JP5532413B2 - 炭窒化チタン基サーメット製切削インサートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
このようなインサートにおいて、切削抵抗を低減したり、切削加工中に生成する切りくずをコントロールするために、図1に示されるようなチップブレーカを有する切削インサートを用いること、また、図2に示されるようなL字形レバーや、ねじあるいは偏心ピンなどで、工具本体への取り付け用貫通穴を有する切削インサートを工具本体へクランプすることも、その取り扱いが簡便であるため広く知られている。
しかし、TiCN基サーメット製切削インサートを焼結で製造しようとした場合、焼結体表面には、Ni、Co等の金属結合相を主体とする、所謂、金属シミダシ層が形成され、焼結体表面の組織状態が不均一になるため、耐欠損性を低下させるという問題点があること(特許文献3〜5)も、また、広く知られている。
しかし、近年、切削加工の分野では、高能率加工が求められており、切削時の切刃に対する負荷はますます高くなる傾向にある。例えば、図2に示されるようなL字形レバーなどで工具本体へ取り付けたTiCN基サーメット製切削インサートを、重切削、断続切削等のような切刃に対して高負荷が作用する切削条件下において使用した場合には、切刃からの欠損発生に加え、クランプ手段と接触するインサート貫通穴内面の表面から破損が生じ、比較的短時間で使用寿命にいたるのが現状である。そして、貫通穴内面からの破損が生じたような場合には、同一インサートの他の切れ刃への交換も不可能となるため、着脱式インサートとしては致命的な問題点となる。
そこで、本発明は、TiCN基サーメット製切削インサートを、切刃に対して高負荷が作用する切削条件下で使用した場合でも、欠損が発生することなく、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮するTiCN基サーメット製切削インサートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
特に、この金属シミダシ層は硬質粒子を含有する二相以上から構成される層ではなく、Co、Niの1種または2種を主成分とする実質単一相からなる軟質な金属シミダシ層となっていることが重要である。
ただ、焼結により、貫通穴内面の最表面部に軟質な金属シミダシ層を所定層厚ならびに所定の表面占有率(面積率)で形成した場合には、切削に関与する切れ刃の逃げ面およびチップブレーカの表面にも同様に金属シミダシ層が形成されるが、特に、逃げ面表面に形成された金属シミダシ層は、被削材との溶着現象に起因すると考えられる被削材の仕上げ面精度の低下を招き、また、チップブレーカの表面に形成された金属シミダシ層は、切りくずの溶着による、やはり被削材の仕上げ面精度の低下や耐欠損性の劣化を招くことになるため、インサート表面にウエットブラスト処理を施し、特に、逃げ面およびチップブレーカ表面に形成された金属シミダシ層を除去すると同時に、表面平滑化を図ることにより、仕上げ面精度の向上、耐欠損性の向上を図り得ることを見出したのである。
また、切れ刃部表面に金属シミダシ層が生成すると、その下方の部位の金属結合相が貧化し靭性が低下する可能性もあるため、加えて、ウエットブラスト処理を施す際に、インサート表面の平滑化を行い、同時に、インサートの少なくともすくい面の表面部に圧縮残留応力を付与した場合には、さらに一段と耐欠損性が向上することを見出したのである。
但し、ウエットブラスト処理を作用しすぎると、被処理表面の表面粗さが逆に悪化し、仕上げ面精度や耐欠損性に悪影響を及ぼすため、表面粗さを一定範囲を超えないように管理することが重要である。
「(1) 工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部およびすくい面を備える炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、すくい面にチップブレーカを備えるとともに、上記貫通穴が主として焼結肌で構成され、その貫通穴内面の最表面部にはCo、Niの1種または2種を主成分とする実質単一相からなる金属シミダシ層が0.1μm以上5μm以下の層厚かつ60面積%以上の表面占有率(面積率)で形成されており、一方、逃げ面およびチップブレーカの表面には上記金属シミダシ層が存在せず、かつ、該逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であることを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(2) 貫通穴内面の金属シミダシ層の表面占有率(面積率)が80面積%以上である前記(1)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(3) 