JP3653518B2 - 吸音材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、出来る限り軽量化された構成により静けさを求めるあらゆる分野に用いられる吸音材に関し、たとえば、建築物(ビル,マンション,1戸建住宅等)の内装材,建築資材,公害防止部材(遮音壁等),乗り物(飛行機,電車,自動車等),音響関連施設(コンサートホール等)または音響関連設備等に用いられる吸音材に関する。
【0002】
【従来の技術】
騒音を吸収する吸音材としては、種々のものが存在するが、その吸音機構に着目すると、「多孔質型吸音材」,「膜振動型吸音材」および「共鳴器型吸音材」等に分類できる。
【0003】
ここで、「多孔質型吸音材」は、繊維間の空隙や気泡のような「細孔」における摩擦抵抗等により音エネルギを吸収するものであり、「膜振動型吸音材」は、気密な「膜」を振動させて音エネルギを吸収するものであり、「共鳴器型吸音材」は、共鳴器として機能する「空洞」により共鳴周波数付近の音エネルギを吸収するものである。
【0004】
これらのうち、「多孔質型吸音材」は軽量であり、また、成形が容易であること等から、様々な用途に用いられており、たとえば、平成12年6月13日付で出願公開された特開2000−160818号公報には、「多孔質型吸音材」を自動車のフロアマットに適用した技術が開示されている。
【0005】
この従来技術は、カーペット層とフェルト層との間に通気防水層を介在させ、自動車の車内に入り込んだ雨水等を通気防水層で遮水するとともに、車内に入射した騒音を「多孔質型吸音材」としてのフェルト層で吸音するようにしたものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−160818号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術では、フェルト層における「繊維との摩擦抵抗」,「繊維の振動」および「空気の粘性抵抗」等によって騒音を吸音していたが、フェルト層のみでは、十分な吸音効果が得られないという問題があった。
【0008】
つまり、繊維集合体であるフェルト層では、「騒音が当たる繊維の総表面積」が小さく、また、「騒音の伝播経路」が単調なため、「繊維との摩擦抵抗」や「空気の粘性抵抗」等による吸音効果を十分に得られないという問題があった。
【0009】
また、通気防水層には、通気性を確保するために微細な孔等が形成されていたので、車内に入り込んだ雨水や車内でこぼれたジュース等が、通気防水層を通過してフェルト層に吸収され、フェルト層の吸音機能が損なわれるという問題があった。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、軽量にしてより優れた吸音特性を得ることのできる、吸音材を提供することである。この発明の他の目的は、雨水等によって吸音機能が損なわれるのを防止できる、吸音材を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載した発明は、「繊維12a間に空隙12bを有する繊維集合体12と、複数の独立気泡14aを含み、かつ、繊維12a間に空隙12bを残しつつ繊維12aに付着された吸音樹脂14bとを備える、吸音材10」である。
【0012】
この発明では、繊維12a間に空隙12bを残しつつ、独立気泡14aを含む吸音樹脂14bを繊維12aに付着させるようにしているので、繊維集合体12の内部では、(a)空隙12bや気泡14aによって「多孔質型吸音材」に特有の「細孔」が構成され、(b)繊維12aに付着された吸音樹脂14bによって「膜振動型吸音材」に特有の「膜」が構成され、(c)繊維12a間の空隙12bが吸音樹脂14bで囲まれることによって「共鳴器型吸音材」に特有の「空洞」が構成される。したがって、吸音材10に入射した騒音は、「独立気泡14aの振動」,「繊維12aの振動」,「吸音樹脂14bの振動」,「繊維12a間の空隙12bや独立気泡14aにある空気の粘性抵抗」,「空隙12bや独立気泡14aでの摩擦抵抗」および「空隙12bでの共鳴」等によって熱エネルギに変換されて吸音される。
