JP5029875B2 - 三酸化硫黄ガスによる樹脂成形板の表面改質方法 - Google Patents

三酸化硫黄ガスによる樹脂成形板の表面改質方法 Download PDF

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Description

本発明は、水濡れ性、水溶出性、外観品質に優れた樹脂成形板を得ることができる三酸化硫黄(無水硫酸)ガスによる樹脂成形板の表面改質方法に関するものである。
樹脂成形板は、工業用部材等で広く利用されており、各用途に応じた性能を発現させるために表面改質が行われている。要求表面特性としては、さまざまであるが、大きく分けて親水性表面、撥水性表面が挙げられる。特に親水性表面に改質する場合には、酸、アルカリ化合物での表面処理、紫外線処理、プラズマ、オゾン処理、親水性樹脂塗膜の形成等が検討されている。前述の各種表面処理中に樹脂の分解による品質低下、処理後、使用中の親水性の低下による商品価値の低下等の課題がある。
よって、親水性が高く且つ商品価値を損なわない表面改質法が望ましい。その表面改質
法一例として、スルホン化が挙げられ、中でも三酸化硫黄ガスによる気相スルホン化が、制御が容易で、品質の高い製品を得られる可能性が高い。しかし、綿密に条件制御したとしても、三酸化硫黄ガスとの接触による樹脂劣化(変色、樹脂分解等)を完全に回避することはできない。また、樹脂と三酸化硫黄ガスとの接触により形成された官能基(スルホン酸基等)の脱離、残存三酸化硫黄の加水分解物等を由来とする硫酸イオン(SO42−)の水への溶出等問題が根本的に回避できていない。
合成樹脂等の三酸化硫黄ガスによる表面改質例としては、窒素ガスで希釈した三酸化硫黄ガスと接触させる帯電防止加工法(例えば特許文献1参照)、合成樹脂、合成繊維等に同様な処理をして防炎性、抗菌性を付与する方法(例えば特許文献2参照)、合成樹脂不織布に同様な処理をして、電池用セパレータを製造する例(例えば特許文献3参照)が挙げられる。何れも、三酸化硫黄ガスとの接触させる条件の制御、その後の水洗処理液の種類等は検討しているものの、前述の樹脂劣化、硫酸イオンの溶出等の問題への解決策は提案されていない。
その他、我々は、導電性材料を含む樹脂成形板を硫酸ガス処理して得られる成形板を、燃料電池セパレ−タとして用いることを提案している。(特許文献4参照)、排水性に優れ性能の高い性能を発現するものが提案されているが、硫酸イオン等の冷却水への溶出が、燃料電池スタックを構成する他の部材、システムに悪影響を与えたりする可能性がある問題に対し解決策が示されていない。
特開平11−315158号公報 特開2002−105852号公報 特開2006−269384号公報 特願2006−160837
そのような要請に鑑み、本発明の目的は、三酸化硫黄(無水硫酸)ガスによる樹脂成形板の表面改質方法において、三酸化硫黄ガスとの接触による劣化(変色、樹脂分解等)の回避、及び樹脂と三酸化硫黄ガスとの接触により形成された官能基(スルホン酸基等)の脱離又は残存三酸化硫黄の加水分解物等を由来とする硫酸イオン(SO42−)の、水への溶出等問題を実用的に回避し、品質の安定した水濡れ性、水溶出性、外観品質に優れた成形板を製造できる表面改質方法を提供することにある。
さらに本発明は、より高品質かつ溝部における水の濡れ性、水溶出性、外観品質、燃料電池発電特性の改良された燃料電池用セパレータの製造方法を提供することも目的としている。
本発明者は、前記課題について鋭意研究した結果、樹脂成形板の表面のうち、改質が不要な部位、劣化してはいけない部位、硫酸イオンが溶出してはいけない部位等をマスキングし、三酸化硫黄ガスと接触する部位を実用上最小限とした後、水分除去工程を経て、三酸化硫黄ガスと接触させ表面改質し、次いで洗浄する工程を経て表面改質された樹脂成形板が、親水性能に優れかつ、外観品質及び水溶出特性にも優れることを見出すに及んで、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、樹脂を構成成分として含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形板と、三酸化硫黄ガスを接触させ、該成形板表面を改質する方法であって、工程1、工程2、工程3及び工程4を順次実施し、該樹脂成形板表面における、三酸化硫黄ガスと樹脂成形板との反応に由来し、エネルギー分散型X線分光法により測定される硫黄原子数%の、表面改質前と表面改質後との差分が+0.1〜+4.0であり、工程3の三酸化硫黄ガス濃度が、0.1〜5体積%であることを特徴とする三酸化硫黄ガスによる樹脂成形板の表面改質方法を提供するものである。
(1)工程1;成形板のマスキング工程、(2)工程2;成形板を、三酸化硫黄ガスと接触させるための加温された処理容器内に挿入、固定した後、該容器内の水分除去工程、(3)工程3;成形板を、三酸化硫黄ガスと乾燥不活性ガスとの混合ガスに接触させる工程、(4)工程4;次いで、該樹脂成形板を洗浄する工程。