上記インサートの少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(4) 上記インサートの少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で600MPa以上であることを特徴とする前記(3)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(5) 上記インサートの刃先先端のホーニング部の表面粗さが、インサートの逃げ面およびチップブレーカの表面粗さより小さく形成されていることを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(6) 上記ホーニング部の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下である前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(7) 工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部、すくい面、およびすくい面にチップブレーカを備える炭窒化チタン基サーメット製切削インサートを製造する方法において、上記インサートの表面に、Co、Niの1種または2種を主成分とする実質単一相からなる金属シミダシ層を形成し、次いで、上記インサートを軸線回りに回転可能な一対の回転軸により挟み込んで保持しつつ上記軸線回りに回転させながら、少なくとも一つ以上のブラストガンにより研磨液を噴射してウエットブラスト処理を施すことにより、上記貫通穴内面の表面部には金属シミダシ層を形成させたまま、上記逃げ面およびチップブレーカの表面から上記金属シミダシ層を除去し、上記逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下とし、かつ、少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力を圧縮で450MPa以上とすることを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
(8) 上記インサートを回転可能に挟み込む上記回転軸の軸線方向に対して、30度以上60度以下の噴射角で、ブラストガンから研磨液を噴射してウエットブラスト処理を施す前記(7)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
(9) 上記噴射角が40度以上50度以下である前記(8)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
(10) 上記インサートにウエットブラスト処理を施した後、上記インサートの刃先先端部にホーニング加工を施す前記(7)乃至(9)のいずれかに記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
(11) 上記ホーニング加工を、湿式ブラシホーニングで施す前記(10)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。」
を特徴とするものである。
そして、本発明においては、貫通穴内面に形成された金属シミダシ層を、工具本体へインサートを固定するねじ、L字形レバー、偏心ピン等のクランプ手段との接触面において発生しやすい亀裂・破損の発生防止層として利用することにより、工具寿命の延命化を図っている。
なお、金属シミダシ層における軟質金属成分の表面占有率(面積率)および層厚は、主として、焼結用原料粉末の配合割合と焼結条件によって影響されるので、所定の焼結肌が得られるように配合割合、焼結条件を調整することが必要である。
インサートの逃げ面の平滑化は、主に被削材の仕上げ精度の改善に寄与し、また、チップブレーカの表面粗さの低減は、主に被削材の仕上げ精度の改善や耐欠損性改善に寄与するが、特に、インサートの逃げ面、チップブレーカの表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaが0.2μmを超える粗面になると低下傾向を示すようになるので、インサートの逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下とする。
また、切削初期段階では、切刃先端のホーニング部が被削材の切削加工表面に接触して切削加工表面を形成し、その後、切れ刃の摩耗が発達してくると、切削加工表面に接触する領域は逃げ面側に移行するようになる。
したがって、ウエットブラスト処理を施した後、インサートの刃先先端部に湿式ブラシ等によるホーニング加工を施すことにより、刃先先端に形成されるホーニング部の表面粗さを他の部分より小さくする、好ましくは、Raで0.1μm以下にすると、耐欠損性が更に改善され、切削初期段階での被削材に光沢のある良好な仕上げ面を形成することができる。
