JP7040110B2 - 鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材及びそれを用いる鉛電池 - Google Patents

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Description

本発明は、鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材及びそれを用いる鉛電池に関する。
鉛蓄電池は、自動車、トラック等の車両のエンジン、空調、照明、オーディオ機器等を作動させるため、或いは病院、電波基地局等のインフラシステムのバックアップ電源として広く用いられている。
鉛蓄電池は、充電の際、正極及び負極から硫酸を放出する。硫酸は、比重が1.84と大きいため、電池の下部に沈む傾向がある。そのため、充放電を繰り返すうちに電池の上部と下部とでは硫酸濃度が異なってくる。この現象を「成層化」と呼んでいる。しかし、従来の使用態様において、充電状態が過充電になると、水の電気分解が起こり、水素ガス及び酸素ガスが発生し、それらのガスにより電池内部が撹拌され、電池の上部及び下部における硫酸濃度が次第に均一になるため、その後の放電で、電極への硫酸鉛の析出が均一に起こるため、大きな課題とはならなかった。
近年、自動車においては、大気汚染防止、地球温暖化防止のため、様々な燃費向上対策が検討されている。燃費向上対策を施した自動車としては、エンジンの動作時間を少なくするアイドリングストップ車や、エンジンの回転を無駄なく動力に使用する発電制御車といったマイクロハイブリッド車が検討され、製品化されている。
アイドリングストップ車では、エンジンの始動回数が多くなり、その都度、鉛蓄電池は大電流放電が繰り返される。またアイドリングストップ車や発電制御車では、オルタネータによる不要な発電が少なくなり、鉛蓄電池の充電が間欠的に行なわれるので充放電の回数が増えることになる。
そのような使用態様においては、エネルギーロスとなる過充電で発生したガスを利用した電池内部の電解液攪拌が困難になり、従来の使用態様では大きな課題ではなかった電解液の「成層化」の問題がより深刻になる。その結果、濃度の高い電解液が電槽の下部に滞留し、濃度の低い電解液が電槽の上部に滞留して、電解液の成層化が激しくなる。電解液濃度が高い部分では充電が容易ではなくなり(充電反応が進み難くなり)、その結果として鉛蓄電池の性能劣化と寿命低下が引き起こされる。
特許文献1には、電極間に設けられるセパレータをガラス繊維とすることにより、電解液成層化を抑制する構成が開示されている。
一方、非水電解質の蓄電池、ニッケル-水素電池等のアルカリ二次電池又は固体電解コンデンサなどの蓄電素子用セパレータとしては、樹脂からなる不織布を用いることが開示されている。例えば、特許文献2には、大電流又は低温下での放電容量を低下させることなく、内部短絡の発生を防止することができる非水電解質二次電池用セパレータが開示されている。このセパレータは、ポリオレフィン系芯鞘型複合繊維からなる不織布で構成されている。特許文献3には、親水化処理により、保液性に優れ、長寿命であるアルカリ二次電池用セパレータが開示されている。このセパレータは、繊維径5μmを超え、捲縮を有するポリオレフィン系芯鞘型複合繊維からなる不織布で構成されている。特許文献4には、高容量で、且つ低ESRである固体電解コンデンサ用セパレータが開示されている。このセパレータは、熱可塑性樹脂繊維層を少なくとも一層以上含む不織布であって、地合の変動係数が2.5未満である不織布で構成されている。
特開2011-238492号公報 国際公開第2016/158927号 特開2015-041458号公報 特開2015-076416号公報
しかしながら、特許文献1のガラス材質のセパレータは、厚みが300μm以上と厚く、電池の体積が大きいのに加え、重く、高価であるという課題がある。また、成層化抑制のために構造が異なる不織布を2枚以上積層した構造にする必要があるため更に高価となり、産業上有益とは言えない。また、平均細孔径が3.5μm以下の層を含むために、プロトンや硫酸イオンの正極、負極周辺での伝導率が低くなり電池の出力特性的に不利であることも車載用用途としては適切ではない。
一方、鉛電池以外の蓄電池用セパレータに用いる樹脂からなる不織布は、特許文献2~4に開示されているように、硫酸水溶液以外の非水電解質、アルカリ電解質、あるいは固体電解質に適用するものであり、かつその機能は正極と負極の短絡防止であり、鉛電池の硫酸水溶液の電解質に適用すること、特に、鉛電池特有の電解液の「成層化」の課題に関する記載がない。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、硫酸イオン沈降を抑制しつつプロトンと水の移動を良好に保つ鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、課題を解決できる手段を見出し、本発明に至った。
