JP3984128B2 - 切削工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結硬質合金母材を有する切削工具に関するものである。特に、ホルダに固定する際の強度と耐摩耗性とを改善して切削時の工具のぶれを抑えることで、工具寿命を向上することができる切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、焼結硬質合金製の切削工具が広く知られ、切削工具の使用環境がますます過酷になるのに伴い、焼結硬質合金母材の表面に化学蒸着法や物理蒸着法で各種セラミックスの硬質層を形成した切削工具も実用化されている。特に、切削チップをホルダに固定して切削を行うスローアウェイタイプ(刃先交換型)の切削チップが広く用いられている。これらの工具寿命を左右する重要な因子には、工作機械の剛性やホルダのクランプ方式が挙げられると考えられており、工作機械やホルダの観点からもいろいろな検討、改善がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、工作機械の剛性を上げたり、ホルダの改善をしても、断続切削などの過酷な切削環境下では、チップにおいてクランプレバーやピンとの接触部に負担がかかり、微少チッピングが生じたり、上記接触部が塑性変形を起こすことがある。それに伴って刃先部にぶれが生じたり、チップの割損を引き起こしたりするという問題が生じている。
【0004】
特に、精密加工用工具、仕上げ加工用工具では、刃先部に生じた微細なぶれにより、高い精度、高い加工面品位が得られにくい。そのため、クランプ性は、重要な問題である。
【0005】
従って、本発明の主目的は、優れた切削性能(耐摩耗性、耐欠損性)を有すると共に、ホルダへのチャッキング性に優れた切削工具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、工具表面部に工具内部よりも高硬度な表面硬化層を具え、この表面硬化層の厚みを切削工具の部位によって制御することで、上記の目的を達成する。
【0007】
すなわち、本発明は、取付孔が設けられた焼結硬質合金からなる切削工具であって、焼結硬質合金からなる切削工具の最表面から深さ1mmの位置のビッカース硬度をxとしたとき、ビッカース硬度が1.1x以上で厚さ1μm以上の表面硬化層を上記工具表面部に具える。そして、取付孔の内壁部において、孔の軸と直交方向にある内壁部の中心線を中心として孔の軸方向に沿って500μmの範囲を領域Yとし、この領域Yにおける表面硬化層の平均厚みをy、すくい面からみた刃先稜線部のすくい面側境界部からの刃先処理量をα、逃げ面からみた刃先稜線部の逃げ面境界部からの刃先処理量をγとし、すくい面から逃げ面方向に沿って距離Aにおいてγ<A≦200μmの範囲を第1領域とし、この第1領域における表面硬化層の平均厚みをa、逃げ面からすくい面方向に沿って距離Cにおいてα<C≦500μmの範囲を第2領域とし、この第2領域における表面硬化層の平均厚みをcとするとき、以下を満たすことを特徴とする。
第1領域(γ<A≦200μm)の全範囲においてy>a>0、かつ第2領域(α<C≦500μm)の全範囲においてy>c>0
【0008】
本発明者らは、切削寿命を安定させるために重要な因子であるチップとホルダとの固定に対する安定性を向上するために、様々な検討を行ってきた。そして、工具表面部に、工具内部(焼結硬質合金からなる工具の最表面から深さ1mmの位置)よりも結合相が少なく高硬度な表面硬化層(上記工具内部のビッカース硬度をxとしたとき、ビッカース硬度1.1x以上で、厚さ1μm以上の層)を具えることで、切削性能と切削時のクランプ性との双方を向上させることができるとの知見を得た。特に、上記表面硬化層を工具の部位によって制御する、具体的には、取付孔の内壁部の表面部に表面硬化層をより厚く具えることで、工具においてホルダのクランプレバーやピンとの接触部の耐摩耗性及び耐塑性変形性を向上して、ホルダとの固定に対する安定性を高めて刃先部のぶれを抑制し、安定した寿命が得られるとの知見を得た。一方、刃先部に表面硬化層を具えることで、より高い耐摩耗性を維持することができ、優れた切削性能を有することが可能であるとの知見を得た。
【0009】
