JP5499574B2 - 炭窒化チタン基サーメット製切削インサートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献3,4に示されるように、TiCN基サーメット製切削インサート(以下、従来インサートという)において、インサート表面にショットピーニングによる衝撃力を作用させ、インサート表面部の硬質相に50kg/mm2以上、あるいは、200kg/mm2以上の圧縮残留応力を付与してインサートの強度を高め、耐衝撃性、耐欠損性の改善を図ることが知られている。
一方、切削加工の分野では近年ますます高精度加工も要求されるようになってきており、従来からの管理項目である加工寸法精度は当然のことながら、それに加えて被削材の切削加工表面(仕上げ面)の品質向上も重視されるようになってきた。
このため切削加工表面の品質に関してその判断基準が厳しくなってきており、切削初期の段階から、あるいは、切削開始後の比較的短時間の段階で満足できない状況となり、インサートの摩耗の発生はまだ小さく被削材の加工寸法精度が公差内であっても作業者に寿命と判断されて、使用切れ刃やインサートそのものが交換されている実情がある。ここで、作業者は、被削材の切削加工表面にムシレや毛羽立ちと呼ばれる現象が発生して、手で触ったときにざらつき感があったり、光沢のない白濁した表面に見えることで、切れ刃が寿命であると判断している。特に最近では被削材についても難削材化が進んでおり、このような表面状態の異常がますます発生しやすい状況となってきている。
したがって、湿式切削や断続切削による熱衝撃や機械的衝撃に対する耐欠損性に優れるとともに、被削材にムシレや毛羽立ちのない、光沢のある高品質な切削加工表面の形成が可能となるサーメット製切削インサートが求められている。
「(1) 逃げ面の全部が研磨加工されている炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、インサート表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上であり、かつ、インサート表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であことを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(2) 炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、ウエットブラスト処理を施されたことにより、インサート表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上であり、かつ、インサート表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であることを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(3) インサート表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で600MPa以上である前記(1)または(2)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(4) インサートの刃先先端のホーニング部の表面粗さが、インサートの逃げ面およびすくい面の表面粗さより小さく形成されている前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(5) インサートの刃先先端のホーニング部の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下である前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
(6) 原料粉末を成形、焼結することにより、所定形状の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートを作製した後、該インサートの表面にウエットブラスト処理を施し、インサート表面部の硬質相の残留応力を、圧縮で450MPa以上、かつ、インサート表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下とすることを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
(7) インサートの表面にウエットブラスト処理を施した後、インサートの刃先先端にホーニング加工を施す前記(6)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
