JP3651691B2 - インクジエツトプリントへツドの製造方法 - Google Patents

インクジエツトプリントへツドの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【目次】
以下の順序で本発明を説明する。
産業上の利用分野
従来の技術
発明が解決しようとする課題
課題を解決するための手段(図7、図27及び図37)
作用(図7、図27及び図37)
実施例(図1〜図46)
(1)ピエゾ素子を用いたインクジエツトプリントヘツド(図1〜図23)
(1−1)第1実施例のインクジエツトプリントヘツド(図1〜図12)
(1−2)第2実施例のインクジエツトプリントヘツド(図13〜図19)
(1−3)インクジエツトプリントヘツドの作成方法(図20〜図23)
(1−4)実施例の効果
(2)発熱素子を用いたインクジエツトプリントヘツド(図24〜図41)
(2−1)第3実施例のインクジエツトプリントヘツド(図24〜図35)
(2−2)インクジエツトプリントヘツドの作成方法(図36及び図37)
(2−3)第4実施例のインクジエツトプリントヘツド(図38〜図41)
(2−4)実施例の効果
(3)インクジエツトプリンタの構成(図42〜図45)
(4)他の実施例(図46)
発明の効果
【0002】
【産業上の利用分野】
本発明は、インクジエツトプリントへツドの製造方法に関し、例えば中間調をプリントし得るオンデマンド型インクジエツトプリンタに適用して好適なものである。
【0003】
【従来の技術】
従来、いわゆるオンデマンド型インクジエツトプリンタは、記録信号に応じてインク液滴をノズルより吐出して、紙やフイルムなどの記録媒体に記録するプリンタであり、小型化、低コスト化が可能なため近年急速に普及しつつある。
【0004】
一方近年、特にオフイスにおいてデスクトツプパブリツシングと呼ばれるコンピユータを用いた文書作成が盛んに行われるようになり、最近では文字や図形だけではなく写真等のカラーの自然画像を文字や図形と共に出力するという要求が増加してきている。このように高品位な自然画像をプリントするためには中間調の再現が重要である。
【0005】
このオンデマンド型インクジエツトプリンタにおいて、インク液滴を吐出するためには、例えばピエゾ素子を用いる方法や発熱素子を用いる方法が一般的である。ピエゾ素子を用いる方法は、ピエゾ素子の変形によりインクに圧力を与えノズルより吐出させるものであり、発熱素子を用いる方法は、発熱素子によりインクを加熱沸騰させ発生する泡の圧力でインクを吐出させるものである。
【0006】
また中間調を再現するためには、ピエゾ素子又は発熱素子に与える電圧やパルス幅を変化させ、吐出する液滴サイズを制御することで印字ドツトの径を可変として階調を表現するものや、ドツト径は変化させずに1画素を例えば4×4のドツトより成るマトリクスで構成し、このマトリクス単位でいわゆるデイザ法を用いて階調表現を行うものがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上述したようにオンデマンド型インクジエツトプリンタにおいて、ピエゾ素子又は発熱素子に与える電圧やパルス幅を変化させる方法では、ピエゾ素子又は発熱素子に与える電圧やパルス幅を下げすぎるとインクを吐出できなくなるため最小液滴径に限界があり、表現可能な階調段数が少なく、特に低濃度の表現ができず、自然画像をプリントアウトするためには、実用上不十分であつた。
【0008】
またデイザ法を用いて階調表現を行う方法で、例えば1画素を4×4のマトリクスで構成した場合には、17階調の濃度を表現できる。しかし例えば上述の方法と同じドツト密度で印字した場合、解像度が1/4に劣化してしまつて荒さが目立つため、この場合も自然画像をプリントアウトするためには、実用上不十分であつた。
【0009】
このような問題を解決するため、透明溶媒とインクを定量混合して得られる混合液を吐出して、印刷を行うインクジエツトプリンタがある。このインクジエツトプリンタにおいては、透明溶媒及びインクのうち一方の液体、例えばインクを所望する階調に合わせて定量し、この定量したインクを、他方の液体として例えば透明溶媒と混合し、その混合液量を一定として吐出し印刷を行う。すなわちドツト内濃淡階調によつて印刷を行うようになされている。
【0010】
このようにインク及び透明溶媒を混合した混合液により、印刷を行うインクジエツトプリンタとして、電気浸透を利用してインク及び透明溶媒の定量混合を行うものが提案されている(特開平5−201024号公報(米国特許第961982号))。ここで電気浸透とは、電解質溶液が満たされている容器を、例えば左右に仕切るように多孔質隔膜を設け、仕切られた左右の電解質溶液それぞれの中に電極板を挿入して電圧を印加した場合に、電解質溶液が多孔質隔膜を介して一方から他方に移動する現象である。
【0011】
この電気浸透を用いれば、電解質溶液の浸透量(移動量)が流れた電気量に比例するので、比較的正確な定量混合を行うことができる。しかしながら、電気浸透現象の周波数応答は、例えばピエゾ素子や発熱素子等と比較して遅いため、印刷速度の高速化を図ることが困難であつた。また電気浸透自体、電解質溶液を用いるため透明溶媒として水を用いると電気分解して気泡が発生してしまう問題があつた。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成で濃度データに従つて確実に中間調を表現し得るインクジエツトプリントへツドの製造方法を提案しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明においては、インク(32)及び透明溶媒(31)をオリフイスプレート(406)を介して吐出するインクジエツトプリントへツドの製造方法において、オリフイスプレート(406)は、インク(32)及び透明溶媒(31)を定量混合する筒形状の混合室(37)と、当該混合室(37)の底面部に形成され透明溶媒(31)又はインク(32)が吐出される第1のオリフイス(35)と、混合室(37)の側面部に形成されインク(32)又は透明溶媒(31)が吐出される第2のオリフイス(36)と、当該第2のオリフイス(36)にインク(32)又は透明溶媒(31)を導く混合溝(38)とを有し、当該オリフイスプレート(406)をレジストパターン及び電気メツキの金属パターンを多層に繰り返して一体に形成するようにした。
