JP3653464B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた電荷輸送能を有するキノン誘導体を含有し、静電式複写機、ファクシミリ、レーザビームプリンタ等の画像形成装置に用いられる電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記画像形成装置においては、光照射によって電荷を発生する電荷発生剤、発生した電荷を輸送する電荷輸送剤、およびこれらの物質が分散される層を構成する結着樹脂等からなる、いわゆる有機感光体が広く使用されている。
有機感光体としては、大別して、電荷発生剤と電荷輸送剤とを同一の層中に含有させた単層型の感光層を備えたものと、電荷発生剤を含む電荷発生層と、電荷輸送剤を含む電荷輸送層とを積層した積層型の感光層を備えた感光体が一般的である。
また上記積層型の感光層は、機械的強度の面から、電荷発生層よりも膜厚の厚い電荷輸送層を、感光体の最外層に配置するのが一般的である。
【0003】
これらの感光体に使用される電荷輸送剤としては、正孔輸送性のものと電子輸送性のものとがあるが、現在知られている電荷輸送剤のうち、感光体に実用的な感度を付与しうる電荷移動度の高いものは、その多くが正孔輸送性である。
このため、現在実用化されている有機感光体は、前述した感光体の最外層に正孔輸送剤を含む電荷輸送層を設けた積層型の場合、負帯電型となる。
【0004】
しかし、負帯電型の有機感光体は、オゾンの発生量が多い負極性コロナ放電によって帯電させる必要があり、オゾンによる環境への影響や、感光体自体の劣化が問題となる。
【0005】
そこで、上記の問題を解決するため、電荷輸送剤として電子輸送剤を使用する事が検討されている。
例えば特開平1-206349号公報には、ジフェノキノン構造またはベンゾキノン構造を有する化合物を電子輸送剤として使用することが提案されている。
【0006】
しかしながら、ジフェノキノン構造やベンゾキノン構造を有する化合物は、一般に電荷発生剤とのマッチングが困難であり、電荷発生剤から電子輸送剤への電子注入が不十分である。
また、かかる電子輸送剤は結着樹脂との相溶性が乏しく、感光層中に均一に分散されないため、電子のホッピング距離が長くなって、特に低電界での電子移動が生じにくい。
【0007】
従って、従来の電子輸送剤を含有する感光体は、後述する実施例記載の電気特性試験からも明らかなように、残留電位が高くなり、光感度が不十分になるという問題がある。
【0008】
また、単層型感光体においては、電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用することによって1つの感光体を正帯電型および負帯電型の両方に使用できるという利点を有するものの、ジフェノキノン誘導体を電子輸送剤として用いた場合には、正孔輸送剤との相互作用によって電荷移動錯体が形成され、電子および正孔の輸送が阻害されるという問題が生じる。
【0009】
上記の問題点を解決するための電子輸送剤として、特開平7-261419号や特開平9-151157号にはナフトキノン誘導体が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのキノン誘導体を電子輸送剤として用いても、電荷発生剤とのマッチングや結着樹脂との相溶性が十分とはいえず、電子写真感光体の感度は満足いくものではなかった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記の技術的課題を解決し、従来に比べて感度が向上した電子写真感光体を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、式(2−2):
【0013】
【化1】
【0014】
が、ジフェノキノン構造やベンゾキノン構造、ナフトキノン構造を有する化合物等の従来の電子輸送剤よりも高い電子輸送能を有し、かつ結着樹脂との相溶性に優れているという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
式(2−2)で表されるキノン誘導体(以下、キノン誘導体(2−2)と記述する。)は、電子受容性が優れており、さらに結着樹脂との相溶性も良好で感光層中に均一に分散される。また、電荷発生剤とのマッチングに優れており、当該電荷発生剤からの電子注入が円滑に行われる。
従って、キノン誘導体(2−2)は、低電界であっても優れた電子輸送性を示し、電子写真感光体等における電子輸送剤として好適である。
【0016】
更に、キノン誘導体(2−2)は、正孔輸送剤と電荷移動錯体を形成しないため、特に電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用した単層型の感光層において好適に用いることができる。
【0017】
本発明の電子写真感光体は、支持基体上に感光層を設けたものであって、感光層がキノン誘導体(2−2)を含有することを特徴とする。
【0018】
このような電子写真感光体は、前述のように優れた特性を有するキノン誘導体(2−2)を感光層中に含有することから、従来の電子輸送剤を含有する電子写真感光体よりも残留電位が低く、高感度である。
【0019】
すなわち、キノン誘導体(2−2)を含有する感光層は、低電界での電子輸送性に優れているとともに、感光層中で電子と正孔とが再結合する割合が低く、見掛けの電荷発生率が実際の値に近づく結果、このような感光層を有する感光体の感度が向上する。
また、感光体の残留電位も低くなり、繰り返し露光を行った際の安定性や耐久性も向上する。
