JP3650070B2 - アルカリ二次電池用セパレータおよびそれを用いたアルカリ二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアルカリ二次電池用セパレータおよびそれを用いたアルカリ二次電池に関し、さらに詳しくは、過充電時の電池内圧の上昇が抑制される薄型のアルカリ二次電池用セパレータおよびアルカリ二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、二次電池の高容量化、高出力化の要請に応えるため、セパレータの薄型化が試みられている。すなわち、従来の不織布よりなるセパレータに代わる素材として、例えば、薄く、高強度のポリオレフィン微多孔膜を一部もしくは全面に親水化して使用する技術である。微多孔膜を使用した場合、微多孔であるが故に不織布と比べるとガスの透過性が悪くなる。ガスの透過性を上げるためには膜の親水化量を減らす方法が考えられる。しかし親水化量を下げるとイオンの伝導性が低下し、充放電がスムースに行なわれなくなる。よってイオン導電性が損なわれないようにしつつ、さらにガスの透過性を確保する必要がある。不織布の場合には比較的孔が大きいため、親水化量を適正化し、イオンの伝導性とガス透過性を両立させることが可能である。しかし微多孔膜の場合には、孔が小さいためにイオン導電性を保ったままではガス透過性を確保することが困難である。
【0003】
そこで微多孔膜のガス透過性とイオン伝導性を両立させるため、微多孔膜を部分的に親水化して電解液を保持するための親水化部と、ガスを透過するための非親水化部とを形成する技術が開示されている(特開平5-205719号、特開2000-230074号、および、特開2000-248095号の各公報参照)。
このような一部が親水化処理された微多孔膜よりなるセパレータは、例えば次のようにして製造される。一例として、図7に示すように平面視水玉模様状の非親水化部を残して、親水化部が形成されたセパレータについて説明する。
【0004】
図8〜10は、従来のセパレータの製造工程を模式的に示す断面図である。まず、図8のように、微細孔1を有する微多孔膜2の表面にスクリーン印刷法などにより、図7に示した水玉模様状となるように溶解固形パラフィンを塗布する。図において、黒塗りの部分がパラフィンが微細孔1に浸透・充填された部分で、これが続く親水化処理工程におけるマスク部3となる。それ以外の微多孔1は非マスク部4となる。なお、図中、微多孔膜2の上面2aが正極に対向する面、下面2bが負極に対向する面とする。
【0005】
続いて、例えば硫酸ガスにより微多孔膜2を親水化処理する。その結果、図9に示すように、微多孔膜2の非マスク部4のみに親水基が導入されて親水化部5となる。なお、このとき微多孔膜2の上下面2a,2bも親水化される。
しかるのち、マスク部3に充填された固形パラフィンを抽出除去する。その結果、図10に示すようにマスク部3は非親水化部6となる。
【0006】
このようにして非親水化部6が水玉模様状に形成され、それ以外の部分が親水化部5であるセパレータ7を製造することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来のアルカリ二次電池用セパレータには以下のような問題がある。
図11は上記のセパレータ7の電池内での作用を模式的に示したものである。つまり、正極と負極とに挟持されたのち電池容器に収容され、アルカリ電解液が注入された状態のセパレータ7を示す。このとき、セパレータ7の親水化部5すなわち黒塗りの部分に電解液が浸透する。微多孔の非親水化部6には電解液はほとんど浸透せず、空隙のまま保持され、正極で発生した酸素ガスがこの非親水化部6を通って負極表面に到達し、そこで吸収される。
【0008】
このとき、微多孔膜2の負極と対向する面すなわち下面2bは親水化部となっているため、実際は負極と微多孔膜2下面2bとの間には電解液が多く存在している。
したがって、正極で発生したガスは、水玉模様状の経路を介して負極表面に到達後、負極の面方向へ拡散することができず、いわば、負極において局所的に吸収されることになる。つまり、負極におけるガス吸収反応がスポット的に生じるので、吸収しきれないガスが電池内に蓄積され、その結果電池内圧が上昇しやすいという問題が生じる。この現象は電池の過充電時にとくに顕著に発生する。