【0016】
【作用】
かかる製造方法により製造されたオリフイスプレート(406)を用いたインクジエツトプリントへツドによれば、与えられた各画素毎の濃度データに従つてインク(32)と透明溶媒(31)とを定量混合し、この混合されたインク液滴を記録媒体に付着させることにより、与えられた各画素毎の濃度データに基づいた所定の濃度のインク液滴を記録媒体に付着させ、簡易な構成で濃度データに従つて確実に中間調を表現し得る。
【0017】
【実施例】
以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。
【0018】
(1)ピエゾ素子を用いたインクジエツトプリントヘツド
(1−1)第1実施例のインクジエツトプリントヘツド
図1〜図3は本発明によるインクジエツトプリントヘツドを印字面側から見た場合の上面図、正面図及び右側面図を示し、図4〜図6はインクジエツトプリントヘツドの各断面図であり、また図7は吐出ノズル部Gの拡大断面図である。この図1〜図7において、1はオリフイス、2はノズルA、3はノズルB、4は混合孔、5は1方向弁、6はキヤビテイA、7はキヤビテイB、8はピエゾ素子A、9はピエゾ素子Bを示す。透明溶媒10は透明溶媒タンク(図示せず)より供給され、供給パイプA11から供給溝A12を通つてキヤビテイA6及びノズルA2に充填される。
【0019】
インク13はインクタンク(図示せず)より供給され、供給パイプB14から供給溝B15を通つてキヤビテイB7及びノズルB3に充填されている。ピエゾ素子A8とピエゾ素子B9はピエゾ素子固定部材19に固定されていて、それぞれ振動板A16及び振動板B17を介してキヤビテイA6とキヤビテイB7に圧力を加える。20、21、22、23はピエゾ素子A8、ピエゾ素子B9に駆動電圧を印加するためのフレキシブル基板である。
【0020】
このインクジエツトプリントヘツドにおいては、図8に示す手順で、吐出の動作を実行する。すなわち透明溶媒10は、毛細管圧力によつてノズルA2に充填され、表面張力によりオリフイス1で半月形のいわゆるメニスカスを形成する(図8(A))。吐出の前の待機時は、あらかじめピエゾ素子A8に例えば10〔v〕を印加しておく。
【0021】
吐出時には、まずピエゾ素子A8の印加電圧を0〔v〕にする。これにより、ピエゾ素子A8は縮小しキヤビテイA6の体積が増加し内圧が負圧となり、透明溶媒10はノズルA2内に引き込まれる(第8図(B))。これと同時又は少し遅れてピエゾ素子B9に駆動電圧例えば10〔v〕が与えられ、ピエゾ素子B9が長手方向に伸張することで振動板B17を介してキヤビテイB7及びノズルB3に内圧が与えられる。
【0022】
ノズルB3内のインク13とノズルA2内の透明溶媒10は1方向弁5によつて待機時は隔絶されているが、この内圧によつて1方向弁5は押しあけられて、インク13が混合孔4を通つてノズルA2の中に押し出される(図8(C))。インク13の押し出される量はピエゾ素子B9に与えられる駆動電圧パルスの電圧値又はパルス幅によつて制御される。
【0023】
ピエゾ素子B9の電圧パルスが切れるとピエゾ素子B9は元のサイズに復帰する。この際、キヤビテイB7の内圧は負圧となりインクはノズルB3に逆流しよとする。しかしここで1方向弁5が閉じるため、押し出されたインクはノズルA2内に留まる(図8(D))。ピエゾ素子A8の縮小によつて生じたキヤビテイA6内の負圧はやがて元に戻り、ノズルA2に透明溶媒が再充填される(図8(E))。
【0024】
次にピエゾ素子A8に駆動信号として例えば20〔v〕が与えられ、振動板A16を介してキヤビテイA6及びノズルA2に内圧が加わる。この内圧によつて透明溶媒10と押し出されたインク13が一体となつてオリフイス1から所定濃度のインク液滴として吐出される(図8(F)、図8(G)、図8(H))。
【0025】
この後ピエゾ素子A8の電圧を10〔v〕に下げると、ピエゾ素子A8の縮小によりキヤビテイA6及びノズルA2の内圧は負圧となり、これにより透明溶媒10はノズルA2に引き込まれる(図8(I))。キヤビテイA6、ノズルA2の内圧はやがて元に戻り、透明溶媒10は毛細管圧力によりノズルA2に再充填される(図8(J))。
【0026】
この一連の動作の中で、1方向弁5は、待機時にインク13と透明溶媒10が拡散による不要な自然混合を起こすのを防止する役割と、インク押し出し後にピエゾ素子B9の変形が復帰する際のインクの逆流を防止する役割、そして吐出時に吐出圧力によつて透明溶媒10が混合孔4を通つてノズルB3の方に侵入することを防止する役割を果たしている。
【0027】
ここでこのインクジエツトプリントヘツドの場合、1方向弁5は図9(A)〜図9(C)に示すように、板状の基材に凸部分を設け、ここに放射状のスリツトを加工して形成されている。また図8の動作で、待機時に電圧をピエゾ素子A8に与えておきインク押し出しの時又は直前にこれをオフして透明溶媒をノズルA2内に引き込むことにより、インク押し出しの際にオリフイス1からインク又は透明溶媒があふれ出すのを防止することができる。
【0028】
ピエゾ素子A8とピエゾ素子B9には、図10に示すタイミングで信号電圧が与えられる。図の場合、横軸を時間とし縦軸を電圧としている。この実施例の場合、吐出周期は1〔msec〕(周波数1〔kHz〕)であり、この間にインクの定量混合とインク液滴の吐出を行う。図8(A)〜図8(J)の時点をタイミングチヤートの中に示す。図8(C)及び図8(D)で押し出されたインク13は、すべて吐出されるインク液滴に含まれ、ノズルA2内に残存しないことが必要である。
【0029】
実際上インクがノズルA2内に残存しないためのインクの混合比は、吐出周波数等の条件によるが、この実施例のインクジエツトプリントヘツドでは、実験的に70〔%〕以下としている。従つて充分な最大濃度を得るためには、インクが充分な濃さを持つていることが必要である。このためインクが混合重量%で70〔%〕のとき、印字濃度が反射濃度で 1.5、好ましくは2以上得られるように、インクに染料を含有させている。
【0030】
このインクジエツトプリントヘツドの駆動回路は、図11に示すように構成され、デジタル中間調データが他ブロツクより供給され、シリアルパラレル変換回路111により各インク定量部(ピエゾ素子B)制御回路113及び吐出制御回路114に送られる。シリアルパラレル変換回路111より与えられたデジタル中間調データが所定のしきい値以下の場合はインク定量及び吐出は行わない。
