JP3994496B2 - リチウムイオン2次電池及びその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン2次電池及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、充放電サイクル寿命が向上されたリチウムイオン2次電池及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、各種用途にリチウムイオン2次電池を使用するために、そのサイクル寿命を向上させることが要望されている。例えば、特開平4−112460号公報には、正極と負極との間に電解質を含浸させたゲル状電解質を介在させることにより、デンドライトの析出を防止し、サイクル寿命を向上させる技術が開示されている。
【0003】
また、特開平9−22726号公報には、マイクロポーラスなポリオレフィンシートの両面に、電解質を保持したポリマーが配された構造が開示されている。これによれば、誤使用の際にポリオレフィンの融解によりリチウムイオンの透過が妨げられ、電池機能を停止するので、安全性が確保されるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術のうち、正極と負極との間に電解質を含浸させたゲル状電解質を介在させたものでは、高温でこのゲル状電解質が流動化し、正極、負極が短絡してしまうという問題があった。
【0005】
また、マイクロポーラスなポリオレフィンシートを使用する場合、ポリオレフィンのポーラス部でデンドライトの生成の可能性があり、正極、負極が短絡してしまうという問題があった。
【0006】
従って、いずれの場合にもサイクル寿命を十分向上させることができなかった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、充放電サイクル寿命が向上されたリチウムイオン2次電池及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、リチウムイオン2次電池であって、融点200℃以下のポリオレフィンと電解質を保持したポリマーとが均一に、かつ前記ポリマーが、ポリオレフィン間に充填されるように分散しているセパレータを有し、前記セパレータは、細孔を有さず、リチウムイオンは、前記電解質を保持したポリマーを移動することを特徴とする。
【0009】
また、上記リチウムイオン2次電池の製造方法であって、粒径が100μm以下で融点が200℃以下のポリオレフィン粒子と電解質を保持するポリマー粒子とを均一に混合する工程と、この混合物を用いて10〜100μmの厚さのシートを形成する工程と、このシートを介して正極および負極を対向配置させた後、このシートに電解液を含浸する工程と、を有し、ポリマー粒子が、ポリオレフィン粒子間に充填されるように分散しており、前記シートは、細孔を有さず、リチウムイオンは、前記電解質を保持するポリマー粒子を移動することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0011】
図1には、本発明に係るリチウムイオン2次電池に使用されるセパレータの例が示される。図1において、セパレータは、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン粒子10が、PVDF−HFPやPAN等、電解液を含有して膨潤する性質を有するポリマー粒子12とともに均一に混合された構造となっている。
【0012】
ポリオレフィン粒子10は、100μm以下の粒径を有している。材質としては、融点が200℃以下であることが望ましく、例えば上述のPEあるいはPPの粒子が好適である。なお、ポリオレフィン粒子10は、図に示されるような粒子状に限らず、繊維状とすることも可能である。
【0013】
また、ポリマー粒子12としては、PVDF−HFP等が使用される。これらは、電解液を含浸させると膨潤する樹脂である。
【0014】
これらのポリオレフィン粒子10及びポリマー粒子12を混合し、10〜100μmの厚みのシートを形成し、セパレータとする。なお、ポリオレフィン粒子10と、ポリマー粒子12との混合割合は、ポリマー粒子12中に電解液を含浸させた状態で、ポリオレフィン粒子:ポリマー粒子(含電解液)=2:8〜7:3が好適である。このようなセパレータは、まずポリオレフィン粒子10とポリマー粒子12とを均一に混合し、この混合物から上記厚さのシートを作製し、これに電解液を含浸することによって製造する。
【0015】
以上のようにして構成した本発明に係るリチウムイオン2次電池のセパレータは、高電流で充放電を実施しても、デンドライトの生成がなく、これによる短絡を防止することができる。これは以下の理由によるものと考えられる。
【0016】
従来のセパレータは、図2に示されるように、基材14に多数の細孔16が設けられている。リチウムイオンはこの細孔16を通過していく。しかし、図2に示される従来のセパレータでは、リチウムイオンは基材14に一定密度で設けられた細孔16のみを通過していく。従って、セパレータの両面側の電位差は、この細孔16の部分で生じることになる。すなわち、リチウムイオン2次電池に大きな充放電電流を流した場合には、この細孔16の部分のみでリチウムイオンが移動し、この部分に局所的に大きな電流が流れる。このため、リチウムイオンが通過する細孔16の出口側での電位が局所的に大きく低下し、リチウム電位まで低下する可能性がある。ここの電位がリチウム電位まで低下すると、リチウムイオンは金属リチウムとなり、これが発達してデンドライトとなる。このデンドライトによりリチウムイオン2次電池内部でセパレータの短絡が生じる。
【0017】
これに対して、図1に示された本発明に係るセパレータでは、ポリオレフィン粒子10の間すなわちポリマー粒子12が充填された部分を、比較的自由にリチウムイオンが移動することができる。しかもこの移動方向は、図2に示された例に比べ様々な方向が可能である。従って、大きな充放電電流を流した場合にも、局所的に大きな電流が流れることを防止できる。すなわち、本発明においては、図2に示された細孔16を、セパレータ全体に均一に分散したことになり、このため、セパレータ中の電流密度の均一化を図ることができ、局所的に大きな電流が流れることを防止することができている。このため、リチウムイオンが移動する際のセパレータの下流側で、電位がリチウム電位まで低下することがなく、デンドライトの発生を防止することができている。
【0018】
また、図1に示されたセパレータでは、ポリオレフィン粒子10として、融点が200℃以下のPEやPPが使用されているので、仮に、リチウムイオン2次電池内に局所的な電流密度の上昇が生じ、局所的に温度が上昇した場合でも、これらのポリオレフィン粒子10が溶融し、セパレータの目を詰める。この結果、その部分でのリチウムイオンの移動を停止する。これにより、局所的な電流密度の上昇を抑制でき、シャットダウン機能を発揮する。
【0019】
以下、本発明に係るリチウムイオン2次電池のセパレータの具体例を実施例として説明する。
【0020】
実施例.
