JP3651307B2 - エンジンの自動停止始動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの自動停止始動装置に関し、より詳細には、エンジンの回転に基づき発生する吸入負圧を倍力源とするブレーキブースタを備えた車両におけるエンジン自動停止始動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
省エネルギの観点から、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに別の所定の始動条件が成立したときにエンジンを自動始動させる自動停止始動装置が実用化されている。すなわち、エンジンの自動停止始動装置を備えた車両においては、クラッチペダルから足を離してから一定時間経過後にエンジンが自動的に停止する一方、エンジン停止中にクラッチペダルを踏み込むとエンジンが自動的に始動せしめられる(例えば、特開平7−4284号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両においては、制動時にブレーキペダルの操作力を軽くするためにブレーキブースタが広く採用されている。ブレーキブースタは、一般に、エンジンの吸入負圧を倍力源としている。この吸入負圧は、エンジンの回転により発生する。
【0004】
したがって、エンジンの自動停止始動装置を備えた車両では、エンジン自動停止中にブレーキ操作が行われると、ブレーキブースタ負圧が低下し、ブレーキ補助性能が低下する。例えば、坂路登降時において、エンジン停止中のブレーキ操作が頻繁になされ、ブレーキ補助性能が低下してくると、ブレーキペダルの踏み込みが困難になり、運転者に違和感を与える結果となる。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンの回転に基づき発生する吸入負圧を倍力源とするブレーキブースタを備えた車両におけるエンジンの自動停止始動装置であって、ブレーキブースタ機能の低下を招くことがないようにエンジンの自動再始動を適切な時期に行うことができるものを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、エンジンの回転に基づき発生する吸入負圧を倍力源とするブレーキブースタを備えた車両において、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに別の所定の始動条件が成立したときにエンジンを自動始動させる自動停止始動装置であって、前方車両又は後方車両と自車両との車間距離を測定する測定手段と、エンジンの停止中において、前記測定手段によって測定される車間距離が基準値以下となったときに、エンジンを始動せしめる制御手段と、を設けたことを特徴とする、エンジンの自動停止始動装置が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、好ましくは、エンジン停止時点での車間距離に応じて、前記基準値が変化せしめられる。
【0008】
また、本発明によれば、好ましくは、エンジン停止時点での車間距離に加え、エンジン停止時点からの車間距離の変化率に応じて、前記基準値が変化せしめられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明に係るエンジン自動停止始動装置の一実施形態を示す図である。エンジン10は、車両搭載用の直列多気筒4ストロークサイクルレシプロガソリンエンジンである。エンジン10の吸気ポートには、エアクリーナ14、スロットルバルブ16、サージタンク18、吸気マニホルド20等を備えた吸気通路12が接続されている。エンジン10の外部の空気(外気)は、シリンダ内の燃焼室へ向けて吸気通路12の各部14,16,18及び20を順に通過する。吸気マニホルド20には、各吸気ポートへ向けて燃料を噴射するインジェクタ22が取り付けられている。シリンダ内の混合気に着火するために、シリンダヘッドには点火プラグ24が取り付けられている。燃焼した混合気は、排気ポートから、排気マニホルド28、触媒コンバータ30等を備えた排気通路26を介して、大気中に排出される。
【0011】
エンジン10の始動時には、スタータモータ32の動力がエンジン10のクランクシャフトに伝えられ、クランクシャフトが回転せしめられる。なお、スタータモータ32には、イグニションスイッチ34により駆動されるスタータリレー33を介してバッテリ36の電力が供給される。ブレーキブースタ38は、ブレーキペダル40を操作するのに必要な力を軽減するための装置であり、その倍力源をサージタンク18内の吸入負圧から得ている。
【0012】
