処理量との関係)
すくい面から見た刃先稜線部のすくい面側境界部からの刃先処理量をα、逃げ面から見た刃先稜線部の逃げ面側境界部からの刃先処理量をγとするとき(図1参照)、αとγ(単位はμm)の関係が1≦α/γ≦2(40≦α≦80,40≦γ≦60)であることが好ましい。α/γ<1であると、逃げ面側の処理量が大きくなることから、耐摩耗性が著しく低下する。また、α/γ>2であると、切れ刃強度が低下するため耐欠損性が著しく低下し、切削時に刃先稜線部の欠けによる損傷が増加するためである。
【0027】
(切削工具の母材)
本発明工具の母材は超硬合金とする。すなわち、WCを主成分とする硬質相と、鉄族金属からなる結合相とからなる超硬合金とする。硬質相には、周期律表のIVa,Va,VIa族金属の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物の少なくとも一種を適量含有させる。
【0028】
(被覆層)
本発明工具は母材上に少なくとも一層の硬質層を被覆することが好ましい。硬質層を設けることで高速切削等の過酷な切削環境においても優れた切削性能を示す。この硬質層は、周期律表のIVa,Va,VIa族金属とAlおよびSiよりなる群から選択される少なくとも一種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素よりなる群から選択される少なくとも一種の非金属元素との化合物からなるものが好適である。より具体的には、TiC、TiN、TiCN、TiB2、TiBN、ZrC、ZrO2、HfC、HfN、Al2O3、SiC、SiO2、Si3N4などが挙げられる。
【0029】
特に、硬質層にアルミナ(Al2O3)層を含むことが好ましい。アルミナ層は耐熱性を向上させ、耐クレータ性を向上させるため、高速のドライ切削のような刃先部が高温になる過酷な切削環境においても、優れた切削性能を有する。また、アルミナは鋼との反応性が低く溶着が生じ難いため、溶着から生じる被覆層の剥離を効果的に抑制できる。このアルミナ層は実質的にα型結晶形態であることが好適である。α型アルミナはκ型アルミナに比べて高温安定型の結晶構造であり、一層耐摩耗性に優れる。
【0030】
硬質層の平均総厚みは3μm以上が好ましい。被覆層の厚みが3μm未満では被覆層を形成することによる耐摩耗性の改善効果が少ないからである。特に、3μm以上のアルミナ層を設けることで耐熱性が著しく向上し、耐クレータ摩耗性が向上する。
【0031】
このような被覆層は公知のCVD法またはPVD法により形成すれば良い。
【0032】
(工具の用途)
本発明切削工具の具体的用途例には、エンドミル、切削用のチップ、フライス用のチップ、旋削用のチップなどが挙げられる。
【0033】
(被削材)
本発明切削工具が特に有効な被削材としては、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼などの鋼一般の他、特に溶着の生じやすいダクタイル鋳鉄、ステンレスなどが挙げられる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(試験例1)
WC−2%TaC−2%TiC−3%ZrCN−6%Co(いずれも重量%)からなる原料粉末をボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、ISO・CNMG120408の形状の圧粉体にプレス成型し、真空雰囲気中で焼結温度1450℃、保持時間1時間または5〜50Torrの窒素雰囲気下で焼結を行なって母材を作製した。次に、母材の刃先部全体に刃先処理としてホーニング処理を施し、この後、チップの部位ごとに研摩処理することで脱β層の研磨処理を施した。この刃先処理の処理量比α/γは1.5とした。チップにおける刃先稜線部、第1領域、第2領域、取付孔内壁部の各部位は図1に示した通りである。
【0035】
このようにして作製した母材の各部における脱β層の厚さを表1に示す。表1におけるa、cは、いずれも第1領域の範囲をすくい面から逃げ面方向に沿って60μm超200μm以内、第2領域の範囲を逃げ面からすくい面方向に沿って80μm超500μm以内とした場合の脱β層の平均厚みを示している。刃先稜線部の脱β層の厚みは全て0である。
【0036】
【表1】
【0037】
上述のように作製したCNMG120408チップに刃先処理を施し、次の切削条件で一定時間(<1min)断続切削を行うことで耐欠損性の試験を行った。その結果を表2に示す。
