JP3649743B2 - 陽極の窓領域が薄いモノリシックシリコン膜により形成される化学線源 - Google Patents

陽極の窓領域が薄いモノリシックシリコン膜により形成される化学線源 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は一般に化学線発生装置、特に真空内で始まる電子ビームが薄膜窓を貫通し、次いで窓の非真空環境側にある媒体に貫入する、化学線発生装置に関する。
背景技術
化学線は、重合、架橋、滅菌、移植等のような種々の環境で化学反応を促進又は誘発するのに広く用いられている。かかる目的の化学線を発生するには、陰極線管(CRT)構造体の一端にある陰極線銃から電子を放出し、放出電子をCRT構造内にある真空を通して加速し、次いで電子を窓領域の、極めて薄い陽極に向ける。この薄い陽極に衝突する電子は窓を通り、次いでCRT構造を囲繞する媒体内の原子及び/又は分子に当たって化学線を発生する。かかる電子ビーム衝撃により発生される化学線は、他の手段では誘発が極めて困難な化学反応を直接又は間接に触媒できる。媒体の内部に向かって衝突する電子ビームにより化学線が発生され、また極高パワー密度が電子ビームにより得られるので、このようにして化学線を発生すると、同等の性能をもたらす他の源よりかなり低コストの高エネルギー放射線源が得られる。
本出願人の一人により申請された出願に付き1984年8月28日に付与された「電子ビーム窓の製作方法」と題する米国特許第4468282号(以下、282特許)には、かかるCRT構造用の膜窓の製造方法が記載されている。該方法は、先ず原子番号の低い耐火材料の薄膜を基体に付着し、次いで基体の一部を腐食して薄膜のみを残すようにするものである。特に282特許が記載するところは、厚みが1ミクロンから数ミクロンの炭化珪素(SiC)、窒化硼素(BN)、炭化硼素(B4C)、窒化珪素(Si3N4)又は炭化アルミニウム(A14C3)の薄膜を化学蒸着法(CVD)を用いて付着するものである。282特許が更に記載するところは、薄膜を(100)配向の珪素(シリコン)ウェーハ基体、或いはタングステン、モリブデン又はシリコンから成って良い、適宜に選択された多結晶基体に付着することである。上に列挙された材料の何れかから、このようにして製作された薄膜は、エネルギーが10から30キロ電子ボルト(KeV)の電子に対して透過性があり、不活性で、ピンホールが無く、高い機械的強度を有し、適切な条件で付着されると残留応力が最小である。膜窓に用いられる薄膜は厚さが数ミクロンと薄くても、空密で機械的が極めて強く、大気圧に耐え、同時に薄膜を通る電子ビームの通過に付随する熱応力と加熱に耐えるものでなければならない。
282特許に開示された薄い膜窓の製作で経験される困難は、適切な材料の殆どに付いて云えるが、完全な薄膜の成長が難しいことである。したがって、282特許により製作される薄膜は、1平方センチメートル(cm2)当たり1欠陥の欠陥をもつ有意の確率がある。かかる欠陥は膜を弱め、特に、膜の一方の側の大気圧と他方の側の真空との間の圧力差によって薄膜にかかる高い負荷の下では、弱点一つでも電子ビーム窓を破壊するのに充分な場合がある。更に、電子ビーム照射と、電子ビームが薄膜に衝突し、それを通過することによる極薄膜の加熱、そして窓に跨る圧力差が与える、極めて高い機械的ストレスが複合して影響し、薄膜内の欠陥が成長、伝搬することがある。以上の全ての要因が、膜内の欠陥を成長せしめ、ついには薄膜の決定的破損をもたらす。
更に、282特許が同定する薄膜材料のうち幾つか、即ちBNやSi3N4等は、種々の理由で望ましくない絶縁体である。例えば、x線平板印刷で観測されるように、電子ビーム又はx線照射に曝されると、BN薄膜やSi3N4薄膜は、薄膜内に色中心が現れることから分かる欠陥を急速に生じる。更に、累積する電子ビームが増大すると、BN又はSi3N4から成る薄膜は時間の経過と共に急速に塑性変形される。
薄膜窓を構成する適切な材料は、282特許には開示、記載されていないが、それはシリコンである。シリコンの原子番号は、それが構成するシリコン窓を電子ビームが通過できるほど低い。また、シリコンは、電子ビームの通過によって窓に集まるエネルギーを消散するのに適当な程度の熱伝導度を有する。更に、入射電子ビームのエネルギーが、化学線を発生するのに通常要するエネルギーよりはるかに高いエネルギー値である125eVを越えなければ、シリコン膜窓は電子ビーム照射により破損されることがない。しかしながら、シリコンから成る薄膜の膜窓は、欠陥が無く、所要の厚みを以て製作された場合にのみ、この用途に対して有用となる。
極薄シリコン膜を製作するのに通常用いられる方法は、純粋のシリコン材料をドープして生ずる効果を利用する。薄いシリコン膜を製造する最も一般的な方法では、シリコンは硼素(ボロン)で高度にドープされ、次いでエチレンジアミンで腐食される。しかしながら、このようにして製造されたシリコン薄膜は内部応力が高い。かかるシリコン薄膜内の応力は、薄膜をゲルマニウムでもドープすると低下する。しかしながら、ゲルマニウムでドープしても、シリコン薄膜は高い転位を示す。更に、シリコン薄膜をこのように製作するのに用いられる腐食剤、エチレンジアミンは発ガン性が高く、他の多くの面でも有毒である。
極薄シリコン膜を製作する代替的方法は、適切な電気的バイアスを用いる電気化学的エッチング(腐食)に頼り、p型シリコン材料とn型シリコン材料の間の接合部(ジャンクション)で腐食が停止するようにする。電気化学的腐食を用いることにより少量のシリコン膜を製作することはできるが、この方法は膜の大量生産には適していない。p型とn型のシリコン材料間の接合部を形成するのに要するシリコン材料の極めて重い(深い)ドーピングは無数の転位の生成をもたらし、結果としてできる薄膜の強度が低下する。加熱され、同時に電子ビーム窓が蒙るような大きい機械的応力下に置かれると、膜内の転位が凝集して割れを生じ、遂には膜の決定的破損に到ることがある。
発明の開示
本発明の一目的は、真空に始まる電子ビームを窓の非真空環境側にある媒体に貫入させるようにした、改良された薄膜窓を提供することにある。
本発明の他の目的は、真空内に始まる電子ビームを窓の非真空環境側にある媒体に貫入させるようにした、欠陥の無い薄膜窓を提供することにある。
本発明の他の目的は、真空内に始まる電子ビームを窓の非真空環境側にある媒体に貫入させるようにした、信頼性のある薄膜窓を提供することにある。