本発明者らは、以上の知見に基づき、切削工具の部位による表面硬化層の厚みをコントロールするべく、本発明を規定するものである。以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0010】
本発明において刃先稜線部とは、図1に示す通りである。即ち、刃先断面において、すくい面1と逃げ面2との稜線で切刃を構成する部分を刃先稜線部Bとする。そして、本発明では、すくい面1、逃げ面2、取付孔4の内壁部4aなど各部位の表面部に表面硬化層3が形成されている。
【0011】
刃先稜線部Bは、刃先のチッピングなどを防止するために施されるエッジホーニング部を含む。エッジホーニングには、丸ホーニングやチャンファーホーニングの他、チャンファーホーニングに丸ホーニングを組み合わせたコンビネーションホーニングがある。通常、エッジホーニング部は表面硬化層が除去されている。
【0012】
(取付孔の内壁部の領域Yにおける表面硬化層の平均厚みy)
取付孔の内壁部は、チップをホルダに固定するためのクランプレバーやピンにより押え付けられる個所であり、上記レバーやピンに接触することによる摩耗や切削時の衝撃による変形を抑制する必要がある。また、切削抵抗が作用する刃先稜線部周辺にも、高い耐摩耗性が要求される。そこで、本発明では、取付孔の内壁部の領域Yにおける表面硬化層の平均厚みyを刃先稜線部周辺(第1領域(γ<A≦200μm)の全範囲かつ第2領域(α<C≦500μm)の全範囲)の表面硬化層の平均厚みa、cをよりも厚くして(y>aかつy>c)、ホルダへのチャッキングに伴う取付孔周辺での摩耗や変形を抑制すると共に、刃先稜線部の耐摩耗性も両立している。また、工具表面に物理的蒸着法にて硬質層を形成する場合、取付孔の内壁部は、コーティングされにくい。そのため、硬質層形成による効果を生じにくいことからも、領域Yの表面硬化層を厚くする。このように取付孔の内壁部の領域Yにおける表面硬化層の厚みを厚くすることで、耐摩耗性や耐塑性変形性に優れ、ホルダに安定して固定されて刃先部のぶれを抑制することから、刃先稜線部の耐欠損性をも向上させることができる。なお、領域Yとは、図1に示すように取付孔4の内壁部4aにおいて、孔4の軸5と直交方向にある内壁部4aの中心線6を中心として孔4の軸方向に500μmの範囲とする。即ち、領域Yの境界は、中心線6から図1において上下方向に距離250μmの各地点である。
【0013】
特に、ホルダとのチャッキング性を安定化させる観点から、取付孔の内壁部の領域Yにおける表面硬化層の平均厚みyは、5μm<y<40μmが好ましい。内壁部の領域Yにおける表面硬化層が薄すぎる、具体的にはy≦5μmであると、切削時、内壁部においてレバーやピンとの接触部が摩耗することで、切削の際に微小なぶれが生じ易くなる。一方、内壁部の領域Yにおける表面硬化層が厚すぎる、具体的には40μm≦yであると、内壁部においてレバーやピンとの接触部の靭性が不足して、切削時に上記接触部に微小チッピングを生じ、切削における精度が悪くなったり、工具が割損したりする恐れがある。
【0014】
(逃げ面側の第1領域における表面硬化層の平均厚みa)
第1領域は、図1に示すようにすくい面1から逃げ面2方向に沿って距離Aがγμm超200μm以内の範囲の領域、即ち、距離Aがγμm超の地点から距離Aが200μmの地点までの間の領域である。そして、γ<A≦200μmの全範囲において表面硬化層の平均厚みaはy>a>0を満たすものとする。y≦a、即ちaがyよりも大きいと、刃先部の逃げ面側は、耐摩耗性に優れるものの切削時の耐欠損性が不足して、微小チッピングが生じるためである。
【0015】
(すくい面側の第2領域における表面硬化層の平均厚みc)
第2領域は、図1に示すように逃げ面2からすくい面1方向に沿って距離Cがαμm超500μm以内の範囲の領域、即ち、距離Cがαμm超の地点から距離Cが500μmの地点までの間の領域である。そして、α<C≦500μmの全範囲において、表面硬化層の平均厚みcはy>c>0を満たすものとする。y≦c、即ちcがyよりも大きいと、刃先部のすくい面側は、靭性が不足して、すくい面チッピングを生じるためである。
【0016】
