JP3653085B2 - 弾性繊維処理用油剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は弾性繊維用油剤に関する。さらに詳しくは、膠着防止性が良好な弾性繊維を得るための油剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、弾性繊維の紡糸工程において繊維に付着させる油剤について、膠着防止剤として、固体の金属石鹸を懸濁させることにより離型効果を発現させる方法が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】
特公昭41−286号公報
【特許文献2】
特公昭40−5557号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法では、膠着防止効果はあるものの、このような固体成分は経日で油剤中で凝集・沈降するなど分散安定性が悪いため、油剤を使用する際、糸への付着ムラ等が起こり均一な膠着防止性が発揮できず、後加工工程において張力変動等が原因で糸切れ等が起こるという問題がある。
従って、本発明の目的とするところは、長期に渡っての油剤安定性に優れ、かつ弾性繊維を製造する際に、繊維同士の膠着防止性が良好な弾性繊維用油剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の油剤を得るべく鋭意検討した結果、体積平均粒子径を特定の範囲に調整した高級脂肪酸金属塩と特定の溶解度パラメーターを有する界面活性剤を含有する油剤を用いることで、上記問題点が解決できることを見いだし、本発明に到達した。
【0006】
すなわち本発明は、25℃で1〜1000mm2/sの粘度を有し、かつ、シリコーンオイル(A1)および炭化水素系潤滑油(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1つのベースオイル(A)、0.001〜1μmの体積平均粒子径を有する炭素数12〜24の高級脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)、並びに、8.0〜10.5の溶解度パラメーター(SP値)を有し、かつエーテルカルボン酸アニオン界面活性剤(C1−2)および非イオン界面活性剤(C2−1)からなる群から選ばれる少なくとも1つの界面活性剤(C)を含有することを特徴とする弾性繊維処理用油剤;該弾性繊維用油剤を弾性繊維に対して0.1〜12質量%付与する弾性繊維の処理方法;並びに上記の処理方法により処理されてなる弾性繊維である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のベースオイル(A)は、シリコーンオイル(A1)および炭化水素系潤滑油(A2)からなる群より選ばれ、25℃における粘度が1〜1000mm2 /sのベースオイルである。好ましいものは、25℃における粘度が2〜100mm2 /s、さらに好ましくは3〜50mm2 /sである。
【0008】
本発明のシリコーンオイル(A1)は、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンの一部が炭素数2〜20のアルキル基および/またはフェニル基で置換されたもの等のうち25℃における粘度が1〜1000mm2 /sのものが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、25℃における粘度が2〜100mm2 /s、さらに好ましくは3〜50mm2 /sのポリジメチルシロキサンである。
【0009】
本発明の炭化水素系潤滑油(A2)としては、鉱物油およびその精製油、水添油、分解油等のうち、25℃における粘度が1〜1000mm2 /sのものが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、25℃における粘度が2〜100mm2 /s、さらに好ましくは3〜50mm2 /sの鉱物油とその精製油であり、特に好ましいのは3〜50mm2 /sの流動パラフィンである。
【0010】
ベースオイル(A)としては(A1)、(A2)それぞれ単独でも混合物であってもよい。好ましくは(A2)単独、および(A1)と(A2)の混合物であり、さらに好ましくは(A1)と(A2)の混合物である。
混合物の場合、(A1)と(A2)の含有比(質量比)は80/20〜5/95が好ましく、さらに好ましくは70/30〜10/90、特に好ましくは65/35〜15/85である。
【0011】
本発明の油剤中のベースオイル(A)の含有量は、膠着防止性および平滑性の観点から、(A)+(B)+(C)の合計質量に基づいて、通常80質量%以上、好ましくは下限が82質量%、上限が99.9質量%、特に好ましくは下限が85質量%、上限が99質量%である。
【0012】
本発明の弾性繊維用油剤に含有される高級脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)の高級脂肪酸は炭素数12〜24の高級脂肪酸である。
この高級脂肪酸の具体例としては、炭素数12〜24のラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、およびベヘン酸等が挙げられる。これらのうち、好ましいのは炭素数16〜22のパルミチン酸、ステアリン酸、およびベヘン酸等であり、特に好ましいのはステアリン酸である。
アルカリ土類金属塩としてはバリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられ、好ましいのはマグネシウム塩である。
高級脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)の具体例としては、ジラウリン酸マグネシウム塩、ジラウリン酸カルシウム塩、ジラウリン酸バリウム塩;ジミリスチン酸マグネシウム塩、ジミリスチン酸カルシウム塩、ジミリスチン酸酸バリウム塩;ジパルミチン酸マグネシウム塩、ジパルミチン酸カルシウム塩、ジパルミチン酸バリウム塩;ジステアリン酸マグネシウム塩、ジステアリン酸カルシウム塩、ジステアリン酸バリウム塩;ジイソステアリン酸マグネシウム塩、ジイソステアリン酸カルシウム塩、ジイソステアリン酸バリウム塩;ジベヘン酸マグネシウム塩、ジベヘン酸カルシウム塩、ジベヘン酸バリウム塩;パルミチン酸ステアリン酸マグネシウム塩、パルミチン酸ステアリン酸カルシウム塩、パルミチン酸ステアリン酸バリウム塩等が挙げられる。このうち好ましいものはステアリン酸のアルカリ土類金属塩であり、特に好ましいのはジステアリン酸マグネシウム塩である。なお、市販のジステアリン酸マグネシウムなどは、一部未反応の水酸化ステアリン酸マグネシウムが不純物として混じっているが、差し支えない。