さらに、sin2Ψ測定範囲に関しては、0〜0.5ないし0〜0.75間で選択される範囲において等間隔に5ないし6点、並傾法にて展開し測定した。
測定に用いたX線回折装置はスペクトリス(株)製のPANalytical
X’ Pert PRO MPDで、X線源としてはCuKα線を使用した。
残留応力測定にはNaCl型結晶構造を有する硬質相の(422)面の回折ヒ゜ークを用いた。
また、測定に用いた残留応力計算ソフトウエアはX’ Pert High Score Plusで、硬質相のヤング゛率として475GPa、ポアソン比として0.200を使用し計算を実施した。
図3(a)において、インサート全体に金属シミダシ層が形成された焼結肌のままのTiCN基サーメット製切削インサートを、軸線回りに回転可能な一対の回転軸により挟み込んで保持しつつ上記軸線回りに回転させながら、該回転軸の軸線方向に対して、45度の噴射角を有する相対向する2本のブラストガンから上記インサートの表面に研磨液を噴射して1個ずつウエットブラスト処理を行うことにより、貫通穴を除くインサート全面を均一に処理することができる。この場合、インサートの貫通穴が存在する箇所は、一対の回転軸により挟み込まれた状態となるため、貫通穴内面は処理が行われず、したがって、貫通穴内面は、所定表面占有率(面積率)、所定層厚のCo、Niの1種または2種を主成分とする実質単一相からなる軟質な金属シミダシ層が形成された焼結肌が維持される。
一方、インサートの逃げ面およびチップブレーカの表面からは、ウエットブラスト処理により金属シミダシ層が除去され、同時に、平滑面が形成されるが、研磨液の種類、噴射圧等を調整することにより、インサートの逃げ面およびチップブレーカの表面粗さがカットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の平滑面を形成することができ、同時に、上記インサートの少なくともすくい面の表面部の硬質相には450MPa以上の圧縮残留応力を付与することができる。
本発明では、インサート表面(但し、貫通穴内面を除く)にウエットブラスト処理を施すことによって、インサート貫通穴内面に金属シミダシ層を形成したままで、インサートの逃げ面およびチップブレーカの表面から金属シミダシ層を除去し、表面を平滑化すると同時に、少なくともすくい面の表面部の硬質相に所定の圧縮残留応力を付与することができる。
また、図3(c)に示すように、貫通穴内面および貫通穴周辺のすくい面が、より確実に、ウエットブラストを受けないようにするためには、インサートと、これを挟み込む回転軸との間に、マスキング部材を介在させればよく、これによって、マスキング部材でカバーされた領域(貫通穴内面および貫通穴周辺)を焼結肌のままに維持することができる。
表1に、このTiCN基サーメットA〜Eの特性を示す。
TiCN基サーメットA〜Dの表面には、CoおよびNiを主成分とする実質的に単一相の金属シミダシ層が、表1に示す層厚並びに表面占有率で生成していた。
原料配合組成:
いずれも0.5〜2mmの平均粒径を有するTiCN粉末、WC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Co粉末、Ni粉末を、それぞれ、45wt%、22wt%、3wt%、10wt%、15wt%、5wt%となるように配合し、ボールミルにて24時間湿式混合し、乾燥した。
焼結条件:
(1)常温から1200℃までを、10Pa以下の真空雰囲気中にて10℃/分の速度で昇温し、
(2)1350℃までの昇温を10Pa以下の真空雰囲気中にて、2.0℃/分の速度で昇温し、
(3)1350℃から所定の焼結温度(1500℃)までの1.5℃/分の速度での昇温、並びに前記焼結温度に60分間保持を133Paの窒素雰囲気で行い、
(4)上記焼結温度から1200℃まで10Pa以下の真空雰囲気中にて、0.5〜10.0℃/分の速度で冷却し、
(5)1200℃からの炉冷を90kPa以下のAr雰囲気中にて行った。
なお、切れ刃には、砥粒を含有したナイロンブラシを使用し、すくい面側から測定した幅が0.11mm、かつ、逃げ面側から測定した幅が0.06mmのウォーターフォール型の曲面ホーニングを湿式処理で施した。
ウエットブラスト処理では、噴射研磨材のアルミナを水と混合し研磨液中の研磨材の含有量が30重量%となるように噴射研磨液を調製した。
また、図3(a)に示されるウエットブラスト処理装置において、噴射角θは45°一定とし、一対の回転軸で挟み込んで保持した部分を除いてインサート全面(但し、貫通穴内面を除く)が処理されるようウエットブラストを行い、一方、インサートの貫通穴内面にはウエットブラスト処理を施さず、金属シミダシ層が形成された焼結肌を維持したままである。
また、本発明1〜5のインサート表面部の硬質相の残留応力を、インサート逃げ面の平坦面で前述のX線回折装置により測定した。