すなわち、鉛蓄電池の正極、負極の反応においては、硫酸イオンの移動に加えて水とプロトン移動が必要であるが、硫酸イオンは重たいために沈降してしまい成層化の原因となる。ここで単純に硫酸イオン、水、プロトンの移動性を阻害してしまうと電池の抵抗が上昇してしまう。ここで、硫酸イオンと水、プロトンの硫酸水溶液中での存在形態を考察すると、水は水素結合により周囲の水とクラスターを形成している。また、プロトンはその電荷により水酸イオンと弱い引力で結ばれている。硫酸イオンはその価数が大きいことから、水やプロトンよりも強い引力で大きなクラスターを形成しており、鉛蓄電池のような高濃度硫酸水溶液中ではプラスのイオンを介して硫酸イオン同士が引力で結ばれている状態であると推測できる。すなわち、硫酸イオンは粘性が高い状態にある。我々はこの点に着目して、水やプロトンの移動の大きな妨げにならずに、かつ硫酸イオンの移動の抵抗が大きくなる臨界の細孔の大きさを基にした最適な多孔質構造があると考えた。
上記の仮説の元で鋭意実験検討を重ねた結果、我々はプロトンと水の移動の疎外を最小限度に留めつつ、硫酸イオンの沈降を抑制できる多孔質構造の条件を見出した。すなわち、本発明は以下の特徴を有する多孔質構造体である鉛蓄電池用硫酸イオン沈降抑制部材である。
[1] ポリオレフィン材料で形成されたポリオレフィン繊維を複合化した鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材であって、
バブルポイント法により求めた平均流量細孔径が6~18μmであり、
膜厚が60~300μmであることを特徴とする鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
[2] バブルポイント法により求めた貫通細孔分布(面積分布)における10μm以上の孔径を有する細孔の割合が全体の割合に対して70%以下である[1]に記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
[3] 厚みDμmと空隙率Pについて式(1)の関係が成り立つ、[1]又は[2]に記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
10 ≦ D×(1-P) ≦ 20 ・・・(1)
[4] 前記繊維の繊維径が5.1μm以下である[1]~[3]の何れかに記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
[5] 機械方向の引張強度に対して、前記機械方向と略垂直をなす方向への引張強度が1.5~20倍である[1]~[4]のいずれかに記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
[6] 前記ポリオレフィン繊維が、ポリプロピレン樹脂で構成された芯とポリプロピレン樹脂で構成され前記芯を被覆する鞘とが一体成形された芯鞘構造を有する繊維を含む[1]~[5]の何れかに記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
[7] [1]~[6]の何れかに記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材を用いることを特徴とする鉛電池。
以上のことから分かる様に、従来のイオン沈降抑制を目的とした部材と比べて本発明の部材は平均流量細孔径が6~18μmと大きいことから、電池の出力特性を大幅に向上することか出来る。また、平均細孔径だけではなく、硫酸イオンの移動が容易になる10μm以上の孔径の割合を小さく抑えた細孔径分布であれば平均流量細孔径が大きくても硫酸イオンの沈降を効果的に抑制できることを新たに見出して、本発明に至った。
本発明の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材によれば、それを用いる鉛電池は、硫酸イオン沈降を抑制しつつプロトンと水の移動を良好に保つことが可能である。その結果、鉛蓄電池の抵抗増加を抑制しつつサイクル特性を高める事が出来る。
本発明の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材を用いた鉛電池の模式図の一例である。 イオン透過性の評価用H型セルを示す図である。 本発明の一つの実施態様で用いられるA~Cは複合繊維の構造例を示す断面図である。 実施例及び比較例の硫酸イオン沈降抑制材についてイオン透過性の評価結果を示す図である。
(鉛電池)
本発明の鉛蓄電池の基本構造は、図1に示すように、鉛蓄電池10が、正極2、負極3、及びこれらの間に配置された本発明の後述の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材1である。セパレータ5は正極2を覆う形で配置される。それらは、1つのセルとして容器に封入されている。このセルを封入する容器には、電解液である硫酸水溶液が充填されている。セパレータは負極を覆う形で配置しても良い。このセルが何個か組み合わされて電池のユニットを構成している。また、正極2の活物質は、例えば二酸化鉛であり、負極3の活物質は、例えば多孔質の鉛である。
(鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材)
本発明の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、ポリオレフィン材料で形成されたポリオレフィン繊維を複合化したものであり、バブルポイント法により求めた平均流量細孔径が6~18μmであり、膜厚が60~300μmであることを特徴とする。