【0009】
本発明は、上記の問題を解消し、負極表面近傍におけるガス拡散性を向上させ、もって電池内圧の上昇を抑制することができるアルカリ二次電池用セパレータを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも片面に非親水化部と親水化部とが形成された微多孔膜よりなり、正極と負極とに挟持されて電池内に収容されるセパレータであって、前記負極に対向する面における前記親水化部の親水基量が、前記正極に対向する面における前記親水化部の親水基量よりも少ないものが提供される。
【0011】
上記の構成において、前記電池内で前記負極に対向する面の親水基量をA、前記正極に対向する面の親水基量をBとしたとき、1.5≦B/A≦5であり、また、親水化部が前記セパレータの前記正極に対向する面の全表面積に対する面積比率で50〜90%となるように形成されていることが好ましい。
また、本発明によれば、上記の各セパレータを用いたアルカリ二次電池も提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のアルカリ二次電池用セパレータについて詳述する。
図1は本発明のアルカリ二次電池用セパレータの構造を模式的に示す縦断面図であり、セパレータ10は、親水化部11と非親水化部12を有する微多孔膜13より構成される。
【0013】
非親水化部12では、微細孔が空隙として存在しているため、この微細孔がそのままガス透過経路として機能する。一方、親水化部11には微細孔内に親水基が付与されている(図中、太線で示した領域)。この親水化部11においては、導入される親水基量を次のように規定することが必要である。すなわち、セパレータ10を正極と負極とで挟持して電池内に収容した際、その負極に対向する面すなわち微多孔膜13の下面13b側の親水基量が、正極に対向する面すなわち微多孔膜13の上面13a側の親水基量より少ないことが必要である。
【0014】
換言すれば、親水化部11の負極側では親水基が付着していないか、付着量が少なくなっている。具体的には、親水化部11の負極側の親水基量をA、正極側の親水基量をBとすると、1.5≦B/A≦5であることが好ましい。B/Aが1.5未満である場合、セパレータに電解液を保持させてイオン伝導性を確保しようとすると、セパレータと負極が対向する部分のガス拡散性が低下し、電池内圧が過度に上昇してしまう可能性があり、逆にB/Aが5を超えると、セパレータと負極が対向する部分の保液性が過度に低くなり、イオン伝導性が確保できないために充放電がスムースにできなくなる可能性がある。さらに好ましくは、3≦B/A≦4である。
【0015】
また、上記の非親水化部12は、図7に示すようにセパレータ11の表面を正極側から見たときに、例えば島状に形成されていることが好ましく、そのときに、親水化部11がセパレータの正極に対向する面の全表面積に対して占める面積比率が50〜90%の範囲となるようにすることが好ましい。この面積比率が50%未満である場合には、セパレータのイオン透過性が低下して充放電がスムースに進行しなくなる可能性があり、逆に、90%を超える場合には、セパレータのガス透過性が低下して電池内圧が過度に上昇する可能性がある。
【0016】
図2は、本発明のセパレータをアルカリ二次電池に組み込んだ際の挙動を模式的に示したものである。親水化部11にはアルカリ電解液が浸透・充填されるが、親水化部11の負極側は非親水化の程度が正極側に比べて小さくなっているため、電解液が浸透しない微細孔も存在する。このような微細孔は非親水化部12の微細孔と連通し、図に矢線で示すように、非親水化部12におけるガスの透過経路がセパレータ10の負極側において、面方向に拡開されることになる。
【0017】
このように、ガス透過経路が面方向に拡開されることにより、ガス拡散性が向上し、負極におけるガス吸収面積が従来の微多孔膜セパレータを使用した場合に比べて増大する。したがって、負極において局所的なガス吸収反応が解消され、その結果、電池内圧の上昇が抑制される。
本発明のアルカリ二次電池用セパレータは例えば以下のようにして製造することができる。
【0018】
