JP3993718B2 - 親水化処理方法及び電池用セパレータの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は親水化処理方法及び電池用セパレータの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ポリオレフィン系繊維からなる不織布は耐アルカリ性に優れているため、ニッケル−水素電池やニッケル−カドミウム電池などのアルカリ電池のセパレータとして好適に使用することができる。しかしながら、ポリオレフィン系繊維は電解液との親和性が低く、ポリオレフィン系繊維からなる不織布をセパレータとして使用したアルカリ電池は、起電反応をスムーズに生じることができないため、ポリオレフィン系繊維と電解液との親和性を付与するために、様々な表面処理が実施されている。
【0003】
この表面処理の1つとして、スルホン酸基を導入するスルホン化処理がある。このスルホン酸基を導入することにより電解液との親和性を付与できるとともに、自己放電抑制作用にも優れているため好適な表面処理である。しかしながら、スルホン化処理によりスルホン酸基を導入した不織布は初期における濡れ性が悪いため、アルカリ電池製造時において電解液をセパレータ全体に注液することが困難であった。そのため、電解液をセパレータ全体に注液するために、遠心力を作用させたり、吸引力を作用させるなど、特別な装置が必要であったり、電池としての性能が悪くなる傾向があった。
【0004】
他方、特開平7−134979号公報には、硫酸根を持つ酸での処理とコロナ放電処理加工とを施したセパレータが開示されている。しかしながら、このセパレータも前記と同様の問題を抱えるものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述のような問題点を解決したもので、初期における親水性に優れる親水化処理方法、及び初期における親水性に優れる電池用セパレータの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池用セパレータの製造方法は、ポリオレフィン系繊維を含んでいる繊維シートを含むシートを発煙硫酸中に浸漬することによりスルホン酸基を導入した後、フッ素ガスと酸素原子及び/又は硫黄原子を含有する反応性ガスとを含む混合ガスと接触させる方法である。この方法によれば、初期における親水性に優れる繊維シートを含むシート、つまりセパレータを製造することができる。このセパレータを使用してアルカリ電池を製造すると、アルカリ電池製造時において電解液を容易にセパレータ全体に注液することができるため、特別な装置が不要であり、しかも電池としての性能が優れている。なお、この方法により製造したセパレータは電解液の保持性に優れ、長期間における電解液の保持性にも優れているため、使用寿命の長い電池を製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において親水化処理することのできるシートの態様は特に限定されるものではないが、例えば、フィルム、微孔膜、織物、編物、不織布、ネット、或いはこれらの複合体を使用することができ、これらシートは屈曲性に優れておりロール状に巻くことができるため、巻き出した後にスルホン酸基の導入及び後述のような混合ガスとの接触の後に、巻き取ることができるため、連続的に親水化処理することができる。また、シートを構成する樹脂も特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、シリコーン樹脂、含フッ素樹脂などを1種類以上使用することができる。
【0009】
なお、電池用セパレータを製造する場合には、電解液の保持性に優れているように、織物、編物或いは不織布などの繊維シートを含むシートを使用する。また、繊維シートを構成する繊維も特に限定されるものではないが、耐アルカリ性や耐酸化性に優れているように、ポリオレフィン系繊維を含んでいるのが好ましく、ポリオレフィン系繊維のみから構成されているのがより好ましい。より具体的には、ポリエチレン繊維(例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなど)、エチレン系共重合体繊維、ポリプロピレン繊維、プロピレン系共重合体繊維、ポリメチルペンテン繊維、メチルペンテン系共重合体繊維などから構成されているのが好ましい。