本発明の成形板の表面改質方法は、機械強度等の材料物性、外観品質を損なうことなく、表面が親水化され水濡れ性に優れている。また、親水性、表面改質が必要な部位にのみ改質できるため、水濡れ性、水溶出特性にも優れ、外観品質に優れた成形板を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、樹脂を構成成分として含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形板と、三酸化硫黄ガスと希釈用乾燥ガスとの混合ガスを接触させ、該成形板表面を改質する方法であって、樹脂成形板の表面のうち、改質が不要な部位、劣化してはいけない部位、硫酸イオンが溶出してはいけない部位等をマスキングし、三酸化硫黄ガスと接触する部位を実用上最小限とした後、水分除去工程を経て、該混合ガスと接触させ表面改質し、次いで洗浄する工程を行う表面改質法である。
前記樹脂樹脂を構成成分として含む樹脂組成物とは、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を必須成分として、その他成分を含有しても良いもので、成形材料として使用されるものである。
前記の樹脂成形板は、金型等に熱硬化性樹脂を含む組成物から得られた成形材料を配置し、加熱等により硬化させ、所定の形状有した板状に成形して得られたもの、又は金型等に熱可塑性樹脂を含む組成物から得られる成形材料を配置し、加熱等により溶融させ、所定の形状を有した後、冷却固化させ同様に板状に成形して得られたものである。
前記熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、フルフリルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂などを挙げることができる。用途にもよるが、これらの中でもビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂が耐酸性に優れることから好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエステルなどを挙げることができる。用途にもよるが、これらのうち、耐熱性や耐酸性に優れることから特にポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂が好ましく使用される。
これらの熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は、使用用途、要求性能に応じて適宜選択して、使用される。樹脂組成物は、その他、人造黒鉛、ガラス粉末、炭素繊維、公知の充填材を含む樹脂組成物とし、成形材料にしても良く、用途、要求性能に応じてこれら材料を適宜選択使用する。
この樹脂成形板の表面改質の程度は、三酸化硫黄ガスと接触した部位の親水性能や、成形板表面に存在すると推定されるスルホン酸基由来の硫黄原子の含有量を測定することにより評価できる。
成形板表面のスルホン酸基由来の硫黄原子の含有量は、エネルギー分散型X線分光法により測定される値により算出される値であり、成形板表面改質前と表面改質後との差分を指標とする。実際には、処理前の樹脂成形板から少量サンプリングを行い測定し、処理後に同様にサンプリングして測定する。
一般的な炭化水素系の樹脂の場合、測定方法としては、水素を除く炭素、酸素、硫黄における硫黄原子数%の値を用いる。窒素や弗素原子を含む樹脂の場合には、窒素、弗素原子も測定できる条件及び機器を用いる。具体的な算出法としては、式1を用いる。
式1;「差分=表面改質後の硫黄原子数%−表面改質前の硫黄原子数%」
その差分値としては、好ましくは+0.1〜+4.0であり、より好ましくは+0.5〜+2.0である。この差分の値が、+0.1〜+4.0の範囲であれば、成形板表面が親水性に優れ、しかもその効果を長期にわたって維持することができる。一方、この差分の値が+4.0を越えて表面に存在させる場合には、必然的に三酸化硫黄ガスと樹脂成形板とを接触させる表面改質処理条件が強くならざるを得ず、これにより成形板の表面が著しく劣化し、粗さ、変色が増加したり、吸水率が増加したり、成形板強度が低下する等物性が著しく低下する恐れがある。さらに、水溶出性能に劣り、実用上好ましくない場合が発生する。
一方、この差分値が+0.1未満で表面に存在する場合には、成形板の表面劣化が少なく、水溶出性能も改善されるが、親水性が劣り、表面改質効果が乏しくなるので好ましくない。
前記のエネルギー分散型X線分析法により測定される原子数%値とは、具体的にはエネルギー分散型X線分析装置を用いて測定される数値を使用する。このエネルギー分散型X線分析装置は、元素から発生するX線をエネルギー分散型の半導体検出器で分光分析するものである。具体的な測定法としては、エネルギー分散型X線分析装置を用い、樹脂成形板の表面を100倍の倍率で分析を行うことにより、電子線照射で発生する元素固有の特性X線を検出し、得られたスペクトルのピーク位置と強度とから元素を定性、定量するものである。その際、前処理として金などの金属を蒸着した後、表面分析するのが一般的であるが、金の場合は、硫黄原子の定量に影響を与えるため望ましくはない。その他の金属、例えば白金、パラジウムなどを用いるのが望ましい。より望ましくは、測定中の帯電を除去できる分析装置を用いて、金属蒸着なしで分析するのが望ましい。