(8) インサートの表面にウエットブラスト処理を施した後、インサートの刃先先端にホーニング加工を施し、インサートの刃先先端のホーニング部の表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下とする前記(7)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
(9) ホーニング加工を湿式ブラシホーニングで施す前記(7)または(8)に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。」
を特徴とするものである。
この発明では、炭窒化チタン基サーメット製切削インサート(以下、単に、インサートという場合もある)の表面にウエットブラストを施すことにより、インサート表面部の硬質相に450MPa以上の圧縮残留応力を付与する。
従来行われていたショットピーニング(ショットブラスト)による圧縮残留応力の付与では、既述のとおりでは、加工エネルギーが過大であるため、インサート表面に粗大クラックが発生したり、また、表面の平滑化が不十分で耐欠損性を十分に改善できず良好な仕上げ面を得られない恐れがあったが、本発明によるウエットブラストによればこのような弊害は生じない。なお、圧縮残留応力の付与の手段としてはドライブラストも考えられるが、ドライブラストでは、二種の流体(粉流・気流)でインサート表面をブラストするため、三種の流体(粉流・気流・液流)を用いたウエットブラストに比べて加工エネルギーが小さいため十分な残留圧縮応力を付与することができず、また、噴射研磨材が処理表面へ食い込み不純物の残留現象も生じやすいため、圧縮残留応力の付与は、ウエットブラストにより行うことが最も好ましい。
また、本発明は、主として逃げ面が焼結肌で使用されるISO分類のM級インサートで適用されるが、逃げ面の一部あるいは全部を研摩加工し使用されるK級、G級、E級、A級インサート等に対しても適用できる。
インサート表面部の硬質相に付与される残留応力の値が、圧縮で450MPa未満の場合には、熱衝撃や機械的衝撃が切刃に作用する湿式切削、断続切削条件下で用いられた場合の耐欠損性向上効果が認められず、圧縮で450MPa以上の圧縮残留応力が付与されている場合に、熱衝撃や機械的衝撃が切刃に作用する湿式切削、断続切削条件下で優れた耐欠損性を発揮する。
したがって、インサート表面部の硬質相に付与する圧縮残留応力の値は450MPa以上と定めるが、好ましくは600MPa以上、更に好ましくは700MPa以上である。
なお、ウエットブラストを施さない通常の焼結肌表面部の硬質相の残留応力は、圧縮で100MPa程度であり、また、表面の組成等を内部と変化させたTiCN基サーメットの場合でも300MPa程度であって、本発明においてウエットブラスト処理を施すことによって、圧縮残留応力の値を450MPa以上とすることができる。
さらに、sin2Ψ測定範囲に関しては、0〜0.5ないし0〜0.75間で選択される範囲において等間隔に5ないし6点、並傾法にて展開し測定した。
測定に用いたX線回折装置はスペクトリス(株)製のPANalytical
X’ Pert PRO MPDで、X線源としてはCuKα線を使用した。
残留応力測定にはNaCl型結晶構造を有する硬質相の(422)面の回折ヒ゜ークを用いた。
また、測定に用いた残留応力計算ソフトウエアはX’ Pert High Score Plusで、硬質相のヤング゛率として475GPa、ポアソン比として0.200を使用し計算を実施した。
本発明では、インサート表面にウエットブラスト処理を施すことによって、表面部の硬質相に所定の圧縮残留応力を付与すると同時に、インサート表面を平滑化する。
図1(a)、(b)に示すように、インサートの逃げ面の表面粗さを低減し平滑性を高めると、主に被削材の仕上げ面品位を改善する効果があり、また、すくい面の表面粗さを低減し平滑性を高めると、主に耐欠損性改善に効果があるが、このような仕上げ面品位の改善、耐欠損性改善の効果は、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaが0.2μmを超えるようになると低下傾向を示すようになる。
そこで、本発明では、インサート表面にウエットブラスト処理を施すことによって、圧縮残留応力付与を行うと同時に、インサート表面を平滑化し、インサート表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下になるように定めた(なお、通常のTiCN基サーメットの焼結肌の表面粗さは、一般的に、0.3〜0.7μm程度であり、さらに、ショットピーニングを行った従来インサート(特許文献3,4)でも、表面粗さはほとんど改善されなかった)。
また、図1に示されるように、切削初期段階では、ホーニング部が最終的に被削材の切削加工表面に接触して切削加工表面を形成(図1(a)の黒い矢線)し、その後、切れ刃の摩耗が発達してくると、切削加工表面に接触する領域は逃げ面側に移行(図1(b)の黒い矢線)する。
