JP3648364B2 - 樹脂成形装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形装置に関し、詳細には、レンズ等の精密プラスチック光学部品をも高精度に成形することのできる樹脂成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、レンズやミラー等の高精度な樹脂成形品を製造する場合、成形用金型内に温度分布が生じていると、成形品にひけや残留応力が生じ、高精度な成形品を作製することができない。
【0003】
そこで、従来、互いに対向して配置された固定型及び可動型の双方に設けられた互いに対向する入駒とを備え、前記両入駒間に形成されたキャビティ中に溶融樹脂を射出充填する射出成形用金型装置において、前記キャビティを構成する複数の入駒の周囲に断熱材を設け、これら入駒とこれら入駒を支持する前記固定型及び可動型との間を断熱化し、前記キャビティを構成する複数の入駒の金型温度を高精度な温度に維持制御する射出成形用金型装置が提案されている(特開平6−114885号公報参照)。すなわち、この射出成形用金型装置は、キャビティを構成する入駒の周囲にエアギャップあるいは熱伝導率の低い断熱材で構成される断熱部を設け、キャビティを構成する複数の入駒を一定温度に維持できるようにしている。
【0004】
また、本出願人は、先に、予め射出成形によりプラスチック母材を略最終形状に加工した後、複数個キャビティからなる金型に該プラスチック母材を挿入し、次いで、該プラスチック母材を該プラスチック母材のガラス転移温度以上まで溶融加熱し、該溶融加熱によって生じる樹脂内圧を発生させ、次いで、徐冷して鏡面を転写するという射出工程とエージング工程とを分離させたプラスチック成形品の製造方法において、該エージング用金型が熱伝導率の大きな部材からなることを特徴とするエージング用金型を提案している(特開平5−162139号公報参照)。すなわち、このエージング用金型では、金型部材をアルミあるいはアルミ合金や銅または銅合金という熱伝導性の良好な部材で構成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の射出成形用金型装置やエージング用金型にあっては、充分なプラスチック成形品の精度を向上させる上で、なお改良の点があった。
【0006】
すなわち、特開平6−114885号公報の射出成形用金型装置にあっては、断熱部をエアギャップで形成すると、断熱部が空隙になり、成型時の内圧によってキャビティを構成する入駒に歪が生じて、成形品質が悪化するという問題があった。また、断熱部を低熱伝導率の断熱材で形成すると、金型を複数の部材で構成することとなり、各々の部材間の熱膨張率が異なって、金型を加熱したときに、各々の部材間の熱膨張率の相違によって入駒が変形し、成型時にバリが発生して、成形品質が悪化するという問題があった。
【0007】
また、特開平5−162139号公報記載のエージング用金型にあっては、金型部材としてアルミあるいはアルミ合金を用いると、アルミあるいはアルミ合金は、剛性が低く成型時に変形して、成形品質を悪化させるおそれがあり、また、金型部材として銅あるいは銅合金を用いると、銅あるいは銅合金は、鏡面加工性が悪いため、レンズやミラー等に代表される高精度プラスチック部品の形成には、不適切であった。
【0008】
そこで、請求項1記載の発明は、上金型及び下金型の全ての部分、あるいは、その一部分を、その熱伝導率が、鏡面部を有してキャビティを画成する入駒の熱伝導率よりも大きく、かつ、その熱膨張率が入駒の熱膨張率と同等あるいはそれよりも小さい熱伝導部材で形成することにより、樹脂成型時の上金型及び下金型の温度分布を均一化して、上金型及び下金型の歪を防止し、ひけや内部応力が発生しない高精度な成形品を成形することができるとともに、成形サイクルを短縮化し、かつ、成型時のバリの発生を抑制することのできる樹脂成形装置であって、且つ、上金型及び下金型の熱伝導部材として、セラミックと金属あるいはその合金との複合材であるサーメットを使用することにより、セラミックの組成や金属またはその合金の含有率を変化させて、意図する熱伝導率及び熱膨張率の熱伝導部材を形成し、より一層高精度な成形品を得ることができるとともに、成形サイクルを短縮化し、かつ、成型時のバリの発生をより一層抑制することのできる軽量で取り扱いの良好な樹脂成形装置を提供することを目的としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、熱伝導部材を、セラミックに溶融した金属あるいはその合金を浸透させた後、所望の形状に作製された型に鋳込んで形成されたサーメットで形成することにより、意図する熱伝導率及び熱膨張率の熱伝導部材を安価にかつ容易に形成し、安価に高精度な成形品を成形することのできる樹脂成形装置を提供することを目的としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、熱伝導部材を、予め上金型及び下金型の当該熱伝導部材の形状に形成されたセラミックに、溶融した金属あるいはその合金を浸透させて形成されたサーメットで形成することにより、サーメットを構成する金属あるいは合金の含有率が低く、流動性が低い場合にも、適切に意図する形状の熱伝導部材を精度良く形成し、高精度な成形品を成形することのできる樹脂成形装置を提供することを目的としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、熱伝導部材に、上金型及び下金型を加熱する金型加熱手段、あるいは、上金型及び下金型を冷却する金型冷却手段を埋設することにより、金型加熱手段あるいは金型冷却手段で効率的に上金型及び下金型の温度を変化させ、樹脂の成形サイクルを短縮させるとともに、上金型及び下金型の温度分布の不均一をより一層低減させて、より一層高精度な成形品を成形することのできる樹脂成形装置を提供することを目的としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、上金型及び下金型を所定の一定温度に加熱した後、樹脂を充填して固化させて、樹脂を成形することにより、樹脂の成形サイクルを短縮化させるとともに、樹脂成型時の上金型及び下金型の温度の均一化を向上させて、成形品精度をより一層向上させることのできる樹脂成形装置を提供することを目的としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、樹脂をキャビティ内に充填あるいは挿入した後、上金型及び下金型の温度を変化させて、樹脂を成形することにより、樹脂の成形サイクルを短縮化させるとともに、樹脂成型時の上金型及び下金型の温度の均一化を向上させて、成形品精度をより一層向上させることのできる樹脂成形装置を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の樹脂成形装置は、上金型と下金型を備え、所定の熱伝導率と熱膨張率を有した部材で形成されるとともに前記上金型と前記下金型の少なくとも一方に鏡面部を有してキャビティを画成する入駒が設けられ、前記キャビティ内に充填された樹脂を成形する樹脂成形装置であって、前記上金型及び前記下金型は、その全ての部分、あるいは、その一部分が、その熱伝導率が前記入駒の熱伝導率よりも大きく、かつ、その熱膨張率が前記入駒の熱膨張率と同等あるいは前記入駒の熱膨張率よりも小さい熱伝導部材で形成され、該熱伝導部材は、セラミックと金属あるいはその合金との複合材であるサーメットであることにより、上記目的を達成している。
【0015】
上記構成によれば、上金型及び下金型の全ての部分、あるいは、その一部分を、その熱伝導率が、鏡面部を有してキャビティを画成する入駒の熱伝導率よりも大きく、かつ、その熱膨張率が入駒の熱膨張率と同等あるいはそれよりも小さい熱伝導部材で形成しているので、樹脂成型時の上金型及び下金型の温度分布を均一化して、上金型及び下金型の歪を防止することができ、ひけや内部応力が発生しない高精度な成形品を成形することができるとともに、成形サイクルを短縮化し、かつ、成型時のバリの発生を抑制することができ、且つ、上金型及び下金型の熱伝導部材として、セラミックと金属あるいはその合金との複合材であるサーメットを使用しているので、セラミックの組成や金属またはその合金の含有率を変化させて、意図する熱伝導率及び熱膨張率の熱伝導部材を形成することができ、より一層高精度な成形品を得ることができるとともに、成形サイクルを短縮化し、かつ、成型時のバリの発生をより一層抑制することができ、また、軽量で取り扱い性を向上させることができる。