高級脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0013】
また、本発明の油剤中の高級脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)の含有量は、(A)+(B)+(C)の合計質量に基づいて、通常は0.05〜2質量%であり、好ましくは下限が0.2質量%、上限が1.8質量%である。0.05質量%以上であると、膠着防止性が良好である。2質量%以下であると、経日での油剤全体の粘度上昇が小さく、11〜22デシテックス(dtx)等の細糸を紡糸する際でも糸切れなどの問題が生じる恐れがない。
【0014】
本発明の油剤中で分散している高級脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)の体積平均粒子径は、油剤安定性、膠着防止性の観点から、通常0.001〜1μmである。好ましくは下限が0.01μm、上限が0.5μmである。
下限を下回ると膠着防止性が不足し、上限を超えると油剤安定性が低下する。
【0015】
体積平均粒子径は動的光散乱法で測定する。具体的に、油剤を長さ10mmのセルに入れて、粒径測定装置で体積平均粒子径を測定する。
【0016】
本発明で用いる界面活性剤(C)は、溶解度パラメーター(以降、SP値と略す)が8.0〜10.5、好ましくは8.0〜10.2、さらに好ましくは8.1〜9.9である。8.0未満の場合、高級脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)との相溶性が悪くなり、油剤の安定性が不十分になる。10.5を越えるとベースオイルとの相溶性が悪く、油剤の安定性が不十分になる。
【0017】
ここでいう溶解度パラメーターとは、下記に示したように凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表される。
[溶解度パラメーター]=(△E/V)1/2
ここで△Eは凝集エネルギー密度を表す。Vは分子容を表し、その値は、ロバート エフ.フェドールス(Robert F.Fedors)らの計算によるもので、例えばポリマー エンジニアリング アンド サイエンス(Polymer engineering and science)第14巻、147〜154頁(1974)に記載されている。
【0018】
本発明で用いる界面活性剤(C)は、アニオン界面活性剤(C1)および非イオン界面活性剤(C2)からなる群より選ばれる界面活性剤のうち、SP値が上記範囲内のものである。
アニオン界面活性剤(C1)の中では、一般式(1)で表されるスルホコハク酸系界面活性剤(C1−1)と、一般式(2)で表されるエーテルカルボン酸系界面活性剤(C1−2)が好ましい。
【0019】
本発明で用いるスルホコハク酸系界面活性剤(C1−1)は下記一般式(1)で表される。
【0020】
【化4】
【0021】
一般式(1)において、R 1 、R 2 としては、それぞれ独立に炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基が挙げられる。
炭素数1〜24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、n−およびi−のプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘキコシル基およびドコシル基ならびに2−エチルデシル基等が挙げられる。
炭素数2〜24のアルケニル基としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、n−およびi−のプロペニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基およびノナデセニル基ならびに2−エチルデセニル基等が挙げられる。
R 1 、R 2 のうち好ましいものは炭素数3〜24のアルキル基である。これらは2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
一般式(1)中、Aとしてはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。このうち好ましいものはエチレン基、プロピレン基である。これらは2種以上の混合物であってもよい。混合物の場合、ランダム、ブロックのいずれでもよい。
【0023】
一般式(1)中、m、nおよびm+nはそれぞれ独立に0〜10の整数であり、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜3の整数である。10を越える場合、ベースオイルとの相溶性が悪くなることがある。
【0024】
一般式(1)中、Mとしては水素原子、アルカリ金属原子(リチウム、カリウム、ナトリウム等)またはアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン等)が挙げられる。これらのうち好ましいものはアルカリ金属原子である。これらは2種以上の混合物であってもよい。
【0025】
一般式(1)で表されるスルホコハク酸系界面活性剤(C1−1)の具体例としては、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム、スルホコハク酸パルミチルステアリルカリウム、ポリオキシエチレンジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム(EO6モル付加物(m=n=3))等が挙げられる。
【0026】
本発明で用いるエーテルカルボン酸系界面活性剤(C1−2)は下記一般式(2)で表される。
【0027】
【化5】
【0028】
一般式(2)において、R 3 の具体例および好ましいものは、前記R 1 、R 2 と同様である。
【0029】