【0031】
ピエゾ素子Aには10〔v〕が、ピエゾ素子Bには0〔v〕が与えられている。印字タイミングになると、他ブロツクから印字トリガが出力され、タイミング制御回路112がそれを検出し、所定のタイミングでインク定量部コントロール信号と吐出コントロール信号をそれぞれインク定量部制御回路113及び吐出制御回路114に出力する。それぞれの信号は、図10について上述したタイミングで出力される。
【0032】
タイミング制御回路112は、ピエゾ素子Aへの印加電圧を10〔v〕→0〔v〕→20〔v〕→10〔v〕の順で変化させるタイミングを吐出制御回路114に与え、これにより吐出制御回路114はこれに従つて吐出部(ピエゾ素子A)116に上述の所定電圧を印加する。
【0033】
また同時にタイミング制御回路112は、ピエゾ素子Bへの印加電圧を0〔v〕→10〔v〕→0〔v〕と変化させるタイミングをインク定量部制御回路113に与え、これによりインク定量部制御回路113はインク定量部(ピエゾ素子B)115に前記の所定電圧を印加する。これによつて所定量のインクがピエゾ素子B9によつてノズルA2に押し出される。
【0034】
なおこの実施例のインクジエツトプリントヘツドの主な寸法は、オリフイス1のピツチが 0.338〔mm〕(75〔dpi 〕)、ピエゾ素子8、9のサイズが0.15× 0.5×3〔mm〕に選定されている。またオリフイス1の形状は20〔μm 〕角の矩形、ノズルA2、ノズルB3の断面は20〔μm 〕角の矩形、インク混合孔4は20〔μm 〕φの丸穴に成形されている。
【0035】
またこの実施例では、インクジエツトプリントヘツドを単ノズルのヘツドとして構成したが、8ノズル以上として、例えば32ノズル、64ノズル、 100ノズル又は紙の全幅に対応したフルラインマルチヘツドとして構成するようにしても良い。因にオリフイスピツチ 0.338〔mm〕すなわち75〔dpi 〕としたが、これで解像度が不足の場合には、図12に示すように、例えば4個のヘツドを1/4ピツチすなわち84.5〔μm 〕ずつずらして配設し、結果として 300〔dpi 〕の解像度を得るようにしても良い。この場合ノズル数は32ノズルとなる。
【0036】
(1−2)第2実施例のインクジエツトプリントヘツド
ここでインクを透明溶媒に混合する方法の場合には、吐出をオンデマンドでなくすることができる。上述した第1実施例では、デジタル中間調データが所定のしきい値以下の場合にはインク定量も吐出も行わない、すなわち何も印字しないようにしたが常に吐出を行う、すなわち常に印字するようにすることも可能である。
【0037】
すなわちこのインクジエツトプリントヘツドの場合、図1〜図6の対応部分に同一符号を付した図13〜図18に示すように、定量混合用のピエゾ素子のみをマルチ構成として、吐出側は1つのピエゾ素子で複数のノズルから同時に吐出するなされている。これにより、回路の構成を簡略化し得ると共にヘツド構造自体を簡略化し、部品点数を削減できる。
【0038】
この場合は、白を表現するのに透明溶媒を印字することになる。これにより、ヘツドの駆動回路の吐出制御回路部分を図19に示すように簡略化することができる。すなわちこの場合、吐出制御回路124を単一化することができ、シリアルパラレル変換回路121を吐出制御回路124に結線する必要がない。また吐出用のピエゾ素子126を共通化することもできる。
【0039】
(1−3)インクジエツトプリントヘツドの作成方法
ここで実施例のインクジエツトプリントヘツドの作成方法として、図20〜図23に加工組立工程を示す。簡単のためシングルノズルのヘツドとして説明する。まずヘツド部分の加工として、図20に示すように、 0.3〔mm〕厚のガラス301の端面に、ダイシングにより幅30〔μm 〕、深さ30〔μm 〕の溝を加工する。また50〔μm 〕厚のステンレスにキヤビテイ、供給溝、供給孔をエツチング加工してプレート302を作成する。同じく50〔μm〕厚のステンレスに供給孔をエツチング加工してプレート303を作成する。これらをエポキシ系接着剤により接着ラミネートして部材304を形成する。
【0040】
次に1方向弁部分の作成を図21に示す。これはフオトエレクトロフオーミング法を用いて行う。まず母型となるステンレス板305にエツチングにより直径20〔μm 〕、深さ5〔μm 〕のクレーター状の窪み306を形成する(図21(A))。続いてメツキ用母型の前処理(剥離皮膜処理)、フオトレジスト塗布、露光、現像を行う。露光用原版には十字形状を有するようなパターンを使用し、予め母型305に作成しておいた窪み306上に幅3〔μm 〕程度の十字形のレジストパターン307が残るようにする(図21(B))。
【0041】
次にレジストパターン307が形成された母型305にニツケルメツキ308を施す(図21(C))。メツキ厚は1〜10〔μm 〕好ましくは3〜5〔μm 〕とする。この状態でフオトレジストを再度塗布し、露光、現像する。この際の露光用原版は図のようなパターンを用い、十字のパターンの上に円柱状のレジスト309が残るようにする(図21(D))。続いてニツケルメツキを今度はメツキ厚5〜30〔μm 〕好ましくは10〜20〔μm 〕で施す(図21(E))。メツキ後、レジストを除去しメツキされたニツケル皮膜を母型から剥離して図のような半球状の凸部分に十字のスリツトをもつニツケル薄板310を得る(図21(F))。
【0042】
次に図20で加工したヘツド部分の部材304と、1方向弁部分のニツケル薄板310を図22に示すように組み合わせる。すなわちまず図に示すような開口部をエツチング又はワイヤーカツトで形成した 0.3〔mm〕厚ステンレス板311を用意する。図20及び図21について上述したように作成した部材304と、これと鏡像の形である部材304′(同じ形でも良い)、ニツケル薄板310、ステンレス板311を図のように組み合わせ接着する。接着後、図中C面を研削し平滑にする。この際、1方向弁5の中心から研磨面までの距離が30〜40〔μm〕となるよう、あらかじめ各部品の寸法及び研磨代を見込んでおく。
【0043】
最後に、図23に示すように、オリフイスプレート312及びピエゾ素子313、ピエゾ素子固定ブロツク314を図のように組み合わせて接着し、このようにしてインクジエツトプリントヘツドを完成する。なおピエゾ素子には積層型ピエゾ素子を短冊状にカツトしたものが使用されている。