以上から、本発明では、刃先部付近の第1領域における表面硬化層の平均厚みa及び第2領域における表面硬化層の平均厚みcは、取付孔の内壁部における領域Yの表面硬化層の平均厚みyよりも共に小さいことが必要である。なお、本発明において各平均厚みは、以下のように求めるとよい。本発明切削工具の断面を1000倍の光学顕微鏡で観察し、規定範囲内の表面硬化層の厚みを幅1μm刻みで測定し、積算した厚みを範囲長さ(例えば、第1領域では、A=200-γ、第2領域では、C=500-α)で割る。測定点数が多いほど好ましいが、簡便に求める場合は、測定点数を少なくしてもよい。例えば、規定範囲を5分割して、両端と内部4点における表面硬化層の厚みを測定し、積算した6点の厚みを測定点数6で割ってもよい。
【0017】
(平均厚みa、b、yの関係)
より好ましくは、a>cであり、刃先処理部(刃先稜線部)を除いた切削性能に関与する箇所、具体的には、60μm≦A≦200μmの全範囲かつ70μm≦C≦500μmの全範囲において、3μm<a≦35μm、3μm≦c<35μmを満たすことである。このとき、第1領域は、逃げ面側において、実質的に切削抵抗が作用する範囲を基準として、すくい面から逃げ面方向に沿って60μm以上200μm以内の範囲とする。即ち、第1領域は、距離Aが60μmの地点から距離Aが200μmの地点までの間の領域とする。第2領域は、すくい面側において、実質的に切削抵抗が作用して切り屑が接触する範囲を基準に、逃げ面からすくい面方向に沿って70μm以上500μm以内の範囲とする。即ち、第2領域は、距離Cが70μmの地点から距離Cが500μmの地点までの間の領域とする。
【0018】
逃げ面では、耐摩耗性を必要とし、すくい面では、破壊靱性を必要とする。この両者のバランスを考慮すると、実験的に3μm<a≦35μm、3μm≦c<35μmが望ましいとの知見を得て、本発明を規定するものである。
【0019】
また、y≧2+a、y>2+cであることが好適である。刃先処理部(刃先稜線部)を除いた切削性能に関与する箇所において表面硬化層の平均厚みa、cが、取付孔の内壁部における領域Yの平均厚みyに関する上記関係式を満たすことで、優れたクランプ性と切削性能を併せ持つことができる。
【0020】
(刃先稜線部Bにおける表面硬化層の厚みb)
刃先稜線部の任意の点における表面硬化層の厚みbは、少なくとも一部がb=0であることが好ましい。本発明者らは、被削材と実際に接触する刃先稜線部には、表面硬化層がない方が切削寿命の延命化が図れるとの知見を得た。通常、刃先稜線部の表面硬化層は、刃先処理を施すことによって除去される。
【0021】
(取付孔の開口部側の領域Zにおける表面硬化層の平均厚みz)
領域Zは、図1に示すように取付孔4の開口部4aから孔4の軸方向に沿って200μmの範囲とする。そして、領域Zの表面硬化層の平均厚みzは、z>yを満たすことが好ましい。即ち、取付孔4の開口部4aの平均厚みzは、内壁部の中央部(領域Y)の平均厚みyよりも大きいことが好ましい。工具のホルダへの固定は、通常、取付孔の内壁部の中央部をクランプレバーやピンで押え付けることで行われる。ここで、切削による疲労亀裂が上記レバーやピンとの接触部に入った場合、開口部側の表面硬化層の厚みが厚いと、耐摩耗性、耐塑性変形性に優れることで、亀裂の進展が抑制され、より安定してホルダに固定されるため、刃先部のぶれを抑え、切削寿命の向上につながる。
【0022】
(表面硬化層の厚み調整方法)
表面硬化層のチップ全体の厚み調整は、基材の組成や、焼結雰囲気ガス、昇温速度、保持温度、冷却速度などの焼結条件などにより制御することが可能である。具体例は、後述する。
【0023】
また、チップの各部位における表面硬化層の厚みを調整するには、各部位を選択的に研摩することが好適である。上記組成や通常の焼結条件の制御による表面硬化層の厚み調整は、チップ全体に亘る厚さの制御しかできないが、研摩や焼結条件の工夫によれば工具の部位ごとに厚さ制御を行うことができる。より具体的な研摩方法としては、ブラシやブラストによる方法が挙げられる。焼結条件の工夫は、部位によるガス流量の制御や部位による冷却速度の最適化などが挙げられる。
【0024】
なお、刃先処理の方法として、焼結後の母材にバレル研摩を施すことが知られている。しかし、刃先処理で行われるバレル研摩では、平面に対する研削力がほとんどなく、刃先部分のみに研摩が行われ、工具の特定の部位のみ選択的に表面硬化層の厚みを調整することは難しい。
【0025】
(刃先処理量との関係)
刃先処理量αと刃先処理量γは、1≦α/γ≦2(10≦α<70、6≦γ≦55、単位はμm)であることが好ましい。α/γ<1であると、逃げ面側の処理量が大きくなることから、耐摩耗性が著しく低下する。また、α/γ>2であると、切れ刃強度が低下するため耐欠損性が著しく低下し、切削時に刃先稜線部の欠けによる損傷が増加するためである。