なお、図1(a)、(b)において、白抜きの矢線は被削材に対する切削インサートの相対的な進行方向を示す。
したがって、刃先先端に形成されるホーニング部の表面粗さを他の部分より小さくする(例えば、Raで0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下)と、更に耐欠損性が改善され、切削初期段階での被削材に光沢のある良好な仕上げ面を形成することができる。
インサートの表面部の硬質相の残留応力が圧縮で450MPa以上となるようにする方法としては、従来インサートで行われていた機械式ショットブラスト(ショットピーニング)の他、既述のドライブラストや、弾性砥石や砥粒が含有されたナイロンブラシを使用する機械的処理が考えられるが、ウエットブラスト処理が効果的である。
例えば、比較的大きい平均粒径を有する鋼球やセラミックス製のボール等を使用した機械式ショットブラストでは、ショットピーニング効果を狙っているため、特に、最近の刃先がよりシャープな切削用インサートではその加工エネルギーが過大となり、製造工程でクラック、欠損発生等の製品不良を生じ易く、また、処理表面の表面平滑化効果が少ない。また、粉体、気体の2相混合流体を使用するドライブラストは、加工エネルギーが低く、また、噴射研磨材が処理表面へ食い込む不純物の残留現象が生じ易いので好ましくない。さらに、弾性砥石や砥粒を含有するナイロンブラシを使用する機械的処理では、インサート本体のうち特に突出した切れ刃の形成されるすくい面と逃げ面の交差稜線付近に加工エネルギーが強く作用するため処理表面に研摩傷等を発生し表面粗さの低下を招き易く、さらに交差稜線付近以外の部分(例えば、逃げ面やすくい面のチップブレーカ底)では逆に処理がほとんど作用しない。
したがって、本発明では、インサート表面部の硬質相への圧縮残留応力の付与およびインサート表面の表面平滑化手段として、ウエットブラスト処理を採用することにより、インサート表面部の硬質相に所定の残留応力を付与し、かつ、インサート表面の表面粗さを所定値以下に抑えたTiCN基サーメット製切削インサートを製造する。
なお、このようなウエットブラスト処理の噴射研磨材としては、硬質の微粒メディアであれば材質としてはアルミナ、炭化珪素、ジルコニア、樹脂系、ガラス系など種々使用可能であり、初期投入時の中心粒子径としては約1〜100μm程度が望ましく、生産性と品質の両方を考慮すると約10〜50μm程度がより好ましい。また、噴射条件としては、例えばメディアとしてアルミナを使用する場合には液体(水)と混合した状態において15〜60重量%の範囲となるようにメディアを含有させて研磨液を調整し、ブラストガンに供給する圧縮空気の圧力すなわち噴射圧力を0.05〜0.5MPa、好ましくは0.1〜0.3MPaの範囲として噴射するのが望ましい。
また、ウエットブラスト処理を行う領域は、インサートの全面あるいは部分のいずれでも良く、少なくとも切削に関与する切れ刃または切れ刃周辺が処理されていれば良い。
また、ウエットブラスト処理を行うためのブラストガンの配置は、特開2007−152477号公報に示されているように公知であるが、例えば、図2に示されるブラストガンの配置(上記特開2007−152477号公報の図5に相当する)によって、インサート全周に均一にブラスト処理を行うことができる。
これら切削インサートに中心粒子径40μmを有するアルミナを噴射研磨材とし、表1に示す噴射圧力で、図2に示されるウエットブラスト処理装置を用いてウエットブラスト処理を施すことにより、本発明のTiCN基サーメット製切削インサート(本発明1〜4)を製造した。
ウエットブラスト処理では、噴射研磨材のアルミナを水と混合し研磨液中の研磨材の含有量が30重量%となるように噴射研磨液を調製した。
また、図2に示されるウエットブラスト処理装置において、噴射角は45°一定とし、一対の回転軸で挟み込んで保持した部分を除いてほぼインサート全面が処理されるようウエットブラストを行った。
また、本発明1〜4のインサート逃げ面の表面粗さを、JIS B0601−1994(2001)にしたがい、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで測定した。
表1に、残留応力および表面粗さの測定値を示す。
なお、本発明1〜4のインサートでは、すくい面がブレーカを有した曲面となっているためにX線回折測定に必要な平坦面を確保できず、すくい面の残留応力を直接測定することはできないが、本実施例1では、ウエットブラスト処理時の噴射角を45°として、基本的に逃げ面とすくい面に同様な作用が加わるように処理を行っているので、すくい面、特に逃げ面とほぼ直角に位置する切れ刃近傍のランド部分やブレーカ底部(すくい面では切れ刃に近いランド部分や凹状に湾曲した最も深いブレーカ底部の残留応力値が耐欠損性向上に重要である)の残留応力は、逃げ面で測定された残留応力と概略同等であると考えられることから、インサートの残留応力は、逃げ面について測定した残留応力で代表させることとする。