【0016】
また、例えば、請求項2に記載するように、前記熱伝導部材は、セラミックに溶融した金属あるいはその合金を浸透させた後、所望の形状に作製された型に鋳込んで形成されたサーメットでああってもよい。
【0017】
上記構成によれば、熱伝導部材を、セラミックに溶融した金属あるいはその合金を浸透させた後、所望の形状に作製された型に鋳込んで形成されたサーメットで形成しているので、意図する熱伝導率及び熱膨張率の熱伝導部材を安価にかつ容易に形成することができ、安価に高精度な成形品を成形することができる。
【0018】
さらに、例えば、請求項3に記載するように、前記熱伝導部材は、予め前記上金型及び前記下金型の当該熱伝導部材の形状に形成されたセラミックに、溶融した金属あるいはその合金を浸透させて形成されたサーメットであってもよい。
【0019】
上記構成によれば、熱伝導部材を、予め上金型及び下金型の当該熱伝導部材の形状に形成されたセラミックに、溶融した金属あるいはその合金を浸透させて形成されたサーメットで形成しているので、サーメットを構成する金属あるいは合金の含有率が低く、流動性が低い場合にも、適切に意図する形状の熱伝導部材を精度良く形成することができ、高精度な成形品を成形することができる。
【0020】
また、例えば、請求項4に記載するように、前記熱伝導部材は、前記上金型及び前記下金型を加熱する金型加熱手段、あるいは、前記上金型及び前記下金型を冷却する金型冷却手段が埋設されていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、熱伝導部材に、上金型及び下金型を加熱する金型加熱手段、あるいは、上金型及び下金型を冷却する金型冷却手段を埋設しているので、金型加熱手段あるいは金型冷却手段で効率的に上金型及び下金型の温度を変化させることができ、樹脂の成形サイクルを短縮させることができるとともに、上金型及び下金型の温度分布の不均一をより一層低減させて、より一層高精度な成形品を成形することができる。
【0022】
さらに、例えば、請求項5に記載するように、前記樹脂成形装置は、前記上金型及び前記下金型を所定の一定温度に加熱した後、前記樹脂を充填して固化させて、前記樹脂を成形するものであってもよい。
【0023】
上記構成によれば、上金型及び下金型を所定の一定温度に加熱した後、樹脂を充填して固化させて、樹脂を成形しているので、樹脂の成形サイクルを短縮化させることができるとともに、樹脂成型時の上金型及び下金型の温度の均一化を向上させて、成形品精度をより一層向上させることができる。
【0024】
また、例えば、請求項6に記載するように、前記樹脂成形装置は、前記樹脂を前記キャビティ内に充填あるいは挿入した後、前記上金型及び前記下金型の温度を変化させて、前記樹脂を成形するものであってもよい。
【0025】
上記構成によれば、樹脂をキャビティ内に充填あるいは挿入した後、上金型及び下金型の温度を変化させて、樹脂を成形しているので、樹脂の成形サイクルを短縮化させることができるとともに、樹脂成型時の上金型及び下金型の温度の均一化を向上させて、成形品精度をより一層向上させることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0027】
図1〜図3は、本発明の樹脂成形装置の一実施の形態を示す図であり、図1は、本発明の樹脂成形装置の一実施の形態を適用した樹脂成形装置1の要部正面断面図である。
【0028】
図1において、樹脂成形装置1は、プレス機(射出成形機)の一対のアーム2a、2bに、一対の相対向するダイプレート3a、3bが固定されており、各ダイプレート3a、3bには、それぞれ断熱板4a、4b及び金型温度調節板5a、5bを介して上金型6と下金型7が固定されている。
【0029】
金型温度調節板5a、5bには、それぞれ上金型6及び下金型7を一定温度に保つためのヒーター等の金型加熱用部材(金型加熱手段)、あるいは、高精度に一定温度に制御された冷媒流路等の金型冷却用部材(金型冷却手段)等の温度調整部8a、8bが埋設されており、金型温度調整板5a、5bは、温度調整部8a、8bにより温度調整されることにより、上金型6及び下金型7を一定温度に調整する。