【0010】
まず、前述のようなシートに対してスルホン酸基を導入する。スルホン酸基を導入する方法は特に限定するものではないが、例えば、発煙硫酸中に浸漬する方法、濃硫酸中に浸漬する方法、無水硫酸ガスと接触させる方法、クロロ硫酸中に浸漬する方法、塩化スルフリル中に浸漬する方法、或いは一酸化硫黄ガスや二酸化硫黄ガスなどの存在下で放電を発生させ、この放電を作用させる方法などがある。これらの中でも、発煙硫酸中に浸漬する方法であると、短時間でシートの内部まで均一にスルホン酸基を導入できるため好適である。
【0011】
次いで、このスルホン酸基を導入したシートを、フッ素ガスと酸素原子及び/又は硫黄原子を含有する反応性ガスとを含む混合ガスと接触させることにより、酸素原子及び/又は硫黄原子を含む官能基をシートに導入して、初期における親水性を向上させる。この酸素原子を含有する反応性ガスとしては、例えば、酸素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスなどがあり、硫黄原子を含有する反応性ガスとしては、例えば、一酸化硫黄ガス、二酸化硫黄ガスなどがある。なお、フッ素ガスは反応性が非常に高いため、窒素ガスや希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)を混合して、フッ素ガスを希釈するのが好ましい。このようにフッ素ガス(F)、酸素原子及び/又は硫黄原子を含有する反応性ガス(R)、及び窒素ガスや希ガス(D)を混合する場合、その体積比率は、F:R:D=0.1〜20:0.1〜20:99.8〜60であるのが好ましい。
【0012】
なお、スルホン酸基を導入したシートの混合ガスとの接触は室温下で実施することもできるし、酸素原子及び/又は硫黄原子を含む官能基を導入しやすいように、シートと混合ガスとを接触させる前、接触させる際、或いは接触させた後に、シートを加熱しても良い。なお、スルホン酸基を導入したシートの混合ガスとの接触温度は10〜80℃程度であるのが好ましい。
【0013】
また、混合ガスとの接触時間も特に限定するものではないが、十分に反応が進行して親水性を付与できるように、30秒以上接触させるのが好ましい。なお、前記混合ガスは反応性が非常に高く危険であるため、スルホン酸基を導入したシートと混合ガスとの接触は密閉された容器内で実施したり、スルホン酸基を導入したシートの入口部分と出口部分とを窒素ガスなどによりシール可能な容器内で実施するのが好ましい。
【0014】
このようにスルホン酸基を導入したシートを混合ガスと接触させることによって、スルホン酸基を導入したシートに、更に酸素原子及び/又は硫黄原子を含有する官能基を導入することができる。なお、混合ガス中にフッ素ガスを含んでいるため、フッ素原子を含む官能基(例えば、スルホフルオライド基など)も導入されるため、より親水性に優れるように、混合ガスと接触させた後にシートを水やアルコールなどに浸漬して、フッ素原子を水素原子で変換するのが好ましい。
【0015】
このようにして親水化処理したシートは、親水性が付与又は向上しているのはもちろんのこと、吸水性、保水性、接着性、染色性、印刷特性、イオン交換性など様々な特性が付与又は向上したものであるため、これらの特性を必要とする用途に好適に使用することができる。特に、前述のような方法により親水化処理した繊維シート(特にポリオレフィン系繊維からなる繊維シート)を含むシートを、電池用セパレータ(特に、ニッケル−カドニウム電池、ニッケル−水素電池)として使用すると、電池製造時において電解液をセパレータ全体に注液することが容易であり、しかも長期間における電解液の保持性にも優れているため、使用寿命の長い電池を製造することができる。
【0016】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0017】
【実施例】
(実施例1)