【0044】
(1−4)実施例の効果
以上の構成によれば、与えられた各画素毎の濃度データに従つてインクと透明溶媒とを定量混合し、この混合されたインク液滴を記録媒体に付着させることにより、与えられた各画素毎の濃度データに基づく濃度のインク液滴を記録媒体に付着させ、簡易な構成で濃度データに従つて確実に中間調を表現し得る。
【0045】
さらに上述の構成によれば、インクジエツトプリントヘツドにおいて、1画素単位で高階調記録ができるため、高品位の連続階調記録を行うことができ、従来不可能であつた1ドツト単位での印字濃度による濃度階調ができる。また板状の基材にスリツトを加工した1方向弁によりインクと透明溶媒の不要な自然混合を防止することができ、吐出時の透明溶媒又はインクの逆流を防止することができるため、インク又は透明溶媒供給量の高精度の定量制御が可能となり高品位の連続階調記録が可能となる。
【0046】
さらに上述の構成によれば、インク又は透明溶媒の押し出し前に透明溶媒又はインクの引き込み動作を行うことにより、オリフイスからのインク又は透明溶媒の溢れ出しを防止することができ、さらに高精度のインク又は透明溶媒供給量が定量制御できる。さらに1方向弁を凸部分に放射状のスリツトを設けた形とすることで確実に逆流を防止し得、さらにこの作成をフオトエレクトロフオーミング法によつて行うことにより高精度の1方向弁が作成できる。
【0047】
(2)発熱素子を用いたインクジエツトプリントヘツド
(2−1)第3実施例のインクジエツトプリントヘツド
図24及び図25に本発明によるインクジエツトプリントヘツドの第3実施例の主要部を、図26及び図27にその吐出部を拡大して示す。図24及び図25でベースBにヘツドチツプTが接着されており、透明溶媒31がベースB内の透明溶媒溜45より、インク32がベースB内のインク溜46よりそれぞれ、ヘツドチツプTの第1の連通溝43及び第2の連通溝42に供給されている。ヘツドチツプT内において透明溶媒31は第1の連通溝43、第1の供給溝41を通つて、第1のキヤビテイ39に充填され毛細管力によつて維持され、第1のオリフイス35において半月形のいわゆるメニスカスM1を形成している。
【0048】
インク32は第2の連通溝44、第2の供給溝42を通つて、第2のキヤビテイ40を経てさらに混合溝38に充填され毛細管力によつて維持され、第2のオリフイス36においてメニスカスM2を形成している。第1の発熱素子33と第2の発熱素子34は、それぞれ第1のキヤビテイ39と第2のキヤビテイ40に接して図のように配設されている。透明溶媒31及びインク32は種々の構成のものが使用可能であるが、この実施例で透明溶媒31は純水に界面活性剤を添加したものを使用し、インク32は水性インクを使用するようになされている。
【0049】
図28にこのインクジエツトプリントヘツドの吐出の動作を説明する。透明溶媒31は、毛細管力によつて第1のキヤビテイ39に充填されていて、表面張力によりオリフイス35で半月形のいわゆるメニスカスM1を形成する。インク32は、毛細管力により第2のキヤビテイ40を経て混合溝38に充填されていて第2のオリフイス36でメニスカスM2を形成している(図28(A))。第2の発熱素子34に電圧パルスが与えられ、インク32が膜沸騰して発熱素子34上でバブルB2が発生し第2のキヤビテイ40内の内圧が高まる。これによりインク32は第2のオリフイス36より混合部37に押し出される(図28(B))。インク32の押し出される量は第2の発熱素子34に与えられる駆動電圧パルスの電圧値又はパルス幅によつて制御される。
【0050】
次に第1の発熱素子33に電圧パルスが与えられ、バブルB1が発生し第1のキヤビテイ39内の内圧が高まる。これにより透明溶媒31は第1のオリフイス35より突出し始め、混合部37に押し出されていたインク32が透明溶媒31と合体する。このときもしくはこれに先立つて、発熱素子34への電圧パルスはオフされバブルB2は急速に消滅し、第2のキヤビテイ40内の内圧が低下する。これによつて透明溶媒31とインク32は第2のオリフイス36近傍で引きちぎれ、インク32は第2のキヤビテイ40方向に引き込まれる(図28(C))。
【0051】
図28(D)において、第1のオリフイス35より突出したインク32が混合した透明溶媒31はさらに液柱となつて成長する。第2のキヤビテイ40及び混合溝38ではインク32の再充填がはじまる。図28(E)では発熱素子33への電圧パルスがオフされ、バブルB1の収縮がはじまり透明溶媒31はキヤビテイ39に引き込まれ、液柱にくびれが生じる。インク32は混合溝38に再充填される。図28(F)で液柱は引きちぎれ、独立したインクと透明溶媒の混合液滴DとそのサテライトSにわかれて記録媒体方向に飛翔していく。透明溶媒31のメニスカスM1は第1のキヤビテイ39内に後退する。図28(G)において透明溶媒31は第1のキヤビテイ39に再充填され、初期状態に戻る。
【0052】
このような一連の動作は代表的なものであり、各動作のタイミングや状態、例えば液柱の形状、再充填動作、サテライト液滴の有無等は、オリフイスのサイズなどの構造的要素、インク32や透明溶媒31の粘性や表面張力等の物性的要素、吐出周波数等の動作条件によつて変化する。混合液滴Dのインク濃度は図28(B)において第2のオリフイス36より押し出されるインク32の量により決まり、上述したようにこれは発熱素子34に与えられる駆動電圧パルスの振幅やパルス幅により制御される。振幅やパルス幅を大きくするとインク32の量は増加し、小さくするとインク32の量は減少する。振幅やパルス幅の可変範囲は実験的に最適な値に定める。第2のオリフイス36の開口面積は第1のオリフイス35の開口面積以下、好ましくは2分の1以下である。これによつてインク32をより精度よく定量する事が可能である。
【0053】
図29に第1の発熱素子33と第2の発熱素子34に与える信号電圧のタイミングを、横軸に時間、縦軸に電圧をとつて示す。この実施例の場合、吐出周期は 200〔μsec 〕(周波数5〔kHz〕)であり、この間にインク32の定量混合とインク滴の吐出を行つている。図28(A)〜(G)の時点をタイミングチヤートの中に示した。吐出の周期すなわち発熱素子33に駆動電圧を印加する周期は 200〔μsec 〕で一定であり、インク32を押し出すタイミングすなわち第2の発熱素子34に加える駆動電圧パルスをオンする時期を早くしたり遅くしたりすることで(オフする時期は一定)パルス幅を変化させている。