本発明の他の目的は、真空内の始まる電子ビームを窓の非真空環境側にある媒体に貫入させるようにした、耐久性のある薄膜窓を提供することにある。
本発明の他の目的は、真空内に始まる電子ビームを窓の非真空環境側にある媒体に貫入させるようにした、経済的に実用性が高い薄膜窓を提供することにある。
本発明の他の目的は、真空内に始まる電子ビームを窓の非真空環境側にある媒体に貫入させるようにした、製造が簡単な薄膜窓を提供することにある。
本発明の他の目的は、簡単で、耐久性が有り、且つ信頼性のある化学線源を提供することにある。
本発明の他の目的は、製造が容易で、実用的な化学線源を提供することにある。
本発明の他の目的は、化学線源の更に新たな用途を特定することにある。
簡単に云うと、本発明による化学線源は、第一の端部に陰極線銃が取り付けられた排気陰極線管構造を備える。陰極線銃は、排気陰極線管構造内に電子ビームを放出できる。該第一の端部と陰極線銃から隔てられた、陰極線管構造の第二の端部には、電子ビームが当たる陽極が取り付けられる。該陽極には、薄い、モノリシックな、低応力で無欠陥のシリコン膜により形成された窓領域が設けられる。該窓領域が陰極線管構造に関し与えられた向き(配向)により、陰極線銃から放出された電子ビームは陰極線管構造内の真空を通して加速され、陽極に当たって窓領域を透過又は貫通し、陰極線管構造を囲繞する媒体内に貫入する。
本発明はまた、化学線源において用いられるようにした陽極の製造方法を包含する。陽極を製作する好ましい基体は、腐食停止材料の層を間に介在させた、単結晶シリコン材料の第一の層と単結晶シリコン材料の第二の層を有する。腐食停止材料から遠い方の第二の層の面にはパターン化腐食剤抵抗層が形成され、腐食停止材料から遠い方の第一の層の面には保護腐食剤抵抗層が形成される。そして、第一の層と第二の層の間に介在する腐食停止材料に、第二の層を非等方エッチング(腐食)する。第二の層のエッチングして、基体の第一の層に電子ビーム窓領域を画成する。窓領域が画成された後、基体の第二の層のエッチングにより露出された、腐食停止材料の部分が除去される。こうして、基体の第一の層が提供する薄くモノリシックな、低応力で欠陥の無いシリコン膜から成る電子ビーム窓領域を有する陽極が製作される。こうして製作された陽極は面板(フェースプレート)に接着され、次いで後者を化学線源の陰極線管構造に取り付ければ良い。
これ等及び他の特徴、目的及び利点は、添付する図面を参照して記述される好ましい実施例の以下の詳細な記載から、当業者に理解され、明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
図1は、耐火材から成る薄膜窓領域を含む従来の化学線源の斜視図である。
図2は、薄い電子透過窓領域を有する陽極を、本発明により形成するのに有利に用いられるシリコン・オフ絶縁体(SOI)ウェーハを示す断面図である。
図3aは、図2に示されたSOIウェーハに形成される電子ビーム透過性窓領域を示す断面図である。
図3bは、シリコン層の結晶軸[110]方向に配向してSOIウェーハに形成された電子ビーム透過窓領域の、図3a内線3b−3bに沿って取られた平面図である。
図4aは、電子ビーム透過窓領域がシリコン層の結晶軸[110]方向に配向して形成されたSOIウェーハが、化学線源の面板に接合されるところを示す断面図である。
図4bは、電子ビーム透過窓領域がシリコン層の結晶軸[100]方向に配向して形成されたSOIウェーハが、化学線源の面板に接合されるところを示す断面図である。
図5aは、厚すぎて、所望のエネルギーの電子ビームが有効に貫通されない膜窓領域の、図3b内線5a/5b−5a/5bに沿って取られた断面図である。
図5bは、薄くされた後、横断する強化リブが残る、長さに沿った箇所を除いてその殆どが電子ビームの貫通を許容する程度まで薄くされた、図5aに示される膜窓領域の断面図である。
図5cは、図5の線5c−5cに沿って取られた、強化リブの拡大された例示を提供する断面図である。
図5dは、窓領域と強化リブの、図5b内線5d−5dに沿って取られた平面図である。
図6aは、図2、3a及び3bに示されたSOIウェーハの結晶軸の間の些かな不整列を示す平面図である。
図6bは、図6aの領域6b内に取られた、SOIウェーハの結晶軸の間の僅かな不整列を示す拡大平面図である。
図7は、電子ビーム透過窓の形成中に内部の腐食停止層が除かれる前のSOIウェーハを示す断面図である。
図8は、電子ビーム透過窓領域が形成され、且つ内部の腐食停止層を除去した後のSOIウェーハを示す断面図である。
図9aは、図3aの図示に類似し、窓領域を横切る方向に向いたSOIウェーハの面に跨って形成される冷却ガス溝を例示する、電子ビーム透過窓領域を示す平面図である。
図9bは、冷却ガス溝が形成されたSOIウェーハが図4に示された化学線源の面板に接着されるところを示す、図9a内線9b−9bに沿って取られた窓領域の断面図である。
図10は、接着のために異なる結晶軸に向きを配向した二つのシリコンウェーハを示す平面図である。
図11aは、化学線源の陽極に接着され、材料の発ガン性又は電子付着特性の測定中に試料材料を保持するためセルを創設する板の平面図である。
図11bは、図11a中、線11b−11bに沿って取られた、図11aに図示の板が接着された陽極の断面図で、材料の発ガン性又は電子付着特性の測定中に試料材料を保持するためのセルを示す。
図12は、図11b中、線12−12に沿って取られた陽極と板の接着部の断面図で、試料材料を保持するためのセル内の強化リブを詳細に示す。
図13aは、内部のガスをイオン化するために本発明に従って化学線源を用いる低圧スパッタリング室の平面図である。
化する。
図13bは、図13a中、線13b−13bに沿って取られた低圧スパッタリング室の断面図である。
図14は、排出処理ガス内の反応性化学物質分解するために化学線源を含む真空処理室を示す説明図である。
図15aは、電子感応性材料の露出用に化学線源を用いる高速プロトタイプ作成システムの立面図でる。
図15bは、図15a中、線15b−15bに沿って取られた高速プロトタイプ作成システムの平面図である。
図16aは、巻取り紙(ペーパーウェブ)の照射用に化学線源を用いる紙防水化システムの立面図である。
図16bは、図16a中、線16b−16bに沿って取られた紙防水化システムの平面図である。
図17aは、重合性材料を含む雰囲気の照射用に化学線源を用いるフィルム重合システムの立面図である。