エネルギー分散型X線分析装置としては、例えばJSM−5900LV(日本電子株式会社製)などが挙げられる。
またセパレータ表面のスルホン酸基の存在は、X線光電子分光分析装置(ESCA)を用いて検出することができる。
次に、工程1、工程2、工程3、工程4について順次説明する。
(工程1)
樹脂成形板の表面のうち、改質が不要な部位、劣化してはいけない部位、硫酸イオンが溶出してはいけない部位等を好ましくは全表面積の10〜90%、特に好ましくは20〜80%をマスキングし、三酸化硫黄ガスと接触する部位を実用上最小限とするための工程である。マスキング方法としては、樹脂成形板の材質、要求性能及び、後工程に適合した方法が適宜選択して実施される。例えば、マスキング材としては、三酸化硫黄ガスの遮断能力のある樹脂系フィルム・シート(例えば塩化ビニル樹脂製)もしくは塗膜、金属板、樹脂板などが挙げられる。工程1の実施により表面改質が最低限必要な部位にのみ三酸化硫黄ガスが接触するため、商品性能、価値を損なうことなく親水性能に優れた樹脂成形板が得られる。
もし、この工程1を行わない場合には、表面改質が不要な部分まで工程3で表面改質されるため、最終的に得られた製品の親水性と外観品質、溶出性能の両立が難しくなる。さらに、燃料電池用セパレータの場合には、運転中に不具合を発生し、発電特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
(工程2)
樹脂成形板表面及び処理容器内の水分を除く工程である。まず、樹脂成形板を処理容器内に固定した後、容器を密閉し水分除去を行う。水分除去方法としては、樹脂成形板を劣化させない温度雰囲気、または次工程の工程3の三酸化硫黄ガスと接触させる時の温度雰囲気にて、乾燥窒素、乾燥空気など乾燥ガスの流通や減圧置換等の方法を併用しながら行うことが挙られる。内部の水分量は、高分子薄膜式などによる露点計により、容器内又は、該容器から排出される置換ガスの露点又は水分量を追跡しながら目標の露点になるまで水分除去を行う。露点の目標としては、−50℃以下、さらに望ましくは−60℃以下である。この時に使用される置換ガスの乾燥窒素、乾燥空気なども、工程上重要であり望ましくは、−60℃以下、より望ましくは−65℃以下である。該置換ガスとしては、不活性ガスの使用が望ましく、該置換ガスは、加温されたガスが望ましく、加温は、40〜100℃の範囲であることがより好ましい。
工程2の実施により、三酸化硫黄ガス濃度、温度が低い穏和な条件でも効率良く表面改質でき、商品性能、価値を損なうことなく親水性能に優れた樹脂成形板が得られる。
もし、この工程2を行わない場合には、成形板表面に吸着した水分、処理容器内に存在する水分と、工程3で使用する三酸化硫黄ガスが接触し、硫酸を副生する。この硫酸が、樹脂成形板表面を劣化させたり、三酸化硫黄ガスと樹脂成形板表面との接触を妨げたりするため、最終的に得られた製品の親水性と外観品質、水溶出性能の両立が難しくなる。また、処理容器がステンレス等の金属製である場合には、表面腐食が起こり易くなり望ましくない。
また、樹脂成形板を処理容器内に挿入、固定する前に、予備乾燥を行うことが特に望ましい。この予備乾燥方法としては、樹脂成形板を劣化させない温度雰囲気で熱風乾燥、真空乾燥機、赤外線乾燥等の方法が挙げられる。乾燥の程度は、乾燥前後での重量追跡により管理できる。改質する樹脂成形板の種類、組成にもよるが、一般的な熱風乾燥条件としては、例えば40〜100℃にて、30〜120分程度である。予備乾燥処理後、速やかに工程2を実施することが望ましい。
この予備乾燥の実施により、工程2の水分除去工程の時間が短縮されるばかりでなく、三酸化硫黄ガス濃度、温度が低い穏和な条件でも効率良く表面改質でき、商品性能、価値を損なうことなく親水性能に優れた樹脂成形板が得られる。
もし、この予備乾燥工程を行わない場合には、成形板表面に強く吸着した水分と、工程3で使用する三酸化硫黄ガスが接触し、硫酸を副生するする恐れがある。この硫酸が、樹脂成形板表面を劣化させたり、三酸化硫黄ガスと樹脂成形板表面との接触を妨げたりするため、最終的に得られた製品の親水性と外観品質、水溶出性能の両立が難しくする恐れがある。
(工程3)
樹脂成形板と三酸化硫黄ガスと希釈用乾燥ガスとの混合ガスを樹脂成形板と接触させ表面改質させる工程である。三酸化硫黄ガスとしては、特に制限はないが、ガス供給源としては、液体の安定化三酸化硫黄(沸点44.8℃)をガス化、発煙硫酸からの気化、硫黄を空気燃焼させて生成させた二酸化硫黄ガスを接触酸化して得られる三酸化硫黄ガス使用などが挙げられる。希釈用乾燥ガスとしては、三酸化硫黄と反応しない乾燥ガスの使用が必須である。具体的には、乾燥窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスや、乾燥空気が挙げられ、コストの点では、乾燥空気の使用が望ましい。この希釈用乾燥ガスも、同様に水分量を厳密に管理することが、品質上重要である。水分量としては、例えば前述の露点で管理する。露点の目標としては、−60℃以下、さらに望ましくは−65℃以下である。 露点の高い希釈用乾燥ガス、例えば露点−10℃の乾燥空気を使用して三酸化硫黄ガスを希釈すると、瞬時に硫酸ミストを生成し、処理容器までの配管ならびに、気体流量計、さらに処理容器内壁及び樹脂成形板まで、硫酸ミストで湿潤する、よって最終的に得られた成形板の親水性と外観性能、溶出性能の両立が難しくなる。また、処理容器、配管等がステンレス等金属製である場合には、表面腐食が起こり易くなり望ましくない。該混合ガスは、加温されたガスが望ましく、好ましくは40〜100℃の範囲である、より好ましくは40〜70℃である。