さらに、本発明1〜5のインサートの逃げ面およびホーニング部の表面粗さを、JIS B0601−1994(2001)にしたがい、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで測定した。
表2に、金属シミダシ層の表面占有率(面積率),その層厚、残留応力および表面粗さの測定値を示す。
なお、本発明1〜5のインサートでは、すくい面がブレーカを有した曲面となっているためにX線回折測定に必要な平坦面を確保できず、すくい面の残留応力を直接測定することはできないが、本実施例1では、ウエットブラスト処理時の噴射角を45°として、基本的に逃げ面とすくい面に同様な作用が加わるように処理を行っているので、すくい面、特に逃げ面とほぼ直角に位置する切れ刃近傍のランド部分やブレーカ底部(すくい面では切れ刃に近いランド部分や凹状に湾曲した最も深いブレーカ底部の残留応力値が耐欠損性向上に重要である)の残留応力は、逃げ面で測定された残留応力と概略同等であると考えられることから、インサートの残留応力は、逃げ面について測定した残留応力で代表させることとする。
また、表面粗さについても、ウエットブラスト処理時の噴射角を45°としたことから、すくい面(ブレーカ底)の表面粗さは逃げ面の表面粗さとほぼ同等の値を示したので、インサートの表面粗さは、逃げ面について測定した表面粗さで代表させることとする。
本発明1〜5と同様な測定方法で、(貫通穴内面の)金属シミダシ層の表面占有率(面積率)およびその層厚を測定し、また、インサート逃げ面の平坦面における残留応力をX線回折装置により測定し、また、インサートの逃げ面およびホーニング部の表面粗さを、JIS B0601−1994(2001)にしたがい、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで測定した。
表2に、測定結果を示す。
また、ナイロンブラシによるホーニングを施したホーニング部の表面粗さは0.05μm、または、0.06μmと滑らかであるが、この表面に、本発明条件のウエットブラスト処理を施すとやはり逆に表面粗さが大になり、平滑性が低下することが分かる。
本発明では、貫通穴内面には所定の厚さの金属シミダシ層を有し、また、ウエットブラスト処理によりインサート表面の粗さも改善され、さらに、高い圧縮残留応力が付与されている。また、焼結後のインサート表面の粗さがもともと小さいTiCN基サーメットDを使用した本発明5のウエットブラスト処理後の表面粗さは、当然のことながら大きくは改善されていない。
比較例1は、金属シミダシ層が7〜9μmと厚い層厚のTiCN基サーメットAにウエットブラスト処理を行ったため、逃げ面およびチップブレーカ表面の金属シミダシ層を完全に除去するために、0.5MPaの噴射圧力を必要とした。その結果、表面粗さの観点からみると過処理となったため、逃げ面やホーニング部の表面粗さが0.2μmを超える粗面となった。
比較例4は、本発明4と同様の工程で作製された後に、貫通穴内面の金属シミダシ層を除去するために、貫通穴内面だけを改めて別のインサート保持方法によりウエットブラスト処理を行ったものである。
《切削試験1》湿式断続の高送りかつ高切り込み切削
被削材;JIS−S55Cの溝入り丸棒(溝は長手方向に4溝)
切削速度;160m/min.
送り;0.6mm/rev.
切り込み;5mm
上記切削試験1における切れ刃交換までの実切削時間を評価した。
表3に、切れ刃交換までの実切削時間とともに、切れ刃交換の理由並びに切れ刃交換時の切削加工表面の状況を示す。
なお、切れ刃交換までの時間は、使用切れ刃にチッピングや欠損等が発生するか、L字形レバーと接触する貫通穴内面から大破するなど、実切削を継続することが不能となるまでの時間とし、また、正常な切削が維持されている場合は、逃げ面摩耗幅が0.4mmに達するまでの時間とした。
これに対して、焼結後にインサートの全周面に7〜9μmの厚い金属シミダシ層を生成した比較例1では、金属シミダシ層直下の金属結合相の貧化の程度が大きいことと、さらにインサートの表面粗さが十分改善されていないことの理由によると考えられるが、ウエットブラストで700MPaを超える大きい圧縮残留応力が付与されているにもかかわらず比較的短時間で欠損を生じた。また、インサートの表面粗さが十分改善されていないために、仕上げ面は切削開始時より光沢のない白濁仕上げ面を示しており、切れ刃交換の判断基準に切削加工表面の評価も入れると、切削開始直後に切削を終了しなければならない状況である。
逃げ面およびチップブレーカの金属シミダシ層が除去されていない比較例2,3では、この切れ刃の金属シミダシ層に被削材や切りくずの溶着が発生しやすく仕上げ面が切削初期段階より白濁を示した。また、この切りくずの溶着現象の発生とインサート切れ刃の表面粗さや圧縮残留応力が十分でないことにより、やはり短時間で使用切れ刃に欠損を生じた。