図17bは、図17a中、線17b−17bに沿って取られたフィルム硬化システムの平面図である。
発明を実施する最良の形態
図1に、282特許に記載されているような、従来技術による化学線源を一般的参照符号20を付して示す。その参照により、282特許の開示する内容が本明細書に完全に記載されているものとする。化学線源20は、一端26に陰極線銃24が取り付けられた排気陰極線管構造22を有する。化学線源の動作中、陰極線銃24は電子ビームを陰極線管構造22内の真空中に放出する。化学線源20はまた、陰極線銃24から離れた端部32において、面板28が陰極線管構造22に取り付けられている。282特許に記載されているように、従来技術の面板(フェースプレート)28には、陽極36の窓領域34が有り、SiC、BN、B4C、Si3N4又はAl4C3等のような原子番号の低い耐火材料の薄膜により形成されている。
図2はシリコン・オン絶縁体(SOI)ウェーハ42を示す。ウエーハ42は、ウェーハ・ボンディング又はSimox方式により製作して良く、本発明による化学線源20用の陽極を製作するのに用いられる。SOIウェーハ42は、単結晶シリコン材料の上部の第一の層44と単結晶シリコン材料の下部の第二の層46を有する。上部層44と下部層46は何れも通常、単結晶シリコン材料の[100]配向層である。上部層44と下部層46の間に二酸化珪素腐食停止層48が介在され、上部層44を下部層46に接合する。SOIウェーハ42のような基体は、高温で二つの酸化単結晶[100]配向シリコンウェーハを互いに接着(結合)することにより作製される。かかる二つのウェーハを互いに接合した後、熱ボンド方法により形成されたSOIウェーハを注意深くラップ仕上げして、上部層44を形成するウェーハの一方を所望の厚さまで薄くする。面板28用の陽極36を製作するためには、上部層44は数ミクロンから10.0ミクロンまでの厚さで良く、数千オングストロームの厚さの腐食停止層48により下部層46から分離すれば良い。
陽極36を製作するのに適したSOI構造も、Simox方式により製造する。該方法では、酸素を極めて高い濃度で単結晶シリコンウェーハに埋め込み、次いでウェーハを焼鈍し、次いで上部層44を所望の厚さまでエピタキシャル成長させる。SOIウェーハ42を製造するのにどのような方法が用いられようとも、求めるところは、転位が無く、応力が低く、厚さが極めて良好に制御され、腐食停止層48により下部層46から分離された、欠陥の無い単結晶シリコン上部層44を、陽極36製作用SOIウェーハ42が有するようにすることである。
さて図3a及び3bに関し、電子ビーム透過性窓領域52を陽極36用SOIウェーハ42に設けるには、腐食停止層48から最遠の下部層46の殆どの部分を覆う薄い二酸化珪素腐食剤抵抗層56を形成して、これにパターン化開口54を形成し、且つ腐食停止層48から最遠の上部層44の全体を覆う二酸化珪素腐食抵抗層57を形成すれば良い。層56と層57を形成した後、SOIウェーハ42をKOHに浸漬し、SOIウェーハ42の下部層46を貫通して溝59を異方性(非等方性)腐食する。このKOH腐食(エッチング)方法から結果する構造は、図3aの断面図に示されている。図3aに示されているように、溝59の傾斜側壁58は下部層46の[111]面により形成される。下部層46の腐食は腐食停止層48で停止し、上部層44が腐食されないようにする。下部層46が腐食されたら、SOIウェーハ42を周知のようにHF緩衝液に浸漬することにより、腐食停止層を除去して良い。
実験により決定されるシリコン薄膜の破壊応力は、決定される嵩シリコンウェーハの破壊応力より有意に低い。斯く破壊応力が低いのは、膜周囲に応力が集中するためと見られる。図6a及び6bに示されているように、SOIウェーハ42の下部層46間の[110]結晶軸(図6aに矢印82で表示)と腐食抵抗層56に開口54を形成するのに用いられるマスクとの間の微小不整合が、応力集中を発生し得る。一般に、シリコンウェーハの[110]結晶軸の角度配向は、約1.0゜まで正確である。図6aは、SOIウェーハ42の下部層46の真の[110]結晶配向に対する層56内の開口の微小不整合を示す。図6bに拡大して示されているように、腐食中に側壁58に沿って前進する腐食前面は[110]結晶配向方向に揃おうとする。膜の窓領域52において、側壁58の縁部84は顕微鏡的不連続部86から成る。開口54と下部層46の[110]結晶軸との間の完全な整列のみが、不連続部86の形成を阻止する。薄膜窓領域52を応力に曝すと、図6B及び7に示された側壁58の縁部84内の鋭角部は、膜窓領域52の特定箇所に応力を集中し、それにより窓領域52に対して測られる破壊応力値を低下する。
上記方法を用いて薄膜窓領域52を製作すると、腐食停止層48が縁部84を有する下部層46が上部層44から分離されるので、縁部84への応力集中を排除する機会が与えられる。図8に示されているように、緩衝HF溶液内のその除去の間に、腐食停止層48を過剰腐食すると、不連続部86の輪郭と膜窓領域52が滑らかになると共に、下部層46が上部層44から分離される。こうして、その除去中に、腐食停止層48の過剰腐食は、上部層44の窓領域52における応力集中を減ずる。
シリコン・オン絶縁体ウェーハを用いる代わりに、周知の電気化学的腐食(エッチ)停止技術を用いることができる。この方法では、軽くドープしたn−型層、例えば立法センチメートル当たり1〜5x104個のボロン原子の層を、例えば1〜5x1014個の燐原子のp−型基体層上にエピタキシアル成長させる。エッチング中に電圧をn−型層に印加することにより、n−型層を腐食することなく、p−型層をpnジャンクションまで貫通腐食することができる。この方法は、厚みが正確に定められたn−型膜窓領域52を製作するのに用いることができる。
腐食停止層48を有するSOIウェーハ42を用いることのより廉価な代替として、普通のシリコンウェーハ基体片側から時間腐食して所望の厚みを有する膜窓領域52を形成することができる。KOH25〜40%の水溶液、又はTMAH等の適当な腐食剤を含む温度制御浴内の時間腐食を用い、深さが400ミクロンの穴を全ウェーハ面に亘って均一に又は#2ミクロンで有効に形成できることが実験的に分かっている。このような時間腐食を順次行い、各腐食後、窓領域52の厚さを測ることにより、窓領域52に適した特性の膜を得ることができる。基体に膜窓領域52を形成するのに時間腐食を用いる場合は、窓領域52を腐食停止層48が覆わないから、腐食停止層48を除去する必要は無い。