【0054】
図28(B)で押し出されたインク32はすべて吐出されるインク滴に含まれ、ノズルA2内に残存しないことが必要である。インク32がノズルA2内に残存しないためのインク32の混合比は、吐出周波数などの条件によるがこの実施例のインクジエツトプリントヘツドでは実験的には50〔%〕以下である。従つて充分な最大濃度を得るために、インク32が充分な濃さを持つていることが必要である。そのためにインク32が混合重量%で50〔%〕のとき、印字濃度が反射濃度で 1.5、好ましくは2以上得られる程度にインク32には、着色剤(染料や顔料)を含有させる。この実施例ではインク32に水性インクを使用し透明溶媒31には純水に界面活性剤などを混合したものを使用しているが、油性インクや油性溶媒を使用することもできる。
【0055】
図30はこの実施例によるインクジエツトプリントヘツドの駆動回路である。デジタル中間調データが他のブロツクより供給され、データ転送回路131により第2の発熱素子ドライバ133に送られる。デジタル中間調データがある所定のしきい値以下の場合は2つの発熱素子33、34の駆動は行われない。吐出タイミングになると他ブロツクから吐出トリガが出力され、タイミング制御回路132がそれを検出し、所定のタイミングで第2の発熱素子イネーブル信号と第1の発熱素子イネーブル信号をそれぞれ第2の発熱素子ドライバ133及び第1の発熱素子ドライバ134に出力する。それぞれの信号は図29で示したタイミングで出力する。
【0056】
インク32を透明溶媒31に混合する方法の場合には、吐出をオンデマンドでなく行うことができる。この実施例では、デジタル中間調データがある所定のしきい値以下の場合にはインク定量も吐出も行わない、すなわち何も印字しないようになしたが、常に吐出を行うすなわち常に印字するようにすることも可能である。この場合は白を表現するのに透明溶媒31を印字することになる。
【0057】
またこの実施例では図29及び図30で上述したようにインク32の定量を第2の発熱素子34への駆動パルス幅を変化させることで行つているが、上述したように駆動パルスの電圧値を変化させる方法をとることもできる。なおこの実施例のインクジエツトプリントヘツドの主な寸法は、発熱素子33、34のサイズが60〔μm 〕角、オリフイス35、36の径は30〔μm 〕、第1のキヤビテイ39及び第2のキヤビテイ40が直径 105〔μm 〕、深さ35〔μm 〕、混合溝38の断面は10〔μm 〕角、混合部37は直径75〔μm 〕、深さ25〔μm 〕である。
【0058】
さらにオリフイスプレートには撥水処理を施す。図31及び図32に示すように、少なくとも混合部37の表面C(図中斜線部)に撥水処理を施すことにより、透明溶媒31とインク32のメニスカスM1、M2を安定して、オリフイス35及びオリフイス36に形成することが可能となり、インク32と透明溶媒31の不要な自然混合を防止することができる。撥水処理は例えばフツ素系樹脂をコーテイングすることにより行う。撥水処理はCだけでなくオリフイスプレート全体もしくはCを含む1部に施してもよい。
【0059】
図33及び図34に第3実施例のインクジエツトプリントヘツドをマルチノズル化した構成を示す。この実施例のインクジエツトプリントヘツドは基本的構造は図24及び図25のインクジエツトプリントヘツドと全く同じである。ここでは図24及び図25の構造が16個インラインに並列されており、これが左右に2組、合計32個のインクジエツトプリントヘツドが配設されている。
【0060】
各インクジエツトプリントヘツドのピツチは図33及び図34に示したように 170〔μm 〕であり、左の組と右の組のインクジエツトプリントヘツド群は、半ピツチ85〔μm 〕ずらして配置している。これにより、1回のスキヤンで1〔mm〕当たり12ドツト( 300〔dpi 〕)で32ドツト(約 2.7〔mm〕幅)の記録を行うことができる。左右それぞれの組において、ヘツドチツプTに設けられた第1の連通溝43と第2の連通溝44は長穴となり、ここに第1の供給溝41と第2の供給溝42が16本ずつ連結している。
【0061】
このインクジエツトプリントヘツドの動作は、図24及び図25のインクジエツトプリントヘツドと同じであり、図28の動作原理及び図29のタイミングチヤートに応じて動作する。図35にこのインクジエツトプリントヘツドの駆動回路のブロツク図を示す。デジタル中間調データが他ブロツクより供給され、シリアルパラレル変換回路141により、各第2の発熱素子ドライバ143に送られる。
【0062】
印字タイミングになると、他ブロツクから印字トリガが出力され、タイミング制御回路142がそれを検出し、所定のタイミングで第2の発熱素子イネーブル信号と第1の発熱素子イネーブル信号をそれぞれ第2の発熱素子ドライバ143及び第1の発熱素子ドライバ144に出力する。
【0063】
第2の発熱素子イネーブル信号によつて、第2の発熱素子ドライバ143は各第2の発熱素子145を制御し、これによつて所定量のインクが第2のオリフイス36より混合部37へ供給される。一方第1の発熱素子イネーブル信号によつて各第1の発熱素子ドライバ144は各第1の発熱素子146を制御し、これによつて透明溶媒がインクと混合しながら吐出される。
【0064】
(2−2)インクジエツトプリントヘツドの作成方法
次にこの実施例のインクジエツトプリントヘツドの作成方法について述べる。図36に加工組立工程を示す。まずSiやアルミナ等の基板401上にZrB2 、TaAl等の発熱抵抗体402及びアルミニウムや銅等の電極403を選択エツチングによつて形成する。表面には必要に応じSiO2 等の保護層を被覆する(図36(A)及び図36(B))。次に基板401に貫通穴404を超音波加工により加工する(図36(C))。続いてドライフイルムレジスト(実施例では35〔μm 〕厚)405を基板401にラミネートし、所定のパターンを有するフオトマスクを重ね露光する。この後ドライフイルムフオトレジスト405の未露光部を所定の現像液で溶解除去し、図のような中間品を得る(図36(D))。最後に図36(E)のように、オリフイスプレート406を熱ラミネートもしくは接着しヘツドチツプTが完成する。