三酸化硫黄ガスの濃度としては、好ましくは0.1〜10体積%、より好ましくは0.1〜5体積%である。0.1体積%未満では、十分に表面改質が行われない場合がある。10体積%を越えると、樹脂劣化が起こりやすくなり、最終的に得られた製品の親水性と外観品質、水溶出性能の両立が難しくなる。
三酸化硫黄ガスと樹脂成形板と接触させる時の容器内の雰囲気温度は、改質する樹脂成形板の種類、組成にもよるが、20℃〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは30℃〜80℃である、さらに好ましくは40℃〜70℃である。20℃未満では、十分に表面改質が行われない場合がある。100℃を越えると、樹脂劣化が起こりやすくなり、最終的に得られた製品の親水性と外観品質、水溶出性能の両立が難しくなる。
三酸化硫黄ガスと希釈用乾燥ガスとの混合ガスと樹脂成形板との接触時間としては、改質する樹脂成形板の種類、組成にもよるが、1分〜120分の範囲が好ましく、さらに生産性の観点から1〜30分の範囲がより好ましい、さらに好ましくは5〜20分である。1分未満では、十分に表面改質が行われない場合があったり、製品品質の振れが大きくなる可能性がある。120分越えると、樹脂劣化が起こりやすくなり、最終的に得られた製品の親水性と外観品質、水溶出性能の両立が難しくなる。また生産性に劣るなどの問題がある。
三酸化硫黄ガスと希釈用乾燥ガスとの混合ガスの供給方法としては、特に制限されないが、例えば工程3の時間中、三酸化硫黄ガスを連続して一方向に流通し、流通後のガスを排ガス処理装置送り処理しても良い。もしくは、送気ファン等を使用して外部循環させても良い。この時のガス流通量としては、処理容器の内容積に依存し、1分間当たり処理容器の1容量に対し、好ましくは0.5〜10倍量である。より好ましくは、1〜5倍量である。また前工程2で減圧した後に、該混合ガスにて常圧に戻し、ガスを流通させず密閉したまま保持しても良い。例えば流通式の場合、内容積2リットル(L)容器なら、1L/分〜20L/分のガス流量である。
また生産性の観点から、一つの処理容器に対し複数枚の樹脂成形板を同時処理するのが好ましい。その際、同時処理される成形板のすべてが同等の表面改質されるようにガス流通の方法を工夫するのが望ましい。一例としては、成形板表面に対し、ガス流通方向が平行になるような装置・容器を使用するのが望ましい。樹脂成形板の固定方法としては、固定間隔が最適になるようにするのが望ましい。品質と生産性を考慮すると、例えば面間隔で5〜50mm程度の固定間隔であることが好ましい。品質の振れが無ければ、さらに狭い間隔で固定しても良い。
工程3が終了すると、速やかに処理容器内から三酸化硫黄ガスを含有する混合ガスを除去する。次いでこの容器から表面改質された樹脂成形板を取り出す。この三酸化硫黄ガス含有ガスの除去方法としては、乾燥窒素、乾燥空気など置換用の乾燥ガスの流通や、減圧置換等の方法を併用しながら行うことが挙られる。なお内部の三酸化硫黄ガス濃度は、容器から排出される置換ガスをサンプリングし、ガス検知管や、水に吸収させ硫酸となった量を滴定して算出したり、紫外線吸光度を測定したりして確認する。工程3終了時の濃度目安としては、0.1体積%以下である。より望ましくは、0.01体積%以下である。例えば、工程3にて三酸化硫黄ガス0.5体積%以上などで処理した場合、その濃度のままガス置換せず成形板を取り出したりすると、残存している三酸化硫黄ガスが、処理容器外の水分の高い気体と接触し、瞬時に硫酸ミストとなる。人体に対し有害であるばかりでなく、次の工程4の洗浄工程で多大負荷がかかったり、得られる表面改質された樹脂成形板の品質を損なう恐れがある。
(工程4)
前述の工程1〜工程3を経て得られる表面改質された樹脂成形板を、水又は溶剤にて洗浄する工程である。洗浄方法としては、樹脂成形板の材質、要求性能に合った方法を適宜選択して行われる。例えば、まず始めに、イオン交換水等にて洗浄を少なくとも1回行う。この場合の条件は、例えば10〜30℃で5〜60分程度で、必要によりこの条件で複数回、好ましくは2〜6回洗浄を行う。さらに残留する硫酸や、樹脂分解物を除くために、温水又は溶剤で洗浄を行うことが好ましい。この場合の条件は、例えば液温60〜100℃にて、30〜120分程度で、必要によりこの条件で複数回、好ましくは2〜6回行うのが望ましい。