【0013】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した吸音材10において、「吸音樹脂14bは繊維12a間において膜を構成する」ことを特徴とする。
【0014】
この発明は、繊維12aに付着された吸音樹脂14bが「膜振動型吸音材」に特有の「膜」を構成するものである。
【0015】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した吸音材10において、「吸音樹脂14bは撥水剤を含む」ことを特徴とする。
【0016】
この発明において、撥水材を含む吸音樹脂14bの表面では、水滴との接触角が大きくなるため、水滴が弾かれる。
【0017】
請求項4に記載した発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載した吸音材10において、「繊維集合体12は不織布である」ことを特徴とする。
【0018】
繊維集合体12としては、不織布や織布等が考えられるが、この発明は「不織布」に関するものである。
【0019】
請求項5に記載した発明は、「基材層12と表面層16とが接着機能を有する防水吸音層14を介して接合された、吸音材10であって、基材層12および表面層16は繊維12a,18a間に空隙12b,18bを有する繊維集合体であり、防水吸音層14は撥水材と複数の独立気泡14aとを含む樹脂層であり、防水吸音層14の一部が基材層12を構成する繊維12a間に食い込まされ、かつ、防水吸音層14の他の一部が表面層16を構成する繊維18a間に食い込まされた、吸音材10」である。
【0020】
この発明では、繊維12a,18a間に食い込まされた防水吸音層14の一部および他の一部がアンカー(錨)として機能する。この発明において、吸音材10に入射した騒音は、「基材層12および表面層16を構成する繊維12a,18aの振動」,「防水吸音層14に含まれた独立気泡14aの振動」,「空隙12b,18bや独立気泡14aにある空気の粘性抵抗」および「繊維12a,18a間の空隙12b,18bや独立気泡14aでの摩擦抵抗」等によって、熱エネルギに変換されて吸音される。また、撥水材を含む防水吸音層14の表面では、水滴との接触角が大きいために水滴が弾かれる。
【0021】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した吸音材10において、「防水吸音層14の一部および他の一部が繊維12a,18a間に空隙12b,18bを残しつつ繊維12a,18a間に付着された」ことを特徴とする。
【0022】
この発明では、繊維12a,18a間に食い込まされた防水吸音層14によって「共鳴器型吸音材」に特有の「空洞」が構成されるので、この「空洞」における共鳴によっても騒音が吸音される。
【0023】
【発明の効果】
請求項1〜4に記載した発明では、繊維集合体を構成する繊維間に空隙を残しつつ、独立気泡を有する吸音樹脂を繊維に付着させるようにしているので、「多孔質型吸音材」に特有の「細孔」、「膜振動型吸音材」に特有の「膜」および「共鳴器型吸音材」に特有の「空洞」が繊維集合体の内部に同時に構成される。したがって、多様な吸音機構によって、騒音を効率よく吸音できる。また、繊維間に残された空隙によって通気性を確保できるとともに、軽量化を達成できる。
【0024】
請求項3に記載した発明では、撥水剤を含む吸音樹脂を用いているので、吸音樹脂の表面において雨水等を弾くことができ、繊維集合体の内部に雨水等が浸透するのを抑制できる。したがって、雨水等による吸音機能の低下を防止できる。
【0025】
請求項4に記載した発明では、繊維集合体として不織布を用いているので、吸音性に優れた布状の吸音材を得ることができる。
【0026】