上部層44の薄い、モノリシックな、応力が低く、転位の無いシリコン膜の電子透過性膜領域52は、その厚さが衝突する電子のエネルギーに応じて、数ミクロン(0.3〜5.0ミクロンの範囲で良い)の対で良い。図3bの平面図に示されているように、窓領域52は大凡、長さが1.0インチで、幅が0.2〜5.0インチで良い。窓領域52の向きは下部層46の[100]結晶方向に平行で良く、図3a及び4aに示されたような、角度が52゜の側壁58となる。或いは、図4bに示されているように、窓領域52を[110]結晶方向に平行に向けても良く、図3a及び4aに示された傾斜側壁58とは違って、垂直の側壁となる。
このようにして製作された膜は、応力が低く、欠陥も転位も無い単結晶シリコン材料から成るので、電子ビーム透過性窓領域52に理想的である。したがって、この窓領域52は優れた機械的及び熱的特性をもつ。この窓領域52は二酸化珪素の腐食停止層を腐食しないKOHで腐食して製作できるので、この製造工程は極めて簡単となる。窓領域52の厚さとその均一性の制御は簡単で、下部層46の腐食中ではなく、SOIウェーハ42の製作中に行われる。下部層46と上部層44が結晶配向も熱膨張も等しい単結晶シリコン材料であることは、有益である。例えば、これ等の特性のため、面板28に陽極36を接合する次の接着工程でSOIウェーハ42が比較的高い温度に加熱されても、窓領域52を構成する膜は伸びることがない。
前記のように全体がシリコンから成る窓膜窓領域52は電子ビーム照射されても、電子のエネルギーが125keVを大きく上回らなければ、それにより損傷を蒙ることがない。しかしながら、高温と高応力の下では、結晶転位がなお起こり得る。したがって、膜窓領域52は電気伝導性であり、電子ビームの衝撃中に帯電しない。
面板28の組立
図1に示された面板28を構成するシリコン又は多結晶シリコン基体に、SOIウェーハ42を、窓領域52を含んで接着(結合)するのは容易である。化学線源20の面板28に、厚さが1/8インチから1/4インチの単結晶シリコン、又は多結晶シリコンを用いることができる。図4に示されているように、スリット62は面板28を貫通するので、電子ビームは窓領域52に当たって、化学線源20の陽極36を提供することができる。下部層46を面板28に接着することにより、SOIウェーハ42を、本発明による窓領域52を含んで、面板28に接合することができる。SOIウェーハ42と面板28の熱膨張係数は等しいので、ここでも、SOIウェーハ42と面板28の材料のこの組み合わせで、マッチした接着を得ることができる。したがって、本発明による化学線源20の面板28を構成する全部品の膨張と冷却は均一となり、膜窓領域52は過度な応力を蒙ることがない。
面板28とSOIウェーハ42の下部層46との間の接着を空密にするため、厚さが約1.5〜2.0ミルで、適当な予備成形体に成形又はエッチしたアルミニウム製の薄箔61を面板28とSOIウェーハ42の間に置き、SOIウェーハ42の上に重りを置き、このように組み立てられたサンドイッチを真空、或いは窒素又はアルゴン雰囲気中で数分間、シリコン−アルミニウムの共融温度(約550℃)を僅かに越える温度に加熱し、次いで冷却する。純粋なアルミとシリコンは激しく相互拡散するので、450℃と低い温度で接着が達せられる。良好な接着を形成するためには、実施可能な程度まで低い温度でSOIウェーハ42を面板28に接着するのが有利である。或いは、アルミ−シリコン(Al−Si)材料から成る箔66を用いても良い。しかしながら、Al−Siに対するシリコンの親和力は純粋アルミに対するシリコンの親和力よりやや少なく、SOIウェーハ42を面板28に接着するには、Al−Si共晶が生ずる温度に達する必要がある。SOIウェーハ42を面板28に接着するに際し、下部層46ではなく、上部層44が面板28に対向し、それに接着されるようにSOIウェーハ42を向きを反転しても良い。
SOIウェーハ42を面板28に接着するとき、対向し、互いに接着されるSOIウェーハ42と面板28の面に、厚さが1.0〜3.0ミクロンのアルミニウム被膜72を蒸着すると、一般に良好な結果が得られる。被膜72をSOIウェーハ42の下部層46に施行するとき、窓領域52をアルミが覆わないように適当なマスクを用いるべきである。対向するSOIウェーハ42と面板28の面が充分に平であれば、アルミ箔66はしばしば不要となる。かかる場合には、SOIウェーハ42と面板28を単に圧接し、加熱すれば良い。アルミの代替として、金又は金−ゲルマニウムから成る箔66を用い、SOIウェーハ42を面板28に接着しても良い。金又は金−ゲルマニウムから成る箔66を用いる場合は、SOIウェーハ42を面板28に接着するのに約450℃の温度で済む。或いは、アルミではなく、チタンの被膜72をSOIウェーハ42と面板28に蒸着し、これを用いてSOIウェーハ42を面板28に接着しても良い。
SOIウェーハ42を面板28に、上記のように金属性接着又は金属結合すると、SOIウェーハ42と面板28の間に、電気的連続性又は導通状態が確立される。或いは、シリコン・ツー・シリコン接着又は結合方式を用いることもできる。例えば、Quener et alは、接着面にガラスをスパンして450℃の温度でシリコン対シリコン接着(ボンド)を形成したことを記述している(9th Workpshop on MEMS Systems,IEEE,1996,p.272参照)。しかしながら、かかる非金属接合方式では、SOIウェーハ42と面板28に、信頼性のある電気的連続性が得られない可能性もある。
しばしば、窓領域52を耐酸化性材料で被覆するのが有利である。下部層46を貫通腐食した後、図4aに示された酸化抵抗を得る一方法は、面板28から最遠に位置すべき窓領域52の面に、SiC薄い被膜74を形成することである。上部層44及び/下部層46上にSiC被膜を形成するには、「マイクロプローブ及び電解放出顕微鏡の超硬チップの製造方法」と題する米国特許第5393647号(647特許)に記載されているように、炭素含有媒体内でSOIウェーハ42を加熱すれば良い。647特許を引用により、ここに挿入する。炭素質雰囲気内でSOIウェーハ42を加熱することにより、SOIウェーハ42の保護されていない外部シリコン材料が、数百オングストロームの厚さの、耐酸化性が極めて高いSiC層に転換される。このようにして、SiC層を腐食停止層48から最遠の、SOIウェーハ42の両面に、簡単に且つ容易に形成することができる。膜領域52を構成する膜は、SiCをこうして形成する温度により損傷されることはない。この薄いSiC被膜は、SOIウェーハ42が、面板28に接着されるのを阻止しない。SiC被膜の厚さは、SOIウェーハ42のシリコン材料が炭素質媒体に露呈される温度と時間により、制御が可能である。面板28と対向すべきSOIウェーハ42の面にSiC被膜を望まない場合は、SOIウェーハ42上に二酸化珪素層56又は57を残せば良い。二酸化珪素層56又は57を残すと、SOIウェーハ42の二酸化珪素被覆面上にSiCが形成されない。SOIウェーハ42上にSiCが成長した後、二酸化珪素層を除去すれば良い。