本発明の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、JIS K3832:1990に準拠してバブルポイント法により求めた貫通細孔分布(面積分布)における10μm以上の孔径を有する細孔の割合が全体の割合に対して70%以下であることが好ましい。
本発明の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、厚みDμmと空隙率Pについて式(1)の関係が成り立つことが好ましい。
10 ≦ D×(1-P) ≦ 20 ・・・(1)
本発明の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、機械方向の引張強度に対して、前記機械方向と略垂直をなす方向への引張強度が1.5~20倍であることが好ましい。
<ポリオレフィン繊維>
本発明の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材に用いる繊維の繊維径が5.1μm以下であることが好ましい。
本発明の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、ポリオレフィン繊維が、ポリプロピレン樹脂で構成された芯とポリエチレン樹脂で構成され前記芯を被覆する鞘とが一体成形された芯鞘構造を有する繊維を含むことが好ましい。この芯鞘繊維を用いると繊維同士を接着するバインダー成分が不要となるので、電気化学的に安定なポリオレフィン材料だけで部材が作製でき、かつ高強度となるので、電池内で劣化する成分が少ない高性能の鉛電池素子を得ることが可能となる。また、強度が高いことから鉛蓄電池製造工程でのハンドリングが容易となる。
(第1の実施形態)
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、ポリオレフィン材料で形成されたポリオレフィン繊維を複合化した不織布である。バブルポイント法により求めた平均流量細孔径が6~18μmであり、膜厚が60~300μmであることを特徴とする。バブルポイント法により求めた貫通細孔分布(面積分布)における10μm以上の孔径を有する細孔の割合が全体の割合に対して70%以下であることが好ましい。厚みDμmと空隙率Pについて式(1)の関係が成り立つことがより好ましい。
10 ≦ D×(1-P) ≦ 20 ・・・(1)
また、ポリオレフィン繊維の繊維径が5.1μm以下であることが更に好ましい。
本実施形態の不織布は、熱可塑性のポリオレフィン繊維でできた層で構成されていることが好ましい。該不織布が得られれば、特に製法は限定されない。製法として、例えば湿式法で得られる不織布が挙げられる。湿式法で得られる不織布は、均質性が高く、また繊維構成や製造時の工程条件を変更することで細孔径分布や厚み、空隙率を他の製法より細かく制御できるので、本発明の目的には好適である。
また、例えばスパンボンド法で得られる不織布も挙げられる。スパンボンド法により得られた不織布は、他の方法で得られた乾式不織布よりも空隙部分が大きく十分確保される。空隙率が高いと電池抵抗が下がる傾向があるので、高出力タイプの鉛蓄電池用としては特に好適な製法となる。
即ち、繊維間に存在する空隙の大きさ(孔径)が大きい程、通液抵抗が少なく、更に電極近傍のプロトンイオンと水の量が多くなるので、鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材を介したプロトン伝導性が向上し、優れた鉛電池性能を発揮できる。本実施形態のスパンボンド法により得られた不織布鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材を用いることで、従来より高性能な鉛電池の提供が可能となる。
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、ポリオレフィン繊維以外に、例えば後述で列挙するポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂からなる長繊維を含んでもよい。また、上記樹脂と、上記樹脂の融点より低い融点の熱可塑性樹脂とを混合して用いることが出来る。混合は単一の樹脂から構成される繊維を混ぜても良いし、1本の繊維中に2種以上の融点の異なる樹脂が含まれていても良い。例えば芯と鞘とから成り、鞘の材料の融点が芯の材料の融点より低い鞘芯糸を用いることが出来る。例えば芯がPET、鞘が共重合PETの鞘芯糸が使用できる。
本実施形態で、樹脂の具体的な例としては、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(PET、PBT、PTT等)及びその誘導体;N6、N66、N612等のポリアミド系樹脂及びその誘導体;ポリオキシメチレンエーテル系樹脂(POM等)、PEN、PPS、PPO、ポリケトン樹脂、PEEK等のポリケトン系樹脂;TPI等の熱可塑性ポリイミド樹脂;等が挙げられる。また、これらの樹脂を主体とする共重合体又は混合物も好ましい。実用強度に影響の無い範囲においては、少量のポリオレフィン等低融点成分を加えて改質を行っても構わない。不織布層を形成するために用いるポリオレフィン材料は、本実施形態の蓄電池の使用目的に合わせて適宜選択する。
