JP5234747B2 - 滑り防止性に優れた敷物 - Google Patents

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Description

本発明は、敷物本体と裏張り材とが積層一体化されてなる自動車用床マット、室内カーペット、ホットカーペット、玄関用マット、台所用マットなどの各種敷物に関し、特に、裏張り材に優れた滑り防止性を付加してなる二次敷物に関するものである。
従来より、自動車の床全面や室内の床全面には、敷物が敷設されていることが多い。そして、この敷物の上に更に、比較的小さな形状の敷物が重ねて敷設されることもある。ここで、床全面に敷設される敷物のことを一次敷物と言い、この一次敷物の上に敷設された敷物を二次敷物と言い、本発明は二次敷物に関するものである。
二次敷物は、一次敷物の表面状態にもよるが、単に一次敷物上に重ねているだけなので、ずれやすいということがあった。すなわち、一次敷物の表面と二次敷物の裏面との摩擦係数が低く、二次敷物が滑って、ずれるということがあった。特に、一次敷物として、パイルを植え付けたタフトカーペットを採用した場合には、ニードルパンチカーペットに比べて、二次敷物が滑ってずれやすいということがあった。このため、二次敷物の裏面にラッセル編地を貼着し、特殊な加工を施して、二次敷物に滑り止め機能を付加し、二次敷物をずれにくくすることが行われている。たとえば、ラッセル編地に多数のループパイルを形成し、このループパイルを二次敷物の裏面に配置することが行われている。この場合、二次敷物裏面のループパイルが一次敷物表面に食い込み、二次敷物が滑りにくくなる。しかしながら、一般的に、ラッセル編地にループパイルを形成した場合、当該ループパイルは編成方向に傾斜している。したがって、ループパイルを設けて、このループパイルを一次敷物に食い込ませても、ループパイルが傾斜している方向には、ずれにくいが、その反対方向には、ずれやすいという欠点があった。また、ループパイルは、その先端が丸くなっているため、基本的に、一次敷物に食い込みにくいという欠点もあった。
このため、ラッセル編地に形成した各ループパイルの4分の1以上を加熱溶融して、各ループパイルを切断すると共に切断端に溶融玉を形成し、更に加熱溶融時にループパイルを押圧してランダム方向に傾斜させることが行われている(特許文献1)。二次敷物の裏面に、このような溶融玉付きカットパイルが存在していると、この溶融玉付きカットパイルのアンカー効果によって、二次敷物がよりずれにくくなるのである。また、ランダム方向に傾斜させることによって、いずれの方向にもずれにくくなるのである。しかしながら、特許文献1記載の方法では、ラッセル編地に形成されたパイルをランダム方向に傾斜させるため、加熱時に、ループパイルを押圧しなければならないということがあった。加熱時に、ループパイルを押圧すると、加熱体とラッセル編地とが近接し、火災の危険がある。
そこで、本発明者は、特許文献1記載の技術の欠点を解決するために、特開2005−80954公報(特許文献2)記載の技術を提案している。この技術は、ループパイルを少なくとも二本のモノフィラメントで構成し、ループパイル中で少なくとも一回以上の撚りをかけたラッセル編地を準備し、このループパイルの頂上付近を切断することにより、パイルをランダム方向に傾斜させるというものである。この技術は、単にループパイルを刃物で切断すればよいだけであり、非常に合理的な技術であると共に、優れた滑り防止性を備えている。
特公平3−60483号公報(第2頁第3欄第37行目乃至第4欄第3行目、第2頁第4欄第41〜43行目、第4頁の図面) 特開20 0 5 −80954公報(第2頁、特許請求の範囲)
本発明は、特許文献2記載の技術を利用したものであって、ランダム方向に傾斜したモノフィラメント表面に、特定の混合エマルジョンを塗布して樹脂被膜を形成させることにより、さらに優れた滑り防止性を発揮させようというものである。