また、表面粗さについても、ウエットブラスト処理時の噴射角を45°としたことから、すくい面(ブレーカ底)の表面粗さは逃げ面の表面粗さとほぼ同等の値を示したので、インサートの表面粗さは、逃げ面について測定した表面粗さで代表させることとする。
表1に、測定した残留応力値および表面粗さの値を示す。
なお、参考例2、3の従来インサートは、平均粒径0.5mmのアルミナ製ボールを表1の「噴射圧力」欄に示す圧力の圧縮空気で衝突させて作製したが、切刃にチッピングあるいは欠損が発生し、参考例2では17%、参考例3では28%のインサートが不良となった。
参考例1にみられるように、焼結肌(逃げ面)の表面粗さは0.43μmであって平滑性が低いが、ウエットブラスト処理を施すことによって平滑性を高めることが可能である。しかし、噴射圧力が高くなると逆に表面粗さが大になり、若干平滑性が低下する傾向にある。
また、ナイロンブラシによるホーニングを施したホーニング部の表面粗さは0.06μmと滑らかであるが、この表面に、本発明条件のウエットブラスト処理を施すと、やはり逆に表面粗さが大になり、平滑性が低下することが分かる。
さらに、ショットピーニング処理を施した参考例2、3では、高い圧縮残留応力を付与することは可能であったが、表面平滑化の効果は見られなかった。
《切削試験1》
被削材;JIS−SCM440の角材、
切削速度;300m/min、
送り;0.12mm/rev、
切り込み;1.5mm
の湿式断続切削を行い、
衝撃回数は最大2000回を上限とし、欠損が発生するまでの衝撃回数を評価した。各試料10切刃を評価し、その平均値を衝撃回数とした。
《切削試験2》
被削材;JIS−S10Cの丸棒、
切削速度;400m/min、
送り;0.1mm/rev、
切り込み;1mm
の湿式連続切削を行い、
切れ刃交換までの実切削時間を評価し、切れ刃交換時の切削加工表面(仕上げ面)の観察も行った。
表2に、上記切削試験1,2における欠損が発生するまでの衝撃回数、切れ刃交換までの実切削時間および切れ刃交換時の切削加工表面状況を示す。
なお、切れ刃交換までの実切削時間は、仕上げ面が劣化した場合には、その時点で切削を終了してそれまでの時間とし、良好な仕上げ面が維持されている場合には、逃げ面摩耗幅が0.2mmに達するまでの時間とした。これは、逃げ面摩耗幅が0.2mmを越えるまで成長すると、仕上げ切削での加工寸法精度を維持することができなくなるからである。
さらに、ショットピーニング処理を施した参考例2、3では、バラツキが大きく衝撃回数2000回まで欠損しない優れた耐欠損性を示す切刃もあったが、逆に断続切削開始時の初期段階で欠損を示す、著しく耐欠損性の低い切刃もあった。これらの欠損した切刃には、ショットピーニングによる過大な加工エネルギーによりマイクロクラックが表面に発生していた可能性が高いと考える。
また、インサートの表面粗さが粗い参考例1〜3では、切削開始時の切削加工表面は光沢面であったが、逃げ面摩耗幅0.06mmの初期段階で切削加工表面に、図3(b)に示すようにムシレが発生し、白濁仕上げ面となったために0.5分又は0.6分で切削を終了した。
また、インサートの表面粗さが十分改善されていない比較例1もほぼ同様の傾向を示した。
これに対し、ウエットブラスト処理によりインサートの表面粗さを低減し、表面平滑性を高めた本発明品1〜4は、切削加工表面は、図3(a)に示されるような光沢のある良好な仕上げ面を呈しており、かつ、長寿命を示した。
これら切削インサートに実施例1と同様のブラシホーニング処理およびウエットブラスト処理を、表3に示す工程順序、処理条件で施した。
さらに、ウエットブラスト処理を施した後にブラシホーニング処理を行った本発明8〜10は、ブラシホーニング処理後にウエットブラスト処理を行った本発明5〜7と比較し、ホーニング部の表面粗さも大幅に改善されていることがわかる。
《切削試験3》
被削材;JIS−SNCM439の角材、
切削速度;250m/min、
送り;0.1mm/rev、
切り込み;1.2mm
の湿式断続切削を行い、
欠損が発生するまでの衝撃回数を評価した。
《切削試験4》
被削材;JIS−SUJ2の丸棒、
切削速度;400m/min、
送り;0.06mm/rev、
切り込み;0.5mm
の湿式連続切削を行い、
切削時間0.2分後の切削開始時点の切削加工表面の観察を行った。
ウエットブラスト処理によってもホーニング量が小さい場合はホーニング処理も可能なため、この実施例3では、すくい面および逃げ面の両方から測定した幅が0.03〜0.04mmとなる概略Rホーニングとなるように、表5に示す条件でウエットブラスト処理を行い、同時にホーニング処理も施した。
但し、参考例5については、ウエットブラスト処理を行わず、同形状のホーニングをブラシホーニングにより施した。