請求項5に記載した発明では、繊維間に食い込まされた防水吸音層がアンカー(錨)として機能するので、防水吸音層の接着機能と相まって、基材層と表面層とを確実に接合できる。また、繊維集合体である基材層および表面層が「多孔質型吸音材」として機能し、独立気泡を有する防水吸音層が「多孔質型吸音材」および「膜振動型吸音材」として機能するので、多様な吸音機構によって、騒音を効率よく吸音できる。さらに、撥水剤を含む防水吸音層の表面で雨水等を弾くことができるので、基材層に雨水等が浸透するのを抑制でき、雨水等による吸音機能の低下を防止できる。
【0027】
請求項6に記載した発明では、繊維間に食い込まされた防水吸音層によって「共鳴器型吸音材」に特有の「空洞」が構成されるので、その「空洞」における「共鳴」によっても騒音を吸音できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1および図2に示した吸音材10は、本発明を自動車のフロアマットに適用したものであり、基材層12,防水吸音層14および表面層16を含む。
【0029】
基材層12は、複数の繊維12aからなる繊維集合体であり、より具体的には、ニードルパンチ法,ステッチボンド法,サーマルボンド法またはスパンボンド法等により製造された不織布である。基材層12を構成する繊維12a間には、図3および図4に示すように、空隙12bが確保されており、この空隙12bが「多孔質型吸音材」に特有の「細孔」となる。
【0030】
繊維12aとしては、反毛,合成繊維(たとえば、ポリエステル,ポリプロピレンまたはナイロン)または無機繊維(たとえば、グラスウールまたはロックウール)等を用いることができ、基材層12の吸音特性は、繊維12aの種類,繊度,見掛け繊維密度、または基材層12の厚さ等を変えることにより調整可能である。
【0031】
たとえば、繊度が6〜9dtex程度で、かつ、見掛け繊維密度が0.01〜0.08g/cm3程度のポリエステル製不織布を用いて、厚さが3〜10mm程度の基材層12を構成した場合には、周波数120Hz〜6KHz程度の自動車騒音を効果的に吸音することができる。
【0032】
表面層16は、吸音材10の表面に吸音性,装飾性および保温性等を付与するものであり、基布18と基布18に埋め込まれたパイル20とを含むタフテッドカーペットである。
【0033】
基布18は、複数の繊維18aからなる繊維集合体であり、より具体的には、ニードルパンチ法,ステッチボンド法,サーマルボンド法またはスパンボンド法等により製造された不織布である。基布18を構成する繊維18a間には、図5に示すように、空隙18bが確保されており、この空隙18bが「多孔質型吸音材」に特有の「細孔」となる。
【0034】
繊維18aとしては、反毛,合成繊維(たとえば、ポリエステル,ポリプロピレンまたはナイロン)または無機繊維(たとえば、グラスウールまたはロックウール)等を用いることができ、基布18の吸音特性は、繊維18aの種類,繊度,見掛け繊維密度、または基布18の厚さ等を変えることにより調整可能である。
【0035】
防水吸音層14は、撥水材と複数の独立気泡14aとを含む樹脂層であり、基材層12と表面層16とを接合する「接着機能」と、騒音を吸音する「吸音機能」と、雨水等を遮水する「遮水機能」とを併有するものである。
【0036】
防水吸音層14は、流動性発泡樹脂を固めたものであり、流動性発泡樹脂は、接着機能を有する流動性樹脂に「撥水材」を添加して発泡させることにより調製される。防水吸音層14を形成する際には、流動性発泡樹脂を介して基材層12と表面層16とを重ね合わせ、その後、流動性発泡樹脂を固化させる。流動性発泡樹脂を固化させると、これが「吸音樹脂14b」となり、吸音樹脂14bに含まれた独立気泡14aが「多孔質型吸音材」に特有の「細孔」となる。
【0037】
ここで、「流動性樹脂」としては、アクリル,EVA(Ethylene Vinyl Acetate),SBR(Styrene-Butadiene Rubber),NBR(Nitrile-Butadiene Rubber)またはウレタン等の樹脂エマルジョンや、合成ゴム系または合成樹脂系等の溶剤型接着剤を用いることができ、「撥水材」としては、セラミック(アルミナシリカ系、ケイ酸ジルコニア系、ケイ酸アルミニウム系等),シリコンまたはフッ素等を用いることができる。