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、厚みが60~300μmの不織布であることが好ましい不織布の厚みが60μm未満だと、硫酸イオン沈降抑制の効果が小さすぎるので好ましくない。。また厚みが300μm以上だと電解液の移動抵抗が大きくなり、またプロトン伝導性も小さくなるので好ましくない。この意味で、不織布の厚みはより好ましくは、100~250μmであり、更に好ましくは、100~200μmである。なお本明細書で記載する厚みは、JIS L-1913に準拠して測定することができる。
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、バブルポイント法により求めた平均流量細孔径が6~18μmであることが好ましく、6~12μmであることがより好ましく、8~10μmであることが更により好ましい。平均流量細孔径が6μm未満だと電解液の透過性が悪くなりプロトン伝導性と水の移動性が悪化するので好ましくない。また、平均流量細孔径が18μmを超えると硫酸イオンの易動性が大きくなり沈降を抑制できなくなるので好ましくない。
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材の見掛け密度としては、0.2~0.3g/cmが好ましい。0.3g/cmを超えると、鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材内の空隙量が少なくなり、電解液の含浸量が少なくなることで電池の抵抗が大きくなる。加えて、電池の重量が重くなるので好ましくない。0.2g/cm以下であると、空隙部分が大きな孔(いわゆるピンホール)が発生する頻度が大きくなり、加電圧時にショートを引き起こす危険性が増すので好ましくない。この意味でより好ましい範囲は、0.22~0.28g/cmである。
本実施形態の不織布は、繊維径が5.1μm以下の繊維が20重量%以上含まれる事が好ましく、繊維径は0.5~5.1μmであることがより好ましい。繊維径が5.1μm以上の繊維のみで不織布を構成すると、電解液層が不均一に分布され、鉛電池内の電気抵抗が高くなり好ましくない。また、平均流量細孔径が大きくなり硫酸イオンの沈降速度が速くなりやすいので好ましくない。繊維径が0.5μm以下であると、平均流量細孔径が小さくなりプロトン伝導性と水の移動性が悪化して電池抵抗が高くなるので好ましくない。
<製造方法>
一実施態様において、本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、紙の製法と同様の湿式法による熱可塑性合成繊維を接着した不織布製造方法で製造する事ができる。すなわち、長さが10mm以下の短い繊維を水中に分散し、網などのネット上のシートですき上げることで、短い繊維がシート状になったシートを作製する。その後、熱を掛けて乾燥と熱溶着による繊維同士の接着を行うことで不織布を得る。加熱溶着に加熱ドラムを用いることでより均一な厚みのものを作る事が出来る。湿式法で作る不織布は均質性が高く、また、目付け重量を容易に変えられることから、本発明のように多孔構造を細かく制御したい用途には好適な製法である。
また、一実施態様において、スパンボンド法を用いて硫酸イオン沈降抑制部材を製造することも出来る。スパンボンド法の一例としては、熱可塑性合成長繊維を紡糸してフィラメントを得る工程;前記フィラメントをコロナ帯電させる工程;及び前記帯電させたフィラメントを、分散装置を用いて気流を制御しながら開繊・分散して、均一なウェブを得る工程で製造する事が出来る。
本実施形態の不織布は、熱的結合によって形成された不織布である。熱的結合は、バインダーを用いることなく、不織布強度を高めることができる。また積層不織布においては各層一体化できる点でも好ましい。バインダーを用いた場合、そのバインダーが鉛電池に残る。バインダーが鉛電池性能を劣化させないものであれば、特に問題はないが、バインダーによって鉛電池性能の劣化が促進する場合には、バインダーを除去する工程が新たに必要となる。また、バインダーを除去する工程が必要な場合は、水、アルコール等の揮発性溶剤を通常使用するため、この溶剤が素子中に残る懸念が発生する。以上の理由で、熱のみ繊維同士を結合した、バインダーを用いない不織布が好ましい。
さらに、積層不織布を形成する工程の合理性の観点からも、熱結合により形成された不織布は、よりコストを低減することができるため、好ましい。
熱的結合による不織布の形成は、不織布層にある繊維同士を熱接着することにより実現できる。一例として、湿式法で成形した繊維集合シートをヤンキードライヤーや熱ロールで圧着させる方法が挙げられる。この方法は連続一体化した生産ラインで生産できることから、均一な不織布を得ることを目的とした場合好ましい。熱接着工程は、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘繊維を用いた場合は、ポリエチレンの融点より高くポリプロピレンの融点よりも低い温度で行うことで、形状を崩すことなく繊維同士を接着する事が出来る。