被削材:SCM435 溝付き丸棒
速度V:80m/min
送り量f:0.18mm/rev
切り込み量d:2.0mm
切削方式:乾式
【0038】
【表2】
【0039】
その結果、表2から明らかなように、本発明切削工具を用いて切削を行った場合、取付孔上部のチッピングが抑制され、刃先部の耐欠損性が向上していることがわかる。特に、y>a、y>cの少なくとも一方を満たさない比較例は、短時間で欠損もしくは定時間削ったチップの刃先部、取付孔上部を観察した際にチッピングが生じており明らかな差が確認された。
【0040】
さらに、表1の母材上に通常のCVD法(従来と同様の所定の温度、ガス、圧力条件)により硬質層を被覆する。硬質層は、最内側から順にTiN(0.5)、TiCN(10)、Al2O3(3.0)、TiN(1.0)とした。括弧内の数値は各層の厚みで単位はいずれもμmである。
【0041】
上記のチップを用いて、以下の表3に示す条件にて連続切削試験を行い、逃げ面の摩耗量とすくい面のクレータ摩耗量の測定及びチッピングの有無を調べた。また、以下の表4に示す条件で断続切削を行って、欠損までの時間を測定した。これらの結果を表5に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
表5から明らかなように、本発明切削工具を用いて切削を行った場合、優れた耐逃げ面摩耗性、耐クレータ摩耗性及び耐欠損性、耐チッピング性が得られる。このため、切削工具の寿命を安定して飛躍的に向上させることが可能である。また、試験後、各試料を観察してみると、y>a、y>cの少なくとも一方を満たさない比較例は、取付孔上縁部にもチッピングや欠損が生じていたが、実施例は取付孔上縁部にも全くチッピングや欠損が生じていなかった。これらのことから、y>a、y>cの双方を満たす工具が好ましく、さらにはa>cを満たす工具が好ましいことがわかる。
【0046】
(試験例2)
次に、さらに詳しくy、a、cの厚みの関係について調べてみた。
試験例1と同様組成・方法により複数の母材を作製し、下記の被覆層を形成したチップを得た。得られた試料を表6に示す。表6において、硬質層に酸化アルミニウム(Al2O3)を含むものは、試料23を除いてα型酸化アルミニウムである。
【0047】
(硬質層)
括弧内の数値は各層の厚さで単位はいずれもμmである。また、左側から右側に向かって内層から外層への積層順を示している。
▲1▼ TiN(0.5)、TiCN(10)、Al2O3(3.0)、TiN(1.0) 総厚み 14.5
▲2▼ TiN(0.5)、ZrCN(10)、Si02(3.0)、TiN(1.0) 総厚み 14.5
▲3▼ TiN(0.5)、TiCN(10)、Al2O3 ※(3.0)、TiN(1.0) 総厚み 14.5
▲4▼ TiN(0.5)、TiCN(1.0)、Al2O3(1.0)、TiN(0.2) 総厚み 2.7
▲5▼ TiN(0.5)、TiCN(1.5)、Al2O3(1.0)、TiN(0.5) 総厚み 3.5
Al2O3 ※:κ型酸化アルミニウム
【0048】
(刃先処理量)
すくい面から見た刃先稜線部のすくい面側境界部からの刃先処理量:α=80μm
逃げ面から見た刃先稜線部の逃げ面側境界部からの刃先処理量:γ=40μm
α/γ=2
【0049】
【表6】
【0050】
表6に示す試料チップを用いて、試験例1と同様に上記表3に示す条件にて連続切削試験を行い、逃げ面の摩耗量とすくい面のクレータ摩耗量の測定及びチッピングの有無を調べた。また、試験例1と同様に上記表4に示す条件で断続切削を行って、欠損までの時間を測定した。これらの結果を表7に示す。
【0051】
【表7】
【0052】
表6及び7から明らかなように、y≧a+2、y≧c+2、かつ10<y<50、5≦a<25、5<c<20のときに、より優れた耐逃げ面摩耗性、耐クレータ摩耗性、及び耐欠損性、耐チッピング性が得られる。特に、この試験を通して以下のことが分かった。
【0053】
(1) 10<yであると、耐欠損性により優れる。
(2) y<50であると、ホルダーに対するチャッキング性により優れる。
(3) 5≦aであると、微少チッピングが生じにくく、耐チッピング性により優れる。
(4) a<25であると、耐摩耗性により優れる。
(5) 5<cであると、すくい面に欠けが生じにくく、耐欠損性により優れる。