引張り強さ12g/d(デニール)、繊度1.2デニール、繊維長10mmのポリプロピレン高強度繊維(融点:166℃)30mass%、芯成分がポリプロピレン(融点:157℃)からなり、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点:125℃)からなる、繊度1.1デニール、繊維長10mmの芯鞘型融着繊維70mass%とを混合分散させたスラリーを、傾斜ワイヤー型長網方式により抄造して繊維ウエブを形成した。次いで、この繊維ウエブを温度135℃に設定されたオーブンにより10秒間加熱(無圧下)した後、線圧力9.8N/cmのロール間を通すことにより、芯鞘型融着繊維の高密度ポリエチレン成分のみを融着させて、面密度60g/m2、厚さ0.2mmの不織布を製造した。
【0018】
次いで、この不織布を濃度15%、温度60℃の発煙硫酸中に2分間浸漬することにより不織布構成繊維にスルホン酸基を導入した。次いで、水洗を十分に行った後、温度80℃で乾燥した。その後、フッ素ガス(3vol%)、酸素ガス(5vol%)、二酸化硫黄ガス(5vol%)及び窒素ガス(87vol%)からなる混合ガスで満たされた容器内に、前記スルホン酸基を導入した不織布を供給し、不織布を前記混合ガスと120秒間(温度:20℃)接触させた。そして、この混合ガスと接触させた不織布を線圧力9.8N/cmでカレンダー処理を実施して、面密度60g/m2、厚さ0.15mmのセパレータを製造した。
【0019】
(実施例2)
引張り強さ12g/d(デニール)、繊度1.2デニール、繊維長10mmのポリプロピレン高強度繊維(融点:166℃)35mass%、芯成分がポリプロピレン(融点:157℃)からなり、鞘成分が低密度ポリエチレン(融点:110℃)からなる、繊度1.1デニール、繊維長10mmの芯鞘型融着繊維25mass%、及び図1に示すような、ポリプロピレン成分(図中記号12、円形状で、繊度0.08デニールのポリプロピレン極細繊維(融点:160℃)を1本と、扇状で、繊度0.12デニールのポリプロピレン極細繊維(融点:160℃)を8本発生可能)と、高密度ポリエチレン成分(図中記号11、繊度0.12デニールの高密度ポリエチレン極細繊維(融点:125℃)を8本発生可能)とからなる、オレンジ状断面を有する、繊度2デニール、繊維長10mmの分割繊維40mass%とを混合分散させたスラリーを、傾斜ワイヤー型長網方式により抄造して繊維ウエブを形成した。次いで、この繊維ウエブを温度135℃に設定されたオーブンにより10秒間加熱(無圧下)した後、線圧力9.8N/cmのロール間を通すことにより、芯鞘型融着繊維の低密度ポリエチレン成分及び分割繊維の高密度ポリエチレン成分を融着させて、面密度60g/m2、厚さ0.2mmの融着不織布を製造した。
【0020】
次いで、この融着不織布を線径0.15mmのネット上に載置し、径0.13mm、ピッチ0.6mmでノズルを配置したノズルプレートから圧力12.7MPaの水流を両面交互に2回づつ噴出して、分割繊維を分割した。その後、分割繊維を分割させた不織布を温度124℃で乾燥すると同時に芯鞘型融着繊維の低密度ポリエチレン成分を融着させて、再融着不織布を製造した。次いで、この再融着不織布を実施例1と全く同様にして、スルホン酸基の導入、フッ素ガス処理及びカレンダー処理を実施して、面密度60g/m2、厚さ0.15mmのセパレータを製造した。
【0021】
(比較例1)
実施例1と全く同様にしてスルホン酸基を導入した不織布を線圧力9.8N/cmでカレンダー処理を実施して、面密度60g/m2、厚さ0.15mmのセパレータを製造した。
【0022】
(比較例2)
実施例2と全く同様にしてスルホン酸基を導入した再融着不織布を線圧力9.8N/cmでカレンダー処理を実施して、面密度60g/m2、厚さ0.15mmのセパレータを製造した。
【0023】
(比較例3)
実施例1と全く同様にして製造した不織布にスルホン酸基を導入することなく、実施例1と全く同様にフッ素ガス処理及びカレンダー処理を実施して、面密度60g/m2、厚さ0.15mmのセパレータを製造した。
【0024】
(比較例4)
実施例2と全く同様にして製造した再融着不織布にスルホン酸基を導入することなく、実施例1と全く同様にフッ素ガス処理及びカレンダー処理を実施して、面密度60g/m2、厚さ0.15mmのセパレータを製造した。
【0025】
(比較例5)
実施例1と全く同様にしてスルホン酸基を導入した不織布を、大気圧下、コロナ放電処理装置(高周波電源AGI−040(春日電気製))を使用し、出力1000Wで10秒間、コロナ放電処理を実施した。次いで、放電処理した不織布を線圧力9.8N/cmでカレンダー処理を実施して、面密度60g/m2、厚さ0.15mmのセパレータを製造した。