【0030】
なお、この温度調整部8a、8bは、上金型6及び下金型7に直接形成されていてもよいが、別部材である金型温度調整板5a、5bに形成して、上金型6及び下金型7に固定すると、上金型6及び下金型7の形成を容易に行うことができる。
【0031】
上金型6及び下金型7には、それぞれ相対向する位置に、鏡面部9及び鏡面部10を有する入駒11及び入駒12が挿入されており、入駒11と入駒12及び上金型6と下金型7によりキャビティ13が画成されている。
【0032】
このキャビティ13を画成する入駒11及び入駒12は、成型時に歪が生じない剛性と鏡面部9及び鏡面部10の加工性が要求されるため、これらの剛性や加工性に優れた部材で形成され、通常は、鉄系部材で形成されている。
【0033】
この上金型6及び下金型7は、セラミックと金属あるいはセラミックと金属合金との複合材であるサーメット(熱伝導部材)で形成されており、例えば、セラミックに溶融した金属あるいは金属合金を浸透させて所望の形状に作製された型に鋳込むという鋳込み法により形成されている。このように、鋳込み法により上金型6及び下金型7を形成すると、上金型6及び下金型7を容易に、かつ、安価に形成することができるとともに、上金型及び下金型7の複製を非常に容易に形成することができる。
【0034】
上金型6及び下金型7の形成部材であるサーメットは、その構成材料であるセラミックの材料と金属あるいは金属合金の材料及びそれらの含有割合を適宜調整することにより、その特性、特に、熱伝導率及び熱膨張率を調整することができ、本実施の形態では、上金型6及び下金型7を形成するサーメットを、熱伝導率が大きく、かつ、熱膨張率が入駒11、12の形成材料である鉄系部材と同等の大きさのものを使用している。
【0035】
サーメットは、セラミックとして、SiC、SiN及びAl2O3等を用いることができ、金属として、アルミニウム、銅、亜鉛、スズ及び鉄等を用いることができ、これらの含有割合を適宜調整することにより所望の特性を有するサーメットで上金型6及び下金型7を形成することができる。
【0036】
例えば、セラミックと金属あるいは合金の複合材であるサーメットを、セラミックとして、SiCを使用し、金属としてアルミ合金を使用して形成し、その熱伝導率、熱膨張率、縦弾性係数及び密度を、アルミ合金、銅合金及び鉄系部材の熱伝導率、熱膨張率、縦弾性係数及び密度と比較したところ、図2に示すような結果を得た。なお、図2において、複合材と記載されているのが、上記サーメットである。図2から分かるように、サーメットは、その熱伝導率が160〜180W/m℃で、入駒11、12の形成部材である鉄系部材の熱伝導率に比較して、3倍以上も大きく、かつ、アルミ合金や銅合金の熱伝導率よりも大きく、また、その縦弾性係数が、106〜265GPaで、アルミ合金や銅合金の縦弾性係数よりも大きく、かつ、鉄系部材の縦弾性係数と同等の大きさであり、さらに、その比重が、2.7〜3.0と鉄系部材の半分以下であって、アルミ合金並に小さい。
【0037】
また、サーメットは、上述のように、その構成材料であるセラミックの材料と金属あるいは金属合金の材料及びそれらの含有割合を変化させることにより、その熱伝導率、熱膨張率、縦弾性係数及び密度等の特性を調整することができる。
【0038】
例えば、サーメットをセラミックとアルミ合金で形成するとともに、アルミ合金の含有率を変化させて、その特性を比較したところ、図3に示すような結果を得た。
【0039】
サーメットは、図3から分かるように、アルミ合金の含有率を変化させると、その熱伝導率、熱膨張率、縦弾性係数及び密度のいずれもが、変化する。したがって、サーメットは、その構成材料であるセラミックの材料と金属あるいは金属合金の材料及びそれらの含有割合を変化させることにより、その熱伝導率、熱膨張率、縦弾性係数及び密度等の特性を調整することができるとともに、セラミック自体の組成を変化させることにより、サーメットの特性を調整することができ、サーメットとして、熱伝導率が入駒11、12よりも大きく、かつ、熱膨張率が入駒11、12と同等あるいはそれ以下のものを作製して、上金型6及び下金型7を形成する。
【0040】