すなわち、本発明は、一次敷物の上に敷設される二次敷物であって、敷物本体と裏張り材とが積層一体化されてなる二次敷物において、前記裏張り材は、その裏面にネット状ラッセル編地を備えており、前記ネット状ラッセル編地は、経糸である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成されており、該経糸は鎖編みされている地糸と、一定コースでループパイルを形成し、該一定コース間では鎖編みされているパイル糸とよりなり、該パイル糸は、少なくとも二本のモノフィラメントで構成されていると共に、該ループパイルの長さ中において少なくとも一回以上の撚りが施されており、且つ、該ループパイルは、その頂上近傍で切断されてカットパイルとなり、該カットパイル中の少なくとも二本のモノフィラメントは、ばらけて傾斜して起立しており、前記カットパイルを構成する前記モノフィラメント表面には、フッ素系又はシリコーン系撥水剤とアクリル樹脂との混合エマルジョンが塗布及び乾燥されてなる樹脂被膜が固着されていることを特徴とする滑り防止性に優れた二次敷物に関するものである。なお、以下、本発明に係る二次敷物のことを単に「敷物」と表現することもある。
本発明に係る敷物は、敷物本体1と裏張り材2とが積層一体化されてなるものである。裏張り材2は、少なくとも、その裏面にネット状ラッセル編地21を備えている。すなわち、裏張り材2は、図1に示すようにネット状ラッセル編地21のみからなっていてもよいし、図2に示すようにネット状ラッセル編地21と短繊維集積体22とからなっていてもよい。
本発明で用いるネット状ラッセル編地21は、角目、菱目、亀甲目等の目を持つ網状のラッセル編地であって、経糸である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成されている。ネット状ラッセル編地21が伸縮性を持たないようにするためには、目を角目とすればよい。また、伸縮性を与えたいときは、菱目又は亀甲目とすればよい。本発明において、経糸3は、地糸4とパイル糸5とで構成されている。地糸4としては、従来公知の糸が用いられ、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸などが用いられる。本発明においては、パイル糸5としてモノフィラメントが用いられるので、地糸4もモノフィラメントを用いるのが好ましい。モノフィラメントの種類としては、ポリオレフィンモノフィラメント、ポリエステルモノフィラメント又はポリアミド(ナイロン)モノフィラメントなどが用いられ、その繊度は100デニール以上、好ましくは300デニール程度が好ましい。
図3は、ネット状ラッセル編地2の経糸3のみを示したものであり、緯糸である挿入糸は省略されている。図3においては、地糸4は、地糸4aと地糸4bの二本が用いられている。すなわち、二本の地糸4a,4bを用いて、二枚筬で、各々左右対称に鎖編みされて、経糸3が形成されている。このように、左右対称に鎖編みされることによって、鎖編糸で構成される経糸3の方向性がなくなり、地糸4a及び4bから上に浮き上がるループパイルが、直立しやすくなるので、好ましい。
パイル糸5も、地糸4と同様に鎖編みされているが、一定コースでループパイルが形成されている。たとえば、図3に示す如く、4コース間で鎖編みされ、次のコースでループパイルが形成され、この後は再び4コース間で鎖編みされ、更に次のコースでループパイルが形成され、以下順次同様の編成がなされる。すなわち、4コース毎にループパイルが形成されていることになる。各経糸3においても、同様にループパイルが形成されているが、隣り合う経糸3,3・・・においては、同一コースにループパイルが形成されずに、千鳥状にループパイルが形成されているのが好ましい。この方が満遍なく、一次敷物表面に食い込むパイルが得られるからである。
図4は、図3の経糸3を構成しているパイル糸5、地糸4a及び地糸4bを分解して模式的に示したものである。図4からも明らかなように、本発明の一実施例では、経糸3はパイル糸5が一本で、地糸4が二本で、合計三本の糸で構成されている。しかし、経糸3には、地糸4とパイル糸5が存在すればよいので、地糸4が一本でパイル糸が一本の合計二本で構成されていてもよい。また、地糸4が二本でパイル糸が二本の合計四本で構成されていてもよい。さらに、地糸4及びパイル糸5の合計本数を五本以上としてもよい。
本発明において、パイル糸5は、少なくとも二本のモノフィラメントで構成されている。このモノフィラメントの種類も、ポリエチレンモノフィラメント、ポリエステルモノフィラメント又はポリアミド(ナイロン)モノフィラメント等が用いられ、その繊度は100デニール以上、好ましくは300デニール程度が好ましい。そして、この少なくとも二本のモノフィラメントには撚りが掛けられていることが必要で、しかも、その撚り回数が一定以上であることが必要である。撚り回数は、形成されているループパイルの長さにおいて、少なくとも一回以上の撚り回数である。すなわち、ループパイルの長さにおいて、各モノフィラメントが一回り以上旋回しているため、このループパイルを頂上近傍で切断すると、この旋回が解けて、切断端がランダム方向に向くのである。したがって、切断されたカットパイルもまた、ランダム方向に傾斜して起立することになるのである。なお、旋回が解けるのは、各モノフィラメント6,6・・・に剛性があるからである。このような剛性を与える点から、モノフィラメント6,6・・・の繊度は大きい方が好ましく、具体的には、上記した100デニール以上となるのである。