貫通穴内部に金属シミダシ層のない比較例4,5は、切削初期にL字形レバーと接触する貫通穴内面から大破した。このため、継続する切削がある場合は、他の切れ刃に交換することができなく、インサートそのものを交換する必要がある。
TiCN基サーメットF,Gの表面には、表4に示す層厚並びに表面占有率を有するCoおよびNiを主成分とする実質的に単一相の金属シミダシ層が生成していた。
原料配合組成:
いずれも0.5〜2mmの平均粒径を有するTiCN粉末、WC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Mo2C粉末、Co粉末、Ni粉末を、それぞれ、50wt%、15wt%、3wt%、6wt%、10wt%、8wt%、8wt%となるように配合し、ボールミルにて24時間湿式混合し、乾燥した。
焼結条件:
(1)常温から1200℃までを、10Pa以下の真空雰囲気中にて、10℃/分の速度で昇温し、
(2)1350℃までの昇温を10Pa以下の真空雰囲気中にて、2.0℃/分の速度で昇温し、
(3)1350℃から所定の焼結温度(1550℃)まで1.5℃/分の速度で昇温、並びに前記焼結温度に60分間保持を200Paの窒素雰囲気で行い、
(4)上記焼結温度から1200℃まで10Pa以下の真空雰囲気中にて、2.0〜10.0℃/分の速度で冷却し、
(5)1200℃からの炉冷を90kPa以下のAr雰囲気中にて行った。
なお、ブラシホーニングによるホーニング形状は、半径0.06mmの丸ホーニングとした。
また、ウエットブラスト処理は、実施例1と同様に、図3(a)に示される装置を用い(但し、ブラストガンは、切れ刃に対抗する1本のみを使用した)、貫通穴内面を除く少なくともインサートの逃げ面およびチップブレーカ表面を処理した。したがって、インサートの貫通穴内面にはウエットブラスト処理は施されておらず、金属シミダシ層が形成された焼結肌を維持したままである。
なお、インサートの逃げ角が7度であることから、噴射角を45度とすると、逃げ面、すくい面それぞれの噴射の角度が異なることになり、すくい面の噴射の角度がより直角に近いものとなることによって、すくい面には、逃げ面で測定した残留応力と同等以上の圧縮残留応力が付与されているものと考えられる。
また、本発明6〜9のインサートおよび比較例6〜8について、インサート表面部の硬質相の残留応力を、インサート逃げ面の平坦面でX線回折装置により測定した。
さらに、本発明6〜9のインサートおよび比較例6〜8について、逃げ面およびホーニング部の表面粗さを、JIS B0601−1994(2001)にしたがい、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで測定した。
表5に、金属シミダシ層の表面占有率(面積率),その層厚、残留応力および表面粗さの測定値を示す。
本発明6〜9と同様な方法で、(貫通穴内面)の金属シミダシ層の表面占有率(面積率)およびその層厚を測定し、また、インサート逃げ面の表面部の硬質相の残留応力、インサートの逃げ面およびホーニング部の表面粗さを測定した。
表5に、測定結果を示す。
《切削試験2》湿式断続切削
被削材;JIS−SNCM439の溝入り丸棒(溝は長手方向に6溝)
切削速度;130m/min、
送り;0.5mm/rev、
切り込み;4mm
上記切削試験2における切れ刃交換までの実切削時間を評価した。
表6に、切れ刃交換までの実切削時間とともに、切れ刃交換の理由を示す。
なお、切れ刃交換までの時間は、使用切れ刃にチッピングや欠損等が発生するか、クランプ用ねじと接触する貫通穴内面から大破するなど、実切削を継続することが不能となるまでの時間とし、また、正常な切削が維持されている場合は、逃げ面摩耗幅が0.4mmに達するまでの時間とした。
《切削試験3》湿式連続切削
被削材;JIS−SUJ2の丸棒
切削速度;320m/min、
送り;0.4mm/rev、
切り込み;2mm
上記切削試験3における、切削時間0.2分後の切削開始時点の切削加工表面の観察を行った。
表6に、上記切削試験3,4における切削試験結果を示す。
また、本発明6,7に比較し、ホーニング部の表面粗さをさらに改善した本発明8,9は、切れ刃交換までの実切削時間も長く、さらに良好な仕上げ面を得ることが難しいSUJ2の切削でも、光沢のある良好な仕上げ面を示す結果となった。
これに対して、逃げ面およびチップブレーカの金属シミダシ層が除去されていない比較例6では、この切れ刃の金属シミダシ層に被削材や切りくずの溶着が発生しやすく仕上げ面が毛羽立ち白濁を示した。また、この切りくずの溶着現象の発生とさらにインサート切れ刃の表面粗さや圧縮残留応力が十分でないことにより、やはり短時間で使用切れ刃に欠損を生じた。
貫通穴内部に金属シミダシ層が生成しているものの、その表面占有率が56面積%しかない比較例7は、同一工程順序、処理条件で製造された、しかし、貫通穴内部の金属シミダシ層の表面占有率63面積%を有する本発明9と比較して、クランプ用ねじと接触する貫通穴内面から大破し、短寿命を示した。