車両には各種のセンサが取り付けられている。クランクシャフトの回転速度NEを検出するために回転速度検出用パルスを発生させるクランク角センサ46が設けられている。また、トランスミッション48の出力軸の回転速度すなわち車速SPDに比例した数の出力パルスを単位時間当たりに発生する車速センサ50が取り付けられている。また、前方車両と自車両との車間距離を測定する手段として、レーザレーダ52aが車両の前部に取り付けられている。同様に、後方車両と自車両との車間距離を測定するために、車両の後部にもレーザレーダ52bが取り付けられている。
【0013】
エンジンECU(電子制御装置)54は、燃料噴射制御、点火時期制御等を実行するマイクロコンピュータシステムであり、各種センサからの信号を入力し、その入力信号に基づいて演算処理を実行し、その演算結果に基づきインジェクタ22及び点火プラグ24に対する制御信号を出力する。
【0014】
自動停止始動ECU56は、基本的に、クラッチペダル(図示せず)から足が離れてから一定時間経過後に、エンジンECU54による噴射及び点火を停止させる一方、エンジン停止中にクラッチペダルが踏み込まれたときにスタータモータ32を起動するとともにエンジンECU54に対し噴射及び点火の開始を指令する。なお、自動停止始動ECU56は、エンジンECU54を介して回転速度信号NE及び車速信号SPDを入力している。
【0015】
さて、エンジンの自動停止を行う車両では、エンジン停止の頻度が高くなるため、ブレーキブースタ38のエネルギ源たるサージタンク18の負圧が確保され難くなる。図2は、エンジン停止中におけるブレーキペダル操作に伴いブレーキブースタ圧力が変化する様子を例示するタイムチャートである。この図に示されるように、ブレーキペダルが操作される度に、ブレーキブースタ圧力の上昇(換言すれば負圧の減少)が起こる。その結果、ブレーキブースタ38によるブレーキ補助性能が低下し、ブレーキペダル40の操作性が悪化する。
【0016】
例えば、坂路登降時においてエンジンが停止している場合において、自車両と前方又は後方の車両との車間距離を適切に保つためにブレーキ操作が数回行われるときには、ブレーキペダルの踏み込みが困難になり、運転者に違和感を与えやすい。そこで、本発明は、エンジンの停止中に前方又は後方の車両との車間距離が小さくなったときには、エンジン停止に起因してブレーキブースタ負圧が低下している可能性があることを考慮して、エンジンを自動始動せしめることにより、ブレーキの操作性の悪化により運転者に違和感を与えるという事態を回避しようというものである。
【0017】
図3は、本実施形態によるエンジン自動始動を説明するための図である。自車両58の坂路降坂中にエンジンが停止すると、まず、その停止時点における自車両58と前方車両60との車間距離Lがレーザレーダ52aによって測定され、その値がL0 とされる。そして、車間距離Lが時間とともに小さくなっていき、L1 (<L0 )に達した時点で、まず、警告音が発せられるか、又は警告灯が点灯せしめられることにより、運転者に対する警告がなされる。さらに、車間距離Lが小さくなって、L2 (<L1 )に達した時点で、エンジンが自動始動せしめられる。
【0018】
上記L1 及びL2 は、エンジン停止時点での車間距離L0 に応じて決定されるようになっている。図4は、エンジン停止時点での車間距離L0 と、その時点からの車間距離Lの縮小方向への変化ΔL(=L0 −L)と、に応じて制御の状態がどのように変化するかを示す図である。車両が前方に移動してΔLが増加していっても、0≦ΔL<L0 −L1 (即ち、L1 <L≦L0 )が成立する間は、エンジン停止の状態が維持される。しかし、さらに、ΔLが増加して、まず最初に、L0 −L1 ≦ΔL<L0 −L2 (即ち、L2 <L≦L1 )が成立する間は、警告が発せられる。そして、最後に、ΔL=L0 −L2 (即ち、L=L2 )に達すると、エンジンの再始動が実行される。図4に示されるように、L0 が大きいほど、L1 及びL2 も大きな値に設定されるように、L1 及びL2 を定めるマップが予め準備される。
【0019】
図5は、上述のような、車間距離に基づくエンジン始動制御を具体的に実現すべく、自動停止始動ECU56によって所定時間周期で実行される処理ルーチンのフローチャートである。なお、このルーチンは、前方車両との車間距離に基づくエンジン再始動を行うものであるが、後方車両との車間距離に対しても全く同一の制御が行われる。
【0020】
まず、ステップ102では、レーザレーダ52aにより前方車両と自車両との車間距離Lが測定される。次いで、ステップ104では、回転速度信号NEに基づいてエンジンが停止しているか否かが判断され、エンジン停止中でなければステップ106に進む一方、エンジン停止中であればステップ108に進む。ステップ106では、ステップ102で測定された車間距離LがL0 として記憶される。このL0 は、エンジン停止時点においては、エンジン停止寸前の車間距離を示すものであるが、本ルーチンが短時間周期で実行されるため、エンジン停止時点における車間距離を表すものとして使用される。ステップ106の実行後には、本ルーチンは終了せしめられる。