【0065】
図37にオリフイスプレート406の作成方法を示す。オリフイスプレート406はいわゆる電鋳を基本とした方法で作成する。ステンレスなどの母材410にドライフイルムレジストをラミネート、あるいは液状レジストをコーテイングし、露光現像してレジストパターン411を得る(図37(A))。Niをドライフイルムと同じ厚さで電鋳(電気メツキ)し、Niパターン412を得る(図37(B))。この上にドライフイルムあるいは液状レジストを10〔μm 〕厚でラミネートもしくはコーテイングし、露光現像してレジストパターン413を形成する(図37(C))。図37(B)と同様にNiをレジストと同じ厚さで電鋳しNiパターン414を得る(図37(D))。
【0066】
さらにドライフイルムレジストあるいは液状レジストをラミネート又はコーテイングし、露光現像してレジストパターン415を形成する(図37(E))。この上にスパツタリング又は蒸着でNi膜416を形成する(図37(F))。Niをレジスト415の厚さよりも薄く電鋳してNiパターン417を得る(図37(G))。最後にレジスト除去液、例えばKOH水溶液やNaOH水溶液によりレジストを除去し、母材410よりNiをはがしてオリフイスプレート406を得る(図37(H))。
【0067】
この実施例では、電鋳する金属にNiを用いたが、適宜銅やクロムなどの他の金属やこれらを含めた組み合わせでも作成可能である。また腐食防止のため金メツキを最後に施す場合もある。オリフイスプレートの混合部37の直径はオリフイス35の直径よりも大きくすることにより、毛管力を利用して吐出待機時の透明溶媒31の混合部37への侵入を防いでいる。これにより透明溶媒31とインク32は吐出待機時は接触することがなく、これらが自然に混合してしまうことがないようになされている。
【0068】
またこの実施例のインクジエツトプリントヘツドはオリフイスプレート406内部にインク32を混合部37に導入するための通路、混合溝38を作成した構造を特徴とする。このような構造によりインク32を吐出直前に透明溶媒31に混合することが可能になる。オリフイスプレート406は上述の通り、図36(E)のように図36(D)で得られた中間品に熱ラミネート又は接着され、ヘツドチツプTが出来上がる。ヘツドチツプTは図24及び図25に示したようにベースBに接着される。このようにして、インクジエツトプリントヘツドが作成される。
【0069】
(2−3)第4実施例のインクジエツトプリントヘツド
図38に本発明によるインクジエツトプリントヘツドの第4実施例の主要部を、図39にその吐出部を拡大して示す。図24、図25、図33、図34に示したインクジエツトプリントヘツドは、発熱素子33、34の実装形態からサイドシユータ型と呼ばれるものであつたが、この実施例は発熱素子33、34をエツジシユータ型の実装形態で用いるものである。図38は全体図、図39は吐出ノズル部の拡大図、図40はマルチノズル化した実施例である。この例では8ノズルの場合であり、ノズル数は限定されるものではない。
【0070】
図41は図40のマルチノズルヘツドを2個使用し、互いに半ピツチずらして解像度とノズル数を2倍にしたものである。図40でオリフイス(第1のオリフイス)のピツチは 170〔μm〕である。これは約6〔dot/mm〕( 150〔dpi 〕)の解像度に相当する。図41のヘツドでは2倍の約12〔dot/mm〕( 300〔dpi 〕)の解像度である。図38〜図41のインクジエツトプリントヘツドも、図24、図25、図33、図34のインクジエツトプリントヘツドと同様に図31及び図32のように撥水処理を施しても良い。
【0071】
(2−4)実施例の効果
以上の構成によれば、1画素単位で高階調記録が出来るため、高品位の連続階調記録が行える。従来液滴サイズの変調では液滴を小さくすることに限界があり、特に低濃度部の表現力が甚だ不満足なものであつたが、この実施例によれば液滴の濃度を自在に変えられるため、液滴を小さく保つたままで、高濃度部から低濃度部を含め高品位な階調記録が可能になる。またいわゆるデイザ法などの疑似面積階調法を用いる必要がなく、解像度を劣化させずに階調記録できるインクジエツトプリントヘツドを実現できる。
【0072】
(3)インクジエツトプリンタの構成
図42〜図44に上述した実施例によるインクジエツトプリントヘツドが搭載されたインクジエツトプリンタの構成を示す。図42はドラム回転型インクジエツトプリンタの構成である。被印刷物としてのプリント紙222はドラム223の外周に巻回され、所定位置に固定されている。ドラム223の外周には送りネジ224がドラム軸方向に平行に設けられており、送りネジ224にはヘツド221が螺合している。そして、送りネジ224の回転によつてヘツド221が軸方向に移動する。またドラム223はプーリ225、ベルト226、プーリ227を介してモータ228により回転駆動される。さらに、送りネジ224及びモータ228の回転とヘツド221の駆動とは、駆動制御部229により印画データ及び制御信号230に基づいて駆動制御される。
【0073】
このような構成において、ドラム223が回転するとその回転に同期してヘツド221からインクが吐出され、プリント紙222上に画像が形成される。ドラム223が1回転してプリント紙222上に円周方向に1列の印刷が完了すると、送りネジ224が回転してヘツド221を1ピツチ移動させ、次の列の印刷を行なう。この場合、ドラム223と送りネジ224を同時に回転させ、印刷しながらヘツド221を除々に移動させる方法もある。マルチノズルヘツドの場合や同じ場所を何度か印字するような構成の場合はステツプ送りが適するが、単ノズルやマルチノズルでも本数が少ない場合は、ドラム223と送りネジ224とを連動して同時に回転させながら、スパイラル状の印字を行なう。
【0074】
図43はシリアル型インクジエツトプリンタの構成である。この場合も図42に示すドラム回転型の場合とほぼ同様の構成であるが、プリント紙222はドラム223に巻回されておらず、軸方向に平行に設けられた紙圧着ローラ231により、ドラム223に圧着保持されている。この場合はヘツド221が移動して1行の印字を行なうと、ドラム223を1行分だけ回転させて次の行の印字を行なう。ヘツド221の移動は同一方向の場合と往復方向の場合とがある。
【0075】