貫通穴内部に金属シミダシ層のない比較例8は、切削初期にクランプ用ねじと接触する貫通穴内面から大破した。このため、比較例7,8では、継続する切削がある場合は、他の切れ刃に交換することができなく、インサートそのものを交換する必要がある。
これに対して、工具本体へのインサート取り付け用貫通穴の内面の最表面部に、所定の表面占有率(面積率)、層厚の金属シミダシ層が形成されていない比較例のインサートでは、高負荷条件の切削加工においては、切削初期にクランプ用ねじと接触する貫通穴内面から大破し、他の切れ刃に交換することができなくなって、インサートそのものが短時間で寿命となってしまった。
Claims (11)
- 工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部およびすくい面を備える炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、すくい面にチップブレーカを備えるとともに上記貫通穴が主として焼結肌で構成され、その貫通穴内面の最表面部にはCo、Niの1種または2種を主成分とする実質単一相からなる金属シミダシ層が0.1μm以上5μm以下の層厚かつ60面積%以上の表面占有率で形成されており、一方、逃げ面およびチップブレーカの表面には上記金属シミダシ層が存在せず、かつ、該逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であることを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 貫通穴内面の金属シミダシ層の表面占有率が80面積%以上である請求項1に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 上記インサートの少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 上記インサートの少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で600MPa以上であることを特徴とする請求項3に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 上記インサートの刃先先端のホーニング部の表面粗さが、インサートの逃げ面およびチップブレーカの表面粗さより小さく形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 上記ホーニング部の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部、すくい面、およびすくい面にチップブレーカを備える炭窒化チタン基サーメット製切削インサートを製造する方法において、上記インサートの表面に、Co、Niの1種または2種を主成分とする実質単一相からなる金属シミダシ層を形成し、次いで、上記インサートを軸線回りに回転可能な一対の回転軸により挟み込んで保持しつつ上記軸線回りに回転させながら、少なくとも一つ以上のブラストガンにより研磨液を噴射してウエットブラスト処理を施すことにより、上記貫通穴内面の表面部には金属シミダシ層を形成させたまま、上記逃げ面およびチップブレーカの表面から上記金属シミダシ層を除去し、上記逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下とし、かつ、少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力を圧縮で450MPa以上とすることを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 上記インサートを回転可能に挟み込む上記回転軸の軸線方向に対して、30度以上60度以下の噴射角で、ブラストガンから研磨液を噴射してウエットブラスト処理を施す請求項7に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 上記噴射角が40度以上50度以下である請求項8に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 上記インサートにウエットブラスト処理を施した後、上記インサートの刃先先端部にホーニング加工を施す請求項7乃至9のいずれか一項に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 上記ホーニング加工を、湿式ブラシホーニングで施す請求項10に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
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