なお、樹脂成形装置1は、図1には図示しないが、樹脂をキャビティ13に充填するためのゲート、スプルー及びランナー等が形成されている。
【0041】
次に、本実施の形態の作用を説明する。樹脂成形装置1は、プラスチック樹脂を成形する際、上金型6及び下金型7を温度調整部8a、8bのヒーターあるいは冷媒流路により所定の一定温度に温度調整して、金型温度調整板5a、5bプレス機のアーム2a、2bによりダイプレート3a、3bを介して上金型6と下金型7を型締めし、次に、樹脂を入駒11、12により画成されているキャビティ13内に充填する。樹脂成形装置1は、キャビティ13内に樹脂を充填すると、上金型6及び下金型7を樹脂の熱変性温度以下に徐冷し、プレス機のアーム2a、2bにより上金型6と下金型7を開いて、樹脂成形品を取り出す。
【0042】
このプラスチック樹脂の成形においては、樹脂成形装置1の上金型6及び下金型7が、サーメットで形成されているとともに、上金型6及び下金型7を形成するサーメットの組成を、適宜選択して、当該サーメットで形成した上金型6及び下金型7の熱伝導率が上金型6及び下金型7に挿入されている入駒11及び入駒12の熱伝導率よりも大きく、かつ、その熱膨張率が入駒11及び入駒12の熱膨張率と同等あるいは同等以下となっている。
【0043】
したがって、上金型6及び下金型7が入駒11及び入駒12よりもその熱伝導率が大きいため、成型時に上金型6及び下金型7に発生する温度分布を低減させることができ、プラスチック樹脂の成形品質を向上させることができる。
【0044】
また、上金型6及び下金型7の熱膨張率が入駒11及び入駒12の熱膨張率と同等あるいはそれ以上であるため、成型時にプラスチック樹脂内圧によって上金型6及び下金型7が歪むことを防止し、プラスチック樹脂の成形品質を向上させることができる。
【0045】
さらに、上金型6及び下金型7を形成しているサーメットは、その比重が、2.7〜3.0と鉄系部材の半分以下であって、アルミ合金と同等に小さいため、取り扱いが非常に容易である。
【0046】
また、本実施の形態においては、上金型6及び下金型7を一定温度に加熱した状態で、溶融樹脂をキャビティ13内に充填し、その後、樹脂を冷却・固化させており、この場合、上金型6及び下金型7が熱伝導率が大きいため、樹脂の充填後の冷却を速やかに行うことができ、成形サイクルを短縮させることができるとともに、成型時の上金型6及び下金型7の温度の均一化が進み、成形精度を向上させることができる。
【0047】
なお、本実施の形態においては、温度調整部8a、8bを上金型6及び下金型7とは別の金型温度調整板5a、5bに設けているが、上金型6及び下金型7に設けてもよい。この場合、上金型6及び下金型7を上述のように鋳込み法で温度調整部8a、8bを構成する金型加熱用部材あるいは金型冷却用部材を挿入する挿入穴を形成した後、金型加熱用部材あるいは金型冷却用部材を当該挿入穴に挿入すると、金型加熱用部材あるいは金型冷却用部材と上金型6及び下金型7の挿入穴の壁面とにクリアランスが発生し、当該クリアランスに空気の断熱層が形成されることとなる。したがって、温度調整部8a、8bである金型加熱用部材あるいは金型冷却用部材と上金型6及び下金型7との熱効率が悪くなり、上金型6及び下金型7に温度分布が生じやすくなる。また、加工精度によって、上記クリアランスが場所によって異なると、成型時に、上金型6及び下金型7の温度分布が大きくなり、成形品精度が悪化する。
【0048】
そこで、温度調整部8a、8bを上金型6及び下金型7に設ける場合には、上金型6及び下金型7を所望の型に鋳込む際に、温度調整部8a、8bとなる金型加熱用部材あるいは金型冷却用部材を同時に鋳込む。このようにすると、金型加熱用部材あるいは金型冷却用部材と上金型6及び下金型7との間のクリアランスを完全に無くして、密着させることができ、上金型6及び下金型7の温度分布を均一化して、成形品精度を向上させることができる。また、温度調整部8a、8bを構成する金型加熱用部材あるいは金型冷却用部材と上金型6及び下金型7との熱伝導率を向上させることができ、成型時に、金型加熱用部材あるいは金型冷却用部材により上金型6及び下金型7を昇温あるいは降温する際、加熱速度及び冷却速度を速くすることができ、成形サイクルを短縮させることができる。