本発明で用いるネット状ラッセル編地1の緯糸である挿入糸としては、従来公知の糸が用いられ、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸等が用いられる。
本発明において、裏張り材2は、上記したネット状ラッセル編地21のみからなっていてもよいし、ネット状ラッセル編地21と短繊維集積体22が積層されていてもよい。もちろん、短繊維集積体22が積層されるのは、ネット状ラッセル編地21が一次敷物と当接するのと反対面である。短繊維集積体22は、短繊維23が多数集積されてなるものである。短繊維23としては、従来公知のポリエステル短繊維、ポリオレフィン短繊維、ポリアミド短繊維、レーヨン短繊維等が用いられる。そして、短繊維23相互間が絡合することによって、その形態が維持されている。短繊維集積体23の目付は任意であるが、一般的に、100〜800g/m2程度であるのが好ましい。目付が100g/m2未満になると、吸音機能やクッション機能が低下する傾向が生じる。また、目付が800g/m2を超えると、裏張り材2の重量が重くなり、取り扱いにくくなる傾向が生じる。
短繊維集積体22中の短繊維23は、ネット状ラッセル編地21を形成している経糸3の地糸4及び緯糸と絡合している。そして、この絡合によって、ネット状ラッセル編地21と短繊維集積体22とが一体化している。短繊維23相互間の絡合や、短繊維23と地糸4及び緯糸との絡合は、従来公知のニードルパンチ等の手段によって、行うことができる。
本発明において、短繊維23の一部として低融点短繊維を混合するのが好ましい。この低融点短繊維を溶融又は軟化させることによって、短繊維23相互間や、短繊維23と地糸4及び緯糸とを接着させることができるからである。この接着によって、短繊維集積体23の形態安定性が向上し、また、短繊維集積体22とネット状ラッセル編地21との一体化も強固になる。低融点短繊維は、短繊維集積体22中の全短繊維に対して、5〜50質量%程度混合するのが一般的である。低融点短繊維が5質量%未満であると、短繊維23相互間の接着等が不十分となる傾向が生じる。また、低融点短繊維が50質量%を超えると、短繊維集積体22が硬くなりすぎて、吸音機能やクッション機能が低下する傾向が生じる。
低融点短繊維としては、融点が150℃以下程度のポリエステル繊維やポリオレフィン繊維等が用いられる。低融点短繊維としては、繊維全体が低融点成分で形成されているものを使用してもよいが、好ましくは、芯成分が高融点成分で鞘成分が低融点成分よりなる芯鞘型複合短繊維を用いるのがよい。芯鞘型複合短繊維の場合、鞘成分が溶融又は軟化することによって、短繊維23相互間等が接着する。そして、芯成分は当初の繊維形態を維持したままであるので、短繊維集積体22が硬くなりにくく、吸音機能やクッション機能等の低下を防止することができる。また、芯鞘型複合短繊維に代えて、横断面が半月状である高融点成分と低融点成分とを貼り合わせた、サイドバイサイド型複合短繊維も用いることができる。この場合も、高融点成分が当初の繊維形態を維持しているため、短繊維集積体23が硬くなるのを防止しうる。
ネット状ラッセル編地21が一次敷物と当接する面上に、傾斜して起立しているモノフィラメント6,6・・・の表面には、樹脂被膜が固着している。この樹脂被膜は、フッ素系撥水剤とアクリル樹脂との混合エマルジョン、又はシリコーン系撥水剤とアクリル樹脂との混合エマルジョンを、ネット状ラッセル編地21のモノフィラメント6,6・・・に、塗布及び乾燥することにより形成される。混合エマルジョンの塗布は、一般的にスプレー塗布によって行われる。そして、スプレー塗布後に、オーブン等の乾燥機を通して、混合エマルジョン中の水分を蒸発させて乾燥すれば、ネット状ラッセル編地21のモノフィラメント6,6・・・の表面に樹脂被膜が固着されるのである。