一般式(2)で表されるエーテルカルボン酸系界面活性剤(C1−2)の具体例としては、オクチルアルコールカルボキシメチル化ナトリウム塩、デシルアルコールカルボキシメチル化ナトリウム塩、ラウリルアルコールカルボキシメチル化ナトリウム塩、ドバノール23カルボキシメチル化ナトリウム塩およびトリデカノールカルボキシメチル化ナトリウム塩、オクチルアルコールEO3モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、ラウリルアルコールEO4モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、イソトリデシルアルコールEO3モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、ドバノール23EO3モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩およびトリデカノールEO5モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩等が挙げられる。
好ましいものの具体例としては、オクチルエーテル酢酸ナトリウム、デシルエーテル酢酸ナトリウム、ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、トリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルエーテル酢酸ナトリウム(EO3モル付加物)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(EO3モル付加物)、およびポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム(EO3モル付加物)等が挙げられる。
【0030】
非イオン界面活性剤(C2)の中では、一般式(3)で表される非イオン界面活性剤(C2−1)が好ましい。
【0031】
【化6】
【0032】
一般式(3)において、R 4 は炭素数1〜24のアルキル基であり、具体例および好ましいものは、前記R 1 、R 2 のアルキル基と同様である。
一般式(3)において、R 5 としては炭素数1〜5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、が挙げられる。 R 5 のうち好ましいものは炭素数1〜3のアルキル基である。これらは2種以上の混合物であってもよい。
一般式(3)において、R 6 としては水素原子または炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等)が挙げられる。これらは2種以上の混合物であってもよい。
【0033】
一般式(3)中、AOは一般式(1)におけるものと同様である。一般式(3)中の(AO)qは、好ましくはエチレンオキサイド(以下、EOと略す)単独付加、EOとプロピレンオキサイド(以下、POと略す)とのブロック付加、特に好ましくはアルカリ土類金属塩との相溶性の観点からEO単独付加である。
一般式(3)中、qは1〜10の整数であり、好ましくは1〜6である。10を越える場合、ベースオイルとの相溶性が悪くなることがある。
【0034】
一般式(3)で表される非イオン界面活性剤(C2−1)としては、炭素数3〜33のセカンダリーアルコールのEOおよび/またはPO付加物であるが、好ましい具体例としては、セカンダリーアルコール(炭素数13)EO3モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数13)EO5モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数13)EO7モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数13)EO9モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数15)EO3モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数15)EO5モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数11)EO5モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数18)EO5モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数24)EO5モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数18)EO3モルPO2モルブロック付加物、セカンダリーアルコール(炭素数24)EO5モルPO3モルブロック付加物、セカンダリーアルコール(炭素数24)EO5モル付加物、セカンダリーアルコール(炭素数18)EO3モルPO2モル付加物等が挙げられる。
【0035】
以上の界面活性剤(C)のうち、好ましいのは(C1−1)、(C1−2)、(C2−1)であり、さらに好ましいものは、アニオン界面活性剤の(C1−1)および(C1−2)である。
【0036】
これら界面活性剤(C)は単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。本発明の油剤中の(C)の含有量は、(A)+(B)+(C)の合計質量に基づいて、好ましくは0.01〜8質量%、さらに好ましくは下限が0.05質量%、上限が5質量%、特に好ましくは下限が0.07質量%、上限が4質量%である。
【0037】
また、炭素数12〜24の高級脂肪酸金属塩(B)と界面活性剤(C)の配合質量比は、油剤安定性の観点から、99/1〜20/80が好ましく、さらに好ましくは97/3〜50/50、特に好ましくは95/5〜55/45である。
【0038】
本発明の油剤中には、(A)、(B)、(C)以外に、必要により他の成分(D)を含有していてもよい。(D)としては、例えば、(B)以外の膠着防止成分(D1)、制電成分(D2)、およびこれら以外の添加剤(D3)が挙げられる。また、後述する溶解助剤(E)を含有してもよい。
【0039】
(D1)は本発明の弾性繊維用油剤の性能を損なわない程度に追加配合してよく、追加させることで膠着防止効果を増大させることができる。
(D1)としては、常温で固体のシリコーン(D11)、ポリエーテル変性シリコーン(D12)、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。ここで常温で固体とは、25℃において固体であるという意味である。
【0040】