【0021】
一方、ステップ108では、所定のマップを参照することにより、図4に基づいて説明したように、エンジン停止時点での車間距離L0 に応じた基準値としての車間距離L1 及びL2 が決定される。次いで、ステップ110では、現在の車間距離Lが第1の基準値L1 以下か否かが判定され、L1 <Lのときには本ルーチンが終了せしめられる一方、L≦L1 のときには処理はステップ112に進む。
【0022】
ステップ112では、現在の車間距離Lが第2の基準値L2 以下か否かが判定され、L2 <Lのときには処理はステップ114に進む一方、L≦L2 のときには処理はステップ116に進む。ステップ114では、L2 <L≦L1 であるため、警告音の発生又は警告灯の点灯がなされて運転者に注意が促される。一方、ステップ116では、L≦L2 であるため、エンジンが始動せしめられる。詳細には、スタータモータ32が起動されるとともにエンジンECU54による噴射及び点火が開始される。かくして、エンジン再始動により、十分なサージタンク負圧すなわちブレーキブースタ負圧が確保される。ステップ114又は116の実行後には、本ルーチンは終了せしめられる。
【0023】
上述の実施形態では、エンジン停止時点での車間距離L0 に応じて、エンジンを始動すべき車間距離L2 を可変としているが、L0 に関係なくL2 として一定値(例えば、3m)を採用することにより、簡易な構成としてもよい。
【0024】
また、エンジン停止時点からの車間距離の変化の速さ、すなわち変化率が大きいとき、車間距離がL2 に縮小するまでエンジン始動を待っていたのでは、余裕を持ったブレーキブースタ負圧の回復を図ることができにくくなる。そこで、車間距離Lの変化率を算出し、その変化率が大きいときには、L0 に応じて定められたL2 がより大きくなるようにL2 を補正してもよい。
【0025】
また、前方又は後方の車両と自車両との車間距離を測定する手段は、上記のレーザレーダに限られず、カメラを設け、それから得られる画像を処理することにより、車間距離を測定してもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ブレーキブースタを備えた車両におけるエンジンの自動停止始動装置において、ブレーキブースタ機能の低下に伴うブレーキ操作上の違和感が生ずることがないようにエンジンの自動再始動の時期を適切に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエンジン自動停止始動装置の一実施形態を示す図である。
【図2】エンジン停止中におけるブレーキペダル操作に伴いブレーキブースタ圧力が変化する様子を例示するタイムチャートである。
【図3】本実施形態によるエンジン自動始動を説明するための図である。
【図4】エンジン停止時点での車間距離L0 と、その時点からの車間距離Lの縮小方向への変化ΔL(=L0 −L)と、に応じて制御の状態がどのように変化するかを示す図である。
【図5】車間距離に基づくエンジン自動始動制御ルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…エンジン
12…吸気通路
14…エアクリーナ
16…スロットルバルブ
18…サージタンク
20…吸気マニホルド
22…インジェクタ
24…点火プラグ
26…排気通路
28…排気マニホルド
30…触媒コンバータ
32…スタータモータ
33…スタータリレー
34…イグニションスイッチ
36…バッテリ
38…ブレーキブースタ
40…ブレーキペダル
46…クランク角センサ
48…トランスミッション
50…車速センサ
52a,52b…レーザレーダ
54…エンジンECU
56…自動停止始動ECU
58…自車両
60…前方車両
Claims (3)
- エンジンの回転に基づき発生する吸入負圧を倍力源とするブレーキブースタを備えた車両において、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに別の所定の始動条件が成立したときにエンジンを自動始動させる自動停止始動装置であって、
前方車両又は後方車両と自車両との車間距離を測定する測定手段と、
エンジンの停止中において、前記測定手段によって測定される車間距離が基準値以下となったときに、エンジンを始動せしめる制御手段と、
を設けたことを特徴とする、エンジンの自動停止始動装置。 - エンジン停止時点での車間距離に応じて、前記基準値が変化せしめられることを特徴とする、請求項1に記載のエンジンの自動停止始動装置。
- エンジン停止時点での車間距離に加え、エンジン停止時点からの車間距離の変化率に応じて、前記基準値が変化せしめられることを特徴とする、請求項2に記載のエンジンの自動停止始動装置。
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