【0038】
また、流動性樹脂を発泡させる方法としては、ADCA(Azodicarbonamide),OBSH(Oxybis benzene-sulfonylhydrazide)またはDPT(dinitrosopentamethylenetetramine)等のような発泡剤による方法や、ミキサーで掻き混ぜて気泡を含ませる方法等を用いることができる。
【0039】
防水吸音層14の吸音特性は、独立気泡14aの大きさや分布密度を変えることにより調整可能であり、独立気泡14aの大きさや分布密度は、発泡剤の種類,粒径または添加量等を変えることにより調整可能である。
【0040】
また、防水吸音層14においては、下部が基材層12を構成する繊維12a間の空隙12bに食い込まされ、上部が表面層16を構成する繊維18a間の空隙18bに食い込まされる。したがって、基材層12の上面付近では、図4に示すように、繊維12a間に空隙12bを残しつつ、繊維12aに吸音樹脂14bが付着され、吸音樹脂14bの接着機能とアンカー(錨)機能とによって防水吸音層14と基材層12とが接合される。一方、表面層16の下面付近では、図5に示すように、繊維18a間に空隙18bを残しつつ、繊維18aに吸音樹脂14bが付着され、吸音樹脂14bの接着機能とアンカー(錨)機能とによって防水吸音層14と表面層16とが接合される。
【0041】
したがって、基材層12の上面付近および表面層16の下面付近では、(a)空隙12bおよび18bならびに気泡14aによって「多孔質型吸音材」に特有の「細孔」が構成され、(b)繊維12a間および繊維18a間には、吸音樹脂14bによって「膜振動型吸音材」に特有の「膜」が構成され、(c)空隙12bおよび18bが吸音樹脂14bで囲まれることによって「共鳴器型吸音材」に特有の「空洞」が構成される。
【0042】
吸音材10を製造する際には、図6に示すように、基材層12(図1,図2)を構成する不織布12c,防水吸音層14(図1,図2)を構成する流動性発泡樹脂14cおよび表面層16(図1,図2)を構成するカーペット16cが準備され、これらが製造装置22(図6)を用いて積層される。
【0043】
製造装置22は、ガイドローラ24a〜24eによって構成された搬送経路24を含み、ガイドローラ24bと対向する位置には、加圧ローラ26が配置され、この加圧ローラ26がバネ26aによってガイドローラ24b側へ押される。
【0044】
また、ガイドローラ24aとガイドローラ24bとの間には、流動性発泡樹脂の塗布装置28が配置され、ガイドローラ24bとガイドローラ24cとの間には、乾燥機30が配置される。さらに、搬送経路24の終点には、巻取ローラ32が配置される。
【0045】
製造装置22を用いて吸音材10を製造する際には、まず、ガイドローラ24aから搬送経路24に対してカーペット16cが供給され、このカーペット16cの接合面16dに、塗布装置28によって流動性発泡樹脂14cが塗布される。接合面16dに塗布される流動性発泡樹脂14cは、予め独立発泡されたものであり、後工程(乾燥工程等)で発泡されるものではない。後工程で発泡させたのでは、発泡による体積膨張によって空隙12bおよび18b(図4,図5)が閉塞されてしまうおそれがあるからである。ただし、空隙12bおよび18bの閉塞を確実に防止できるのであれば、後の乾燥工程等で発泡させてもよい。
【0046】
流動性発泡樹脂14cの塗布が完了すると、ガイドローラ24bから供給された不織布12cが、接合面16dの上に重ね合わされる。そして、ガイドローラ24bと加圧ローラ26とによって、カーペット16cと不織布12cとが所定圧力で圧着される。
【0047】
すると、接合面16dに塗布された流動性発泡樹脂14cが、カーペット16cおよび不織布12cのそれぞれを構成する繊維12a,18a間の空隙12b,18b(図4,図5)へ押し込まれる。
【0048】