工程4は、例えば燃料電池用セパレータを改質する場合には、燃料電池運転中に大量の硫酸イオンが溶出することを防止し、燃料電池の発電特性に悪影響を与えないようにするものである。燃料電池セパレータとして必要な品質を保持するためには、必須の工程である。
その他の用途の成形板については、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ水で洗浄することにより、さらに表面改質することもできる。
工程4の後に、乾燥工程を行うことが望ましい。これにより、表面が改質された樹脂成形板を早く得ることができる。乾燥方法としては、熱風乾燥機、真空乾燥機、赤外線乾燥機等の器具を用いて乾燥する方法が挙げられる。完全乾燥が必要でない場合には、室温静置にて乾燥を行えば良い。乾燥条件としては、樹脂成形板の種類、組成にもよるが、好ましくは20〜100℃にて、30〜120分程度である。通常1回であるが、必要により乾燥工程を複数回、2〜5回程度行ってもよい。また、この乾燥工程の前段で、エアーブロー等により水滴を除去した後に、乾燥工程を行うことが効率的で望ましい。
工程1で使用したマスキング材は、成形板の種類、要求性能、前記工程内容等に応じて最適な時期に除去する。除去時期は、工程3以降に除去作業を行うのが望ましい。例えば、工程3の後に除去した後、工程4を実施しても良いし、工程4の洗浄した後に除去しても良い。この時、乾燥前でも乾燥後でも良い。使用したマスキング材に応じて最適な時期に行う。また、例えば水溶性マスキング材を使用した場合には、工程4の水洗中に除去することも可能である。
さらに、必要により前記工程1の前処理工程として、ブラスト処理、紫外線照射処理、紫外線オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、酸処理、アルカリ処理などを行っても良い。使用目的、要求性能、材質に合った方法を適宜選択することができる。
燃料電池用セパレータの場合、接触抵抗を低減するため、ブラスト処理、紫外線オゾン処理等を行った後、工程1を実施するのが望ましい。また、工程3の妨げとなる可能性のある成形時に使用した外部離型剤も、必要により十分除去しておくことが望ましい。
前記工程1、工程2、工程3、及び工程4を実施することにより、本発明の目的である、性能上必要な部位のみ三酸化硫黄ガスにより表面改質された樹脂成形板が得られる。また、この工程を経て得られる燃料電池用セパレータは、排水性に優れ、発電特性の安定した燃料電池が提供できる。
表面改質された樹脂成形板の表面特性は、簡易な方法として水濡れ性などで評価できる
。例えば、水との接触角で評価することができ、その接触角の値は、樹脂成形板組成、表面形状によるが、好ましくは80度以下、より好ましくは60度以下である。
燃料電池用セパレータとして使用される場合には、表面改質された部位、例えば燃料ガス流路での水との接触角が80度以下の場合、燃料電池用セパレータとして稼働中に生成する生成水がセパレ−タガス流路内で留まることなく排水されるので、安定した電圧を維持することができる。より好ましくは、60度以下0度以上である。
また、表面改質された燃料電池用セパレータは、水への溶出特性の評価も重要である。溶出量が低ければ、長期安定性に優れ、かつ排水性の優れた燃料電池用セパレータであることが期待できる。例えば、前述の燃料ガス流路を除く残りの部分すべてにマスキングを
行った後、次の工程2及び工程3を順次行うことにより、硫酸イオンの溶出を低減した製
品、若しくは硫酸イオン溶出を実用的に回避した製品が提供可能となる。
本発明の三酸化硫黄ガスによる樹脂成形板の表面改質法は、各種用途での要求性能に応じた表面特性を樹脂成形板に付与することが可能である。よって、本発明の方法により改質された樹脂成形板は、種々の工業部材として多分野で利用できる。例えば、建築土木部材、船舶部材、車両部材、家電部材、電池部材、水処理部材、電気部材、電子部材、医療部材などに広く利用できる。中でも電池部材、例えば燃料電池セパレータとして利用するのが好適である。
本発明の方法にてガス流路表面が親水化された燃料電池セパレータを得れば、そのセパレータは、例えばガス拡散電極と固体高分子電解質膜を組み合わせて単一セルの燃料電池とすることができる。さらに複数個のセルを組み合わせることによって燃料電池スタックとなる。かかる燃料電池としては、固体高分子型燃料電池などが挙げられる。
なお燃料電池とは、燃料と酸化剤との電気化学反応を利用して、電気および熱エネルギ−を取り出す装置をいい、その構造は一般的には、電解質を介してその両側に設けた2つの電極を水素ガスなどの燃料あるいは酸素ガスまたは空気などの酸化剤を供給するための供給路を設けた2つのセパレ−タで挟持された単セルを基本構造とする。高出力を必要とする場合には、単セルを直列に複数積層したスタック構造とし、スタックの両端に設けた集電板で集電する。この発電の際に発生する熱エネルギーは、セパレータの冷却水の回路
を流がれる冷水を温水とすることで外部に取り出すものである。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。以下において、部および%は特に説明のない限り、すべて重量基準である。