【0020】
従って、積層型感光体の電荷輸送層に含有させる電荷輸送剤として、また、単層型感光体の感光層に含有させる電子輸送剤としてキノン誘導体(2−2)を用いることにより、従来にはない高感度な正帯電型の感光体を得ることができる。
【0021】
また、キノン誘導体(2−2)は、前述のように正孔輸送剤と電荷移動錯体を形成しないため、同一の感光層中に電子輸送剤と正孔輸送剤とを含有する単層型の感光体に使用した際に、より高感度の感光体を得ることができる。
【0022】
単層型の電子写真感光体において、当該キノン誘導体は結着樹脂100重量部に対して、5〜100重量部含有するのが好ましく、10〜80重量部含有するのが更に好ましい。
キノン誘導体が10重量部未満の場合、残留電位が高くなり感度が不十分になる虞があり、500重量部を越える場合は結晶化の可能性があるため電子写真感光体としての性能を十分発揮できない。
【0023】
積層型の電子写真感光体においては、電荷発生剤と結着樹脂を含む電荷発生層と前記キノン誘導体を含む電荷輸送層から構成される。
積層型におけるキノン誘導体の配合割合は、単層型の場合と同様の理由で、結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部が好ましく、25〜100重量部が更に好ましい。
【0024】また、前記感光層に電子受容体を含有させた場合は、より一層、電子輸送性が向上するため、より高感度の感光体を得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0029】
上記キノン誘導体は、それぞれ1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0030】
キノン誘導体(2−2)は以下の方法で合成することができる。
2−ジメチルアミノ−1,4−ナフトキノンとトリエトキシオキソテトラフルオロボレートから中間体を合成後、これと対応する環状活性メチル体を、ピリジン溶媒下で反応させることにより合成できる。
〈感光層〉本発明の電子写真感光体は、キノン誘導体(2−2)を電子輸送剤として含有する感光層を支持基体上に設けたものである。
本発明の電子写真感光体は、単層型および積層型のいずれにも適用できる。
(単層型感光層)単層型感光体は、支持基体上に、少なくとも電子輸送剤であるキノン誘導体(2−2)と電荷発生剤と結着樹脂とを含有する単一の感光層を設けたものである。
このような単層型の感光層は、単独の構成で正負いずれの帯電にも対応できるが、有害なオゾンの発生を促す負極性コロナ放電を用いる必要のない、正帯電型で使用するのが好ましい。
この単層型感光体は、層構成が簡単で生産性に優れていること、感光層の被膜欠陥が発生するのを抑制できること、正負いずれの帯電型にも使用できること、層を形成する際の皮膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少ないので光学的特性を向上できること等の利点を有する。
【0031】
電子輸送剤であるキノン誘導体(2−2)を正孔輸送性に優れた正孔輸送剤と併用した単層型の感光体は、前述のように、キノン誘導体(2−2)と正孔輸送剤との相互作用が生じないため、両輸送剤を高濃度で同一の感光層中に含有させても、電子輸送および正孔輸送がそれぞれ効率よく行うことができ、より高感度の感光体を得ることができる。
【0032】
また、キノン誘導体(2−2)とともに電子受容体を含有させた単層型感光体は、電子輸送性能をより一層向上することができ、より高感度の感光体を得ることができる。
(積層型感光体)積層型感光体は、支持基体上に電荷発生剤を含有する電荷発生層と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とをこの順で、あるいは逆の順で積層したものである。
但し、電荷発生層は電荷輸送層に比べて膜圧がごく薄いため、その保護のためには支持基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
【0033】
積層型感光体は、電荷発生層と電荷輸送層との形成順序と、電荷輸送層中で使用する電荷輸送剤の種類とによって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。
例えば、支持基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した層構成におい
て、電荷輸送層中の電荷輸送剤としてキノン誘導体(2−2)のような電子輸送剤を使用したときは、正帯電型の感光体になる。
この場合、電荷発生層には正孔輸送剤や電子輸送剤を含有させてもよい。
ここで、前記電荷輸送層に電子受容体を含有させた場合は、電子輸送性が向上するため、より高感度の積層感光体を得ることができる。
【0034】
なお、上記の層構成において、電荷輸送層中の電荷輸送剤として正孔輸送剤を使用したときは負帯電型の感光体になる。
この場合、電荷発生層にはキノン誘導体(2−2)を含有させてやれば、発生した電荷のうち電子を効率良く支持基体まで輸送することができるので、より高感度の感光体を得ることができる。
【0035】
次に、本発明の電子写真感光体に用いられる種々の材料について説明する。
(電荷発生剤)本発明に用いられる電荷発生剤としては、例えばセレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、α−シリコンなどの無機光導電材料の粉末、式(CG−1):
【0036】
【化4】
で表される無金属フタロシアニン、式(CG−2):