混合エマルジョン中のにおけるフッ素系又はシリコーン系撥水剤とアクリル樹脂との質量割合は、撥水剤:アクリル樹脂=3〜15質量%:97〜85質量%であるのが好ましい。撥水剤が3質量%未満になると、カットパイルを構成していモノフィラメント6,6・・・が、一次敷物に食い込みにくくなる傾向が生じる。また、撥水剤が15質量%を超えると、滑り防止性が低下する傾向が生じる。
本発明において、ネット状ラッセル編地21を備えた裏張り材2は、敷物本体1と積層一体化されて敷物となる。敷物本体1と裏張り材2との積層一体化は、任意の手段で行って差し支えない。本発明では、アクリル樹脂エマルジョンよりなる接着剤で、敷物本体1と裏張り材2とを貼合して、積層一体化するのが好ましい。
本発明に係る敷物は、床全面に敷設された一次敷物の上に敷設されて用いられる。特に、タフトカーペットよりなる一次敷物上に敷設する二次敷物として、好適に使用しうるものである。
本発明に係る敷物は、たとえば、以下のような準備工程(A)、積層工程(B)、絡合工程(C)、塗布工程(D)及び貼合工程(E)によって製造することができる。準備工程(A)は、ネット状ラッセル編地21を準備する工程である。ネット状ラッセル編地21は、前記したように、経糸3である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成され、経糸3は鎖編みされている地糸4と、一定コースでループパイルを形成し、この一定コース間では鎖編みされているパイル糸5とよりなる。パイル糸5は、少なくとも二本のモノフィラメントで構成されていると共に、ループパイルの長さ中において少なくとも一回以上の撚りが施されているものである。そして、ループパイルは、その頂上近傍で刃物等で切断されてカットパイルとなる。この切断によって、カットパイル中の少なくとも二本のモノフィラメントは、ばらけて、ランダムな方向に傾斜して起立した状態となる。すなわち、図5に示したようなカットパイルを持つネット状ラッセル編地21が得られるのである。ループパイルを切断してカットパイルとするのは、一般的に、ラッセル編地を編成し、ループパイルを形成した直後に行う。もちろん、一定数量のラッセル編地を編成し、その後で切断工程を経て、カットパイルとしてもよい。なお、カットパイルの端部は、そのままであってもよいし、毛焼きや熱ヒーターなどの手段によって加熱溶融し、溶融玉を作製して、より滑りにくい構造としてもよい。
次に、ネット状ラッセル編地21に、短繊維を集積させてなる短繊維ウェブを積層する(積層工程(B))。一般的には、ネット状ラッセル編地21のカットパイルが形成されている側の反対側に、短繊維23を集積させて短繊維ウェブを積層する。カットパイルが形成されている側に、短繊維23を多量に集積すると、カットパイルが短繊維ウェブ中に埋もれてしまうからである。しかしながら、集積する短繊維23の量が少量であるときは、カットパイルが形成されている側に、短繊維を集積させてもよい。
積層工程(B)の後、ニードルパンチを施す。ニードルパンチは、一般的に、短繊維ウェブ側から施す。ニードルパンチを施す絡合工程(C)によって、短繊維ウェブ中の各短繊維23相互間が絡合すると共に、短繊維23は、ネット状ラッセル編地21を形成している経糸3中の地糸4や、緯糸(挿入糸)とも絡合する。この絡合によって、短繊維ウェブは形態安定性のある短繊維集積体22となる。また、短繊維集積体22とネット状ラッセル編地21とは一体化され、剥離しにくくなる。
絡合工程(C)の後、加熱工程(C−1)を付加してもよい。加熱工程(C−1)を付加するときは、短繊維集積体22中に低融点短繊維を混合させておく。そして、加熱工程(C−1)で、低融点短繊維を溶融又は軟化させ、短繊維23相互間を接着すると共に、短繊維23とネット状ラッセル編地21の経糸3中の地糸4及び緯糸(挿入糸)とを接着する。加熱工程(C−1)は、短繊維集積体22とネット状ラッセル編地21との積層物を、熱風乾燥機中に導入することにより、又は一対の加熱ロール間に導入するなど、従来公知の方法で行うことができる。
加熱工程(C−1)の後に、以下に示すような塗布工程(D)を採用する。すなわち、少なくとも二本のモノフィラメントがばらけて、ランダムな方向に傾斜して起立した状態となっているネット状ラッセル編地21面に、フッ素系又はシリコーン系撥水剤とアクリル樹脂との混合エマルジョンを塗布する。具体的には、スプレー塗布の手段で、混合エマルジョンを100〜150g/m2程度塗布する。そして、オーブンを通して、混合エマルジョン中の水分を蒸発させ、撥水剤とアクリル樹脂とからなる樹脂被膜を起立しているモノフィラメント表面に固着する。