極めて均一で、明瞭な厚さの膜窓領域52を設けると共に、図5aから5dに示されているように、その面積の殆どが10〜30eVのエネルギーの電子ビームによる貫通が可能となる、薄い膜窓領域52を製作することができる。図5aには、所望のエネルギーの電子ビームにより貫通されるのには厚すぎる、上記方式を用いて形成される膜窓領域52が示されている。例えば、厚さが10ミクロンの膜窓領域52である。しかしながら、その場合には、下部層46から最遠の上部層44の面を耐腐食剤性のパターン層で被覆すると共に、SOIウェーハ42の他の面に耐腐食剤層を設け、過剰に厚い窓領域52が窓領域52の最薄まで腐食され、それが電子ビームに透過性となるようにすれば良い。尚、耐腐食剤のパターン層は、窓領域52を機械的に強化する未リブ部76を残す。
このように窓領域52を薄くしてリブ76を形成するには、充分制御された温度に維持されるKOH内で時間腐食を用いて行うか、反応性イオンエッチングを用いて行う。かかる腐食は窓領域52に極めて深くまで貫入する必要はなく、SOIウェーハ42の上部層44は明瞭で、均一な厚さであるので、窓領域52の薄化はこれを正確に、例えば±0.1ミクロンまで制御することができる。図5bの実施例では、窓領域52は数百オングストロームまで薄くされるが、一般には1.0から2.0ミクロンまでで良い。
図5cの拡大図に示されているように、リブ76は、上の例では厚さが10ミクロンである。したがって、リブ76の強度は同じ幅の厚さ1ミクロンのリブのものの100倍となる。図5dに示されているように、リブ76は一般に窓領域52の幅に跨って、即ち窓領域52の長さに対して横方向に延び、したがって長さが1mm以下から窓領域52の幅のに等しい数mmまでとなる。窓領域52の電子ビーム透過性領域は、リブ76の直隣接対の間で90ミクロン幅となる。したがって、窓領域52の有効電子透過性領域は、全窓領域52の90%程度までとして良い。リブ76により窓領域52の強度は約100倍に増大する一方、全電子ビーム透過性領域は窓領域52の90%程度にとどまる。更に、リブ76はまた、窓領域52と陽極36の残部との間の熱伝導性と電気伝導性を高める。したがって、リブ76を用いることにより、強力で且つ比較的薄い窓領域52を製作できる。前記のように、窓領域52はその向きがSOIウェーハ42の[110]又は[100]軸の何れかの方向とすることができる。
図9aは、陽極36の窓領域52に対して横方向に向く、SOIウェーハ42の下部層46に形成された冷却ガス用の複数のV字形溝88を示す。図9bに示されているように、SOIウェーハ42の上部層44を面板28に接着して、化学線源20を囲繞する媒体に溝88を接触させる。このようにして向きが与えられた溝88は、化学線源20の動作中に、窓領域52を冷却する冷却ガスが吹送されるチャネルを提供する。
接着SOIウェーハの配置により、上記したものより有利に陽極36を製作することも可能である。図10に示されているように、上部層44の[100]結晶軸92と下部層46の[100]結晶軸とは、互いに平行である必要はない。二つの(100)配向シリコンウェーハの結晶軸を相互に回転しても良い。図10に示されているように、接着中に下部層46を構成するシリコンウェーハの結晶軸92を、上部層44を構成するシリコンウェーハの結晶軸94に対して45゜に配向することもできる。シリコンウェーハの結晶軸を相互に45゜に配向することにより、一方のウェーハの[110]結晶方向が、他のウェーハの[100]結晶軸と一致する。これにより、一方のシリコンウェーハ内の[110]方向の腐食を、他のシリコンウェーハ内の[100]方向に一致させることができる。単結晶シリコンは[110]結晶軸に沿って割れる傾向があるので、側壁58が上部層44の[100]結晶軸に平行となるように、上部層44と下部層46の結晶軸を配置することにより、窓領域52が割れる傾向を低下することができる。
更に、相互に接着されるシリコンウェーハは結晶方向が異なることがあり、これを有利に用いることもできる。例えば、上部層44のウェーハ配向(100)が方向ではなく、(111)方向である一方、下部層46のウェーハ配向が(100)方向である場合には、上部層44はKOH中の腐食に事実上抗する。かかる場合には、二酸化珪素、耐腐食剤保護層57内のピンホール及び/又は腐食停止層48は、上部層44自体が本質的ににKOHによる腐食に抗することから、KOH腐食中に上部層44内にピットを生成しない。したがって、このようなSOIウェーハ42を用いて製作される窓領域52の歩留まりと信頼性は、本質的に極めて高い。更に、かかる接着SOIウェーハ42内の種々の結晶軸方向の熱膨張係数の小差を有利に用い、要すれば、化学線源20の動作中の膜窓領域52内の張力を発生、又は軽減することもできる。
産業上の適用性
282特許に特定された、従来の化学線源20の用途、即ち熱的インクジェット印刷に加えて、化学線源20は種々の他の用途に有用と思われる。例えば、化学線源20は、発ガン性又は電子付着材料を検出又は特徴付けるBakale理論を応用するのに有用と思われる。(Bakale,et al.,Quasifree Electron Attachment to Carcinogens in Liquid Cyclohexane,Cancer Bioohem.Biophy.,1981.Vol.5,pp.103−109及びG.Bakale,et al.,A Pulse−Radiolysis Technique for Screening Carcinogens,188th National Meeting of the American Chemical Society,Philadelphia,August 26−31参照)。この用途では、化学線源20は、大型ファン・デ・グラーフ発電機又はパルス化フラッシュX線管に置き換えられている。