【0037】
【化5】
で表されるチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン化合物の、種々の結晶型を有する結晶からなるフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、ペリレン系顔料、アンサンスロン系顔料、インジゴ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料、ジチオケトピロロピロール系顔料などの、従来公知の種々の顔料が挙げられる。
【0038】
電荷発生剤は、感光層が所望の波長域に感度を有するように、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
特に半導体レーザー等の赤外光を利用した、レーザービームプリンタや普通紙ファクシミリ装置等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、電荷発生剤として、前記例示のうちフタロシアニン系顔料が好適に使用される。
(正孔輸送剤)本発明に用いられる正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する、主々の化合物、例えば、2,5−ジ(4-メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系の化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、スチルベン系化合物、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、ブタジエン系化合物、アクロレイン系化合物、チオフェン系化合物、縮合多環式化合物、有機ポリシランやポリヒドラゾン等のポリマー系化合物などがあげられる。
【0040】
本発明において、正孔輸送剤は1種のみを用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。
また、ポリビニルカルバゾール等の成膜性を有する正孔輸送剤を用いる場合には、結着樹脂は必ずしも必要でない。
(電子受容体)本発明の電子写真感光体においては、電子輸送剤である本発明のキノン誘導体(2−2)と共に、電子受容体を感光層に含有させてもよい。
【0041】
本発明に用いられる電子受容体としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物、例えば、ベンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン系化合物、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、無水こはく酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、2,4,7−トリニトロフルオレノンイミン系化合物、エチル化ニトロフルオレノンイミン系化合物、トリプトアントリン系化合物、トリプトアントリンイミン系化合物、アザフルオレノン系化合物、ジニトロピリドキナゾリン系化合物、チオキサンテン系化合物、2−フェニル−1,4−ベンゾキノン系化合物、2−フェニル−1,4−ナフトキノン系化合物、5,12−ナフタセンキノン系化合物、α−シアノスチルベン系化合物、4'−ニトロスチルベン系化合物、ならびに、ベンゾキノン系化合物の陰イオンラジカルとカチオンとの塩などの、種々の電子吸引性化合物があげられる。
【0042】
本発明において、電子受容体は1種のみを用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。
(結着樹脂)前記各成分を分散させるための結着樹脂は、従来、感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。
例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート、キノン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
(その他の添加剤)感光層には、前記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。
また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0043】
単層型感光体において、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。
電子輸送剤としてのキノン誘導体は、結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部の割合で配合すればよい。
前記感光層に電子受容体を含有させる場合、電子受容体の割合を結着樹脂の100重量部に対して0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜20重量部とするのが適当である。
正孔輸送剤を含有させる場合、正孔輸送剤の割合を結着樹脂の100重量部に対して5〜500重量部、好ましくは25〜200重量部とすればよい。
また、単層型感光体における感光層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
【0044】
積層型感光体において、電荷発生層を構成する電荷発生剤と結着樹脂とは、種々の割合で使用することができるが、結着樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の割合で配合するのが適当である。