本発明において使用される微多孔膜としては、とくに限定されるものではないが、平均孔径0.1〜10μm、気孔率30〜65%、厚さ10〜100μmのポリオレフィン系、ポリプロピレン系、フッ素樹脂系などからなる微多孔膜が好適に使用される。
まず、図3に示すように、微多孔膜13の表面にスクリーン印刷法などにより溶解固形パラフィンを上面視水玉模様状に塗布する。水玉の部分にパラフィンが充填されたマスク部14が形成され(図中黒塗り部分)、この領域が最終的に非親水化部12となる。マスク部14以外の領域は非マスク部15となり、この部分が最終的に親水化部11となる。
【0019】
次に、微多孔膜13の下面13b全面に、例えば、ダイコーティング法により固形パラフィンの融液を塗布したのち冷却・固化して、親水化処理に対するマスク層16を形成する(図4)。このとき、塗工法を適切に選択することにより微多孔内にパラフィンが浸透しないようにすることが好ましい。
上記の微多孔膜13に対して親水化処理を行う。具体的には、例えば硫酸ガスにより親水化部にスルホン基を導入する。この工程において、微多孔膜13の下面13bがマスキングされているため、硫酸ガスは上面13aのみから非マスク部15の微多孔に浸透する。しかし、非マスク部15の一端はマスク層15により閉塞されているので、硫酸ガスは非マスク部15の最下端までは到達しないか、あるいは、到達する量が親水化部の上端部に比べて少なくなる。
【0020】
この親水化工程において、硫酸ガスの濃度、処理時間などを適切に制御することにより、親水化部12における親水基量を制御することができる。
この親水化処理工程終了後に、パラフィンのマスク層16および微多孔内のパラフィンを抽出除去し、図1に示した本発明のアルカリ二次電池用セパレータ10を得る。このセパレータ10は負極に対向する面すなわち下面は親水基量が少ないため、電池を組み立てた際にもアルカリ電解液の保液性が低い。したがって、負極とセパレータ10との間に電解液が多くは存在せず、その結果、面方向のガス拡散経路が確保されることになる。
【0021】
図6は本発明のアルカリ二次電池の構成の一例を示し、電池缶20内に正極21,負極22が上記のセパレータ10を介して交互に積層されたチューイングガム型のアルカリ二次電池である。
【0022】
【実施例】
実施例1〜5
<微多孔膜の作製>
珪酸微粉末、ジオクチルフタレート、ポリエチレン樹脂粉末とを質量割合で1:2:1となるように混合した。得られた混合粉末を溶融し、二軸抽出機にTダイスを取り付けたフィルム製造装置で、厚みが80μmのフィルム状となるように製膜した。得られた膜からジオクチルフタレートを抽出除去した後、さらに30%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して膜中の珪酸粉末を抽出除去し、膜に微多孔を形成してポリエチレン製微多孔膜を得た。微多孔の平均粒径は約2μm、気孔率は約60%であった。
【0023】
<セパレータの作製>
図3〜5に示した工程に基づいて、図1のセパレータを作製した。上記により得られたポリエチレン製微多孔膜に、溶解した固形パラフィンをスクリーン印刷法により直径2mmの水玉模様状に塗布・充填した。このとき、水玉模様の面積の合計すなわち非親水化部の面積が、セパレータ10の正極側表面の全表面積の20%となるようにした。したがって、親水化部の面積は全体の80%を占める。
【0024】
次いで、ダイコーティング法により微多孔膜の負極と対向する面すなわち下面に溶融パラフィンを塗布したのち、冷却・固化してマスク層を形成した。この状態で、窒素ガスで希釈した無水硫酸ガス雰囲気中でスルホン化処理し、その後水洗・乾燥した。その後、約70℃のメチルエチルケトンで固形パラフィンを抽出除去し、乾燥してセパレータを得た。
【0025】
上記のスルホン化処理工程における、硫酸ガスの濃度および処理時間を様々に変化させて、各セパレータごとに親水化部における正極側と負極側の親水基量比を変化させた。
なお、親水基量は親水化部における微多孔膜表面のスルホン基に含有されるイオウ(S)量をX線光電子分光法により測定し、炭素(C)量に対するS量を求めた。そして、親水化部の負極側の親水基量をA、正極側の親水基量をBとしたときの親水化量比B/Aを算出して、これらを一括して表1に示した。
【0026】
<二次電池の組み立て>