図11a及び11bに示されているように、検査材料のサンプルを保持する、幅が数ミリで、厚さが高々数百ミクロンに過ぎないセル112が、陽極36の窓領域52に直接一体化される。セル112を作るため、電気伝導性基体114、例えば適切に絶縁が施されたガラス、又はシリコンの面に、一つ又は複数のトラフ116が形成される。電極118を各トラフ116の底部に付着し、それに化学線源20の外部回路とセル112に電極118を接続するリード線122が設けられる。電極118は、セル112の中心点の両側にある各セル112の一部に沿ってのみ延びている。トラフ116と電極を形成した後、基体114をSOIウェーハ42の上部層44に接着し、それにより陽極36内の窓領域52の各々に付きセル112を取り囲む。基体114をSOIウェーハ42に接着するに際し、電極118を窓領域52から電気的絶縁状態に保持する配慮がなされる。
このように構成された各セル112に跨って電子ビームを超高速度で掃引し、電極118と陽極36の間に印加された電場の影響下で、セルに跨ってドリフトするシート状の射出荷電を発生する。以下に詳細に述べられる理由で、サンプル内に射出注入されるエネルギーは、20〜30keV程度と極めて低くて良い。この低電子エネルギーで動作する電子のサンプル内への貫入は、セル112に跨る電子ドリフト長と比較して、無視することができる。
サンプルを担持する液体溶媒は、Bakaleが述べるように、イソオクタンで良い。電極118と陽極の間の電場の勾配10000V/cmに対して、ドリフト速度は105cm/secとなる。したがって、厚さ1.0mmのセル112と印加電圧1000Vに対し、電子のドリフト時間は1.0μ秒である。電子ビームがサンプルに電荷を注入する適当な時間は、この値の1/10、即ち100ナノ秒以上とすべきではない。セル112が掃引電子ビームの方向に沿って1mmの幅であれば、電子ビームの掃引速度104m/secで、電子は時間100ナノ秒の間にサンプルに注入される。窓領域52に跨って電子を磁気的又は静電的に掃引して良い。ビームが達成可能な速度104m/secより一桁速く掃引されると、セル112の厚さ並びに陽極36と電極118に跨って印加される電圧を両方とも殆ど一桁低下することができる。
1.0μAビーム電流に対し、100ナノ秒間にサンプルに注入される電子電荷は0.1ピコクーロンである。サンプル液体中の電子の倍増の後、サンプルに注入された各30ekV電子に対して3000の倍増を仮定すると、ドリフトする電荷は約300ピコクーロンである。この電荷量は、考察下の時間間隔、即ち1.0μ秒の間に、原子機器に用いられるような標準的電荷感応増幅器で極めて容易に検出される。電荷信号の微分が電流を発生し、それを吸収して所望の電子捕獲データが得られる。
サンプルによる電子捕獲を測定するのに、陽極36を形成するシリコン膜を接地電極として用い、正の電圧を電極118に印可して、サンプルに注入された電子と注入電子により発生されるドリフト電荷を引き付ける。この装置により、極めてクリーンな電子信号がイオン電流を伴わずに発生される。要すれば、電極118に印可される電気的極性を反転してイオン崩壊を観測しても良い。
図11a及び11bに示されているように、二つの別個のセル112を電子ビームの経路内に平行に配置することができる。両方のセル112内のサンプル液体は、膜窓領域52に直接接触する。セル112の一方を基準セル112として用い、溶媒だけでなく、発ガン性又は電子付着特性に対して試験される材料を保持しても良い。基準セル112はサンプルセルの側に位置付けられ、電子ビーム照射を受ける。サンプル及び/又は基準液体はセル112を流れることがある。サンプル及び/又は基準液体がセル112を流れると、電子の注入は、サンプルを枯渇すること無く、周期的に繰り返される。
陽極36は、膜窓領域52を含み、図12に示されているように製作されて良い。比較的厚い、例えば厚さ10〜20ミクロンの上部層44を用いることにより、膜窓領域52は図5b〜5dに示されたリブ76に類似するリブ76を含むことができる。図5b〜5dに示されたものと同様、図12に示されたリブ76はSOIウェーハ42の上部層44をエッチングして形成される。膜は1.0ミクロンと薄くて良い。だが、リブ76は膜窓領域52より10倍厚く、1000倍強い。したがって、リブ76は膜窓領域52の幅の僅か10%を占めるものであっても、リブ76は膜の強度を100倍に増大する。リブ76は、セル112に跨って印加される電場に感知される程度には影響を及ぼさない。化学線源20を用い電子捕獲を測定すると、サンプル材料を保持するセルの体積全体に電荷を発生する従来の装置に無い多くの利点が得られる。
化学線源20の他の用途の一つは、半導体産業等でエッチングと付着に用いられる真空室から流出する反応性化学物質の分解である。図14に、ポンプ134により排気される処理室が示されている。ポンプ134は真空マニホールドにより処理室132に連結される。処理ガス入り口ポート138は処理ガスの制御流を処理室132に入れる。流出物が処理室132に逆流するのを阻止するため、真空マニホールド136上のバラストガス入り口ポート142がバラストガスの流れを絞り弁144から、下流にある真空マニホールド136に入れる。
真空処理室から流出する多くのガスが電子を捕獲する。したがって、かかる物質は、化学線源20の陽極36を通して放出される電子に照射され、腐食性又は反応性の少ないより基本的な成分に分解される。この用途では、化学線源20は真空室132の外側に位置付けられる。化学線源20はそれを真空マニホールド136内に位置付けることもできるが、好ましくはポンプ134の排気マニホールド146内の真空環境の全く外側に位置付けられ、それにより分解生成物が処理室132に逆流するのを阻止するようにする。
化学線源20の更に他の用途に、低圧スパッタリング用のイオン化がある。化学線源20は、イオン化開始及び維持に一般に経験される困難に鑑み、それを低圧スパッタリングに用いると有利である。図13a及び13bに示される円筒状のスパッタリング室102は、本発明によりその内部にイオン化放射線を発生する複数の化学線源20を用いるものである。スパッタリング室102に用いられる化学線源は、一対の平行で、丸い板状のスパッタリング電極104の周囲に配列された複数の化学線源20である。化学線源20は図示のように、スパッタリング電極104間に、接線方向に電子を注入しスパッタリング電極104間のイオン化を増大し、イオン化の均一性を高める。図13b内矢印106により表されているように、約50エールステッドのバイアス磁場をスパッタリング電極104と直角に向けて印加すると、スパッタリング電極104間に注入される電子はスパッタリング電極間にあるガスの体積内で循環する。