本実施形態の不織布は、親水化加工されることがより好ましい。不織布が親水化加工されると、鉛蓄電池の電解液である硫酸水溶液が不織布により含浸しやすくなるために電解液の易動性が高まりプロトン伝導性が向上するので、より出力特性が高い鉛電池を製造する場合に好適である。また、充放電時に発生する気泡により目詰まりする事がなくなるので好適である。親水化加工としては、物理的な加工方法:即ち、コロナ処理又はプラズマ処理による親水化の他、化学的な加工方法:即ち、表面官能基の導入(酸化処理等で、スルホン酸基、カルボン酸基等を導入する)、水溶性高分子(PVA、ポリスチレンスルホン酸、及びポリグルタミン酸)並びに界面活性剤(ノニオン性、陰イオン性、陽イオン性、及び両イオン性の界面活性剤)等の処理剤による加工、等が採用される。処理剤の使用量、官能基導入量等は、鉛蓄電池に求める性能や電解液成分などとの兼ね合いで適時適切な親和性を付与すれば良い。
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、上記のようにして得られた不織布に親水化処理を施すことにより、電解液との親和性を付与する。親水化処理としては、界面活性剤付与処理、コロナ放電処理、フッ素ガス処理、親水性単量体のグラフト重合処理、スルホン化処理等が挙げられる。
界面活性剤付与処理としては、例えば、アニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤を溶液中に不織布を浸漬したり、この溶液を不織布に塗布もしくはスプレーしたりすることにより、親水性を付与することができる。
コロナ放電処理としては、高電圧発生機に接続した電極と、シリコンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム等でカバーした金属ロール間に適度の間隔を設け、高周波で数千から数万Vの電圧をかけ、高圧コロナを発生させ、この間隔に不織布を適度な速度で走らせ、不織布にコロナで生成したオゾン、あるいは、酸化窒素を反応させて、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ペルオキシド基を生成させ、親水性を付与することができる。
プラズマ処理としては、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理のいずれでも用いる事が出来る。
フッ素ガス処理としては、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス等)で希釈したフッ素ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス及び二酸化硫黄ガスから選択される少なくとも1種類のガスとの混合ガスに不織布を曝すことにより、不織布の繊維表面にスルホン酸基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホフルオライド基、水酸基等を導入し、親水性を付与することができる。
親水性単量体のグラフト重合処理としては、親水性単量体として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、あるいはスチレンを使用できる。これら親水性単量体の重合方法としては、これらの親水性単量体と重合開始剤を含む溶液中に不織布を浸漬して加熱する方法、不織布に親水性単量体を塗布して放射線を照射する方法、不織布に放射線を照射して親水性単量体と接触させる方法、増感剤を含む親水性単量体溶液を不織布に塗布して紫外線を照射する方法等が挙げられる。
スルホン化処理としては、特に限定されないが、例えば、発煙硫酸、熱濃硫酸、クロロ硫酸等からなる溶液中に不織布を浸漬しスルホン酸基を導入する液相(溶液)法や、二酸化硫黄ガス、三酸化硫黄ガス等を不織布に曝しスルホン酸基を導入する気相(ガス)法が挙げられる。
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材においては、気相処理法によるスルホン化処理がより好ましい。液相処理法によるスルホン化処理は、反応条件の設定が難しく、反応時間を長くし過ぎた場合や温度を高くし過ぎた場合に、不織布が炭化、収縮、フィルム化しやすいという問題がある。また、多量の強酸性廃液が出るという問題がある。
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材においては、電解液との親和性を更に向上させるために、スルホン化処理後の不織布にコロナ放電処理を施すことや、界面活性剤を付与することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、ポリオレフィン材料で形成されたポリオレフィン繊維を複合化した不織布基材を用いる。バブルポイント法により求めた平均流量細孔径が6~18μmであり、膜厚が60~300μmであり、バブルポイント法により求めた貫通細孔分布(面積分布)における10μm以上の孔径を有する細孔の割合が全体の割合に対して70%以下であることが好ましい。厚みDμmと空隙率Pについて式(1)の関係が成り立つことがより好ましい。
10 ≦ D×(1-P) ≦ 20 ・・・(1)
また、ポリオレフィン繊維の繊維径が5.1μm以下であることが更に好ましい。
本実施形態に用いる不織布基材のポリオレフィン繊維には、例えばポリオレフィン系樹脂からなる低融点成分と、この低融点成分よりも融点が20℃以上高い熱可塑性樹脂からなる高融点成分とで形成された複合繊維を用いることが好ましい。図3A~Cは複合繊維の構造例を示す断面図である。ポリオレフィン繊維に用いる複合繊維の構造は、特に限定されるものではなく、図3Aに示すような鞘芯複合型、図3Bに示すような偏心鞘芯型、図3Cに示すようなサイドバイサイド型の他、多芯型(海島型)など種々の構造のものを使用することができる。