図44はライン型インクジエツトプリンタの構成である。この場合は図43に示すシリアル型のヘツド221及び送りネジ224の代りに、多数のヘツド221がライン状に配置されたラインヘツド232が軸方向に固定して設けられている。この構成では、ラインヘツド232で1行分の印字が同時に行なわれ、印字が完了するとドラム223を1行分だけ回転させて次の行の印字を行なう。この場合、全ラインを一括して印字したり、複数ブロツクに分割したり、1行おきに交互に印字する方法も考えられる。
【0076】
図45はインクジエツトプリンタの印字及び制御系の構成を示す。印字データなどの信号51は信号処理制御回路52に入力され、信号処理制御回路52において印字順番に揃えられて、ドライバ53を介してヘツド54に送られる。印字順番はヘツドや印字部の構成で異なり、また印字データの入力順番との関係もあり、必要に応じてラインバツフアメモリや1画面メモリなどのメモリ55に一旦記録してから取り出す。ヘツド54には階調信号や吐出信号を出力する。
【0077】
なおマルチヘツドでノズル数が非常に多い場合は、ヘツド54にICを搭載してヘツド54に接続する配線数を減らすようにする。また信号処理制御回路52には補正回路56が接続されており、γ補正、カラーの場合の色補正、各ヘツドのばらつき補正などを行なう。補正回路56には予め決められた補正データをROMマツプ型式で格納しておき、外部条件、例えばノズル番号、温度、入力信号などに応じて取り出すようにするのが一般的である。
【0078】
信号処理制御回路52はCPUやDSP構成としてソフトウエアで処理することが一般的であり、処理された信号は各種制御部57に送られる。各種制御部57ではドラム223及び送りネジ224を回転駆動するモータの駆動、同期、ヘツドのクリーニング、プリント紙222の供給、排出などの制御を行なう。また、信号51には印字データ以外の操作部信号や外部制御信号が含まれることは云うまでもない。
【0079】
(4)他の実施例
上述の実施例においては、透明溶媒にインクを定量混合した場合について述べたが、これに代え、インクと透明溶媒を入れ換えて使用する、すなわち、インクに透明溶媒を定量混合してインク液滴の濃度を変調するようにしても、上述の実施例と同様の効果を実現できる。この場合インクジエツトプリントヘツドの構成及び動作も上述の実施例と同様にできる。但し、上述したように透明溶媒の混合比率が最大70〔%〕、50〔%〕程度であるため、淡色のドツトの表現、すなわちハイライト部の表現力に限界がり、逆にシヤドウ部に関しては、透明溶媒にインクを混合する場合のように、シヤドウ部で充分な濃度を得るためにインクを予め濃くしておく必要がないため有利である。
【0080】
上述の実施例においては、インク液滴のインク濃度を変調するようにしたが、これに加えて、インク液滴のサイズを変調する方法を組み合わせて用いるようにしても良い。因に、上述の実施例のインクジエツトプリントヘツドにおいて、吐出用のピエゾ素子Aに与える電圧パルスの電圧値又はパルス幅を変化させてインク液滴のサイズを変えることができ、これにより、さらにダイナミツクレンジの広い階調記録が可能となる。
【0081】
例えば、図46(A)に示すように、濃度の濃いほうからインク液滴の濃度を最大として液滴サイズのみを順次下げていき、液滴サイズをそれ以上下げられなくなつたら、ここからインク液滴の濃度を順次下げていく方法を適用しても良い。または図46(B)に示すように、濃度の濃いほうからインク液滴のサイズを最大として液滴濃度のみを順次下げていき、液滴濃度がある所定の値になつたら、ここからインク液滴のサイズを下げていく方法を適用しても良い。さらに図46(C)に示すように、濃度の濃いほうからインク液滴のサイズと濃度を並行して下げていく方法が適用できる。
【0082】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、インク及び透明溶媒をオリフイスプレートを介して吐出するインクジエツトプリントへツドの製造方法において、オリフイスプレートは、インク及び透明溶媒を定量混合する筒形状の混合室と、当該混合室の底面部に形成され透明溶媒又はインクが吐出される第1のオリフイスと、混合室の側面部に形成されインク又は透明溶媒が吐出される第2のオリフイスと、当該第2のオリフイスにインク又は上記透明溶媒を導く混合溝とを有し、当該オリフイスプレートをレジストパターン及び電気メツキの金属パターンを多層に繰り返して一体に形成するようにしたことにより、与えられた各画素毎の濃度データに従つてインクと透明溶媒とを定量混合し、この混合されたインク液滴を記録媒体に付着させることによつて、与えられた各画素毎の濃度データに基づいた所定の濃度のインク液滴を記録媒体に付着させ、簡易な構成で濃度データに従つて確実に中間調を表現し得るインクジエツトプリントへツドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるインクジエツトプリントヘツドの第1実施例の構成を印字面側から見て示す上面図である。
【図2】図1のインクジエツトプリントヘツドの構成を示す正面図である。
【図3】図1のインクジエツトプリントヘツドの構成を示す右側面図である。
【図4】図1のインクジエツトプリントヘツドをIV−IV線でとつて示す断面図である。
【図5】図1のインクジエツトプリントヘツドをV −V 線でとつて示す断面図である。
【図6】図2のインクジエツトプリントヘツドをVI−VI線でとつて示す断面図である。
【図7】図1のインクジエツトプリントヘツドのノズル部の拡大断面図である。
【図8】図1のインクジエツトプリントヘツドの動作の説明に供する略線的断面図である。
【図9】図1のインクジエツトプリントヘツドに使用する1方向弁の構造を示す略線的斜視図である。
【図10】図1のインクジエツトプリントヘツドの駆動電圧の説明に供するタイミングチヤートである。
【図11】図1のインクジエツトプリントヘツドの駆動回路を示すブロツク図である。
【図12】図1のインクジエツトプリントヘツドを用いてノズルピツチを狭小化する方法の説明に供する平面図である。
【図13】本発明によるインクジエツトプリントヘツドの第2実施例の構成を印字面側から見て示す上面図である。
【図14】図13のインクジエツトプリントヘツドの構成を示す正面図である。
【図15】図13のインクジエツトプリントヘツドの構成を示す右側面図である。