各化学線源20の窓領域52は多数とし、それによりスパッタリング室102に注入される電子ビーム流を増大することができる。電子ビームは、窓領域52に沿って掃引されるか、窓領域52に沿う一つ又は複数の線に収束されるか、何れでも良い。スパッタリング室102の外側から偏向電場を印加し、窓領域52の電子ビームの位置を制御しても良い。化学線源20はスパッタリング室102内で完全に遮蔽されているので、スパッタリング室102の外側は電気的接地電位となるものと思われる。化学線源20を図13a及び13bに示されているようにスパッタリング室102の壁と一体にすると、図13bではバッテリー108により供給されるものとして図示されているスパッタリング電極104間の電位は、事実上妨害されることは無い。
低圧スパッタリングでは電子の経路は極めて長いので、全電子エネルギーがイオン衝突の際に有効に散逸される。窓領域52を透過する高エネルギー電子により、低圧でも持続性の高いイオンが得られる。例えば、30keVの初期エネルギーで窓領域52を透過するあらゆる電子を、100倍に倍増することができる。窓領域52を高エネルギー電子が透過するので、これ等の電子の軌跡はスパッタリング電極104間の横方向のスパッタリング電場によっては殆ど影響されない。したがって、化学線源20から放出される電子はその軌跡に沿って有意の距離走行し、それによりスパッタリング室102の殆ど全体に均一なイオン化が得られる。化学線源20から放出される電子のエネルギーは、スパッタリング室102内のガス圧等に対し要求されるようにそれを制御することができる。スパッタリング室102内のイオン化の効率と均一性は、横向きの静電的スパッタリング電場を除去した後、スパッタリング電極104間の体積内で放出される光により、それを可視的に観測することができる。
スパッタリング室102は、窓領域52に直近傍に僅かに高いガス圧を提供するように、それを構成することができる。かかる場合には、スパッタリングガスは、化学線源20状の窓領域52と直接接触するので、高度にイオン化される。こうして得られる高度にイオン化されたスパッタリングガスは、拡散してスパッタリング室102の全体に亘って所望度のイオン化を生じる。
化学線源20の他の用途に、CAD設計からの高速プロトタイプ作成がある。レジスト材料内のパターンの露出に紫外線を用いず、図15a及び15bに示されているように、化学線源20の陽極36を透過する電子ビームが、電子感応性材料のシート又は層内のパターンを露出する。電子感応性材料152が、被加工体154の一部を構成するようにしても良い。電子感応性材料152が照射される間、電子ビームは陽極36の窓領域52に沿って掃引されながら変調される。電子感応性材料152内に良好な解像度を得るため、化学線源20は径が小さい電子ビームを用い、電子感応性材料152は実施可能な程度まで窓領域52に近接して配置される。化学線源20からの照射に曝される電子感応性材料は正か負の何れかの像をを発生する。電子感応性材料を電子ビームが直接照射するので、電子感応性材料152のシート又は層は、例えば50ミクロン以上と極めて厚くても良い。二次元(2D)形状を発生するために、パターン化される被加工体154は、図15b内の矢印156で表されているように、陽極36を通って横方向に移動する。
化学線源20の更なる用途には、材料の防水がある。最近の観測が確定したところでは、綿の特性を水が吸収されない程度まで変化することができる。この変化は、綿の繊維をフッ素媒体中に置き、これを電子ビームに露呈することにより、達せられる。かかる露呈で、綿の繊維は疎水性になる。一般に水素、フッ素又は塩素と塩素及びフッ素の混合、又はハロゲン化炭素又はトリクロロエチレン、CH3CCl3、CCl3CF3等の弗化炭化水素も綿を疎水性にするのに用いることができる。
紙は基本的にセルロース繊維であるが、一般に、厚さが約25ミクロンで、高度に多孔質である。したがって、したがって、電子ビームは、エネルギーが約30〜50keVであれば、紙一枚を完全に貫通する。上記のように、化学線源20はかかるエネルギーの電子ビームの発生に充分適している。図16a及び16bは、化学線源20を巻取り紙162の上部に配置し、この紙に陽極36の窓領域52を透過した電子ビームが当たるようにしたものを示す。電子ビームは、陽極36の窓領域52に沿って掃引しても、窓領域52に沿う線に集めるようにしても良い。巻取り紙162を電子ビームで照射すると同時に、巻取り紙162はまた、照射された紙を疎水性にするガスを含んだ雰囲気に曝される。紙を疎水性にするために用いられるガスは、フッ素でも、又はCF、CF6等のフッ素化化合物、又は上に挙げた種のフレオン型化合物でも良い。図16bに矢印164で示されているように、照射中、巻取り紙162は横方向に移動して陽極36を通る。或種の状況の下では、撥水紙も、湿気は吸収しなくても、特殊インクは吸収できるので、特に有利なこともある。
化学線源20の更なる用途にはまた、照射されて硬化し、雰囲気に曝された被加工体の表面にフィルムを形成する有機材料を含んだ雰囲気の照射がある。図17a及び17bに示す化学線源20の陽極36は、破線が表す雰囲気172で囲まれ、この雰囲気がパリレン等の重合性有機材料を含む。電子ビームは、陽極36の窓領域52に沿って掃引しても、窓領域52に沿う線に集めるようにしても良い。陽極36の窓領域52を透過する電子ビームに雰囲気172が曝されると、有機材料が重合され、雰囲気172に曝された被加工体172上にフィルム174を形成する。硬化(重合)中、被加工物172は図17bに矢印178で示されているように移動して陽極36を通り、その間に陽極36に近接する被加工物176上にフィルム174が付着する。このようにして形成できる低誘電率の絶縁性フィルムは、集積回路等の半導体デバイスの製作に用いられる。