平均粒径10μmのPE8.5gとPVDF−HFP1.5gとTHF20gとを50℃で1時間混合し、その後室温まで冷却した。次に、ドクターブレード法により薄膜を形成し、80℃で乾燥させた。これにより30μmの厚さのセパレータを得た。
【0021】
正極としてLiMn24、負極として金属リチウムを使用し、上述のセパレータを介して対向配置させた。これを、1molLiBF4−EC:DEC=1:1の電解液に浸漬してリチウムイオン2次電池を作製した。なお、上記正極は、LiMn24にカーボンブラックを10%添加し、N−メチルピロリドン(NMP)中で10分攪拌して正極ペーストとし、この正極ペーストから形成したものである。この正極は、カーボンブラックが十分分散されていないため、平均100μm、最大300μmの凹凸が存在した。この凹凸を有する正極を用いて充電電流を増加させ、電気特性を調べた。
【0022】
なお、比較例として、従来のPE性の多孔質膜とPVDF−HFPを電解液で膨潤させたポリマー粒子のみから構成したセパレータとをあわせて評価した。
【0023】
充電電流を増加させていった場合、PEの多孔質膜で形成されたセルの場合には、5Cの電流値で短絡が発生した。また、PVDF−HFPを電解液で膨潤させたセパレータでは8Cの電流値で短絡が発生した。これに対して、上述した本発明に係るセパレータでは、20Cの電流値でも短絡は発生しなかった。
【0024】
PVDF−HFPを電解液で膨潤させたセパレータでは、もともとリチウムイオンを通過させるので、シャットダウン機能がないうえ、局所的な電流密度の上昇により温度が高くなると、ゲルの流動化により、電極同士の短絡が発生する。このため、本発明に比べて小さな電流で短絡が発生するものと考えられる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ポリオレフィン粒子とポリマー粒子とを均一に混合し、電流密度の均一化を図っているので、局所的な高電流を防止でき、デンドライトの発生を抑制することができる。この結果、充放電サイクル寿命を向上させることができた。
【0026】
また、局所的に電流密度が上昇した場合にも、温度の上昇により、ポリオレフィン粒子が溶融し、リチウムイオンの通過を抑制するシャットダウン機能を有するので、局所的な大電流による故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るリチウムイオン2次電池に使用されるセパレータを示す図である。
【図2】 従来における細孔を有するセパレータを示す図である。
【符号の説明】
10 ポリオレフィン粒子、12 ポリマー粒子、14 基材、16 細孔。

Claims (2)

  1. 融点200℃以下のポリオレフィンと電解質を保持したポリマーとが均一に、かつ前記ポリマーが、ポリオレフィン間に充填されるように分散しているセパレータを有し、
    前記セパレータは、細孔を有さず、リチウムイオンは、前記電解質を保持したポリマーを移動することを特徴とするリチウムイオン2次電池。
  2. 粒径が100μm以下で融点が200℃以下のポリオレフィン粒子と電解質を保持するポリマー粒子とを均一に混合する工程と、この混合物を用いて10〜100μmの厚さのシートを形成する工程と、前記シートを介して正極および負極を対向配置させた後、前記シートに電解液を含浸する工程と、を有し、前記ポリマー粒子が、ポリオレフィン粒子間に充填されるように分散しており、
    前記シートは、細孔を有さず、リチウムイオンは、前記電解質を保持するポリマー粒子を移動することを特徴とするリチウムイオン2次電池の製造方法。
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