【0026】
(切削工具の母材)
本発明工具の母材は焼結硬質合金とする。具体的には、70重量%以上95重量%以下の硬質相と、残部が結合相及び不可避的不純物からなり、硬質相は、周期律表4a、5a、6a族の炭化物、窒化物及び炭窒化物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなり、結合相は、鉄系金属よりなる群から選択される少なくとも1種の元素からなるものとする。
【0027】
(硬質層)
本発明工具は、工具表面(母材上)に少なくとも一層の硬質層を被覆することが好ましい。硬質層を設けることで高速切削などの過酷な切削環境においても優れた切削性能を示す。また、硬質層を設けることで、耐摩耗性、耐クレータ性を更に向上させることができる。このような硬質層は、周期律表4a、5a、6a族金属、Al及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素よりなる群から選択される少なくとも1種の非金属元素との化合物からなるものが好適である。より具体的には、TiC、TiN、TiCN、TiSiN、TiAlN、TiB2、TiBN、ZrC、ZrO2、HfC、HfN、Al2O3、SiC、SiO2、Si3N4などが挙げられる。
【0028】
硬質層の平均総厚みは1.5μm以上が好ましい。硬質層の厚みが1.5μm未満では、コーティングすることによる耐摩耗性の改善効果が少ないからである。このような硬質層は、公知のCVD法またはPVD法により形成すればよい。
【0029】
(工具の用途)
本発明切削工具の具体的用途例には、エンドミル、切削用のチップ、フライス用のチップ、旋削用のチップなどの刃先交換型チップが挙げられる。
【0030】
(被削材)
本発明切削工具が特に有効な被削材としては、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼などの鋼一般の他、特に溶着の生じやすいダクタイル鋳鉄、ステンレスなどが挙げられる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
表面硬化層を具える焼結硬質合金からなる切削工具を作成してみた。表1に組成、焼結条件を示す。本例では、表1に示すA〜Cの組成の材料粉末をISO・CNMG120408の形状にプレス成形した。その後、表1に示す各保持温度(焼結温度)まで、表1に示す各雰囲気ガス下で各昇温速度にて昇温することで焼結を行い、切削工具を得た。また、いずれの工具も、保持中及び冷却中の雰囲気は、5Torr(666Pa)のN2中とした。
【0032】
【表1】
Figure 0003984128
【0033】
得られた切削工具を調べたところ、いずれの切削工具も、表面硬化層が形成されていることが確認できた。表面硬化層の確認は、以下のように行った。焼結体の断面において、ビッカース硬度計で硬度を測定し、焼結体の最表面から深さ1mmの位置(以下工具内部と呼ぶ)の硬度と表面部の硬度とを比較し、表面部において、工具内部の硬度の1.1倍以上の硬度を有する層を確認した。
【0034】
(試験例1)
上記表1に示す組成A:38%TiCN-34%WC-7%TaC-4%NbC-9%Ni-8%Co(いずれも重量%)からなる原料粉末をボールミルで20時間湿式混合し、乾燥した後、ISO・CNMG120408の形状の圧粉体にプレス成型し、保持温度1450℃になるまで、CH4、N2、CO雰囲気中で昇温速度2.0℃/minにて昇温することで焼結を行い、母材を作製した(保持温度1450℃、保持時間60分、保持中及び冷却中の雰囲気は、5Torr(666Pa)のN2中)。次に、母材の刃先部全体に刃先処理としてホーニング処理を施した。本試験では、刃先処理の処理量比α/γは1.43とした(α=50μm、γ=35μm)。この後、チップの各部位ごとに選択的にブラシなどで研摩処理することで表面硬化層の厚みの調整を行った。取付孔の内壁部は、丸棒やすりなどで研磨処理することで、内壁部における表面硬化層の厚みの調整を行った。チップにおける刃先稜線部、取付孔の内壁部における領域Y、領域Zの各部位は図1に示した通りである。後述する試験例2についても同様である。
【0035】