このとき、流動性発泡樹脂14cは、繊維12a,18aに沿って流動するため、空隙12b,18bが完全に埋められることはなく、繊維12a,18a間には、空隙12b,18bが残されることになる。また、カーペット16cと不織布12cとの間で流動性発泡樹脂14cが圧縮されると、カーペット16cおよび不織布12cの各圧縮面において流動性発泡樹脂14cの独立気泡が破裂されるので、流動性発泡樹脂14cが各圧縮面上で連続することにより樹脂膜が構成される。したがって、膜の密度は各圧縮面において大きくなる。
【0049】
なお、吸音材10の吸音特性は、加圧ローラ26の加圧力(バネ26aの強さ等)を変更することによっても調整可能であり、加圧力を大きくするほど多くの流動性発泡樹脂14cが基材層12および表面層16の内部に入り込むため、繊維12a,18a間における独立気泡14a(図4,図5)の密度が高くなり、高周波数帯の吸音率が高くなる。
【0050】
そして、圧着工程を経たカーペット16cおよび不織布12cは、乾燥機30に与えられ、流動性発泡樹脂14cが乾燥される。これにより流動性発泡樹脂14cが吸音樹脂14bとなり、防水吸音層14が形成されると同時に吸音材10が完成される。完成した吸音材10は、自然冷却されながら、ガイドローラ24c〜24eを経て巻取ローラ32へ与えられる。
【0051】
このような吸音材10が自動車の室内にフロアマットとして敷設されると、吸音材10に入射した騒音は、多様な吸音機構により効率よく吸音される。つまり、吸音材10に入射した騒音は、「基材層12および表面層16を構成する繊維12a,18aの振動」,「吸音樹脂14bに含まれた独立気泡14aの振動」,「空隙12b,18bや独立気泡14aにある空気の粘性抵抗」,「空隙12b,18bや独立気泡14aでの摩擦抵抗」および「吸音樹脂14bにより囲まれた空隙12b,18bでの共鳴」等によって、熱エネルギに変換されて効率よく吸音される。
【0052】
また、室内に入り込んだ雨水や室内でこぼれたジュース等は、防水吸音層14において遮水される。つまり、撥水材を含む防水吸音層14の表面では、水滴との接触角が大きいために雨水等の水滴が弾かれる。したがって、基材層12に雨水等が浸透する心配はなく、吸音材10の吸音機能が損なわれる心配はない。また、基材層12をも透過した雨水等によって、吸音材10の下にある金属部が腐蝕される心配はない。
【0053】
さらに、吸音樹脂14bの接着機能とアンカー(錨)機能とによって、基材層12と表面層16とが確実に接合されているので、基材層12から表面層16が剥離する心配もない。
【0054】
発明者等は、吸音材10の吸音性を実験により検証した。以下には、その実験方法および実験結果について説明する。
【0055】
[吸音性の確認実験]
(実験方法)
目付350g/m2で厚さ5mmのポリエステル製ニードルパンチ不織布を基材層12とし、独立気泡を有するアクリル樹脂エマルジョンを用いて防水吸音層14を構成し、目付2000g/m2のナイロン製タフテッドカーペットを表面層16とした。
【0056】
これらの基材層12,防水吸音層14および表面層16からなる吸音材10を「試料」とし、基材層12のみを「比較試料1」とし、表面層16と防水吸音層14との積層体を「比較試料2」とした。
【0057】
そして、「試料」,「比較試料1」および「比較試料2」について、ISO10534−2に準じて垂直入射吸音率の測定を行った。
【0058】
(実験結果)
実験結果を図7のグラフに示す。
【0059】
このグラフから、「試料(吸音材10)」では、自動車騒音の周波数範囲に対応する120Hz〜6KHzの騒音を効果的に吸音できることがわかり、特に、2KHz以上の高周波数帯において優れた吸音特性を示すことがわかる。
【0060】
また、「試料(吸音材10)」では、「比較試料1」の特性と「比較試料2」の特性とを単純に合計した以上の優れた吸音特性を示すことがわかる。これは、基材層12の上面付近において、「多孔質型吸音材」,「膜振動型吸音材」および「共鳴器型吸音材」の各吸音機構が実現されており、これらの相乗的な効果が得られたからであると考えられる。
【0061】
なお、基材層12は、繊維間に空隙を有する繊維集合体であればよく、その種類は特に限定されるものではない。したがって、織布やその他の不織布以外の繊維集合体を基材層12として用いてもよい。