本発明の三酸化硫黄ガスにより表面改質された樹脂成形板の性能評価方法及び評価基準を以下に述べる。
〔表面改質後のスルホン酸基由来の硫黄原子数%の算出〕
改質前及び改質後の樹脂成形板の表面を、エネルギー分散型X線分析装置(JED−2200、日本電子製)を用いて、100倍の倍率で元素分析を行い、硫黄原子の原子数%を測定した。その際、金属蒸着は行わない。なお必要により帯電防止を行う。表面改質前と表面改質後に測定して得られた数値の差分を算出する。実際には、処理前の樹脂成形板から少量サンプリングを行い測定し、処理後に同様にサンプリングして測定する。測定方法としては、水素を除く炭素、酸素、硫黄における硫黄原子数%の値を用いる。具体的な算出法としては、式1を用いる。式1;差分=表面改質後の硫黄原子数%−表面改質前の硫黄原子数%。なお差分としては、好ましくは+0.1〜+4.0であり、より好ましくは+0.5〜+2.0である。この差分の値が、+0.1〜+4.0であれば、親水性に優れ、しかもその効果を長期にわたって維持することができる。
〔水濡れ性評価〕
改質後の樹脂成形板の表面の接触角を、イオン交換水を用いた液滴法にて測定した。用いた機械は、協和界面科学製CA−Z型である。測定5回の平均値を結果とする。測定雰囲気は、22℃、湿度60%である。一般に濡れ性が良好であるほど、接触角は小さい値を示す。
〔水溶出特性〕
サイズ80mm×80mmの樹脂成形板をそのまま試料片とする。この試料片1枚の重量を測定、その重量の20倍量のイオン交換水の入ったフッ素樹脂製容器に入れ封をし、この容器を60℃の乾燥器に入れ、100時間浸積試験を行う。その後、室温まで徐冷し試料片を取り出す。容器内に残ったイオン交換水の電気伝導度を測定(堀場製作所製の電気伝導度計、ES−51)する。一般に電解質性の溶出物が少ないほど電気伝導度は小さい値を示す。なお、溶出試験前のイオン交換水の電気伝導度は、0.09mS/Mであった。この値に近いほど、水溶出性能に優れている。なお、用途によって要求される溶出性能は異なるため、目標値もそれぞれ異なる。実際には、スルホン化されていない樹脂成形板の溶出試験後の水の電気伝導度を基準として評価する。
〔表面粗さの測定〕
樹脂成形板の表面の粗さを、JIS−B0601の準拠した方法で、小坂研究所製SE−3500K型で測定した。プローブ半径2μmで3回測定し、その平均値を結果とする。測定雰囲気は、22℃、湿度60%である。
〔改質用の樹脂成形板のAの作製〕
ビニルエステル系熱硬化性樹脂23重量%と炭素充填材77重量%からなる成形材料を所定量取り出し、平面板金型に充填し、圧縮成形機で、圧力200kgf/cm(ゲ−ジ圧力)、上型150℃、下型145℃、成形時間5分の条件で成形し、幅200mm、長さ200mm、厚み2mmの樹脂成形板を得る。この板から幅80mm、長さ80mmのサイズの板を切り出す。これを樹脂成形板Aとする。
〔改質用の樹脂成形板のBの作製〕
PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂20重量%と炭素充填材80重量%からなるシート状の成形材料を、室温の平面板金型に充填し、320℃の熱板の間のはさみ、溶融させた後、圧縮成形機で、圧力300kgf/cm(ゲ−ジ圧力)、成形時間10分の条件で成形し、次いで金型を20℃の冷却板の間にはさみ、室温まで冷却、脱型、幅100mm、長さ100mm、厚み2mmの樹脂成形板を得る。この板から幅80mm、長さ80mmのサイズの板を切り出す。これを樹脂成形板Bとする。
<燃料電池用セパレータとしての性能評価>
本発明により表面改質された燃料電池用セパレータの性能を評価する。
〔改質用の樹脂成形板のCの作製(燃料電池用セパレータ)〕
ビニルエステル系熱硬化性樹脂23重量%と炭素充填材77重量%からなる成形材料を所定量取り出し、燃料電池セパレータ用金型に充填し、圧縮成形機で、圧力400kgf/cm(ゲ−ジ圧力)、上型150℃、下型145℃、成形時間5分の条件で成形し、幅80mm、長さ80mm、厚み3mmの燃料電池セパレータを製造した。これを樹脂成形板C(燃料電池セパレータ)とする。なお、詳細な形状は、財団法人日本自動車研究所(JARI)から提案されている実験用燃料電池用セパレータ(幅80mm×長さ80mm)と同寸法である。片面は平板状で、もう一面にガス流路溝がある。このガス流路面のサイズは、52mm×52mmである。
[ 燃料電池セル外での水濡れ性(排水性)の評価 ]
まず、燃料電池セルに組み付ける前に、簡易な方法により排水性を評価した。
試料を水平な台上に置き、電極流路溝に注射器及び注射針を用いてイオン交換水を一滴(0.025g)、ガス流路溝上5mmの高さから滴下する。測定値として、10秒後に溝内に展開した長さを測定し、5回測定して得られた値の平均値を用いた。測定雰囲気は、22℃、湿度60%であった。
この時、溝内が親水性で水との濡れ性が優れる場合には、速やかに水が展開する。その時の排水性の目安は、20mm以上であれば濡れ性が優れると判断される。また10mm以下であれば溝部が水との濡れ性が劣ると判断される。この場合には、水は滴下した直後のままの状態を保持する。より望ましくは、30mm以上である。