このようにして作製した母材の各部位における表面硬化層の厚みを表2に示す。表2におけるyは、領域Yにおける平均厚み、同aは、第1領域における平均厚み、同cは、第2領域における平均厚みを示している。本例では、第1領域の範囲をすくい面から逃げ面方向に沿って60μm以上200μm以内、第2領域の範囲を逃げ面からすくい面方向に沿って70μm以上500μm以内とした。刃先稜線部Bの任意の点における表面硬化層の厚みbは、最も薄い部位で0であり、本例では、全て0である。以上は、後述する表5についても同様である。表面硬化層の厚みは、例えば、焼結体の断面をラッピングした後、塩酸でエッチングすることで確認することができる。また、各領域の平均厚みは、切削工具の断面を1000倍の光学顕微鏡で観察し、範囲内の表面硬化層の厚みを幅1μm刻みで測定し、積算した厚みを範囲長さで割って求めた。
【0036】
【表2】
Figure 0003984128
【0037】
上述のように作製したCNMG120408チップを表3に示す切削条件で連続切削又は断続切削を行い、耐摩耗性、耐欠損性、耐塑性変形性の試験を行った。試験結果を表4に示す。切削方式は、いずれも乾式である。
【0038】
【表3】
Figure 0003984128
【0039】
【表4】
Figure 0003984128
【0040】
耐摩耗性は、逃げ面摩耗量を測定することで評価した。耐欠損性は、欠損率を求めることで評価した。欠損率は、切削時間(150sec)に対する欠けが生じるまでの時間の割合とした。耐塑性変形性は、切削時の発熱による刃先部のだれ量(すくい面に垂直な方向への変形量)を測定することで評価した。
【0041】
その結果、表4から示すように、y>aかつy>cを満たす試料No.1〜4及び7は、耐塑性変形性に優れると共に、切削性能を示す耐欠損性及び耐摩耗性にも優れていることが分かる。また、試料No.1〜4及び7は、連続切削だけでなく、強い衝撃が加わる断続切削においても、優れた耐欠損性を有することが分かる。これらの試料は、取付孔の内壁部の表面部に表面硬化層をより厚く具えて、ホルダのクランプレバーやピンとの接触部の耐摩耗性及び耐塑性変形性を向上させたことで刃先部のぶれを抑制し、結果的に切削性能(耐欠損性及び耐摩耗性)にも優れたものと考えられる。これに対し、y>a、y>cの少なくとも一方を満たさない試料No.5、6、8は、欠損率が高く、変形量及び摩耗量ともが多かった。
【0042】
試料No.1と、z=yである試料No.4とを比較すると、z>yである試料No.1の方が切削性能(耐摩耗性、耐欠損性)、耐塑性変形性に優れていた。これは、試料No.1の方がホルダにより安定して固定されていたためであると考えられる。また、試料No.1と試料No.7とを比較すると、a>cである試料No.1の方が切削性能(耐摩耗性、耐欠損性)、耐塑性変形性に優れていた。この一因として、試料No.1は、耐摩耗性を必要とする逃げ面に表面硬化層をより厚く具えていたことが挙げられる。
【0043】
(試験例2)
更に、試験例1で用いた母材と同様の母材において、刃先処理量を変化させたチップ(試料No.2-1、2-2)について試験例1と同様に表3に示す切削試験を行ってみた。また、試験例1で用いた母材と同様の母材の表面に硬質層をコーティングしたチップ(試料No.2-3〜2-5)について、試験例1と同様に表3に示す切削試験を行ってみた。表5に、母材の各部位における表面硬化層の厚さ、硬質層の組成を示す。また、試験の結果を表6に示す。
【0044】
【表5】
Figure 0003984128
【0045】
【表6】
Figure 0003984128
【0046】
硬質層は、通常のCVD法(従来と同様の所定の温度、ガス、圧力条件)により被覆した。表5に示す硬質層は、最内側(母材側)から順に示しており、括弧内の数値は、各層の厚みである。
【0047】
表6から明らかなように、試料No.1の方が試料No.2-1及び2-2と比較して、切削性能(耐摩耗性、耐欠損性)及び耐塑性変形性がバランスよく優れていることが分かる。より詳しくは、試料No.1と比較して、α/γ<1である試料No.2-1は、特に逃げ面摩耗量が多かった。試料No.1と比較して、α/γ>2である試料No.2-2は、逃げ面摩耗量が少なく耐摩耗性には優れていたが、欠損率が高く、耐欠損性が低かった。このことから、刃先処理量の比(すくい面からみた刃先処理量α/逃げ面からみた刃先処理量γ)が1≦α/γ≦2を満たすと、より性能を向上できることがわかる。