常温(25℃)で固体のシリコーン(D11)としては、分子内に3官能性シロキサン単位、あるいは4官能性シロキサン単位を含有するポリオルガノシロキサン(シリコーンレジン)等が挙げら、例えば、分岐度の高い三次元構造の固体ポリマー[2官能性シロキサン単位(D単位)と3官能性シロキサン単位(T単位)を主構成成分として含むDTレジン、一官能性シロキサン単位(M単位)と4官能性シロキサン単位(Q単位)を主構成成分として含むMQレジン、T単位のみからなるポリオルガノシルセスキオンサン等]が挙げられる。
好ましいものは、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる、Mwと略記する)が1,000〜100,000のメチルシリコーンレジン、およびMwが1,000〜100,000のアミノ変性オルガノポリシロキサンからなるレジンであり、さらに好ましくは、Mwが1,500〜30,000のメチルシリコーンレジンである。
【0041】
ポリエーテル変性シリコーン(D12)としては、例えば、下記一般式(4)で示されるポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0042】
【化7】
【0043】
式(4)中、R7 、R8 、R9 およびR10の少なくとも一つがポリオキシアルキレン鎖含有基である。残りはメチル基、炭素数2〜20のアルキル基、フェニル基または炭素数1〜5のアルコキシ基でもよい。
ポリオキシアルキレン基含有基としては、一般式−A1−O−(A2−O)s−R11 で示される基であり、ここで、R11は水素原子または炭素数1〜30のアルキル基;A1 は炭素数1〜5のアルキレン基;A2 は炭素数1〜4のアルキレン基であり、同一でも異なっていてもよく、ブロック状でもランダム状でもよい。sは1〜100の整数を表す。
【0044】
本発明の油剤中のこれら(D1)の配合量は、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。また(B)100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。
【0045】
制電成分(D2)としては、両性界面活性剤(D21)およびカチオン界面活性剤(D22)が挙げられる。
【0046】
両性界面活性剤(D21)としては、ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤およびスルホン酸塩型両性界面活性剤等が使用できる。
(D21)のうち好ましいものとしては、例えば下記一般式(5)、(6)または(7)で示されるもの、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0047】
【化8】
【0048】
[式(5)中、R12、R13、R14はそれぞれ独立に炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ポリオキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数:2〜4)、および式R16−T−R17−で示される基(R16は炭素数1〜30の脂肪酸からCOOH基を除いた残基、R17は炭素数1〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、Tは−COO−または−CONH−を表す。)から選ばれる基を表し;R15は炭素数1〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基を表し;X-はCOO-またはSO3-を表す。]
【0049】
【化9】
【0050】
【化10】
【0051】
[式(6)、(7)中、R18は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基またはヒドロキシアルキル基を表し;R19は炭素数1〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基を表し;R20は水素原子または式−R19−COOL1/rで示される2価の基を表し;R21は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基wp表す。Lは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアミンカチオンであってLが複数の場合は同一でも異なっていてもよい;rはLの価数を表し、1または2である。]
【0052】
R12、R13、R14、R18およびR21の炭素数1〜30のアルキル基、および炭素数2〜30のアルケニル基としては、前記R1 、R2 と同様であり、好ましいものも同様である。
R12、R13、R14およびR18の炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、n−およびi−のヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基およびヒドロキシオクタデシル基等が挙げられる。
【0053】
R12 、R13 およびR14 のポリオキシアルキレン基としては、式R22−(OA3)t− で示される基(R22は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、A3 は炭素数2〜4のアルキレン基、tは2〜15の整数)が挙げられる。炭素数2〜4のアルキレン基A3 としては、1,2−エチレン基、1,2−および1,3−プロピレン基、ならびに1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブチレン基等が挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基R22は、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、n−およびi−のプロピル基、およびブチル基等が挙げられる。
【0054】
R16−T−R17−で示される基の、残基R16を構成する炭素数1〜30の脂肪酸としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、2−エチルヘキサン酸等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数6〜24の脂肪酸である。