更に、ブラシホーニング等によるホーニング処理を施さなくても、ウエットブラスト処理により同時に微小なRホーニングが施されており、経済的な結果が得られた。
《切削試験5》
被削材;JIS−SCM440の角材、
切削速度;350m/min、
送り;0.1mm/rev、
切り込み;1mm、
の湿式断続切削を行い、
欠損が発生するまでの衝撃回数を評価した。
《切削試験6》
被削材;JIS−SCM415の丸棒、
切削速度;300m/min、
送り;0.08mm/rev、
切り込み;0.8mm、
の湿式連続切削による内径加工を行い、
切れ刃交換までの実切削時間を評価し、切れ刃交換時の切削加工表面(仕上げ面)の観察も行った。
表6に、これらの結果を示す。
なお、切れ刃交換までの実切削時間は、仕上げ面が劣化した場合には、その時点で切削を終了してそれまでの時間とし、良好な仕上げ面が維持されている場合には、逃げ面摩耗幅が0.15mmに達するまでの時間とした。
これは、逃げ面摩耗幅が0.15mmを越えるまで成長すると仕上げ切削での加工寸法精度を維持することができなくなるからである。
また、インサートの表面粗さが粗い参考例5では、切削開始時の切削加工表面は光沢面であったが、逃げ面摩耗幅0.05mmの初期段階で切削加工表面に、ムシレが発生し、白濁仕上げ面となったために0.3分で切削を終了した。
これに対し、ウエットブラスト処理によりインサートの表面粗さが低減し、表面平滑性を高めた本発明品11〜14は、切削加工表面が光沢のある良好な仕上げ面を呈しており、かつ、長寿命を示した。
Claims (9)
- 逃げ面の全部が研磨加工されている炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、インサート表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上であり、かつ、インサート表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であることを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、ウエットブラスト処理を施されたことにより、インサート表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上であり、かつ、インサート表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であることを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- インサート表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で600MPa以上である請求項1または2に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- インサートの刃先先端のホーニング部の表面粗さが、インサートの逃げ面およびすくい面の表面粗さより小さく形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- インサートの刃先先端のホーニング部の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 原料粉末を成形、焼結することにより、所定形状の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートを作製した後、該インサートの表面にウエットブラスト処理を施し、インサート表面部の硬質相の残留応力を、圧縮で450MPa以上、かつ、インサート表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下とすることを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- インサートの表面にウエットブラスト処理を施した後、インサートの刃先先端にホーニング加工を施す請求項6に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- インサートの表面にウエットブラスト処理を施した後、インサートの刃先先端にホーニング加工を施し、インサートの刃先先端のホーニング部の表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下とする請求項7に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- ホーニング加工を湿式ブラシホーニングで施す請求項7または8に記載の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
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