【0026】
(比較例6)
実施例2と全く同様にしてスルホン酸基を導入した再融着不織布を、大気圧下、コロナ放電処理装置(高周波電源AGI−040(春日電気製))を使用し、出力1000Wで10秒間、コロナ放電処理を実施した。次いで、放電処理した再融着不織布を線圧力9.8N/cmでカレンダー処理を実施して、面密度60g/m2、厚さ0.15mmのセパレータを製造した。
【0027】
(吸液高さの測定)
各々のセパレータを幅25mm、長さ180mmの短冊状に裁断した後、水分平衡に至らせた。次いで、各々の短冊状のセパレータの一端から5mmまでの領域を、温度20℃±2℃に保たれた比重1.3の水酸化カリウム水溶液中に直角に浸漬し、5分後、10分後、及び30分後における、水酸化カリウム水溶液の上昇した高さを測定した。この結果は表1に示す通りであった。このように本発明のセパレータは吸液速度が速く、電解液をセパレータ全体に注液することができるため、電池を効率よく生産することができる。
【0028】
【表1】
【0029】
(滴下吸収速度の測定)各々のセパレータを水分平衡に至らせた後、温度20℃±2℃で比重1.3の水酸化カリウム水溶液30μl(マイクロリットル)を、各々のセパレータの無作為に選んだ5点に滴下し、水酸化カリウム水溶液がセパレータに完全に吸収されるまでに要する時間を各々測定し、その平均時間を算出した。この結果は表1に示す通りであった。このように本発明のセパレータは吸収速度が速いため、電池を効率よく生産することができるものであった。
【0030】
(電池容量試験)
電極の集電体として、発泡ニッケル基材を用いたペースト式ニッケル正極(33mm、182mm長)と、ペースト式水素吸蔵合金負極(メッシュメタル系合金、33mm、247mm長)とを作成した。次いで、35mm幅、410mm長に裁断した各々のセパレータを、それぞれ正極と負極との間に挟み込み、渦巻き状に巻回して、SC型対応の電極群を作成した。次いで、この電極群を外装缶に収納した後、電解液として5N−水酸化カリウム及び1N−水酸化リチウムを外装缶に注液し、封缶して円筒型ニッケル−水素電池を作成した。
【0031】
次いで、それぞれの円筒型ニッケル−水素電池を、0.1Cで放電し、終止電圧が1.0Vでの初期容量(A)を測定した。次いで、0.1Cで容量に対して150%充電した後、温度65℃の恒温室内に5日間放置した。その後、再度、0.1Cで放電し、終止電圧が1.0Vでの容量(B)を測定した。これらの結果から、次式により容量維持率を算出した。
(容量維持率、%)=(B/A)×100
【0032】
この結果は表1に示す通りであった。この表1から明らかなように、本発明のセパレータは自己放電抑制作用にも優れていることがわかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の親水化処理方法によれば、初期における親水性に優れるシートを製造することができる。また、本発明の電池用セパレータの製造方法によれば、初期における親水性に優れるセパレータを製造することができる。そのため、このセパレータを使用して電池を製造する際(電解液を注液する際)に、特別な装置が不要であり、しかも電池としての性能が非常に優れている。更に、この方法により製造したセパレータは長期間における電解液の保持性にも優れているため、使用寿命の長い電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 分割繊維の模式的断面図
【符号の説明】
11 高密度ポリエチレン成分
12 ポリプロピレン成分
Claims (1)
- ポリオレフィン系繊維を含んでいる繊維シートを含むシートを発煙硫酸中に浸漬することによりスルホン酸基を導入した後、フッ素ガスと酸素原子及び/又は硫黄原子を含有する反応性ガスとを含む混合ガスと接触させることを特徴とする、電池用セパレータの製造方法。
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JP16757999A JP3993718B2 (ja) | 1999-06-15 | 1999-06-15 | 親水化処理方法及び電池用セパレータの製造方法 |
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