電荷発生層に正孔輸送剤あるいは電子受容体を含有させる場合は、正孔輸送剤あるいは電子受容体の割合を結着樹脂100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜80重量部とするのが適当である。
【0045】
電荷輸送層を構成する電子輸送剤と結着樹脂とは、電荷の輸送を阻害しない範囲および結晶化しない範囲で種々の割合で使用することができるが、光照射により電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、結着樹脂100重量部に対して、電子輸送剤としてのキノン誘導体を10〜500重量部、好ましくは25〜100重量部の割合で配合するのが適当である。
電荷輸送層に電子受容体を含有させる場合、電子受容体の割合を結着樹脂の100重量部に対して0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜20重量部とするのが適当である。
電荷輸送層に正孔輸送剤を含有させる場合は、正孔輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは10〜80重量部とすればよい。
【0046】
上記のうち、キノン誘導体の含有割合は、式(1)および式(2)のうち、いずれかひとつの構造式のものを使用する場合はその含有割合であり、複数の構造式のものを併用する場合はそれらの合計である。
【0047】
単層型感光体においては、支持基体と感光層との間に、また積層型感光体においては、支持基体と電荷発生層との間、支持基体と電荷輸送層との間または電荷発生層と電荷輸送層との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。
また、感光体の表面には、保護層が形成されていてもよい。
〈支持基体〉前記感光層が形成される支持基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属単体や、前記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
【0048】
支持基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート上、ドラム上等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。
また、支持基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。
〈製造方法〉前記感光層を塗布の方法により形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
【0049】
前記分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n-ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。
これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0050】
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性をよくするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
【0051】
【実施例】
以下、本発明を合成例、実施例および比較例に基づいて説明する。
〈キノン誘導体の合成〉
[合成例1]200ミリリットルの2つ口フラスコに2-ジメチルアミノ-1,4-ナフトキノン2.3g(0.01mol)を入れAr置換し、そこに室温にてジクロロメタン50ミリリットルおよびトリエトキシオキソニウムテトラフルオロボレート30ml(0.02mol)を加えた後、さらにジクロロメタン溶液20ミリリットルを入れ30分間、加熱還流を行った。
室温まで冷却後、1,2,3,4- テトラクロロ -1,3- シクロペンタンジエン2.45g(0.012mol)/ピリジン100ミリリットルを加え、さらに3時間加熱還流を実施した。
反応混合物を冷却後、析出固体をろ過し、固体を希塩酸水溶液、蒸留水にて洗浄し、固体をクロロホルムに溶解させ、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去後、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、前記式(2−2)で表されるキノン誘導体(以下、キノン誘導体(2−2)と記述する。) 1.0g (収率 25% )を得た。
【0052】
上記、キノン誘導体(2−2)の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
〈電子写真感光体の製造〉
(単層感光体)
[実施例1]電荷発生剤としてX型無金属フタロシアニン(CG−1)5重量部および結着樹脂としてポリカーボネイト100重量部、溶媒としてテトラヒドロフラン800重量部、正孔輸送剤として式(HT−1):
【0053】
【化6】
で表されるN,N,N',N'−テトラキス(3−メチルフェニル)−3,3'−ジアミノベンジジン50重量部および電子輸送剤であるキノン誘導体(2−2)30重量部をボールミルにて50時間混合、分散させて単層感光体用の塗布液を作製した。