以上のようにして得られた裏張り材2が、敷物本体1の裏面に貼合されて(貼合工程(D))、本発明に係る敷物を得ることができる。敷物本体1と裏張り材2の貼合は、敷物本体1の裏面(裏張り材2と当接する面)に、アクリル樹脂エマルジョンよりなる接着剤が1000〜2000g/m2程度塗工され、裏張り材2の短繊維集積体23面と積層され、乾燥することによって行われる。
本発明に係る敷物の裏張り材は、一次敷物と当接する面に、ばらけて傾斜して起立したモノフィラメントが多数形成されており、このモノフィラメント表面に、フッ素系又はシリコーン系撥水剤とアクリル樹脂とを含む樹脂被膜が固着している。この樹脂被膜の存在によって、モノフィラメントが一次敷物に食い込みやすく、かつ、抜けにくくなるという作用を奏する。その結果、本発明に係る敷物を一次敷物(特に、タフトカーペット)上に敷設して使用しても、滑りにくく、ずれにくいという効果を奏する。
実施例1
[準備工程(A)]
地糸として300デニールのポリエチレンモノフィラメントを2本準備した。また、パイル糸として、300デニールのポリエステルモノフィラメントが2本、撚り回数180回/mで撚られたもの1本を準備した。緯糸となる挿入糸としては、ポリエステル繊維とアクリル繊維とが混合された、3.5番手の紡績糸を準備した。そして、この地糸、パイル糸及び挿入糸を用い、図3(図4)で示した編組織で、経糸及び緯糸からなるラッセル編地を編成すると共に、ループパイルを4コース毎に形成した。なお、ゲージ数は2ゲージ/インチとし、コース数は10コース/インチとし、形成したループパイルの長さは10mmとした。また、隣り合う経糸間では、ループパイルは千鳥状に配置した。そして、ループパイルを形成した直後に、ループパイルの頂上近傍を刃物で切断し、カットパイルとした。この結果、カットパイルは、ランダムな方向に傾斜して起立していた。その後、カットパイルの切断端を熱ヒーターで加熱し、切断端に溶融玉を作製した。以上のようにして、ネット状ラッセル編地を準備した。
[積層工程(B)及び絡合工程(C)]
このネット状ラッセル編地のカットパイルが形成されている側の反対側に、ポリエステル短繊維85質量%と低融点ポリエステル短繊維(融点:130℃)15質量%とを混合した混合綿を集積し、目付300g/m2の繊維ウェブを積層した。この後、繊維ウェブ側から、ニードルパンチを施して、繊維ウェブ中の短繊維相互間を絡合させて短繊維集積体を形成すると共に、短繊維とネット状ラッセル編地の経糸中の地糸及び緯糸とを絡合させ、ネット状ラッセル編地と短繊維集積体とが積層一体化した積層物を得た。
[加熱工程(C−1)]
この後、積層物を熱風乾燥機中に導入し、135℃に加熱して、低融点ポリエステル短繊維を溶融又は軟化させ、短繊維集積体中の短繊維相互間、及び短繊維とネット状ラッセル編地とを接着させた。
[塗布工程(D)]
一方、ヒガシ化学社製「ラジテックスEX−6635」を水で希釈して、アクリル樹脂90質量%とシリコーン系撥水剤10質量%を含む混合エマルジョン(固形分24%)を準備した。そして、この混合エマルジョンを、ネット状ラッセル編地のカットパイルが形成されている面に、125g/m2の重量となるよう、スプレー塗布した。その後、120℃の加熱されたオーブン中に10分間通して、カットパイルを形成しているモノフィラメント表面に、アクリル樹脂とシリコーン系撥水剤とからなる樹脂被膜を固着させた。以上のようにして裏張り材を得た。
[貼合工程(E)]
敷物本体の裏面(裏張り材と当接する面)に、アクリル樹脂エマルジョン(ヒガシ化学社製「ラジテックスEX−6388」)を1500g/m2の重量となるように塗工し、裏張り材の短繊維集積体面が当接するようにして、裏張り材を積層した。その後、120℃の加熱されたオーブン中に10分間通して、敷物本体と裏張り材とを貼合して、敷物を得た。
比較例1
塗布工程(D)を省略した他は、実施例1と同様にして敷物を得た。
試験例1
実施例1で得られた敷物から、30cm角の試験体Aを採取した。また、比較例1で得られた敷物から、30cm角の試験体Bを採取した。
一方、一次敷物として、市販されている自動車用タフトカーペット(1/10ゲージ)を準備した。
そして、自動車用タフトカーペットのタフト面に、試験体A及びBのネット状ラッセル編地面が当接するようにして載置し、足で踏み付けて、試験体A及びBをタフト面に定着させた。その後、プッシュブルゲージを用いて、滑り抵抗値を測定したところ、試験体Aでは1.4kgfで、試験体Bでは0.6kgfであった。