【0048】
また、試料No.2-3、2-4は、試料No.1と比較して、切削性能(耐摩耗性、耐欠損性)、耐塑性変形性により優れていることが分かる。一方、硬質層を具えるが、刃先処理量α/γ<1である試料No.2-5は、試料No.2-3、2-4よりも性能が劣っていたが、試料No.1と同等程度の性能を有していた。このことから、母材表面に硬質層を被覆することによって、より性能を向上できることが分かる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明切削工具によれば、表面硬化層の厚さを工具の部位に応じて調整し、刃先稜線部周辺の表面硬化層の厚さと、取付孔の内壁部における表面硬化層の厚さとの関係を特定することで、耐摩耗性及び耐欠損性といった切削性能に優れると共に、チップのホルダに対する固定をより安定させることができる。このため、より安定した工具寿命を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明切削工具の縦断面図である。
【符号の説明】
1 すくい面 2 逃げ面 3 表面硬化層 4 取付孔 4a 内壁部 5 軸
6 中心線 7 すくい面側境界部 8 逃げ面側境界部

Claims (4)

  1. 取付孔が設けられた焼結硬質合金からなる切削工具であって、
    前記焼結硬質合金は、70重量%以上95重量%以下の硬質相と、残部が結合相及び不可避的不純物からなり、
    前記硬質相は、周期律表4a、5a、6a族の炭化物、窒化物及び炭窒化物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなり、
    前記結合相は、鉄系金属よりなる群から選択される少なくとも1種の元素からなり、
    前記焼結硬質合金からなる切削工具の最表面から深さ1mmの位置のビッカース硬度をxとしたとき、ビッカース硬度が1.1x以上で厚さ1μm以上の表面硬化層を上記工具表面部に具え、
    前記取付孔の内壁部において、孔の軸と直交方向にある内壁部の中心線を中心として孔の軸方向に沿って500μm以内の範囲を領域Yとし、この領域Yにおける表面硬化層の平均厚みをy、
    取付孔の開口部から孔の軸方向に沿って200μmの範囲を領域Zとし、この領域Zにおける表面硬化層の平均厚みをz、
    すくい面からみた刃先稜線部のすくい面側境界部からの刃先処理量をα、逃げ面からみた刃先稜線部の逃げ面境界部からの刃先処理量をγとし、
    すくい面から逃げ面方向に沿って距離Aにおいてγ<A≦200μmの範囲を第1領域とし、この第1領域における表面硬化層の平均厚みをa、
    逃げ面からすくい面方向に沿って距離Cにおいてα<C≦500μmの範囲を第2領域とし、この第2領域における表面硬化層の平均厚みをcとするとき、
    前記第1領域の全範囲においてy>a>0、かつ第2領域の全範囲においてy>c>0となり、かつz>yを満たすことを特徴とする切削工具。
  2. 領域Yにおける表面硬化層の平均厚みyが5<y<40、60≦A≦200の全範囲において平均厚みaが3<a≦35、70≦C≦500の全範囲において平均厚みcが3≦c<35であり(単位はμm)、
    a、c、yがy≧2+a、y>2+c、a>cの関係を満たし、
    刃先稜線部Bにおける表面硬化層の厚みをbとするとき、少なくとも一部がb=0であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
  3. αとγが1≦α/γ≦2(10≦α<70、6≦γ≦55、単位はμm)の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の切削工具。
  4. 更に、工具表面に少なくとも一層の硬質層が被覆され、
    前記硬質層は、
    周期律表4a、5a、6a族金属、Al及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素よりなる群から選択される少なくとも1種の非金属元素との化合物からなることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の切削工具。
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