【図16】図13のインクジエツトプリントヘツドをXVI −XVI 線でとつて示す断面図である。
【図17】図13のインクジエツトプリントヘツドをXVII−XVII線でとつて示す断面図である。
【図18】図14のインクジエツトプリントヘツドをXVIII −XVIII 線でとつて示す断面図である。
【図19】図13のインクジエツトプリントヘツドの駆動回路を示すブロツク図である。
【図20】第1実施例のインクジエツトプリントヘツドの作成工程の説明に供する略線的斜視図である。
【図21】本発明によるインクジエツトプリントヘツドに使用する1方向弁の作成工程の説明に供する略線的斜視図である。
【図22】本発明によるインクジエツトプリントヘツドの作成工程の説明に供する略線的斜視図である。
【図23】本発明によるインクジエツトプリントヘツドの作成工程の説明に供する略線的斜視図である。
【図24】本発明によるインクジエツトプリントヘツドの第3実施例の構成を印字面側から見て示す正面図である。
【図25】図24のインクジエツトプリントヘツドの構成を示す右側面図である。
【図26】図24のインクジエツトプリントヘツドのノズル部を拡大して示す正面図である。
【図27】図25のインクジエツトプリントヘツドのノズル部を拡大して示す断面図である。
【図28】図24のインクジエツトプリントヘツドの動作の説明に供する略線的断面図である。
【図29】図24のインクジエツトプリントヘツドの駆動電圧の説明に供するタイミングチヤートである。
【図30】図24のインクジエツトプリントヘツドの駆動回路を示すブロツク図である。
【図31】図24のインクジエツトプリントヘツドのオリフイスプレートの撥水処理の説明に供する正面図である。
【図32】図25のインクジエツトプリントヘツドのオリフイスプレートの撥水処理の説明に供する断面図である。
【図33】図24のインクジエツトプリントヘツドをマルチノズル化した構成を印字面側より見て示す正面図である。
【図34】図33のインクジエツトプリントヘツドの構成を示す右側面図である。
【図35】図33のインクジエツトプリントヘツドの駆動回路を示すブロツク図である。
【図36】図24のインクジエツトプリントヘツドの作成工程の説明に供する略線的斜視図である。
【図37】図24のインクジエツトプリントヘツドのオリフイスプレートの作成工程の説明に供する略線的断面図である。
【図38】本発明によるインクジエツトプリントヘツドの第4実施例の構成を示す略線図である。
【図39】図38のインクジエツトプリントヘツドのノズル部を拡大して示す略線図である。
【図40】図38のインクジエツトプリントヘツドをマルチノズル化した構成を示す略園図である。
【図41】図40のインクジエツトプリントヘツドを用いてノズルピツチを狭小化する方法の説明に供する平面図である。
【図42】本発明によるインクジエツトプリントヘツドが搭載されたドラム回転型インクジエツトプリンタの構成を示す略線図である。
【図43】本発明によるインクジエツトプリントヘツドが搭載されたシリアル型インクジエツトプリンタの構成を示す略線図である。
【図44】本発明によるインクジエツトプリントヘツドが搭載されたライン型インクジエツトプリンタの構成を示す略線図である。
【図45】インクジエツトプリンタにおける信号処理及び制御系の構成を示すブロツク図である。
【図46】本発明のインクジエツトヘツドを用いてドツトの濃度変調と面積変調を組み合わせた場合の印字ドツトを模式的に示す略線図である。
【符号の説明】
1……オリフイス、2……ノズルA、3……ノズルB、4……混合孔、5……1方向弁、6……キヤビテイA、7……キヤビテイB、8……ピエゾ素子A、9……ピエゾ素子B、10、31……透明溶媒、13、32……インク、33……第1の発熱素子、34……第2の発熱素子、35……第1のオリフイス、36……第2のオリフイス、37……混合部、38……混合溝、406……オリフイスプレート、T……ヘツドチツプ

Claims (2)

  1. インク及び透明溶媒をオリフイスプレートを介して吐出するインクジエツトプリントへツドの製造方法において、
    上記オリフイスプレートは、
    上記インク及び上記透明溶媒を定量混合する筒形状の混合室と、
    当該混合室の底面部に形成され上記透明溶媒又は上記インクが吐出される第1のオリフイスと、
    上記混合室の側面部に形成され上記インク又は上記透明溶媒が吐出される第2のオリフイスと、
    当該第2のオリフイスに上記インク又は上記透明溶媒を導く混合溝と
    具え、
    当該オリフイスプレートをレジストパターン及び電気メツキの金属パターンを多層に繰り返して一体に形成するようにした
    ことを特徴とするインクジエツトプリントへツド製造方法。
  2. 母材上に所定高さで形成したレジスト膜を露光現像して、上記第1のオリフイスに応じた第1の筒形状と当該第1の筒形状と同形状の第2の筒形状とでなる第1のレジストパターンを形成し、
    上記母材上に上記第1のレジストパターンと同じ高さまで、所定の金属を電気メツキして第1の金属パターンを形成し、
    上記第1のレジストパターン及び上記第1の金属パターン上に、上記第1の筒形状の上面側が上記第2のオリフイスに応じた厚みで上記混合室の底面形状に応じた形状を有し、上記第2の筒形状の上面側が上記第2のオリフイスに応じた厚み及び幅で上記混合室に伸張する上記混合溝に応じた形状を有する第2のレジストパターンを形成し、
    上記第1の金属パターン及び上記第2のレジストパターン上に、上記第2のレジストパターンと同じ高さまで、上記所定の金属を電気メツキして第2の金属パターンを形成し、
    上記第2のレジストパターン上に、上記第1の筒形状の上面側に上記混合室に応じた形状の第3のレジストパターンを形成し、
    上記第2及び第3のレジストパターン及び上記第2の金属パターン上に、上記所定の金属で金属膜を形成すると共に、上記第3のレジストパターンより薄く上記所定の金属を電気メツキして第3の金属パターンを形成し、
    上記第1、第2及び第3のレジストパターンを除去すると共に、上記第1、第2及び第3の金属パターンを上記母材より剥してオリフイスプレートを作成するようにした
    ことを特徴とする請求項1に記載のインクジエツトプリントへツド製造方法。
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