図3Aに示す鞘芯複合型の複合繊維11、図3Bに示す偏心鞘芯型の複合繊維12及び多芯型(海島型)の複合繊維の場合は、鞘部(海部)を低融点成分14で形成し、芯部(島部)を高融点成分15で形成する。一方、図3Cに示すサイドバイサイド型の複合繊維13の場合は、低融点成分14と高融点成分15の割合が、断面積比で、低融点成分:高融点成分=1:9~9:1であることが好ましい。
なお、原料に複数種の繊維を用いる場合は、少なくとも1種が前述した樹脂を用いた複合繊維であればよい。
以上詳述したように、本実施形態の不織布基材は、充放電時に硫酸イオンの濃度差が生じて(成層化)、電池性能が低下することが抑制できる。
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材に用いられる不織布基材を第1の実施形態と同様な方法で、親水性処理を行うことができる。
(第3の実施形態)
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材は、ポリオレフィン材料で形成されたポリオレフィン繊維を複合化した不織布に用いる。バブルポイント法により求めた平均流量細孔径が6~18μmであり、膜厚が60~300μmであり、かつ、ポリオレフィン繊維は、芯鞘構造を有する繊維であることを特徴とする。バブルポイント法により求めた貫通細孔分布(面積分布)における10μm以上の孔径を有する細孔の割合が全体の割合に対して70%以下であることが好ましい。厚みDμmと空隙率Pについて式(1)の関係が成り立つことがより好ましい。
10 ≦ D×(1-P) ≦ 20 ・・・(1)
また、ポリオレフィン繊維の繊維径が5.1μm以下であることが更に好ましい。
本実施形態で使用するポリオレフィン系芯鞘型複合繊維における芯成分と鞘成分の組合せとしては、芯成分がポリプロピレン、鞘成分が高密度ポリエチレンの組合せ、芯成分がポリプロピレン、鞘成分が中密度ポリエチレンの組合せ、芯成分がポリプロピレン、鞘成分が低密度ポリエチレンの組合せ、芯成分がポリエチレン、鞘成分が直鎖状低密度ポリエチレンの組合せ、芯成分がポリプロピレン、鞘成分がエチレン-プロピレン共重合体の組合せ、芯成分がポリプロピレン、鞘成分がポリブテン-1の組合せ等が挙げられる。これらポリオレフィン系芯鞘型複合繊維の中でも、芯成分がポリプロピレン、鞘成分が高密度ポリエチレンの組合せである芯鞘型複合繊維が抄造性に優れ、強度の高い不織布が得られるため好ましく用いられる。
前記芯成分がポリプロピレン、鞘成分が高密度ポリエチレンであるポリオレフィン系芯鞘型複合繊維において、芯成分のポリプロピレンは、繊維物性を調整するため、必要に応じて高密度ポリエチレンやポリメチルペンテン等の他のポリオレフィンを混合することができる。前記ポリプロピレン以外のポリオレフィンの混合比率としては、芯成分の10質量%以下であることが好ましい。また、鞘成分の高密度ポリエチレンについても、繊維物性を調節するため、必要に応じてポリプロピレンやエチレン-プロピレン共重合体等の他のポリオレフィンを混合することができる。前記高密度ポリエチレン以外のポリオレフィンの混合比率としては、鞘成分の10質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に使用されるポリオレフィン系芯鞘型複合繊維の繊維長は特に限定されないが、繊維径は5.1μm以下の繊維が使用されることが好ましい。不織布強度と製造性等から、繊維長は1~10mm以下が好ましい。繊維長が1mm未満の場合には、不織布の十分な機械的強度が得られない場合がある。繊維長が10mmを超えた場合には、地合不良となり、良好な不織布が形成できなくなる場合がある。特に、湿式不織布では、分散時の繊維同士の異常な絡みが発生し、均一な分散状態にならず、地合不良となる場合がある。繊維径は5.1μm以下のものであれば特に限定されないが、0.5~5.1μmであることがより好ましい。
本実施形態に使用されるポリオレフィン系芯鞘型複合繊維と併用して使用可能な他の繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の単一成分からなるポリオレフィン繊維、2種類以上の異なるポリオレフィンの混合物からなる混合ポリオレフィン繊維、2種類以上の異なるオレフィンの共重合体からなる共重合ポリオレフィン繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリオレフィン等の樹脂を適宜組み合わせた、サイドバイサイド型、分割性複合型ポリオレフィン繊維、脂肪族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、半芳香族ポリアミド繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維等が挙げられるが、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の単一成分からなるポリオレフィン繊維、2種類以上の異なるポリオレフィンの混合物からなる混合ポリオレフィン繊維、2種類以上の異なるオレフィンの共重合体からなる共重合ポリオレフィン繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリオレフィン等の樹脂を適宜組み合わせた、サイドバイサイド型、分割性複合型ポリオレフィン繊維等のポリオレフィン系繊維が好ましい。