【0049】
また、上記実施の形態においては、上金型6及び下金型7を鋳込み法により形成しているが、上金型6及び下金型7の形成方法は、鋳込み法に限るものではない。特に、上金型6及び下金型7のサーメットは、その構成材料である金属またはその合金の含有率が低く、セラミックの含有率が高くなるほど、剛性が高くなり、上金型6及び下金型7に温度調整部8a、8bを設ける場合にも、当該温度調整部8a、8bの剛性が高くなるが、一方で、セラミックの流動性が低下するため、鋳込み法では、精度良く加工することができない。
【0050】
このような場合には、予め上金型6及び下金型7の形状に形作られたセラミックに溶融した金属またはその合金を浸透させてサーメットとして、上金型6及び下金型7を作製する。
【0051】
このようにすると、意図する熱伝導率及び熱膨張率の上金型及び下金型7を安価にかつ容易に形成することができ、安価に高精度な成形品を成形することができる。
【0052】
さらに、上記実施の形態においては、上金型6及び下金型7を一定温度に加熱した状態で、溶融樹脂をキャビティ13内に充填し、その後、樹脂を冷却・固化させているが、キャビティ13内に樹脂を充填あるいは挿入した後、上金型6及び下金型7を加熱あるいは冷却、もしくは、加熱・冷却して、成形品内に生じる残留応力を緩和させて、成形品精度をより一層向上させるようにしてもよい。
【0053】
例えば、予め射出成形によりプラスチック母材を略最終形状に加工した後、キャビティ13内に当該プラスチック母材を挿入し、その後、当該プラスチック母材のガラス転移温度以上にプラスチック母材を加熱溶融して、樹脂内圧を発生させた後、徐冷してキャビティ13を構成する入駒11及び入駒12の鏡面部9及び鏡面部10をプラスチック母材に転写させてもよい。
【0054】
このとき、樹脂成形装置1は、上金型6及び下金型7が熱伝導率の大きいサーメットで形成されているため、上金型6及び下金型7の加熱速度及び冷却速度が速く、成形サイクルを短縮することができるとともに、加熱及び冷却時の上金型6及び下金型7の温度分布が均一となって、成形品質を向上させることができる。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0056】
なお、上記実施の形態においては、上金型6及び下金型7の全体をサーメットで形成しているが、上金型6及び下金型7の一部分のみをサーメットで形成してもよい。
【0057】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の樹脂成形装置によれば、上金型及び下金型の全ての部分、あるいは、その一部分を、その熱伝導率が、鏡面部を有してキャビティを画成する入駒の熱伝導率よりも大きく、かつ、その熱膨張率が入駒の熱膨張率と同等あるいはそれよりも小さい熱伝導部材で形成しているので、樹脂成型時の上金型及び下金型の温度分布を均一化して、上金型及び下金型の歪を防止することができ、ひけや内部応力が発生しない高精度な成形品を成形することができるとともに、成形サイクルを短縮化し、かつ、成型時のバリの発生を抑制することができ、さらに、上金型及び下金型の熱伝導部材として、セラミックと金属あるいはその合金との複合材であるサーメットを使用しているので、セラミックの組成や金属またはその合金の含有率を変化させて、意図する熱伝導率及び熱膨張率の熱伝導部材を形成することができ、より一層高精度な成形品を得ることができるとともに、成形サイクルを短縮化し、かつ、成型時のバリの発生をより一層抑制することができ、また、軽量で取り扱い性を向上させることができる。
【0058】
請求項2記載の発明の樹脂成形装置によれば、熱伝導部材を、セラミックに溶融した金属あるいはその合金を浸透させた後、所望の形状に作製された型に鋳込んで形成されたサーメットで形成しているので、意図する熱伝導率及び熱膨張率の熱伝導部材を安価にかつ容易に形成することができ、安価に高精度な成形品を成形することができる。
【0059】
請求項3記載の発明の樹脂成形装置によれば、熱伝導部材を、予め上金型及び下金型の当該熱伝導部材の形状に形成されたセラミックに、溶融した金属あるいはその合金を浸透させて形成されたサーメットで形成しているので、サーメットを構成する金属あるいは合金の含有率が低く、流動性が低い場合にも、適切に意図する形状の熱伝導部材を精度良く形成することができ、高精度な成形品を成形することができる。