上記の各セパレータとNi正極、MH負極とを組み合わせて缶挿した。このときセパレータの親水基量の少ない面すなわち図における下面を負極側とした。さらにアルカリ電解液を注液後、封口、充放電活性化を行って、図6に示したような定格容量670mAhのチューイングガム型Ni−MH電池を得た。
【0027】
<電池の特性評価>
各電池の0.2It、3Itにおける放電容量を測定した。充電は0.1It×150%で実施した。放電時、電圧が1Vに低下するまでの容量を放電容量とした。
また、各電池の0.1It×200%充電時における充電内圧の最大値を測定した。さらに、各電池の3It/0.2It放電率([3It放電容量/0.2It放電容量]×100(%))を算出した。これらの結果を表1に示した。
【0028】
比較例1
実施例1で作製したセパレータを親水基量の少ない面を正極側として電池を組み立て、同様の評価試験を行って結果を表1に示した。
比較例2
親水化処理工程において、負極に対向する面のマスキングを行わなかったことを除いては実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを電池に組み込んで、同様の評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果からも明らかなように、本発明のセパレータを使用したNi−MH電池は、高い放電容量と放電率を有すると同時に、従来のセパレータを使用したものに比べて内圧の上昇が低く抑えられることが確認された。これは、主として本発明のセパレータを使用することにより、負極との接触面におけるガス拡散性が向上し、負極におけるガス吸収能が高められた結果によるものと推察される。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のアルカリ二次電池用セパレータは電池に組み込んだ際に、正極で生じるガスの経路が負極側で広範囲に拡開されるように構成されているため、負極におけるガス吸収能が向上し、その結果、過充電時における電池の内圧の上昇が有効に防止される。したがって、高容量、高出力の二次電池用セパレータとして極めて有用であり、その工業的価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリ二次電池用セパレータの構成の一例を示す概念的断面図である。
【図2】図1のセパレータをアルカリ二次電池に組み込んだ際の作用を示す概念的断面図である。
【図3】図1のセパレータの製造工程を示す概念的断面図である。
【図4】図1のセパレータの製造工程を示す概念的断面図である。
【図5】図1のセパレータの製造工程を示す概念的断面図である。
【図6】本発明のセパレータを使用したアルカリ二次電池の構成の一例を示す一部破断斜視図である。
【図7】一般的な部分親水化セパレータの平面図である。
【図8】従来の微多孔膜セパレータの製造工程を示す概念的断面図である。
【図9】従来の微多孔膜セパレータの製造工程を示す概念的断面図である。
【図10】従来の微多孔膜セパレータの製造工程を示す概念的断面図である。
【図11】従来の微多孔膜セパレータをアルカリ二次電池に組み込んだ際の作用を示す概念的断面図である。
【符号の説明】
10 セパレータ
11 親水化部
12 非親水化部
13 微多孔膜
14 マスク部
15 非マスク部
16 マスク層
20 電池缶
21 正極
22 負極
Claims (4)
- 少なくとも片面に非親水化部と親水化部とが形成された微多孔膜よりなり、正極と負極とに挟持されて電池内に収容されるセパレータであって、前記負極に対向する面における前記親水化部の親水基量が、前記正極に対向する面における前記親水化部の親水基量よりも少ないことを特徴とするアルカリ二次電池用セパレータ。
- 前記電池内で前記負極に対向する面の親水基量をA、前記正極に対向する面の親水基量をBとしたとき、1.5≦B/A≦5である請求項1記載のセパレータ。
- 前記親水化部が前記セパレータの前記正極に対向する面の全表面積に対する面積比率で50〜90%となるように形成されている請求項1〜2記載のセパレータ。
- 請求項1〜3いずれかに記載のセパレータを用いたアルカリ二次電池。
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