これらのポリオレフィン系芯鞘型複合繊維と併用して使用可能なポリオレフィン系繊維以外の繊維の繊維径、繊維長は特に限定されないが、不織布強度と製造性等から、繊維径は0.5~5.1μmであることが好ましく、繊維長は1~10mmであることが好ましい。
<製造方法>
本実施形態において、ポリオレフィン系芯鞘型複合繊維を、不織布を構成する繊維の20質量%を超え、好ましく50質量%を超えて含有する。またポリオレフィン系芯鞘型複合繊維を含め、不織布を構成する全繊維の25質量%以上が5.1μm以下の繊維径を有する繊維であることを特徴とするが、繊維径5.1μm以下のポリオレフィン系芯鞘型複合繊維の含有率は不織布を構成する繊維の50質量%以上がより好ましい。
本実施形態において、繊維ウェブを形成する湿式抄造法としては、従来公知の方法、例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、及び短網・円網コンビネーション方式のように複数組み合わせたコンビネーション方式等が挙げられる。
繊維ウェブから不織布を製造する方法としては、熱融着繊維であるポリオレフィン系芯鞘型複合繊維を含有するウェット状態の繊維ウェブを加熱乾燥させると同時に繊維同士の熱融着を生じさせる。この加熱乾燥方式として、工業的には例えばヤンキードライヤーと熱風フード式乾燥機を組み合わせた方法が用いられる。
本実施形態の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材に用いられる不織布基材を第1の実施形態と同様な方法で、親水性処理を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本実施形態を更に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、測定方法及び評価方法は次の通りである。特記がない限り、不織布基材において、長さ方向とはMD方向(マシン方向)であり、幅方向とは該長さ方向と垂直の方向である。
(評価方法)
<厚み>
接触式厚み計(株式会社尾崎製作所(ピーコック)製:デジタルゲージDG-205。平座形測定子(φ20mm。測定力1.0N。)を用い10箇所の厚みを測定し、その平均値を求めた。
<密度、空隙率>
縦20cm×横20cmの試験片の質量を測定し、単位面積当たりの質量に換算して目付け(g/m)を求めた。
上記測定した目付け(g/m)、厚み(μm)を用い、以下の式により見掛け密度(g/cm)を算出した。
見掛け密度=(目付け)/(厚み)
上記計算した見掛け密度(g/cm)を用いて、以下の式より算出した。
空隙率=(1-(見掛け密度)/(樹脂密度))/100
<繊維径>
試料(不織布基材)使用する繊維を走査型電子顕微鏡で観察、撮影して、画像から繊維の直径を30点測定して、測定値の平均値(小数点第2位を四捨五入)を算出し、試料を構成する繊維の繊維径とした。
<平均流量細孔径>
カンタクローム社のパームポロメーター(型式:POROMETER 3G zh)を用いた。測定には浸液にGALWICK(プロピレン,1,1,2,3,3,3酸化ヘキサフッ酸;Porous Materials,Inc社製)を用い、試料を浸液に浸して充分に脱気した後、測定した。
本測定装置は、フィルターを試料として、あらかじめ表面張力が既知の液体にフィルターを浸し、フィルターの全ての細孔を液体の膜で覆った状態からフィルターに圧力をかけ、液膜の破壊される圧力と液体の表面張力とから計算された細孔の孔径を測定する。計算には下記の数式を用いる。
d=C・r/P
(式中、d(単位:μm)はフィルターの孔径、r(単位:N/m)は液体の表面張力、P(単位:Pa)はその孔径の液膜が破壊される圧力、Cは定数である。)
上記の数式より、液体に浸したフィルターにかける圧力Pを低圧から高圧に連続的に変化させた場合の流量(濡れ流量)を測定する。初期の圧力では、最も大きな細孔の液膜でも破壊されないので流量は0である。圧力を上げていくと、最も大きな細孔の液膜が破壊され、流量が発生する(バブルポイント)。さらに圧力を上げていくと、各圧力に応じて流量は増加する。最も小さな細孔の液膜が破壊されたときの圧力における流量が、乾いた状態の流量(乾き流量)と一致する。
本測定装置による測定方法では、ある圧力における濡れ流量を、同圧力での乾き流量で除した値を累積フィルター流量(単位:%)と呼ぶ。累積フィルター流量が50%となる圧力で破壊される液膜の孔径を、平均流量孔径と呼ぶ。この平均流量孔径を、本実施形態の積層不織布基材の平均流量細孔径とした。
<貫通細孔分布(面積分布)>
上記の測定で得られた濡れ流量曲線と乾き流量曲線から、円柱状の孔が厚み方向に貫通した多孔構造を仮定して流量換算細孔径分布を求めた。その分布から、圧力と流量の関係から各細孔毎に円柱状の孔の細孔面積の総和を算出して貫通細孔分布(面積分布)を求めた。
<イオン透過性の評価>
図2のH型セルに図2の位置にイオン沈降抑制部材を挟み、片側のセルAには硫酸水溶液を、反対側のセルBには純水、もしくはセルAに供した硫酸より濃度が薄い硫酸水溶液を投入した。濃度差によってイオン沈降抑制材を介してセルAからセルBに透過するイオンの量を、セルBに設置した導電率計により時系列データとして測定した。