次いで、この塗布液をアルミニウムシート上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1時間乾燥させて、膜厚が20μmの感光層を形成させ、単層型感光体を製造した。
[実施例2]
電子受容体として式(E−1):
【0054】
【化7】
で表されるp−ベンゾキノン3重量部を単層型感光体用塗布液の原材料に加える他は、実施例1と同様にして単層型感光体を製造した。
[実施例3]
電子受容体として式(E−2):
【0055】
【化8】
で表される2,6−ジ−t−ブチルベンゾキノン3重量部を単層型感光体用塗布液の原材料に加える他は、実施例1と同様にして単層型感光体を製造した。
[実施例4]
電子受容体として式(E−3):
【0056】
【化9】
で表される3,5−ジメチル−3',5'-ジ−t−ブチル−4,4'−ジフェノキノン3重量部を単層型感光体用塗布液の原材料に加える他は、実施例1と同様にして単層型感光体を製造した。
[実施例5]
電子受容体として式(E−4):
【0057】
【化10】
で表される3,3',5,5'−テトラ−t−ブチル−4,4'−ジフェノキノン3重量部を単層型感光体用塗布液の原材料に加える他は、実施例1と同様にして単層型感光体を製造した。
[比較例1〜5]電子輸送剤としてキノン誘導体(2−2)に代えて、前記式(E−2)の2,6−ジ−t−ブチルベンゾキノンを用いる他は、それぞれ実施例1〜5と同様にして単層型感光体を製造した。
[比較例6〜10]
電子輸送剤としてキノン誘導体(2−2)に代えて、式(E−5):
【0058】
【化11】
【0059】で表される2−フェニル−1,4−ナフトキノンを用いる他は、それぞれ実施例1〜5と同様にして単層型感光体を製造した。
(評価試験1)ドラム感度試験機(ジェンテック社製)を用いて、各実施例および比較例で得られた単層型感光体に印加電圧を加え、その表面を+700±20Vに帯電させた後、初期表面電位V0(V)を測定した。
次いで、露光光源であるハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルターを用いて取り出した780nm(半値幅20nm)の単色光(光強度I=16μW/cm2)を感光体表面に照射(照射時間80msec)し、露光開始後330sec後の感光体の表面電位を残留電位Vr(V)として測定した。
測定結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】比較例1〜10においては、残留電位が300V前後であるのに対し、実施例1〜10では125V〜150Vであり、実施例の方が残留電位が低いことがわかる。
(積層型感光体)
[実施例6]電荷発生剤としてX型無金属フタロシアニン(CG−1)100重量部および結着樹脂としてポリビニルブチラール100重量部、溶媒としてテトラヒドロフラン2000重量部をボールミルにて50時間混合、分散させて電荷発生層用塗布液を調整し、この塗布液をアルミニウムシート上にワイヤーバーを用いて塗工し、100℃で1時間乾燥することにより膜厚1μmの電荷発生層を形成した。
【0062】
次に電子輸送剤であるキノン誘導体(2−2)100重量部、結着樹脂としてポリカーボネイト100重量部をトルエン800重量部とともに、ボールミルにて50時間混合、分散させて電荷輸送層用の塗布液を作製した。
次いで、この塗布液を上記電荷発生層上にワイヤーバーを用いて塗工し、100℃で1時間乾燥させて、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、積層型感光体を製造した。
[比較例11]電子輸送剤としてキノン誘導体(2−2)に代えて、前記式(E−2)の2,6−ジ−t−ブチルベンゾキノンを用いる他は、実施例6と同様にして積層型感光体を製造した。
[比較例12]電子輸送剤としてキノン誘導体(2−2)に代えて、前記式(E−5)の2−フェニル−1,4−ナフトキノンを用いる他は、それぞれ実施例6と同様にして積層型感光体を製造した。
(評価試験2)前記評価試験1と同様の方法で、各実施例および比較例で得られた積層型感光体の残留電位Vr(V)を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
比較例11、12においては、残留電位が400V程度であるのに対し、実施例6では、 230Vであり、実施例の方が残留電位が低いことがわかる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、キノン誘導体(2)を電子輸送剤として含有しているため、残留電位が低く、高感度である。
【図面の簡単な説明】
【図1】キノン誘導体(2−2)の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
Claims (4)
- 前記感光層が電子受容体を含有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が結着樹脂、電荷発生剤、正孔輸送剤および電子輸送剤としての式(2−2)で表されるキノン誘導体を含有する単層構成であることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が電荷発生剤を含有する電荷発生層および、結着樹脂、電子輸送剤としての式(2−2)で表されるキノン誘導体を含有する電荷輸送層を少なくとも有する積層構成であることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。
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