R17の炭素数1〜4のアルキレン基としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、メチレン基、エチレン基、n−およびi−のプロピレン基、ブチレン基等;炭素数1〜4のヒドロキシアルキレン基としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、n−およびi−のヒドロキシプロピレン基、ヒドロキシブチレン基等が挙げられる。これらのうち好ましいものは炭素数1〜4のアルキレン基である。
【0055】
これらのうち好ましいものは、R12およびR18は炭素数6〜24のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、およびR16CONHR17−基であり、R13、R14は炭素数1〜24のアルキル基、アルケニル基およびヒドロキシアルキル基であり、R21は水素原子および炭素数6〜24のアルキル基、アルケニル基である。
【0056】
R15およびR19の炭素数1〜4のアルキレン基、およびヒドロキシアルキレン基としては、R17と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
X- のうち好ましいものはCOO- である。
【0057】
R20は、水素原子または−R19−COOL1/r 基である。これらのうち好ましいものはR20が水素原子のものとR20が−R19−COOL1/r 基のものの混合物である。
Lのアルカリ金属としてはリチウム、カリウム、ナトリウム等;アルカリ土類金属としてはカルシウム、マグネシウム等;アミンカチオンとしてはモノ−、ジ−およびトリ−のエタノールアミンカチオン、2−エチルヘキシルアミンカチオン等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、水素原子およびアルカリ金属である。
【0058】
ベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、アルキル(炭素数1〜30)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜30)ベタイン、スルフォベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらのうち好ましいものはアルキルジメチルベタイン、アルキルアミドアルキルジメチルベタインである。
【0059】
アミノ酸型両性界面活性剤としては、例えば、アラニン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1〜30)イミノジプロピオン酸型]両性界面活性剤、グリシン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノ酢酸型等]両性界面活性剤が挙げられる。これらのうち好ましいのは、アルキルアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルイミノジプロピオン酸型両性界面活性剤である。
【0060】
スルホン酸塩型両性界面活性剤(アミノスルホン酸型両性界面活性剤)としては、例えば、アルキル(炭素数1〜30)両性界面活性剤等が挙げられる。
【0061】
カチオン界面活性剤(D22)としては、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤およびアミン塩型カチオン界面活性剤等が挙げられる。
(D22)としては、例えば下記一般式(8)または(9)で示されるもの、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
[式中、R22、R23、R24はそれぞれ独立に炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、および式R16−T−R17−で示される基(ただし、R16は炭素数1〜30の脂肪酸からCOOH基を除いた残基;R17は炭素数1〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基;Tは−COO−または−CONH−を表す。)から選ばれる基をあらわす。R25は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基またはポリオキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数:2〜4)を表す。ただし、R22とR23とR24とのいずれか2つが結合してNとともに複素環を形成していてもよい。Q- は無機酸アニオンまたは有機酸アニオンを表し、QHは無機酸または有機酸を表す。]
【0065】
R22、R23、R24の炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ポリオキシアルキレン基、および式R16−T−R17−で示される基としては、前記R12、R13、R14と同じものが挙げられる。
R22、R23、R24としては、これらのうち、炭素数1〜24のアルキル基、アルケニル基およびヒドロキシアルキル基が好ましい。
R25の炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基またはポリオキシアルキレン基としては、R22、R23、R24で挙げたものと同様である。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜4のアルキル基およびヒドロキシアルキル基である。
【0066】
アニオンQ- を形成する酸、QHとしては次のものが挙げられる。
(1)無機酸
ハロゲン化水素酸(塩酸、臭素酸、沃素酸等)、硝酸、炭酸、燐酸等;
(2)有機酸
(a)アルキル硫酸エステル
メチル硫酸、エチル硫酸等の炭素数1〜4のアルキル硫酸エステル;
(b)アルキル燐酸エステル
ジメチル燐酸、ジエチル燐酸等の炭素数1〜8のモノおよび/またはジアルキル燐酸エステル;
【0067】
(c)炭素数1〜30の脂肪族モノカルボン酸
飽和モノカルボン酸(残基がR16を構成する脂肪酸として挙げたもの等)、不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸等)、および脂肪族オキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、オキシカプロン酸、リシノール酸、オキシステアリン酸、グルコン酸等);
(d)炭素数7〜30の芳香族または複素環モノカルボン酸
芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ナフトエ酸、ケイ皮酸等)、芳香族オキシカルボン酸(サリチル酸、p−オキシ安息香酸、マンデル酸等)、および複素環モノカルボン酸(ピロリドンカルボン酸等);
【0068】
(e)2〜4価のポリカルボン酸
炭素数2〜30の直鎖状または分岐状の脂肪族ポリカルボン酸[飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸等)、炭素数4〜30の不飽和ポリカルボン酸(マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等)];炭素数4〜20の脂肪族オキシポリカルボン酸(リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等);炭素数8〜30の芳香族ポリカルボン酸[ジカルボン酸〔フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびビフェニルジカルボン酸(2,2’−、3,3’−および/または2,7−体)等〕、トリもしくはテトラカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等)];硫黄を含有する炭素数4〜30のポリカルボン酸(チオジプロピオン酸等);
(f)炭素数2〜30のアミノ酸
アスパラギン酸、グルタミン酸、システィン酸等のアミノ酸;
【0069】
(g)有機酸変性シリコーン
ポリオルガノシロキサンのメチル基の一部が、−R26−COOH基および/または−R26−SO3H基で置換された有機酸が挙げられ、 例えば、25℃における粘度が5〜20,000mm2 /sでカルボキシ当量が200〜20,000のカルボキシ変性シリコーン等が挙げられる。
【0070】
(h)脂肪族アルコール(炭素数8〜24)のカルボキシメチル化物
オクチルアルコールのカルボキシメチル化物、デシルアルコールのカルボキシメチル化物、ラウリルアルコールのカルボキシメチル化物、ドバノール23(三菱油化製)のカルボキシメチル化物およびトリデカノール(協和発酵製)のカルボキシメチル化物等。
(i)脂肪族アルコール(炭素数8〜24)のEOおよび/またはPO1〜20モル付加物のカルボキシメチル化物
オクチルアルコールEO3モル付加物のカルボキシメチル化物、ラウリルアルコールEO2.5モル付加物のカルボキシメチル化物、イソステアリルアルコールEO3モル付加物のカルボキシメチル化物、ドバノール23EO3モル付加物のカルボキシメチル化物およびトリデカノールEO2モル付加物のカルボキシメチル化物等。
【0071】
これらのうちで好ましいものは、メチル硫酸、エチル硫酸、アジピン酸、グルコン酸、とくにイソステアリン酸、25℃における粘度が10〜8,000(さらに20〜5,000、とくに30〜1000)mm2
/sで、カルボキシル当量が300〜8,000(さらに400〜4,000、とくに500〜1,500)のカルボキシ変性シリコーン、およびラウリルアルコールEO1〜5モル付加物のカルボキシメチル化物である。
【0072】
第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキル(炭素数1〜30)トリメチルアンモニウム塩、窒素環含有第4級アンモニウム塩(セチルピリジニウムクロライド等)、ポリ(付加モル数2〜15)オキシアルキレン(炭素数2〜4)鎖含有第4級アンモニウム塩、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜10)ジアルキル(炭素数1〜4)メチルアンモニウム塩(ステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェート等)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのはアルキルトリメチルアンモニウムの有機酸塩およびとくにジアルキルジメチルアンモニウムの有機酸塩である。
【0073】
アミン塩型カチオン界面活性剤としては、3級アミンを無機酸(塩酸、硝酸、硫酸、ヨウ化水素酸等)または有機酸(酢酸、ギ酸、蓚酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、アルキル硫酸等)で中和して得られるものが使用できる。例えば、炭素数3〜90の脂肪族3級アミン等の無機酸塩または有機酸塩等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、脂肪族アミンの無機酸塩および有機酸塩である。
【0074】
本発明の油剤中のこれら制電成分(D2)の含有量は、好ましくは0〜12質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
【0075】
これら以外の添加剤(D3)としては、通常弾性繊維用油剤に使用される成分を使用でき、酸化防止剤(ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等)、紫外線吸収剤等が挙げられる。本発明の油剤中の(D3)の配合量は、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0076】
溶解助剤(E)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の2価アルコール;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の高極性溶媒;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられ、これらは2種以上用いてもよい。
【0077】
なお、炭化水素系潤滑油(A2)を用いる場合は、そのままベースオイル(A)の少なくとも一部とすることができる。溶解助剤(E)は、そのまま本発明の油剤中に含有させてもよいし、(E3)など除去可能なものは、ストリッピング等により除去してもよい。
【0078】
本発明の油剤の製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
常温で固体である(B)を(C)と一緒に攪拌装置のある槽に入れ、100〜150℃に加熱して完全に溶解させて、(B)と(C)からなる液状混合物(I)を、予め−40〜25℃に温調しておいた(A)中に投入し、体積平均粒子径が0.001〜1μmの(B)を得ることができる。(I)は、均一な溶液であっても分散液であってもよい。
【0079】