【0062】
また、表面層16は、シート状の部材であればよく、その種類は特に限定されるものではない。したがって、ニードルパンチカーペット等のようなタフテッドカーペット以外のカーペットや、図8に示すようなカーペット以外の繊維集合体(不織布,織布等)34を表面層16として用いてもよいし、図9に示すような繊維集合体ではないシート状の部材36を表面層16として用いてもよい。
【0063】
このように、基材層12および/または表面層16を他の部材に変更することにより、吸音材10の付属的機能を拡張または変更することができるので、部材選択の如何によっては、吸音材10を建築資材,防音器材または音響器材等として用いることもできる。
【0064】
また、繊維12a,18a間に空隙12b,18bを残しつつ繊維12a,18aに吸音樹脂14bを付着させた構成(図4,図5)は、図10に示す吸音材38や、図11に示す吸音材40によっても実現可能である。
【0065】
吸音材38(図10)は、繊維集合体(織布,不織布等)38aの表面付近の繊維38b間に空隙を残しつつ、複数の独立気泡38cを含む吸音樹脂38dを繊維38bに付着させたものであり、吸音材40(図11)は、繊維集合体(織布,不織布等)40aの全体において、繊維40b間に空隙を残しつつ、複数の独立気泡40cを含む吸音樹脂40dを繊維40bに付着させたものである。
【0066】
これらの実施例(図10,図11)においても、繊維集合体38aまたは40aの内部において、「多孔質型吸音材」に特有の「細孔」,「膜振動型吸音材」に特有の「膜」,「共鳴器型吸音材」に特有の「空洞」を構成することができるので、上述した実施例と同様に、極めて優れた吸音特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の吸音材を示す断面図である。
【図2】この発明の一実施例の吸音材を示す拡大断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線拡大断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線拡大断面図である。
【図5】図2におけるV−V線拡大断面図である。
【図6】吸音材の製造工程および製造装置を示す図である。
【図7】吸音材の吸音性確認実験の結果を示すグラフである。
【図8】表面層の変形例(他の繊維集合体)を示す断面図である。
【図9】表面層の変形例(樹脂シート)を示す断面図である。
【図10】この発明の他の実施例(防水吸音層および表面層なし)を示す断面図である。
【図11】この発明の他の実施例(防水吸音層および表面層なし)を示す断面図である。
【符号の説明】
10,38,40… 吸音材
12… 基材層
14… 防水吸音層
12a,18a… 繊維
12b,18b… 空隙
14a… 独立気泡
14b… 吸音樹脂
16… 表面層
Claims (6)
- 繊維間に空隙を有する繊維集合体と、複数の独立気泡を含み、かつ、前記繊維間に前記空隙を残しつつ前記繊維に付着された吸音樹脂とを備える、吸音材。
- 前記吸音樹脂は前記繊維間において膜を構成する、請求項1に記載の吸音材。
- 前記吸音樹脂は撥水剤を含む、請求項1または2に記載の吸音材。
- 前記繊維集合体は不織布である、請求項1ないし3のいずれかに記載の吸音材。
- 基材層と表面層とが接着機能を有する防水吸音層を介して接合された、吸音材であって、
前記基材層および前記表面層は繊維間に空隙を有する繊維集合体であり、
前記防水吸音層は撥水材と複数の独立気泡とを含む樹脂層であり、
前記防水吸音層の一部が前記基材層を構成する繊維間に食い込まされ、かつ、前記防水吸音層の他の一部が前記表面層を構成する繊維間に食い込まされた、吸音材。 - 前記防水吸音層の前記一部および前記他の一部が前記繊維間に前記空隙を残しつつ前記繊維に付着された、請求項5に記載の吸音材。
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