JP3651687B2 - 複合圧電素子 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、厚み縦振動2倍波モードを利用する複合圧電素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧電素子は、たとえばフィルタのような圧電受動部品などに応用されている。
【0003】
図5および図6に、従来の典型的な厚み縦振動2倍波を励振する圧電素子1が示されている。
【0004】
圧電素子1は、圧電体2を備え、圧電体2の厚み方向中央部には、内部電極3が設けられ、圧電体2を厚み方向に挟むように1対の対向する外部電極4および5が形成されている。圧電体2は、その厚み方向に分極されるが、矢印6および7で示すように、内部電極3を境にして分極方向が正反対になっている。
【0005】
一般に、内部電極3と圧電体2とは、共焼結によって形成され、外部電極4および5を、たとえば蒸着により形成した後、内部電極3と外部電極4 、内部電極3と外部電極5の各間に電圧を印加することにより、矢印6および7で示すような分極構造を得ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような厚み縦振動2倍波モードを利用する圧電素子1においては、内部電極3として、PtまたはAg−Pd合金が用いられている。これは、圧電体2に使用される圧電材料が主にPb系の材料であり、その焼成が空気中において1000〜1300℃の温度で行なわれることから、内部電極3の材料は、このような焼成条件に耐え得るものでなければならないからである。そのため、内部電極3を構成できる共焼結可能な材料が限られ、従来は、上述した2種類ほどの材料しか適したものがなかった。
【0007】
しかしながら、これらの内部電極3に適した材料は、いずれも、コストが非常に高いという問題を有している。
【0008】
それゆえに、この発明の目的は、上述したような内部電極のコストに関する問題を有利に解決し得る、複合圧電素子を提供しようとすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明による厚み縦振動2倍波を励振する複合圧電素子は、上述した技術的課題を解決するため、内部電極が不要とされている。
【0010】
すなわち、この発明にかかる複合圧電素子は、厚み方向に分極された圧電体と圧電性を有しない常誘電体とが厚み方向に積層された積層構造物、および前記積層構造物を厚み方向に挟むように形成された前記積層構造物の主面よりも小さな面積を有する1対の対向する外部電極を備えており、前記圧電体および前記常誘電体に関する(常誘電体)/(圧電体)の比率において、厚みが1.0〜2.0の範囲の比率に選ばれ、音速比が0.86以下の範囲の比率ばれる。
【0011】
なお、上述の積層構造物において、圧電体と常誘電体との間に遷移層が形成されていてもよい。このような遷移層は、積層構造物を焼結により得ようとするとき、圧電体と常誘電体との各々の材料の組合せで生じたり生じなかったりする。常誘電体中の成分が圧電体に固溶する場合、またはその逆の場合に、焼結時の熱拡散によって遷移層が形成される。圧電体と常誘電体とが固溶し合わない材料であれば、混晶材料の場合と同様、焼結時に拡散が起こらず、遷移層も生じない。
【0013】
【作用】
この発明によれば、圧電体と常誘電体とが厚み方向に積層された積層構造物を備えることから、内部電極がなくても、圧電体のみに分極構造を与えることができ、厚み縦振動2倍波を励振することができる。
【0014】
【発明の効果】
したがって、この発明によれば、従来の圧電素子と同程度の特性を持つ厚み縦振動2倍波を励振する圧電素子が、高価な内部電極を用いることなく実現でき、それゆえに、圧電素子のコストを低減することができる。
【0015】
また、圧電体および常誘電体に関する(常誘電体)/(圧電体)の比率において、厚みを1.0〜2.0の範囲の比率とし、音速0.86以下の範囲の比率とするので、後述する実験例からわかるように、大きな電気機械結合係数を与えることができる。
【0016】
【実施例】
図1および図2は、この発明の一実施例による複合圧電素子11を示している。
【0017】
複合圧電素子11は、矢印12で示すように厚み方向に分極された圧電体13と圧電性を有しない常誘電体14とが厚み方向に積層された積層構造物15を備える。このような積層構造物15の外表面には、1対の対向する外部電極16および17が、積層構造物15を厚み方向に挟むように形成される。このような複合圧電素子11は、1対の外部電極16および17に電圧が印加されたとき、厚み縦振動2倍波を励振する。
【0018】
以下に、この発明に従って実施した実験例について説明する。
これらの実験例では、圧電体として、Pb(Zr0 . 5 2 Ti0 . 4 8 )O3 (以下「PZT」という。)を用い、常誘電体として、CaTiO3 (以下「CT」という。)、(Ca0 . 9 Ba0 . 1 )TiO3 (以下「CT置換体1」という)、(Ca0 . 9 Pb0 . 1 )TiO3 (以下「CT置換体2」という。)または(Ca0 . 8 Ba0 . 1 Pb)TiO3 (以下「CT置換体3」という。)を用い、外部電極として、Agを用いた。
【0019】
実験例1
PZTの素原料として、Pb3 O4 、ZrO2 およびTiO2 を用意し、これらを所定量秤量し、湿式ボールミルで混合した後、得られた素原料混合粉末を、空気中において800℃で2時間の仮焼を行ない、PZTの粉末を得た。
【0020】
CTも同様に、素原料CaCO3 およびTiO2 を秤量し、次いで混合した後、空気中において900℃で2時間の仮焼を行なうことにより、CTの粉末を得た。CT置換体1、CT置換体2およびCT置換体3のそれぞれについても、CTと同様の操作を行ない、各々の粉末を得た。