液状混合物(I)を得る方法としては特に限定されないが、(B)と(C)を含む混合物を80〜160℃に加熱し溶融する方法が好ましい。
【0080】
(I)は(B)と(C)のみからなるものでも、さらに炭化水素系潤滑油(A2)の少なくとも一部、または溶解助剤(E)を含有した混合物の状態で加熱溶融したものでもよい。
【0081】
(I)を(A)中に投入後、撹拌することで(B)の粒子径を小さくすることができ、油剤安定性がよくなる。
【0082】
上記方法で得られた分散物をそのまま本発明の弾性繊維用油剤とすることもできるが、必要により(A)や(D)等を添加して、本発明の油剤としてもよい。
【0083】
本発明の油剤の粘度は、均一付着、ローラ巻き付き防止のために、25℃で2〜100mm2 /sが好ましい。
粘度は以下の方法で測定する。
[粘度の測定方法]
試料油剤を20gウベローデ粘度計に入れ、恒温水槽で25±0.5℃に試料油剤を温調する。30分後、ウベローデ法により粘度を測定する。
【0084】
油剤の付与形態は、通常非含水の状態で使用することができるが、必要に応じて水乳化物として使用してもよい。
非含水の状態とは、そのまま(ストレート給油)、または希釈剤(有機溶媒、低粘度鉱物油等)で希釈して使用することができる。希釈比率は特に限定されないが、油剤の質量[非揮発分の合計質量]は、希釈後の希釈油剤の全質量に基づいて、通常1〜80質量%、好ましくは5〜70質量%である。
低粘度鉱物油としては、例えば、25℃における粘度が1mm2 /s未満の流動パラフィンや精製スピンドル油が挙げられる。
【0085】
水乳化物の場合は、公知の方法で乳化することができるが、例えば、本油剤を必要に応じ乳化剤と混合し、水中に乳化することによって得ることができる。
乳化剤としては、(A)、(C)の種類によっては特に加える必要はなく、例えば前記のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が使用できる。
【0086】
前記各成分に該当する以外の乳化剤を使用する場合の乳化剤の量は、乳化剤配合後の油剤(非揮発分)の全質量に基づいて、好ましくは0〜50%である。
【0087】
乳化機としては、攪拌機を備えた乳化槽やボールミル、ガウリンホモジナイザー、ホモディスパーおよびビーズミル等を用いることができる。
エマルションの濃度は特に限定されないが、油剤の質量は、乳化後のエマルションの全質量に基づいて、好ましくは0.01〜30質量%、さらに好ましくは0.2〜20質量%である。
【0088】
本発明の油剤は弾性繊維の紡糸工程(例えば200〜1,200m/分)において、紡出後、糸が巻き取られるまでの任意の位置で、ローラ給油やノズル給油等で糸に付与させることができる。給油する油剤の温度は通常10〜80℃、好ましくは15〜60℃である。
本発明の油剤は、通常弾性繊維に対して、非揮発分として0.1〜12(好ましくは0.5〜10、さらに1〜8)質量%付与させる。
【0089】
本発明の油剤を適用できる弾性繊維としては、ポリウレタン弾性糸、ポリエステル弾性糸、ポリアミド弾性糸およびポリカーボネート弾性糸等が挙げられるが、とくにポリウレタン弾性糸に好適に使用できる。
本発明の油剤を適用できる弾性繊維の維度は、特に限定されないが、好ましくは10〜2500dtx、さらに好ましくは11〜1870dtxである。
【0090】
本発明の油剤で処理されてなる弾性繊維は、後加工工程(例えばエアースパンヤーン工程、カバーリング工程、エアーカバーリング工程、編み工程、整経工程、精練工程、染色工程および仕上げ工程等)を経て最終製品に仕上げられる。
なお、弾性繊維は他の合成繊維、例えばナイロン繊維やポリエステル繊維と混紡して使用される。従って、本発明の弾性繊維処理用油剤は、付与された後、他の合成繊維の紡糸油剤と一緒に洗浄され、除去されることが多い。精練工程では、水系精練または溶融精練が行われる。
最終製品としては、衣料用[例えばパンティーストッキング、靴下、インナーファンデーション(ブラジャー、ガードル、ボディースーツ等)、アウターウェア(ジャケット、スラックス等)、スポーツウェア(水着、レオタード、スキーズボン等)]および産業資材用(例えば紙おむつ、ベルト等)等に広く適用できる。
【0091】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、文中および表中の部は質量部(有効成分)を表す。
【0092】
実施例2〜3、比較例1〜6および参考例1〜2
表1記載の配合処方・製造条件で各成分を配合して、本発明および比較例の弾性繊維用油剤を調製した。
【0093】
参考例1
ジステアリン酸マグネシウム1部、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩0.1部および流動パラフィン10部を混合し、110〜120℃で液状混合物(I)とする。撹拌機の付いた反応容器内に、5℃に温調した流動パラフィン28.9部を入れ、撹拌しながら、80〜120℃の(I)をこの漕へ徐々に投入し、30分間撹拌した。この時、漕内の温度は5〜22℃であった。次いでポリジメチルシロキサン60部を加え、参考例1の油剤を調製した。
【0094】
実施例2
ジステアリン酸マグネシウム1部、イソトリデシルアルコールEO3モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩0.1部および流動パラフィン10部を混合して液状混合物(I)とする以外は実施例1と同様にして、実施例2の油剤を調製した。
【0095】
実施例3
ステアリン酸マグネシウム1部、セカンダリーアルコール(炭素数13)EO5モル付加物0.5部および流動パラフィン10部を混合して液状混合物(I)とする以外は実施例1と同様にして、実施例3の油剤を調製した。
【0096】
参考例2
ジステアリン酸カルシウム1部、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩0.1部および流動パラフィン10部を混合して液状混合物(I)とする以外は参考例1と同様にして参考例2の油剤を調製した。
【0097】
比較例1
ジステアリン酸マグネシウム1部および流動パラフィン10部を混合して液状混合物(I)とする以外は実施例1と同様にして、比較例1の油剤を調製した。
【0098】
比較例2
ジステアリン酸マグネシウム1部、パーフルオロオクチルスルホネートナトリウム塩0.1部および流動パラフィン10部を混合して液状混合物(I)とする以外は実施例1と同様にして、比較例2の油剤を調製した。なお、本比較例のパーフルオロオクチルスルホネートナトリウム塩のSP値は7.2で、低過ぎる。