試験例2
一次敷物として、市販されている自動車用タフトカーペット(1/10ゲージ)に代えて、市販されている自動車用タフトカーペット(1/8ゲージ)を用いた他は、試験例1と同様にして、滑り抵抗値を測定した。その結果、試験体Aでは1.8kgfで、試験体Bでは0.7kgfであった。
以上の試験例1及び2の結果から分かるように、実施例1で得られた敷物の方が、比較例1で得られた敷物よりも、一次敷物上で滑りにくくなっている。
試験例3
試験体Aの表面(ネット状ラッセル編地と反対面で、敷物本体の表面)に、水200gを流し落とし、8時間経過後に、裏面(ネット状ラッセル編地面)に水を浸透しているか否かを目視及び指触により調べた。その結果、試験体Aの裏面には、水が浸透していなかった。
試験例4
試験体Aの表面に、温度70℃のコーヒー150mlを流し落とし、10分経過後に、裏面にコーヒーが滲み出しているか否かを目視及び指触により調べた。その結果、試験体Aの裏面には、コーヒーが浸透していなかった。なお、コーヒーは、コーヒー粉末ティースプーン2杯、ミルク粉末ティースプーン2杯、砂糖3g及び熱水残部よりなるものである。
試験例3及び4の結果から分かるように、実施例1で得られた敷物は、良好な防水性も兼ね備えている。
本発明の一例に係る敷物の模式的側面図である。 本発明の他の例に係る敷物の模式的側面図である。 本発明で用いるネット状ラッセル編地の編組織の一例を示す模式図である。 図3における経糸の編組織を、各糸毎に示した模式図である。 図3に示したネット状ラッセル編地のループパイルを、その頂上近傍で切断してカットパイルを形成した場合の模式図である。
符号の説明
1 敷物本体
2 裏張り材
21 ネット状ラッセル編地
22 短繊維集積体
23 短繊維
3 経糸
4,4a,4b 地糸
5 パイル糸
6 パイル糸を構成しているモノフィラメント

Claims (6)

  1. 一次敷物の上に敷設される二次敷物であって、敷物本体と裏張り材とが積層一体化されてなる二次敷物において、
    前記裏張り材は、その裏面にネット状ラッセル編地を備えており、
    前記ネット状ラッセル編地は、経糸である鎖編糸と緯糸である挿入糸とで構成されており、該経糸は鎖編みされている地糸と、一定コースでループパイルを形成し、該一定コース間では鎖編みされているパイル糸とよりなり、該パイル糸は、少なくとも二本のモノフィラメントで構成されていると共に、該ループパイルの長さ中において少なくとも一回以上の撚りが施されており、且つ、該ループパイルは、その頂上近傍で切断されてカットパイルとなり、該カットパイル中の少なくとも二本のモノフィラメントは、ばらけて傾斜して起立しており、
    前記カットパイルを構成する前記モノフィラメント表面には、フッ素系又はシリコーン系撥水剤とアクリル樹脂との混合エマルジョンが塗布及び乾燥されてなる樹脂被膜が固着されていることを特徴とする滑り防止性に優れた二次敷物。
  2. 裏張り材は、ネット状ラッセル編地と短繊維集積体とが積層されてなり、該短繊維集積体は短繊維相互間が絡合していると共に、該ネット状ラッセル編地の経糸及び緯糸とが該短繊維と絡合することによって、一体化されてなる請求項1記載の滑り防止性に優れた二次敷物。
  3. 短繊維集積体中には低融点短繊維が混合されており、該低融点短繊維の溶融又は軟化によって、短繊維相互間が接着しており、かつ、該短繊維集積体中の該低融点短繊維と、ネット状ラッセル編地の経糸及び緯糸とが接着している請求項2記載の滑り防止性に優れた二次敷物。
  4. 隣り合う経糸間において、ループパイルが千鳥状に設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の滑り防止性に優れた二次敷物。
  5. ネット状ラッセル編地の目が、角目、菱目及び亀甲目よりなる群から選ばれた一つの目である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の滑り防止性に優れた二次敷物。
  6. 敷物本体と裏張り材とが、アクリル樹脂エマルジョンよりなる接着剤で貼合されることにより、積層一体化されてなる請求項1乃至5のいずれか一項に記載の滑り防止性に優れた二次敷物。
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