【0021】
上述したPZT、CT、CT置換体1、CT置換体2およびCT置換体3のそれぞれについて、これら粉末の各々と有機溶剤(エタノール/トルエン=8/2体積比)、バインダ(PVB系)、可塑剤(ジオクチルブタレート系)および分散剤(ソルビタン脂肪酸エステル系)とを混合することによってスラリー化し、ドクターブレード法によって、それぞれのグリーンシートを作製した。
【0022】
得られた各種グリーンシートを、(A)CT/PZT、(B)CT置換体1/PZT、(C)CT置換体2/PZT、(D)CT置換体3/PZTの組合せで、図3に示すように、圧電体シート18および常誘電体装置19を積層し、次いで熱圧着した後、得られた成形物をカットすることにより、寸法7×7×0.7[mm3 ]の圧電体/常誘電体2層積層成形体を得た。
【0023】
得られた各々の成形体を、空気中において500℃で熱処理することにより、そこに含有する有機成分を燃焼させた後、空気中において1200℃で2時間焼成し、得られた焼結体を研磨することによって、圧電体と常誘電体の厚み比を、(圧電体)/(常誘電体)=1/1に調整し、次いで、外周をカットすることにより、寸法5×5×0.4[mm3 ]の積層構造物を得た。
【0024】
次に、図4に示すように、積層構造物20の外表面に、積層構造物20を厚み方向に挟むように、1対の対向するAg電極21を蒸着により形成した。これら試料を、次いで、温度60℃の絶縁油中に浸漬しながら、Ag電極から10kVの電圧を印加することにより、積層構造物に含まれる圧電体を分極処理し、それにより、前記(A)〜(D)の各組合せを備える複合圧電素子の試料を得た。
【0025】
それぞれの試料について、厚み縦振動2倍波モードのインピーダンスの周波数特性を測定し、共振周波数frおよび電気機械結合係数kを求めた。その結果が、以下の表1に示されている。
【0026】
【表1】
なお、比較例として、図5および図6に示すような構造の圧電素子1を作製した。この圧電素子1において、圧電体2としてPZT、内部電極3としてPt、外部電極4および5としてAgをそれぞれ用いた。上述した実験例と同様の操作を行ない、同じ寸法の厚み縦振動2倍波モードの圧電素子1を得たところ、その電気機械結合係数は35%であった。
【0027】
次に、前述したこの発明にかかる複合圧電素子に関して、圧電体および常誘電体の音速について考察した。圧電体の音速は、スティフネスC3 3 D と密度ρの測定により求められ、常誘電体の音速は、ヤング率Eと密度ρの測定により求められる。このようにして求めた音速、および(常誘電体音速)/(PZT音速)で求められる音速比を、以下の表2に示す。
【0028】
【表2】
表2および前記表1から、音速比が0.86以下である(C)および(D)において、より大きな電気機械結合係数が得られていることがわかる。
【0029】
実験例2
実験例1に示した作製法に従って、(C)CT置換体2/PZT(音速比0.86)について、圧電体と常誘電体との厚み比が(圧電体厚み)/(常誘電体厚み)で、(a)1/3、(b)1/2、(c)1/1、(d)2/1、(e)3/1となる5種類の試料のそれぞれについて、厚み縦振動2倍波モードのインピーダンスの周波数特性を測定することにより、共振周波数frおよび電気機械結合係数kを求めた。その結果が、以下の表3に示されている。
【0030】
【表3】
表3から、厚み比が1.5〜0.5の範囲にある(b)および(c)において、大きな電気機械結合係数kが得られていることがわかる。
【0031】
実験例3
この実験例では、積層構造物に遷移層が形成された圧電体/遷移層/常誘電体の3層構造における遷移層の影響について調査した。特に、常誘電体として、前述したCT置換体2および3のように、Pb置換したCTを用いた場合、圧電体と常誘電体との間に形成される遷移層が、その厚みを増す。
【0032】
圧電体または常誘電体から組成的にずれている部分を遷移層とし、積層構造物を得るための焼成時の処理条件(焼成温度、焼成時間等)を変えることによって、種々の厚みの遷移層を有する試料を作製し(厚み比1.0、音速比0.8)、厚み縦振動2倍波モードのインピーダンスの周波数特性を測定することによって、共振周波数および電気機械結合係数を求めた。その結果が、以下の表4に示されている。
【0033】
【表4】
表4から、遷移層を有する3層構造であっても、2層構造と実質的に同様の特性が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例による複合圧電素子11を示す断面図である。
【図2】図1に示した複合圧電素子11の外観を示す斜視図である。
【図3】この発明による実験例1において実施された圧電体シート18と常誘電体シート19との積層工程を示す斜視図である。
【図4】同じく実験例1において積層構造物20上にAg電極21を形成した状態を示す平面図である。
【図5】従来の圧電素子1を示す断面図である。
【図6】図5に示した圧電素子1の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
11 複合圧電素子
12 分極方向を示す矢印
13 圧電体
14 常誘電体
15 積層構造物
16,17 外部電極
Claims (1)
- 厚み方向に分極された圧電体と圧電性を有しない常誘電体とが厚み方向に積層された積層構造物、及び前記積層構造物を厚み方向に挟むように形成された、前記積層構造物の主面よりも小さな面積を有する1対の対向する外部電極を有し、
前記圧電体および前記常誘電体に関する(常誘電体)/(圧電体)の比率において、厚みが1.0〜2.0の範囲の比率であり、音速比が0.86以下の範囲の比率である、厚み縦振動2倍波を励振する複合圧電素子。
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