【0099】
比較例3
ジステアリン酸マグネシウム1部、ラウリン酸モノエタノールアミドEO2モル付加物0.1部および流動パラフィン10部を混合して液状混合物(I)とする以外は実施例1と同様にして、比較例3の油剤を調製した。なお、本比較例のラウリン酸モノエタノールアミドEO2モル付加物のSP値は10.7で、高過ぎる。
【00100】
比較例4
ジステアリン酸マグネシウム1部は使わない以外は実施例1と同様にして、比較例4の油剤を調製した。
【00101】
比較例5
ステアリン酸マグネシウムの代わりにステアリン酸カリウム1部を使う以外は実施例1と同様にして、比較例5の油剤を調製した。
【00102】
比較例6
ジステアリン酸マグネシウム1部、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩0.1部、流動パラフィン38.9部およびジメチルポリシロキサン60部を最初から一括して混合し、110〜120℃で加熱溶解した。その後、撹拌しながら、10℃/時間の割合で20℃まで冷却し比較例6の油剤を調製した。
【00103】
ポリウレタン繊維の乾式紡糸法において、表1の油剤をローラ給油で油剤付着量が弾性繊維質量に対し6%になるよう付与させ、600m/分でチーズに巻き取り、40Dのポリウレタン繊維を得た。
さらに、油剤の経日安定性試験、膠着性試験、平滑性試験を行なった。性能評価結果を併せて表1に示す。また、前記の方法で大塚電子株式会社製のELS−800にて測定した油剤の体積平均粒子径を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例および比較例で得られた油剤の体積平均粒子径の測定方法、経日安定性試験、油剤を付与した糸の膠着性試験法は以下の通りである。
<体積平均粒子径の測定方法>
油剤を長さ10mmのセルに入れて、大塚電子株式会社製のELS−800を使って、動的光散乱法で測定した。
【0106】
<油剤の経日安定性試験>
調整した油剤100gを、145mlガラス製ボトルに入れ、−5℃、25℃、50℃の恒温槽中に30日間静置した後、油剤の外観を肉眼で観察し、調整直後の油剤の外観と比較し、次の基準で判定した。
−判定基準−
○:変化無し
×:分離や沈降物が発生
【0107】
<膠着性試験>
紡糸工程で巻き取ったチーズを25℃で1週間エージングを行った繊維を用い、可変倍率(引き出し速度と巻き取り速度との比率の変更が可能)の引き出し巻き取り装置にかけ、50m/分の速度で糸を送り出した時、糸が膠着により巻き込まれずに巻き取ることのできる最低の速度倍率を求め、次の基準で判定した。−判定基準−
○:速度倍数が 50〜65
×:速度倍数が 66以上
【0108】
なお、表1における各成分は以下の通りである。
・ポリジメチルシロキサン:KF96−10CS(信越化学工業株式会社製:粘度10mm2/s(25℃))
・流動パラフィン:流パン60S(三光化学株式会社製:粘度15mm2/s(25℃))
・界面活性剤−1:スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩
・界面活性剤−2:イソトリデシルアルコールEO3モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩
・界面活性剤−3:セカンダリーアルコール(炭素数13)EO5モル付加物
・界面活性剤−4:パーフルオロオクチルスルホネートナトリウム塩
・界面活性剤−5:ラウリン酸モノエタノールアミドEO2モル付加物
【0109】
表1から明らかなように、本発明で規定した範囲のSPを有した界面活性剤を用い、特定の体積平均粒子径を有する油剤(実施例2および3)は、油剤の経日安定性、膠着防止性に優れていることが判る。それに対し、比較例1〜6の中には性能項目をすべて満たすものはない。
【0110】
【発明の効果】
本発明の弾性繊維用油剤を用いて製造する場合には、油剤の経日安定性および糸同士の膠着防止性に優れていることから、弾性繊維を紡糸から後加工工程において長期的に安定な操業性を保ちながら製造することができる。
Claims (9)
- 25℃で1〜1000mm2/sの粘度を有し、かつ、シリコーンオイル(A1)および炭化水素系潤滑油(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1つのベースオイル(A)、0.001〜1μmの体積平均粒子径を有する炭素数12〜24の高級脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)の0.05〜2質量%、並びに8.0〜10.5の溶解度パラメーター(SP値)を有し、かつ下記一般式(2)で表されるエーテルカルボン酸アニオン界面活性剤(C1−2)、および下記一般式(3)で表される非イオン界面活性剤(C2−1)からなる群から選ばれる少なくとも1種つの界面活性剤(C)からなることを特徴とする弾性繊維処理用油剤。
- (A)+(B)+(C)の合計質量に基づいて、(A)の含有量が80質量%以上、(B)の含有量が0.05〜2質量%、(C)の含有量が0.01〜8質量%である請求項1記載の弾性繊維用油剤。
- 脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)と界面活性剤(C)の質量比が99/1〜20/80である請求項1または2記載の弾性繊維処理用油剤。
- 脂肪酸アルカリ土類金属塩(B)がステアリン酸のアルカリ土類金属塩である請求項1〜3のいずれか記載の弾性繊維処理用油剤。
- シリコーンオイル(A1)が、ポリジメチルシロキサン、またはその一部が炭素数2〜20のアルキル基および/またはフェニル基で置換されたポリジメチルシロキサンである請求項1〜4のいずれか記載の弾性繊維処理用油剤。
- 炭化水素系潤滑油(A2)が、鉱物油、その精製油、水添油または分解油である請求項1〜5のいずれか記載の弾性繊維処理用油剤。
- (B)の体積平均粒子径が0.01〜0.5μmである請求項1〜6のいずれか記載の弾性繊維処理用油剤。
- 請求項1〜7のいずれか記載の弾性繊維処理用油剤を紡糸工程で、弾性繊維に対して0.1〜12質量%付与し、必要により精練する弾性繊維の処理方法。
- 請求項8記載の処理方法により処理されてなる弾性繊維。
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