水滴が速やかに溝内に展開する場合には、溝を詰まらせることなく安定した排水性が期待できる。一方、水滴が速やかに溝内に展開しない場合には、溝を詰まらせ、燃料ガス等の供給及び水の排出が不安定となり発電特性に悪影響を与える可能性が高くなる
[ 燃料電池セル内での排水性の評価(発電性試験)]
前述の燃料電池セパレータ2枚と固体高分子電解質膜1枚、ガス拡散電極2枚を組み合わせて単セルの燃料電池組み立て、発電特性を評価した。セル温度80℃、加湿ガスの露点温度80℃、水素ガス利用率40%、空気利用率70%、電流密度0.2A/cm にて発電させた。24時間経過後、その後1時間の電圧測定を行い、平均電圧と、電圧値変動の標準偏差を算出した。
なお電圧は、高く安定している方が望ましい。なお排水性に劣り、ガス流路が水で閉塞した場合には、電圧値の変動と低下するため、本法にて排水性ならびに、樹脂成形板の表面改質状態の良否が判断できる。
実施例1
まず、前記樹脂成形板A一枚の片面のみを、塩化ビニル樹脂系粘着フィルムによりマスキング行う。この時のマスキング面積は、全表面積の約48%である。次いで乾燥機にて70℃で1時間乾燥してから、この成形板を55℃に加温された内容積2Lの三酸化硫黄ガス接触用のガラス製処理容器に挿入、固定、容器の蓋を閉める。次に、露点−70℃以下の温度55℃の乾燥窒素を8L/分で2分間流通した後、−750mmHgの減圧条件で2分処理した後、乾燥窒素で常圧に戻す。この作業を合計2回実施しながら成形品及び容器内部の水分除去を行う。この時の処理容器の外へ排出された乾燥窒素の露点は、−55℃であった。次に露点−70℃以下の乾燥窒素ガスと三酸化硫黄ガスを混合し、濃度1容量%に調節された温度55℃の混合ガスを2L/分で10分間流通する。次に、露点−70℃以下の温度50℃の乾燥窒素を8L/分5分間流通する。この時の処理容器の外へ排出された乾燥窒素中の三酸化硫黄濃度は、0.01体積%以下であるのを確認した。次に処理容器から取り出し、室温のイオン交換水0.5Lの入ったポリエチレン製容器にて約1時間浸積洗浄した。水切り後、マスキングフィルムを除去する。次に90℃のイオン交換水0.5Lの入ったポリエチレン製容器にて30分間浸積洗浄を行う。この作業を合計3回行う。最後に、乾燥機にて70℃で1時間乾燥して三酸化硫黄ガスにて表面改質された樹脂成形板A−1を得た。
この成形板表面の硫黄原子数%、水濡れ特性、水溶出性、表面粗さを評価した。結果を表−1に示す。
実施例2
混合ガス中の三酸化硫黄ガスの濃度0.5容量%にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。この様にして樹脂成形板A−2を得た。この成形板についても、実施例1と同様に、硫黄原子数%、水濡れ特性、水溶出性、表面粗さを評価した。結果を表−1に示す。
実施例3
処理する樹脂成形板を、成形板Bにした以外は、実施例1と同様の操作を行った。この様にして樹脂成形板B−1を得た。この成形板についても、実施例1と同様に、硫黄原子数%、水濡れ特性、水溶出性、表面粗さを評価した。結果を表−1に示す。
比較例1
樹脂成形板Aの表面をマスキングしない以外は、実施例1と同様の操作を行った。この様にして樹脂成形板A−3を得た。この成形板についても、実施例1と同様に、硫黄原子数%、水濡れ特性、水溶出性、表面粗さを評価した。結果を表−1に示す。
比較例2
工程2の処理容器内での脱水処理を行わず、処理容器内のガス露点が+10℃のまま処理した以外は、実施例1と同様の操作を行った。この様にして樹脂成形板A−4を得た。この成形板についても、実施例1と同様に、硫黄原子数%、水濡れ特性、水溶出性、表面粗さを評価した。結果を表−1に示す。
実施例4
まず、前記樹脂成形板C(燃料電池セパレータ)の両面を平均粗さRa=0.9μm付近になるようにガラス粉末を用いてブラスト処理する。次に流路溝以外の部分すべてを、塩化ビニル樹脂系フィルムによりマスキング行う。この時のマスキング面積は、全表面積の約63%である。この樹脂成形板を2枚用意する。次いで乾燥機にて70℃で1時間乾燥してから、この成形板を55℃に加温された内容積2Lの三酸化硫黄ガス接触用のガラス製処理容器におよそ10mmの間隔で平行になるように固定、容器の蓋を閉める。以降実施例1と同様の操作を行った。なお洗浄については、1枚ずつ個別に行う。この様にして樹脂成形板C−1を2枚得た。この成形板については、硫黄原子数%、水濡れ特性、水溶出性、表面粗さに加え、排水性、燃料電池発電性を評価した。結果を表−2に示す。
実施例5
混合ガス中の三酸化硫黄ガスの濃度0.5容量%にした以外は、実施例4と同様の操作を行った。この様にして樹脂成形板C−2を2枚得た。実施例4と同様に硫黄原子数%、水溶出性に加え、排水性、燃料電池発電性を評価した。結果を表−2に示す。
実施例6
混合ガス中の三酸化硫黄ガスの濃度2.0容量%にした以外は、実施例4と同様の操作を行った。この様にして樹脂成形板C−3を2枚得た。実施例4と同様に硫黄原子数%、水溶出性、表面粗さに加え、排水性、燃料電池発電性を評価した。結果を表−2に示す
比較例3