【0060】
請求項4記載の発明の樹脂成形装置によれば、熱伝導部材に、上金型及び下金型を加熱する金型加熱手段、あるいは、上金型及び下金型を冷却する金型冷却手段を埋設しているので、金型加熱手段あるいは金型冷却手段で効率的に上金型及び下金型の温度を変化させることができ、樹脂の成形サイクルを短縮させることができるとともに、上金型及び下金型の温度分布の不均一をより一層低減させて、より一層高精度な成形品を成形することができる。
【0061】
請求項5記載の発明の樹脂成形装置によれば、上金型及び下金型を所定の一定温度に加熱した後、樹脂を充填して固化させて、樹脂を成形しているので、樹脂の成形サイクルを短縮化させることができるとともに、樹脂成型時の上金型及び下金型の温度の均一化を向上させて、成形品精度をより一層向上させることができる。
【0062】
請求項6記載の発明の樹脂成形装置によれば、樹脂をキャビティ内に充填あるいは挿入した後、上金型及び下金型の温度を変化させて、樹脂を成形しているので、樹脂の成形サイクルを短縮化させることができるとともに、樹脂成型時の上金型及び下金型の温度の均一化を向上させて、成形品精度をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の樹脂成形装置の一実施の形態を適用した樹脂成形装置の要部正面断面図。
【図2】 SiCとアルミ合金のサーメットの特性とアルミ合金、銅合金及び鉄系部材の特性を比較して示す図。
【図3】 セラミックとアルミ合金のサーメットのアルミ含有率を変化させたときの特性変化を示す図。
【符号の説明】
1 樹脂成形装置
2a、2b アーム
3a、3b ダイプレート
4a、4b 断熱板
5a、5b 金型温度調節板
6 上金型
7 下金型
8a、8b 温度調整部
9、10 鏡面部
11、12 入駒
13 キャビティ

Claims (6)

  1. 上金型と下金型を備え、所定の熱伝導率と熱膨張率を有した部材で形成されるとともに前記上金型と前記下金型の少なくとも一方に鏡面部を有してキャビティを画成する入駒が設けられ、前記キャビティ内に充填された樹脂を成形する樹脂成形装置であって、前記上金型及び前記下金型は、その全ての部分、あるいは、その一部分が、その熱伝導率が前記入駒の熱伝導率よりも大きく、かつ、その熱膨張率が前記入駒の熱膨張率と同等あるいは前記入駒の熱膨張率よりも小さい熱伝導部材で形成され、該熱伝導部材は、セラミックと金属あるいはその合金との複合材であるサーメットであることを特徴とす樹脂成形装置。
  2. 前記熱伝導部材は、セラミックに溶融した金属あるいはその合金を浸透させた後、所望の形状に作製された型に鋳込んで形成されたサーメットであることを特徴とする請求項記載の樹脂成形装置。
  3. 前記熱伝導部材は、予め前記上金型及び前記下金型の当該熱伝導部材の形状に形成されたセラミックに、溶融した金属あるいはその合金を浸透させて形成されたサーメットであることを特徴とする請求項記載の樹脂成形装置。
  4. 前記熱伝導部材は、前記上金型及び前記下金型を加熱する金型加熱手段、あるいは、前記上金型及び前記下金型を冷却する金型冷却手段が埋設されていることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の樹脂成形装置。
  5. 前記樹脂成形装置は、前記上金型及び前記下金型を所定の一定温度に加熱した後、前記樹脂を充填して固化させて、前記樹脂を成形することを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の樹脂成形装置。
  6. 前記樹脂成形装置は、前記樹脂を前記キャビティ内に充填あるいは挿入した後、前記上金型及び前記下金型の温度を変化させて、前記樹脂を成形することを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の樹脂成形装置。
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