具体的には、予め測定しておいた導電率と硫酸水溶液濃度のデータを用いて、導電率を硫酸水溶液イオン濃度に換算して、〔時間〕対〔導電率〕のデータを採取した。このデータから時間に対する導電率の傾きを求め、式1から見かけの拡散係数Dを求めた。この見かけの拡散係数を厚みdで割った値を〔一枚換算の見かけの拡散係数〕とした。
Figure 0007040110000001
C :セルAの初期濃度
C’ :セルAの時間tにおける濃度
:セルBの初期濃度
’ :セルBの時間tにおける濃度
t :イオン拡散時間
S :測定した膜の面積
d :膜の厚み
V :セルに投入された水溶液の体積
:見かけの拡散係数
測定は、表1の2条件で行った。
Figure 0007040110000002
(実施例1~19)
原料繊維に、ポリエチレン(PE)からなる低融点成分と、ポリプロピレン(PP)からなる高融点成分とで構成される原料繊維を用いて、下記表2に示す配合で、各実施例の不織布基材を作製した。PP/PEの芯鞘繊維におけるPPとPEの重量比率は65/35~50/50である。
具体的には、先ず、各原料繊維を長さ3mmに切断して短繊維とし、それを、粘度調整剤を加えた水15L中に均一に分散させて、分散液を調製した。次に、この分散液を、縦250mm、横200mmの寸法のメッシュ上に抄紙し、湿ったウェブを作製した。得られた湿ったウェブは、PETのメッシュで挟んだ後にゴム製の2枚の加熱板間に挟み、汎用の加熱加圧機を用いて、温度135℃、圧力0.03MPaの条件で2分間プレスして乾燥した。これにより、短繊維の低融点成分が溶融して短繊維間が接合し、不織布基材A~Sを得た。
このようにして得られた不織布基材に対して、積水化学工業社製のフィルム用常圧プラズマ処理装置で照射時間5秒間の処理を行い、親水性を付与することで鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材を得た。いずれの部材も接触角計で純水を0.2μL滴下すると10秒以内にすべての純水が部材内部に浸透することを確認した。
作製した硫酸イオン沈降抑制部材の特性を表2に示す。
得られた硫酸イオン沈降抑制材について、イオン透過性の評価を行った。得られた結果を表2、図4に示す。
表2、図4から、平均流量細孔径が18μm以上だと、高濃度溶液におけるイオン拡散係数が大きく硫酸イオン沈降抑制効果が得られない事が分かる。また、厚みが60μm以下だと高濃度溶液におけるイオン拡散係数が大きく硫酸イオン沈降抑制効果が得られない事が分かる。
Figure 0007040110000003
10:鉛電池
1:鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材
2:正極(PbO
3:負極(Pb)
4:電解質(HSO水溶液)
5:セパレータ
11~13:複合繊維
14:低融点成分
15:高融点成分
21:硫酸イオン沈降抑制材
22:セルAの硫酸水溶液
23:セルBの硫酸水溶液、または純水
24:導電率計
25:撹拌子

Claims (7)

  1. ポリオレフィン材料で形成されたポリオレフィン繊維を複合化した鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材であって、
    バブルポイント法により求めた平均流量細孔径が6~18μmであり、
    膜厚が153~300μmであり、
    見掛け密度が0.2~0.3g/cm である
    ことを特徴とする鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
  2. バブルポイント法により求めた貫通細孔分布(面積分布)における10μm以上の孔径を有する細孔の割合が全体の割合に対して70%以下である請求項1に記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
  3. 厚みDμmと空隙率Pについて式(1)の関係が成り立つ、請求項1又は2に記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
    10 ≦ D×(1-P) ≦ 20 ・・・(1)
  4. 前記繊維の繊維径が5.1μm以下である請求項1~3の何れか1項に記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
  5. 機械方向の引張強度に対して、前記機械方向と略垂直をなす方向への引張強度が1.5~20倍である請求項1~4のいずれかに記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
  6. 前記ポリオレフィン繊維が、ポリプロピレン樹脂で構成された芯とポリプロピレン樹脂で構成され前記芯を被覆する鞘とが一体成形された芯鞘構造を有する繊維を含む請求項1~5の何れか1項に記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材。
  7. 請求項1~6の何れか1項に記載の鉛電池用硫酸イオン沈降抑制部材を用いることを特徴とする鉛電池。
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