(6) c<20であると、亀裂が生じにくく、耐クレータ摩耗性により優れる。
(7) a>cであると、耐欠損性及び耐クレータ摩耗性により優れる。
【0054】
硬質層にκ型酸化アルミニウム膜を具える試料3-23よりも、α型酸化アルミニウム膜を具える試料3-11の方がより耐クレータ摩耗性により優れることが確認できた。このことから、酸化アルミニウム膜は、α型がより望ましいことが分かる。
【0055】
硬質層の総厚さが2.7μmである試料3-24よりも、総厚さが3.5μmである試料3-25の方が耐クレータ摩耗性により優れることが確認できた。このことから、硬質層の総厚さは、3.0μm以上がより望ましいことが分かる。
【0056】
(試験例3)
また、表6の試料11においてすくい面から見た刃先稜線部のすくい面側境界部からの刃先量αと逃げ面から見た刃先稜線部の逃げ面側境界部からの刃先量γとを変えて上記と同様に試験を行った。その結果、α/γ≧1であると、耐摩耗性により優れることが確認された。また、α/γ≦2であると、耐欠損性により優れることが確認された。特に、40μm≦α≦80μm、40μm≦γ≦60μmの場合が好ましかった。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明切削工具によれば、脱β層の厚さを工具の部位に応じて調整し、刃先稜線部周辺の脱β層の厚さと取付孔における脱β層の厚さとの関係を特定することで、優れた耐欠損性を有するだけでなく、チップ装着時の着座面の衝撃吸収性を向上させることで、さらに安定した寿命を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明切削工具の縦断面図である。
【符号の説明】
1 すくい面
2 逃げ面
3 脱β層
Claims (8)
- 表面に脱β層を有すると共に、取付孔が設けられた超硬合金の切削工具であって、
逃げ面には、第1領域を有し、この第1領域は、すくい面から逃げ面方向に沿って60μmを超えて200μm以内の範囲の領域であり、
すくい面には、第2領域を有し、この第2領域は、逃げ面からすくい面方向に沿って80μmを超えて500μm以内の範囲の領域であり、
前記取付孔の内壁部Yにおける脱β層の平均厚みをy、
前記第1領域における脱β層の平均厚みをa、
前記第2領域における脱β層の平均厚みをcとするとき、
y>aかつy>cとなることを特徴とする切削工具。 - 刃先稜線部Bにおける脱β層の厚みをbとするとき、
各部位における脱β層の厚みが、10<y<50,5≦a<25,5<c<20(単位はμm)であり、
a、b、c、yの関係がy−a≧2,y−c≧2,b=0,a>cを満たすことを特徴とする請求項1に記載の切削工具。 - y−a≧5,y−c≧5,b=0,a>c(10<y<50,5≦a<25,5<c<20)の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の切削工具。
- 刃先には、刃先処理としてホーニング処理が施され、
前記刃先処理が施された領域において、すくい面から見た刃先稜線部のすくい面側境界部から逃げ面までの距離を刃先処理量αとし、
逃げ面から見た刃先稜線部の逃げ面側境界部からすくい面までの距離を刃先処理量γとするとき、
αとγ(単位はμm)の関係が1≦α/γ≦2(40≦α≦80,40≦γ≦60)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の切削工具。 - さらに工具表面に少なくとも一層の硬質層が被覆され、
この硬質層は、周期律表のIVa,Va,VIa族金属とAlおよびSiよりなる群から選択される少なくとも一種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素よりなる群から選択される少なくとも一種の非金属元素との化合物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の切削工具。 - 硬質層にアルミナ層を含むことを特徴とする請求項5に記載の切削工具。
- アルミナ層が実質的にα型結晶形態であることを特徴とする請求項6に記載の切削工具。
- 硬質層の平均総厚みが3μm以上であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の切削工具。
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