以上、本発明を現在のところ好ましい実施例に付いて述べてきたが、かかる開示は純粋に例示的であり、限定的に解釈されるべきでないものと理解されるべきである。例えば、SOIウェーハ42を構成する上部層44と下部層46に、(100)ウェーハ以外の単結晶シリコンウェーハを用いることができる。同様に、腐食停止層48には現在のところ二酸化珪素がより好ましいが、他の材料、例えば窒化珪素、窒素酸珪素、炭化珪素、炭窒化珪素、又はドープ酸化珪素、例えばボロン、燐、アンチモン、砒素、ナトリウム等でドープしたもの等を腐食停止層48に用いることができる。したがって、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正及び/又は代替が、以上の開示を読了した当業者に疑いもなく示唆されるものである。よって、以下に記述する請求項は、本発明の真の精神及び範囲に入る全ての変更、修正又は代替を包括するものと解釈されるべきと意図するものである。

Claims (20)

  1. 化学線源であって、
    排気された陰極線管構造体と、
    前記陰極線管構造体に接続され、前記陰極線管構造体の第1の端部に位置し、電子ビームを放出するよう適合される陰極線銃と、
    前記陰極線管構造体に接続され、前記陰極線銃から離れた前記陰極線管構造体の第2の端部に位置するモノリシック陽極とを含み、前記モノリシック陽極はシリコン材料の第1の層と、シリコン材料の第2の層とを含み、それらの間には二酸化シリコン(“SiO2")材料の腐食停止層が位置し、前記モノリシック陽極はさらに、前記モノリシック陽極の第の層により形成される窓領域を有し、前記窓領域は前記陰極線管構造体上で、前記陰極線銃により放出された電子ビームが陰極線管構造体内にある真空を通じて加速され、かつ前記モノリシック陽極に当って、前記窓領域を透過して陰極線管構造体の周囲の媒体に貫入するように配向される、化学線源。
  2. 前記第の層の窓領域は第1の層に形成される複数のリブにより機械的に強化される、請求項1に記載の化学線源。
  3. 前記窓領域は細長く、強化リブは前記窓領域に跨って横方向に配向される、請求項2に記載の化学線源。
  4. 前記第の層の窓領域はその表面に形成される炭化珪素(“SiC")の被膜を有する、請求項1に記載の化学線源。
  5. 前記モノリシック陽極は前記陰極線管構造体の最先部に配される第の層の表面に跨って形成される複数の溝をさらに含み、前記溝は第の層の前記窓領域を横断する方向に配向され、化学線源の周囲の媒体に接触して、化学線源の動作中に窓領域の冷却を容易にできるよう適合される、請求項1に記載の化学線源。
  6. 前記第1の層は結晶軸を有し、前記第の層の窓領域は前記第の層を通して形成されるにより定められ、前記は前記第1の層の[110]結晶軸に平行に配向された側壁を有する、請求項1に記載の化学線源。
  7. 前記第1の層は結晶軸を有し、前記第の層の窓領域は前記第の層を通して形成されるにより定められ、前記は前記第1の層の[100]結晶軸に平行に配向された側壁を有する、請求項1に記載の化学線源。
  8. 前記第1の層は結晶軸を有し、前記第2の層も結晶軸を有し、前記第1の層の結晶軸は前記第2の層の結晶軸に対して回転される、請求項1に記載の化学線源。
  9. 前記第1の層はウェーハ配向を有し、前記第2の層もウェーハ配向を有し、前記第1の層のウェーハ配向は前記第2の層のウェーハ配向とは異なる、請求項1に記載の化学線源。
  10. 腐食停止材料の層は窓領域の周りで第1の層および第2の層の間から除去されることによって第2の層を第1の層から選択的に分離し、かつ第1の層の窓領域内の応力集中を低下させる、請求項1に記載の化学線源。
  11. 化学線源に含まれるよう適合されるモノリシック陽極であって、前記化学線源は前記モノリシック陽極に加えて、第1の端部にモノリシック陽極が接続される排気された陰極線管構造体と、前記陰極線管構造体に接続される陰極線銃とを含み、前記陰極線銃は陰極線管構造体の前記第1の端部から離れた第2の端部に位置し、かつ電子ビームを放出するよう適合され、前記モノリシック陽極は
    シリコン材料の第の層と、
    前記第の層に接触するSiO2材料の腐食停止層と、
    前記腐食停止層に接触し、かつその上に窓領域が形成される、シリコン材料の第の層とを含み、前記窓領域は前記陰極線管構造体上で、前記陰極線銃により放出された電子ビームが陰極線管構造体内にある真空を通じて加速され、かつ前記モノリシック陽極に当って、前記窓領域を透過して陰極線管構造体の周囲の媒体に貫入するように配向可能である、モノリシック陽極。
  12. 前記第の層の窓領域は第1の層に形成される複数のリブにより機械的に強化される、請求項11に記載のモノリシック陽極。
  13. 前記窓領域は細長く、前記強化リブは前記窓領域に跨って横方向に配向される、請求項12に記載のモノリシック陽極。
  14. 前記第の層の窓領域はその表面に形成されるSiCの被膜を有する、請求項11に記載のモノリシック陽極。
  15. 前記陰極線管構造体の最先部に配されるよう適合される第の層の表面に跨って形成される複数の溝をさらに含み、前記溝は第の層の前記窓領域を横断する方向に配向され、化学線源の周囲の媒体に接触して、化学線源の動作中に窓領域の冷却を容易にできるよう適合される、請求項11に記載のモノリシック陽極。
  16. 前記第1の層は結晶軸を有し、前記第の層の窓領域は前記第の層を通して形成されるにより定められ、前記は前記第1の層の[110]結晶軸に平行に配向された側壁を有する、請求項11に記載のモノリシック陽極。
  17. 前記第1の層は結晶軸を有し、前記第の層の窓領域は前記第の層を通して形成されるにより定められ、前記は前記第1の層の[100]結晶軸に平行に配向された側壁を有する、請求項11に記載のモノリシック陽極。
  18. 前記第1の層は結晶軸を有し、前記第2の層も結晶軸を有し、前記第1の層の結晶軸は前記第2の層の結晶軸に対して回転される、請求項11に記載のモノリシック陽極。
  19. 前記第1の層はウェーハ配向を有し、前記第2の層もウェーハ配向を有し、前記第1の層のウェーハ配向は前記第2の層のウェーハ配向とは異なる、請求項11に記載のモノリシック陽極。
  20. 腐食停止材料の層は窓領域の周りで第1の層および第2の層の間から除去されることによって第2の層を第1の層から選択的に分離し、かつ第1の層の窓領域内の応力集中を低下させる、請求項11に記載のモノリシック陽極。
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