樹脂成形板Cのマスキングしない以外は、実施例4と同様の操作を行った。この様にして樹脂成形板C−4を2枚得た。この成形板についても、実施例4と同様に、同様に硫黄原子数%、水溶出性、表面粗さに加え、排水性、燃料電池発電性を評価した。結果を表−2に示す。
比較例4
工程2の処理容器内での脱水処理を行わず、処理容器内のガス露点が+10℃のまま処理した以外は、実施例4と同様の操作を行った。この様にして樹脂成形板C−5を2枚得た。この成形板についても、実施例4と同様に、硫黄原子数%、水溶出性、表面粗さに加え、排水性、燃料電池発電性を評価した。結果を表−2に示す。
比較例5
前記樹脂成形板Cの両面を平均粗さRa=0.9μm付近になるようにガラス粉末でブラスト処理する。次に、工程4の洗浄及び乾燥のみを実施例4と同様に行い、三酸化硫黄ガスで改質されていない樹脂成形板C−0を2枚得た。
Figure 0005029875
表−1に記載の結果から明らかなように、実施例1の表面改質法で得られた樹脂成形板は、親水性が良好で、表面粗さも低く高品質、かつ水溶出性も良好である。よって、高品質な、三酸化硫黄ガスで改質された樹脂成形板が得られることが解る。
実施例2及び3で得られた成形板も、親水性が良好で、表面粗さも低く高品質、かつ水溶出性も良好であった。
一方、比較例1で得られた樹脂成形板は、工程1のマスキング処理を行わないため、水水溶出性に劣る。
比較例2で得られた樹脂成形板は、工程2の脱水処理を行わないため、三酸化硫黄ガスによる表面改質が効率良く行われず、親水性がやや劣る。さらに、表面粗さが増大し、外観品質にも劣る成形板であった。
Figure 0005029875
表−2に記載の結果から明らかなように、実施例4で得られた樹脂成形板は、親水性が良好で、表面粗さも低く高品質、かつ水溶出性も良好である。さらに、燃料電池セパレータ性能を評価した場合、排水性に優れ、固体高分子型燃料電池の単セルでの発電試験においても、電圧の振れが少なく出力(電圧)が安定し、発電特性も良好であった。
実施例5及び6で得られた樹脂成形板も、親水性が良好で、表面荒れも少なく高品質、かつ水溶出性も良好である。同様に排水性に優れ、固体高分子型燃料電池の単セルでの発電試験においても、電圧の振れが少なく出力(電圧)が安定していた。
一方、比較例3で得られた樹脂成形板は、工程1のマスキング処理を行わないため、水水溶出性に劣るものであった。単セルを複数組み合わせた、スタックとする場合には、水溶出性能の影響により、システムのトラブルを発生させる恐れがある。
比較例4で得られた樹脂成形板は、工程2の脱水処理を行わないため、三酸化硫黄ガスによる表面改質が効率良く行われず、親水性がやや劣る。さらに、表面粗さが増大し、外観品質にも劣る。さらに、同様に燃料電池セパレータ性能を評価した場合、排水性がやや劣り、同様な条件で発電させた場合、出力(電圧)が不安定であった。
比較例5で得られた樹脂成形板は、洗浄処理のみであるため、親水性に劣る。さらに、同様に燃料電池セパレータ性能を評価した場合、排水性が劣り、同様な条件で発電させた場合、出力(電圧)が不安定であった。

Claims (7)

  1. 樹脂を構成成分として含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形板と、三酸化硫黄ガスを接触させ、該成形板表面を改質する方法であって、工程1、工程2、工程3及び工程4を順次実施し、該樹脂成形板表面における、三酸化硫黄ガスと樹脂成形板との反応に由来し、エネルギー分散型X線分光法により測定される硫黄原子数%の、表面改質前と表面改質後との差分が+0.1〜+4.0であり、工程3の三酸化硫黄ガス濃度が、0.1〜5体積%であることを特徴とする三酸化硫黄ガスによる樹脂成形板の表面改質方法。
    (1)工程1;成形板のマスキング工程
    (2)工程2;成形板を、三酸化硫黄ガスを接触させるための処理容器内に挿入、固定した後、該容器内の水分除去工程
    (3)工程3;成形板を、三酸化硫黄ガスと希釈用乾燥ガスとの混合ガスに接触させる工程
    (4)工程4;次いで、該成形板を洗浄する工程
  2. マスキングにより三酸化硫黄ガスと接触しなかった部位の硫黄原子数%の前記差分が、+0.1未満である請求項1記載の樹脂成形板の表面改質方法。
  3. 前記工程3の三酸化硫黄ガスと接触させる時の処理容器内の雰囲気温度が、30〜80℃であり、接触時間が、1〜30分である請求項1記載の樹脂成形板の表面改質方法。
  4. 前記工程4の洗浄工程が、60〜100℃の温水による洗浄工程である請求項1記載の樹脂成形板の表面改質法。
  5. 前記希釈用乾燥ガスの露点が、−50℃以下である請求項1記載の樹脂成形板の表面改質方法。
  6. 前記工程2の処理容器内での樹脂成形板の固定方法として、一つの処理容器内に複数の成形板を5mm以上の間隔で平行に固定する請求項1記載の樹脂成形板の表面改質方法。
  7. 前記樹脂成形板が、燃料電池用セパレータである請求項1記載の樹脂成形板の表面改質方
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